JP4620230B2 - 水素含有ガス中の一酸化炭素除去触媒及び該触媒を用いる水素含有ガス中の一酸化炭素の除去方法 - Google Patents

水素含有ガス中の一酸化炭素除去触媒及び該触媒を用いる水素含有ガス中の一酸化炭素の除去方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水素含有ガス中の一酸化炭素除去触媒及び該触媒を用いる水素含有ガス中の一酸化炭素の除去方法に関する。その水素含有ガスは燃料電池用の水素含有ガスとして有用である。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池による発電は、低公害でエネルギーロスが少なく、設置場所の選択、増設、操作性等の点でも有利であるなど種々の利点を有することから、近年特に注目を集めている。燃料電池には、燃料や電解質の種類あるいは作動温度等によって種々のタイプのものが知られているが、中でも水素を還元剤(活物質)とし、酸素(空気等)を酸化剤とする、いわゆる水素−酸素燃料電池(低温作動型の燃料電池)の開発が最も進んでおり、今後ますます普及が見込まれている。
【0003】
このような水素−酸素燃料電池にも電解質の種類や電極等の種類によって種々のタイプのものがあり、その代表的なものとして、例えば、リン酸型燃料電池、KOH型燃料電池、固体高分子型燃料電池などがある。このような燃料電池、特に固体高分子型燃料電池等の低温作動型燃料電池の場合には、電極に白金(白金触媒)が使用されている。ところが、電極に用いている白金は一酸化炭素(以下、COともいう。)によって被毒されやすいので、燃料中にCOがあるレベル以上含まれていると発電性能が低下したり、濃度によっては全く発電ができなくなってしまうという重大な問題点がある。このCO被毒による触媒の活性劣化は、特に低温ほど著しいので、この問題は、低温作動型の燃料電池の場合に特に深刻となる。
【0004】
したがって、こうした白金系電極触媒を用いる燃料電池の燃料としては純粋な水素が好ましいが、実用的な点からは安価で貯蔵性等に優れたあるいは既に公共的な供給システムが完備されている各種の燃料〔例えば、メタンもしくは天然ガス(LNG)、プロパン、ブタン等の石油ガス(LPG)、ナフサ、ガソリン、灯油、軽油等の各種の炭化水素系燃料あるいはメタノール等のアルコール系燃料、あるいは都市ガス、その他の水素製造用燃料〕の水蒸気改質等によって得られる水素含有ガスを用いることが一般的になっており、このような改質設備を組み込んだ燃料電池発電システムの普及が進められている。しかしながら、こうした改質ガス中には、一般に、水素の他にかなりの濃度のCOが含まれているので、このCOを無害なものに転化し、燃料中のCO濃度を減少させる技術の開発が強く望まれている。例えば、固体高分子型燃料電池ではCO濃度を、通常100容量ppm以下、好ましくは50容量ppm以下、更に好ましくは10容量ppm以下という低濃度にまで低減することが望ましいとされている。
【0005】
上記の問題を解決するために、燃料ガス(改質ガス中の水素含有ガス)中のCOの濃度を低減させる手段の一つとして、下記の式(1)で表されるシフト反応(水性ガスシフト反応)を利用する技術が提案されている。
【0006】
CO + H2 O = CO2 + H2 (1)
しかしながら、このシフト反応のみによる反応では、化学平衡上の制約からCO濃度の低減には限界があり、一般に、CO濃度を1%以下にするのは困難である。
そこで、CO濃度をより低濃度まで低減する手段として、改質ガス中に酸素又は酸素含有ガス(空気等)を導入し、COをCO2 に変換する方法が提案されている。しかしながら、この場合改質ガス中には水素が多量存在しているため、COを酸化しようとすると水素も酸化されてしまい、CO濃度が十分に低減できないことがある。
【0007】
ところで、最近COを水素でメタネーション(以下、メタン化ともいう。)することによりメタンに変換する方法も見直されている。例えば、特開平3−93602号公報、特開平11−86892号公報には、Ru/γ−アルミナ触媒と、COを含有する水素ガスを接触させる方法が開示されている。しかし、水素ガスに二酸化炭素が含まれている場合、副反応である二酸化炭素のメタン化反応も起こり、それだけ水素が消費され望ましくない。したがって、主反応であるCOのメタン化反応の選択率の高い触媒の開発が望まれている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記状況を鑑みなされたもので、主反応である一酸化炭素のメタネーション反応の選択率の高い、水素含有ガス中の一酸化炭素除去触媒及び該触媒を用いる水素含有ガス中の一酸化炭素の除去方法を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意研究の結果、ルテニウム化合物として硝酸塩を使用し、それを耐火性無機酸化物担体に担持処理後乾燥させ、焼成を行うことなく、還元することにより、上記本発明の目的を効果的に達成しうることを見出し本発明を完成させるに到った。
【0010】
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
1.ルテニウムの硝酸塩(a)を細孔半径60Å以下に細孔分布の極大値を有するアルミナ担体に担持処理後乾燥させ、焼成を行うことなく、還元してなる一酸化炭素のメタネーションによる水素含有ガス中の一酸化炭素除去触媒。
2.ルテニウムの硝酸塩(a)とアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物(b)を細孔半径60Å以下に細孔分布の極大値を有するアルミナ担体に担持処理後乾燥させ、焼成を行うことなく、還元してなる水素含有ガス中の一酸化炭素除去触媒。
3.(a)成分の担持量が、担体に対してルテニウム金属として0.05〜10質量%である前記1又は2に記載の水素含有ガス中の一酸化炭素除去触媒。
4.(b)成分の担持量が、担体に対して金属として0.01〜10質量%である前記2又は3に記載の水素含有ガス中の一酸化炭素除去触媒。
5.前記1〜4のいずれかに記載の水素含有ガス中の一酸化炭素除去触媒を使用して一酸化炭素をメタネーションすることを特徴とする水素含有ガス中の一酸化炭素の除去方法。
6.水素含有ガスが、燃料電池用水素含有ガスである前記5記載の水素含有ガス中の一酸化炭素の除去方法。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明について詳細に説明する。
先ず、本発明の水素含有ガス中のCO除去触媒の製造方法について説明する。本発明の触媒は、ルテニウムの硝酸塩(a)を耐火性無機酸化物担体に担持処理後乾燥させ、焼成を行うことなく、還元してなるものである。
また、本発明の触媒は、ルテニウムの硝酸塩(a)とアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物(b)を耐火性無機酸化物担体に担持処理後乾燥させ、焼成を行うことなく、還元してなるものである。
本発明に用いる耐火性無機酸化物担体としては、アルミナ、チタニア、シリカ、ジルコニア等或いはこれらの二種以上を含むものからなる多孔質担体を挙げることができる。中でも、アルミナが好ましい。
【0012】
上記担体のアルミナの原料としてはアルミニウム原子を含んでいればよい。通常用いられるものとしては、硝酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、アルミニウムアルコキサイド、擬ベーマイトアルミナ、α−アルミナ、γ−アルミナなどが挙げられる。擬ベーマイトアルミナ、α−アルミナ、γ−アルミナなどは硝酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、アルミニウムアルコキサイド等から作ることができる。
【0013】
上記担体のチタニア原料としては、チタン原子を含むものであればよいが、通常はチタニウムアルコキサイド、四塩化チタン、アモルファスチタニア粉末、アナターゼ型チタニア粉末、ルチル型チタニア粉末などが挙げられる。アモルファスチタニア粉末、アナターゼ型チタニア粉末、ルチル型チタニア粉末などはチタニウムアルコキサイド、四塩化チタンなどから作ることができる。
【0014】
上記担体のシリカの原料としては珪素原子を含むものであればよいが、四塩化珪素、珪酸ナトリウム、珪酸エチル、シリカゲル、シリカゾルなどが利用できる。シリカゲルは四塩化珪素、珪酸ナトリウム、珪酸エチル、シリカゾルなどから作ることができる。
【0015】
上記担体のジルコニアの原料としてはジルコニウム原子を含むものであればよいが、水酸化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、オキシ硝酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、四塩化ジルコニウムおよびジルコニア粉末などが利用できる。ジルコニア粉末は水酸化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、オキシ硝酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、四塩化ジルコニウムから作ることができる。
上記耐火性無機酸化物担体は、上記の原料から公知の方法で製造することができる。
【0016】
また、本発明においては、上記のアルミナ担体に使用されるアルミナは細孔半径60Å以下に細孔分布の極大値を有するものが好ましい。細孔半径60Åを超えるところに細孔分布の極大値があるアルミナを使用すると、触媒活性が低くなる場合がある。なお、アルミナ原料として擬ベーマイトアルミナを使用する場合には、担体を調製中(焼成後)にγ−アルミナに変化するので、その細孔分布を測定し求めるものとする。
また、上記の細孔分布はN2 吸着法で測定し、BJH(Barrett−Joyner−Halenda)法で解析したものである。
【0017】
本発明においては、上記の担体に、ルテニウムの硝酸塩(a)、又は、ルテニウムの硝酸塩(a)と、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物(b)を担持処理する。
まず、(a)成分としては、硝酸ルテニウムを使用する。それを水、エタノール等で希釈し触媒調製液として担体への担持処理に供する。担体への担持処理は、その触媒調製液を用いて、通常の含浸法、共沈法、競争吸着法により行えばよい。処理条件は、特に限定されないが、通常、室温〜90℃で1分〜10時間、担体を触媒調製液と接触させればよい。
【0018】
(a)成分の担持量は特に限定されないが、通常、担体に対してルテニウム金属として0.05〜10質量%が好ましく、特に0.3〜3質量%の範囲が最適である。このルテニウムの量が少なすぎると、COのメタン化活性が不十分となる場合があり、多すぎると、ルテニウムの量に見合うCOのメタン化活性が得られず経済的に不利になる場合がある。
【0019】
担体にルテニウム化合物を担持処理した後、乾燥させる。乾燥方法としては、例えば、自然乾燥、ロータリーエバポレーター、送風乾燥機を使用し50〜200℃で0.5〜24時間行えばよい。本発明においては、乾燥後、焼成することなく、還元に供することが肝要である。
なお、上記の焼成とは、酸素雰囲気下で350〜550℃で2〜6時間加熱する処理をいう。
【0020】
次いで、(b)成分の担体への担持について説明する。
まず、アルカリ金属としては、カリウム、セシウム、ルビジウム、ナトリウム、リチウムが好適に用いられる。
アルカリ金属化合物を担持処理するには、例えば、K2 1016、KBr、KBrO3 、KCN、K2 CO3 、KCl、KClO3 、KClO4 、KF、KHCO3 、KHF2 、KH2 PO4 、KH5 (PO4 2 、KHSO4 、KI、KIO3 、KIO4 、K4 2 9 、KN3 、KNO2 、KNO3 、KOH、KPF6 、K3 PO4 、KSCN、K2 SO3 、K2 SO4 、K2 2 3 、K2 2 5 、K2 2 6 、K2 2 8 、K(CH3 COO)等のK塩;CsCl、CsClO3 、CsClO4 、CsHCO3 、CsI、CsNO3 、Cs2 SO4 、Cs(CH3 COO)、Cs2 CO3 、CsF等のCs塩;Rb2 1016、RbBr、RbBrO3 、RbCl、RbClO3 、PbClO4 、RbI、RbNO3 、Rb2 SO4 、Rb(CH3 COO)2 、Rb2 CO3 等のRb塩;Na2 4 7 、NaB1016、NaBr、NaBrO3 、NaCN、Na2 CO3 、NaCl、NaClO、NaClO3 、NaClO4 、NaF、NaHCO3 、NaHPO3 、Na2 HPO3 、Na2 HPO4 、NaH2 PO4 、Na3 HP2 6 、Na2 2 2 7 、NaI、NaIO3 、NaIO4 、NaN3 、NaNO2 、NaNO3 、NaOH、Na2 PO3 、Na3 PO4 、Na4 2 7 、Na2 S、NaSCN、Na2 SO3 、Na2 SO4 、Na2 2 5 、Na2 2 6 、Na(CH3 COO)等のNa塩;LiBO2 、Li2 4 7 、LiBr、LiBrO3 、Li2 CO3 、LiCl、LiClO3 、LiClO4 、LiHCO3 、Li2 HPO3 、LiI、LiN3 、LiNH4 SO4 、LiNO2 、LiNO3 、LiOH、LiSCN、Li2 SO4 、Li3 VO4 等のLi塩を水、エタノール等に溶解させて得られる触媒調製液を用いる。
【0021】
アルカリ土類金属として、バリウム、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウムが好適に用いられる。
アルカリ土類金属化合物を担持処理するには、BaBr2 、Ba(BrO3 2 、BaCl2 、Ba(ClO2 2 、Ba(ClO3 2 、Ba(ClO4 2 、BaI2 、Ba(N3 2 、Ba(NO2 2 、Ba(NO3 2 、Ba(OH)2 、BaS、BaS2 6 、BaS4 6 、Ba(SO3 NH2 2 等のBa塩;CaBr2 、CaI2 、CaCl2 、Ca(ClO3 2 、Ca(IO3 2 、Ca(NO2 2 、Ca(NO3 2 、CaSO4 、CaS2 3 、CaS2 6 、Ca(SO3 NH2 2 、Ca(CH3 COO)2 、Ca(H2 PO4 2 等のCa塩;MgBr2 、MgCO3 、MgCl2 、Mg(ClO3 2 、MgI2 、Mg(IO3 2 、Mg(NO2 2 、Mg(NO3 2 、MgSO3 、MgSO4 、MgS2 6 、Mg(CH3 COO)2 、Mg(OH)2 、Mg(ClO4 2 等のMg塩;SrBr2 、SrCl2 、SrI2 、Sr(NO3 2 、SrO、SrS2 3 、SrS2 6 、SrS4 6 、Sr(CH3 COO)2 、Sr(OH)2 等のSr塩を水、エタノール等に溶解させて得られる触媒調製液を用いる。
【0022】
(b)成分の担持処理は、上記触媒調製液を用いて、通常の含浸法、共沈法、競争吸着法により行えばよい。処理条件は、特に限定されないが、通常、室温〜90℃で1分〜10時間、担体を触媒調製液と接触させればよい。
【0023】
(b)成分の担持量は特に限定されないが、通常、担体に対して金属として0.01〜10質量%が好ましく、特に0.03〜3質量%の範囲が最適である。その量が少なすぎると、COのメタン化活性が不十分となる場合があり、多すぎても、COのメタン化活性が不十分となるとともに金属の使用量が必要以上に過剰となり触媒コストが大きくなる場合がある。
【0024】
ところで、(a)成分と(b)成分の担持処理は、別々に行ってもよいが、同時に担持した方が触媒活性が高く、経済的に有利である。
いずれの場合にも、担体に(a)成分と(b)成分を担持処理した後、乾燥させる。乾燥方法としては、例えば、自然乾燥、ロータリーエバポレーター、送風乾燥機で行えばよい。本発明においては、乾燥後、焼成することなく、還元に供することが肝要である。なお、(b)成分を先に担持処理する場合には、乾燥、焼成後、(a)成分を担持処理し、乾燥させ、焼成工程を省けばよい。
【0025】
このようにして調製される触媒の形状及びサイズとしては、特に制限はなく、例えば、粉末状、球状、粒状、ハニカム状、発泡体状、繊維状、布状、板状、リング状など、一般に使用されている各種の形状及び構造のものが利用可能である。
【0026】
上記調製された触媒を反応器に充填した後、反応前に水素還元を行う。水素還元は、通常、水素気流下、450〜550℃、好ましくは480〜530℃の温度で、1〜5時間、好ましくは1〜2時間行う。
【0027】
以上のようにして得られる触媒と、水素を主成分とし、かつ少なくともCOを含有する水素含有ガスを接触させて、COのメタン化反応を行う。本発明のCOのメタン化除去方法は、改質反応及び部分酸化反応によって水素を含有するガスにできる水素製造用原料を改質又は部分酸化することによって得られる水素を主成分とするガス(以下、改質ガス等ともいう。)中のCOを選択的に除去するのに好適に利用され、燃料電池用水素含有ガスの製造に利用されるが、これに限定されるものではない。
【0028】
以下、水素を主成分とするガス中のCOをメタン化除去して燃料電池用等の水素含有ガスにする方法について説明する。
1.水素製造用原料の改質又は部分酸化工程
本発明においては、各種の水素製造用原料の改質等によって得られる改質ガス等に含まれるCOを触媒を用いて選択的に酸化除去し、CO濃度が十分に低減された所望の水素含有ガスを製造する。該改質ガス等を得るための工程は、以下に示すように、従来の水素製造工程、特に燃料電池システムにおける水素製造工程において実施あるいは提案されている方法など任意の方法によって行うことができる。したがって、予め改質装置等を備えた燃料電池システムにおいては、それをそのまま利用して改質ガスを調製してもよい。
【0029】
まず、水素製造用原料の改質又は部分酸化について説明する。水素製造用原料として、水蒸気改質や部分酸化により水素に富んだガスを製造できる炭化水素類、具体的には例えば、メタン,エタン,プロパン,ブタン等の炭化水素、あるいは天然ガス(LNG),ナフサ,ガソリン,灯油,軽油,重油,アスファルト等の炭化水素系原料、メタノール,エタノール,プロパノール,ブタノール等のアルコール類、蟻酸メチル,メチルターシャリーブチルエーテル(MTBE),ジメチルエーテル等の含酸素化合物、更には、各種の都市ガス、LPG、合成ガス、石炭などを適宜使用することができる。これらのうち、どのような水素製造用原料を用いるかは、燃料電池システムの規模や原料の供給事情などの諸条件を考慮して定めればよいが、通常は、メタノール、メタンもしくはLNG、プロパンもしくはLPG、ナフサもしくは低級飽和炭化水素、都市ガス、灯油などが好適に使用される。
【0030】
改質又は部分酸化に属する技術(以下、改質反応等ともいう。)としては、水蒸気改質をはじめ部分酸化、水蒸気改質と部分酸化の複合化したもの、オートサーマル改質、その他の改質反応などを挙げることができる。通常、改質反応等としては、水蒸気改質(スチームリホーミング)が最も一般的であるが、原料によっては、部分酸化やその他の改質反応(例えば、熱分解等の熱改質反応、接触分解やシフト反応等の各種接触改質反応など)も適宜適用することができる。
【0031】
その際、異なる種類の改質反応を適宜組み合わせて利用してもよい。例えば、水蒸気改質反応は一般に吸熱反応であるので、この吸熱分を補うべく水蒸気改質反応と部分酸化を組み合わせ(オートサーマル改質)てもよいし、水蒸気改質反応等によって副生するCOをシフト反応を利用してH2 Oと反応させその一部を予めCO2 とH2 に転化して減少させておくなど各種の組み合わせが可能である。無触媒、または接触的に部分酸化を行った後、その後段で水蒸気改質を行うこともできる。この場合、部分酸化で発生した熱をそのまま吸熱反応である水蒸気改質に利用することもできる。
【0032】
以下、代表的な改質反応として水蒸気改質反応を中心に説明する。
このような改質反応は、一般に、水素の収率ができるだけ大きくなるように、触媒や反応条件等を選定するが、COの副生を完全に抑制することは困難であり、たとえシフト反応を利用しても改質ガス中のCO濃度の低減には限界がある。実際、メタン等の炭化水素の水蒸気改質反応については、水素の得率及びCOの副生の抑制のために、次の式(2)あるいは式(3):
CH4 + 2H2 O → 4H2 + CO2 (2)
n m + 2nH2 O →(2n+m/2)H2 +nCO2 (3)
で表される反応ができるだけ選択性よく起こるように諸条件を選定するのが好ましい。
【0033】
また、同様に、メタノールの水蒸気改質反応については、次の式(4):
CH3 OH + H2 O → 3H2 + CO2 (4)
で表される反応ができるだけ選択性よく起こるように諸条件を選定するのが好ましい。
【0034】
更に、COを前記(1)式で表されるシフト反応を利用して変成改質しても、このシフト反応は平衡反応であるのでかなりの濃度のCOが残存する。したがって、こうした反応による改質ガス等(本発明の原料である水素含有ガス、以下同じ)中には、多量の水素の他にCO2 や未反応の水蒸気等と若干のCOが含まれることになる。
【0035】
前記改質反応に有効な触媒としては、原料(燃料)の種類や反応の種類あるいは反応条件等に応じて多種多様なものが知られている。その中のいくつかを具体的に例示すると、炭化水素やメタノール等の水蒸気改質に有効な触媒としては、例えば、Cu−ZnO系触媒、Cu−Cr2 3 系触媒、担持Ni系触媒、Cu−Ni−ZnO系触媒、Cu−Ni−MgO系触媒、Pd−ZnO系触媒などを挙げることができ、また、炭化水素類の接触改質反応や部分酸化に有効な触媒としては、例えば、担持Pt系触媒、担持Ni系触媒、担持Ru系触媒などを挙げることができる。改質装置としても特に制限はなく、従来の燃料電池システム等に常用されるものなど任意の形式のものが適用可能であるが、水蒸気改質反応や分解反応等の多くの改質反応は吸熱反応であるので、一般に、熱供給性のよい反応装置もしくは反応器(熱交換器型の反応装置など)が好適に使用される。そのような反応装置としては、例えば、多管型反応器、プレートフィン型反応器などがあり、熱供給の方式としては、例えば、バーナー等による加熱、熱媒による方法、部分酸化を利用する触媒燃焼による加熱などがあるが、これらに限定されるものではない。改質反応の反応条件は、用いる原料、改質反応、触媒、反応装置の種類あるいは反応方式等の他の条件によって異なるので適宜定めればよい。いずれにしても、原料(燃料)の転化率を十分に(好ましくは100%あるいは100%近くまで)大きくし、かつ、水素の得率ができるだけ大きくなるように諸条件を選定するのが望ましい。また、必要に応じて、未反応の炭化水素やアルコール等を分離しリサイクルする方式を採用してもよい。また、必要に応じて、生成したあるいは未反応のCO2 や水分等を適宜除去してもよい。
【0036】
2.COのメタン化反応による除去工程
上記のようにして、水素含有量が多く、かつ、炭化水素やアルコール等の水素以外の原料成分が十分に低減された所望の改質ガスを得る。
本発明においては、副反応のCO2 のメタン化反応が抑えられるので、原料ガス中に残ったCO2 のCOへの転化反応(原料ガス中には水素が存在するので、逆シフト反応が起こる可能性がある。)を抑えることが必要である。本発明の触媒は、通常、還元状態で使用されるので、還元状態になっていない場合は水素等による還元操作を行っておくことが好ましい。本発明の触媒を使用すると、CO2 含有量の低い原料ガスに対してCOのメタン化反応による除去に良好な成績を示すことは勿論、CO2 含有量が多い条件でも良好な成績が得られる。通常、燃料電池システムにおいては一般的なCO2 の濃度の改質ガス等、すなわち、CO2 を5〜33容量%、好ましくは10〜25容量%含有するガスが用いられる。
【0037】
一方、水蒸気改質等により得られる原料ガス中には、通常、スチームが存在するが、原料ガス中のスチーム濃度は低い方がよい。通常は、5〜30容量%程度含まれておりこの程度であれば問題はない。
また、本発明の触媒を使用すると、CO濃度が低い(0.6容量%以下)原料ガス中のCOも有効に低減でき、CO濃度が比較的高い(0.6〜2.0容量%)原料ガス中のCOも好適に低減することができる。
【0038】
反応圧力は特に限定されないが、燃料電池の場合は通常、常圧〜1MPa(Gauge)、好ましくは常圧〜0.5MPa(Gauge)の圧力範囲で行う。反応圧力をあまり高く設定すると、昇圧のための動力をその分大きくする必要があるので経済的に不利になるし、特に、1MPa(Gauge)を超えると高圧ガス取締法の規制を受ける。
【0039】
前記反応は、通常、100〜350℃、好ましくは、150〜300℃という非常に広い温度範囲で、COのメタン反応に対する選択性を安定的に維持しつつ、好適に行うことができる。この反応温度が100℃未満では反応速度が遅くなるので実用的なGHSV(ガス体積空間速度)の範囲ではCOの除去率(転化率)が不十分となりやすい。また、350℃を超えると、選択性が低下し、すなわちCO2 のメタン化が起きやすくなり好ましくない。
【0040】
また、前記反応は、通常、GHSVを5,000〜100,000hr-1の範囲に選定して行うのが好適である。ここで、GHSVを小さくすると多量の触媒が必要となり、一方、GHSVをあまり大きくするとCOの除去率が低下する。好ましくは、6,000〜60,000hr-1の範囲に選定する。このCOのメタン化除去の工程におけるCOのメタン化反応は発熱反応であるため、反応により触媒層の温度は上昇する。触媒層の温度が高くなりすぎると、通常、触媒のCOメタン化除去の選択性が悪化する。このため、少量の触媒上であまり多くのCOを短時間で反応させることは好ましくない。その意味からもGHSVは大きすぎない方がよい場合もある。
【0041】
このCOのメタン化反応による除去に用いる反応装置としては、特に制限はなく、上記の反応条件を満たせるものであれば各種の形式のものが適用可能であるが、この転化反応は発熱反応であるので、温度制御を容易にするために反応熱の除去性のよい反応装置もしくは反応器を用いることが望ましい。具体的には、例えば、多管型、あるいは、プレートフィン型等の熱交換型の反応器が好適に使用される。場合によっては、冷却媒体を触媒層内に循環したり、触媒層の外側に冷却媒体を流通させたりする方法を採用することができる。
【0042】
なお、このCOのメタン化反応による除去工程の前又は後に、COの選択的酸化除去工程を設けることもできる。
このCOの選択的酸化除去工程とは、改質ガス中に酸素又は酸素含有ガスを導入してCOを選択的にCO2 に酸化する工程である。
【0043】
その触媒として、Pt/アルミナ、Pt/SnO2 、Pt/C、Co/TiO2 、Pd/アルミナ、Ru/アルミナ、Ru−K/アルミナ等が使用される。また、反応条件としては、通常、反応温度は60〜300℃、反応圧力は常圧〜1MPa(Gauge)、O2 /CO(モル比)は0.5〜5、GHSVは5,000〜100,000hr-1の範囲が採用される。
【0044】
こうして本発明の方法によって製造された水素含有ガスは、上記のようにCO濃度が十分に低減されているので燃料電池の白金電極触媒の被毒及び劣化を十分に低減することができ、その寿命及び発電効率・発電性能を大幅に向上することができる。また、このCOのメタン化反応は発熱反応であり、発生した熱を回収することも可能である。また、比較的高濃度のCOを含む水素含有ガス中のCO濃度を十分に低下することができる。
【0045】
本発明により得られた水素含有ガスは、各種の水素−酸素燃料電池の燃料として好適に使用することができ、特に、少なくとも燃料極(負極)の電極に白金(白金触媒)を用いるタイプの各種の水素−酸素燃料電池(リン酸型燃料電池、KOH型燃料電池、固体高分子型燃料電池をはじめとする低温作動型燃料電池など)への供給燃料として有利に利用することができる。
【0046】
【実施例】
次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、これらの実施例になんら制限されるものではない。
〔実施例1〕
硝酸ルテニウム水溶液(Ruの含有量;50g/リットル)2ccを全体でアルミナ担体の吸水量になるように水を加えて含浸液とした。次いで、細孔半径19Åに細孔分布の極大値を有するγ−アルミナ粉末10gに上記含浸液を含浸させ120℃で2時間乾燥させ触媒1を得た。
〔実施例2〕
実施例1において、γ−アルミナを細孔半径29Åに細孔分布の極大値を有するものに変えたこと以外は同様にして触媒2を得た。
〔実施例3〕
硝酸ルテニウム水溶液(Ruの含有量;50g/リットル)2cc及び硝酸カリウム0.026gを全体でアルミナ担体の吸水量になるように水を加えて含浸液とした。次いで、細孔半径19Åに細孔分布の極大値を有するγ−アルミナ粉末10gに上記含浸液を含浸させ120℃で2時間乾燥させ触媒3を得た。
【0047】
〔比較例1〕
硝酸ルテニウム水溶液(Ruの含有量;50g/リットル)2ccを全体でアルミナ担体の吸水量になるように水を加えて含浸液とした。次いで、細孔半径19Åに細孔分布の極大値を有するγ−アルミナ粉末10gに上記含浸液を含浸させ120℃で2時間乾燥させた後、500℃で4時間焼成し触媒4を得た。
〔比較例2〕
比較例1において、γ−アルミナを細孔半径29Åに細孔分布の極大値を有するものに変えたこと以外は同様にして触媒5を得た。
〔比較例3〕
比較例1において、γ−アルミナを細孔半径200Åに細孔分布の極大値を有するものに変えたこと以外は同様にして触媒6を得た。
〔比較例4〕
塩化ルテニウム(水和物)(Ruの含有量;39.15質量%)0.2554gをアルミナ担体の吸水量分の水に溶解させ含浸液とした。次いで、細孔半径19Åに細孔分布の極大値を有するγ−アルミナ粉末10gに上記含浸液を含浸させ120℃で2時間乾燥させ触媒7を得た。
【0048】
COの選択的メタン化反応
各触媒を16〜32メッシュに揃え、マイクロリアクターに触媒を1cc充填し、下記の条件で反応を行った。リアクター出口のCOの濃度(容量ppm)、出口のメタン濃度(容量ppm)及びCOメタン化反応選択率(%)を第1表に示す。
【0049】
なお、COのメタン化反応選択率(%)は下記の式で算出した。
【0050】
【数1】
Figure 0004620230
【0051】
Figure 0004620230
【0052】
【表1】
Figure 0004620230
【0053】
【発明の効果】
本発明によれば、主反応である一酸化炭素のメタネーション反応の選択率の高い、水素含有ガス中の一酸化炭素除去触媒及び該触媒を用いる水素含有ガス中の一酸化炭素の除去方法を提供することができる。

Claims (6)

  1. ルテニウムの硝酸塩(a)を細孔半径60Å以下に細孔分布の極大値を有するアルミナ担体に担持処理後乾燥させ、焼成を行うことなく、還元してなる一酸化炭素のメタネーションによる水素含有ガス中の一酸化炭素除去触媒。
  2. ルテニウムの硝酸塩(a)とアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物(b)を細孔半径60Å以下に細孔分布の極大値を有するアルミナ担体に担持処理後乾燥させ、焼成を行うことなく、還元してなる水素含有ガス中の一酸化炭素除去触媒。
  3. (a)成分の担持量が、担体に対してルテニウム金属として0.05〜10質量%である請求項1又は2に記載の水素含有ガス中の一酸化炭素除去触媒。
  4. (b)成分の担持量が、担体に対して金属として0.01〜10質量%である請求項2又は3に記載の水素含有ガス中の一酸化炭素除去触媒。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の水素含有ガス中の一酸化炭素除去触媒を使用して一酸化炭素をメタネーションすることを特徴とする水素含有ガス中の一酸化炭素の除去方法。
  6. 水素含有ガスが、燃料電池用水素含有ガスである請求項5記載の水素含有ガス中の一酸化炭素の除去方法。
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