JP5164297B2 - Co酸化触媒及び水素含有ガスの製造方法 - Google Patents

Co酸化触媒及び水素含有ガスの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水素含有ガスからCOを選択的に酸化除去するための触媒に関し、詳しくは、ルテニウムを活性成分とし、水素含有ガスからのCOの選択的酸化活性を向上せしめるCO酸化触媒、及び該触媒を用いた水素含有ガスの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境問題から新エネルギー技術が脚光を浴びており、この新エネルギー技術の一つとして燃料電池が注目されている。この燃料電池は、水素と酸素を電気化学的に反応させることにより、化学エネルギーを電気エネルギーに変換するものであって、エネルギーの利用効率が高いという特徴を有しており、民生用、産業用あるいは自動車用などとして、実用化研究が積極的になされている。
この燃料電池には、使用する電解質の種類に応じて、リン酸型、溶融炭酸塩型、固体酸化物型、固体高分子型などのタイプが知られている。一方、水素源としては、メタノール、メタンを主体とする液化天然ガス、この天然ガスを主成分とする都市ガス、天然ガスを原料とする合成液体燃料、さらには石油系のLPG、ナフサ、灯油などの石油系炭化水素の使用が研究されている。
燃料電池を民生用や自動車用などに利用する場合、上記石油系炭化水素は保管及び取扱いが容易である上、ガソリンスタンドや販売店など、供給システムが整備されていることから、水素源として有利である。この石油系炭化水素を用いて水素を製造する場合、一般に、該炭化水素を、改質触媒の存在下に水蒸気改質又は部分酸化改質処理する方法が用いられる。そして、これらの反応において得られる水素含有ガスには、通常、目的とする水素ガスとともにCOが含まれる。
【0003】
このようなCOガスは、燃料電池、特に上記固体高分子型燃料電池等の低温作動型燃料電池において、電極として用いられる白金(白金触媒)を被毒しやすいので、燃料中にCOがあるレベル以上含まれていると発電性能が低下したり、濃度によっては全く発電ができなくなってしまうという重大な問題が発生する。
したがって、こうした白金系電極触媒を用いる燃料電池の燃料としては純粋な水素が好ましいが、上述のように、改質ガス中には、一般に、水素の他にかなりの濃度のCOが含まれているので、このCOを白金系電極触媒に無害なCO2 等に転化し、燃料電池の燃料中のCO濃度を減少させる技術の開発が強く望まれている。その際、COの濃度を、通常100ppm以下、好ましくは10ppm以下という低濃度にまで低減することが望ましいとされている。
上記の問題を解決するために、燃料電池の燃料ガス(改質ガス中の水素含有ガス)中のCOの濃度を低減させる手段の一つとして、下記の式(1)で表されるシフト反応(水性ガスシフト反応)を利用する技術が提案されている。
CO + H2 O = CO2 + H2 (1)
しかしながら、このシフト反応のみによる反応では、化学平衡上の制約からCO濃度の低減には限界があり、一般に、CO濃度を1%以下にするのは困難である。
【0004】
そこで、CO濃度をより低濃度まで低減する手段として、燃料ガス中に酸素又は酸素含有ガス(空気等)を導入し、COをCO2 に変換する方法が提案されている。しかしながら、この場合燃料ガス中には水素が多量存在しているため、COを酸化しようとすると水素も酸化されてしまい、CO濃度が十分に低減できないことがある。
この問題を解決するため、燃料ガス中に酸素又は酸素含有ガスを導入してCOをCO2 に酸化するに際し、COだけを選択的に酸化する触媒を使用する方法が考えられる。
COの酸化触媒としては、従来、Pt/アルミナ、Pt/SnO2 、Pt/C、Co/TiO2 、ポプカライト、Pd/アルミナなどの触媒系が知られているが、これらの触媒は対湿度耐性が十分でなく、反応温度域が低くかつ狭く、また、COの酸化に対する選択性が低いため、燃料電池の燃料ガスのような水素が多量に存在している中の少量のCOを10ppm以下の低濃度まで低減するためには、同時に大量の水素も酸化により犠牲にしなければならない。
特開平5−201702号公報には、水素富化CO含有ガスからCOを選択除去して自動車用燃料電池系に供給するためのCOを含まない水素含有ガスの製造方法が開示されている。ここでは、触媒として、アルミナ担体にRhもしくはRuを担持したものが使用されているが、低いCO濃度にしか適用できないという問題点がある。
また、特開平9−131531号公報には、チタニア担体にルテニウムと、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を担持してなる水素含有ガス中のCO除去用触媒が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、ルテニウム系触媒に用いるルテニウムは貴金属であるため、これを担持成分として用いる触媒は一般的に高価なものとなることから、ルテニウム成分を含有する触媒を工業的に有用なものとするためには、触媒性能のみならず触媒価格を低減させる必要がある。一方で、上記従来のルテニウム系触媒は担持ルテニウム当たりの触媒活性が実用的に十分でなく、更に高活性の触媒が望まれていた。
従って、水素含有ガス中のCOを広い反応温度範囲で効率よく選択的に酸化除去することができ、かつ担持ルテニウムあたりの触媒活性が著しく優れた触媒、及びこれを使用した水素含有ガス、特に燃料電池用に好適に適用できる水素含有ガスの製造方法が望まれていた。
本発明は、このような状況下でなされたものであり、活性成分としてルテニウム成分を用い、水素含有ガス中のCOを広い反応温度範囲で効率よく選択的に酸化除去することができるCO酸化触媒、及びこれを使用した水素含有ガス、特に燃料電池用に好適に適用できる水素含有ガスの製造方法を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた。その結果、従来のルテニウム系酸化触媒においては、ルテニウム成分が担体中に比較的均一に分散されているが、反応時において反応に寄与するルテニウム成分は、担体の外表面近傍に存在するもののみであり、内部に存在するルテニウム成分はほとんど反応に寄与しないことを見出した。そして、担体中における活性成分であるルテニウムを、担体の外表面側に多く分布させたものが、同一担持量であってもその触媒活性において著しく優れておりCO酸化触媒としてその目的に適合しうること、更に、この触媒を用いCO酸化除去処理することにより、燃料電池に好適に適用できる水素含有ガスが効率よく得られることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、無機耐火性担体に少なくともルテニウム成分を担持してなるCO酸化触媒において、該触媒の断面を、エレクトロンプローブ・マイクロアナリシス(EPMA)装置を用いて、一方向にルテニウム原子について線分析測定をして得られる断面幅方向距離r(中心から触媒表面までの距離)とX線強度Iとの関係を示す図において、上記rが一方の触媒表面−r0 から他方の触媒表面r0の間におけるI(r)の積分値N0から、−2/3r0から2/3r0の間におけるI(r)の積分値N1を減じた値をNとし、上記N0に対するNの割合S=(N/N0)×100の値が50以上であるCO酸化触媒であって、ルテニウム成分含有触媒調製液と担体とを室温乃至90℃の温度で1分〜10時間接触することを特徴とするCO酸化触媒の製造方法、及び、該方法により製造されたCO酸化触媒を用いて、水素含有ガス中のCOを除去することを特徴とする水素含有ガスの製造方法、を提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
図1に、本発明の触媒の一例の断面図及びその幅方向距離とX線強度の関係を示す。
本発明の炭化水素のCO酸化触媒は、無機耐火性担体に少なくともルテニウム成分を担持してなるCO酸化触媒において、該触媒の断面をエレクトロンプローブ・マイクロアナリシス(EPMA)装置を用いて、一方向にルテニウム原子について線分析測定をして得られる断面幅方向距離r(中心から触媒表面までの距離)とX線強度Iとの関係を示す図において、上記rが一方の触媒表面−r0 から他方の触媒表面r0 の間におけるI(r)の積分値N0 から、−2/3r0 から2/3r0 の間におけるI(r)の積分値N1 を減じた値をNとし、上記N0 に対するNの割合S=(N/N0 )×100の値が50以上、好ましくは55以上、更に好ましくは70以上であるものである。上記のルテニウム分布を有すること、すなわち、ルテニウム成分を担体の外表面側に多く分布させることにより、担持ルテニウム当たりの触媒活性が著しく優れたCO酸化触媒が得られる。
【0008】
本発明においては、上記担体が球状あるいは円柱状の形状を有するものであることが好ましい。従って、本発明におけるr(中心から触媒表面までの距離)とは、担体が球状の場合はその半径をいい、円柱状である場合はその底面に平行に切断した断面の半径をいう。球状及び円柱状の形状には、厳密にいう球及び円柱のみならず、その一部の形状が変形してはいるが実質的には球及び円柱とみなすことができるものも包含する。また、球状及び円柱状以外の他の形状の担体においても、上記球状及び円柱状の場合に準じて触媒を調製することにより本発明のルテニウム分布を達成することができる。
本発明に用いられる上記CO酸化触媒は通常その直径あるいは上記断面の直径が1〜10mm、更に2〜6mmであることが好ましい。触媒の径が上記範囲より小さい場合は、外表面担持の効果が十分でなく、また、上記範囲より大きい場合は触媒活性が十分でなく好ましくない場合がある。
【0009】
本発明のCO酸化触媒に用いられる担体としては無機耐火性担体が好ましい。このようなものとしては、例えばアルミナ、チタニア及びシリカから選ばれるものを挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明においては、特にアルミナとチタニアからなるものが触媒活性の点から好ましく用いられる。
これらの担体上に担持させる金属成分としては、ルテニウム成分が必須である。本発明においては、このルテニウム成分の多くを外表面側に存在せしめるが、ルテニウム源としては、例えば、RuCl3 ・nH2 O、Ru(NO3 3 、Ru2 (OH)2 Cl4 ・7NH3 ・3H2 O、K2 (RuCl5 (H2 O))、(NH4 2 (RuCl5 (H2 O))、K2 (RuCl5 (NO))、RuBr3 ・nH2 O、Na2 RuO4 、Ru(NO)(NO3 3 、(Ru3 O(OAc)6 (H2 O)3 )OAc・nH2 O、K4 (Ru(CN)6 )・nH2 O、K2 (Ru(NO2 4 (OH)(NO))、(Ru(NH3 6 )Cl3 、(Ru(NH3 6 )Br3 、(Ru(NH3 6 )Cl2 、(Ru(NH3 6 )Br2 、(Ru3 2 (NH3 14)Cl6 ・H2 O、(Ru(NO)(NH3 5 )Cl3 、(Ru(OH)(NO)(NH3 4 )(NO3 2 、RuCl2 (PPh3 3 、RuCl2 (PPh3 4 、(RuClH(PPh3 3 )・C7 8 、RuH2 (PPh3 4 、RuClH(CO)(PPh3 3 、RuH2 (CO)(PPh3 3 、(RuCl2 (cod))n 、Ru(CO)12、Ru(acac)3 、(Ru(HCOO)(CO)2 )n 、Ru2 4 (p−cymene)2 などのルテニウム塩が用いられ、これらを水、エタノール等に溶解させて得られる触媒調製液を用いてルテニウム成分を担体に担持することができる。上記ルテニウム塩のうち、好ましくは、取扱い上の点でRuCl3 ・nH2 O、Ru(NO3 3 、Ru2 (OH)2 Cl4 ・7NH3 ・3H2 Oが用いられる。
【0010】
ルテニウム成分の担体への担持は、該触媒調製液を用いて、通常の含侵法、共沈法、競争吸着法により行うことができる。この際、処理条件は、各種方法に応じて適宜選定すればよいが、通常、室温乃至90℃の温度で1分乃至10時間、担体を触媒調製液と接触させればよい。特に、担体の吸水量以下の水溶液で含浸後、直ちに乾燥することによって、本発明のルテニウム成分を外表面側に偏在せしめることができる。
ルテニウム成分の担持量は特に制限はないが、通常、担体に対してRuとして0.05〜10重量%が好ましく、特に0.5〜5重量%の範囲が最適である。このルテニウムの含有量が下限より少ないと、COの転化活性が不十分となり、一方、あまり高担持率にするとルテニウム成分の使用量が必要以上に過剰になり触媒コストが大きくなる。
担体にルテニウム成分を担持した後、乾燥を行う。乾燥方法としては、例えば自然乾燥、蒸発乾固法、ロータリーエバポレーターもしくは送風乾燥機による乾燥がいずれも使用可能である。乾燥後、通常、350〜550℃、好ましくは380〜500℃の温度で、2〜6時間、好ましくは2〜4時間焼成する。
【0011】
本発明においては、上記ルテニウム成分に、更に担持成分としてアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を用いることができる。
アルカリ金属としては、カリウム、ナトリウム、リチウム、セシウム、又はルビジウムが好適に用いられる。これらは単独で用いることもできるが、2種以上組み合わせて使用することもできる。
アルカリ金属源としては、K2 1016、KBr、KBrO3 、KCN、K2 CO3 、KCl、KClO3 、KClO4 、KF、KHCO3 、KHF2 、KH2 PO4 、KH5 (PO4 2 、KHSO4 、KI、KIO3 、KIO4 、K4 2 9 、KN3 、KNO2 、KNO3 、KOH、KPF6 、K3 PO4 、KSCN、K2 SO3 、K2 SO4 、K2 2 3 、K2 2 5 、K2 2 6 、K2 2 8 、K(CH3 COO)等のK塩;CsCl、CsClO3 、CsClO4 、CsHCO3 、CsI、CsNO3 、Cs2 SO4 、Cs(CH3 COO)、Cs2 CO3 、CsF等のCs塩;Rb2 1016、RbBr、RbBrO3 、RbCl、RbClO3 、PbClO4 、RbI、RbNO3 、Rb2 SO4 、Rb(CH3 COO)2 、Rb2 CO3 等のRb塩;Na2 4 7 、NaB1016、NaBr、NaBrO3 、NaCN、Na2 CO3 、NaCl、NaClO、NaClO3 、NaClO4 、NaF、NaHCO3 、NaHPO3 、Na2 HPO3 、Na2 HPO4 、NaH2 PO4 、Na3 HP2 6 、Na2 2 2 7 、NaI、NaIO3 、NaIO4 、NaN3 、NaNO2 、NaNO3 、NaOH、Na2 PO3 、Na3 PO4 、Na4 2 7 、Na2 S、NaSCN、Na2 SO3 、Na2 SO4 、Na2 2 5 、Na2 2 6 、Na(CH3 COO)等のNa塩;LiBO2 、Li2 4 7 、LiBr、LiBrO3 、Li2 CO3 、LiCl、LiClO3 、LiClO4 、LiHCO3 、Li2 HPO3 、LiI、LiN3 、LiNH4 SO4 、LiNO2 、LiNO3 、LiOH、LiSCN、Li2 SO4 、Li3 VO4 等のLi塩が用いられ、これらを水、エタノール等に溶解させて得られる触媒調製液を用いて上記アルカリ金属成分を担体に担持することができる。
【0012】
また、アルカリ土類金属としては、バリウム、カルシウム、マグネシウムおよびストロンチウムが好適に用いられる。これらは単独で用いることもできるが、2種以上組み合わせて使用することもできる。
アルカリ土類金属源としては、BaBr2 、Ba(BrO3 2 、BaCl2 、Ba(ClO2 2 、Ba(ClO3 2 、Ba(ClO4 2 、BaI2 、Ba(N3 2 、Ba(NO2 2 、Ba(NO3 2 、Ba(OH)2 、BaS、BaS2 6 、BaS4 6 、Ba(SO3 NH2 2 等のBa塩;CaBr2 、CaI2 、CaCl2 、Ca(ClO3 2 、Ca(IO3 2 、Ca(NO2 2 、Ca(NO3 2 、CaSO4 、CaS2 3 、CaS2 6 、Ca(SO3 NH2 2 、Ca(CH3 COO)2 、Ca(H2 PO4 2 等のCa塩;MgBr2 、MgCO3 、MgCl2 、Mg(ClO3 2 、MgI2 、Mg(IO3 2 、Mg(NO2 2 、Mg(NO3 2 、MgSO3 、MgSO4 、MgS2 6 、Mg(CH3 COO)2 、Mg(OH)2 、Mg(ClO4 2 等のMg塩;SrBr2 、SrCl2 、SrI2 、Sr(NO3 2 、SrO、SrS2 3 、SrS2 6 、SrS4 6 、Sr(CH3 COO)2 、Sr(OH)2 等のSr塩が用いられ、これらを水、エタノール等に溶解させて得られる触媒調製液を用いて、アルカリ土類金属成分を担体に担持することができる。
【0013】
アルカリ金属成分、アルカリ土類金属成分は、上記触媒調製液を用いて、通常の含浸法、共沈法、競争吸着法により担体に担持することができる。この際、処理条件としは、各種方法に応じて適宜選定すればよいが、通常、室温乃至90℃の温度で1分〜10時間、担体を触媒調製液と接触させることで行うことができる。なお、ルテニウム、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の担持はどの順序で行ってもよいし、同時に行うことが出来る場合には同時に行ってもよい。
アルカリ金属、アルカリ土類金属の担持量は特に制限はないが、各々、通常、担体に対して金属として0.01〜10重量%が好ましく、特に0.03〜3重量%の範囲が最適である。これらの金属の含有量が下限より少ないと、COの選択的酸化活性が不十分となり、一方、あまり高担持率にした場合もCOの選択的酸化活性が不十分となるとともに金属の使用量が必要以上に過剰になり触媒コストが大きくなる。
担体に上記アルカリ金属、アルカリ土類金属を担持した後、乾燥を行う。乾燥方法としては、例えば自然乾燥、蒸発乾固法、ロータリーエバポレーターもしくは送風乾燥機による乾燥等を行うことができる。乾燥後、通常、350〜550℃、好ましくは380〜500℃の温度で、2〜6時間、好ましくは2〜4時間焼成を行う。
なお、本発明の触媒は、たとえば触媒そのものを押出成形等により成形してもよいし、ハニカムやリング状などの基体に触媒を付着させる方法でもよく、その方法については特に限定されない。
【0014】
つぎに、上記本発明の触媒を用いて水素を主成分とするガス中の一酸化炭素を酸素により酸化し、一酸化炭素の低減された水素含有ガスを製造する方法についいて説明する。
上述のように調製された触媒は通常焼成されているので担持金属は酸化物の状態で存在する。通常は、この触媒を使用前に水素還元により還元する。水素還元は、通常、水素気流下、250〜550℃、好ましくは300〜530℃の温度で、1〜5時間、好ましくは1〜2時間行う。
以上のようにして得られる触媒により、水素を主成分とし、かつ少なくともCOを含有する水素含有ガスに酸素を添加して、COの酸素による選択的酸化反応を行う。本発明のCOの酸化方法は、水素製造用原料を改質または部分酸化することによって得られる水素を主成分とするガス(改質ガス等という、以下同じ)中のCOを選択的に除去するのに好適に利用され、燃料電池用水素含有ガスの製造に利用されるが、これに限定されるものではない。
【0015】
1.水素製造用原料の改質または部分酸化工程
本発明においては、各種の水素製造用原料の改質等によって得られる改質ガス等に含まれるCOを触媒を用いて酸素により選択的に酸化除去し、CO濃度が十分に低減された所望の水素含有ガスを製造する。該改質ガス等を得るための工程は、以下に示すように、従来の水素製造工程、特に燃料電池システムにおける水素製造工程において従来実施あるいは提案されている方法など任意の方法によって行うことができる。したがって、予め改質装置等を備えた燃料電池システムにおいては、それをそのまま利用して改質ガス等を調製してもよい。
水素製造用原料とは、水蒸気改質や部分酸化により水素に富んだガスを製造できる炭化水素類、すなわちメタン、エタン、プロパン、ブタン等の炭化水素、あるいは天然ガス(LNG)、ナフサ、ガソリン、灯油、軽油、重油、アスファルト等の炭化水素系原料、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、蟻酸メチル、メチルターシャリーブチルエーテル、ジメチルエーテルなどの含酸素化合物、更には、各種の都市ガス、LPG、合成ガス、石炭などがあげられる。これらのうち、どのような水素製造用原料を用いるかは、燃料電池システムの規模や原料の供給事情などの諸条件を考慮して定めればよいが、通常は、メタノール、メタンもしくはLNG、プロパンもしくはLPG、ナフサ、灯油もしくは低級飽和炭素、都市ガスなどが好適に使用される。
【0016】
また一般に、これらの原料炭化水素中に硫黄分が存在する場合は、脱硫工程を通して、通常、硫黄分が0.1ppm程度以下になるまで脱硫を行うことが好ましい。原料炭化水素中の硫黄分が0.1ppm程度より多くなると、改質触媒が失活する原因となることがある。脱硫方法は特に限定されないが、水添脱硫,吸着脱硫などを適宜用いることができる。
改質または部分酸化に属する技術(以下、改質反応等という。)としては、水蒸気改質をはじめ部分酸化、水蒸気改質と部分酸化の複合化したもの、オートサーマル改質、その他の改質反応などを挙げることができる。通常、改質反応等としては、水蒸気改質(スチームリホーミング)が最も一般的であるが、原料によっては、部分酸化やその他の改質反応(例えば、熱分解等の熱改質反応、接触分解やシフト反応等の各種接触改質反応など)も適宜適用することができる。その際、異なる種類の改質反応を適宜組み合わせて利用してもよい。
以下、代表的な改質反応として水蒸気改質を中心に説明する。
このような改質反応は、一般に、水素の収率ができるだけ大きくなるように、触媒や反応条件等を選定するが、COの副生を完全に抑制することは困難であり、たとえシフト反応を利用しても改質ガス中のCO濃度の低減には限界がある。実際、灯油等の炭化水素の水蒸気改質反応については、水素の得率及びCOの副生の抑制のために、次の式(2)あるいは式(3):
CH4 + 2H2 O → 4H2 + CO2 (2)
Cn Hm + 2nH2 O →(2n+m/2)H2 +nCO2 (3)
で表される反応ができるだけ選択性よく起こるように諸条件を選定するのが好ましい。
【0017】
更に、COを前記(1)式で表されるシフト反応を利用して変成改質してもよい。しかし、このシフト反応は平衡反応であるのである程度の濃度のCOが残存する。したがって、こうした反応による改質ガス等(本発明の原料である水素を主成分とするガス、以下同じ)中には、通常、多量の水素の他にCO2 や未反応の水蒸気等と若干のCOが含まれることになる。
前記改質反応に有効な触媒としては、原料の種類や反応の種類あるいは反応条件等に応じて多種多様なものが知られている。その中のいくつかを具体的に例示すると、炭化水素類の接触改質反応や部分酸化に有効な触媒として、例えば、担持Ru系触媒、担持Pt系触媒、担持Ni系触媒などを挙げることができる。
改質反応の条件は、用いる原料、改質反応、触媒、反応装置の種類あるいは反応方式等の条件によって異なるので適宜定めればよい。いずれにしても、原料の転化率を十分に(好ましくは100%あるいは100%近くまで)大きくし、かつ、水素の得率ができるだけ大きくなるように諸条件を選定するのが望ましい。また、必要に応じて、未反応の炭化水素やアルコール等を分離しリサイクルする方式を採用してもよい。また、必要に応じて、生成したあるいは未反応のCO2 や水分等を適宜除去してもよい。
【0018】
2.COの選択的酸化(転化)除去工程
上記のようにして、水素含有量が多く、かつ、炭化水素やアルコール等の水素以外の原料成分が十分に低減された所望の改質ガスを得ることができる。
本発明の水素含有ガスの製造方法は、水素を主成分とし少量のCOを含む原料ガス(改質ガス等)に酸素を添加してCOを選択的に酸化(転化)してCO2 とするものであり、水素の酸化は極力抑える必要がある。また、生成したり、原料ガス中に存在したCO2 のCOへの転化反応(原料ガス中には水素が存在するので、逆シフト反応が起こる可能性がある。)を抑えることも必要である。本発明の触媒は、通常、還元状態で使用されるので、還元状態に至っていない場合は水素による還元操作を行っておくことが好ましい。本発明の触媒を使用することにより、CO2 含有量の低い原料ガスに対してCOの選択的酸化除去に良好な成績を示すことは勿論、CO2 含有量が多い条件でも良好な成績が得られる。通常、燃料電池システムにおいては一般的なCO2 の濃度の改質ガス等、すなわち、CO2 を5〜33容量%、好ましくは10〜25容量%、更に好ましくは15〜20容量%含有するガスが用いられる。
【0019】
一方、水蒸気改質等により得られる原料ガス中には、通常、スチームが存在するが、原料ガス中のスチーム濃度は低い方がよい。通常は、5〜30%程度含まれておりこの程度であれば問題はない。
また、本発明の触媒を使用すると、CO濃度が低い(0.6容量%以下)原料ガス中のCO濃度も有効に低減でき、CO濃度が比較的高い(0.6〜2.0容量%)原料ガス中のCO濃度も好適に低減することができる。
本発明においては、本発明の触媒を用いることにより原料ガス中にCO2 が15%容量以上存在するような条件でも60〜300℃という比較的高い温度を含む温度域においてCOの選択転化除去を効率的に行うことができる。また、COの転化除去反応は同時に起こる副反応の水素の酸化反応と同様、発熱反応であり、そこで発熱した熱を回収して燃料電池内で活用することは発電効率を向上させる上で効果がある。
改質ガス等に酸素ガスを添加する場合、通常、純酸素(O2 )、空気あるいは酸素富化空気が好適に使用される。該酸素ガスの添加量は、酸素/CO(モル比)が好ましくは、0.5〜5、更に好ましくは1〜4となるように調整するのが適当である。この比が小さいとCOの除去率が低くなり、大きいと水素の消費量が多くなり過ぎて好ましくない。
反応圧力は特に限定されないが、燃料電池の場合は通常、常圧乃至1MPa・G、好ましくは常圧乃至0.5MPa・Gの圧力範囲で行う。反応圧力をあまり高く設定すると、昇圧のための動力をその分大きくする必要があるので経済的に不利になるし、特に、1MPa・Gを超えると高圧ガス取締法の規制を受けるし、また、爆発限界が広がるので安全性が低下するという問題も生じる。
【0020】
前記反応は、通常、60℃以上、好ましくは、60〜300℃という非常に広い温度範囲で、CO転化反応に対する選択性を安定的に維持しつつ、好適に行うことができる。この反応温度が60℃未満では反応速度が遅くなるので実用的なGHSV(ガス体積空間速度)の範囲ではCOの除去率(転化率)が不十分となりやすい。
また、前記反応は、通常、GHSV(供給ガスの標準状態における供給体積速度を使用する触媒層のみかけの体積で割った値=ガス空間速度)を5000〜100000hr-1の範囲に選定して行うのが好適である。ここで、GHSVを小さくすると多量の触媒が必要となり、一方、GHSVをあまり大きくするとCOの除去率が低下する。このため、GHSVは、好ましくは、6000〜60000hr-1の範囲に選定する。このCOの転化除去の工程におけるCOの転化反応は発熱反応であるため、反応により触媒層の温度が上昇する。触媒層の温度が高くなりすぎると、通常、触媒のCO転化除去の選択性が悪化する。このため、少量の触媒上であまり多くのCOを短時間で反応させることは好ましくない。その意味からもGHSVは大きすぎない方がよい場合もある。
このCOの転化除去に用いる反応装置としては、特に制限はなく、上記の反応条件を満たせるものであれば各種の形式のものが適用可能であるが、この転化反応は発熱反応であるので、温度制御を容易にするために反応熱の除去性のよい反応装置もしくは反応器を用いることが望ましい。具体的には、例えば、多管型、あるいは、プレートフィン型等の熱交換型の反応器が好適に使用される。場合によっては、冷却媒体を触媒層内に循環したり、触媒層の外側に冷却媒体を流通させたりする方法を採用することができる。
【0021】
こうして本発明の方法によって製造された水素含有ガスは、上記のようにCO濃度が十分に低減されているので燃料電池の白金電極触媒の被毒及び劣化を十分に低減することができ、その寿命及び発電効率・発電性能を大幅に向上することができる。また、このCOの転化反応により発生した熱を回収することも可能である。また、比較的高濃度のCOを含む水素含有ガス中のCO濃度を十分に低下することができる。燃料電池用の水素含有ガス中のCO濃度は100容量ppm以下、好ましくは50容量ppm以下、さらに好ましくは10容量ppm以下であることが望ましいが、本発明の方法によれば広い反応条件下でこれを達成することは十分可能である。
本発明により得られた水素含有ガスは、各種のH2 燃焼型燃料電池の燃料として好適に使用することができ、特に、少なくとも燃料極(負極)の電極に白金(白金触媒)を用いるタイプの各種のH2 燃焼型燃料電池(リン酸型燃料電池、KOH型燃料電池、固体高分子型燃料電池をはじめとする低温作動型燃料電池など)への供給燃料として有利に利用することができる。
なお、従来の燃料電池システムの改質装置(改質装置の後に変成装置が有る場合、その変成装置も改質装置の一部とみなす)と燃料電池の間に、本発明の方法に従った酸素導入装置と反応装置を組み込むことによって、あるいは、すでに酸素導入装置と転化反応装置を具備しているものではCOの転化除去触媒として前記触媒を用い反応条件を前記のように調整することによって、従来に比べ優れた燃料電池システムを構成することが可能となる。
【0022】
【実施例】
次に、本発明を実施例により、さらに具体的に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、各例で得られた触媒のSの値及び選択酸化反応後のCO濃度は、下記の方法により測定した。
<Sの測定>
球状触媒の球の中心を通る断面、あるいは円柱状触媒の円柱底面と平行に切断した断面において、触媒表面からその半径の3分の1の距離までの外周部分に含まれるRu金属の量を電子線マイクロアナライザー(EPMA)を用いて線分析して得た値をNとし、触媒全体に含まれるRu金属の線分析値をNoとした時のSの値を、S=(N/No)×100(%)の式から求めた。
<CO濃度の測定>
各触媒10ccを内径25mmの石英反応管に充填した。反応管内で触媒を500℃で1時間水素による還元処理を行なった後、GHSV:10000h-1の条件で下記水素含有ガスA,Bを入り口温度100℃で導入し、CO選択酸化反応を実施した。得られたガスをサンプリングしてガスクロマトグラフィーにてCO濃度を測定した。結果を第1表に示す。
Figure 0005164297
【0023】
実施例1
硝酸ルテニウム(Ru(NO3 3 )水溶液(Ru金属として50g/リットル)2ミリリットルを50ミリリットルビーカーにとり、これにイオン交換水1.6ミリリットルを入れ、均一になるまで攪拌した。
別の50ミリリットルビーカーにアルミナ担体KHD24(住友化学製、直径2〜4mmの球状)10gをはかりとった。
該アルミナ担体に上記調製した硝酸ルテニウム水溶液を、ガラス棒で担体をよくかき混ぜながら滴下した後、更に、1分間程度よくかき混ぜた。次いで、3時間室温に放置した後乾燥器に入れ、120℃で24時間乾燥して、アルミナ担体にRuを1.0重量%担持した触媒を得た。
比較例1
硝酸ルテニウム(Ru(NO3 3 )水溶液(Ru金属として50g/リットル)5ミリリットルを50ミリリットルビーカーにとり、これにエタノール10ミリリットルと水10ミリリットルを入れ攪拌した。
別の50ミリリットルビーカーにアルミナ担体KHD24(住友化学製、直径2〜4mmの球状)10gをはかりとった。
上記調製した硝酸ルテニウム溶液に該アルミナ担体を浸漬し、そのまま12時間程放置した。得られた触媒をビーカーから取り出し、3時間室温で放置した後乾燥器に入れ、120℃で24時間乾燥して、アルミナ担体にRuを1.1重量%担持した触媒を得た。
【0024】
実施例2
ルチル型チタニア(TiO2 、石原産業(株)製、CR−EL、表面積:7m2 /g)160gと擬ベーマイトアルミナ粉末(触媒化成工業株式会社製、Cataloid−AP)59.7gを混合し、イオン交換水とともに混練機で加温下で十分混練し、押出成形に適する程度に水分を調整した。これを押出成形機で直径2mm、長さ0.5〜1cmの円柱状に成形し、乾燥機で120℃、24時間乾燥した。続いて、焼成炉で500℃、4時間焼成してチタニア/アルミナ担体を得た。チタニア/アルミナの重量比は80/20であった。
塩化ルテニウム(RuCl3 ・nH2 O、Ru金属含有量:38.03重量%)0.263gをビーカーにはかりとる。これに、硝酸カリウム(KNO3 )0.259gを入れ、更にイオン交換水1ミリリットルを加え溶解させた。
別の50ミリリットルビーカーに上記調製した担体10gをはかりとり、これに上記調製したルテニウム溶液をかき混ぜながら注いだ後、放置することなく乾燥器にいれ120℃で1晩乾燥した。更に、焼成炉に入れ500℃で4時間焼成して、チタニア/アルミナ担体にRuを1重量%、Kを0.1重量%担持した触媒を得た。
【0025】
実施例3
実施例2において、担体にルテニウムおよびカリウム含有溶液を注いだ後、乾燥器にいれる前に3時間室温放置を行った以外は実施例2と同様にしてチタニア/アルミナ担体にRuを1重量%、Kを0.1重量%担持した触媒を得た。
比較例2
実施例2において、塩化ルテニウムと硝酸カリウムを溶解させるイオン交換水を2倍量の2ミリリットルとし、真空含浸装置のフラスコに実施例2で調製したチタニア/アルミナ担体10gをはかりとり、該真空含浸装置の内部をロータリポンプで排気した後、上記調製したルテニウム及びカリウム含有溶液を注ぎ含浸操作を行った。次いで、真空含浸装置を常圧に戻し、室温で3時間放置した後、実施例2と同様にして乾燥、焼成を行い、チタニア/アルミナ担体にRuを1重量%、Kを0.1重量%担持した触媒を得た。
【0026】
【表1】
Figure 0005164297
【0027】
【発明の効果】
本発明の触媒によれば、担持ルテニウム当たりの触媒活性が著しく優れ、水素を主成分とするガス中のCOを広い温度範囲にわたって効率よく選択的に転化除去することが可能であり、水素−酸素型の燃料電池の水素極の白金のCOによる被毒を防止することができ、電池を長寿命化させるとともに出力の安定性も向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のCO酸化触媒の一例の断面図、及び幅方向距離とX線強度の関係を示す図である。

Claims (6)

  1. 無機耐火性担体に少なくともルテニウム成分を担持してなるCO酸化触媒において、該触媒の断面を、エレクトロンプローブ・マイクロアナリシス(EPMA)装置を用いて、一方向にルテニウム原子について線分析測定をして得られる断面幅方向距離r(中心から触媒表面までの距離)とX線強度Iとの関係を示す図において、上記rが一方の触媒表面−r0 から他方の触媒表面r0の間におけるI(r)の積分値N0から、−2/3r0から2/3r0の間におけるI(r)の積分値N1を減じた値をNとし、上記N0に対するNの割合S=(N/N0)×100の値が50以上であるCO酸化触媒の製造方法であって、担体の吸水量以下の硝酸ルテニウム水溶液と担体とを室温乃至90℃の温度で1分〜10時間接触させることを特徴とするCO酸化触媒の製造方法。
  2. 得られた触媒が、球状あるいは円柱状の形状を有する請求項1に記載のCO酸化触媒の製造方法。
  3. 無機耐火性担体が、アルミナ、チタニア及びシリカから選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2に記載のCO酸化触媒の製造方法。
  4. 担体に、更にアルカリ金属成分及び/又はアルカリ土類金属成分を担持してなる請求項1〜3のいずれかに記載のCO酸化触媒の製造方法。
  5. アルカリ金属が、カリウム、ナトリウム、リチウム、セシウム又はルビジウムである請求項に記載のCO酸化触媒の製造方法。
  6. アルカリ土類金属が、バリウム、カルシウム、マグネシウムまたストロンチウムである請求項に記載のCO酸化触媒の製造方法。
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