JP4617499B2 - Ito粉体およびその製造方法、透明導電材用塗料、並びに透明導電膜 - Google Patents
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Description
塗布法による塗膜は、スパッタリング法などの物理的方法に比べて導電性が多少低いものの、真空装置などの高価な装置を用いることなく大面積や複雑形状の成膜が可能であり、低コストになる利点がある。更に、この塗布法の中でも、粒子分散液による方法は、塗布膜を熱分解させる必要がある有機化合物塗布法に比べ、比較的低温プロセスで成膜でき、良好な導電性も得られることから、ブラウン管の電磁波シールド膜として広く用いられており、LCDやELなどの表示デバイスへの応用も検討されている。
その他には、インジウム系水酸化物の分散液を乾燥し、ついで通常500℃以上の高温で加熱処理(焼成)して結晶化させる方法が提案されている。
10nm以下の1次粒子径を有するITO粒子の個数割合が5%以上、且つ、ITO粒子の50%体積平均径が60nm以下、且つ、ITO粒子の90%体積粒径が100nm以下であり、
10nm以下の1次粒子径を有し、粒子相互間の接触がないITO粒子の個数割合が50%以上、且つ、ITO粒子の体積平均径が50nm以下であることを特徴とするITO粉体である。
粒子相互間の接触がないITO粒子の個数割合が、70%以上あることを特徴とする第1の構成に記載のITO粉体である。
BETから求められる粒子径をR1、結晶子径から求められる粒子径をR2としたとき、
0.6≦R2/R1≦1
であることを特徴とする第1または第2の構成のいずれかに記載のITO粉体である。
第1から第3の構成のいずれかに記載のITO粉体であって、当該ITO粉体を含む圧粉体の熱収縮開始温度が300℃以下であることを特徴とするITO粉体である。
第4の構成に記載のITO粉体であって、当該ITO粉体を含む圧粉体の熱収縮率が少なくとも0.7%以上であることを特徴とするITO粉体である。
スズを含有するインジウム水酸化物を、240℃以上の沸点を有する有機溶媒中において、240℃以上350℃以下の温度で加熱処理して、前記有機溶媒を蒸発させながら、還流させることにより、ITOを得ることを特徴とするITOの製造方法である。
前記有機溶媒として、分子一個あたりにOH基を一個以上有する有機溶媒を用いることを特徴とする第6の構成に記載のITOの製造方法である。
前記有機溶媒として、ポリオールを用いることを特徴とする第7の構成に記載のITOの製造方法である。
前記有機溶媒として、テトラエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールの中から選ばれる少なくとも一つ以上の溶媒を用いることを特徴とする第8の構成に記載のITOの製造方法である。
第1から第5の構成のいずれかに記載のITO粉体を含むことを特徴とする透明導電材用塗料である。
第10の構成に記載の透明導電材用塗料をガラス基板上へ膜厚200nmで成膜して、ITO塗布ガラス基板としたとき、
当該透明導電膜のヘイズの値が1.0%以下、全光透過率が90%以上であることを特徴とする透明導電材用塗料である。
第6から第9の構成のいずれかに記載のITOの製造方法において得られる、ITOを分散した有機溶媒の当該有機溶媒を、適宜な溶媒に置換することを特徴とする透明導電材用塗料の製造方法である。
第10または第11の構成に記載の透明導電材用塗料を用いて製造されることを特徴とする透明導電膜である。
透明導電膜においては、その透明性が重要な特性である。膜が透明であるための条件としては、入射光に対して反射が少なく、可視域での吸収がなく散乱が無いことが要求される。散乱に関しては、散乱源となる粉体が1種類の物質であるならば、当該粉体の粒子径と対象光の波長とに依存し、ミー散乱、レイリー散乱の式により計算できる。
Ks=(4π5/3λ4)×d×[(M2−1)/(M2+2)]
Ks:散乱係数、λ:波長、d:粒子径、M=n0/n1、
n0:物質の屈折率、n1:媒体の屈折率
ここで、可視域の波長が0.4〜0.8μmであることより、粉体の粒子径を0.1μm以下にし、均一に分散させることで、この粒子からなる粉体を可視光に対して透明にすることができることが判る。
即ち、ITO粉体に含まれるITO粒子径が単純に小さいだけでは、透明導電膜の高透明性を確保できない。例えば、ITO粒子径が小さくても、それらが凝集して100nm以上の粒子となると、当該ITO粉体を塗料にしたときの分散性が悪化して、ITO粒子が沈降してしまう。この結果、当該塗料を用いて透明導電膜を成膜した際、当該透明導電膜においてヘイズの値が低下しない。即ち、ITO粒子相互間に焼結もしくは凝集があると、ITO塗料としたときの分散性が低下し、得られる透明導電膜においてヘイズの値が低下しないのである。従って、塗布による透明導電膜の作製においては、その塗布液中におけるITO粒子の分散性が重要であるが、本実施形態で作成したITO粒子を含むITO塗料は、分散性が良好である。さらに、一般的なITO塗料においては、ITO粒子の分散性向上のために分散剤が添加されているが、本実施形態にかかるITO粉体を用いた場合は、ITO粒子が微粒子であって、且つ、粒子間の接触がなく独立した粒子として存在するので、分散剤を使用せずとも、均一でムラがなくヘイズの値の低いITO塗膜を得ることができる。そして、ヘイズと全光線透過率とに関しては、粒子相互間の接触がないITO粒子の個数割合が、70%以上あることにより、ヘイズ値は減少し、全光線透過率は増加することを見出した。
一方、R2/R1=1であれば、結晶子径がBET径から求められるITO粒子径と同じになり、結晶性が良い粒子(理論的な上限)となることが出来る。
本実施形態に係るITO粒子の生成機構について説明する。
本実施形態に係るITO粒子は、スズを含有しインジウムを主成分とした前駆体を、有機溶媒中で、240℃以上350℃以下の温度で加熱処理することで生成させる。上記インジウムを主成分とした前駆体の好ましい例は、スズを含有するインジウム水酸化物である。
本実施形態に係るスズ含有酸化インジウムを含む透明導電材用塗料において溶媒は、水、極性をもつ有機溶媒、または、それらの混合溶媒が適宜な溶媒である。これは、ITO粒子表面が極性を持ち、且つ親水性であるため、透明導電材用塗料を形成しているときには、溶媒中に水のような極性溶媒が存在するものが、適宜な溶媒となるからでである。
そこで、上述の工程において得られたITOを分散した有機溶媒の当該有機溶媒を、これら適宜な溶媒に置換することで、容易に透明導電材用塗料を製造することが出来る。当該溶媒置換の方法としては、まず、ITOと、これを分散した有機溶媒とを分離した後、ITOを適宜な溶媒へ再分散させれば良い。
また、ITOと、これを分散した有機溶媒とを分離せず、当該有機溶媒を所謂溶媒置換の手法を用いて、適宜な溶媒に置換しても良い。当該溶媒置換の手法を用いた場合は、工程が短縮可能で、使用エネルギーが少なくて済むメリットがある。
次に、本実施形態のITO粒子の製造方法について説明する。
<原料>
スズ含有水酸化インジウムは、一般的には、スズ塩とインジウム塩と純水とを混合して水溶液とし、当該スズ塩とインジウム塩との混合水溶液とアルカリとを反応させて、水酸化スズと水酸化インジウムとのスラリーを生成させる。ここで、スズ塩としては塩化スズが、インジウム塩としては塩化インジウム塩が好ましく用いられる。アルカリとしては、水酸化スズと水酸化インジウムとのスラリー生成後における不純物の低減の観点より、アンモニアを用いることが望ましい。
本実施形態で用いる有機溶媒は、その沸点が240℃以上、好ましくは260℃以上であれば良い。そして、本実施形態で用いる有機溶媒は、少なくとも1分子当たりにOH基を1個以上持つ溶媒が好ましい。中でも多価アルコールが好ましく、さらに好ましいのは、テトラエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールである。しかしこれらの溶媒に限られず、沸点が240℃以上、さら好ましくは260℃以上を有する、多価アルコール、または、多価アルコールの誘導体、さらにはイオン性液体でも良い。これらの有機溶媒は、1種のみではなく、2種以上を混合して用いても良い。出発原料であるスズ含有水酸化インジウムは親水性であるため、このような有機溶媒を用いることで、当該有機溶剤が粒子表面に吸着され、作製されるITO粒子の分散性の向上に寄与しているのであると考えられる。
本実施形態で使用される加熱装置として、例えば、マントルヒーター、リボンヒーター、オイルバス等が挙げられるが、350℃まで加熱可能な、多様な加熱装置が適用可能である。
本実施形態で使用される反応器は、350℃に耐えうる反応器であればよい。但し、加熱処理中に有機溶媒が蒸気となって若干揮発することを考慮すると、還流手段を有する反応器であることが好ましい。
固液分離は、本実施形態における有機溶媒中での加熱処理後に生成したITO粒子を回収する工程である。
当該固液分離には、遠心分離法や吸引ろ過法が適用可能だが、本実施形態で生成したITO粒子は分散性が良いので、吸引ろ過法を適用する場合は、凝集剤の添加するなどして2次凝集を起こさせる必要がある。ここで、余分な薬剤の添加を避ける観点からは、遠心分離法の適用が好ましいと考えられる。当該遠心分離の条件例としては、4000rpm、1時間が挙げられる。
洗浄は、生成したITO粒子から不純物を除去するために実施される。具体的には、上述した有機溶媒中での加熱処理後に、遠心分離法等によりITO粒子と有機溶媒とを分離し、当該分離されたITO粒子へ洗浄液を添加する。洗浄液としては、純水、極性を持った有機溶媒、または、それらの混合液等が好ましく適用できる。当該洗浄液を添加した後に、ITO粒子を洗浄するための超音波分散を行う。このとき、ホモミクサー等による強制撹拌を併用してもよい。超音波分散後は、再度遠心分離機にかけて固液分離する。このときの遠心分離の条件例として、4000rpm、1時間が挙げられる。上述した、遠心分離−洗浄液添加−超音波分散を1洗浄単位とし、当該洗浄単位を繰り返し実施することにより、ITO粒子中の不純物を低減することができる。繰り返しの回数は、1回以上、好ましくは3回以上である。
上述したITO粒子への洗浄を終了した後、ITO分散液を得るために、溶媒置換を実施する。溶媒置換する際の置換液は、その沸点が300℃以下、好ましくは200℃以下である溶媒が使用できる。沸点が300℃以下であれば、ITO塗布液を塗布して塗膜焼成する際に揮発し残留しないので、結果的に表面抵抗が増大せず、ヘイズの悪化を回避できるからである。ITO分散液を得るための溶媒としては、純水、極性をもった有機溶媒、または、それらの混合液等が好ましく適用できる。当該溶媒置換も、洗浄のところで説明した、遠心分離−洗浄液添加−超音波分散、の1洗浄単位を適用して実施すれば良い。または、所謂溶媒置換の手法を用いても良い。
本実施形態に係るITO分散液の塗膜化に際しては、スクリーン印刷、スピンコート、ディップコート、ロールコート、刷毛コート、スプレーコート等の公知の方法を用いることが出来る。例えば、当該ITO分散液を基板上に塗布する場合には、当該基板材料として、有機高分子、プラスチック、ガラス等をあげることができ、当該基板形状としてはフィルム状のものが一般的である。特に、タッチパネルのようにフレキシビリティを要求される基板には高分子フィルムが好ましく、当該高分子フィルムには、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンタフタレート(PEN)、ポリイミド、アラミド、ポリカーボネート等のフィルムを用いることが出来る。
成膜された本実施形に係るITO粉体を含む透明導電膜は、透明度が高く、ヘイズの値が小さく、抵抗値が小さい透明導電膜であった。
インジウム濃度が18.45wt%の塩化インジウム水溶液(InCl3)366gと、塩化スズ(SnCl2)22gとを秤量し、純水に溶解して、塩化インジウムと塩化スズとの混合溶液1.5Lを調製した。なお、当該混合溶液においてスズの濃度はインジウムとスズの合計に対して15mol%となっている。
一方、濃度25wt%のNH3水溶液275gを純水2100gで希釈し、液温を50℃とした。なお、当該NH3水溶液において、NH3量は、前記塩化インジウムと塩化スズとの混合溶液を中和するのに必要な量の2倍当量である。
当該NH3水溶液を撹拌し、ここに前記塩化インジウムと塩化スズとの混合溶液を3分間かけて添加し、スズ含有水酸化インジウムの懸濁液とした。生成したスズ含有水酸化インジウムの懸濁物を遠心分離法により濾過収集し、純水により洗浄して、スズ含有水酸化インジウムのケーキを得た。当該スズ含有水酸化インジウムのケーキを100℃で6時間、乾燥して、インジウムを主成分とした前駆体(スズ含有水酸化インジウム)を得た。
当該固液分離の後、テトラエチレングリコールを除去し、代わりにメタノールを添加して超音波分散を行った後、遠心分離−洗浄液添加−超音波分散の1洗浄単位を3回実施した。本実施例おいては、洗浄用の溶媒と分散用の溶媒とに、同じメタノールを使用したので、洗浄完了と同時に溶媒置換も完了し、ITO分散液を得た。実施例1に係る製造方法のポイントを表1に記載した。
ITO粒子の粒径測定は、当該ITO粒子のTEM写真における1次粒子の画像の大きさを測定することにより算出した。このとき、重なっている1次粒子や、1次粒子間で接触(固着)の著しいものは、測定対象外とした。一方、単純に1次粒子表面で接触している複数の1次粒子は、その複数1次粒子の輪郭が容易に分かるため測定対象とした。TEM写真は20万倍の写真を使用した。測定に際しては、当該ITO1次粒子において長さが最大となる部分を決め、当該部分の長さを測定し、その測定値を直径(粒径)とした。なお、測定対象とする1次粒子の数は100個とした。
上記1次粒子粒径の測定(その1)では、TEM写真上の1次粒子において、1次粒子表面のみで単純に接触している複数の1次粒子の粒子径は、その輪郭が容易に判断できるために測定対象としていたが、当該1次粒子粒径の測定(その2)では、1次粒子相互間で接触が全くない1次粒子のみを対象とした。すなわち、完全に単分散している1次粒子のみを測定対象とした。TEM写真は、1次粒子粒径の測定(その1)と同様に、20万倍の写真を使用し、測定に際しては、当該ITO粒子において長さが最大となる部分を決め、当該部分の長さを測定し、その測定値を当該1次粒子の直径(粒径)とした。なお、測定する1次粒子の数は100個とした。
上述したITO1次粒子の粒子径の測定結果に基づいて、(その1)と(その2)のそれぞれの測定方法で体積平均径を求めた。90%体積径は、(その1)の方法で求めた。
体積平均径(50%の体積粒径を与える粒子径)、および90%体積粒径(90%の体積粒径を与える粒子径)を求めた。なお、体積平均径を算出する際の体積は、立方体近似とした。具体的には、試料粉体中に含まれるITO1次粒子の最大1次粒径と最小1次粒径との間を10〜20の粒子径区分に分け、体積頻度分布表から粒度分布曲線を作成する。この粒度分布曲線から、体積平均径および90%体積粒径を求めた。
個数割合の算出方法(その1)では、ITOの1次粒子数を100個測定した際の、所定粒径を有するITO粒子の存在割合を算出した。例えば、ITOの1次粒子を100個測定して、1次粒子径が10nm以下の粒子が50個測定されたとすると、その個数割合は50%とした。
ITO粒子を撮影した倍率が20万倍のTEM写真を準備し、当該写真中で任意に設定した200×200nmの視野において、焼結せず独立している1次粒子および1次粒子群の数を数えた。ここでいう1次粒子群とは、1次粒子同士が接触して複数の1次粒子となり粗大化した粒子のことをいう。当該個数割合の算出方法は、独立している1次粒子と1次粒子群に対し、独立している1次粒子の数を数えて、その割合を算出したものである。ここで、測定する1次粒子および1次粒子群は、200×200nmのTEM写真上の視野において、50個以上100個未満の粒子観察して行った。
例えば、TEM写真の200×200nmの視野において、独立している1次粒子および1次粒子群の数が、80個であったとする。そのとき、完全に独立している1次粒子の数が64個で、1次粒子群が16個であった場合、粒子相互間の接触が全くない1次粒子の存在個数割合は80%と算出される。
BET測定は、測定器としてカンタクロム社製のMONOSORBを用い、B.E.T式1点法により求めた。
X線源はCuのKα1線を用い、(111)回折ピークの半価幅とピークの位置から次式(Scherrerの式)により求めた。
t=0.9×λ/(B×cosθ)
t:結晶子径、λ:CuのKα1線の波長、B:半価幅、θ:回折角
BET径(比表面積)は以下の式により求めた。
(BET径)=6/(ρ×106×BET値)×109
ρ:粒子の密度=7.2g/cm3、BET値:(m2/g)
熱収縮開始温度、熱収縮率は、測定器としてマックサイエンス/ブルカーエイエックスエス社製のDILATO METER 5000を用いて測定した。測定試料は、内径5mmの金型にITO粉体0.15gを入れ、269kg/cm2の印加圧で成形して、熱収縮率測定試料とした。この測定試料を、室温から500℃まで加熱したときの収縮率を測定した。
沈降性の評価は、ITO分散液を50ml遠沈菅に40ml入れ、そのまま1週間静置した。そのときの判断としては、完全に粒子が沈降し上澄みが無色透明なものは沈降性である(×)と評価し、そうでないものは沈降性でない(○)と評価した。
ガラス基板(26×76×1mm)を、スピンコーター(ABLE社製)により250rpmの回転数で回転させ、そこに実施例1に係るITO分散液5ccを10秒かけて滴下し、コートした。なお、実施例1に係るITO分散液とは、ITO粒子濃度が5wt%となるように調製されたメタノール分散液である。当該コート後、ガラス基板を取り出し60℃で10分間大気乾燥させた。乾燥後、ガラス基板を再度上記スピンコーターに取り付け、250rpmで回転させ、オーバーコート材を滴下した。ここで、オーバーコート材は、コルコート社製のコルコートN−103Xである。次に、オーバーコート後のガラス基板を取り出し、再度乾燥機で60℃、10分間大気乾燥させた。乾燥機から取り出し、窒素雰囲気にて400℃まで昇温させて1時間保持した後、自然冷却しITO塗布ガラス基板を得た。得られたITO塗布ガラス基板におけるITO塗膜の膜厚は200nmであった。
上述の塗膜化方法で作製したITO塗布ガラス基板の表面抵抗値を測定した。測定には三菱化学社製のロレスタHP MCP−T410を用い、四端子法にて測定した。
上述の塗膜化方法で作製したITO塗布ガラス基板の、ヘイズの値、全光線透過率を測定した。ヘイズの値の測定は、測定器として日本電色社製 濁度計 NDH 2000を用いた。使用したガラス基板は、MATSUNAMI GLASS社製のMICRO SLLIDE GLASS、品番S7213(サイズ:26×76×1)である。
一方、実施例1に係るITO塗布ガラス基板のヘイズ値、全光線透過率を表2に示す。ガラス基板のみで測定すると、ヘイズが0.13%、全光線透過率が90.24%であった。
ここで、ヘイズについては、透明導電膜である塗膜と、ガラス基板のとのヘイズの値に加算関係が成立すると考えられることから、当該塗膜のヘイズは0.11%である。
ITO粒子合成の際のテトラエチレングリコール温度を327℃とした以外は、実施例1と同様にして、実施例2に係るITO分散液とITO粉体とを得た。得られたITO分散液、ITO粉体に対し、実施例1と同様の測定を行った。その製造方法のポイントおよび測定結果を、表1、表2および表3に示す。
そして、実施例1と同様に考えて、ヘイズは0.81%以下、全光線透過率は90.24%以上である。
ITO粒子合成の際のテトラエチレングリコール温度を250℃とした以外は、実施例1と同様にして、実施例3に係るITO分散液とITO粉体とを得た。得られたITO分散液、ITO粉体に対し、実施例1と同様の測定を行った。その製造方法のポイントおよび測定結果を、表1、表2および表3に示す。
そして、実施例1と同様に考えて、ヘイズは0.82%以下、全光線透過率は90.24%以上である。
有機溶媒をトリエチレングリコールとし、ITO粒子合成の際のトリエチレングリコール温度を250℃とした以外は、実施例1と同様にして、実施例4に係るITO分散液とITO粉体とを得た。得られたITO分散液、ITO粉体に対し、実施例1と同様の測定を行った。その製造方法のポイントおよび測定結果を、表1、表2および表3に示す。
そして、実施例1と同様に考えて、ヘイズは0.07%以下、全光線透過率は92.57%である。
有機溶媒をジエチレングリコールとし、ITO粒子合成の際のジエチレングリコール温度を240℃とした以外は、実施例1と同様にして、実施例5に係るITO分散液とITO粉体とを得た。得られたITO分散液、ITO粉体に対し、実施例1と同様の測定を行った。その製造方法のポイントおよび測定結果を、表1、表2および表3に示す。
そして、実施例1と同様に考えて、ヘイズは0.82%以下、全光線透過率は90.05%である。
有機溶媒をポリエチレングリコールとした以外は、実施例1と同様にして、実施例6に係るITO分散液とITO粉体とを得た。得られたITO分散液、ITO粉体に対し、実施例1と同様の測定を行った。その製造方法のポイントおよび測定結果を、表1、表2および表3に示す。
そして、実施例1と同様に考えて、ヘイズは0.85%以下、全光線透過率は90.17%である。
インジウムを主成分とした前駆体原料を、スズ含有水酸化インジウムから当該スズ含有水酸化インジウムを大気中250℃で加熱処理して得たスズ含有酸化インジウムに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例7に係るITO分散液とITO粉体とを得た。得られたITO分散液、ITO粉体に対し、実施例1と同様の測定を行った。その製造方法のポイントおよび測定結果を、表1、表2および表3に示す。
そして、実施例1と同様に考えて、ヘイズは0.84%以下、全光線透過率は90.15%である。
有機溶媒であるテトラエチレングリコールへ、加熱前にあらかじめNaOH水溶液を添加しpH12としてから加熱を開始した以外は、実施例1と同様にして、実施例8に係るITO分散液とITO粉体とを得た。得られたITO分散液、ITO粉体に対し、実施例1と同様の測定を行った。その製造方法のポイントおよび測定結果を、表1、表2および表3に示す。
そして、実施例1と同様に考えて、ヘイズは0.82%以下、全光線透過率は90.12%である。
インジウム濃度18.61wt%の塩化インジウム水溶液49.69gに、塩化スズ(SnCl2)を2.70g添加して溶解し、そこにエタノールを99.36g添加して混合して溶液Aとした。一方、沈殿剤として、NaOHを22.11g秤量し、エタノール526.52gと純水49.95gとの混合溶媒へ溶解させて溶液Bとした。室温下で溶液Aを撹拌回転数600rpmで撹拌し、そこへ溶液Bを添加して60分間保持し、スズ含有水酸化インジウムを生成させた。次に、吸引濾過法により、生成したスズ含有水酸化インジウムのケーキを得た。得られたスズ含有水酸化インジウムケーキ中の塩酸根を、純水で洗浄し、その後、さらにエタノールで洗浄し、実施例9に係るインジウムを主成分とした前駆体(スズ含有水酸化インジウム)を得た。
実施例1に係るインジウムを主成分とした前駆体を、当該実施例9に係るインジウムを主成分とした前駆体へ変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例9に係るITO分散液とITO粉体とを得た。得られたITO分散液、ITO粉体に対し、実施例1と同様の測定を行った。その製造方法のポイントおよび測定結果を、表1、表2および表3に示す。
そして、実施例1と同様に考えて、ヘイズは0.86%以下、全光線透過率は90.11%である。
実施例1で生成させたインジウムを主成分とした前駆体(スズ含有水酸化インジウム)を乾燥させた後、焼成炉に設置し、アンモニアを0.5%含有する窒素雰囲気下で640℃、2時間の焼成を行って、比較例1に係るITO粉体を得た。得られたITO粉体からITO分散液を調製し、実施例1と同様の測定を行った。その製造方法のポイントおよび測定結果を、表1、表2および表3に示す。
そして、実施例1と同様に考えて、ヘイズは2.09%以下、全光線透過率は89.89%である。
なお、比較例1に係るITO粒子の倍率が20万倍のTEM写真(視野:200×200nm)を図3に示す。図3の観察から、完全に独立している1次粒子および1次粒子群が存在せず、すべて1次粒子間で接触していることが判明した。従って、粒子相互間の接触が全くない1次粒子の存在割合は0%と算出された。
ITO粒子合成の際のテトラエチレングリコール温度を230℃とした以外は、実施例1と同様にして、比較例2に係るITO分散液とITO粉体とを得た。得られたITO分散液、ITO粉体に対し、実施例1と同様の測定を行った。その製造方法のポイントおよび測定結果を、表1、表2および表3に示す。
そして、実施例1と同様に考えて、ヘイズは1.50%以下、全光線透過率は85%である。
インジウム濃度が19.64wt%の塩化インジウム水溶液(InCl3)76.2gと、塩化スズ(SnCl2)4.8gとを秤量し、純水に溶解して、塩化インジウムと塩化スズとの混合溶液を調製し、NH3水溶液と反応させることなく乾燥した。そして、当該乾燥物を11g秤量してセパラブルフラスコに充填した後は、実施例1と同様の反応条件にて反応させたが、ITO粒子は、生成しなかった。
実施例1〜9と比較例1〜3について評価する。表2および表3から明らかなように、実施例1〜9において、粒子特性において、体積平均径が24nm以上55nm以下の範囲にあり、10nm以下の個数割合が6%以上46%以下の範囲である超微粒子ITOが得られた。また非接触粒子のみの測定において、体積平均径が11nm以上42nm以下の範囲にあり、10nm以下の個数割合が51%以上85%以下の範囲である超微粒子であり粒子間の焼結が少ない分散性の良いITOが得られた。これらの単分散超微粒子ITOの塗膜特性は、ヘイズが0.24%以上0.99%以下の範囲にあり、全光線透過率も90.05%以上92.57%以下の範囲であり、ヘイズが低く、全光線透過率の高い塗膜が得られた。
さらに、比較例1は粒子特性において、非接触粒子の測定を行ったところ、すべての粒子が数珠状に接触しており、体積平均径が測定不可能であった。このことより粗大で分散性の悪いことが確認できた。比較例2では、ITO粒子の形状が不定形となり粒子測定不可能となった。比較例3では、ITO粒子が生成しなかった。
これら比較例1、2に係るITO粒子の塗膜特性は、比較例1および2では、ヘイズが1.63%以上2.22%以下の範囲にあり、全光線透過率が85.00%以上89.89%以下の範囲であった。即ち、比較例1、2とも実施例1〜9と比較して、ヘイズが高く、全光線透過率も低い塗膜となることが判明した。
Claims (13)
- 10nm以下の1次粒子径を有するITO粒子の個数割合が5%以上、且つ、ITO粒子の50%体積平均径が60nm以下、且つ、ITO粒子の90%体積粒径が100nm以下であり、
10nm以下の1次粒子径を有し、粒子相互間の接触がないITO粒子の個数割合が50%以上、且つ、ITO粒子の体積平均径が50nm以下であることを特徴とするITO粉体。 - 粒子相互間の接触がないITO粒子の個数割合が、70%以上あることを特徴とする請求項1記載のITO粉体。
- BETから求められる粒子径をR1、結晶子径から求められる粒子径をR2としたとき、
0.6≦R2/R1≦1
であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のITO粉体。 - 請求項1から3のいずれかに記載のITO粉体であって、当該ITO粉体を含む圧粉体の熱収縮開始温度が300℃以下であることを特徴とするITO粉体。
- 請求項4に記載のITO粉体であって、当該ITO粉体を含む圧粉体の熱収縮率が少なくとも0.7%以上であることを特徴とするITO粉体。
- スズを含有するインジウム水酸化物を、240℃以上の沸点を有する有機溶媒中において、240℃以上350℃以下の温度で加熱処理して、前記有機溶媒を蒸発させながら、還流させることにより、ITOを得ることを特徴とするITOの製造方法。
- 前記有機溶媒として、分子一個あたりにOH基を一個以上有する有機溶媒を用いることを特徴とする請求項6に記載のITOの製造方法。
- 前記有機溶媒として、ポリオールを用いることを特徴とする請求項7に記載のITOの製造方法。
- 前記有機溶媒として、テトラエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールの中から選ばれる少なくとも一つ以上の溶媒を用いることを特徴とする請求項8に記載のITOの製造方法。
- 請求項1から5のいずれかに記載のITO粉体を含むことを特徴とする透明導電材用塗料。
- 請求項10に記載の透明導電材用塗料をガラス基板上へ膜厚200nmで成膜して、ITO塗布ガラス基板としたとき、
当該透明導電膜のヘイズの値が1.0%以下、全光透過率が90%以上であることを特徴とする透明導電材用塗料。 - 請求項6から9のいずれかに記載のITOの製造方法において得られるITOを分散した有機溶媒の当該有機溶媒を、適宜な溶媒に置換することを特徴とする透明導電材用塗料の製造方法。
- 請求項10または11に記載の透明導電材用塗料を用いて製造されることを特徴とする透明導電膜。
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