JP5673250B2 - 近赤外線吸収粒子、その製造方法、分散液、樹脂組成物、近赤外線吸収塗膜を有する物品および近赤外線吸収物品 - Google Patents

近赤外線吸収粒子、その製造方法、分散液、樹脂組成物、近赤外線吸収塗膜を有する物品および近赤外線吸収物品 Download PDF

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Description

本発明は、近赤外線領域の光を吸収する近赤外線吸収粒子、その製造方法、近赤外線吸収粒子を含む分散液、樹脂組成物、近赤外線吸収塗膜を有する物品および近赤外線吸収物品に関する。
カメラ等の撮像素子(CCD、CMOS等)、自動露出計等の受光素子等の感度は、可視光領域から近赤外線領域にわたっている。一方、人間の視感度は可視光領域のみである。そのため、たとえばカメラにおいては、レンズと撮像素子との間に、可視光領域(420〜630nm)の光を透過し、かつ近赤外線領域(700〜1100nm)の光を吸収または反射する近赤外線フィルタを設けることで、人間の視感度に近づくように撮像素子の感度を補正している。より人間の視感度に近づけるためには、近赤外線フィルタには波長630〜700nmの間で急峻に透過率が変化することが求められる。
近赤外線フィルタとしては、近赤外線吸収粒子を分散媒に分散させた分散液にバインダ樹脂等を加えた塗料を、ガラス基材の表面に塗布して形成された近赤外線吸収塗膜を有するものが知られている。
また、近赤外線吸収粒子として、銅およびリン酸を含むものがいくつか提案されている。
(1)銅をCuO、リン酸をPに換算してCuO/Pのモル比が0.05〜4である近赤外線吸収粒子の表面をアルミニウム化合物で処理した、波長700〜1100nmの光を吸収する近赤外線吸収粒子(特許文献1)。
(2)リン酸銅を分散剤によって分散媒に分散させた分散液(特許文献2)。
(1)の近赤外線吸収粒子および(2)の分散液ともに、これを用いて形成された近赤外線吸収塗膜は、波長800nm以上の近赤外線を吸収することが確認されている。しかし、該近赤外線吸収塗膜は、波長630〜700nmの間で急峻に透過率が変化せず、近赤外線フィルタに要求される性能を充分に満足しない。
特開平07−070548号公報 特開2004−231708号公報
そこで、本発明者らは、下式(1)で表わされる化合物の結晶子からなる近赤外線吸収粒子が、可視光領域の透過率が高く、近赤外線領域の透過率が低く、かつ波長630〜700nmの間で急峻に透過率が変化することを見出した(特願2009−227554)。
1/nCuPO ・・・(1)。
ただし、Aは、アルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs)、アルカリ土類金属(Mg、Ca、Sr、Ba)およびNHからなる群から選ばれる1種以上であり、
nは、Aがアルカリ金属またはNHの場合は1であり、Aがアルカリ土類金属の場合は2である。
しかし、該近赤外線吸収粒子は、水蒸気および水分に暴露されると、A1/nCuPO・HOで表わされる水和物となるため、結晶子がA1/nCuPOの結晶構造を維持できなくなり、可視光領域の透過率が低くなり、また、近赤外線領域の透過率が高くなるという問題を有する。
本発明は、可視光領域の透過率が高く、近赤外線領域の透過率が低く、波長630〜700nmの間で急峻に透過率が変化し、かつ耐湿性に優れる近赤外線吸収粒子、その製造方法、分散液、樹脂組成物、近赤外線吸収塗膜を有する物品および近赤外線吸収物品を提供する。
本発明の近赤外線吸収粒子は、下式(1)で表わされる化合物の結晶子からなるコア粒子と、該コア粒子の表面を覆う酸化ケイ素を主成分とするシェルとを有することを特徴とする。
1/nCuPO ・・・(1)。
ただし、Aは、アルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs)、アルカリ土類金属(Mg、Ca、Sr、Ba)およびNHからなる群から選ばれる1種以上であり、
nは、Aがアルカリ金属またはNHの場合は1であり、Aがアルカリ土類金属の場合は2である。
本発明の近赤外線吸収粒子は、X線回折から求めた前記結晶子の大きさが、5〜50nmであり、前記近赤外線吸収粒子の数平均凝集粒子径が、20〜200nmであり、前記近赤外線吸収粒子の拡散反射スペクトルにおける波長450nmの反射率が、80%以上が好ましい。
本発明の近赤外線吸収粒子は、下式(2)で表わされる反射率の変化量Dが、−0.41以下が好ましい。
D(%/nm)=[R700(%)−R600(%)]/[700(nm)−600(nm)] ・・・(2)。
ただし、R700は、近赤外線吸収粒子の拡散反射スペクトルにおける波長700nmの反射率であり、R600は、近赤外線吸収粒子の拡散反射スペクトルにおける波長600nmの反射率である。
本発明の近赤外線吸収粒子は、前記近赤外線吸収粒子の拡散反射スペクトルにおける波長715nmの反射率が、19%以下であり、かつ波長500nmの反射率が、85%以上が好ましい。
本発明の近赤外線吸収粒子の製造方法は、下記の工程(d)を有することを特徴とする。
(d)前記式(1)で表わされる化合物の結晶子からなるコア粒子を、アルコキシシランによって表面処理して、前記コア粒子の表面に酸化ケイ素を主成分とするシェルを形成する工程。
前記工程(d)は、下記の工程(d’)が好ましい。
(d’)前記式(1)で表わされる化合物の結晶子からなるコア粒子と、アルコキシシランとを含む液に、マイクロ波を照射して、前記コア粒子の表面に酸化ケイ素を主成分とするシェルを形成する工程。
本発明の近赤外線吸収粒子の製造方法は、下記の工程(a)〜工程(c)をさらに有することが好ましい。
(a)溶媒中にて、Cu2+を含む塩と、PO 3−を含む塩または有機物とを、Cu2+に対するPO 3−のモル比(PO 3−/Cu2+)が10〜20となるような割合で、かつAn+(ただし、Aは、アルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs)、アルカリ土類金属(Mg、Ca、Sr、Ba)およびNHからなる群から選ばれる1種以上であり、nは、Aがアルカリ金属またはNHの場合は1であり、Aがアルカリ土類金属の場合は2である。)の存在下に混合して得られる原料粉末を、分散媒に分散させて原料スラリーを得る工程。
(b)前記工程(a)で得られた原料スラリーを熱プラズマまたは火炎中に導入し、得られた生成物を冷却して粒子を得る工程。
(c)前記工程(b)で得られた粒子を、300〜700℃で熱処理して、前記式(1)で表わされる化合物の結晶子からなるコア粒子を得る工程。
本発明の分散液は、本発明の近赤外線吸収粒子を分散媒に分散させたものであることを特徴とする。
本発明の樹脂組成物は、本発明の近赤外線吸収粒子を樹脂に分散させたものであることを特徴とする。
本発明の近赤外線吸収塗膜を有する物品は、本発明の近赤外線吸収粒子を含む近赤外線吸収塗膜を、基材の表面に有するものであることを特徴とする。
本発明の近赤外線吸収物品は、本発明の近赤外線吸収粒子を含むものであることを特徴とする。
本発明の近赤外線吸収粒子は、可視光領域の透過率が高く、近赤外線領域の透過率が低く、波長630〜700nmの間で急峻に透過率が変化し、かつ耐湿性に優れる。
本発明の近赤外線吸収粒子の製造方法によれば、可視光領域の透過率が高く、近赤外線領域の透過率が低く、波長630〜700nmの間で急峻に透過率が変化し、かつ耐湿性に優れる近赤外線吸収粒子を製造できる。
本発明の分散液は、可視光領域の透過率が高く、近赤外線領域の透過率が低く、波長630〜700nmの間で急峻に透過率が変化し、かつ耐湿性に優れる近赤外線吸収塗膜の形成に有用である。
本発明の樹脂組成物は、可視光領域の透過率が高く、近赤外線領域の透過率が低く、波長630〜700nmの間で急峻に透過率が変化し、かつ耐湿性に優れる近赤外線吸収塗膜、近赤外線吸収物品の形成に有用である。
本発明の近赤外線吸収塗膜を有する物品は、可視光領域の透過率が高く、近赤外線領域の透過率が低く、波長630〜700nmの間で急峻に透過率が変化し、かつ塗膜の耐湿性に優れる。
本発明の近赤外線吸収物品は、可視光領域の透過率が高く、近赤外線領域の透過率が低く、波長630〜700nmの間で急峻に透過率が変化し、かつ耐湿性に優れる。
例1のコア粒子のX線回折の結果を示す図である。 例1の耐湿試験前後の近赤外線吸収粒子の拡散反射スペクトルである。 例2の耐湿試験前後の近赤外線吸収粒子の拡散反射スペクトルである。 例3の耐湿試験前後の近赤外線吸収粒子の拡散反射スペクトルである。 例4の耐湿試験前後の近赤外線吸収粒子の拡散反射スペクトルである。 例5の耐湿試験前後の近赤外線吸収粒子の拡散反射スペクトルである。
<近赤外線吸収粒子>
本発明の近赤外線吸収粒子は、下式(1)で表わされる化合物の結晶子からなるコア粒子と、該コア粒子の表面を覆う酸化ケイ素を主成分とするシェルとを有する。
1/nCuPO ・・・(1)。
ただし、Aは、アルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs)、アルカリ土類金属(Mg、Ca、Sr、Ba)およびNHからなる群から選ばれる1種以上であり、
nは、Aがアルカリ金属またはNHの場合は1であり、Aがアルカリ土類金属の場合は2である。
「結晶子」とは、単結晶とみなせる単位結晶を意味し、「粒子」は、複数の結晶子によって構成される。
「式(1)で表わされる化合物の結晶子からなる」とは、たとえば図1に示すように、X線回折によってA1/nCuPOの結晶構造を確認でき、実質的にA1/nCuPOの結晶子からなることがX線回折によって同定されていることを意味し、「実質的にA1/nCuPOの結晶子からなる」とは、結晶子がA1/nCuPOの結晶構造を充分に維持できる、つまりX線回折によってA1/nCuPOの結晶構造を確認できる範囲内で不純物を含んでいてもよいことを意味する。
X線回折は、粉末状態の近赤外線吸収粒子について、X線回折装置を用いて測定される。
本発明においてAとして、アルカリ金属、アルカリ土類金属またはNHを採用する理由は、下記の(i)〜(iii)の通りである。
(i)本発明の近赤外線吸収粒子における結晶子の結晶構造は、PO 3−とCu2+との交互結合からなる網目状三次元骨格であり、骨格の内部に空間を有する。該空間のサイズが、アルカリ金属イオン(Li:0.90Å、Na:1.16Å、K:1.52Å、Rb:1.66Å、Cs:1.81Å)、アルカリ土類金属イオン(Mg2+:0.86Å、Ca2+:1.14Å、Sr2+:1.32Å、Ba2+:1.49Å)およびNH (1.66Å)のイオン半径と適合するため、結晶構造を充分に維持できる。
(ii)アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンおよびNH は、溶液中で1価または2価のカチオンとして安定に存在できるため、近赤外線吸収粒子の製造過程において、前駆体が生成する際、結晶構造中にカチオンが取り込まれやすい。
(iii)PO 3−と配位結合性の強いカチオン、たとえば遷移金属イオン等では、充分な近赤外線吸収特性を発現する本発明における結晶構造とは異なる結晶構造を与える可能性がある。
Aとしては、PO 3−とCu2+とからなる骨格内に取り込まれるイオンとして最もカチオンサイズが適し、熱力学的な安定構造をとる点から、Kが特に好ましい。
本発明の近赤外線吸収粒子が、A1/nCuPOの結晶子からなるコア粒子が酸化ケイ素を主成分とするシェルによって覆われていることは、透過型電子顕微鏡による粒子観察によって確認される。
シェルは、酸化ケイ素を主成分とするものであり、耐湿性、耐薬品性等の点から、シェル(100質量%)のうち、90質量%以上が好ましく、100質量%が特に好ましい。
シェルの厚さは、1.0〜50.0nmが好ましく、5.0〜30.0nmがより好ましい。シェルの厚さが1.0nm以上であれば、耐湿性、耐薬品性等がさらに向上する。シェルの厚さが50.0nm以下であれば、コア粒子が有する近赤外線吸収特性が充分に発揮される。
シェルの厚さは、後述する製造方法におけるアルコシキシランの量、マイクロ波の出力、照射時間等を適宜調整できる。
シェルの厚さは、近赤外線吸収粒子を透過型電子顕微鏡にて観察し、20個の粒子を無作為に選び出し、各粒子のシェルの厚さを測定し、20個の粒子のシェルの厚さを平均した値である。
本発明の近赤外線吸収粒子における結晶子の大きさは、5〜50nmが好ましく、10〜30nmがより好ましい。結晶子の大きさが5nm以上であれば、結晶子がA1/nCuPOの結晶構造を充分に維持でき、その結果、充分な近赤外線吸収特性を発現できる。結晶子の大きさが50nm以下であれば、近赤外線吸収粒子の数平均凝集粒子径を小さく抑えることができ、分散液、樹脂組成物およびこれらを用いて形成された近赤外線吸収塗膜のヘーズが低く抑えられる。
結晶子の大きさは、粉末状態の近赤外線吸収粒子についてX線回折を行い、シェラーの方法により計算によって求めた値である。
本発明の近赤外線吸収粒子の数平均凝集粒子径は、20〜200nmが好ましく、20〜150nmがより好ましい。数平均凝集粒子径が20nm以上であれば、結晶子がA1/nCuPOの結晶構造を充分に維持でき、その結果、充分な近赤外線吸収特性を発現できる。数平均凝集粒子径が200nm以下であれば、分散液、樹脂組成物およびこれらを用いて形成された近赤外線吸収塗膜のヘーズが低くなり、すなわち透過率が高くなり、たとえばカメラの近赤外線吸収フィルタの用途等に好適となる。
数平均凝集粒子径は、近赤外線吸収粒子を分散媒に分散させた粒子径測定用分散液について、動的光散乱式粒度分布測定装置を用いて測定した値である。
本発明の近赤外線吸収粒子の、拡散反射スペクトルにおける波長450nmの反射率は、80%以上が好ましく、81%以上がより好ましい。
近赤外線吸収粒子の反射率が高いということは、近赤外線吸収粒子による光の吸収が少なく、近赤外線吸収粒子の反射率が低いということは、近赤外線吸収粒子による光の吸収が多いことを示している。波長450nmの反射率は、粒子を含む膜の透過スペクトルでの可視光領域の短波長側の波長420nmの透過率に対応するとみなすことができる。つまり、本発明では、拡散反射スペクトルの反射率の波長に対する変化量が大きな波長420nmではなく、該変化量が比較的小さくなる波長450nmの反射率を用いて近赤外吸収粒子の光の吸収が少ないことを判定している。すなわち、前記波長450nmの反射率が80%以上であれば、粒子を含む膜の透過スペクトルでの波長420nmの透過率が充分に高くなり、近赤外線吸収粒子による可視光領域の光吸収が充分に抑えられ、例えばカメラの近赤外線吸収フィルタに好適となる。
近赤外線吸収塗膜のヘーズを低く抑えるために、近赤外線吸収粒子の数平均凝集粒子径を小さくしようと、近赤外線吸収粒子に過度の粉砕処理を施すと、コア粒子を構成する結晶子がA1/nCuPOの結晶構造を充分に維持できなくなり、拡散反射スペクトルにおける波長450nmの反射率が小さくなる傾向にある。よって、波長450nmの反射率が80%以上であれば、近赤外線吸収粒子の数平均凝集径が200nm以下であっても、結晶子がA1/nCuPOの結晶構造を充分に維持していることの目安となる。また、結晶子がA1/nCuPOの結晶構造を充分に維持するためには、過度の粉砕処理を施すことなく数平均凝集粒子径が充分に小さい近赤外線吸収粒子を得ることができる、後述する近赤外線吸収粒子の製造方法(工程(a)〜(c))が好適である。
本発明の近赤外線吸収粒子の、下式(2)で表わされる反射率の変化量Dは、−0.41以下が好ましく、−0.45以下がより好ましい。
D(%/nm)=[R700(%)−R600(%)]/[700(nm)−600(nm)] ・・・(2)。
ただし、R700は、近赤外線吸収粒子の拡散反射スペクトルにおける波長700nmの反射率であり、R600は、近赤外線吸収粒子の拡散反射スペクトルにおける波長600nmの反射率である。
光吸収がある粒子の拡散反射スペクトル測定では、光吸収波長において光路長により光吸収の強度が異なるため、粒子を含む膜の透過スペクトルにおいて弱い吸収帯が、拡散反射スペクトルでは比較的強く観測される。そこで、本明細書中での反射率の変化率算出は、粒子を含む膜の透過スペクトルでの透過率変化と同等に反射率が変化する範囲である600〜700nmの反射率の値を用いる。
前記反射率の変化量Dが−0.41以下であれば、波長630〜700nmの間における透過率の変化が充分に急峻となり、これを用いて形成された近赤外線吸収塗膜は、たとえばカメラの近赤外線吸収フィルタに好適となる。
本発明の近赤外線吸収粒子の、拡散反射スペクトルにおける波長715nmの反射率は、19%以下が好ましく、18%以下がより好ましい。波長715nmの反射率が19%以下であれば、近赤外線領域の透過率が充分に低くなる。
本発明の近赤外線吸収粒子の、拡散反射スペクトルにおける波長500nmの反射率は、85%以上が好ましく、86%以上がより好ましい。波長500nmの反射率が85%以上であれば、可視光領域の透過率が充分に高くなる。
拡散反射スペクトルは、粉末状態の近赤外線吸収粒子について、紫外可視分光光度計を用いて測定される。
本発明の近赤外線吸収粒子においては、A1/nCuPO以外の結晶構造、たとえば、A1/nCu(POが増えると、波長630〜700nmの間における透過率の変化が緩慢となり、これを用いて形成された近赤外線吸収塗膜は、カメラの近赤外線吸収フィルタに適さない。
よって、X線回折によって実質的にA1/nCuPOの結晶子からなることが同定されていることが必要である。
(作用効果)
以上説明した本発明の近赤外線吸収粒子にあっては、A1/nCuPOで表わされる化合物の結晶子からなるコア粒子を有する近赤外線吸収粒子であるため、可視光領域の透過率が高く、近赤外線領域の透過率が低く、かつ該近赤外線吸収粒子を含む膜は波長630〜700nmの間で急峻に透過率が変化する。
また、以上説明した本発明の近赤外線吸収粒子にあっては、A1/nCuPOの結晶子からなるコア粒子の表面を覆う酸化ケイ素を主成分とするシェルを有するため、耐湿性に優れる。
<近赤外線吸収粒子の製造方法>
本発明の近赤外線吸収粒子の製造方法は、下記の工程(d)を有する方法であり、数平均凝集粒子径が充分に小さい近赤外線吸収粒子を得ることができる点から、下記の工程(a)〜(d)を有する方法が好ましい。
(a)溶媒中にて、Cu2+を含む塩と、PO 3−を含む塩または有機物とを、Cu2+に対するPO 3−のモル比(PO 3−/Cu2+)が10〜20となるような割合で、かつAn+の存在下に混合して得られる原料粉末を、分散媒に分散させて原料スラリーを得る工程。
(b)前記工程(a)で得られた原料スラリーを熱プラズマまたは火炎中に導入し、得られた生成物を冷却して粒子を得る工程。
(c)前記工程(b)で得られた粒子を、300〜700℃で熱処理して、A1/nCuPOの結晶子からなるコア粒子を得る工程。
(d)A1/nCuPOの結晶子からなるコア粒子を、アルコキシシランによって表面処理して、前記コア粒子の表面に酸化ケイ素を主成分とするシェルを形成する工程。
(工程(a))
Cu2+を含む塩としては、硫酸銅(II)五水和物、塩化銅(II)二水和物、酢酸銅(II)一水和物、臭化銅(II)、硝酸銅(II)三水和物等が挙げられる。
PO 3−を含む塩または有機物としては、アルカリ金属のリン酸塩、リン酸のアンモニウム塩、アルカリ土類金属のリン酸塩、リン酸等が挙げられる。
アルカリ金属のリン酸塩またはアルカリ土類金属のリン酸塩としては、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸カリウム、リン酸水素二ナトリウム十二水和物、リン酸二水素ナトリウム二水和物、リン酸三ナトリウム十二水和物、リン酸リチウム、リン酸水素カルシウム、リン酸水素マグネシウム三水和物、リン酸マグネシウム八水和物等が挙げられる。
リン酸のアンモニウム塩としては、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素アンモニウムナトリウム四水和物、リン酸アンモニウム三水和物等が挙げられる。
n+を存在させる方法としては、PO 3−を含む塩としてアルカリ金属のリン酸塩、リン酸のアンモニウム塩、アルカリ土類金属のリン酸塩等を用いる方法;Cu2+を含む塩とPO 3−を含む塩または有機物とを混合する際に、An+を含む塩を添加する方法等が挙げられる。
n+を含む塩としては、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属の塩化物、アルカリ土類金属の塩化物、アルカリ金属の臭化物、アルカリ土類金属の臭化物、アルカリ金属の硝酸塩、アルカリ土類金属の硝酸塩、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ金属の硫酸塩、アルカリ土類金属の硫酸塩等が挙げられる。
Cu2+を含む塩とPO 3−を含む塩または有機物との混合は、溶媒中で行う。該溶媒としては、Cu2+を含む塩、およびPO 3−を含む塩または有機物を溶解し得る溶媒が好ましい。An+を含む塩を用いる場合、該溶媒としては、An+を含む塩も溶解し得る溶媒が好ましい。該溶媒としては、水が特に好ましい。
Cu2+を含む塩とPO 3−を含む塩または有機物との割合は、Cu2+に対するPO 3−のモル比(PO 3−/Cu2+)が10〜20、好ましくは12〜18となるような割合とする。PO 3−/Cu2+が10以上であれば、工程(b)においてA1/nCu(POが副生しない、または副生したとしてもその量が、結晶子がA1/nCuPOの結晶構造を充分に維持できる程度であるため、波長630〜700nmの間における透過率の変化が充分に急峻となる近赤外線吸収粒子が得られる。PO 3−/Cu2+が20以下であれば、工程(b)においてA1/nCuPO以外の不純物が副生しない、または副生したとしてもその量が、結晶子がA1/nCuPOの結晶構造を充分に維持できる程度であるため、波長630〜700nmの間における透過率の変化が充分に急峻となる近赤外線吸収粒子が得られる。
Cu2+を含む塩とPO 3−を含む塩または有機物とを混合する際の温度は、10〜95℃が好ましく、15〜40℃がより好ましい。該温度が高すぎると、溶媒の蒸発による溶質の濃縮が生じ、目的とする生成物以外の不純物が混入するおそれがある。該温度が低すぎると、反応速度が遅くなり、反応時間が長くなるため、工程上好ましくない。
溶媒中にて、Cu2+を含む塩と、PO 3−を含む塩または有機物とを、Cu2+に対するPO 3−のモル比(PO 3−/Cu2+)が10〜20となるような割合で、かつAn+の存在下に混合して得られる原料粉末は、必要に応じて固液分離し乾燥させ、分散媒に分散させて原料スラリーとする。
原料スラリーの分散媒としては、水、アルコール、ケトン、エーテル、エステル、アルデヒド、アミン、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、芳香族炭化水素等が挙げられる。分散媒は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。分散媒としては、取扱いが容易で、かつ熱プラズマ通過時に酸素源となる酸素原子を含むものが好適である点から、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコールが好ましい。
原料スラリー中の固形分濃度により、工程(b)で得られる近赤外線吸収粒子の粒子径が変化するため、必要に応じて原料スラリーの固形分濃度を調整する必要がある。すなわち、原料スラリー中の固形分濃度が高いほど、熱プラズマ通過時の結晶核濃度が高く、結晶成長が生じ、粒子径の大きい近赤外線吸収粒子が得られる。原料スラリー中の固形分濃度が低いほど、熱プラズマ通過時の結晶核濃度が低く、結晶成長が抑制され、粒子径が小さい近赤外線吸収粒子が得られる。分散媒の量は、分散液(100質量%)のうち、50〜95質量%が好ましい。
原料スラリーは、原料粉末、分散媒、必要に応じてジルコニアビーズ等を混合し、自転・公転式ミキサー、ビーズミル、遊星ミル、超音波ホモジナイザ等によって撹拌することにより調製できる。粒子径が小さく、かつ均一な近赤外線吸収粒子を得るためには、原料スラリー中の原料粉末の粒子径も小さく、かつ均一である必要があるため、充分に撹拌する必要がある。撹拌は、連続的に行ってもよく、断続的に行ってもよい。
(工程(b))
原料スラリーを熱プラズマまたは火炎中に導入し、得られた生成物を冷却して粒子を得る方法は、特開2005−170760号公報、特許第4420690号公報等に記載されている。
よって、原料スラリーとして工程(a)で得られた原料スラリーを用いる以外は、特開2005−170760号公報、特許第4420690号公報等に記載された装置を用い、特開2005−170760号公報、特許第4420690号公報等に記載された条件を適宜変更して粒子を製造すればよい。
たとえば、プラズマガス(アルゴンガス等)をプラズマトーチ内に供給し、該プラズマトーチ内にて熱プラズマを発生させつつ、プラズマトーチに設けられたノズルから原料スラリーをキャリアガス(酸素ガス等)とともに噴霧することによって、原料スラリーの液滴を熱プラズマに導入する。熱プラズマ内にて原料スラリーの溶媒を蒸発させつつ、原料スラリーに含まれていた原料を反応させ、熱プラズマから発生する生成物をプラズマトーチの下方に隣接するチャンバに移動させる。チャンバ内で熱プラズマからの生成物を急冷することによって結晶化させ、粒子を生成させる。
(工程(c))
前記工程(b)で得られた粒子は、結晶構造中に酸素欠陥を有する場合がある。結晶構造中に酸素欠陥を有する粒子は、可視光領域の透過率が低下するため、熱処理を施し、結晶構造中の酸素欠陥を低減することが好ましい。
熱処理温度は、300〜700℃であり、300〜500℃が好ましい。熱処理温度が300℃以上であれば、結晶構造中の酸素欠陥を充分に低減できる。熱処理温度が700℃以下であれば、熱による分解を抑制できる。
熱処理時間は、0.5〜300分が好ましく、1〜10分がより好ましい。熱処理時間が0.5分以上であれば、結晶構造中の酸素欠陥を充分に低減できる。熱処理時間が300分以下であれば、熱処理による結晶成長を抑制できる。
赤外イメージ炉を用いると、急速加熱および急速冷却が可能であるため、結晶成長の抑制に有効である。また、粒子を流動させながら焼成可能なロータリーキルン炉も、結晶成長の抑制に効果がある。
(工程(d))
1/nCuPOの結晶子からなるコア粒子を、アルコキシシランによって表面処理する方法としては、公知の方法を用いればよい。工程(d)としては、下記の理由から、下記の工程(d’)が好ましい。
(d’)前記式(1)で表わされる化合物の結晶子からなるコア粒子と、アルコキシシランとを含む液に、マイクロ波を照射して、前記コア粒子の表面に酸化ケイ素を主成分とするシェルを形成する工程。
理由:コア粒子を選択的に、かつ高温(100℃以上)に加熱できる。そのため、液全体が高温(100℃以上)になったとしても、コア粒子がさらに高温に加熱されているため、アルコキシシランの加水分解がコア粒子の表面にて優先的に進行し、コア粒子の表面に酸化ケイ素が選択的に析出する。よって、コア粒子の表面以外に単独で析出する酸化ケイ素の量が抑えられる。また、シェルを高温条件にて形成できるため、緻密なシェルが短時間で形成される。
工程(d’)は、具体的には、下記の工程(d1)〜工程(d3)からなる。
(a)コア粒子を分散媒に分散させたコア粒子の分散液に、アルコキシシラン、必要に応じて水、有機溶媒、アルカリまたは酸、硬化触媒等を加え、原料液を調製する工程。
(b)該原料液にマイクロ波を照射して該原料液を加熱するとともに、アルコキシシランをアルカリまたは酸によって加水分解して、コア粒子の表面に酸化ケイ素を析出させ、シェルを形成し、コアシェル構造の近赤外線吸収粒子の分散液を得る工程。
(c)必要に応じて、近赤外線吸収粒子の分散液から分散媒を除去し、近赤外線吸収粒子を回収する工程。
工程(d1):
分散媒としては、水、アルコール(メタノール、エタノール、イソプロパノール等)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン等)、エーテル(テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等)、エステル(酢酸エチル、酢酸メチル等)、グリコールエーテル(エチレングリコールモノアルキルエーテル等)、含窒素化合物(N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等)、含硫黄化合物(ジメチルスルホキシド等)等が挙げられる。
分散媒は、アルコキシシランの加水分解に水が必要であるため、分散媒100質量%中、5〜100質量%の水を含むことが好ましい。
分散液中におけるコア粒子の濃度は、コア粒子の分散液(100質量%)中、0.1〜40質量%が好ましく、0.5〜20質量%がより好ましい。コア粒子の濃度が0.1質量%以上であれば、近赤外線吸収粒子の製造効率が良好となる。コア粒子の濃度が40質量%以下であれば、コア粒子が凝集しにくい。
アルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン(以下、TEOSと記す。)、テトラn−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン等が挙げられ、反応速度が適正な点から、TEOSが好ましい。
アルコキシシランの量は、シェルの厚さが1.0〜50.0nmとなる量が好ましく、シェルの厚さが5.0〜30.0nmとなる量がより好ましい。
アルコキシシランの量(金属酸化物換算)は、具体的には、コア粒子100質量部に対して、0.1〜10000質量部が好ましい。
アルカリとしては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、アンモニア、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、ジメチルアミン、トリエチルアミン、アニリン等が挙げられ、加温により除去可能な点から、アンモニアが好ましい。
アルカリの量は、アルコキシシランが三次元的に重合して緻密なシェルを形成しやすい点から、原料液のpHが8.5〜10.5となる量が好ましく、9.0〜10.0となる量が好ましい。
酸としては、塩酸、硝酸等が挙げられる。
酸の量は、原料液のpHが3.5〜5.5となる量が好ましい。
硬化触媒としては、金属キレート化合物、有機スズ化合物、金属アルコレート、金属脂肪酸塩等が挙げられ、シェルの強度の点から、金属キレート化合物、有機スズ化合物が好ましく、金属キレート化合物が特に好ましい。
硬化触媒の量(金属酸化物換算)は、アルコキシシランの量(金属酸化物換算)の100質量部に対して0.1〜20.0質量部が好ましく、0.2〜8.0質量部がより好ましい。
工程(d2):
マイクロ波とは、通常、周波数が1G〜100GHzの電磁波を指す。通常は、周波数が2.45±0.05GHzのマイクロ波が用いられるが、5.8±0.075GHz、24.125±0.125GHz等のマイクロ波を用いてもよい。
マイクロ波の出力は、原料液が100〜500℃に加熱される出力が好ましく、原料液が120〜300℃に加熱される出力がより好ましい。具体的には100〜5000Wが好ましく、500〜3000Wがより好ましい。
原料液の温度が100℃以上であれば、緻密なシェルを短時間で形成できる。原料液の温度が500℃以下であれば、コア粒子表面以外で析出する酸化ケイ素の量が抑えられる。
マイクロ波の照射時間は、マイクロ波の出力(原料液の温度)に応じて、所望の厚さのシェルが形成される時間に調整すればよく、たとえば、10秒〜60分である。
工程(d3):
コアシェル構造の近赤外線吸収粒子の分散液から分散媒を除去し、近赤外線吸収粒子を回収する方法としては、下記の方法が挙げられる。
・近赤外線吸収粒子の分散液を加熱して、分散媒等を揮発させる方法。
・近赤外線吸収粒子の分散液を固液分離して、固形分を乾燥する方法。
・スプレードライヤーを用い、加熱されたガス中に近赤外線吸収粒子の分散液を噴霧して分散媒等を揮発させる方法(スプレードライ法)。
・近赤外線吸収粒子の分散液を冷却し減圧することで、分散媒等を昇華させる方法(凍結乾燥法)。
(他の表面処理)
以上のようにして得られた近赤外線吸収粒子は、耐候性、耐酸性、耐水性等の向上や表面改質によるバインダ樹脂との相溶性の向上を目的に、公知の方法にてさらに表面処理されてもよい。
表面処理の方法としては、近赤外線吸収粒子を含む分散液中に、表面処理剤または溶媒で希釈した表面処理剤を添加し、撹拌して処理した後、溶媒を除去し乾燥させる方法(湿式法);近赤外線吸収粒子を撹拌しながら、表面処理剤または溶媒で希釈した表面処理剤を、乾燥空気または窒素ガスで噴射させて処理した後、乾燥させる方法(乾式法)が挙げられる。
表面処理剤としては、界面活性剤、カップリング剤等が挙げられる。
(作用効果)
以上説明した本発明の近赤外線吸収粒子の製造方法にあっては、工程(d)において、A1/nCuPOで表わされる化合物の結晶子からなるコア粒子をアルコキシシランによって表面処理して、コア粒子の表面に酸化ケイ素を主成分とするシェルを形成しているため、可視光領域の透過率が高く、近赤外線領域の透過率が低く、波長630〜700nmの間で急峻に透過率が変化し、かつ耐湿性に優れる近赤外線吸収粒子を製造できる。
また、工程(b)において原料スラリーが熱プラズマまたは火炎中を通過することで、原料スラリー中に含まれる原料粒子が急速加熱され原子状態まで気化した後、急速に冷却される。そのため、近接する結晶核同士の結合による粒子成長が抑制され、X線回折から求めた結晶子の大きさが5〜50nmの生成物を容易に得ることができる。また、該生成物に対し、工程(c)において熱処理を施すことによって、熱処理による粒子成長が抑制され、かつ構造欠陥が少なく可視光領域の透過率が高い粒子が得られる。すなわち、過度の粉砕処理を施すことなく粒子の数平均凝集粒子径が20〜200nmとなる。
一方、工程(a)〜(c)を有する方法を用いない場合、近赤外線吸収粒子の数平均凝集粒子径を20〜200nmとするためには、湿式粉砕等の処理が必要である。しかし、過度の粉砕処理を行うことで粒子の結晶構造が部分的に崩壊し、可視光領域の透過率が減少することがある。すなわち、工程(a)〜(c)を有する方法を用いない場合、過度の粉砕処理を必要とするため、数平均凝集粒子径が小さいが、可視光領域の透過率が低い近赤外線吸収粒子となる場合がある。また、長時間の粉砕は生産性の効率を下げるので、できるだけ短時間の粉砕処理が好ましい。
以上から、工程(a)〜(c)を有する方法にあっては、過度の粉砕処理を施すことなく、X線回折から求めた結晶子の大きさが5〜50nmであり、数平均凝集粒子径が20〜200nmである、A1/nCuPOの結晶子からなるコア粒子を製造できる。
<用途>
本発明の近赤外線吸収粒子は、分散媒に分散させて分散液として用いてもよく、樹脂に分散させて樹脂組成物として用いてもよい。
<分散液>
本発明の分散液は、分散媒と、該分散媒に分散された本発明の近赤外線吸収粒子とを含み、必要に応じて分散剤、バインダ樹脂、他の光吸収材を含む。
近赤外線吸収粒子の量は、分散液(100質量%)のうち、5〜50質量%が好ましい。近赤外線吸収粒子の量が5質量%以上であれば、充分な近赤外線吸収特性を発現できる。近赤外線吸収粒子の量が50質量%以下であれば、可視光領域の透過率を高く維持できる。
(分散媒)
分散媒としては、水、アルコール、ケトン、エーテル、エステル、アルデヒド、アミン、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、芳香族炭化水素等が挙げられる。分散媒は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。分散媒の量は、近赤外線吸収粒子の分散性を維持する点から、分散液(100質量%)のうち、50〜95質量%が好ましい。
(分散剤)
分散剤としては、近赤外線吸収粒子の表面に対して改質効果を示すもの、たとえば、界面活性剤、シラン、シリコーンレジン、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコアルミネート系カップリング剤等が挙げられる。
界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤(特殊ポリカルボン酸型高分子界面活性剤、アルキルリン酸エステル等)、ノニオン系界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンカルボン酸エステル、ソルビタン高級カルボン酸エステル等)、カチオン系界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルアミンカルボン酸エステル、アルキルアミン、アルキルアンモニウム塩等)、両性界面活性剤(高級アルキルベタイン等)が挙げられる。
シランとしては、シランカップリング剤、クロロシラン、アルコキシシラン、シラザンが挙げられる。シランカップリング剤としては、官能基(グリシドキシ基、ビニル基、アミノ基、アルケニル基、エポキシ基、メルカプト基、クロロ基、アンモニウム基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基等)を有するアルコキシシラン等が挙げられる。
シリコーンレジンとしては、メチルシリコーンレジン、メチルフェニルシリコーンレジン等が挙げられる。
チタネート系カップリング剤としては、アシロキシ基、ホスホキシ基、ピロホスホキシ基、スルホキシ基、アリーロキシ基等を有するものが挙げられる。
アルミニウム系カップリング剤としては、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレートが挙げられる。
ジルコアルミネート系カップリング剤としては、アミノ基、メルカプト基、アルキル基、アルケニル基等を有するものが挙げられる。
分散剤の量は、分散剤の種類にもよるが、分散液(100質量%)のうち、0.5〜10質量%が好ましい。分散剤の量が該範囲内であれば、近赤外線吸収粒子の分散性が良好となり、透明性が損なわれず、また、経時的に近赤外線吸収粒子が沈降することが抑えられる。
(バインダ樹脂)
バインダ樹脂としては、熱可塑性樹脂(ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、アルキド系樹脂等)、熱硬化性樹脂(エポキシ系樹脂、熱硬化型アクリル系樹脂、シルセスキオキサン系樹脂等)が挙げられる。近赤外線吸収塗膜に透明性が必要となる場合、バインダ樹脂としては、アクリル系樹脂またはポリエステル系樹脂が好ましい。バインダ樹脂の量は、分散液の固形分(100質量%)のうち、10〜90質量%が好ましい。
(他の光吸収材)
他の光吸収材としては、紫外線吸収材、他の赤外線吸収材等が挙げられる。
紫外線吸収材としては、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、マイカ、カオリン、セリサイト等が挙げられる。
他の赤外線吸収材料としては、ITO(Indium Tin Oxide)、ATO(Antimony doped Tin Oxide)等が挙げられる。ITOは、可視光領域の透過率が高く、かつ1100nmを超える電波領域も含めた広範囲の電磁波吸収性を有するため、電波遮蔽性を必要とする場合に特に好ましい。
他の光吸収材の数平均凝集粒子径は、透明性の点から、100nm以下が好ましい。
(分散液の調製)
本発明の分散液は、本発明の近赤外線吸収粒子、分散媒、必要に応じて分散剤、バインダ樹脂等を混合し、自転・公転式ミキサー、ビーズミル、遊星ミル、超音波ホモジナイザ等によって撹拌することにより調製できる。高い透明性を確保するためには、充分に撹拌する必要がある。撹拌は、連続的に行ってもよく、断続的に行ってもよい。
(作用効果)
以上説明した本発明の分散液にあっては、本発明の近赤外線吸収粒子を分散媒に分散させたものであるため、可視光領域の透過率が高く、近赤外線領域の透過率が低く、波長630〜700nmの間で急峻に透過率が変化し、かつ耐湿性に優れる近赤外線吸収塗膜の形成に有用である。
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、樹脂と、該樹脂に分散された本発明の近赤外線吸収粒子とを含み、必要に応じて分散剤、他の光吸収材を含む。
近赤外線吸収粒子の量は、樹脂組成物(100質量%)のうち、10〜60質量%が好ましい。近赤外線吸収粒子の量が10質量%以上であれば、充分な近赤外線吸収特性を発現できる。近赤外線吸収粒子の量が60質量%以下であれば、可視光領域の透過率を高く維持できる。
(樹脂)
樹脂としては、熱可塑性樹脂(ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、アルキド系樹脂等)、熱硬化性樹脂(エポキシ系樹脂、熱硬化型アクリル系樹脂、シルセスキオキサン系樹脂等)が挙げられる。近赤外線吸収塗膜に透明性が必要となる場合、樹脂としては、アクリル系樹脂またはポリエステル系樹脂が好ましい。樹脂の量は、樹脂組成物(100質量%)のうち、40〜90質量%が好ましい。
(分散剤)
分散剤としては、近赤外線吸収粒子の表面に対して改質効果を示すもの、たとえば、上述した界面活性剤、シラン、シリコーンレジン、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコアルミネート系カップリング剤等が挙げられる。
(他の光吸収材)
他の光吸収材としては、上述した紫外線吸収材、他の赤外線吸収材等が挙げられる。
(樹脂組成物の調製)
本発明の樹脂組成物は、本発明の近赤外線吸収粒子、樹脂、必要に応じて溶媒や分散剤等を混合し、自転・公転式ミキサー、ビーズミル、遊星ミル、ミキサー型混練機、3本ロール等によって混練することにより調製できる。高い透明性を確保するためには、充分に混練する必要がある。混練は、連続的に行ってもよく、断続的に行ってもよい。
(作用効果)
以上説明した本発明の樹脂組成物にあっては、本発明の近赤外線吸収粒子を樹脂に分散させたものであるため、可視光領域の透過率が高く、近赤外線領域の透過率が低く、波長630〜700nmの間で急峻に透過率が変化し、かつ耐湿性に優れる近赤外線吸収塗膜、近赤外線吸収物品の形成に有用である。
<近赤外線吸収塗膜を有する物品>
本発明の近赤外線吸収塗膜を有する物品は、本発明の近赤外線吸収粒子を含む近赤外線吸収塗膜を、基材の表面に有する。
本発明の近赤外線吸収塗膜を有する物品は、本発明の分散液を、基材の表面に塗布し、乾燥させる、または、本発明の樹脂組成物を、基材の表面に塗布し、必要に応じて硬化させることによって製造できる。
近赤外線吸収塗膜を有する物品としては、カメラ用の近赤外線フィルタ、プラズマディスプレイ用の光学フィルタ、車両(自動車等)用のガラス窓、ランプ等が挙げられる。
基材の形状は、フィルム状であってもよく、板状であってもよい。基材の材料としては、ガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル、フッ素樹脂等が挙げられ、透明性および耐熱性の点から、ガラスが好ましい。
近赤外線吸収塗膜の、下式(3)で表わされる透過率の変化量D’は、−0.36以下が好ましく、−0.37以下がより好ましい。
D’(%/nm)=[T700(%)−T630(%)]/[700(nm)−630(nm)] ・・・(3)。
ただし、T700は、近赤外線吸収塗膜の波長700nmの透過率であり、T630は、近赤外線吸収塗膜の波長630nmの透過率である。
透過率の変化量D’が−0.36以下であれば、波長630〜700nmの間における透過率の変化が充分に急峻となり、カメラの近赤外線吸収フィルタに好適となる。
近赤外線吸収塗膜の波長600nmの透過率は、70%以上が好ましく、75%以上がより好ましい。波長600nmの透過率が70%以上であれば、赤色光の吸収が充分に抑えられ、カメラの近赤外線吸収フィルタに好適となる。
近赤外線吸収塗膜の波長450nmの透過率は、75%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。波長450nmの透過率が75%以上であれば、可視光領域の光吸収が少なく、カメラの近赤外線吸収フィルタに好適となる。
近赤外線吸収塗膜の波長715nmの透過率は、10%以下が好ましく、5%以下がより好ましい。
近赤外線吸収塗膜の波長500nmの透過率は、80%以上が好ましく、85%以上がより好ましい。
近赤外線吸収塗膜の透過率は、下記のようにして測定する。
樹脂がポリエステル系樹脂の場合、固形分として近赤外線吸収粒子の31質量%および樹脂の69質量%を含む分散液をガラス基材に塗布し、厚さ70μmの近赤外線吸収塗膜を形成する。樹脂がアクリル系樹脂の場合、固形分として近赤外線吸収粒子の50質量%および樹脂の50質量%を含む分散液をガラス基材に塗布し、厚さ20μmの近赤外線吸収塗膜を形成する。該近赤外線吸収塗膜について、紫外可視分光光度計を用いて透過率を測定する。
<近赤外線吸収物品>
本発明の近赤外線吸収物品は、本発明の近赤外線吸収粒子を含む。
本発明の近赤外線吸収物品は、本発明の樹脂組成物を、公知の成形法で成形することによって製造できる。
成形法としては、押出成形法、射出成形法、カレンダー法、キャスティング法等が挙げられる。
物品の形状としては、フィルム状、板状、基材に対するコート膜等が挙げられる。
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
例1〜3は、実施例であり、例4、5は、比較例である。
(X線回折)
粉末状態の近赤外線吸収粒子について、X線回折装置(RIGAKU社製、RINT−TTR−III)を用いてX線回折の測定を行い、結晶構造の同定を行った。また、結晶子の大きさを、2θ=14°の反射についてシェラーの方法により計算によって求めた。
(数平均凝集粒子径)
近赤外線吸収粒子を水に分散させた粒子径測定用分散液(固形分濃度:5質量%)について、動的光散乱式粒度分布測定装置(日機装社製、マイクロトラック超微粒子粒度分析計UPA−150)を用いて数平均凝集粒子径を測定した。
(反射率)
粉末状態の近赤外線吸収粒子について、紫外可視分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製、U−4100形)を用いて拡散反射スペクトル(反射率)を測定した。ベースラインとして、硫酸バリウムを用いた。
(透過率)
近赤外線吸収塗膜について紫外可視分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製、U−4100形)を用いて透過スペクトル(透過率)を測定した。
(ヘーズ)
透過率の測定に用いた近赤外線吸収塗膜についてヘーズメーター(BYK Gardner社製、haze−gard plus)を用いてヘーズを測定した。
〔例1〕
工程(a):
52質量%リン酸水素二カリウム(純正化学製)水溶液の500gに、撹拌しながら、5質量%硫酸銅・五水和物(純正化学製)水溶液の500gを加え、5時間以上室温にて撹拌し、水色反応液を得た。反応時のPO 3−/Cu2+(モル比)を表1に示す。水色反応液を、卓上遠心分離機を用いて固液分離し、水色沈降物を得た。水色沈降物をアセトン中に分散させ、超音波処理を行った後、卓上遠心分離機を用いて固液分離した。得られた沈降物を150℃で2時間乾燥した後、エタノールに分散させて、原料スラリーを得た。
工程(b):
特開2005−170760号公報に記載された装置を用い、工程(a)で得られた原料スラリーをプラズマトーチ内の熱プラズマに導入し、得られた生成物をチャンバ内で冷却して暗緑色の粒子を得た。
工程(c):
工程(b)で得られた粒子を、平皿に移し、大気中で、500℃で5分間熱処理し、薄青緑色のコア粒子を得た。熱処理には赤外線イメージ炉を用いた。
得られたコア粒子は、走査型電子顕微鏡を用いた観察よって平均粒子径が70nm程度で粒度分布の少ないことが確認された。また、コア粒子についてX線回折を測定した。結果を図1に示す。X線回折の結果から、KCuPOの結晶構造を確認でき、該粒子は、実質的にKCuPOの結晶子からなるコア粒子であることが同定された。
工程(d):
200mLの石英製耐圧容器に、コア粒子の1.00g、TEOS(酸化ケイ素換算の固形分濃度:28.8質量%)の7.72g、イソプロパノールの31.20g、28質量%のアンモニア水溶液の0.50gを入れ、原料液を調製した。
耐圧容器を密封した後、マイクロ波加熱装置(マイルストーンゼネラル社製、MicroSYNTH)を用い、原料液に最大出力:1000W、周波数:2.45GHzのマイクロ波を、到達温度150℃の設定で照射し、TEOSを加水分解して、コア粒子の表面に酸化ケイ素を析出させ、シェルを形成し、近赤外線吸収粒子の分散液を得た。得られた分散液を、卓上遠心分離機を用いて固液分離した。得られた沈降物を150℃で2時間乾燥し、酸化ケイ素により表面被覆された赤外線吸収微粒子粉を得た。透過型電子顕微鏡を用いた観察結果から酸化ケイ素からなるシェルの厚さはおよそ10nmであった。
また、近赤外線吸収粒子についてX線回折を測定した。X線回折の結果から、KCuPOの結晶構造を確認でき、該粒子は、工程(d)を経た後も、実質的にKCuPOの結晶子からなる近赤外線吸収粒子であることが同定された。また、結晶子の大きさを表1に示す。
また、近赤外線吸収粒子の粒子径測定用分散液を調製し、数平均凝集粒子径を測定した。結果を表1に示す。
また、近赤外線吸収粒子の拡散反射スペクトル(反射率)を測定した。結果を表1に示す。また、拡散反射スペクトルを図2に実線にて示す。
耐湿試験:
近赤外線吸収粒子を、るつぼに入れ、耐湿試験を行った。試験機としては、恒温恒湿器(エスペック社製、小型環境試験機LH−113)を用い、試験条件は85℃、相対湿度85%と設定し、1000時間暴露した。該試験後の近赤外線吸収粒子について、X線回折を測定した。X線回折の結果から、該試験後もKCuPOの結晶構造を保持することが確認された。
また、該試験後の近赤外線吸収粒子の拡散反射スペクトル(反射率)を測定した。結果を図2に破線にて示す。拡散反射スペクトルの結果から、図2に実線で示す該試験前の近赤外線吸収粒子の拡散反射スペクトルと一致することから、該試験後も近赤外線吸収特性を保持することが示された。また、比較評価方法としては、下記を採用した。結果を表1に示す。
波長300nm〜2600nmの拡散反射の測定結果において、(試験後の近赤外線吸収微粒子の各波長での反射率(%)−試験前の赤外線吸収微粒子の各波長での反射率(%))の最大値の絶対値が15%未満である場合を○とした。上記値が15%以上である場合、×とした。
分散液、塗膜:
近赤外線吸収粒子と、ポリエステル系樹脂(大阪ガスケミカル社製、OKP4HT)の25質量%シクロヘキサノン溶液とを、固形分が近赤外線吸収粒子の31質量%およびポリエステル系樹脂の69質量%となるような割合で混合し、自転・公転式ミキサーで撹拌し、分散液を得た。該分散液をガラス基材に塗布し、窒素置換デシケータにて15分以上乾燥させ、150℃で10分間加熱し、厚さ70μmの近赤外線吸収塗膜を形成した。
該近赤外線吸収塗膜について、透過率およびヘーズを測定した。また、耐湿試験を行った。試験機として、恒温恒湿器(エスペック社製、小型環境試験機LH−113)を用い、試験条件は85℃、相対湿度85%とし、100時間暴露した。該試験後の近赤外線吸収塗膜の透過率およびヘーズを測定し、試験前と比較評価した。結果を表1に示す。なお、比較評価方法としては、下記を採用した。
耐湿試験100時間経過後の、近赤外線吸収塗膜の透過率スペクトルについては、(100−(試験後の近赤外線吸収塗膜の800nmの透過率(%))を(100−(試験前の近赤外線吸収塗膜の800nmの透過率(%))で割った値が0.95以上である場合、○とした。上記値が0.90以上、かつ、0.95未満である場合、△とした。上記値が0.90未満である場合、×とした。
耐湿試験100時間経過後の、近赤外線吸収塗膜のヘーズについては、(100−(試験後の近赤外線吸収塗膜のヘーズ(%))を(100−(試験前の近赤外線吸収塗膜のヘーズ(%))で割った値が0.95以上である場合、○とした。上記値が0.90以上、かつ、0.95未満である場合、△とした。上記値が0.90未満である場合、×とした。
〔例2〕
工程(d)における到達温度を160℃に設定した以外は、例1と同様にして近赤外線吸収粒子を得た。透過型電子顕微鏡を用いた観察結果から酸化ケイ素からなるシェルの厚さはおよそ15nmであった。
近赤外線吸収粒子についてX線回折を測定した。X線回折の結果から、KCuPOの結晶構造を確認でき、該粒子は、工程(d)を経た後も、実質的にKCuPOの結晶子からなる近赤外線吸収粒子であることが同定された。また、結晶子の大きさを表1に示す。
また、近赤外線吸収粒子の粒子径測定用分散液を調製し、数平均凝集粒子径を測定した。結果を表1に示す。
また、近赤外線吸収粒子の拡散反射スペクトル(反射率)を測定した。結果を表1に示す。また、拡散反射スペクトルを図3に実線にて示す。
耐湿試験:
近赤外線吸収粒子を、るつぼに入れ、例1と同様に耐湿試験を行った。該試験後の近赤外線吸収粒子について、拡散反射スペクトル(反射率)を測定し、耐湿試験後も近赤外線吸収特性を保持することを確認した。結果を表1に示す。また、拡散反射スペクトルを図3に破線にて示す。
分散液、塗膜:
近赤外線吸収粒子を用いて、例1と同様にして近赤外線吸収塗膜を形成した。該近赤外線吸収塗膜について、例1と同様に耐湿試験を行い、試験前後の透過率およびヘーズの変化について比較評価した。結果を表1に示す。
〔例3〕
工程(d)における到達温度を170℃に設定した以外は、例1と同様にして表面処理された近赤外線吸収粒子を得た。透過型電子顕微鏡を用いた観察結果から酸化ケイ素からなるシェルの厚さはおよそ15nmであった。
近赤外線吸収粒子についてX線回折を測定した。X線回折の結果から、KCuPOの結晶構造を確認でき、該粒子は、工程(d)を経た後も、実質的にKCuPOの結晶子からなる近赤外線吸収粒子であることが同定された。また、結晶子の大きさを表1に示す。
また、近赤外線吸収粒子の粒子径測定用分散液を調製し、数平均凝集粒子径を測定した。結果を表1に示す。
また、近赤外線吸収粒子の拡散反射スペクトル(反射率)を測定した。結果を表1に示す。また、拡散反射スペクトルを図4に実線にて示す。
耐湿試験:
近赤外線吸収粒子を、るつぼに入れ、例1と同様に耐湿試験を行った。該試験後の近赤外線吸収粒子について、拡散反射スペクトル(反射率)を測定し、耐湿試験後も近赤外線吸収特性を保持することを確認した。結果を表1に示す。また、拡散反射スペクトルを図4に破線にて示す。
分散液、塗膜:
近赤外線吸収粒子を用いて、例1と同様にして近赤外線吸収塗膜を形成した。該近赤外線吸収塗膜について、例1と同様に耐湿試験を行い、試験前後の透過率およびヘーズの変化について比較評価した。結果を表1に示す。
〔例4〕
例1の工程(c)により得られたコア粒子についてX線回折を測定した。結晶子の大きさを表2に示す。
また、コア粒子の粒子径測定用分散液を調製し、数平均凝集粒子径を測定した。結果を表2に示す。
また、コア粒子の拡散反射スペクトル(反射率)を測定した。結果を表2に示す。また、拡散反射スペクトルを図5に実線にて示す。
耐湿試験:
例1の工程(c)により得られたコア粒子を、るつぼに入れ、例1と同様に耐湿試験を行った。該試験後のコア粒子について、X線回折を測定した。X線回折の結果から、図1に示す該試験前のコア粒子のX線回折と異なることから、該試験後にKCuPOの結晶構造が崩壊していることが確認された。
また、該試験後のコア粒子の拡散反射スペクトル(反射率)を測定した。結果を表2に示す。また、拡散反射スペクトルを図5に破線にて示す。拡散反射スペクトルの結果から、図5に実線で示す該試験前のコア粒子の拡散反射スペクトルと異なり、該試験後は可視光波長範囲の長波長側の反射率が減少し、近赤外線波長領域の反射率が上昇した。すなわち、該試験により、コア粒子の近赤外線吸収特性が損なわれることが示された。
分散液、塗膜:
例1の工程(c)により得られたコア粒子を用いて、例1と同様にして近赤外線吸収塗膜を形成した。該近赤外線吸収塗膜について、例1と同様に耐湿試験を行い、試験前後の透過率およびヘーズの変化について比較評価した。結果を表2に示す。
〔例5〕
工程(d)において、マイクロ波の照射を行うことなく、反応液を室温で24時間撹拌した以外は、例1と同様にして近赤外線吸収粒子を得た。透過型電子顕微鏡を用いた観察結果から酸化ケイ素からなるシェルは確認されなかった。
近赤外線吸収粒子についてX線回折を測定した。X線回折の結果から、KCuPOの結晶構造を確認でき、該粒子は、工程(d)を経た後も、実質的にKCuPOの結晶子からなる近赤外線吸収粒子であることが同定された。また、結晶子の大きさを表2に示す。
また、近赤外線吸収粒子の粒子径測定用分散液を調製し、数平均凝集粒子径を測定した。結果を表2に示す。
また、近赤外線吸収粒子の拡散反射スペクトル(反射率)を測定した。結果を表2に示す。また、拡散反射スペクトルを図6に実線にて示す。
耐湿試験:
近赤外線吸収粒子を、るつぼに入れ、例1と同様に耐湿試験を行った。該試験後の近赤外線吸収粒子について、拡散反射スペクトル(反射率)を測定した。結果を表2に示す。また、拡散反射スペクトルを図6に破線にて示す。
分散液、塗膜:
近赤外線吸収粒子を用いて、例1と同様にして近赤外線吸収塗膜を形成した。該近赤外線吸収塗膜について、例1と同様に耐湿試験を行い、試験前後の透過率およびヘーズの変化について比較評価した。結果を表2に示す。
Figure 0005673250
Figure 0005673250
本発明の近赤外線吸収粒子は、カメラ用の近赤外線フィルタ、プラズマディスプレイ用の光学フィルタ、車両(自動車等)用のガラス窓、ランプ等の近赤外線吸収塗膜に含まれる近赤外線吸収材として有用である。

Claims (11)

  1. 下式(1)で表わされる化合物の結晶子からなるコア粒子と、
    該コア粒子の表面を覆う酸化ケイ素を主成分とするシェルと
    を有する、近赤外線吸収粒子。
    1/nCuPO ・・・(1)。
    ただし、Aは、アルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs)、アルカリ土類金属(Mg、Ca、Sr、Ba)およびNHからなる群から選ばれる1種以上であり、
    nは、Aがアルカリ金属またはNHの場合は1であり、Aがアルカリ土類金属の場合は2である。
  2. X線回折から求めた前記結晶子の大きさが、5〜50nmであり、
    前記近赤外線吸収粒子の数平均凝集粒子径が、20〜200nmであり、
    前記近赤外線吸収粒子の拡散反射スペクトルにおける波長450nmの反射率が、80%以上である、請求項1に記載の近赤外線吸収粒子。
  3. 下式(2)で表わされる反射率の変化量Dが、−0.41以下である、請求項1または2に記載の近赤外線吸収粒子。
    D(%/nm)=[R700(%)−R600(%)]/[700(nm)−600(nm)] ・・・(2)。
    ただし、R700は、近赤外線吸収粒子の拡散反射スペクトルにおける波長700nmの反射率であり、R600は、近赤外線吸収粒子の拡散反射スペクトルにおける波長600nmの反射率である。
  4. 前記近赤外線吸収粒子の拡散反射スペクトルにおける波長715nmの反射率が、19%以下であり、かつ波長500nmの反射率が、85%以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の近赤外線吸収粒子。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の近赤外線吸収粒子を製造する方法であって、
    下記の工程(d)を有する、近赤外線吸収粒子の製造方法。
    (d)前記式(1)で表わされる化合物の結晶子からなるコア粒子を、アルコキシシランによって表面処理して、前記コア粒子の表面に酸化ケイ素を主成分とするシェルを形成する工程。
  6. 前記工程(d)が、下記の工程(d’)である、請求項5に記載の近赤外線吸収粒子の製造方法。
    (d’)前記式(1)で表わされる化合物の結晶子からなるコア粒子と、アルコキシシランとを含む液に、マイクロ波を照射して、前記コア粒子の表面に酸化ケイ素を主成分とするシェルを形成する工程。
  7. 下記の工程(a)〜工程(c)をさらに有する、請求項5または6に記載の近赤外線吸収粒子の製造方法。
    (a)溶媒中にて、Cu2+を含む塩と、PO 3−を含む塩または有機物とを、Cu2+に対するPO 3−のモル比(PO 3−/Cu2+)が10〜20となるような割合で、かつAn+(ただし、Aは、アルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs)、アルカリ土類金属(Mg、Ca、Sr、Ba)およびNHからなる群から選ばれる1種以上であり、nは、Aがアルカリ金属またはNHの場合は1であり、Aがアルカリ土類金属の場合は2である。)の存在下に混合して得られる原料粉末を、分散媒に分散させて原料スラリーを得る工程。
    (b)前記工程(a)で得られた原料スラリーを熱プラズマまたは火炎中に導入し、得られた生成物を冷却して粒子を得る工程。
    (c)前記工程(b)で得られた粒子を、300〜700℃で熱処理して、前記式(1)で表わされる化合物の結晶子からなるコア粒子を得る工程。
  8. 請求項1〜4のいずれかに記載の近赤外線吸収粒子を分散媒に分散させた、分散液。
  9. 請求項1〜4のいずれかに記載の近赤外線吸収粒子を樹脂に分散させた、樹脂組成物。
  10. 請求項1〜4のいずれかに記載の近赤外線吸収粒子を含む近赤外線吸収塗膜を、基材の表面に有する、近赤外線吸収塗膜を有する物品。
  11. 請求項1〜4のいずれかに記載の近赤外線吸収粒子を含む、近赤外線吸収物品。
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