JP2021116212A - 赤外線吸収微粒子粉末、赤外線吸収微粒子粉末分散液、赤外線吸収微粒子分散体、および、それらの製造方法 - Google Patents

赤外線吸収微粒子粉末、赤外線吸収微粒子粉末分散液、赤外線吸収微粒子分散体、および、それらの製造方法 Download PDF

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Hiroshi Tsunematsu
裕史 常松
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武 長南
博貴 中山
Hirotaka Nakayama
博貴 中山
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【課題】卓越した耐湿熱性と赤外線吸収特性を有する赤外線吸収微粒子粉末、当該赤外線吸収微粒子粉末を用いた赤外線吸収微粒子粉末分散液、赤外線吸収微粒子分散体、および、それらの製造方法を提供することである。【解決手段】金属キレート化合物の加水分解生成物、金属酸化物の水和物、から選択される1種以上の劣化抑制剤を、赤外線吸収微粒子の微視的近傍に配置された赤外線吸収微粒子粉末を提供する。【選択図】図1

Description

本発明は、金属キレート化合物の加水分解生成物、金属酸化物の水和物、金属酸化物から選択される1種以上の劣化抑制剤と、可視光を透過し、赤外線を吸収する赤外線吸収微粒子とを含むことを特徴とする赤外線吸収微粒子粉末、赤外線吸収微粒子粉末分散液、赤外線吸収微粒子分散体、および、それらの製造方法に関する。
近年、赤外線吸収体の需要が急増しており、赤外線吸収体に関する特許が多く提案されている。これらの提案を機能的観点から俯瞰すると、例えば、各種建築物や車両の窓材等の分野において、可視光線を十分に取り入れながら近赤外線領域の光を遮蔽し、明るさを維持しつつ室内の温度上昇を抑制することを目的としたものがある。
本発明者等は特許文献1において、赤外線遮蔽材料微粒子が溶媒中に分散してなる赤外線遮蔽材料微粒子分散体、当該赤外線遮蔽材料微粒子分散体の優れた光学特性、導電性、製造方法について開示した。中でも、赤外線遮蔽特性は従来の遮蔽材料よりも卓越したものであった。当該赤外線遮蔽材料微粒子は、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.2≦z/y≦2.999)で表記されるタングステン酸化物の微粒子、または/および、一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物の微粒子であって、当該赤外線遮蔽材料微粒子の粒子直径が1nm以上800nm以下である。
また、本発明者は特許文献2において、耐水性に優れ、且つ、優れた赤外線遮蔽特性を有する赤外線遮蔽微粒子として、一般式WyOzで表記されるタングステン酸化物または/および一般式MxWyOzで表記される複合タングステン酸化物微粒子であって、当該微粒子の平均一次粒径が1nm以上、800nm以下であり、当該微粒子表面が4官能性シラン化合物もしくはその部分加水分解生成物、または/および、有機金属化合物で被覆されている赤外線遮蔽微粒子とその製造方法とを開示した。
更に、本発明者は特許文献3において、特許文献2を凌駕する耐水性や耐湿熱性を有し、且つ、優れた赤外線吸収特性を有する赤外線吸収微粒子とその製造方法とを開示した。
国際公開第2005/37932号 国際公開第2010/55570号 国際公開第2019/093524号
しかしながら、特許文献3で開示した赤外線吸収微粒子の耐水性および耐湿熱性は、年々高まる市場からの要求を十分に満たしていなかった。赤外線吸収材料は、その特質から基本的には屋外で使用され、特に湿熱雰囲気での長期暴露耐性が要求されていた。
本発明は上述の状況の下になされたものであり、その課題とするところは、卓越した耐湿熱性と赤外線吸収特性を有する赤外線吸収微粒子粉末、赤外線吸収微粒子粉末分散液、赤外線吸収微粒子分散体、および、それらの製造方法を提供することである。
本発明者等は、上述の課題の解決の為、優れた光学的特性を有する前記タングステン酸化物微粒子または/および複合タングステン酸化物微粒子を赤外線吸収微粒子とし、当該赤外線吸収微粒子の劣化を抑制し、耐湿熱性および化学安定性を向上させることを可能にする構成について研究を行った。その結果、金属キレート化合物の加水分解生成物、金属酸化物の水和物、金属酸化物、から選択される1種以上の劣化抑制剤が、前記赤外線吸収微粒子の微視的近傍に配置されていることが肝要なことに想到した。
ここで、劣化抑制剤が、前記赤外線吸収微粒子の微視的近傍に配置されているという状態は、劣化抑制剤と赤外線吸収微粒子との両者が十分に混じりあっている状態のことをいう。さらに具体的には、赤外線吸収微粒子と劣化抑制剤が接触している状態、または、赤外線吸収微粒子と劣化抑制剤が接触していなくとも、その間隔が50nm以下、好ましくは30nm以下、より好ましくは10nm以下であるという状態である。
この状態では、赤外線吸収微粒子とその周囲50nm以下、好ましくは30nm以下、より好ましくは10nm以下の領域においては、その他の領域と比較して劣化抑制剤が多く配置している。
そこで本発明において、赤外線吸収微粒子が劣化抑制剤によって被覆されている状態や、赤外線吸収微粒子と劣化抑制剤が接触している状態、または、赤外線吸収微粒子と劣化抑制剤が接触していなくとも、その間隔が50nm以下、好ましくは30nm以下、より好ましくは10nm以下の状態であることを「劣化抑制剤が、赤外線吸収微粒子の微視的近傍に配置されている。」と記載する場合がある。
また本発明において、「赤外線吸収微粒子とその周囲50nm以下、好ましくは30nm以下、より好ましくは10nm以下の領域においては、その他の領域と比較して劣化抑制剤が多く配置している。」状態とは、「赤外線吸収微粒子とその周囲50nm以下、好ましくは30nm以下、より好ましくは10nm以下の領域においては、その他の領域と比較して劣化抑制剤が濃厚に配置している。」または「赤外線吸収微粒子とその周囲50nm以下、好ましくは30nm以下、より好ましくは10nm以下の領域においては、その他の領域と比較して劣化抑制剤が高密度で配置している。」と言い換えることが出来る状態である。
さらに本発明者等は、劣化抑制剤が赤外線吸収微粒子の微視的近傍に配置された赤外線吸収微粒子粉末が、所定の固体状樹脂中に分散している赤外線吸収微粒子分散体は、卓越した耐湿熱性と赤外線吸収特性を有することを知見し、本発明に至った。
即ち、上述の課題を解決する為の第1の発明は、
赤外線吸収微粒子と、金属キレート化合物の加水分解生成物、金属酸化物の水和物、金属酸化物、から選択される1種以の劣化抑制剤とを含み、
劣化抑制剤劣化抑制剤赤外線吸収微粒子と、
前記劣化抑制剤が、前記赤外線吸収微粒子の微視的近傍に配置されていることを特徴とする赤外線吸収微粒子粉末である。
本発明により、卓越した耐湿熱性と赤外線吸収特性とを有する赤外線吸収微粒子分散体を、製造することが出来る。
六方晶の結晶構造を有する複合タングステン酸化物における結晶構造の模式的な平面図である。 実施例1に係る赤外線吸収シートの薄片化試料から取得した透過型電子顕微鏡像および元素マッピング像である。 実施例2に係る赤外線吸収シートの薄片化試料から取得した透過型電子顕微鏡像および元素マッピング像である。 比較例1に係る赤外線吸収シートの薄片化試料から取得した透過型電子顕微鏡像および元素マッピング像である。
以下、本発明を[1]赤外線吸収微粒子、[2]劣化抑制剤、[3]劣化抑制剤の添加方法、[4]赤外線吸収微粒子粉末、[5]赤外線吸収微粒子粉末分散液、赤外線吸収微粒子分散体、並びに、これらを用いた物品、[6]劣化抑制剤が赤外線吸収微粒子の微視的近傍に配置されている状態、の順で詳細に説明する。
[1]赤外線吸収微粒子
一般に、自由電子を含む材料は、プラズマ振動によって波長200nmから2600nmの太陽光線の領域周辺の電磁波に反射吸収応答を示すことが知られている。このような物質の粉末を、光の波長より小さい粒子にすると、可視光領域(波長380nmから780nm)の幾何学散乱が低減されて可視光領域の透明性が得られることが知られている。
尚、本発明において「透明性」とは、「可視光領域の光に対して散乱が少なく透過性が高い。」という意味で用いている。
一般に、タングステン酸化物(WO)中には有効な自由電子が存在しない為、赤外線領域の吸収反射特性が少なく、赤外線吸収微粒子としては有効ではない。
一方、酸素欠損を持つWOや、WOにNa等の陽性元素を添加した複合タングステン酸化物は、導電性材料であり、自由電子を持つ材料であることが知られている。そして、これらの自由電子を持つ材料の単結晶等の分析により、赤外線領域の光に対する自由電子の応答が示唆されている。
本発明者等は、当該タングステンと酸素との組成範囲の特定部分において、赤外線吸収微粒子として特に有効な範囲があることを見出し、可視光領域においては透明で、赤外線領域においては吸収を持つタングステン酸化物微粒子、複合タングステン酸化物微粒子に想到した。
ここで、本発明に係る赤外線吸収微粒子であるタングステン酸化物微粒子または/および複合タングステン酸化物微粒子について、(1)タングステン酸化物微粒子、(2)複合タングステン酸化物微粒子、(3)タングステン酸化物微粒子および複合タングステン酸化物微粒子の光学特性、の順で説明する。
(1)タングステン酸化物微粒子
本発明に係るタングステン酸化物微粒子は、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.2≦z/y≦2.999)で表記されるタングステン酸化物の微粒子である。
一般式WyOzで表記されるタングステン酸化物において、当該タングステンと酸素との組成範囲は、タングステンに対する酸素の組成比が3よりも少なく、さらには、当該赤外線吸収微粒子をWyOzと記載したとき、2.2≦z/y≦2.999であることが好ましい。
当該z/yの値が2.2以上であれば、当該タングステン酸化物中に目的以外であるWOの結晶相が現れるのを回避することが出来ると伴に、材料としての化学的安定性を得ることが出来るので有効な赤外線吸収微粒子となる。一方、当該z/yの値が2.999以下であれば、必要とされる量の自由電子が生成され効率よい赤外線吸収微粒子となる。
(2)複合タングステン酸化物微粒子
上述したWOへ、後述する元素Mを添加し複合タングステン酸化物とすることで、当該WO中に自由電子が生成され、特に近赤外線領域に自由電子由来の強い吸収特性が発現し、1000nm付近の近赤外線吸収微粒子として有効となる。
即ち、当該WOに対し、酸素量の制御と、自由電子を生成する元素Mの添加とを併用することで、より効率の良い赤外線吸収微粒子を得ることが出来る。この酸素量の制御と、自由電子を生成する元素Mの添加とを併用した赤外線吸収微粒子の一般式をMxWyOz(但し、Mは、前記M元素、Wはタングステン、Oは酸素)と記載したとき、0.001≦x/y≦1、2.0≦z/y≦3の関係を満たす赤外線吸収微粒子が望ましい。
まず、元素Mの添加量を示すx/yの値について説明する。
x/yの値が0.001より大きければ、複合タングステン酸化物において十分な量の自由電子が生成され目的とする赤外線吸収効果を得ることが出来る。そして、元素Mの添加量が多いほど、自由電子の供給量が増加し、赤外線吸収効率も上昇するが、x/yの値が1程度で当該効果も飽和する。また、x/yの値が1より小さければ、当該赤外線吸収微粒子中に不純物相が生成されるのを回避できるので好ましい。
また、元素Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、I、Ybのうちから選択される1種類以上であることが好ましい。
ここで、元素Mを添加された当該MxWyOzにおける安定性の観点から、元素Mは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Reのうちのうちから選択される1種類以上の元素であることがより好ましい。そして、赤外線吸収微粒子としての光学特性、耐候性を向上させる観点から、元素Mは、アルカリ土類金属元素、遷移金属元素、4B族元素、5B族元素に属するものであることがさらに好ましい。
次に、酸素量の制御を示すz/yの値について説明する。z/yの値については、MxWyOzで表記される複合タングステン酸化物においても、上述したWyOzで表記されるタングステン酸化物と同様の機構が働くことに加え、z/y=3.0や2.0≦z/y≦2.2においても、上述した元素Mの添加量による自由電子の供給がある。この為、2.0≦z/y≦3.0が好ましく、より好ましくは2.2≦z/y≦3.0、さらに好ましくは2.45≦z/y≦3.0である。
さらに、当該複合タングステン酸化物微粒子が六方晶の結晶構造を有する場合、当該微粒子の可視光領域の透過が向上し、赤外領域の吸収が向上する。この六方晶の結晶構造の模式的な平面図である図1を参照しながら説明する。
図1において、符号11で示すWO単位にて形成される8面体が6個集合して六角形の空隙が構成され、当該空隙中に、符号12で示す元素Mが配置して1箇の単位を構成し、この1箇の単位が多数集合して六方晶の結晶構造を構成する。
そして、可視光領域における光の透過を向上させ、赤外領域における光の吸収を向上させる効果を得る為には、複合タングステン酸化物微粒子中に、図1を用いて説明した単位構造が含まれていれば良く、当該複合タングステン酸化物微粒子が結晶質であっても非晶質であっても構わない。
この六角形の空隙に元素Mの陽イオンが添加されて存在するとき、可視光領域における光の透過が向上し、赤外領域における光の吸収が向上する。ここで一般的には、イオン半径の大きな元素Mを添加したとき当該六方晶が形成され易い。具体的には、Cs、K、Rb、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Snを添加したとき六方晶が形成され易い。勿論これら以外の元素でも、WO単位で形成される六角形の空隙に上述した元素Mが存在すれば良く、上述の元素に限定される訳ではない。
六方晶の結晶構造を有する複合タングステン酸化物微粒子が均一な結晶構造を有するとき、添加元素Mの添加量は、x/yの値で0.001≦x/y≦1が好ましく、0.2≦x/y≦0.5がより好ましく、更に好ましくは0.33である。x/yの値が0.33となることで、上述した元素Mが六角形の空隙の全てに配置されると考えられる。
また、六方晶以外であって、正方晶、立方晶の複合タングステン酸化物も赤外線吸収微粒子として有効である。結晶構造によって、赤外線領域の吸収位置が変化する傾向があり、立方晶<正方晶<六方晶の順に、吸収位置が長波長側に移動する傾向がある。また、それに付随して可視光線領域の吸収が少ないのは、六方晶、正方晶、立方晶の順である。従って、より可視光領域の光を透過し、より赤外線領域の光を吸収する用途には、六方晶の複合タングステン酸化物を用いることが好ましい。ただし、ここで述べた光学特性の傾向は、あくまで大まかな傾向であり、添加元素の種類や、添加量、酸素量によって変化するものであり、本発明がこれに限定されるわけではない。
(3)タングステン酸化物微粒子および複合タングステン酸化物微粒子の光学特性
本発明に係る、タングステン酸化物微粒子や複合タングステン酸化物微粒子を含有する赤外線吸収微粒子は、近赤外線領域、特に波長1000nm付近の光を大きく吸収するため、その透過色調は青色系から緑色系となる物が多い。
また、当該赤外線吸収微粒子中におけるタングステン酸化物微粒子や複合タングステン酸化物微粒子の分散粒子径は、その使用目的によって、各々選定することができる。
まず、透明性を保持したい応用に使用する場合は、800nm以下の粒子径を有していることが好ましい。これは、800nmよりも小さい粒子は、散乱により光を完全に遮蔽することが無く、可視光線領域の視認性を保持し、同時に効率良く透明性を保持することができるからである。特に可視光領域の透明性を重視する場合は、さらに粒子による散乱を考慮することが好ましい。
この粒子による散乱の低減を重視するとき、分散粒子径は200nm以下、好ましくは100nm以下が良い。この理由は、粒子の分散粒子径が小さければ、幾何学散乱もしくはミー散乱による、波長400nm〜780nmの可視光線領域の光の散乱が低減される結果、赤外線吸収膜が曇りガラスのようになり、鮮明な透明性が得られなくなるのを回避できる。即ち、分散粒子径が200nm以下になると、上記幾何学散乱もしくはミー散乱が低減し、レイリー散乱領域になる。レイリー散乱領域では、散乱光は粒子径の6乗に比例して低減するため、分散粒子径の減少に伴い散乱が低減し透明性が向上するからである。
さらに分散粒子径が100nm以下になると、散乱光は非常に少なくなり好ましい。光の散乱を回避する観点からは、分散粒子径が小さい方が好ましく、分散粒子径が1nm以上あれば工業的な製造は容易である。
上記分散粒子径を800nm以下とすることにより、本発明に係る赤外線吸収微粒子を溶媒中に分散させた赤外線吸収微粒子分散体のヘイズ値は、可視光透過率85%以下でヘイズ30%以下とすることができる。ヘイズが30%よりも大きい値であると、曇りガラスのようになり、鮮明な透明性が得られない。
尚、赤外線吸収微粒子の分散粒子径は、動的光散乱法を原理とした大塚電子株式会社製ELS−8000等を用いて測定することができる。
また、タングステン酸化物微粒子や複合タングステン酸化物微粒子において、2.45≦z/y≦2.999で表される組成比を有する、所謂「マグネリ相」は化学的に安定であり、赤外線領域の吸収特性も良いので、赤外線吸収微粒子として好ましい。
また、優れた赤外線吸収特性を発揮させる観点から、赤外線吸収微粒子の結晶子径は1nm以上200nm以下であることが好ましく、より好ましくは1nm以上100nm以下、さらに好ましくは10nm以上70nm以下である。尚、結晶子径の測定には、粉末X線回折法(θ―2θ法)によるX線回折パターンの測定と、リートベルト法による解析を用いる。X線回折パターンの測定には、例えばスペクトリス株式会社PANalytical製の粉末X線回折装置「X’Pert−PRO/MPD」などを用いて行うことができる。
[2]劣化抑制剤
本発明に係る赤外線吸収微粒子の微視的近傍に配置された劣化抑制剤は、金属キレート化合物の加水分解生成物、金属酸化物の水和物、金属酸化物から選択される1種以上の金属化合物である。但し、当該金属キレート化合物の加水分解生成物は、金属キレート化合物の加水分解生成物の重合物も含む概念である。
そして、当該金属キレート化合物は、金属アルコキシド、金属アセチルアセトネート、金属カルボキシレートであることが好ましい観点から、エーテル結合、エステル結合、アルコキシ基、アセチル基から選択される1種以上を有することが好ましい。
ここで、本発明に係る劣化抑制剤について、(1)金属キレート化合物、(2)金属キレート化合物の加水分解生成物および重合物、(3)金属酸化物の水和物、(4)金属酸化物、(5)劣化抑制剤の添加量、の順で説明する。
(1)金属キレート化合物
本発明に係る劣化抑制剤原料として用いる金属キレート化合物は、アルコキシ基を含有するAl系、Zr系、Ti系、Si系、Zn系のキレート化合物から選ばれる1種または2種以上であることが好ましい。
アルミニウム系のキレート化合物としては、アルミニウムエチレート、アルミニウムイソプロピレート、アルミニウムsec−ブチレート、モノ−sec−ブトキシアルミニウムジイソプロピレートなどのアルミニウムアルコレートまたはこれら重合物、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、オクチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロプレート、ステアリルアセトアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)等、を例示することが出来る。
これらの化合物は、アルミニウムアルコレートを非プロトン性溶媒や、石油系溶剤、炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、アミド系溶剤等に溶解し、この溶液に、β−ジケトン、β−ケトエステル、一価または多価アルコール、脂肪酸等を加えて、加熱還流し、リガンドの置換反応により得られた、アルコキシ基含有のアルミニウムキレート化合物である。
ジルコニア系のキレート化合物としては、ジルコニウムエチレート、ジルコニウムブチレートなどのジルコニウムアルコレートまたはこれら重合物、ジルコニウムトリブトキシステアレート、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムトリブトキシエチルアセトアセテート、ジルコニウムブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)等、を例示することが出来る。
チタン系のキレート化合物としては、メチルチタネート、エチルチタネート、イソプロピルチタネート、ブチルチタネート、2−エチルヘキシルチタネートなどのチタンアルコレートやこれら重合物、チタンアセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンエチルアセトアセテート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネート等、を例示することが出来る。
シリコン系のキレート化合物としては、一般式:Si(OR)(但し、Rは同一または異種の炭素原子数1〜6の一価炭化水素基)で示される4官能性シラン化合物またはその加水分解生成物を用いることが出来る。4官能性シラン化合物の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等が挙げられる。さらに、これらアルコキシシランモノマーのアルコキシ基の一部あるいは全量が加水分解し、シラノール(Si−OH)基となったシランモノマー、および、加水分解反応を経て自己縮合した重合体の適用も可能である。
また、4官能性シラン化合物の加水分解生成物(4官能性シラン化合物の中間体全体を指示する適宜な術語が存在しない。)としては、アルコキシ基の一部あるいは全量が加水分解して、シラノール(Si−OH)基となったシランモノマーが挙げられる。尚、アルコキシシランモノマー中のアルコキシシリル基(Si-OR)は、加水分解反応の過程において、その全てが加水分解してシラノール(Si−OH)になるわけではない。
亜鉛系のキレート化合物としては、オクチル酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛などの有機カルボン酸亜鉛塩、アセチルアセトン亜鉛キレート、ベンゾイルアセトン亜鉛キレート、ジベンゾイルメタン亜鉛キレート、アセト酢酸エチル亜鉛キレート等、を好ましく例示することが出来る。
(2)金属キレート化合物の加水分解生成物および重合物
本発明では、上述した金属キレート化合物における、アルコキシ基、エーテル結合、エステル結合の全量が加水分解し、ヒドロキシル基やカルボキシル基となった加水分解生成物、一部が加水分解した部分加水分解生成物、または/および、当該加水分解反応を経て自己縮合した重合物も、劣化抑制剤として、本発明に係る赤外線吸収微粒子の微視的近傍に配置させるものである。
即ち、本発明における加水分解生成物は、部分加水分解生成物を含む概念である。
(3)金属酸化物の水和物
本発明に係る劣化抑制剤として用いる金属酸化物の水和物は、Al、Zr、Ti、Si、Znから選ばれる1種または2種以上の金属元素を含むことが好ましい。具体的には、例えば、Al・nHO(0<n≦3)、ZrO・nHO(0<n≦2)、TiO・nHO(0<n≦2)、SiO・nHO(0<n≦2)、ZnO・nHO(0<n≦1)であることがより好ましい。尚、これらの金属酸化物の水和物は、(2)で示す金属キレート化合物の加水分解生成物でもある。
(4)金属酸化物
本発明に係る劣化抑制剤として用いる金属酸化物は、Al、Zr、Ti、Si、Znから選ばれる1種または2種以上の金属元素を含むことが好ましい。具体的には、例えば、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化亜鉛であることがより好ましい。
(5)劣化抑制剤の添加量
上述した劣化抑制剤の添加量は、赤外線吸収微粒子100質量部に対して、金属元素換算で0.1質量部以上、1000質量部以下であることが好適である。より好ましくは1質量部以上、500質量部以下の範囲である。さらに好ましくは10質量部以上、150質量部以下の範囲である。
これは、赤外線吸収微粒子100質量部に対して、劣化抑制剤が0.1質量部以上あれば、それらの化合物の加水分解生成物や、当該加水分解生成物の重合物が、赤外線吸収微粒子の微視的近傍に配置された効果が発揮され、耐湿熱性向上の効果が得られる。
また、赤外線吸収微粒子100質量部に対して、劣化抑制剤が1000質量部以下であれば、赤外線吸収微粒子の微視的近傍に配置されたことによる耐湿熱性の向上が飽和せず、添加効果の向上が望めるからである。
さらに、赤外線吸収微粒子100質量部に対して、劣化抑制剤が1000質量部以下であることで、赤外線吸収微粒子に対する添加量が過剰になり、溶媒除去時に当該劣化抑制剤を介して微粒子同士が造粒し易くなることを回避出来るからである。当該望まれない微粒子同士の造粒回避によって、良好な透明性を担保することが出来る。
加えて、劣化抑制剤の過剰による原料コスト、および、処理時間の増加による生産コスト増加も回避出来る。よって工業的な観点からも劣化抑制剤の添加量は、赤外線吸収微粒子100質量部に対して1000質量部以下とすることが好ましい。
[3]劣化抑制剤の添加方法
本発明に係る劣化抑制剤の添加方法について説明する。
まず、水を主成分として含む溶媒中へ劣化抑制剤原料となる金属キレート化合物や金属環状オリゴマー化合物を添加して、当該劣化抑制剤の原料の加水分解反応を進めることにより、金属キレート化合物または金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物、当該加水分解生成物の重合物、金属酸化物の水和物から選択される1種以上を含む劣化抑制剤含有液を得る。また、金属酸化物の水和物を熱処理することで得られる金属酸化物を劣化抑制剤として用いても良い。他にも、公知の方法で合成した金属酸化物の水和物や金属酸化物を、そのまま劣化抑制剤として用いても良い。
一方、赤外線吸収微粒子を水溶性の溶媒中に分散させて、混合用の赤外線吸収微粒子分散液(本発明において「混合用分散液」と記載する場合がある。)を調製する。
そして、調製された混合用分散液へ劣化抑制剤含有液を添加して混合攪拌を行うことにより、本発明に係る劣化抑制剤の添加を行う。
本発明に係る劣化抑制剤原料の添加方法について(1)劣化抑制剤含有液、(2)混合用の赤外線吸収微粒子分散液、(3)混合攪拌、の順で説明する。
(1)劣化抑制剤含有液
水を主成分として含む液体溶媒中へ、劣化抑制剤原料となる金属キレート化合物や金属環状オリゴマー化合物を添加して加水分解反応を進めることにより、劣化抑制剤含有液を得る。
ここで本発明者らは、この劣化抑制剤含有液の調整の際において、水を主成分として含む溶媒を攪拌混合しながら、ここへ劣化抑制剤原料を添加することにより、添加した劣化抑制剤原料の加水分解反応を即座に完了させることが好ましいことを知見した。
これは、水を主成分として含む溶媒中へ添加された、劣化抑制剤原料の反応順序に拠るものと考えられる。即ち、水を主成分として含む溶媒中では、劣化抑制剤原料の加水分解反応が必ず先立ち、その後に、生成した加水分解生成物の重合反応が起こる為であると考えられる。
当該反応順序に拠り、水を主成分として含まない溶媒を用いた場合に比較して、劣化抑制剤含有液中に存在することとなる、劣化抑制剤原料由来の炭素C残存量を低減することが出来ると考えられるからである。
そして、当該劣化抑制剤含有液中に存在する劣化抑制剤原料由来の炭素C残存量を低減することで、赤外線吸収微粒子の微視的近傍に劣化抑制剤を多く配置させることが出来たと考えている。
水を主成分として含む液体溶媒中へ劣化抑制剤原料を滴下添加する際、当該劣化抑制剤原料の時間当たりの添加量を調整する為に、当該劣化抑制剤原料自体を予め適宜な溶剤で希釈して希釈原料としておき、当該希釈原料を滴下添加することも好ましい。希釈に用いる溶剤としては、当該劣化抑制剤原料や溶媒と反応せず、水と相溶性の高いものが好ましい。具体的にはアルコール系、ケトン系、グリコール系等の溶剤が好ましく使用出来る。
劣化抑制剤原料の希釈倍率は特に限定されるものではない。尤も、生産性を担保する観点から、希釈倍率は100倍以下とするのが好ましい。
劣化抑制剤含有液中における水分の最適含有量は、劣化抑制剤原料の加水分解反応速度に拠る。一般的には、劣化抑制剤含有液中の水分の含有量は高いほど好ましく、溶媒全体100重量部に対して、50〜100重量部であることが好ましい。また、劣化抑制剤原料100重量部に対して、100重量部以上であることも好ましい。
また、劣化抑制剤含有液中において、当該劣化抑制剤は微粒子状態で分散していることが好ましい。これは、劣化抑制剤が微粒子状態で分散していると、赤外線吸収微粒子の微視的近傍に配置されるのが容易だからである。
尚、劣化抑制剤含有液中において、添加された劣化抑制剤原料が、添加開始直後には金属イオンにまで分解されることがある。しかし、そのような場合であっても、劣化抑制剤の飽和水溶液となった時点で、当該金属イオン迄の分解は終了するので特に問題はない。
さらに、水を主成分として含む液体溶媒中へ劣化抑制剤原料を添加する際に、液体媒体を加温しておくことで、劣化抑制剤原料の加水分解反応速度を調整することが出来る。また、劣化抑制剤含有液中の水分含有量や加温状態によって得られる劣化抑制剤の加水分解量は変化するが、いずれにしても、加水分解反応によって、部分加水分解生成物、加水分解生成物、当該加水分解生成物の重合物、金属酸化物の水和物から選択される1種以上の劣化抑制剤が得られる。
また、金属酸化物の水和物を所定温度以上で熱処理することで、無水の金属酸化物を得ることが出来、当該無水の金属酸化物を劣化抑制剤として用いることが出来る。
(2)混合用の赤外線吸収微粒子分散液
本発明に係る混合用分散液においては、赤外線吸収微粒子であるタングステン酸化物または/および複合タングステン酸化物を予め細かく粉砕して、水溶性の溶媒中に分散させ、単分散の状態にしておくことが好ましい。そして、この粉砕、分散処理工程中において、分散状態を担保し、微粒子同士を凝集させないことが肝要である。これは、当該微粒子が凝集を起こし、後述する赤外線吸収微粒子分散体中においても当該凝集体が残存し、後述する赤外線吸収微粒子分散体の透明性が低下する事態を回避する為である。
この結果、本発明に係る混合用分散液に対して粉砕・分散処理を行うことにより、本発明に係る劣化抑制剤含有液を添加した際、個々の赤外線吸収微粒子の微視的近傍へ、劣化抑制剤を均一に配置させることが出来る。
当該赤外線吸収微粒子の粉砕・分散処理の具体的方法としては、例えば、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、ペイントシェーカー、超音波ホモジナイザーなどの装置を用いた粉砕・分散処理方法が挙げられる。その中でも、ビーズ、ボール、オタワサンドといった媒体メディアを用いた、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、ペイントシェーカー等の媒体攪拌ミルで粉砕、分散処理を行うことは、赤外線吸収微粒子が所望の分散粒子径へ到達する時間が短いことから好ましい。
水溶性の溶媒としては、水、アルコール系、ケトン系、グリコール系等の溶剤が好ましく使用出来る。
(3)混合攪拌
上述した混合用分散液を攪拌しながら、劣化抑制剤含有液を添加し、混合攪拌することにより、劣化抑制剤を含む赤外線吸収微粒子分散液を得る。このとき、当該劣化抑制剤を含む赤外線吸収微粒子分散液中において、劣化抑制剤が均一に存在するように混合攪拌出来る攪拌装置を用いる。例えば、羽根付きの剪断力を有する攪拌機等が好ましいが、特に限定されるものではない。
[4]赤外線吸収微粒子粉末
前記混合攪拌により得られた、劣化抑制剤が均一に存在している、当該劣化抑制剤を含む赤外線吸収微粒子分散液へ乾燥処理を施して液体溶媒を除去し、劣化抑制剤が、赤外線吸収微粒子の微視的近傍に配置されている状態にある本発明に係る赤外線吸収微粒子粉末を得る。
赤外線吸収微粒子の微視的近傍に配置している劣化抑制剤が、当該赤外線吸収微粒子の耐水性や耐湿熱性を向上させる機構は未だ解明されていない。本発明者らは、当該劣化抑制剤がその周囲の静電ポテンシャルを変化させ、赤外線吸収微粒子の劣化反応が起きないような場を形成しているものと推測している。
ここで前記乾燥処理の際、乾燥処理温度が、赤外線吸収微粒子粉末が強く凝集して強凝集体を形成する温度を超えないように留意する。従って、例えば室温付近における真空流動乾燥や噴霧乾燥等によって、劣化抑制剤を含む赤外線吸収微粒子分散液を乾燥し、本発明に係る赤外線吸収微粒子粉末を得ることが好ましい。
これは、最終的に用いられる赤外線吸収微粒子分散体や赤外線吸収基材において、それらの用途から、多くの場合において透明性が求められる為である。もし赤外線吸収材料として強く凝集した赤外線吸収微粒子粉末を用いて、赤外線吸収微粒子分散体や赤外線吸収基材を作製してしまうと、曇り度(ヘイズ)の高いものが得られてしまうこととなる。
そこで、赤外線吸収微粒子粉末が強凝集体を形成する温度を超えて加熱処理してしまった場合は、赤外線吸収微粒子分散体や赤外線吸収基材の透明性を確保する為、強凝集した赤外線吸収微粒子粉末を、乾式または/および湿式で解砕して、再分散させることとなる。しかし、当該強凝集した赤外線吸収微粒子粉末を解砕して再分散させる際、劣化抑制剤を赤外線吸収微粒子の微視的近傍に配置させることが困難になるので、所望の耐水性や耐湿熱性を得られなくなる場合がある。
これに対し、真空流動乾燥による処理では、減圧雰囲気下で赤外線吸収微粒子粉末の乾燥と解砕の処理を同時に行う。この為、乾燥速度が速い上に凝集を回避出来る。さらに、減圧雰囲気下での乾燥のため、比較的低温でも溶媒を除去することが出来、残存する溶媒量も限りなく少なくすることが出来る。また、噴霧乾燥による処理では、溶媒の表面力に起因する赤外線吸収微粒子粉末の二次凝集が発生しにくく、解砕処理を施さずとも比較的二次凝集していない赤外線吸収微粒子粉末が得られる。
[5]赤外線吸収微粒子粉末分散液、赤外線吸収微粒子分散体、並びに、これらを用いた物品
以下、本発明に係る赤外線吸収微粒子粉末を用いて得られる赤外線吸収微粒子粉末分散液、赤外線吸収微粒子分散体、並びに、これらを用いた物品について、(1)赤外線吸収微粒子粉末分散液、(2)赤外線吸収微粒子分散体、(3)赤外線吸収微粒子分散体の一例である赤外線吸収基材、(4)赤外線吸収微粒子分散体や赤外線吸収基材を用いた物品、の順に説明する。
(1)赤外線吸収微粒子粉末分散液
本発明に係る赤外線吸収微粒子粉末分散液は、本発明に係る赤外線吸収微粒子粉末が液体溶媒中に分散しているものである。当該液体溶媒としては、有機溶剤、油脂、液状可塑剤、硬化により高分子化される化合物、水、から選択される1種以上の液体溶媒を用いることが出来る。
本発明に係る赤外線吸収微粒子粉末分散液について(i)使用される有機溶剤、(ii)使用される油脂、(iii)使用される液状可塑剤、(iv)使用される硬化により高分子化される化合物、(v)使用される分散剤、(vi)製造方法、(vii)赤外線吸収微粒子粉末分散液の使用方法、の順に説明する。
(i)使用される有機溶剤
本発明に係る赤外線吸収微粒子粉末分散液に使用される有機溶剤としては、アルコール系、ケトン系、炭化水素系、グリコール系、水系、等を挙げることが出来る。
具体的には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコールなどのアルコール系溶剤;
アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンなどのケトン系溶剤;
3−メチル−メトキシ−プロピオネート、酢酸n−ブチルなどのエステル系溶剤;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテートなどのグリコール誘導体;
フォルムアミド、N−メチルフォルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミド類;
トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;
エチレンクロライド、クロルベンゼン、等を挙げることが出来る。
そして、これらの有機溶剤中でも、特に、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸n−ブチル、等を好ましく挙げることが出来る。
(ii)使用される油脂
本発明に係る赤外線吸収微粒子粉末分散液に使用される油脂としては、植物油脂、植物由来の化合物、石油系溶剤、等を挙げることが出来る。
植物油としては、アマニ油、ヒマワリ油、桐油、エノ油等の乾性油、ゴマ油、綿実油、菜種油、大豆油、米糠油、ケシ油等の半乾性油、オリーブ油、ヤシ油、パーム油、脱水ヒマシ油等の不乾性油、等を挙げることが出来る。
植物油由来の化合物としては、植物油の脂肪酸とモノアルコールを直接エステル反応させた脂肪酸モノエステル、エーテル類、等を挙げることが出来る。
また、市販の石油系溶剤も油脂として挙げることが出来る。
市販の石油系溶剤として、アイソパー(登録商標)E、エクソール(登録商標)Hexane、Heptane、E、D30、D40、D60、D80、D95、D110、D130(以上、エクソンモービル社製)、等を挙げることが出来る。
(iii)使用される液状可塑剤
本発明に係る赤外線吸収微粒子粉末分散液に使用される液状可塑剤としては、例えば、一価アルコールと有機酸エステルとの化合物である可塑剤、多価アルコール有機酸エステル化合物等のエステル系である可塑剤、有機リン酸系可塑剤等のリン酸系である可塑剤、等を挙げることが出来る。尚、いずれも室温で液状であるものが好ましい。
なかでも、多価アルコールと脂肪酸から合成されたエステル化合物である可塑剤を好ましく使用することが出来る。当該多価アルコールと脂肪酸とから合成されたエステル化合物は特に限定されないが、例えば、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコールと、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2−エチル酪酸、ヘプチル酸、n−オクチル酸、2−エチルヘキシル酸、ペラルゴン酸(n−ノニル酸)、デシル酸等の一塩基性有機酸との反応によって得られた、グリコール系エステル化合物、等を挙げることが出来る。
また、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコールと、前記一塩基性有機とのエステル化合物等も挙げられる。
なかでも、トリエチレングリコールジヘキサネート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−オクタネート、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノネート等のトリエチレングリコールの脂肪酸エステル、等を使用することが出来る。さらに、トリエチレングリコールの脂肪酸エステルも好ましく挙げることが出来る。
(iv)使用される硬化により高分子化される化合物
本発明に係る赤外線吸収微粒子粉末分散液に使用される、硬化により高分子化される化合物は、重合等により高分子を形成する単量体やオリゴマーを挙げることが出来る。
具体的には、メチルメタクリレート単量体、アクレリート単量体、スチレン樹脂単量体、等を挙げることが出来る。
以上、説明した液状溶媒は、2種以上を組み合わせて用いることが出来る。さらに、必要に応じて、これらの液状溶媒へ酸やアルカリを添加してpH調整してもよい。
(v)使用される分散剤
本発明に係る赤外線吸収微粒子粉末分散液中において、赤外線吸収微粒子粉末の分散安定性を一層向上させ、再凝集による分散粒子径の粗大化を回避する為に、各種の分散剤、界面活性剤、カップリング剤などの添加も好ましい。
当該分散剤、カップリング剤、界面活性剤は用途に合わせて選定可能であるが、アミンを含有する基、水酸基、カルボキシル基、スルホ基、または、エポキシ基を官能基として有するものであることが好ましい。これらの官能基は、赤外線吸収微粒子の表面に吸着して凝集を防ぎ、均一に分散させる効果を持つ。これらの官能基のいずれかを分子中にもつ高分子系分散剤は、さらに好ましい。
また、官能基を有するアクリル−スチレン共重合体系分散剤も好ましい分散剤として挙げられる。中でも、カルボキシル基を官能基として有するアクリル−スチレン共重合体系分散剤、アミンを含有する基を官能基として有するアクリル系分散剤が、より好ましい例として挙げられる。官能基にアミンを含有する基を有する分散剤は、分子量Mw2000〜200000、アミン価5〜100mgKOH/gのものが好ましい。また、カルボキシル基を有する分散剤では、分子量Mw2000〜200000、酸価1〜50mgKOH/gのものが好ましい。
市販の分散剤における好ましい具体例としては、日本ルーブリゾール社製SOLSPERSE(登録商標)(以下同じ)3000、5000、9000、11200、12000、13000、13240、13650、13940、16000、17000、18000、20000、21000、24000SC、24000GR、26000、27000、28000、31845、32000、32500、32550、32600、33000、33500、34750、35100、35200、36600、37500、38500、39000、41000、41090、53095、55000、56000、71000、76500、J180、J200、M387等;SOLPLUS(登録商標)(以下同じ)D510、D520、D530、D540、DP310、K500、L300、L400、R700等;ビックケミー・ジャパン社製Disperbyk(登録商標)(以下同じ)−101、102、103、106、107、108、109、110、111、112、116、130、140、142、145、154、161、162、163、164、165、166、167、168、170、171、174、180、181、182、183、184、185、190、191、192、2000、2001、2009、2020、2025、2050、2070、2095、2096、2150、2151、2152、2155、2163、2164、Anti−Terra(登録商標)(以下同じ)−U、203、204等;BYK(登録商標)(以下同じ)−P104、P104S、P105、P9050、P9051、P9060、P9065、P9080、051、052、053、054、055、057、063、065、066N、067A、077、088、141、220S、300、302、306、307、310、315、320、322、323、325、330、331、333、337、340、345、346、347、348、350、354、355、358N、361N、370、375、377、378、380N、381、392、410、425、430、1752、4510、6919、9076、9077、W909、W935、W940、W961、W966、W969、W972、W980、W985、W995、W996、W9010、Dynwet800、Siclean3700、UV3500、UV3510、UV3570等;エフカアディティブズ社製EFKA(登録商標)(以下同じ)2020、2025、3030、3031、3236、4008、4009、4010、4015、4020、4046、4047、4050、4055、4060、4080、4300、4310、4320、4330、4340、4400、4401、4402、4403、4500、5066、5220、6220、6225、6230、6700、6780、6782、7462、8503等;BASFジャパン社製JONCRYL(登録商標)(以下同じ)67、678、586、611、680、682、690、819、−JDX5050等;大塚化学社製TERPLUS(登録商標)(以下同じ)MD1000、D1180、D 1130等;味の素ファインテクノ社製アジスパー(登録商標)(以下同じ)PB−711、PB−821、PB−822等;楠本化成社製ディスパロン(登録商標)(以下同じ)1751N、1831、1850、1860、1934、DA−400N、DA−703−50、DA−325、DA−375、DA−550、DA−705、DA−725、DA−1401、DA−7301、DN−900、NS−5210、NVI−8514L等;東亞合成社製アルフォン(登録商標)(以下同じ)UH−2170、UC−3000、UC−3910、UC−3920、UF−5022、UG−4010、UG−4035、UG−4040、UG−4070、レゼダ(登録商標)(以下同じ)GS−1015、GP−301、GP−301S等;三菱化学社製ダイヤナール(登録商標)(以下同じ)BR−50、BR−52、BR−60、BR−73、BR−80、BR−83、BR−85、BR−87、BR−88、BR−90、BR−96、BR102、BR−113、BR−116等が挙げられる。
(vi)製造方法
本発明に係る赤外線吸収微粒子粉末分散液を製造するには、前記赤外線吸収微粒子粉末を、液体溶媒中に添加して分散させればよい。再分散させる方法としては、「[3]劣化抑制剤の添加方法(2)混合用の赤外線吸収微粒子分散液」で説明した粉砕・分散処理の具体的方法が挙げられる。ただし、赤外線吸収微粒子粉末を、過度な粉砕・分散処理によって粉砕すると、劣化抑制剤を赤外線吸収微粒子の微視的近傍に留められなくなる恐れがある。よって、粉砕・分散処理は最低限の分散に留めることが好ましい。
尤も、過度な粉砕・分散処理によって、劣化抑制剤を赤外線吸収微粒子の微視的近傍に留められなくなった場合は、粉砕・分散処理後に再度溶媒を除去して後述する赤外線吸収微粒子分散粉を製造すれば良い。溶媒を再度除去することにより、一旦、赤外線吸収微粒子の微視的近傍から離れた劣化抑制剤が再集合し、再び赤外線吸収微粒子の微視的近傍に配置されるからである。
(vii)赤外線吸収微粒子粉末分散液の使用方法
本発明に係る赤外線吸収微粒子粉末分散液の使用方法として(a)赤外線吸収基材、(b)粉末状の赤外線吸収微粒子分散体、(c)硬化型インク組成物、(d)熱可塑性樹脂含有インク組成物、の順に説明する。
(a)赤外線吸収基材
本発明に係る赤外線吸収微粒子粉末分散液は、適宜な基材の表面に塗布し、ここに分散膜を形成させて赤外線吸収基材として利用することが出来る。つまり、当該分散膜は、後述する赤外線吸収微粒子分散体の一種であり、同じく後述する赤外線吸収微粒子粉末分散液の乾燥固化物の一種でもある。
(b)粉末状の赤外線吸収微粒子分散体
本発明に係る赤外線吸収微粒子粉末分散液を乾燥し、粉砕処理して、本発明に係る粉末状の赤外線吸収微粒子分散体(本発明において「分散粉」と記載する場合もある。)とすることが出来る。即ち、当該分散粉は、後述する赤外線吸収微粒子分散体の一種であり、同じく後述する赤外線吸収微粒子粉末分散液の乾燥固化物の一種でもある。
当該分散粉は、赤外線吸収微粒子粉末が固体媒質中(分散剤等)に分散された粉末状の分散体であり、上述の赤外線吸収微粒子粉末とは区別される概念である。当該分散粉は分散剤を含んでいるため、適宜な媒質と混合することで赤外線吸収微粒子を媒質中へ容易に再分散させることが可能である。
当該分散粉を適宜な媒質と混合し、赤外線吸収微粒子を媒質中へ容易に再分散させる構成は、赤外線吸収微粒子粉末分散液の粉砕・分散処理の際に、一旦、赤外線吸収微粒子の微視的近傍から離れた劣化抑制剤あった場合でも、これらの劣化抑制剤が赤外線吸収微粒子の微視的近傍に再配置されている状態になると考えられる。従って、赤外線吸収微粒子分散粉は赤外線吸収微粒子分散体の中でも、特に好ましい適用例であると言える。
当該分散粉は、赤外線吸収製品へ赤外線吸収微粒子を分散状態で添加する原料として用いることが出来る。即ち、本発明に係る赤外線吸収微粒子が固体媒質中に分散された当該分散粉を、再度、液体媒質中に分散させ、赤外線吸収製品用の分散液として使用しても良いし、後述するように当該分散粉を樹脂中に練り込んで使用しても良い。
(c)硬化型インク組成物
本発明に係る赤外線吸収微粒子を液状の媒質に混合・分散させた赤外線吸収微粒子粉末分散液は、光熱変換を利用した様々な用途に用いられる。
例えば、赤外線吸収微粒子を未硬化の熱硬化性樹脂へ添加する、または、本発明に係る赤外線吸収微粒子を適宜な溶媒中に分散した後、未硬化の熱硬化性樹脂を添加することにより、硬化型インク組成物を得ることが出来る。
当該硬化型インク組成物は、所定の基材上に設けられ、赤外線などの電磁波を照射して硬化させた際、当該基材への密着性に優れたものである。このとき、赤外線吸収微粒子は赤外線照射による発熱量を高める助剤として作用している。そして、当該硬化型インク組成物は、従来のインクとしての用途に加え、所定量を塗布し、ここへ赤外線などの電磁波を照射して硬化させて積み上げ、3次元物体を造形する光造形法にも最適な硬化型インク組成物となる。
(d)熱可塑性樹脂含有インク組成物
本発明に係る赤外線吸収微粒子粉末を加熱溶融された熱可塑性樹脂へ添加する、または、本発明に係る赤外線吸収微粒子粉末を適宜な溶媒中に分散した後、溶媒への溶解性の高い熱可塑性樹脂を添加することにより、熱可塑性樹脂含有インク組成物を得ることが出来る。
当該熱可塑性樹脂含有インク組成物は、所定の基材上に設けられ、赤外線などの電磁波照射による溶媒除去と樹脂の加熱融着を経て、当該基材へ密着する。このとき、赤外線吸収微粒子粉末は赤外線照射による発熱量を高める助剤として作用している。そして、当該熱可塑性樹脂含有インク組成物は、従来のインクとしての用途に加え、所定量を塗布し、ここへ赤外線などの電磁波を照射して溶媒除去と樹脂の加熱融着を繰り返すことで積み上げていき、3次元物体を造形する光造形法にも最適な熱可塑性樹脂含有インク組成物となる。
(2)赤外線吸収微粒子分散体
本発明に係る赤外線吸収微粒子分散体は、本発明に係る赤外線吸収微粒子と劣化抑制剤とが微視的近傍に共存した状態で固体媒質中に分散しているものである。尚、当該固体媒質としては、固体状樹脂、ガラス、等の固体媒質を用いることが出来る。
本発明に係る赤外線吸収微粒子分散体のうち、フィルム、ボード、粉末の形状をとるものについて(i)固体状樹脂、(ii)製造方法、(iii)耐湿熱性、の順に説明する。
(i)固体状樹脂
上述したフィルム、ボード、粉末のマトリクスとなる固体状樹脂は、特に限定されるものではなく用途に合わせて選択可能である。低コストで透明性が高く汎用性の広い樹脂として、PET樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、等の使用することが出来る。また、耐候性を考慮してフッ素樹脂を使用することも出来る。これらの固体状樹脂から選択される2種以上を用いることも出来る。
(ii)製造方法
本発明に係る赤外線吸収微粒子粉末を樹脂に練り込み、フィルムやボードに成形する場合、当該赤外線吸収微粒子粉末を直接樹脂に練り込むことが可能である。また、上述した赤外線吸収微粒子粉末分散液と樹脂とを混合すること、または、上述した粉末状の赤外線吸収微粒子分散体(分散粉)を液体媒質に添加し、さらに樹脂と混合することも可能である。固体媒質として樹脂を用いた場合、例えば、厚さ0.1μm〜50mmのフィルムまたはボードを構成することが出来る。
一般的に、本発明に係る赤外線吸収微粒子粉末を固体状樹脂に練り込むとき、当該固体状樹脂の融点付近の温度(200〜300℃前後)で加熱混合して練り込むこととなる。
この場合、さらに、当該赤外線吸収微粒子粉末を固体状樹脂に混合してペレット化し、当該ペレットを各方式でフィルムやボードを形成することも可能である。例えば、押し出し成形法、インフレーション成形法、溶液流延法、キャスティング法等により形成可能である。この時のフィルムやボードの厚さは、使用目的によって適宜設定すればよく、樹脂に対するフィラー量(すなわち、本発明に係る赤外線吸収微粒子の配合量)は、基材の厚さや必要とされる光学特性、機械特性に応じて可変であるが、一般的に樹脂に対して50質量%以下が好ましい。
樹脂に対するフィラー量が50質量%以下であれば、固体状樹脂中での微粒子同士が造粒を回避出来るので、良好な透明性を保つことが出来る。また、本発明に係る赤外線吸収微粒子の使用量も制御出来るのでコスト的にも有利である。
本発明に係る赤外線吸収微粒子粉末を固体媒質に分散させた赤外線吸収微粒子分散体を、さらに粉砕し粉末とした状態でも利用することが出来る。当該構成を採る場合、粉末状の赤外線吸収微粒子分散体において、既に、本発明に係る赤外線吸収微粒子粉末が、上述した固体状樹脂等の固体媒質中で十分に分散している。従って、当該粉末状の赤外線吸収微粒子分散体を所謂マスターバッチとして、適宜な液体媒質に溶解させたり、樹脂ペレット等と混練することで、容易に、液状または固形状の赤外線吸収微粒子分散体を製造することが出来る。
本発明に係る赤外線吸収微粒子粉末を固体媒質に分散させた各種赤外線吸収微粒子分散体(分散粉、マスターバッチ等)を、樹脂ペレット等と混錬する場合、劣化抑制剤が赤外線吸収微粒子の微視的近傍から離脱することは少ないと考えられる。これは、当該混錬の際に発生するせん断力は、それほど大きなものとはならないからである。
さらに、赤外線吸収微粒子粉末の分散状態を確保するために、上述の分散剤が併用される場合多いが、分散剤と練り込み対象の樹脂との分子構造の違いにより、両者が完全に相溶することは稀であり、多くの場合、練り込まれた分散剤は樹脂中で島状に存在するようになる。この結果、樹脂と分散剤とは、微視的には分離した状態となる。ここで、赤外線吸収微粒子や劣化抑制剤は分散剤の官能基によって修飾されているため、分離した島状の分散剤内に留められる。従って、各種赤外線吸収微粒子分散体と樹脂ペレット等とを混錬する場合、劣化抑制剤が赤外線吸収微粒子の微視的近傍に配置されている状態になると考えられる。
(iii)耐湿熱性
本発明に係る赤外線吸収微粒子分散体は、可視光透過率80%前後に設定した当該分散体を、温度85℃相対湿度90%の湿熱雰囲気中に1000時間暴露したとき、当該暴露前後における、波長800nm〜1000nmにおける光の透過率の平均値の変化量が1.8%以下となり、優れた耐湿熱性を有している。
(3)赤外線吸収微粒子分散体の一例である赤外線吸収基材
本発明に係る赤外線吸収微粒子分散体の一例である赤外線吸収基材は、所定の基材表面に、本発明に係る赤外線吸収微粒子粉末を含有する分散膜が形成されているものである。
所定の基材表面に、本発明に係る赤外線吸収微粒子粉末を含有する分散膜が形成されていることにより、本発明に係る赤外線吸収基材は、耐湿熱性および化学安定性に優れ、且つ赤外線吸収材料として好適に利用出来るものである。
本発明に係る赤外線吸収基材について(i)製造方法、(ii)耐湿熱性、の順に説明する。
(i)製造方法
例えば、本発明に係る赤外線吸収微粒子粉末を、アルコール等の有機溶剤や水等の液体媒質と、樹脂バインダーと、所望により分散剤とを混合した赤外線吸収微粒子粉末分散液を、適宜な基材表面に塗布した後、液体媒質を除去したり、硬化させたりすることで、赤外線吸収微粒子分散体が基材表面に直接積層された赤外線吸収基材を得ることが出来る。
前記樹脂バインダー成分は用途に合わせて選択可能であり、紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂、常温硬化樹脂、熱可塑樹脂、等が挙げられる。一方、樹脂バインダー成分を含まない赤外線吸収微粒子粉末分散液を、基材表面に赤外線吸収微粒子分散体を積層しても良いし、当該積層の後に、バインダー成分を含む液体媒質を当該赤外線吸収微粒子分散体の層上に塗布することとしても良い。
具体的には、有機溶剤、樹脂を溶解させた有機溶剤、樹脂を分散させた有機溶剤、水、から選ばれる1種以上の液体媒質に赤外線吸収微粒子粉末が分散している液状の赤外線吸収微粒子分散体を基材表面に塗布し、得られた塗布膜を適宜な方法で固めた赤外線吸収基材が挙げられる。また、樹脂バインダー成分を含む液状の赤外線吸収微粒子分散体を基材表面に塗布し、得られた塗布膜を適宜な方法で固めた赤外線吸収基材が挙げられる。さらに、粉末状である固体媒質中に赤外線吸収微粒子粉末が分散している赤外線吸収微粒子分散体を所定媒質に混合した液状の赤外線吸収微粒子分散体を、基材表面に塗布し、得られた塗布膜を適宜な方法で固めた赤外線吸収基材も挙げられる。勿論、当該各種の液状の赤外線吸収微粒子粉末分散液の2種以上を混合した赤外線吸収微粒子粉末分散液を基材表面に塗布し、得られた塗布膜を適宜な方法で固めた赤外線吸収基材も挙げられる。
上述した基材の材質は、透明体であれば特に限定されないが、ガラス、樹脂ボード、樹脂シート、樹脂フィルムが好ましく用いられる。
樹脂ボード、樹脂シート、樹脂フィルムに用いる樹脂としては、必要とするボード、シート、フィルムの表面状態や耐久性に不具合を生じないものであれば特に制限はない。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体等のスチレン系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体等のオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマーや、さらにこれらの二元系、三元系各種共重合体、グラフト共重合体、ブレンド物等の透明ポリマーからなるボード、シート、フィルムが挙げられる。特に、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートあるいはポリエチレン−2,6−ナフタレート等のポリエステル系2軸配向フィルムが、機械的特性、光学特性、耐熱性および経済性の点より好適である。当該ポリエステル系2軸配向フィルムは共重合ポリエステル系であっても良い。
(ii)耐湿熱性
上記赤外線吸収基材においては、可視光透過率80%に設定した当該赤外線吸収基材を、85℃90%の湿熱雰囲気中に1000時間暴露したとき、当該暴露前後における、波長800nm〜1000nmにおける光の透過率の平均値の変化量が1.8%以下となり、優れた耐湿熱性を有している。
(4)赤外線吸収微粒子分散体や赤外線吸収基材を用いた物品
上述したように、本発明に係る赤外線吸収微粒子分散体や、赤外線吸収基材であるフィルムやボード等の赤外線吸収物品は、耐湿熱性および化学安定性に優れている。
そこで、これらの赤外線吸収物品は、例えば、各種建築物や車両において、可視光線を十分に取り入れながら赤外領域の光を遮蔽し、明るさを維持しつつ室内の温度上昇を抑制することを目的とした窓材等、PDP(プラズマディスプレイパネル)に使用され、当該PDPから前方に放射される赤外線を遮蔽するフィルター等、に好適に使用することができる。
また、本発明に係る赤外線吸収微粒子粉末は赤外線領域に吸収を有する為、当該赤外線吸収微粒子粉末を含む印刷面へ赤外線レーザーを照射したとき、特定の波長を有する赤外線を吸収する。従って、この赤外線吸収微粒子粉末を含む偽造防止インクを被印刷基材の片面又は両面に印刷して得た偽造防止用印刷物は、特定波長を有する赤外線を照射し、その反射若しくは透過を読み取ることによって、反射量又は透過量の違いから、印刷物の真贋を判定することが出来る。当該偽造防止用印刷物は、本発明に係る赤外線吸収微粒子分散体の一例である。
また、本発明に係る赤外線吸収微粒子粉末分散液とバインダー成分とを混合してインクを製造し、当該インクを基材上に塗布し、塗布したインクを乾燥させた後、乾燥させたインクを硬化させることにより光熱変換層を形成することが出来る。当該光熱変換層は、赤外線などの電磁波レーザーの照射により、高い位置の精度をもって所望の箇所のみで発熱させることが可能であり、エレクトロニクス、医療、農業、機械、等の広い範囲に分野において適用可能である。例えば、有機エレクトロルミネッセンス素子をレーザー転写法で形成する際に用いるドナーシートや、感熱式プリンタ用の感熱紙や熱転写プリンタ用のインクリボンとして好適に用いることが出来る。当該光熱変換層は本発明に係る赤外線吸収微粒子分散体の一例である。
また、本発明に係る赤外線吸収微粒子粉末を適宜な媒体中に分散させて、当該分散物を繊維の表面および/または内部に含有させることにより、赤外線吸収繊維が得られる。当該構成を有することで、赤外線吸収繊維は、赤外線吸収微粒子粉末の含有により太陽光などからの近赤外線等を効率良く吸収し、保温性に優れた赤外線吸収繊維となり、同時に可視光領域の光は透過させるので意匠性に優れた赤外線吸収繊維となる。その結果、保温性を必要とする防寒用衣料、スポーツ用衣料、ストッキング、カーテン等の繊維製品やその他産業用繊維製品等の種々の用途に使用することが出来る。当該赤外線吸収繊維は本発明に係る赤外線吸収微粒子分散体の一例である。
また、本発明に係るフィルム状またはボード状の赤外線吸収微粒子分散体を、農園芸用ハウスの屋根や外壁材等に用いられる資材に応用することが出来る。そして、可視光を透過して農園芸用ハウス内の植物の光合成に必要な光を確保しながら、それ以外の太陽光に含まれる近赤外光等の光を効率よく吸収することにより、断熱性を備えた農園芸施設用断熱資材として使用することが出来る。当該農園芸施設用断熱資材は、本発明に係る赤外線吸収微粒子分散体の一例である。
[6]劣化抑制剤が赤外線吸収微粒子の微視的近傍に配置されている状態
上述した「劣化抑制剤が、赤外線吸収微粒子の微視的近傍に配置されている。」状態では、赤外線吸収微粒子とその周囲50nm以下、好ましくは30nm以下、より好ましくは10nm以下の領域においては、その他の領域と比較して劣化抑制剤が多く配置している。この結果、赤外線吸収微粒子のTEM像、当該TEM像と同視野における赤外線吸収微粒子に含まれる元素(例えば、タングステン)の元素マッピング像、劣化抑制剤に含まれる元素(例えば、アルミニウム)の元素マッピング像を撮影し、これらの画像を解析することにより確認することが出来る。これは、劣化抑制剤原料となる金属キレート化合物や金属環状オリゴマー化合物の加水分解反応を進めて得られた劣化抑制剤含有液を用意し、それを赤外線吸収微粒子と均一に混合することにより、劣化抑制剤が赤外線吸収微粒子の微視的近傍に多く配置されたことで、濃厚に観測され確認できたものである。また、劣化抑制剤として、加水分解反応を起こさない金属酸化物の水和物、金属酸化物を用いる場合は、それを所定の溶媒と共に赤外線吸収微粒子と均一に混合することにより、劣化抑制剤が多く配置され、濃厚に観測できる。均一な混合手段としては、羽根の付いた撹拌機で強く24時間以上の長時間混合する方法や、媒体攪拌ミルにより混合する方法などが挙げられる。
ここで、図2における(a)は、後述する実施例1における赤外線吸収微粒子のTEM像、(b)は、当該TEM像と同視野における赤外線吸収微粒子に含まれる元素(タングステン)の元素マッピング像、(c)は、劣化抑制剤に含まれる元素(アルミニウム)の元素マッピング像である。また、図3は実施例2における同様の像であり、図4は比較例1における同様の像である。尚、元素マッピング像は、エネルギー分散型X線分析(EDXまたはEDS)により測定した。
実施例1、2に係る赤外線吸収微粒子においては、その微視的近傍に劣化抑制剤が配置されていることから、TEM像およびタングステンの元素マッピング像で示される当該赤外線吸収微粒子の近傍(10nm以下の範囲)に、アルミニウムの元素マッピング像で示される劣化抑制剤が多く配置されている。一方、赤外線吸収微粒子が存在しない領域においては、劣化抑制剤の存在量が僅かであることが理解出来る。
これに対し、比較例1に係る赤外線吸収微粒子においては、その微視的近傍に多く劣化抑制剤が配置されている訳ではないことから、TEM像およびタングステンの元素マッピング像で示される当該赤外線吸収微粒子の近傍に、アルミニウムの元素マッピング像で示される劣化抑制剤が配置されている状態はないことが理解出来る。そして、劣化抑制剤は視野全体に亘って、ほぼ均一に分散して存在していることが理解出来る。
以下、実施例を参照しながら本発明を具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例および比較例における分散液中の微粒子の分散粒子径は、動的光散乱法に基づく粒径測定装置(大塚電子株式会社製ELS−8000)により測定した平均値をもって示した。また、結晶子径は、粉末X線回折装置(スペクトリス株式会社PANalytical製X’Pert−PRO/MPD)を用いて粉末X線回折法(θ―2θ法)により測定し、リートベルト法を用いて算出した。
赤外線吸収シートの光学特性は、分光光度計(日立製作所株式会社製U−4100)を用いて波長200nm〜2600nmの範囲において5nmの間隔で測定し、可視光透過率はJISR3106に従って算出した。また、波長800nm〜1000nmにおける光の透過率の平均値を日射透過率として算出した。当該赤外線吸収シートのヘイズ値は、ヘイズメーター(村上色彩株式会社製HM−150)を用いて測定し、JISK7105に従って算出した。
赤外線吸収シートの耐湿熱性の評価方法は、可視光透過率80%前後の当該赤外線吸収シートを温度85℃相対湿度90%の湿熱雰囲気中に1000時間暴露する。そして、当該暴露前後における日射透過率の変化量が1.8%以下のものを耐湿熱性が良好と判断し、変化量が1.8%を超えるものは耐湿熱性が不足と判断した。
尚、ここでいう赤外線吸収シートの光学特性値(可視光透過率、ヘイズ値)は、基材である樹脂シートの光学特性値を含む値である。
[実施例1]
Cs/W(モル比)=0.33の六方晶セシウムタングステンブロンズ(Cs0.33WO、2.0≦z≦3.0)粉末CWO(登録商標)(住友金属鉱山株式会社製YM−01)25質量%と純水75質量%とを混合して得られた混合液を、0.3mmφZrOビーズを入れたペイントシェーカーに装填し10時間粉砕・分散処理し、実施例1に係るCs0.33WO微粒子の分散液を得た。
得られた分散液中のCs0.33WO微粒子の分散粒子径を測定したところ、100nmであった。尚、粒径測定の設定として、粒子屈折率は1.81とし、粒子形状は非球形とした。また、バックグラウンドは純水を用いて測定し、溶媒屈折率は1.33とした。また、得られた分散液の溶媒を除去したあと、結晶子径を測定したところ32nmであった。
得られたCs0.33WO微粒子の分散液と純水を混合し、Cs0.33WO微粒子の含有量が2質量%である実施例1に係る混合用分散液Aを得た。
一方、劣化抑制剤としてアルミニウム系のキレート化合物であるアルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレート13質量%と、イソプロピルアルコール(IPA)4質量%と、純水83質量%とを混合し、キレート化合物の加水分解反応を進め、劣化抑制剤含有液aを得た。
得られた混合用分散液A890gをビーカーに入れ、羽根の付いた攪拌機によって強く48時間攪拌しながら、ここへ劣化抑制剤含有液a69gを添加した。添加後、真空流動乾燥により、当該熟成液から溶媒を蒸発させて実施例1に係る赤外線吸収微粒子粉末を得た。
このとき、アルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレートの分子量は274.3、アルミニウムの原子量は26.98であることから、アルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレート中における金属量(アルミニウム量)は9.8質量%である。従って、劣化抑制剤を9g含有する劣化抑制剤含有液a69gにおける金属量は0.89gとなる。
一方、被覆膜形成用分散液A890gにおいて、赤外線吸収微粒子であるCs0.33WO微粒子の含有量が2質量%であることから、赤外線吸収微粒子の量は17.8gである。
以上より、赤外線吸収微粒子100質量部に対する劣化抑制剤の量は、金属元素換算で5質量部である。
実施例1に係る赤外線吸収微粒子粉末8質量%とポリアクリレート系分散剤24質量%とトルエン68質量%とを混合した。得られた混合液を、0.3mmφZrOビーズを入れたペイントシェーカーに装填し、1時間粉砕・分散処理し、実施例1に係る赤外線吸収微粒子粉末分散液を得た。次いで、この赤外線吸収微粒子粉末分散液から真空流動乾燥により溶媒を蒸発させ、実施例1に係る赤外線吸収微粒子分散粉を得た。
実施例1に係る赤外線吸収微粒子分散粉とポリカーボネート樹脂とを、後に得られる赤外線吸収シートの可視光透過率が80%前後になるようにドライブレンドした(この例では、赤外線吸収微粒子の含有量が0.06質量%となるようにブレンドされた)。得られたブレンド物を、二軸押出機を用いて290℃で混練し、Tダイより押出して、カレンダーロール法により0.75mm厚のシート材とし、実施例1に係る赤外線吸収シートを得た。尚、赤外線吸収シートは本発明に係る赤外線吸収微粒子分散体の一例である。
得られた実施例1に係る赤外線吸収シートの光学特性を測定したところ、可視光透過率が79.7%、日射透過率(波長800nm〜1000nmの透過率の平均値)が32.4%、ヘイズが1.1%であった。
得られた実施例1に係る赤外線吸収シートを温度85℃相対湿度90%の湿熱雰囲気中に1000時間暴露後、光学特性を測定したところ、可視光透過率が80.5%、日射透過率(波長800nm〜1000nmの透過率の平均値)が33.8%、ヘイズが1.1%であった。湿熱雰囲気暴露による可視光透過率の変化量は0.8%、波長800nm〜1000nmの透過率の平均値の変化量は1.4%とどちらも小さく、また、ヘイズは変化しないことが分かった。当該製造条件を表1、評価結果を表2に示す。
実施例1に係る赤外線吸収シートの薄片化試料をミクロトームで作製し、透過型電子顕微鏡(日立製作所株式会社社製 HF−2200)による観察を行い、図2(a)に示す赤外線吸収微粒子のTEM像、(b)に示す(a)と同視野におけるタングステン原子の元素マッピング像、(c)に示す(a)と同視野におけるアルミニウム原子の元素マッピング像を得た。図2(a)(b)(c)から明らかなように、タングステン原子を含む赤外線吸収微粒子の微視的近傍(10nm以下の範囲)に、アルミニウム原子を含む劣化抑制剤が多く配置されている。一方、赤外線吸収微粒子が存在しない領域には、劣化抑制剤の存在量が僅かである、ことを理解出来る。
尚、元素マッピングは、透過型電子顕微鏡に付属のエネルギー分散型X線分析装置(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製 NORAN System SIX)を使用して実施した。
[実施例2]
劣化抑制剤含有液aの添加量を69gから345gに変更したこと以外は、実施例1と同様の操作をすることで、実施例2に係る赤外線吸収微粒子粉末、赤外線吸収微粒子分散液、赤外線吸収微粒子分散粉、赤外線吸収シートを得て、実施例1と同様の評価を実施した。当該条件を表1、評価結果を表2に示す。
実施例1と同様に、実施例2に係る赤外線吸収シートの薄片化試料をミクロトームで作製し、透過型電子顕微鏡による観察を行い、図3(a)に示す赤外線吸収微粒子のTEM像、(b)に示す(a)と同視野におけるタングステン原子の元素マッピング像、(c)に示す(a)と同視野におけるアルミニウム原子の元素マッピング像を得た。図3(a)(b)(c)から明らかなように、タングステン原子を含む赤外線吸収微粒子の微視的近傍(10nm以下の範囲)に、アルミニウム原子を含む劣化抑制剤が多く配置されている。一方、赤外線吸収微粒子が存在しない領域には、劣化抑制剤の存在量が僅かである、ことを理解出来る。
[実施例3]
劣化抑制剤含有液aから真空流動乾燥により溶媒を蒸発させ、さらに窒素雰囲気中において温度400℃で1時間熱処理して、実施例3に係る劣化抑制剤含有粉末を得た。
得られた劣化抑制剤含有粉末の含有成分をICP発光分析装置(株式会社島津製作所製 型式:ICPE9000)により分析したところ、53質量%のアルミニウムが含まれていることが分かった。また、劣化抑制剤含有粉末の酸素量を不活性ガス溶融法による酸素分析装置(LECO Corporation製 型式TC436)により測定したところ、47質量%の酸素が含まれていることが解った。さらに、熱天秤装置(ブルカーエイエックスエス株式会社製)に質量分析装置(Q−MS、ブルカーエイエックスエス株式会社製)を接続した熱分析装置により分析したところ、水の含有量は検出限界以下(0.1質量%未満)であった。ここで、熱分析装置による分析は、室温から1300℃まで昇温速度10℃/minで昇温し、Ar流量130cc/minでキャリアガスを流して実施し、質量電荷数比:m/z=17、18のガス成分が全て水であるとみなし、その発生量を評価した。以上のことから、実施例3に係る劣化抑制剤含有粉末は無水の酸化アルミニウムであることを確認した。
続いて、Cs/W(モル比)=0.33の六方晶セシウムタングステンブロンズ(Cs0.33WO、2.0≦z≦3.0)粉末CWO(登録商標)(住友金属鉱山株式会社製YM−01)7.31質量%と、実施例3に係る劣化抑制剤含有粉末(即ち、無水の酸化アルミニウム)0.69質量%と、ポリアクリレート系分散剤24質量%と、トルエン68質量%とを混合した。
得られた混合液を、0.3mmφZrOビーズを入れたペイントシェーカーに装填し、10時間粉砕・分散処理し、実施例3に係る赤外線吸収微粒子粉末分散液を得た。得られた分散液の溶媒を除去したあと、Cs0.33WOの結晶子径を測定したところ32nmであった。このとき、劣化抑制剤含有粉末中における金属量(アルミニウム量)は53質量%である。従って、劣化抑制剤含有粉末中における金属量は、赤外線吸収微粒子であるCs0.33WO7.31質量%に対して0.37質量%となる。以上より、赤外線吸収微粒子100質量部に対する劣化抑制剤の量は、金属元素換算で5質量部である。
次いで、この赤外線吸収微粒子粉末分散液から真空流動乾燥により溶媒を蒸発させ、実施例3に係る赤外線吸収微粒子分散粉を得た。
実施例1に係る赤外線吸収微粒子分散粉の代わりに実施例3に係る赤外線吸収微粒子分散粉を使用したこと以外は、実施例1と同様の操作をすることで、赤外線吸収シートを得て、実施例1と同様の評価を実施した。当該評価結果を表2に示す。
また、実施例3に係る赤外線吸収シートにおいて、タングステン原子を含む赤外線吸収微粒子の微視的近傍(10nm以下の範囲)に、アルミニウム原子を含む劣化抑制剤が多く配置されている。一方、赤外線吸収微粒子が存在しない領域には、劣化抑制剤の存在量が僅かであることを確認した。
[比較例1]
Cs/W(モル比)=0.33の六方晶セシウムタングステンブロンズ(Cs0.33WO、2.0≦z≦3.0)粉末CWO(登録商標)(住友金属鉱山株式会社製YM−01)7質量%とポリアクリレート系分散剤24質量%とトルエン69質量%とを混合し、得られた混合液を、0.3mmφZrOビーズを入れたペイントシェーカーに装填し4時間粉砕・分散処理し、比較例1に係る赤外線吸収微粒子分散液を得た。
得られた赤外線吸収微粒子分散液中の赤外線吸収微粒子の分散粒子径を測定したところ、100nmであった。尚、粒径測定の設定として、粒子屈折率は1.81とし、粒子形状は非球形とした。また、バックグラウンドはトルエンを用いて測定し、溶媒屈折率は1.50とした。また、得られた分散液の溶媒を除去したあと、結晶子径を測定したところ32nmであった。
そして、当該比較例1に係る赤外線吸収微粒子分散液から真空流動乾燥により溶媒を蒸発させ、比較例1に係る赤外線吸収微粒子分散粉を得た。
次いで、実施例1に係る劣化抑制剤含有液aから真空流動乾燥により溶媒を蒸発させ、劣化抑制剤含有粉末を得た。得られた劣化抑制剤含有粉末7質量%とポリアクリレート系分散剤24質量%とトルエン69質量%とを混合し、得られた混合液を、0.3mmφZrOビーズを入れたペイントシェーカーに装填し、上述の赤外線吸収微粒子分散液と同様に4時間粉砕・分散処理し、劣化抑制剤微粒子分散液を得た。
そして、劣化抑制剤微粒子分散液から真空流動乾燥により溶媒を蒸発させ、劣化抑制剤微粒子分散粉を得た。
比較例1に係る赤外線吸収微粒子分散粉と劣化抑制剤微粒子分散粉とを10:1の重量比で混合した後、更にポリカーボネート樹脂とドライブレンドし、赤外線吸収微粒子の含有量
が0.075質量%になるように調整した。得られたブレンド物を、二軸押出機を用いて290℃で混練し、Tダイより押出して、カレンダーロール法により0.75mm厚のシート材とし、比較例1に係る赤外線吸収シートを得た。
得られた比較例1に係る赤外線吸収シートの光学特性を測定したところ、可視光透過率が79.2%、波長800nm〜1000nmの透過率の平均値が32.6%、ヘイズが1.0%であった。
得られた比較例1に係る赤外線吸収シートを85℃90%の湿熱雰囲気中に1000時間暴露後、光学特性を測定したところ、可視光透過率が80.9%、波長800nm〜1000nmの透過率の平均値が37.7%、ヘイズが1.2%であった。湿熱雰囲気暴露による可視光透過率の変化量は1.7%、波長800nm〜1000nmの透過率の平均値の変化量は5.1%となり、実施例と比較して大きいことが分かった。また、ヘイズの変化の割合は0.2%であった。当該製造条件を表1、評価結果を表2に示す。
実施例1と同様に、比較例1に係る赤外線吸収シートの薄片化試料をミクロトームで作製し、透過型電子顕微鏡による観察を行い、図4(a)に示す赤外線吸収微粒子のTEM像、(b)に示す(a)と同視野におけるタングステン原子の元素マッピング像、(c)に示す(a)と同視野におけるアルミニウム原子の元素マッピング像を得た。図4(a)(b)(c)から明らかなように、タングステン原子を含む赤外線吸収微粒子の微視的近傍に、アルミニウム原子を含む劣化抑制剤が多く配置されていることはなく、当該劣化抑制剤は全視野に亘って、ほぼ均一に存在していることを理解出来る。
Figure 2021116212
Figure 2021116212

Claims (11)

  1. 赤外線吸収微粒子と、金属キレート化合物の加水分解生成物、金属酸化物の水和物、金属酸化物から選択される1種以上の劣化抑制剤とを含み、
    前記劣化抑制剤が、前記赤外線吸収微粒子の微視的近傍に配置されていることを特徴とする赤外線吸収微粒子粉末。
  2. 前記劣化抑制剤が、前記赤外線吸収微粒子の微視的近傍に配置されているとは、前記赤外線吸収微粒子とその周囲50nm以下の領域においては、その他の領域と比較して劣化抑制剤が多く配置されていることを特徴とする請求項1に記載の赤外線吸収微粒子粉末。
  3. 前記劣化抑制剤が、Al、Zr、Ti、Si、Znから選択される1種類以上の金属元素を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の赤外線吸収微粒子粉末。
  4. 前記赤外線吸収微粒子が、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.2≦z/y≦2.999)で表記されるタングステン酸化物微粒子、または/および、一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、I、Ybのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.0≦z/y≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物微粒子であることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の赤外線吸収微粒子粉末。
  5. 請求項1から4のいずれかに記載の赤外線吸収微粒子粉末が、所定の液体溶媒中に分散していることを特徴とする赤外線吸収微粒子粉末分散液。
  6. 前記液体溶媒が、有機溶剤、油脂、液状可塑剤、硬化により高分子化される化合物、水、から選択される1種以上の液体溶媒であることを特徴とする請求項5に記載の赤外線吸収微粒子粉末分散液。
  7. 請求項1から4のいずれかに記載の赤外線吸収微粒子粉末が、所定の固体状樹脂中に分散していることを特徴とする赤外線吸収微粒子分散体
  8. 前記固体状樹脂が、フッ素樹脂、PET樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、から選択される1種以上の樹脂であることを特徴とする請求項7に記載の赤外線吸収微粒子分散体。
  9. 請求項5または6に記載の赤外線吸収微粒子粉末分散液の乾燥固化物であることを特徴とする赤外線吸収微粒子分散体。
  10. 赤外線吸収微粒子と、金属キレート化合物の加水分解生成物、金属酸化物の水和物、金属酸化物から選択される1種以上の劣化抑制剤とが、所定の固体状樹脂中に分散している赤外線吸収微粒子分散体であって、
    当該赤外線吸収微粒子分散体の可視光透過率80%に設定し、
    当該赤外線吸収微粒子分散体を、温度85℃相対湿度90%の湿熱雰囲気中に1000時間暴露したとき、当該暴露前後における、波長800nm〜1000nmにおける光の透過率の平均値の変化量が1.8%以下であることを特徴とする赤外線吸収微粒子分散体。
  11. 赤外線吸収微粒子と、水または水溶性溶媒とを混合し、分散処理を行って赤外線吸収微粒子分散液を得る工程と、
    金属キレート化合物と、水を含む液体溶媒とを混合して劣化抑制剤含有液を得る工程と
    前記赤外線吸収微粒子分散液を撹拌しながら、前記劣化抑制剤含有液を添加して劣化抑制剤を含む赤外線吸収微粒子分散液を得る工程と、
    前記劣化抑制剤を含む赤外線吸収微粒子分散液へ乾燥処理を施して液体溶媒を除去し、赤外線吸収微粒子粉末を得る工程と、を有することを特徴とする赤外線吸収微粒子粉末の製造方法。
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