JP6769563B2 - 赤外線吸収微粒子分散液、赤外線吸収微粒子分散体、およびそれらの製造方法 - Google Patents
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Description
さらに、当該表面処理赤外線吸収微粒子を適宜な媒質中に分散した赤外線吸収微粒子分散液を用いて製造した赤外線吸収微粒子分散体等が、耐湿熱性に優れ、且つ、優れた赤外線吸収特性を有することを知見した。
液状の媒質と、前記媒質中に分散された表面処理赤外線吸収微粒子と、亜リン酸エステル系化合物とを含む赤外線吸収微粒子分散液であって、
前記表面処理赤外線吸収微粒子の表面が、金属キレート化合物の加水分解生成物、金属キレート化合物の加水分解生成物の重合物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物の重合物、から選択される1種以上を含む被覆膜で被覆されており、
前記亜リン酸エステル系化合物が、構造式(1)で示される亜リン酸エステル系化合物であり、且つ、前記亜リン酸エステル系化合物の添加量が、前記赤外線吸収微粒子100質量部に対して、500質量部を超えて50000質量部以下であることを特徴とする赤外線吸収微粒子分散液である。
但し、前記構造式(1)において、R1、R2、R4およびR5は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜12の脂環族基、炭素数7〜12のアラルキル基または芳香族基のいずれかであり、
R3は、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基のいずれかであり、
Xは、単結合、または、以下の構造式(1−1)で示される2価の残基のいずれかであり、
Aは、炭素数2〜8のアルキレン基または以下の構造式(1−2)で示される2価の残基のいずれかであり、
Y、Zは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基または炭素数7〜12のアラルキルオキシ基のいずれかであり、他の一方が水素原子または炭素数1〜8のアルキル基のいずれかであり、
前記構造式(1−1)において、R6は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基のいずれかであり、
前記構造式(1−2)において、R7は、単結合または炭素数1〜8のアルキレン基のいずれかであり、*は、当該端末が、構造式(1)で示される亜リン酸エステル系化合物の酸素原子側に結合していることを示す。
第2の発明は、
前記被覆膜の膜厚が0.5nm以上であることを特徴とする第1の発明に記載の赤外線吸収微粒子分散液である。
第3の発明は、
前記金属キレート化合物または/および前記金属環状オリゴマー化合物が、Al、Zr、Ti、Si、Znから選択される1種類以上の金属元素を含むことを特徴とする第1または第2の発明に記載の赤外線吸収微粒子分散液である。
第4の発明は、
前記金属キレート化合物または前記金属環状オリゴマー化合物が、エーテル結合、エステル結合、アルコキシ基、アセチル基から選択される1種以上を有することを特徴とする第1から第3の発明のいずれかに記載の赤外線吸収微粒子分散液である。
第5の発明は、
前記赤外線吸収微粒子が、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.2≦z/y≦2.999)、または/および、一般式MxWyOz(但し、M元素は、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、I、Ybのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.0≦z/y≦3.0)で表記される赤外線吸収微粒子であることを特徴とする、第1から第4の発明のいずれかに記載の赤外線吸収微粒子分散液である。
第6の発明は、
前記M元素が、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Snのうちから選択される1種類以上であることを特徴とする第5の発明に記載の赤外線吸収微粒子分散液である。
第7の発明は、
前記赤外線吸収微粒子が、六方晶の結晶構造を持つ微粒子であることを特徴とする第1から第6の発明のいずれかに記載の赤外線吸収微粒子分散液である。
第8の発明は、
前記赤外線吸収微粒子の結晶子径が、1nm以上200nm以下であることを特徴とする第1から第7の発明のいずれかに記載の赤外線吸収微粒子分散液である。
第9の発明は、
前記表面処理赤外線吸収微粒子からなる表面処理赤外線吸収微粒子粉末において、炭素濃度が0.2質量%以上5.0質量%以下であることを特徴とする第1から第8の発明のいずれかに記載の赤外線吸収微粒子分散液である。
第10の発明は、
前記液状の媒質が、有機溶剤、油脂、液状可塑剤、硬化により高分子化される化合物、水から選択される1種以上の液状の媒質であることを特徴とする第1から第9の発明のいずれかに記載の赤外線吸収微粒子分散液である。
第11の発明は、
さらに、前記亜リン酸エステル系化合物以外のリン酸系安定剤、ヒンダードフェノール系安定剤、スルフィド系安定剤、金属不活性化剤から選択される1種類以上の安定剤を含むことを特徴とする第1から第10の発明のいずれかに記載の赤外線吸収微粒子分散液である。
第12の発明は、
媒質中に分散された表面処理赤外線吸収微粒子と、亜リン酸エステル系化合物とを含む赤外線吸収微粒子分散体であって、
前記表面処理赤外線吸収微粒子の表面が、金属キレート化合物の加水分解生成物、金属キレート化合物の加水分解生成物の重合物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物の重合物、から選択される1種以上を含む被覆膜で被覆されており、
前記亜リン酸エステル系化合物が、構造式(1)で示される亜リン酸エステル系化合物であり、且つ、前記亜リン酸エステル系化合物の添加量が、前記赤外線吸収微粒子100質量部に対して、500質量部を超えて50000質量部以下であることを特徴とする赤外線吸収微粒子分散体である。
但し、前記構造式(1)において、R1、R2、R4およびR5は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜12の脂環族基、炭素数7〜12のアラルキル基または芳香族のいずれかであり、
R3は、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基のいずれかであり、
Xは、単結合、または、以下の構造式(1−1)で示される2価の残基のいずれかであり、
Aは、炭素数2〜8のアルキレン基または以下の構造式(1−2)で示される2価の残基のいずれかであり、
Y、Zは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基または炭素数7〜12のアラルキルオキシ基のいずれかであり、他の一方が水素原子または炭素数1〜8のアルキル基のいずれかであり、
前記構造式(1−1)において、R6は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基のいずれかであり、
前記構造式(1−2)において、R7は、単結合または炭素数1〜8のアルキレン基のいずれかであり、*は、当該端末が、構造式(1)で示される亜リン酸エステル系化合物の酸素原子側に結合していることを示す。
第13の発明は、
前記金属キレート化合物または/および前記金属環状オリゴマー化合物が、Al、Zr、Ti、Si、Znから選択される1種類以上の金属元素を含むことを特徴とする第12の発明に記載の赤外線吸収微粒子分散体である。
第14の発明は、
前記金属キレート化合物または前記金属環状オリゴマー化合物が、エーテル結合、エステル結合、アルコキシ基、アセチル基から選択される1種以上を有することを特徴とする第12または第13の発明に記載の赤外線吸収微粒子分散体である。
第15の発明は、
前記赤外線吸収微粒子は、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.2≦z/y≦2.999)、または/および、一般式MxWyOz(但し、M元素は、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、I、Ybの内から選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.0≦z/y≦3)で表記される赤外線吸収微粒子であることを特徴とする第12から第14の発明のいずれかに記載の赤外線吸収微粒子分散体である。
第16の発明は、
前記M元素が、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Snのうちから選択される1種類以上であることを特徴とする第15の発明に記載の赤外線吸収微粒子分散体である。
第17の発明は、
前記赤外線吸収微粒子が、六方晶の結晶構造を持つ微粒子であることを特徴とする第12から第16の発明のいずれかに記載の赤外線吸収微粒子分散体である。
第18の発明は、
前記赤外線吸収微粒子の結晶子径が、1nm以上200nm以下であることを特徴とする第12から第17の発明のいずれかに記載の赤外線吸収微粒子分散体である。
第19の発明は、
前記表面処理赤外線吸収微粒子からなる表面処理赤外線吸収微粒子粉末において、炭素濃度が0.2質量%以上5.0質量%以下であることを特徴とする第12から第18の発明のいずれかに記載の赤外線吸収微粒子分散体である。
第20の発明は、
前記媒質が、高分子であることを特徴とする第12から第19の発明のいずれかに記載の赤外線吸収微粒子分散体である。
第21の発明は、
前記媒質が、固体状樹脂であることを特徴とする第12から第20の発明のいずれかに記載の赤外線吸収微粒子分散体である。
第22の発明は、
前記固体状樹脂が、フッ素樹脂、PET樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、から選択される1種以上の樹脂であることを特徴とする第21の発明に記載の赤外線吸収微粒子分散体である。
第23の発明は、
さらに、前記亜リン酸エステル系化合物以外のリン酸系安定剤、ヒンダードフェノール系安定剤、スルフィド系安定剤、金属不活性化剤から選択される1種類以上の安定剤を含むことを特徴とする第12から第22の発明のいずれかに記載の赤外線吸収微粒子分散体である。
第24の発明は、
赤外線吸収微粒子と、水と、
有機溶剤、液状樹脂、油脂、前記樹脂用の液状可塑剤、高分子単量体、または、これらの群から選択される2種以上の混合物とを、混合し、分散処理を行って前記赤外線吸収微粒子の被膜形成用分散液を得る工程と、
前記被膜形成用分散液へ、金属キレート化合物または/および金属環状オリゴマー化合物を添加し、前記赤外線吸収微粒子の表面を、金属キレート化合物の加水分解生成物、金属キレート化合物の加水分解生成物の重合物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物の重合物、から選択される1種以上で被覆する工程と、
前記被覆する工程の後に、前記被膜形成用分散液を構成する液状の媒質を除去して、表面処理赤外線吸収微粒子を含む表面処理赤外線吸収微粒子粉末を得る工程と、
前期表面処理赤外線吸収微粒子粉末を所定の媒質に加え、分散させて表面処理赤外線吸収微粒子の分散液を得る工程と、
前記表面処理赤外線吸収微粒子の分散液へ、前記赤外線吸収微粒子100質量部に対して、500質量部を超えて50000質量部以下の亜リン酸エステル系化合物を添加し、亜リン酸エステル系化合物を含む表面処理赤外線吸収微粒子の分散液を得る工程とを、有することを特徴とする赤外線吸収微粒子分散液の製造方法である。
第25の発明は、
赤外線吸収微粒子と、水と、
有機溶剤、液状樹脂、油脂、前記樹脂用の液状可塑剤、高分子単量体、または、これらの群から選択される2種以上の混合物とを、混合し、分散処理を行って前記赤外線吸収微粒子の被膜形成用分散液を得る工程と、
前記被膜形成用分散液へ、金属キレート化合物または/および金属環状オリゴマー化合物を添加し、前記赤外線吸収微粒子の表面を、金属キレート化合物の加水分解生成物、金属キレート化合物の加水分解生成物の重合物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物の重合物、から選択される1種以上で被覆する工程と、
前記被覆する工程の後に、前記被膜形成用分散液を構成する液状の媒質を、所定の媒質に溶媒置換し、表面処理赤外線吸収微粒子の分散液を得る工程と、
前記表面処理赤外線吸収微粒子の分散液へ、前記赤外線吸収微粒子100質量部に対して、500質量部を超えて50000質量部以下の亜リン酸エステル系化合物を添加し、亜リン酸エステル系化合物を含む表面処理赤外線吸収微粒子の分散液を得る工程とを、有することを特徴とする赤外線吸収微粒子分散液の製造方法である。
第26の発明は、
第24または第25の発明に記載の亜リン酸エステル系化合物を含む表面処理赤外線吸収微粒子の分散液、または、当該亜リン酸エステル系化合物を含む表面処理赤外線吸収微粒子の分散液を乾燥して得た、亜リン酸エステル系化合物を含む表面処理赤外線吸収微粒子の分散粉と、
適宜な媒体とを混合して、赤外線吸収微粒子分散体を得る工程とを、有することを特徴とする赤外線吸収微粒子分散体の製造方法である。
第27の発明は、
第24または第25の発明に記載の表面処理赤外線吸収微粒子の分散液を乾燥して得た表面処理赤外線吸収微粒子の分散粉と、亜リン酸エステル系化合物と、適宜な媒体とを混合して、赤外線吸収微粒子分散体を得る工程とを、有することを特徴とする赤外線吸収微粒子分散体の製造方法である。
但し、前記亜リン酸エステル系化合物の混合量は、前記赤外線吸収微粒子100質量部に対して、500質量部を超えて50000質量部以下である。
尚、本発明において、「赤外線吸収微粒子へ耐湿熱性を付与する為に、当該微粒子の表面へ、金属キレート化合物の加水分解生成物、金属キレート化合物の加水分解生成物の重合物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物の重合物、から選択される1種以上を用いて形成した被覆膜」を、単に「被覆膜」と記載する場合がある。
一般に、自由電子を含む材料は、プラズマ振動によって波長200nmから2600nmの太陽光線の領域周辺の電磁波に反射吸収応答を示すことが知られている。このような物質の粉末を、光の波長より小さい粒子にすると、可視光領域(波長380nmから780nm)の幾何学散乱が低減されて可視光領域の透明性が得られることが知られている。
尚、本発明において「透明性」とは、「可視光領域の光に対して散乱が少なく透過性が高い。」という意味で用いている。
一方、酸素欠損を持つWO3や、WO3にNa等の陽性元素を添加した複合タングステン酸化物は、導電性材料であり、自由電子を持つ材料であることが知られている。そして、これらの自由電子を持つ材料の単結晶等の分析により、赤外線領域の光に対する自由電子の応答が示唆されている。
本発明者等は、当該タングステンと酸素との組成範囲の特定部分において、赤外線吸収微粒子として特に有効な範囲があることを見出し、可視光領域においては透明で、赤外線領域においては吸収を持つタングステン酸化物微粒子、複合タングステン酸化物微粒子に想到した。
ここで、本発明に係る赤外線吸収微粒子であるタングステン酸化物微粒子または/および複合タングステン酸化物微粒子について、(1)タングステン酸化物微粒子、(2)複合タングステン酸化物微粒子、(3)タングステン酸化物微粒子および複合タングステン酸化物微粒子、の順で説明する。
本発明に係るタングステン酸化物微粒子は、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.2≦z/y≦2.999)で表記されるタングステン酸化物の微粒子である。
当該z/yの値が2.2以上であれば、当該タングステン酸化物中に目的以外であるWO2の結晶相が現れるのを回避することが出来ると伴に、材料としての化学的安定性を得ることが出来るので有効な赤外線吸収微粒子となる。一方、当該z/yの値が2.999以下であれば、必要とされる量の自由電子が生成され効率よい赤外線吸収微粒子となる。
上述したWO3へ、後述する元素Mを添加し複合タングステン酸化物とすることで、当該WO3中に自由電子が生成され、特に近赤外線領域に自由電子由来の強い吸収特性が発現し、波長1000nm付近の近赤外線吸収微粒子として有効となる。
即ち、当該WO3に対し、酸素量の制御と、自由電子を生成する元素Mの添加とを併用することで、より効率の良い赤外線吸収微粒子を得ることが出来る。この酸素量の制御と、自由電子を生成する元素Mの添加とを併用した赤外線吸収微粒子の一般式をMxWyOz(但し、Mは、前記M元素、Wはタングステン、Oは酸素)と記載したとき、0.001≦x/y≦1、2.0≦z/y≦3の関係を満たす赤外線吸収微粒子が望ましい。
x/yの値が0.001より大きければ、複合タングステン酸化物において十分な量の自由電子が生成され目的とする赤外線吸収効果を得ることが出来る。そして、元素Mの添加量が多いほど、自由電子の供給量が増加し、赤外線吸収効率も上昇するが、x/yの値が1程度で当該効果も飽和する。また、x/yの値が1より小さければ、当該赤外線吸収微粒子中に不純物相が生成されるのを回避できるので好ましい。
図1において、符号11で示すWO6単位にて形成される8面体が6個集合して六角形の空隙が構成され、当該空隙中に、符号12で示す元素Mが配置して1箇の単位を構成し、この1箇の単位が多数集合して六方晶の結晶構造を構成する。
そして、可視光領域における光の透過を向上させ、赤外領域における光の吸収を向上させる効果を得る為には、複合タングステン酸化物微粒子中に、図1を用いて説明した単位構造が含まれていれば良く、当該複合タングステン酸化物微粒子が結晶質であっても非晶質であっても構わない。
本発明に係る、タングステン酸化物微粒子や複合タングステン酸化物微粒子を含有する赤外線吸収微粒子は、近赤外線領域、特に波長1000nm付近の光を大きく吸収するため、その透過色調は青色系から緑色系となる物が多い。
まず、透明性を保持したい応用に使用する場合は、800nm以下の粒子径を有していることが好ましい。これは、800nmよりも小さい粒子は、散乱により光を完全に吸収することが無く、可視光線領域の視認性を保持し、同時に効率良く透明性を保持することができるからである。特に可視光領域の透明性を重視する場合は、さらに粒子による散乱を考慮することが好ましい。
さらに分散粒子径が100nm以下になると、散乱光は非常に少なくなり好ましい。光の散乱を回避する観点からは、分散粒子径が小さい方が好ましく、分散粒子径が1nm以上あれば工業的な製造は容易である。
尚、赤外線吸収微粒子の分散粒子径は、動的光散乱法を原理とした大塚電子株式会社製ELS−8000等を用いて測定することができる。
また、優れた赤外線吸収特性を発揮させる観点から、赤外線吸収微粒子の結晶子径は1nm以上200nm以下であることが好ましく、より好ましくは1nm以上100nm以下、さらに好ましくは10nm以上70nm以下であることが好ましい。結晶子径の測定には、粉末X線回折法(θ―2θ法)によるX線回折パターンの測定と、リートベルト法による解析を用いる。X線回折パターンの測定には、例えばスペクトリス株式会社PANalytical製の粉末X線回折装置「X’Pert−PRO/MPD」などを用いることができる。
本発明に係る赤外線吸収微粒子の表面被覆に用いる表面処理剤は、金属キレート化合物の加水分解生成物、金属キレート化合物の加水分解生成物の重合物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物の重合物、から選択される1種以上である。
そして、当該金属キレート化合物、金属環状オリゴマー化合物は、金属アルコキシド、金属アセチルアセトネート、金属カルボキシレートであることが好ましい観点からエーテル結合、エステル結合、アルコキシ基、アセチル基から選択される1種以上を有することが好ましい。
ここで、本発明に係る表面処理剤について、(1)金属キレート化合物、(2)金属環状オリゴマー化合物、(3)金属キレート化合物や金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物および重合物、(4)表面処理剤の添加量、の順で説明する。
本発明に用いる金属キレート化合物は、アルコキシ基を含有するAl系、Zr系、Ti系、Si系、Zn系のキレート化合物から選ばれる一種又は二種以上であることが好ましい。
これらの化合物は、アルミニウムアルコレートを非プロトン性溶媒や、石油系溶剤、炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、アミド系溶剤等に溶解し、この溶液に、β−ジケトン、β−ケトエステル、一価または多価アルコール、脂肪酸等を加えて、加熱還流し、リガンドの置換反応により得られた、アルコキシ基含有のアルミニウムキレート化合物である。
また、4官能性シラン化合物の加水分解生成物(4官能性シラン化合物の中間体全体を指示する適宜な術語が存在しない。)としては、アルコキシ基の一部あるいは全量が加水分解して、シラノール(Si−OH)基となったシランモノマー、4〜5量体のオリゴマー、および、重量平均分子量(Mw)が800〜8000程度の重合体(シリコーンレジン)が挙げられる。尚、アルコキシシランモノマー中のアルコキシシリル基(Si-OR)は、加水分解反応の過程において、その全てが加水分解してシラノール(Si−OH)になるわけではない。
本発明に係る金属環状オリゴマー化合物としては、Al系、Zr系、Ti系、Si系、Zn系の環状オリゴマー化合物から選ばれる1種以上であることが好ましい。中でも、環状アルミニウムオキサイドオクチレート等、の環状アルミニウムオリゴマー化合物を好ましく例示することができる。
本発明では、上述した金属キレート化合物や金属環状オリゴマー化合物における、アルコキシ基、エーテル結合、エステル結合の全量が加水分解し、ヒドロキシル基やカルボキシル基となった加水分解生成物、一部が加水分解した部分加水分解生成物、または/および、当該加水分解反応を経て自己縮合した重合物を、本発明に係る赤外線吸収微粒子の表面に被覆して被覆膜とし、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子を得るものである。
即ち、本発明における加水分解生成物は、部分加水分解生成物を含む概念である。
その結果、被覆膜には、未分解の金属キレート化合物または/および金属環状オリゴマー化合物が含有される場合があるが、微量であれば特に問題は無い。
上述した金属キレート化合物や金属環状オリゴマー化合物の添加量は、赤外線吸収微粒子100質量部に対して、金属元素換算で0.1質量部以上、1000質量部以下であることが好適である。より好ましくは、1質量部以上、500質量部以下の範囲である。更に好ましくは、10質量部以上、150質量部以下の範囲である。
また、金属キレート化合物または金属環状オリゴマー化合物が1000質量部以下であれば、赤外線吸収微粒子に対する吸着量が過剰になることを回避出来る。また、表面被覆による耐湿熱性の向上が飽和せず、被覆効果の向上が望める。
さらに、金属キレート化合物または金属環状オリゴマー化合物が1000質量部以下であることで、赤外線吸収微粒子に対する吸着量が過剰になり、媒質除去時に当該金属キレート化合物または金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物や、当該加水分解生成物の重合物を介して微粒子同士が造粒し易くなることを回避出来るからである。当該望まれない微粒子同士の造粒回避によって、良好な透明性を担保することが出来る。
加えて、金属キレート化合物または金属環状オリゴマー化合物の過剰による、添加量および処理時間の増加による生産コスト増加も回避出来る。よって工業的な観点からも金属キレート化合物や金属環状オリゴマー化合物の添加量は、1000質量部以下とすることが好ましい。
本発明に係る赤外線吸収微粒子の表面被覆方法においては、まず、赤外線吸収微粒子を適宜な媒質中に分散させた被覆膜形成用の赤外線吸収微粒子分散液(本発明において「被覆膜形成用分散液」と記載する場合がある。)を調製する。そして、調製された被覆膜形成用分散液中へ表面処理剤を添加して混合攪拌を行う。すると、赤外線吸収微粒子の表面が、金属キレート化合物の加水分解生成物、金属キレート化合物の加水分解生成物の重合物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物の重合物、から選択される1種以上を含む被覆膜で被覆される。
ここで、本発明に係る表面被覆方法について、(1)被覆膜形成用分散液の調製、(2)水を媒質とする被覆膜形成用分散液の調製、(3)添加水量を調整した被覆膜形成用分散液の調製、(4)被覆膜形成用分散液における混合攪拌後の処理、の順で説明する。
本発明に係る被覆膜形成用分散液においては、赤外線吸収微粒子であるタングステン酸化物または/および複合タングステン酸化物を予め細かく粉砕して、適宜な媒質中に分散させ、単分散の状態にしておくことが好ましい。そして、この粉砕、分散処理工程中において分散状態を担保し、微粒子同士を凝集させないことが肝要である。これは、赤外線吸収微粒子の表面処理の過程において、当該微粒子が凝集を起こし、当該微粒子が凝集体の状態で表面被覆され、ひいては、後述する赤外線吸収微粒子分散体中においても当該凝集体が残存し、後述する赤外線吸収微粒子分散体や赤外線吸収基材の透明性が低下する事態を回避する為である。
当該粉砕・分散処理の具体的方法としては、例えば、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、ペイントシェーカー、超音波ホモジナイザーなどの装置を用いた粉砕・分散処理方法が挙げられる。その中でも、ビーズ、ボール、オタワサンドといった媒体メディアを用いた、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、ペイントシェーカー等の媒体攪拌ミルで粉砕、分散処理を行うことは、所望の分散粒子径への到達時間が短いことから好ましい。
本発明者らは、上述した被覆膜形成用分散液の調製において、水を媒質とする被覆膜形成用分散液を攪拌混合しながら、ここへ、本発明に係る表面処理剤を添加し、さらに、添加された金属キレート化合物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解反応を即座に完了させるのが好ましいことを知見した。本発明において「水を媒質とする被覆膜形成用分散液」と記載する場合がある。
これは、添加した本発明に係る表面処理剤の反応順序が影響していると考えられる。即ち、水を媒質とする被覆膜形成用分散液中においては、表面処理剤の加水分解反応が必ず先立ち、その後に、生成した加水分解生成物の重合反応が起こる。この結果、水を媒質としない場合に比較して、被覆膜中に存在する表面処理剤分子内の炭素C残存量を低減することが出来るからであると考えられる。当該被覆膜中に存在する表面処理剤分子内の炭素C残存量を低減することで、高密度な被覆膜を形成することが出来たと考えている。
一方、当該水を媒質とする被覆膜形成用分散液中において、被覆膜形成用分散液中におけるタングステン酸化物または/および複合タングステン酸化物の分散濃度が0.01質量%以上80質量%以下とすることが好ましい。分散濃度がこの範囲であれば、pHを8以下とすることができ、本発明に係る赤外線吸収微粒子は静電反発によって分散を保っている。
その結果、全ての赤外線吸収微粒子の表面は、金属キレート化合物の加水分解生成物、金属キレート化合物の加水分解生成物の重合物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物の重合物、から選択される1種以上を含む被覆膜で被覆され、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子が生成すると考えられる。
被覆膜の膜厚は、透過型電子顕微鏡で測定することができ、赤外線吸収微粒子の格子縞(結晶中の原子の並び)のないところが被覆膜に相当する。
上述した水を媒質とする被覆膜形成用分散液の調製法の変形例として、被覆膜形成用分散液の媒質として有機溶剤を用い、添加水量を適宜な値に調整しながら上述した反応順序を実現する方法もある。本発明において「有機溶剤を媒質とする被覆膜形成用分散液」と記載する場合がある。
当該調製方法は、後工程の都合により被覆膜形成用分散液中に含まれる水分量を低減したい場合にも便宜である。
具体的には、有機溶剤を媒質とする被覆膜形成用分散液を攪拌混合しながら、本発明に係る表面処理剤と純水とを並行滴下するものである。このとき、反応速度に影響する媒質温度や、表面処理剤と純水との滴下速度を適宜に制御する。尚、有機溶剤としては、アルコール系、ケトン系、グリコール系等、の室温で水に溶解する溶媒であれば良く、種々のものを選択することが可能である。
上述した被覆膜形成用分散液の調製工程にて得られた本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子は、赤外線吸収微粒子分散体や赤外線吸収基材の原料として、微粒子状態、液状の媒質または固体媒質に分散された状態で用いることが出来る。
即ち、生成した表面処理赤外線吸収微粒子は、さらに加熱処理を施して被覆膜の密度や化学的安定性を高めるといった操作は必要ない。当該加熱処理をせずとも既に所望の耐湿熱性を得られる程、当該被覆膜の密度や密着性は十分に高まっているからである。
これは、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子には、最終的に用いられる赤外線吸収微粒子分散体や赤外線吸収基材において、それらの用途から、多くの場合は透明性が求められる為である。赤外線吸収材料として凝集体を用いて、赤外線吸収微粒子分散体や赤外線吸収基材を作製すると、曇り度(ヘイズ)の高いものが得られてしまうこととなる。
もし強凝集体を形成する温度を超えて加熱処理した場合、赤外線吸収微粒子分散体や赤外線吸収基材の透明性を確保する為には、当該強凝集体を乾式または/および湿式で解砕して再分散させることとなる。しかし、当該解砕して再分散させる際、表面処理赤外線吸収微粒子の表面にある被覆膜が傷付き、場合によっては一部の被覆膜が剥離し、当該微粒子の表面が露出することも考えられる。
本発明者らは、上述した表面処理赤外線吸収微粒子を含有する赤外線吸収微粒子分散液、当該分散液を用いて作製した分散体へ、特定の構造を有する亜リン酸エステル系化合物を添加することにより、本発明に係る赤外線吸収微粒子分散体およびそれを用いて製造される赤外線吸収基材の耐候性を向上させ、当該分散体、赤外線吸収基材が長期間使用された際の赤外線吸収特性の低下を抑制することが出来ることを知見した。
即ち、表面処理赤外線吸収微粒子を含有する分散体の耐候性を向上させ、当該分散体が長期間使用された際の赤外線吸収特性の低下を抑制する目的で、本発明に係る亜リン酸エステル系化合物を、赤外線吸収微粒子分散液、または、当該分散液を用いて作製した分散体へ添加するものである。
以下、(1)亜リン酸エステル系化合物、(2)亜リン酸エステル化合物以外のリン酸系安定剤、(3)ヒンダードフェノール系安定剤、(4)スルフィド系安定剤、(5)金属不活性化剤、の順に説明する。
本発明に用いる亜リン酸エステル類は、構造式(1)で示される化合物において、R1、R2、R4およびR5はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜12の脂環族基、炭素数7〜12のアラルキル基または芳香族基を示す。
炭素数5〜12の脂環族基としては、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、1−メチルシクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−メチル−4−i−プロピルシクロヘキシル基などが挙げられる。
炭素数7〜12の芳香族基としては、例えばフェニル基、ナフチル基、2−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基などが挙げられる。
亜リン酸エステル類は、市販品を使用することもできる。例えば、商品名Sumilizer(登録商標)GP(住友化学株式会社製)などが挙げられる。
亜リン酸エステル類の添加量が微粒子100質量部に対して500質量部を超えている場合、120℃の高温の大気雰囲気下に保持した後においても、ヘイズ上昇が抑制され、透過率、特に日射透過率とも好ましい水準に担保される。
一方、亜リン酸エステル類の添加量が赤外線吸収微粒子100質量部に対して50000質量部以下であれば、120℃の高温の大気雰囲気下の保持前後において、ヘイズ上昇が抑制されると伴に透過率、日射透過率とも好ましい水準に担保される。
上述したように、本発明における亜リン酸エステル系安定剤の添加量は、赤外線吸収微粒子100質量部に対して500質量部を超えて50000質量部以下である。これに対し、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子を含まない、従来の技術に係る一般的な分散体における亜リン酸エステル類の安定剤の添加量は、赤外線吸収微粒子を含まない従来の技術に係る分散体における亜リン酸エステル類の安定剤の添加量を、当該赤外線吸収微粒子を100質量部含むと仮定して算出した場合、添加量50質量部〜200質量部に相当する量であり、本発明の添加量500質量部を超えて50000質量部以下とは、大きく異なる。
これに対し、従来の技術に係る赤外線吸収微粒子を含まない分散体/分散体へ、500質量部を超えて50000質量部以下に相当する亜リン酸エステル系安定剤を添加した場合、分散液/分散体には、安定剤の加水分解によると見られる白曇りが生じ、光学特性は著しく悪化する(比較例5、参照)。そして、当該従来の技術に係る分散液/分散体における悪化した光学特性の水準は、表面処理赤外線吸収微粒子および安定剤を添加しない分散液/分散体の水準よりも低いものであった(比較例5、13、参照)。
(1)にて説明した亜リン酸エステル化合物以外のリン系安定剤としては、一般式(2)に示す3価のリンを含むリン系官能基を備えたもの、一般式(3)に示す5価のリンを含むリン系官能基を備えたものを挙げることができる。
一方、ホスフィン基、等の3価のリンを含有するリン系官能基は、主として過酸化物分解機能(すなわち、P原子が自ら酸化することによって過酸化物を安定な化合物に分解する機能)を有していると考えられている。
これらのリン系官能基の中でも、ホスホン酸基を備えたホスホン酸系着色防止剤は、金属イオンを効率よく捕捉でき、耐加水分解性などの安定性に優れるので、赤外線吸収特性の低下抑制剤として特に好適である。
かかるリン酸系安定剤は、市販品を使用することもできる。例えば、商品名アデカスタブAS2112(株式会社ADEKA製)などが挙げられる。
ヒンダードフェノール系安定剤の例としては、フェノール性OH基の一位に第三ブチル基等の大きな基が導入された化合物である。ヒンダードフェノール系安定剤は、主として連鎖禁止機能(すなわち、フェノール性OH基がラジカルを捕捉して、ラジカルによる連鎖反応を抑制する機能)を有していると考えられる。
但し、上記各種の着色防止剤の有害ラジカル補足過程は、未解明な点も多く、上記以外の作用が働いている可能性もあり、上記作用に限定されるわけではない。
ヒンダードフェノール系安定剤としては、市販品を使用することもできる。例えば、商品名イルガノックス1010(BASF社製)などが挙げられる。
スルフィド系安定剤の例としては、分子内に2価の硫黄を有する化合物(本実施の形態において「硫黄系着色防止剤」という場合がある。)である。硫黄系着色防止剤は、主として過酸化物分解機能(すなわち、S原子が自ら酸化することによって過酸化物を安定な化合物に分解する機能)を有していると考えられる。低分子型の硫黄系着色防止剤の好適な例としては、ジラウリルチオジプロピオネート(S(CH2CH2COOC12H25)2)、ジステアリルチオジプロピオネート(S(CH2CH2COOC18H37)2)、ラウリルステアリルチオジプロピオネート(S(CH2CH2COOC18H37)(CH2CH2COOC12H25))、ジミリスチルチオジプロピオネート(S(CH2CH2COOC14H29)2)、ジステアリルβ、β’−チオジブチレート(S(CH(CH3)CH2COOC18H39)2)、2−メルカプトベンゾイミダゾール(C6H4NHNCSH)、ジラウリルサルファイド(S(C12H25)2)等が挙げられる。
スルフィド系安定剤としては、市販品を使用することもできる。例えば、商品名Sumilizer(登録商標)TPM(住友化学株式会社製)などが挙げられる。
(5)金属不活性化剤
金属不活性化剤としては、ヒドラジン誘導体、サリチル酸誘導体、シュウ酸誘導体等が好ましく用いられ、特に2’,3−ビス[[3−[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオニル]]プロピオノヒドラジド、2−ヒドロキシ−N−(2H−1,2,4−トリアゾール−3−yl)ベンザミド、ドデカン二酸ビス[2−(2−ヒドロキシベンゾイル)ヒドラジド]などが好ましい。
本発明に係る赤外線吸収微粒子分散液は、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子が液状の媒質(本発明において「液体媒質」と記載する場合がある。)中に分散しているものである。当該液体媒質としては、有機溶剤、油脂、液状可塑剤、硬化により高分子化される化合物、水、から選択される1種以上の液体媒質を用いることが出来る。
本発明に係る赤外線吸収微粒子分散液について(1)製造方法、(2)使用する有機溶剤、(3)使用する油脂、(4)使用する液状可塑剤、(5)使用する硬化により高分子化される化合物、(6)使用する分散剤、(7)赤外線吸収微粒子分散液の使用方法、の順に説明する。
本発明に係る赤外線吸収微粒子分散液を製造するには、上述した被覆膜形成用分散液を、表面処理赤外線吸収微粒子の強凝集を回避出来る条件での加熱、乾燥、または、例えば室温下における真空乾燥、噴霧乾燥等によって乾燥し、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子粉末を得る。そして、当該表面処理赤外線吸収微粒子粉末を、上述した液体媒質中に添加し、さらに亜リン酸エステル系化合物を添加して分散させればよい。また、被覆膜形成用分散液を、表面処理赤外線吸収微粒子と媒質とに分離し、溶媒置換の操作によって、被覆膜形成用分散液の媒質を、赤外線吸収微粒子分散液の媒質へ置き換え(所謂、溶媒置換)て、さらに亜リン酸エステル系化合物を添加して赤外線吸収微粒子分散液を製造することも好ましい構成である。
一方、予め、被覆膜形成用分散液の媒質と、赤外線吸収微粒子分散液の媒質とを一致させておき、表面処理後の被覆膜形成用分散液に亜リン酸エステル系化合物を添加して赤外線吸収微粒子分散液とすることも好ましい構成である。
本発明に係る赤外線吸収微粒子分散液に使用する有機溶剤としては、アルコール系、ケトン系、炭化水素系、グリコール系、水系、等を使用することが出来る。
具体的には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコールなどのアルコール系溶剤;
アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンなどのケトン系溶剤;
3−メチル−メトキシ−プロピオネートなどのエステル系溶剤;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテートなどのグリコール誘導体;
フォルムアミド、N−メチルフォルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミド類;
トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;
エチレンクロライド、クロルベンゼン、等を使用することが出来る。
そして、これらの有機溶剤中でも、特に、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸n−ブチル、等を好ましく使用することが出来る。
本発明に係る赤外線吸収微粒子分散液に使用する油脂としては、植物油脂または植物由来油脂が好ましい。
植物油としては、アマニ油、ヒマワリ油、桐油、エノ油等の乾性油、ゴマ油、綿実油、菜種油、大豆油、米糠油、ケシ油等の半乾性油、オリーブ油、ヤシ油、パーム油、脱水ヒマシ油等の不乾性油、等を使用することが出来る。
植物油由来の化合物としては、植物油の脂肪酸とモノアルコールを直接エステル反応させた脂肪酸モノエステル、エーテル類、等を使用することが出来る。
また、市販の石油系溶媒も油脂として用いることが出来る。
市販の石油系溶媒として、アイソパー(登録商標)E、エクソール(登録商標)Hexane、Heptane、E、D30、D40、D60、D80、D95、D110、D130(以上、エクソンモービル製)等を挙げることができる。
本発明に係る赤外線吸収微粒子分散液に使用する液状可塑剤としては、例えば、一価アルコールと有機酸エステルとの化合物である可塑剤、多価アルコール有機酸エステル化合物等のエステル系である可塑剤、有機リン酸系可塑剤等のリン酸系である可塑剤、等を使用することが出来る。尚、いずれも室温で液状であるものが好ましい。
なかでも、多価アルコールと脂肪酸から合成されたエステル化合物である可塑剤を好ましく使用することが出来る。当該多価アルコールと脂肪酸とから合成されたエステル化合物は特に限定されないが、例えば、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコールと、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2−エチル酪酸、ヘプチル酸、n−オクチル酸、2−エチルヘキシル酸、ペラルゴン酸(n−ノニル酸)、デシル酸等の一塩基性有機酸との反応によって得られた、グリコール系エステル化合物、等を使用することが出来る。
また、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコールと、前記一塩基性有機とのエステル化合物等も挙げられる。
なかでも、トリエチレングリコールジヘキサネート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−オクタネート、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノネート等のトリエチレングリコールの脂肪酸エステル、等を使用することが出来る。さらに、トリエチレングリコールの脂肪酸エステルも好ましく使用することが出来る。
本発明に係る赤外線吸収微粒子分散液に使用する硬化により高分子化される化合物は、重合等により高分子を形成する単量体やオリゴマーである。
具体的には、メチルメタクリレート単量体、アクレリート単量体、スチレン樹脂単量体、等を使用することが出来る。
本発明に係る赤外線吸収微粒子分散液中において、表面処理赤外線吸収微粒子の分散安定性を一層向上させ、再凝集による分散粒子径の粗大化を回避する為に、各種の分散剤、界面活性剤、カップリング剤などの添加も好ましい。
当該分散剤、カップリング剤、界面活性剤は用途に合わせて選定可能であるが、アミンを含有する基、水酸基、カルボキシル基、または、エポキシ基を官能基として有するものであることが好ましい。これらの官能基は、表面処理赤外線吸収微粒子の表面に吸着して凝集を防ぎ、均一に分散させる効果を持つ。これらの官能基のいずれかを分子中にもつ高分子系分散剤は、さらに好ましい。
上述のようにして製造された本発明に係る赤外線吸収微粒子分散液は、適宜な基材の表面に塗布し、ここに被覆膜を形成して赤外線吸収基材として利用することが出来る。つまり、当該被覆膜は、赤外線吸収微粒子分散液の乾燥固化物の一種である。
例えば、表面処理赤外線吸収微粒子を未硬化の熱硬化性樹脂へ添加する、または、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子を適宜な溶媒中に分散した後、未硬化の熱硬化性樹脂を添加することにより、硬化型インク組成物を得ることが出来る。硬化型インク組成物は、所定の基材上に設けられ、赤外線などの赤外線を照射されて硬化した際、当該基材への密着性に優れたものである。そして、当該硬化型インク組成物は、従来のインクとしての用途に加え、所定量を塗布し、ここへ赤外線などの電磁波を照射して硬化させて積み上げ、後3次元物体を造形する光造形法に最適な硬化型インク組成物となる。
(1)赤外線吸収微粒子分散体
本発明に係る赤外線吸収微粒子分散体は、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子が固体媒質中に分散しているものである。尚、当該固体媒質としては、樹脂、ガラス、等の固体媒質を用いることが出来る。
本発明に係る赤外線吸収微粒子分散体について(i)製造方法、(ii)耐湿熱性、(iii)耐熱性、の順に説明する。
上述したように、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子を樹脂等の媒質に練り込み、フィルムやボードに成形する場合、当該表面処理赤外線吸収微粒子と亜リン酸エステル系化合物とを、直接樹脂に練り込むことが可能である。また、前記赤外線吸収微粒子分散液と樹脂とを混合すること、または、当該表面処理赤外線吸収微粒子が固体媒質に分散された粉末状の分散体を液体媒質に添加しかつ樹脂と混合することも可能である。
固体媒質として樹脂を用いた場合、例えば、厚さ0.1μm〜50mmのフィルムまたはボードを構成する形態であってもよい。
この場合、さらに、当該表面処理赤外線吸収微粒子を樹脂に混合してペレット化し、当該ペレットを各方式でフィルムやボードを形成することも可能である。例えば、押し出し成形法、インフレーション成形法、溶液流延法、キャスティング法等により形成可能である。この時のフィルムやボードの厚さは、使用目的によって適宜設定すればよく、樹脂に対するフィラー量(すなわち、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子の配合量)は、基材の厚さや必要とされる光学特性、機械特性に応じて可変であるが、一般的に樹脂に対して50重量%以下が好ましい。
樹脂に対するフィラー量が50重量%以下であれば、固体状樹脂中での微粒子同士が造粒を回避出来るので、良好な透明性を保つことが出来る。また、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子の使用量も制御出来るのでコスト的にも有利である。
本発明に係る赤外線吸収微粒子分散体は、可視光透過率80%前後に設定した当該分散体を、85℃90%の湿熱雰囲気中に9日間暴露を行ったとき、当該暴露前後における可視光透過率の変化量が2.0%以下であり、優れた耐湿熱性を有している。
本発明に係る赤外線吸収微粒子分散体は、可視光透過率80%前後に設定した当該分散体を、120℃の大気雰囲気下に30日間暴露を行ったとき、当該暴露前後における可視光透過率の変化量が2.0%以下であり、優れた耐熱性を有している。
本発明に係る赤外線吸収基材は、所定の基材表面に、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子と亜リン酸エステル系化合物とを含有する被覆膜が形成されているものである。
所定の基材表面に、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子と亜リン酸エステル系化合物とを含有する被覆膜が形成されていることにより、本発明に係る赤外線吸収基材は、耐湿熱性および化学安定性に優れ、且つ赤外線吸収材料として好適に利用出来るものである。
本発明に係る赤外線吸収基材について(i)製造方法、(ii)耐湿熱性、(iii)耐熱性、の順に説明する。
例えば、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子と亜リン酸エステル系化合物を、アルコール等の有機溶剤や水等の液体媒質と、樹脂バインダーと、所望により分散剤とを混合した赤外線吸収微粒子分散液を、適宜な基材表面に塗布した後、液体媒質を除去することで、赤外線吸収微粒子分散体が基材表面に直接積層された赤外線吸収基材を得ることが出来る。
樹脂ボード、樹脂シート、樹脂フィルムに用いる樹脂としては、必要とするボード、シート、フィルムの表面状態や耐久性に不具合を生じないものであれば特に制限はない。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体等のスチレン系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体等のオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマーや、さらにこれらの二元系、三元系各種共重合体、グラフト共重合体、ブレンド物等の透明ポリマーからなるボード、シート、フィルムが挙げられる。特に、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートあるいはポリエチレン−2,6−ナフタレート等のポリエステル系2軸配向フィルムが、機械的特性、光学特性、耐熱性および経済性の点より好適である。当該ポリエステル系2軸配向フィルムは共重合ポリエステル系であっても良い。
上記赤外線吸収基材においては、可視光透過率80%に設定した当該赤外線吸収基材へ、85℃90%の湿熱雰囲気中に9日間暴露を行ったとき、当該暴露前後における可視光透過率の変化量が2.0%以下であり、優れた耐湿熱性を有している。
本発明に係る赤外線吸収微粒子分散体は、可視光透過率80%前後に設定した当該分散体を、120℃の大気雰囲気下に30日間暴露を行ったとき、当該暴露前後における可視光透過率の変化量が2.0%以下であり、優れた耐熱性を有している。
上述したように、本発明に係る赤外線吸収微粒子分散体や赤外線吸収基材であるフィルムやボード等の赤外線吸収物品は、耐湿熱性および耐熱性および化学安定性に優れている。
そこで、これらの赤外線吸収物品は、例えば、各種建築物や車両において、可視光線を十分に取り入れながら赤外領域の光を遮蔽し、明るさを維持しつつ室内の温度上昇を抑制することを目的とした窓材等、PDP(プラズマディスプレイパネル)に使用され、当該PDPから前方に放射される赤外線を遮蔽するフィルター等、に好適に使用することができる。
例えば、有機エレクトロルミネッセンス素子をレーザー転写法で形成する際に用いるドナーシート、感熱式プリンタ用の感熱紙や熱転写プリンタ用のインクリボンとして好適に用いることが出来る。当該光熱変換層は、本発明に係る赤外線吸収微粒子分散体の一例である。
実施例および比較例における分散液中の微粒子の分散粒子径は、動的光散乱法に基づく粒径測定装置(大塚電子株式会社製ELS−8000)により測定した平均値をもって示した。また、結晶子径は、粉末X線回折装置(スペクトリス株式会社PANalytical製X’Pert−PRO/MPD)を用いて粉末X線回折法(θ―2θ法)により測定し、リートベルト法を用いて算出した。
表面処理赤外線吸収微粒子の被覆膜の膜厚は、透過型電子顕微鏡(日立製作所株式会社社製 HF−2200)を用いて得た30万倍の写真データより、赤外線吸収微粒子の格子縞のないところを被覆膜として読み取った。
赤外線吸収シートまたはプレートの光学特性は、分光光度計(日立製作所株式会社製 U−4100)を用いて測定し、可視光透過率と日射透過率とはJISR3106に従って算出した。当該赤外線吸収シートまたはプレートのヘイズ値は、ヘイズメーター(村上色彩株式会社製 HM−150)を用いて測定し、JISK7105に従って算出した。
赤外線吸収シートまたはプレートの耐湿熱性の評価方法は、可視光透過率80%前後の当該赤外線吸収シートを85℃90%の湿熱雰囲気中に9日間暴露する。そして、例えば六方晶セシウムタングステンブロンズの場合は、当該暴露前後における日射透過率の変化量が2.0%以下のものを耐湿熱性が良好と判断し、変化量が2.0%を超えるものは耐湿熱性が不足と判断した。
赤外線吸収シートまたはプレートの耐湿熱性の評価方法は、可視光透過率80%前後の当該赤外線吸収シートを120℃の大気雰囲気下に30日間暴露する。そして、例えば六方晶セシウムタングステンブロンズの場合は、当該暴露前後における日射透過率の変化量が2.0%以下のものを耐熱性が良好と判断し、変化量が2.0%を超えるものは耐熱性が不足と判断した。
尚、ここでいう赤外線吸収シートまたはプレートの光学特性値(可視光透過率、ヘイズ値)は、基材である樹脂シートまたはプレートの光学的特性値を含む値である。
Cs/W(モル比)=0.33の六方晶セシウムタングステンブロンズ(Cs0.33WOz、2.0≦z≦3.0)粉末CWO(登録商標)(住友金属鉱山株式会社製YM−01)25質量%と純水75質量%とを混合して得られた混合液を、0.3mmφZrO2ビーズを入れたペイントシェーカーに装填し10時間粉砕・分散処理し、実施例1に係るCs0.33WOz微粒子の分散液を得た。得られた分散液中のCs0.33WOz微粒子の分散粒子径を測定したところ、100nmであった。尚、粒径測定の設定として、粒子屈折率は1.81とし、粒子形状は非球形とした。また、バックグラウンドは純水を用いて測定し、溶媒屈折率は1.33とした。また、得られた分散液の溶媒を除去したあと、結晶子径を測定したところ32nmであった。得られたCs0.33WOz微粒子の分散液と純水とを混合し、Cs0.33WOz微粒子の濃度が2質量%である実施例1に係る被覆膜形成用分散液Aを得た。
一方、アルミニウム系のキレート化合物としてアルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレート2.5質量%と、イソプロピルアルコール(IPA)97.5質量%とを混合して表面処理剤希釈液aを得た。
ここで、実施例1に係る表面処理赤外線吸収微粒子の被覆膜の膜厚を、透過型電子顕微鏡(日立製作所株式会社社製 HF−2200)を用いて得た30万倍の写真データより読み取ったところ2nmであることが判明した。尚、実施例1に係る表面処理赤外線吸収微粒子の30万の透過型電子顕微鏡写真を図2に示す。
実施例1の製造条件と評価結果とを表1〜4に記載する。
六方晶セシウムタングステンブロンズ粉末100質量部に対して、SumilizerGPを4000質量部(実施例2)、または、700質量部(実施例3)添加した以外は実施例1と同様にして、実施例2、3に係る赤外線吸収シートを得た。
得られた実施例2、3に係る赤外線吸収シートを実施例1と同様に評価した。
実施例2、3の製造条件と評価結果とを表1〜4に記載する。
実施例1に係る赤外線吸収微粒子分散粉とポリカーボネート樹脂とを、赤外線吸収微粒子の濃度が0.05wt%となるようにブレンダーで均一に混合した後、二軸押出機で溶融混練し、押出されたストランドをペレット状にカットし、実施例4に係る赤外線吸収微粒子含有マスターバッチを得た。尚、赤外線吸収微粒子含有マスターバッチは本発明に係る赤外線吸収微粒子分散体の一例である。
得られた実施例4に係る赤外線吸収プレートを実施例1と同様に評価した。
実施例4の製造条件と評価結果とを表1〜4に記載する。
六方晶セシウムタングステンブロンズ粉末100質量部に対して、SumilizerGPを1500質量部、IRGANOX1010を150質量部添加した以外は、実施例1と同様にして実施例5に係る赤外線吸収シートを得た。
得られた実施例5に係る微粒子分散液と赤外線吸収シートを実施例1と同様に評価した。
実施例5の製造条件と評価結果とを表1〜4に記載する。
IRGANOX1010の代わりにADEKA STAB 2112を用いた以外は実施例5と同様にして、実施例6に係る微粒子分散液と赤外線吸収シートを得た。
得られた実施例6に係る微粒子分散液と赤外線吸収シートを実施例1と同様に評価した。
実施例6の製造条件と評価結果とを表1〜4に記載する。
表面処理剤希釈液aの量とその滴下添加時間とを変更したこと以外は、実施例1と同様の操作をすることで、実施例7および8に係る表面処理赤外線吸収微粒子粉末、赤外線吸収微粒子分散液、赤外線吸収微粒子分散粉、赤外線吸収シートを得て、実施例1と同様の評価を実施した。
実施例7、8の製造条件と評価結果とを表1〜4に記載する。
実施例1に係る熟成液を、1時間静置させ、表面処理赤外線吸収微粒子と媒質とを固液分離させた。次いで、上澄みである媒質のみを除去して赤外線吸収微粒子スラリーを得た。得られた赤外線吸収微粒子スラリーにイソプロピルアルコールを添加して1時間攪拌させた後、1時間静置させ、再び表面処理赤外線吸収微粒子と媒質とを固液分離させた。次いで、上澄みである媒質のみを除去し、再び赤外線吸収微粒子スラリーを得た。
実施例9の製造条件と評価結果とを表1〜4に記載する。
ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート2.4質量%とイソプロピルアルコール97.6質量%とを混合して実施例10に係る表面処理剤希釈液bを得た。表面処理剤希釈液aの代わりに表面処理剤希釈液bを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作をすることで、実施例10に係る表面処理赤外線吸収微粒子粉末、赤外線吸収微粒子分散液、赤外線吸収微粒子分散粉、赤外線吸収シートを得て、実施例1と同様の評価を実施した。
実施例10の製造条件と評価結果とを表1〜4に記載する。
ジイソプロポキシチタンビスエチルアセトアセテート2.6質量%とイソプロピルアルコール97.4質量%とを混合して実施例11に係る表面処理剤希釈液cを得た。表面処理剤希釈液aの代わりに表面処理剤希釈液cを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作をすることで、実施例11に係る表面処理赤外線吸収微粒子粉末、赤外線吸収微粒子分散液、赤外線吸収微粒子分散粉、赤外線吸収シートを得て、実施例1と同様の評価を実施した。
実施例11の製造条件と評価結果とを表1〜4に記載する。
固体状樹脂としてポリカーボネート樹脂の代わりにポリメタクリル酸メチル樹脂を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作をすることで、実施例12に係る表面処理赤外線吸収微粒子粉末、赤外線吸収微粒子分散液、赤外線吸収微粒子分散粉、赤外線吸収シートを得て、実施例1と同様の評価を実施した。
実施例12の製造条件と評価結果とを表1〜4に記載する。
Na/W(モル比)=0.33の立方晶ナトリウムタングステンブロンズ粉末(住友金属鉱山株式会社製)25質量%とイソプロピルアルコール75質量%とを混合し、得られた混合液を、0.3mmφZrO2ビーズを入れたペイントシェーカーに装填して10時間粉砕・分散処理し、実施例13に係るNa0.33WOz微粒子の分散液を得た。得られた分散液中のNa0.33WOz微粒子の分散粒子径を測定したところ、100nmであった。尚、粒径測定の設定として、粒子屈折率は1.81とし、粒子形状は非球形とした。また、バックグラウンドはイソプロピルアルコールを用いて測定し、溶媒屈折率は1.38とした。また、得られた分散液の溶媒を除去したあと、Na0.33WOz微粒子の結晶子径を測定したところ32nmであった。
実施例13の製造条件と評価結果とを表1〜4に記載する。
六方晶セシウムタングステンブロンズ粉末の代わりに、K/W(モル比)=0.33の六方晶カリウムタングステンブロンズ粉末(実施例14)を用いた、Rb/W(モル比)=0.33の六方晶ルビジウムタングステンブロンズ粉末(実施例15)を用いた、マグネリ相のW18O49(実施例16)を用いた以外は、実施例1と同様にして赤外線吸収微粒子の分散粒子径および結晶子径を測定し、更に被覆膜形成用分散液C〜Eを得た。
被覆膜形成用分散液Bの代わりに被覆膜形成用分散液C〜Eを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作をすることで、実施例14〜16に係る表面処理赤外線吸収微粒子粉末、赤外線吸収微粒子分散液、赤外線吸収微粒子分散粉、赤外線吸収シートを得て、実施例1と同様の評価を実施した。
実施例14〜16の製造条件と評価結果とを表1〜4に記載する。
テトラエトキシシラン309gを表面処理剤eとした。表面処理剤希釈液aの代わりに表面処理剤eを用い、イソプロピルアルコールを添加しなかったこと以外は、実施例1と同様の操作をすることで、実施例14に係る表面処理赤外線吸収微粒子粉末、赤外線吸収微粒子分散液、赤外線吸収微粒子分散粉、赤外線吸収シートを得て、実施例1と同様の評価を実施した。当該製造条件と評価結果を表1〜4に示す。
亜鉛アセチルアセトナート4.4質量%とイソプロピルアルコール95.6質量%とを混合して実施例15に係る表面処理剤希釈液fを得た。表面処理剤希釈液aの代わりに表面処理剤希釈液fを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作をすることで、実施例15に係る表面処理赤外線吸収微粒子粉末、赤外線吸収微粒子分散液、赤外線吸収微粒子分散粉、赤外線吸収シートを得て、実施例1と同様の評価を実施した。当該製造条件と評価結果を表1〜4に示す。
真空流動乾燥の代わりに噴霧乾燥によって、実施例1に係る熟成液から媒質を蒸発させて実施例19に係る表面処理赤外線吸収微粒子を含む粉末(表面処理赤外線吸収微粒子粉末)を得た。得られた表面処理赤外線吸収微粒子粉末と純水とを混合し、赤外線吸収微粒子分散液を得た以外は、実施例1と同様の操作をすることで、実施例19に係る赤外線吸収微粒子分散液、赤外線吸収微粒子分散粉、赤外線吸収シートを得て、実施例1と同様の評価を実施した。当該製造条件と評価結果を表1〜4に示す。
SumilizerGPの代わりに何も添加しなかった以外は実施例1と同様にして、比較例1に係る微粒子分散液と赤外線吸収シートを得た。
得られた比較例1に係る微粒子分散液と赤外線吸収シートを実施例1と同様に評価した。
比較例1の製造条件と評価結果とを表1〜3、5に記載する。
六方晶セシウムタングステンブロンズ100質量部に対して、SumilizerGPを500質量部添加した以外は実施例1と同様にして、比較例2に係る微粒子分散液、赤外線吸収シートを得た。
得られた比較例2に係る微粒子分散液と赤外線吸収シートを実施例1と同様に評価した。
比較例2の製造条件と評価結果とを表1〜3、5に記載する。
六方晶セシウムタングステンブロンズ100質量部に対して、SumilizerGPの代わりにIRGANOX1010を300質量部添加した(比較例3)、または、SumilizerGPの代わりにADEKA STAB 2112を300質量部添加した(比較例4)以外は実施例1と同様にして、比較例3、4に係る微粒子分散液、赤外線吸収シートを得た。
得られた比較例3、4に係る微粒子分散液と赤外線吸収シートを実施例1と同様に評価した。
比較例3、4の製造条件と評価結果とを表1〜3、5に記載する。
分散粉の代わりに何も添加せずにした以外は、SumilizerGPを実施例1と同量添加して、比較例5に係る樹脂シートを得た。つまり、比較例5に係る樹脂シートは吸収微粒子を含有せず、SumilizerGP(構造式(2))の安定化剤のみを含む樹脂シートである。
得られた比較例5に係る試験前は透明であった樹脂シートは、85℃90%の湿熱雰囲気中に9日間暴露後は白曇りして不透明になった。
比較例5の製造条件と評価結果とを表1〜3、5に記載する。
六方晶セシウムタングステンブロンズ粉末7質量%とポリアクリレート系分散剤24質量%とトルエン69質量%とを混合し、得られた混合液を、0.3mmφZrO2ビーズを入れたペイントシェーカーに装填し4時間粉砕・分散処理し、比較例6に係る赤外線吸収微粒子分散液を得た。得られた分散液中の赤外線吸収微粒子の分散粒子径を測定したところ、100nmであった。尚、粒径測定の設定として、粒子屈折率は1.81とし、粒子形状は非球形とした。また、バックグラウンドはトルエンを用いて測定し、溶媒屈折率は1.50とした。また、得られた分散液の溶媒を除去したあと、結晶子径を測定したところ32nmであった。
次いで、この赤外線吸収微粒子分散液から真空流動乾燥により媒質を蒸発させ、比較例6に係る赤外線吸収微粒子分散粉を得た。
比較例6の製造条件と評価結果とを表1〜3、5に記載する。
固体状樹脂としてポリカーボネート樹脂の代わりにポリメタクリル酸メチル樹脂を用いたこと以外は、比較例6と同様の操作をすることで、比較例7に係る赤外線吸収微粒子分散液、赤外線吸収微粒子分散粉、赤外線吸収シートを得て、実施例1と同様の評価を実施した。
比較例7の製造条件と評価結果とを表1〜3、5に記載する。
六方晶セシウムタングステンブロンズ粉末の代わりに、Na/W(モル比)=0.33の立方晶ナトリウムタングステンブロンズ粉末(比較例8)や、K/W(モル比)=0.33の六方晶カリウムタングステンブロンズ粉末(比較例9)や、Rb/W(モル比)=0.33の六方晶ルビジウムタングステンブロンズ粉末(比較例10)や、マグネリ相のW18O49(比較例11)を用いたこと以外は、比較例6と同様の操作をすることで、比較例8〜11に係る赤外線吸収微粒子分散液、赤外線吸収微粒子分散粉、赤外線吸収シートを得て、実施例1と同様の評価を実施した。
比較例8〜11の製造条件と評価結果とを表1〜3、5に記載する。
Cs/W(モル比)=0.33の六方晶セシウムタングステンブロンズ粉末13質量%とイソプロピルアルコール87質量%とを混合し、得られた混合液を、0.3mmφZrO2ビーズを入れたペイントシェーカーに装填し5時間粉砕・分散処理し、比較例7に係るCs0.33WOz微粒子の分散液を得た。得られた分散液中のCs0.33WOz微粒子の分散粒子径を測定したところ、100nmであった。尚、粒径測定の設定として、粒子屈折率は1.81とし、粒子形状は非球形とした。また、バックグラウンドはイソプロピルアルコールを用いて測定し、溶媒屈折率は1.38とした。また、得られた分散液の溶媒を除去したあと、結晶子径を測定したところ32nmであった。
比較例12の製造条件と評価結果とを表1〜3、5に記載する。
SumilizerGPの代わりに何も添加せず、且つ、分散粉の代わりに何も添加せずにした以外は実施例1と同様にして、比較例13に係る樹脂シートを得た。つまり、比較例13に係る樹脂シートは、表面処理赤外線吸収微粒子もSumilizerGP等の添加物も含有していない。
得られた比較例13に係る樹脂シートを実施例1と同様に評価した。この結果を、表5に記載する。比較例13に係る樹脂シートは、120℃の大気雰囲気下に30日間保持した後も、85℃90%の湿熱雰囲気中に9日間暴露した後も、殆ど光学特性に変化は見られなかった。
比較例13の製造条件と評価結果とを表1〜3、5に記載する。
*2:dは純水
*3:表面処理剤希釈液aを360g滴下、純水dを100g滴下
*4:純水dを100g滴下、テトラエトキシシランeを140g滴下
*5:表面処理剤希釈液aと純水dとを3時間並行滴下
*6:純水dを1時間滴下、テトラエトキシシランeを2時間滴下
Claims (27)
- 液状の媒質と、前記媒質中に分散された表面処理赤外線吸収微粒子と、亜リン酸エステル系化合物とを含む赤外線吸収微粒子分散液であって、
前記表面処理赤外線吸収微粒子の表面が、金属キレート化合物の加水分解生成物、金属キレート化合物の加水分解生成物の重合物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物の重合物、から選択される1種以上を含む被覆膜で被覆されており、
前記亜リン酸エステル系化合物が、構造式(1)で示される亜リン酸エステル系化合物であり、且つ、前記亜リン酸エステル系化合物の添加量が、前記赤外線吸収微粒子100質量部に対して、500質量部を超えて50000質量部以下であることを特徴とする赤外線吸収微粒子分散液。
但し、前記構造式(1)において、R1、R2、R4およびR5は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜12の脂環族基、炭素数7〜12のアラルキル基または芳香族基のいずれかであり、
R3は、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基のいずれかであり、
Xは、単結合、または、以下の構造式(1−1)で示される2価の残基のいずれかであり、
Aは、炭素数2〜8のアルキレン基または以下の構造式(1−2)で示される2価の残基のいずれかであり、
Y、Zは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基または炭素数7〜12のアラルキルオキシ基のいずれかであり、他の一方が水素原子または炭素数1〜8のアルキル基のいずれかであり、
前記構造式(1−1)において、R6は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基のいずれかであり、
前記構造式(1−2)において、R7は、単結合または炭素数1〜8のアルキレン基のいずれかであり、*は、当該端末が、構造式(1)で示される亜リン酸エステル系化合物の酸素原子側に結合していることを示す。 - 前記被覆膜の膜厚が0.5nm以上であることを特徴とする請求項1に記載の赤外線吸収微粒子分散液。
- 前記金属キレート化合物または/および前記金属環状オリゴマー化合物が、Al、Zr、Ti、Si、Znから選択される1種類以上の金属元素を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の赤外線吸収微粒子分散液。
- 前記金属キレート化合物または前記金属環状オリゴマー化合物が、エーテル結合、エステル結合、アルコキシ基、アセチル基から選択される1種以上を有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の赤外線吸収微粒子分散液。
- 前記赤外線吸収微粒子が、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.2≦z/y≦2.999)、または/および、一般式MxWyOz(但し、M元素は、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、I、Ybのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.0≦z/y≦3.0)で表記される赤外線吸収微粒子であることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の赤外線吸収微粒子分散液。
- 前記M元素が、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Snのうちから選択される1種類以上であることを特徴とする請求項5に記載の赤外線吸収微粒子分散液。
- 前記赤外線吸収微粒子が、六方晶の結晶構造を持つ微粒子であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の赤外線吸収微粒子分散液。
- 前記赤外線吸収微粒子の結晶子径が、1nm以上200nm以下であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の赤外線吸収微粒子分散液。
- 前記表面処理赤外線吸収微粒子からなる表面処理赤外線吸収微粒子粉末において、炭素濃度が0.2質量%以上5.0質量%以下であることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の赤外線吸収微粒子分散液。
- 前記液状の媒質が、有機溶剤、油脂、液状可塑剤、硬化により高分子化される化合物、水から選択される1種以上の液状の媒質であることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の赤外線吸収微粒子分散液。
- さらに、前記亜リン酸エステル系化合物以外のリン酸系安定剤、ヒンダードフェノール系安定剤、スルフィド系安定剤、金属不活性化剤から選択される1種類以上の安定剤を含むことを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の赤外線吸収微粒子分散液。
- 媒質中に分散された表面処理赤外線吸収微粒子と、亜リン酸エステル系化合物とを含む赤外線吸収微粒子分散体であって、
前記表面処理赤外線吸収微粒子の表面が、金属キレート化合物の加水分解生成物、金属キレート化合物の加水分解生成物の重合物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物の重合物、から選択される1種以上を含む被覆膜で被覆されており、
前記亜リン酸エステル系化合物が、構造式(1)で示される亜リン酸エステル系化合物であり、且つ、前記亜リン酸エステル系化合物の添加量が、前記赤外線吸収微粒子100質量部に対して、500質量部を超えて50000質量部以下であることを特徴とする赤外線吸収微粒子分散体。
但し、前記構造式(1)において、R1、R2、R4およびR5は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜12の脂環族基、炭素数7〜12のアラルキル基または芳香族のいずれかであり、
R3は、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基のいずれかであり、
Xは、単結合、または、以下の構造式(1−1)で示される2価の残基のいずれかであり、
Aは、炭素数2〜8のアルキレン基または以下の構造式(1−2)で示される2価の残基のいずれかであり、
Y、Zは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基または炭素数7〜12のアラルキルオキシ基のいずれかであり、他の一方が水素原子または炭素数1〜8のアルキル基のいずれかであり、
前記構造式(1−1)において、R6は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基のいずれかであり、
前記構造式(1−2)において、R7は、単結合または炭素数1〜8のアルキレン基のいずれかであり、*は、当該端末が、構造式(1)で示される亜リン酸エステル系化合物の酸素原子側に結合していることを示す。 - 前記金属キレート化合物または/および前記金属環状オリゴマー化合物が、Al、Zr、Ti、Si、Znから選択される1種類以上の金属元素を含むことを特徴とする請求項12に記載の赤外線吸収微粒子分散体。
- 前記金属キレート化合物または前記金属環状オリゴマー化合物が、エーテル結合、エステル結合、アルコキシ基、アセチル基から選択される1種以上を有することを特徴とする請求項12または13に記載の赤外線吸収微粒子分散体。
- 前記赤外線吸収微粒子は、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.2≦z/y≦2.999)、または/および、一般式MxWyOz(但し、M元素は、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、I、Ybの内から選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.0≦z/y≦3)で表記される赤外線吸収微粒子であることを特徴とする請求項12から14のいずれかに記載の赤外線吸収微粒子分散体。
- 前記M元素が、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Snのうちから選択される1種類以上であることを特徴とする請求項15に記載の赤外線吸収微粒子分散体。
- 前記赤外線吸収微粒子が、六方晶の結晶構造を持つ微粒子であることを特徴とする請求項12から16のいずれかに記載の赤外線吸収微粒子分散体。
- 前記赤外線吸収微粒子の結晶子径が、1nm以上200nm以下であることを特徴とする請求項12から17のいずれかに記載の赤外線吸収微粒子分散体。
- 前記表面処理赤外線吸収微粒子からなる表面処理赤外線吸収微粒子粉末において、炭素濃度が0.2質量%以上5.0質量%以下であることを特徴とする請求項12から18のいずれかに記載の赤外線吸収微粒子分散体。
- 前記媒質が、高分子であることを特徴とする請求項12から19のいずれかに記載の赤外線吸収微粒子分散体。
- 前記媒質が、固体状樹脂であることを特徴とする請求項12から20のいずれかに記載の赤外線吸収微粒子分散体。
- 前記固体状樹脂が、フッ素樹脂、PET樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、から選択される1種以上の樹脂であることを特徴とする請求項21に記載の赤外線吸収微粒子分散体。
- さらに、前記亜リン酸エステル系化合物以外のリン酸系安定剤、ヒンダードフェノール系安定剤、スルフィド系安定剤、金属不活性化剤から選択される1種類以上の安定剤を含むことを特徴とする請求項12から22のいずれかに記載の赤外線吸収微粒子分散体。
- 赤外線吸収微粒子と、水と、
有機溶剤、液状樹脂、油脂、前記樹脂用の液状可塑剤、高分子単量体、または、これらの群から選択される2種以上の混合物とを、混合し、分散処理を行って前記赤外線吸収微粒子の被膜形成用分散液を得る工程と、
前記被膜形成用分散液へ、金属キレート化合物または/および金属環状オリゴマー化合物を添加し、前記赤外線吸収微粒子の表面を、金属キレート化合物の加水分解生成物、金属キレート化合物の加水分解生成物の重合物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物の重合物、から選択される1種以上で被覆する工程と、
前記被覆する工程の後に、前記被膜形成用分散液を構成する液状の媒質を除去して、表面処理赤外線吸収微粒子を含む表面処理赤外線吸収微粒子粉末を得る工程と、
前期表面処理赤外線吸収微粒子粉末を所定の媒質に加え、分散させて表面処理赤外線吸収微粒子の分散液を得る工程と、
前記表面処理赤外線吸収微粒子の分散液へ、前記赤外線吸収微粒子100質量部に対して、500質量部を超えて50000質量部以下の亜リン酸エステル系化合物を添加し、亜リン酸エステル系化合物を含む表面処理赤外線吸収微粒子の分散液を得る工程とを、有することを特徴とする赤外線吸収微粒子分散液の製造方法。 - 赤外線吸収微粒子と、水と、
有機溶剤、液状樹脂、油脂、前記樹脂用の液状可塑剤、高分子単量体、または、これらの群から選択される2種以上の混合物とを、混合し、分散処理を行って前記赤外線吸収微粒子の被膜形成用分散液を得る工程と、
前記被膜形成用分散液へ、金属キレート化合物または/および金属環状オリゴマー化合物を添加し、前記赤外線吸収微粒子の表面を、金属キレート化合物の加水分解生成物、金属キレート化合物の加水分解生成物の重合物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物の重合物、から選択される1種以上で被覆する工程と、
前記被覆する工程の後に、前記被膜形成用分散液を構成する液状の媒質を、所定の媒質に溶媒置換し、表面処理赤外線吸収微粒子の分散液を得る工程と、
前記表面処理赤外線吸収微粒子の分散液へ、前記赤外線吸収微粒子100質量部に対して、500質量部を超えて50000質量部以下の亜リン酸エステル系化合物を添加し、亜リン酸エステル系化合物を含む表面処理赤外線吸収微粒子の分散液を得る工程とを、有することを特徴とする赤外線吸収微粒子分散液の製造方法。 - 請求項24または25に記載の亜リン酸エステル系化合物を含む表面処理赤外線吸収微粒子の分散液、または、当該亜リン酸エステル系化合物を含む表面処理赤外線吸収微粒子の分散液を乾燥して得た、亜リン酸エステル系化合物を含む表面処理赤外線吸収微粒子の分散粉と、
適宜な媒体とを混合して、赤外線吸収微粒子分散体を得る工程とを、有することを特徴とする赤外線吸収微粒子分散体の製造方法。 - 請求項24または25に記載の表面処理赤外線吸収微粒子の分散液を乾燥して得た表面処理赤外線吸収微粒子の分散粉と、亜リン酸エステル系化合物と、適宜な媒体とを混合して、赤外線吸収微粒子分散体を得る工程とを、有することを特徴とする赤外線吸収微粒子分散体の製造方法。
但し、前記亜リン酸エステル系化合物の混合量は、前記赤外線吸収微粒子100質量部に対して、500質量部を超えて50000質量部以下である。
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