JP6769563B2 - 赤外線吸収微粒子分散液、赤外線吸収微粒子分散体、およびそれらの製造方法 - Google Patents

赤外線吸収微粒子分散液、赤外線吸収微粒子分散体、およびそれらの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、可視光領域の光は透過し、赤外線領域の光は吸収する赤外線吸収微粒子分散液、赤外線吸収微粒子分散体、およびそれらの製造方法に関する。
近年、赤外線吸収体の需要が急増しており、赤外線吸収体に関する特許が多く提案されている。これらの提案を機能的観点から俯瞰すると、例えば、各種建築物や車両の窓材等の分野において、可視光線を十分に取り入れながら近赤外領域の光を遮蔽し、明るさを維持しつつ室内の温度上昇を抑制することを目的としたもの、PDP(プラズマディスプレイパネル)から前方に放射される赤外線が、コードレスフォンや家電機器のリモコンに誤動作を引き起こしたり、伝送系光通信に悪影響を及ぼしたりすることを防止することを目的としたもの、等がある。
また、遮光部材の観点からは、例えば、窓材等に使用される遮光部材として、可視光領域から近赤外線領域に吸収特性があるカーボンブラック、チタンブラック等の無機顔料、および、可視光領域のみに強い吸収特性のあるアニリンブラック等の有機顔料等を含む黒色系顔料を含有する遮光フィルム、アルミ等の金属を蒸着したハーフミラータイプの遮光部材が提案されている。
例えば、特許文献1では、透明なガラス基板上に、基板側より第1層として周期律表のIIIa族、IVa族、Vb族、VIb族およびVIIb族から成る群から選ばれた少なくとも1種の金属イオンを含有する複合酸化タングステン膜を設け、当該第1層上に第2層として透明誘電体膜を設け、当該第2層上に第3層として周期律表のIIIa族、IVa族、Vb族、VIb族およびVIIb族から成る群から選ばれた少なくとも1種の金属イオンを含有する複合酸化タングステン膜を設け、且つ前記第2層の透明誘電体膜の屈折率を前記第1層および前記第3層の複合酸化タングステン膜の屈折率よりも低くすることにより、高い可視光透過率および良好な赤外線遮断性能が要求される部位に好適に使用することができる赤外線遮断ガラスが提案されている。
また、特許文献2では特許文献1と同様の方法で、透明なガラス基板上へ、基板側より第1層として第1の誘電体膜を設け、当該第1層上に第2層として酸化タングステン膜を設け、当該第2層上に第3層として第2の誘電体膜を設けた赤外線遮断ガラスが提案されている。
また、特許文献3では特許文献1と同様な方法で、透明な基板上へ、基板側より第1層として特許文献1と同様の金属元素を含有する複合酸化タングステン膜を設け、当該第1層上に第2層として透明誘電体膜を設けた熱線遮断ガラスが提案されている。
また、特許文献4では、水素、リチウム、ナトリウムまたはカリウム等の添加元素を含有する三酸化タングステン(WO)、三酸化モリブデン(MoO)、五酸化ニオブ(Nb)、五酸化タンタル(Ta)、五酸化バナジウム(V)および二酸化バナジウム(VO)の1種以上から選択される金属酸化物膜が、CVD法またはスプレー法で被覆され250℃程度で熱分解して形成された太陽光遮蔽特性を有する太陽光制御ガラスシートが提案されている。
また、特許文献5には、タングステン酸を加水分解して得られた酸化タングステンを用い、当該酸化タングステンに、ポリビニルピロリドンという特定の構造の有機ポリマーを添加した太陽光可変調光断熱材料が提案されている。当該太陽光可変調光断熱材料へ太陽光が照射されると、光線中の紫外線が酸化タングステンに吸収されて励起電子とホールとが発生し、少量の紫外線量により5価タングステンの出現量が著しく増加して着色反応が速くなり、これに伴って着色濃度が高くなる。他方、光を遮断することによって、5価タングステンが極めて速やかに6価に酸化されて消色反応が速くなる。当該着色/消色特性を用い、太陽光に対する着色および消色反応が速く、着色時に近赤外域の波長1250nmに吸収ピークが現れ、太陽光の近赤外線を遮断することができる太陽光可変調光断熱材料が得られることが提案されている。
一方、本発明者等は特許文献6において、六塩化タングステンをアルコールに溶解し、そのまま媒質を蒸発させるか、または加熱還流した後、媒質を蒸発させ、その後100℃〜500℃で加熱することにより、三酸化タングステンまたはその水和物または両者の混合物からなる酸化タングステン微粒子粉末を得ることを開示した。そして、当該酸化タングステン微粒子を用いてエレクトロクロミック素子が得られること、多層の積層体を構成し膜中にプロトンを導入したときに当該膜の光学特性を変化させることができること、等を開示した。
また、特許文献7には、メタ型タングステン酸アンモニウムと水溶性の各種金属塩とを原料とし、その混合水溶液の乾固物を約300〜700℃の加熱温度で加熱し、この加熱に不活性ガス(添加量;約50vol%以上)または水蒸気(添加量;約15vol%以下)を添加した水素ガスを供給することにより、MxWO(M;アルカリ、アルカリ土類、希土類などの金属元素、0<x<1)で表される種々のタングステンブロンズを作製する方法が提案されている。また、同様の操作を支持体上で行わせ、種々のタングステンブロンズ被覆複合体を製造する方法が提案され、燃料電池等の電極触媒材料として用いることが提案されている。
そして、本発明者等は特許文献8において、赤外線遮蔽材料微粒子が媒質中に分散してなる赤外線遮蔽材料微粒子分散体、当該赤外線遮蔽材料微粒子分散体の光学特性、導電性、製造方法について開示した。当該赤外線遮蔽材料微粒子は、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.2≦z/y≦2.999)で表記されるタングステン酸化物の微粒子、または/および、一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物の微粒子であって、当該赤外線遮蔽材料微粒子の粒子直径が1nm以上800nm以下である。
特開平8−59300号公報 特開平8−12378号公報 特開平8−283044号公報 特開2000−119045号公報 特開平9−127559号公報 特開2003−121884号公報 特開平8−73223号公報 国際公開第2005/37932号 国際公開第2010/55570号
本発明者らの検討によると、前記タングステン酸化物微粒子、または/および、複合タングステン酸化物微粒子を含む光学部材(フィルム、樹脂シート等)において、使用状況や方法により、空気中の水蒸気や水が固体状樹脂中へ徐々に浸透することを知見した。そして、水蒸気や水が固体状樹脂中へ徐々に浸透すると、前記タングステン含有酸化物微粒子の表面が分解し、波長200〜2600nmの光の透過率が経時的に上昇してしまい、前記光学部材の赤外線吸収性能が徐々に低下するという問題を知見した。
また、本発明者らの検討によると、特許文献8で開示したタングステン酸化物微粒子や複合タングステン酸化物微粒子においては、熱暴露によって固体状樹脂などの高分子媒質中に活性な有害ラジカルが発生し、該有害ラジカルによっても、当該微粒子の表面が分解劣化し、ひいては赤外線吸収効果の損失が発生することを知見した。
上述の状況の下、本発明者等は特許文献9において、耐水性に優れ、且つ、優れた赤外線遮蔽特性を有する赤外線遮蔽微粒子として、一般式WyOzで表記されるタングステン酸化物または/および一般式MxWyOzで表記される複合タングステン酸化物微粒子であって、当該微粒子の平均一次粒径が1nm以上、800nm以下であり、当該微粒子表面が4官能性シラン化合物もしくはその部分加水分解生成物、または/および、有機金属化合物で被覆されている赤外線遮蔽微粒子とその製造方法とを開示した。
しかしながら、赤外線吸収材料は、その特質から基本的には屋外で使用され、高い耐候性が要求される場合が多い。そして、市場での要求が年々高まっていくにつれて、特許文献9で開示した赤外線遮蔽微粒子に対しても、耐水性や耐湿熱性の更なる改善が求められるようになった。また、特許文献9で開示した赤外線遮蔽微粒子は、熱暴露に対する耐性、すなわち耐熱性の改善効果は低く、一定の課題を残していた。
本発明は上述の状況の下になされたものであり、その課題とするところは、耐湿熱性および耐熱性に優れ、且つ、優れた赤外線吸収特性を有する赤外線吸収微粒子分散液、赤外線吸収微粒子分散体、およびそれらの製造方法を提供することである。
本発明者等は、上述の課題の解決の為、優れた光学的特性を有する前記タングステン酸化物微粒子または/および複合タングステン酸化物微粒子を赤外線吸収微粒子とし、当該赤外線吸収微粒子の耐湿熱性および化学安定性を向上させることを可能にする構成について研究を行った。その結果、当該赤外線吸収微粒子表面との親和性に優れ、且つ、個々の当該赤外線吸収微粒子表面に対して均一に吸着し、強固な被覆膜を形成する化合物を用いて、当該個々の赤外線吸収微粒子の表面を被覆することが肝要なことに想到した。
本発明者等はさらに研究を続け、上述した赤外線吸収微粒子において親和性に優れ、被覆膜を形成する化合物として、金属キレート化合物や金属環状オリゴマー化合物に想到した。そして、さらなる研究の結果、当該金属キレート化合物や金属環状オリゴマー化合物が加水分解したときに生成する、これらの化合物の加水分解生成物、または、当該加水分解生成物の重合物が、個々の赤外線吸収微粒子表面に対して均一に吸着し、且つ、強固な被覆膜を形成する化合物であることに想到した。
即ち、タングステン酸化物微粒子または/および複合タングステン酸化物微粒子の表面が、金属キレート化合物の加水分解生成物、金属キレート化合物の加水分解生成物の重合物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物の重合物、から選択される1種以上を含む被覆膜で被覆されている赤外線吸収微粒子(本発明において「表面処理赤外線吸収微粒子」と記載する場合がある。)に想到したものである。そして、当該表面処理赤外線吸収微粒子は、優れた耐湿熱性を有していることを知見した。
さらに、当該表面処理赤外線吸収微粒子を適宜な媒質中に分散した赤外線吸収微粒子分散液を用いて製造した赤外線吸収微粒子分散体等が、耐湿熱性に優れ、且つ、優れた赤外線吸収特性を有することを知見した。
本発明者等はさらに研究を続け、所定の構造を有する亜リン酸エステル系化合物を、一般の樹脂成形体等においては想到しない添加量をもって、添加した赤外線吸収分散液および当該赤外線吸収分散液を用いて作製した赤外線吸収分散体は、長期の安定な耐湿熱性を示すこと、加えて、耐熱性にも優れることを見出し、上記課題を解決するに至った。
即ち、上述の課題を解決する為の第1の発明は、
液状の媒質と、前記媒質中に分散された表面処理赤外線吸収微粒子と、亜リン酸エステル系化合物とを含む赤外線吸収微粒子分散液であって、
前記表面処理赤外線吸収微粒子の表面が、金属キレート化合物の加水分解生成物、金属キレート化合物の加水分解生成物の重合物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物の重合物、から選択される1種以上を含む被覆膜で被覆されており、
前記亜リン酸エステル系化合物が、構造式(1)で示される亜リン酸エステル系化合物であり、且つ、前記亜リン酸エステル系化合物の添加量が、前記赤外線吸収微粒子100質量部に対して、500質量部を超えて50000質量部以下であることを特徴とする赤外線吸収微粒子分散液である。
但し、前記構造式(1)において、R1、R2、R4およびR5は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜12の脂環族基、炭素数7〜12のアラルキル基または芳香族基のいずれかであり、
R3は、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基のいずれかであり、
Xは、単結合、または、以下の構造式(1−1)で示される2価の残基のいずれかであり、
Aは、炭素数2〜8のアルキレン基または以下の構造式(1−2)で示される2価の残基のいずれかであり、
Y、Zは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基または炭素数7〜12のアラルキルオキシ基のいずれかであり、他の一方が水素原子または炭素数1〜8のアルキル基のいずれかであり、
前記構造式(1−1)において、R6は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基のいずれかであり、
前記構造式(1−2)において、R7は、単結合または炭素数1〜8のアルキレン基のいずれかであり、*は、当該端末が、構造式(1)で示される亜リン酸エステル系化合物の酸素原子側に結合していることを示す。
第2の発明は、
前記被覆膜の膜厚が0.5nm以上であることを特徴とする第1の発明に記載の赤外線吸収微粒子分散液である。
第3の発明は、
前記金属キレート化合物または/および前記金属環状オリゴマー化合物が、Al、Zr、Ti、Si、Znから選択される1種類以上の金属元素を含むことを特徴とする第1または第2の発明に記載の赤外線吸収微粒子分散液である。
第4の発明は、
前記金属キレート化合物または前記金属環状オリゴマー化合物が、エーテル結合、エステル結合、アルコキシ基、アセチル基から選択される1種以上を有することを特徴とする第1から第3の発明のいずれかに記載の赤外線吸収微粒子分散液である。
第5の発明は、
前記赤外線吸収微粒子が、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.2≦z/y≦2.999)、または/および、一般式MxWyOz(但し、M元素は、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、I、Ybのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.0≦z/y≦3.0)で表記される赤外線吸収微粒子であることを特徴とする、第1から第4の発明のいずれかに記載の赤外線吸収微粒子分散液である。
第6の発明は、
前記M元素が、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Snのうちから選択される1種類以上であることを特徴とする第5の発明に記載の赤外線吸収微粒子分散液である。
第7の発明は、
前記赤外線吸収微粒子が、六方晶の結晶構造を持つ微粒子であることを特徴とする第1から第6の発明のいずれかに記載の赤外線吸収微粒子分散液である。
第8の発明は、
前記赤外線吸収微粒子の結晶子径が、1nm以上200nm以下であることを特徴とする第1から第7の発明のいずれかに記載の赤外線吸収微粒子分散液である。
第9の発明は、
前記表面処理赤外線吸収微粒子からなる表面処理赤外線吸収微粒子粉末において、炭素濃度が0.2質量%以上5.0質量%以下であることを特徴とする第1から第8の発明のいずれかに記載の赤外線吸収微粒子分散液である。
第10の発明は、
前記液状の媒質が、有機溶剤、油脂、液状可塑剤、硬化により高分子化される化合物、水から選択される1種以上の液状の媒質であることを特徴とする第1から第9の発明のいずれかに記載の赤外線吸収微粒子分散液である。
第11の発明は、
さらに、前記亜リン酸エステル系化合物以外のリン酸系安定剤、ヒンダードフェノール系安定剤、スルフィド系安定剤、金属不活性化剤から選択される1種類以上の安定剤を含むことを特徴とする第1から第10の発明のいずれかに記載の赤外線吸収微粒子分散液である。
第12の発明は、
媒質中に分散された表面処理赤外線吸収微粒子と、亜リン酸エステル系化合物とを含む赤外線吸収微粒子分散体であって、
前記表面処理赤外線吸収微粒子の表面が、金属キレート化合物の加水分解生成物、金属キレート化合物の加水分解生成物の重合物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物の重合物、から選択される1種以上を含む被覆膜で被覆されており、
前記亜リン酸エステル系化合物が、構造式(1)で示される亜リン酸エステル系化合物であり、且つ、前記亜リン酸エステル系化合物の添加量が、前記赤外線吸収微粒子100質量部に対して、500質量部を超えて50000質量部以下であることを特徴とする赤外線吸収微粒子分散体である。

但し、前記構造式(1)において、R1、R2、R4およびR5は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜12の脂環族基、炭素数7〜12のアラルキル基または芳香族のいずれかであり、
R3は、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基のいずれかであり、
Xは、単結合、または、以下の構造式(1−1)で示される2価の残基のいずれかであり、


Aは、炭素数2〜8のアルキレン基または以下の構造式(1−2)で示される2価の残基のいずれかであり、
Y、Zは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基または炭素数7〜12のアラルキルオキシ基のいずれかであり、他の一方が水素原子または炭素数1〜8のアルキル基のいずれかであり、
前記構造式(1−1)において、R6は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基のいずれかであり、
前記構造式(1−2)において、R7は、単結合または炭素数1〜8のアルキレン基のいずれかであり、*は、当該端末が、構造式(1)で示される亜リン酸エステル系化合物の酸素原子側に結合していることを示す。
第13の発明は、
前記金属キレート化合物または/および前記金属環状オリゴマー化合物が、Al、Zr、Ti、Si、Znから選択される1種類以上の金属元素を含むことを特徴とする第12の発明に記載の赤外線吸収微粒子分散体である。
第14の発明は、
前記金属キレート化合物または前記金属環状オリゴマー化合物が、エーテル結合、エステル結合、アルコキシ基、アセチル基から選択される1種以上を有することを特徴とする第12または第13の発明に記載の赤外線吸収微粒子分散体である。
第15の発明は、
前記赤外線吸収微粒子は、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.2≦z/y≦2.999)、または/および、一般式MxWyOz(但し、M元素は、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、I、Ybの内から選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.0≦z/y≦3)で表記される赤外線吸収微粒子であることを特徴とする第12から第14の発明のいずれかに記載の赤外線吸収微粒子分散体である。
第16の発明は、
前記M元素が、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Snのうちから選択される1種類以上であることを特徴とする第15の発明に記載の赤外線吸収微粒子分散体である。
第17の発明は、
前記赤外線吸収微粒子が、六方晶の結晶構造を持つ微粒子であることを特徴とする第12から第16の発明のいずれかに記載の赤外線吸収微粒子分散体である。
第18の発明は、
前記赤外線吸収微粒子の結晶子径が、1nm以上200nm以下であることを特徴とする第12から第17の発明のいずれかに記載の赤外線吸収微粒子分散体である。
第19の発明は、
前記表面処理赤外線吸収微粒子からなる表面処理赤外線吸収微粒子粉末において、炭素濃度が0.2質量%以上5.0質量%以下であることを特徴とする第12から第18の発明のいずれかに記載の赤外線吸収微粒子分散体である。
第20の発明は、
前記媒質が、高分子であることを特徴とする第12から第19の発明のいずれかに記載の赤外線吸収微粒子分散体である。
第21の発明は、
前記媒質が、固体状樹脂であることを特徴とする第12から第20の発明のいずれかに記載の赤外線吸収微粒子分散体である。
第22の発明は、
前記固体状樹脂が、フッ素樹脂、PET樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、から選択される1種以上の樹脂であることを特徴とする第21の発明に記載の赤外線吸収微粒子分散体である。
第23の発明は、
さらに、前記亜リン酸エステル系化合物以外のリン酸系安定剤、ヒンダードフェノール系安定剤、スルフィド系安定剤、金属不活性化剤から選択される1種類以上の安定剤を含むことを特徴とする第12から第22の発明のいずれかに記載の赤外線吸収微粒子分散体である。
第24の発明は、
赤外線吸収微粒子と、水と、
有機溶剤、液状樹脂、油脂、前記樹脂用の液状可塑剤、高分子単量体、または、これらの群から選択される2種以上の混合物とを、混合し、分散処理を行って前記赤外線吸収微粒子の被膜形成用分散液を得る工程と、
前記被膜形成用分散液へ、金属キレート化合物または/および金属環状オリゴマー化合物を添加し、前記赤外線吸収微粒子の表面を、金属キレート化合物の加水分解生成物、金属キレート化合物の加水分解生成物の重合物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物の重合物、から選択される1種以上で被覆する工程と、
前記被覆する工程の後に、前記被膜形成用分散液を構成する液状の媒質を除去して、表面処理赤外線吸収微粒子を含む表面処理赤外線吸収微粒子粉末を得る工程と、
前期表面処理赤外線吸収微粒子粉末を所定の媒質に加え、分散させて表面処理赤外線吸収微粒子の分散液を得る工程と、
前記表面処理赤外線吸収微粒子の分散液へ、前記赤外線吸収微粒子100質量部に対して、500質量部を超えて50000質量部以下の亜リン酸エステル系化合物を添加し、亜リン酸エステル系化合物を含む表面処理赤外線吸収微粒子の分散液を得る工程とを、有することを特徴とする赤外線吸収微粒子分散液の製造方法である。
第25の発明は、
赤外線吸収微粒子と、水と、
有機溶剤、液状樹脂、油脂、前記樹脂用の液状可塑剤、高分子単量体、または、これらの群から選択される2種以上の混合物とを、混合し、分散処理を行って前記赤外線吸収微粒子の被膜形成用分散液を得る工程と、
前記被膜形成用分散液へ、金属キレート化合物または/および金属環状オリゴマー化合物を添加し、前記赤外線吸収微粒子の表面を、金属キレート化合物の加水分解生成物、金属キレート化合物の加水分解生成物の重合物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物の重合物、から選択される1種以上で被覆する工程と、
前記被覆する工程の後に、前記被膜形成用分散液を構成する液状の媒質を、所定の媒質に溶媒置換し、表面処理赤外線吸収微粒子の分散液を得る工程と、
前記表面処理赤外線吸収微粒子の分散液へ、前記赤外線吸収微粒子100質量部に対して、500質量部を超えて50000質量部以下の亜リン酸エステル系化合物を添加し、亜リン酸エステル系化合物を含む表面処理赤外線吸収微粒子の分散液を得る工程とを、有することを特徴とする赤外線吸収微粒子分散液の製造方法である。
第26の発明は、
第24または第25の発明に記載の亜リン酸エステル系化合物を含む表面処理赤外線吸収微粒子の分散液、または、当該亜リン酸エステル系化合物を含む表面処理赤外線吸収微粒子の分散液を乾燥して得た、亜リン酸エステル系化合物を含む表面処理赤外線吸収微粒子の分散粉と、
適宜な媒体とを混合して、赤外線吸収微粒子分散体を得る工程とを、有することを特徴とする赤外線吸収微粒子分散体の製造方法である。
第27の発明は、
第24または第25の発明に記載の表面処理赤外線吸収微粒子の分散液を乾燥して得た表面処理赤外線吸収微粒子の分散粉と、亜リン酸エステル系化合物と、適宜な媒体とを混合して、赤外線吸収微粒子分散体を得る工程とを、有することを特徴とする赤外線吸収微粒子分散体の製造方法である。
但し、前記亜リン酸エステル系化合物の混合量は、前記赤外線吸収微粒子100質量部に対して、500質量部を超えて50000質量部以下である。
本発明に係る赤外線吸収微粒子分散液を用いて作製した当該赤外線吸収微粒子分散体は、高い耐湿熱性と耐熱性を有し、優れた赤外線吸収特性を有していた。
六方晶の結晶構造を有する複合タングステン酸化物における結晶構造の模式的な平面図である。 実施例1に係る表面処理赤外線吸収微粒子の30万倍の透過型電子顕微鏡写真である。
本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子は、赤外線吸収微粒子であるタングステン酸化物微粒子または/および複合タングステン酸化物微粒子の表面が、金属キレート化合物の加水分解生成物、金属キレート化合物の加水分解生成物の重合物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物の重合物、から選択される1種以上を含む被覆膜で被覆されている表面処理赤外線吸収微粒子である。また、本発明に係る赤外線吸収微粒子分散液、または、その分散液を用いて作製した赤外線吸収微粒子分散体は、特定の構造を有する亜リン酸エステル系化合物を含有している。
以下、本発明を、[1]赤外線吸収微粒子、[2]赤外線吸収微粒子の表面被覆に用いる表面処理剤、[3]赤外線吸収微粒子の表面被覆方法、[4]亜リン酸エステル系化合物、[5]赤外線吸収微粒子分散液、[6]赤外線吸収微粒子分散体、赤外線吸収基材、並びに物品、の順で詳細に説明する。
尚、本発明において、「赤外線吸収微粒子へ耐湿熱性を付与する為に、当該微粒子の表面へ、金属キレート化合物の加水分解生成物、金属キレート化合物の加水分解生成物の重合物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物の重合物、から選択される1種以上を用いて形成した被覆膜」を、単に「被覆膜」と記載する場合がある。
[1]赤外線吸収微粒子
一般に、自由電子を含む材料は、プラズマ振動によって波長200nmから2600nmの太陽光線の領域周辺の電磁波に反射吸収応答を示すことが知られている。このような物質の粉末を、光の波長より小さい粒子にすると、可視光領域(波長380nmから780nm)の幾何学散乱が低減されて可視光領域の透明性が得られることが知られている。
尚、本発明において「透明性」とは、「可視光領域の光に対して散乱が少なく透過性が高い。」という意味で用いている。
一般に、タングステン酸化物(WO)中には有効な自由電子が存在しない為、赤外線領域の吸収反射特性が少なく、赤外線吸収微粒子としては有効ではない。
一方、酸素欠損を持つWOや、WOにNa等の陽性元素を添加した複合タングステン酸化物は、導電性材料であり、自由電子を持つ材料であることが知られている。そして、これらの自由電子を持つ材料の単結晶等の分析により、赤外線領域の光に対する自由電子の応答が示唆されている。
本発明者等は、当該タングステンと酸素との組成範囲の特定部分において、赤外線吸収微粒子として特に有効な範囲があることを見出し、可視光領域においては透明で、赤外線領域においては吸収を持つタングステン酸化物微粒子、複合タングステン酸化物微粒子に想到した。
ここで、本発明に係る赤外線吸収微粒子であるタングステン酸化物微粒子または/および複合タングステン酸化物微粒子について、(1)タングステン酸化物微粒子、(2)複合タングステン酸化物微粒子、(3)タングステン酸化物微粒子および複合タングステン酸化物微粒子、の順で説明する。
(1)タングステン酸化物微粒子
本発明に係るタングステン酸化物微粒子は、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.2≦z/y≦2.999)で表記されるタングステン酸化物の微粒子である。
一般式WyOzで表記されるタングステン酸化物において、当該タングステンと酸素との組成範囲は、タングステンに対する酸素の組成比が3よりも少なく、さらには、当該赤外線吸収微粒子をWyOzと記載したとき、2.2≦z/y≦2.999であることが好ましい。
当該z/yの値が2.2以上であれば、当該タングステン酸化物中に目的以外であるWOの結晶相が現れるのを回避することが出来ると伴に、材料としての化学的安定性を得ることが出来るので有効な赤外線吸収微粒子となる。一方、当該z/yの値が2.999以下であれば、必要とされる量の自由電子が生成され効率よい赤外線吸収微粒子となる。
(2)複合タングステン酸化物微粒子
上述したWOへ、後述する元素Mを添加し複合タングステン酸化物とすることで、当該WO中に自由電子が生成され、特に近赤外線領域に自由電子由来の強い吸収特性が発現し、波長1000nm付近の近赤外線吸収微粒子として有効となる。
即ち、当該WOに対し、酸素量の制御と、自由電子を生成する元素Mの添加とを併用することで、より効率の良い赤外線吸収微粒子を得ることが出来る。この酸素量の制御と、自由電子を生成する元素Mの添加とを併用した赤外線吸収微粒子の一般式をMxWyOz(但し、Mは、前記M元素、Wはタングステン、Oは酸素)と記載したとき、0.001≦x/y≦1、2.0≦z/y≦3の関係を満たす赤外線吸収微粒子が望ましい。
まず、元素Mの添加量を示すx/yの値について説明する。
x/yの値が0.001より大きければ、複合タングステン酸化物において十分な量の自由電子が生成され目的とする赤外線吸収効果を得ることが出来る。そして、元素Mの添加量が多いほど、自由電子の供給量が増加し、赤外線吸収効率も上昇するが、x/yの値が1程度で当該効果も飽和する。また、x/yの値が1より小さければ、当該赤外線吸収微粒子中に不純物相が生成されるのを回避できるので好ましい。
また、元素Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、I、Ybのうちから選択される1種類以上であることが好ましい。
ここで、元素Mを添加された当該MxWyOzにおける安定性の観点から、元素Mは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Reのうちのうちから選択される1種類以上の元素であることがより好ましい。そして、赤外線吸収微粒子としての光学特性、耐候性を向上させる観点から、元素Mは、アルカリ土類金属元素、遷移金属元素、4B族元素、5B族元素に属するものであることがさらに好ましい。
次に、酸素量の制御を示すz/yの値について説明する。z/yの値については、MxWyOzで表記される複合タングステン酸化物においても、上述したWyOzで表記されるタングステン酸化物と同様の機構が働くことに加え、z/y=3.0や2.0≦z/y≦2.2においても、上述した元素Mの添加量による自由電子の供給がある。この為、2.0≦z/y≦3.0が好ましく、より好ましくは2.2≦z/y≦3.0、さらに好ましくは2.45≦z/y≦3.0である。
さらに、当該複合タングステン酸化物微粒子が六方晶の結晶構造を有する場合、当該微粒子の可視光領域の透過が向上し、赤外領域の吸収が向上する。この六方晶の結晶構造の模式的な平面図である図1を参照しながら説明する。
図1において、符号11で示すWO単位にて形成される8面体が6個集合して六角形の空隙が構成され、当該空隙中に、符号12で示す元素Mが配置して1箇の単位を構成し、この1箇の単位が多数集合して六方晶の結晶構造を構成する。
そして、可視光領域における光の透過を向上させ、赤外領域における光の吸収を向上させる効果を得る為には、複合タングステン酸化物微粒子中に、図1を用いて説明した単位構造が含まれていれば良く、当該複合タングステン酸化物微粒子が結晶質であっても非晶質であっても構わない。
この六角形の空隙に元素Mの陽イオンが添加されて存在するとき、可視光領域における光の透過が向上し、赤外領域における光の吸収が向上する。ここで一般的には、イオン半径の大きな元素Mを添加したとき当該六方晶が形成され易い。具体的には、Cs、K、Rb、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Snを添加したとき六方晶が形成され易い。勿論これら以外の元素でも、WO単位で形成される六角形の空隙に上述した元素Mが存在すれば良く、上述の元素に限定される訳ではない。
六方晶の結晶構造を有する複合タングステン酸化物微粒子が均一な結晶構造を有するとき、添加元素Mの添加量は、x/yの値で0.2以上0.5以下が好ましく、更に好ましくは0.33である。x/yの値が0.33となることで、上述した元素Mが六角形の空隙の全てに配置されると考えられる。
また、六方晶以外であって、正方晶、立方晶の複合タングステン酸化物も赤外線吸収微粒子として有効である。結晶構造によって、赤外線領域の吸収位置が変化する傾向があり、立方晶<正方晶<六方晶の順に、吸収位置が長波長側に移動する傾向がある。また、それに付随して可視光線領域の吸収が少ないのは、六方晶、正方晶、立方晶の順である。従って、より可視光領域の光を透過し、より赤外線領域の光を吸収する用途には、六方晶の複合タングステン酸化物を用いることが好ましい。ただし、ここで述べた光学特性の傾向は、あくまで大まかな傾向であり、添加元素の種類や、添加量、酸素量によって変化するものであり、本発明がこれに限定されるわけではない。
(3)タングステン酸化物微粒子および複合タングステン酸化物微粒子
本発明に係る、タングステン酸化物微粒子や複合タングステン酸化物微粒子を含有する赤外線吸収微粒子は、近赤外線領域、特に波長1000nm付近の光を大きく吸収するため、その透過色調は青色系から緑色系となる物が多い。
また、当該赤外線吸収微粒子中におけるタングステン酸化物微粒子や複合タングステン酸化物微粒子の分散粒子径は、その使用目的によって、各々選定することができる。
まず、透明性を保持したい応用に使用する場合は、800nm以下の粒子径を有していることが好ましい。これは、800nmよりも小さい粒子は、散乱により光を完全に吸収することが無く、可視光線領域の視認性を保持し、同時に効率良く透明性を保持することができるからである。特に可視光領域の透明性を重視する場合は、さらに粒子による散乱を考慮することが好ましい。
この粒子による散乱の低減を重視するとき、分散粒子径は200nm以下、好ましくは100nm以下が良い。この理由は、粒子の分散粒子径が小さければ、幾何学散乱もしくはミー散乱による、波長400nm〜780nmの可視光線領域の光の散乱が低減される結果、赤外線吸収膜が曇りガラスのようになり、鮮明な透明性が得られなくなるのを回避できる。即ち、分散粒子径が200nm以下になると、上記幾何学散乱もしくはミー散乱が低減し、レイリー散乱領域になる。レイリー散乱領域では、散乱光は粒子径の6乗に比例して低減するため、分散粒子径の減少に伴い散乱が低減し透明性が向上するからである。
さらに分散粒子径が100nm以下になると、散乱光は非常に少なくなり好ましい。光の散乱を回避する観点からは、分散粒子径が小さい方が好ましく、分散粒子径が1nm以上あれば工業的な製造は容易である。
上記分散粒子径を800nm以下とすることにより、本発明に係る赤外線吸収微粒子を媒質中に分散させた赤外線吸収微粒子分散体のヘイズ値は、可視光透過率85%以下でヘイズ30%以下とすることができる。ヘイズが30%よりも大きい値であると、曇りガラスのようになり、鮮明な透明性が得られない。
尚、赤外線吸収微粒子の分散粒子径は、動的光散乱法を原理とした大塚電子株式会社製ELS−8000等を用いて測定することができる。
また、タングステン酸化物微粒子や複合タングステン酸化物微粒子において、2.45≦z/y≦2.999で表される組成比を有する、所謂「マグネリ相」は化学的に安定であり、赤外線領域の吸収特性も良いので、赤外線吸収微粒子として好ましい。
また、優れた赤外線吸収特性を発揮させる観点から、赤外線吸収微粒子の結晶子径は1nm以上200nm以下であることが好ましく、より好ましくは1nm以上100nm以下、さらに好ましくは10nm以上70nm以下であることが好ましい。結晶子径の測定には、粉末X線回折法(θ―2θ法)によるX線回折パターンの測定と、リートベルト法による解析を用いる。X線回折パターンの測定には、例えばスペクトリス株式会社PANalytical製の粉末X線回折装置「X’Pert−PRO/MPD」などを用いることができる。
[2]赤外線吸収微粒子の表面被覆に用いる表面処理剤
本発明に係る赤外線吸収微粒子の表面被覆に用いる表面処理剤は、金属キレート化合物の加水分解生成物、金属キレート化合物の加水分解生成物の重合物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物の重合物、から選択される1種以上である。
そして、当該金属キレート化合物、金属環状オリゴマー化合物は、金属アルコキシド、金属アセチルアセトネート、金属カルボキシレートであることが好ましい観点からエーテル結合、エステル結合、アルコキシ基、アセチル基から選択される1種以上を有することが好ましい。
ここで、本発明に係る表面処理剤について、(1)金属キレート化合物、(2)金属環状オリゴマー化合物、(3)金属キレート化合物や金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物および重合物、(4)表面処理剤の添加量、の順で説明する。
(1)金属キレート化合物
本発明に用いる金属キレート化合物は、アルコキシ基を含有するAl系、Zr系、Ti系、Si系、Zn系のキレート化合物から選ばれる一種又は二種以上であることが好ましい。
アルミニウム系のキレート化合物としては、アルミニウムエチレート、アルミニウムイソプロピレート、アルミニウムsec−ブチレート、モノ−sec−ブトキシアルミニウムジイソプロピレートなどのアルミニウムアルコレートまたはこれら重合物、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、オクチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロプレート、ステアリルアセトアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)等、を例示することが出来る。
これらの化合物は、アルミニウムアルコレートを非プロトン性溶媒や、石油系溶剤、炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、アミド系溶剤等に溶解し、この溶液に、β−ジケトン、β−ケトエステル、一価または多価アルコール、脂肪酸等を加えて、加熱還流し、リガンドの置換反応により得られた、アルコキシ基含有のアルミニウムキレート化合物である。
ジルコニア系のキレート化合物としては、ジルコニウムエチレート、ジルコニウムブチレートなどのジルコニウムアルコレートまたはこれら重合物、ジルコニウムトリブトキシステアレート、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムトリブトキシエチルアセトアセテート、ジルコニウムブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)等、を例示することが出来る。
チタン系のキレート化合物としては、メチルチタネート、エチルチタネート、イソプロピルチタネート、ブチルチタネート、2−エチルヘキシルチタネートなどのチタンアルコレートやこれら重合物、チタンアセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンエチルアセトアセテート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネート等、を例示することが出来る。
シリコン系のキレート化合物としては、一般式:Si(OR)(但し、Rは同一または異種の炭素原子数1〜6の一価炭化水素基)で示される4官能性シラン化合物またはその加水分解生成物を用いることが出来る。4官能性シラン化合物の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等が挙げられる。さらに、これらアルコキシシランモノマーのアルコキシ基の一部あるいは全量が加水分解し、シラノール(Si−OH)基となったシランモノマー(あるいはオリゴマー)、および、加水分解反応を経て自己縮合した重合体の適用も可能である。
また、4官能性シラン化合物の加水分解生成物(4官能性シラン化合物の中間体全体を指示する適宜な術語が存在しない。)としては、アルコキシ基の一部あるいは全量が加水分解して、シラノール(Si−OH)基となったシランモノマー、4〜5量体のオリゴマー、および、重量平均分子量(Mw)が800〜8000程度の重合体(シリコーンレジン)が挙げられる。尚、アルコキシシランモノマー中のアルコキシシリル基(Si-OR)は、加水分解反応の過程において、その全てが加水分解してシラノール(Si−OH)になるわけではない。
亜鉛系のキレート化合物としては、オクチル酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛などの有機カルボン酸亜鉛塩、アセチルアセトン亜鉛キレート、ベンゾイルアセトン亜鉛キレート、ジベンゾイルメタン亜鉛キレート、アセト酢酸エチル亜鉛キレート等、を好ましく例示することが出来る。
(2)金属環状オリゴマー化合物
本発明に係る金属環状オリゴマー化合物としては、Al系、Zr系、Ti系、Si系、Zn系の環状オリゴマー化合物から選ばれる1種以上であることが好ましい。中でも、環状アルミニウムオキサイドオクチレート等、の環状アルミニウムオリゴマー化合物を好ましく例示することができる。
(3)金属キレート化合物や金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物および重合物
本発明では、上述した金属キレート化合物や金属環状オリゴマー化合物における、アルコキシ基、エーテル結合、エステル結合の全量が加水分解し、ヒドロキシル基やカルボキシル基となった加水分解生成物、一部が加水分解した部分加水分解生成物、または/および、当該加水分解反応を経て自己縮合した重合物を、本発明に係る赤外線吸収微粒子の表面に被覆して被覆膜とし、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子を得るものである。
即ち、本発明における加水分解生成物は、部分加水分解生成物を含む概念である。
但し、例えば、アルコール等の有機溶剤が介在するような反応系においては、一般的に化学量論組成上、必要十分な水が系内に存在していたとしても、当該有機溶剤の種類や濃度により、出発物質となる金属キレート化合物や金属環状オリゴマー化合物のアルコキシ基やエーテル結合やエステル結合の全てが加水分解するわけではない。従って、後述する表面被覆方法の条件によっては、加水分解後にもその分子内に炭素Cを取り込んだアモルファス状態になることがある。
その結果、被覆膜には、未分解の金属キレート化合物または/および金属環状オリゴマー化合物が含有される場合があるが、微量であれば特に問題は無い。
(4)表面処理剤の添加量
上述した金属キレート化合物や金属環状オリゴマー化合物の添加量は、赤外線吸収微粒子100質量部に対して、金属元素換算で0.1質量部以上、1000質量部以下であることが好適である。より好ましくは、1質量部以上、500質量部以下の範囲である。更に好ましくは、10質量部以上、150質量部以下の範囲である。
これは、金属キレート化合物または金属環状オリゴマー化合物が0.1質量部以上あれば、それらの化合物の加水分解生成物や、当該加水分解生成物の重合物が、赤外線吸収微粒子の表面を被覆する効果が発揮され耐湿熱性向上の効果が得られる。
また、金属キレート化合物または金属環状オリゴマー化合物が1000質量部以下であれば、赤外線吸収微粒子に対する吸着量が過剰になることを回避出来る。また、表面被覆による耐湿熱性の向上が飽和せず、被覆効果の向上が望める。
さらに、金属キレート化合物または金属環状オリゴマー化合物が1000質量部以下であることで、赤外線吸収微粒子に対する吸着量が過剰になり、媒質除去時に当該金属キレート化合物または金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物や、当該加水分解生成物の重合物を介して微粒子同士が造粒し易くなることを回避出来るからである。当該望まれない微粒子同士の造粒回避によって、良好な透明性を担保することが出来る。
加えて、金属キレート化合物または金属環状オリゴマー化合物の過剰による、添加量および処理時間の増加による生産コスト増加も回避出来る。よって工業的な観点からも金属キレート化合物や金属環状オリゴマー化合物の添加量は、1000質量部以下とすることが好ましい。
[3]表面被覆方法
本発明に係る赤外線吸収微粒子の表面被覆方法においては、まず、赤外線吸収微粒子を適宜な媒質中に分散させた被覆膜形成用の赤外線吸収微粒子分散液(本発明において「被覆膜形成用分散液」と記載する場合がある。)を調製する。そして、調製された被覆膜形成用分散液中へ表面処理剤を添加して混合攪拌を行う。すると、赤外線吸収微粒子の表面が、金属キレート化合物の加水分解生成物、金属キレート化合物の加水分解生成物の重合物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物の重合物、から選択される1種以上を含む被覆膜で被覆される。
ここで、本発明に係る表面被覆方法について、(1)被覆膜形成用分散液の調製、(2)水を媒質とする被覆膜形成用分散液の調製、(3)添加水量を調整した被覆膜形成用分散液の調製、(4)被覆膜形成用分散液における混合攪拌後の処理、の順で説明する。
(1)被覆膜形成用分散液の調製
本発明に係る被覆膜形成用分散液においては、赤外線吸収微粒子であるタングステン酸化物または/および複合タングステン酸化物を予め細かく粉砕して、適宜な媒質中に分散させ、単分散の状態にしておくことが好ましい。そして、この粉砕、分散処理工程中において分散状態を担保し、微粒子同士を凝集させないことが肝要である。これは、赤外線吸収微粒子の表面処理の過程において、当該微粒子が凝集を起こし、当該微粒子が凝集体の状態で表面被覆され、ひいては、後述する赤外線吸収微粒子分散体中においても当該凝集体が残存し、後述する赤外線吸収微粒子分散体や赤外線吸収基材の透明性が低下する事態を回避する為である。
従って、本発明に係る被覆膜形成用分散液に対して粉砕・分散処理を行うことにより、本発明に係る表面処理剤を添加した際、個々の赤外線吸収微粒子に対して、当該表面処理剤の加水分解生成物、当該加水分解生成物の重合物を、均一且つ強固に被覆することが出来る。
当該粉砕・分散処理の具体的方法としては、例えば、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、ペイントシェーカー、超音波ホモジナイザーなどの装置を用いた粉砕・分散処理方法が挙げられる。その中でも、ビーズ、ボール、オタワサンドといった媒体メディアを用いた、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、ペイントシェーカー等の媒体攪拌ミルで粉砕、分散処理を行うことは、所望の分散粒子径への到達時間が短いことから好ましい。
(2)水を媒質とする被覆膜形成用分散液の調製
本発明者らは、上述した被覆膜形成用分散液の調製において、水を媒質とする被覆膜形成用分散液を攪拌混合しながら、ここへ、本発明に係る表面処理剤を添加し、さらに、添加された金属キレート化合物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解反応を即座に完了させるのが好ましいことを知見した。本発明において「水を媒質とする被覆膜形成用分散液」と記載する場合がある。
これは、添加した本発明に係る表面処理剤の反応順序が影響していると考えられる。即ち、水を媒質とする被覆膜形成用分散液中においては、表面処理剤の加水分解反応が必ず先立ち、その後に、生成した加水分解生成物の重合反応が起こる。この結果、水を媒質としない場合に比較して、被覆膜中に存在する表面処理剤分子内の炭素C残存量を低減することが出来るからであると考えられる。当該被覆膜中に存在する表面処理剤分子内の炭素C残存量を低減することで、高密度な被覆膜を形成することが出来たと考えている。
尚、上述した水を媒質とする被覆膜形成用分散液中において、金属キレート化合物、金属環状オリゴマー化合物、これらの加水分解生成物、当該加水分解生成物の重合物は、添加直後に金属イオンにまで分解されることもあるが、その場合、飽和水溶液となったところで、当該金属イオン迄の分解は終了する。
一方、当該水を媒質とする被覆膜形成用分散液中において、被覆膜形成用分散液中におけるタングステン酸化物または/および複合タングステン酸化物の分散濃度が0.01質量%以上80質量%以下とすることが好ましい。分散濃度がこの範囲であれば、pHを8以下とすることができ、本発明に係る赤外線吸収微粒子は静電反発によって分散を保っている。
その結果、全ての赤外線吸収微粒子の表面は、金属キレート化合物の加水分解生成物、金属キレート化合物の加水分解生成物の重合物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物の重合物、から選択される1種以上を含む被覆膜で被覆され、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子が生成すると考えられる。
本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子の被覆膜の膜厚は0.5nm以上あることが好ましい。これは、当該被覆膜の膜厚が0.5nm以上あれば、当該表面処理赤外線吸収微粒子が十分な耐湿熱性および化学安定性を発揮すると考えられるからである。一方、当該表面処理赤外線吸収微粒子が所定の光学的特性を担保する観点から、当該被覆膜の膜厚は100nm以下であることが好ましいと考えられる。また、膜厚は0.5nm以上20nm以下であることが好ましく、さらに好ましくは1nm以上10nm以下である。
被覆膜の膜厚は、透過型電子顕微鏡で測定することができ、赤外線吸収微粒子の格子縞(結晶中の原子の並び)のないところが被覆膜に相当する。
(3)添加水量を調整した被覆膜形成用分散液の調製
上述した水を媒質とする被覆膜形成用分散液の調製法の変形例として、被覆膜形成用分散液の媒質として有機溶剤を用い、添加水量を適宜な値に調整しながら上述した反応順序を実現する方法もある。本発明において「有機溶剤を媒質とする被覆膜形成用分散液」と記載する場合がある。
当該調製方法は、後工程の都合により被覆膜形成用分散液中に含まれる水分量を低減したい場合にも便宜である。
具体的には、有機溶剤を媒質とする被覆膜形成用分散液を攪拌混合しながら、本発明に係る表面処理剤と純水とを並行滴下するものである。このとき、反応速度に影響する媒質温度や、表面処理剤と純水との滴下速度を適宜に制御する。尚、有機溶剤としては、アルコール系、ケトン系、グリコール系等、の室温で水に溶解する溶媒であれば良く、種々のものを選択することが可能である。
(4)被覆膜形成用分散液における混合攪拌後の処理
上述した被覆膜形成用分散液の調製工程にて得られた本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子は、赤外線吸収微粒子分散体や赤外線吸収基材の原料として、微粒子状態、液状の媒質または固体媒質に分散された状態で用いることが出来る。
即ち、生成した表面処理赤外線吸収微粒子は、さらに加熱処理を施して被覆膜の密度や化学的安定性を高めるといった操作は必要ない。当該加熱処理をせずとも既に所望の耐湿熱性を得られる程、当該被覆膜の密度や密着性は十分に高まっているからである。
尤も、被覆膜形成用分散液から表面処理赤外線吸収微粒子の粉末を得る目的、得られた表面処理赤外線吸収微粒子粉末を乾燥する目的、等により被覆膜形成用分散液や表面処理赤外線吸収微粒子粉末を加熱処理することは可能である。しかし、この場合、加熱処理温度が、表面処理赤外線吸収微粒子が強く凝集して強凝集体を形成する温度を超えないように留意する。
これは、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子には、最終的に用いられる赤外線吸収微粒子分散体や赤外線吸収基材において、それらの用途から、多くの場合は透明性が求められる為である。赤外線吸収材料として凝集体を用いて、赤外線吸収微粒子分散体や赤外線吸収基材を作製すると、曇り度(ヘイズ)の高いものが得られてしまうこととなる。
もし強凝集体を形成する温度を超えて加熱処理した場合、赤外線吸収微粒子分散体や赤外線吸収基材の透明性を確保する為には、当該強凝集体を乾式または/および湿式で解砕して再分散させることとなる。しかし、当該解砕して再分散させる際、表面処理赤外線吸収微粒子の表面にある被覆膜が傷付き、場合によっては一部の被覆膜が剥離し、当該微粒子の表面が露出することも考えられる。
以上、説明したように、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子は、混合攪拌後の処理の後に加熱処理を必要としないので強凝集を起こさず、従って凝集を解砕する為の分散処理が不要、または短時間で済む。この結果、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子の被覆膜は傷付くことなく、個々の赤外線吸収微粒子を被覆したままとなる。そして、当該表面処理赤外線吸収微粒子を用いて製造される赤外線吸収微粒子分散体や赤外線吸収基材は、従来の方法で得られるものよりも、優れた耐湿熱性を示すと考えられる。
また、上述したように、被覆膜中に存在する表面処理剤分子内の炭素Cの残存量を低減することで、高密度な被覆膜を形成することが出来る。この観点から、表面処理赤外線吸収微粒子からなる表面処理赤外線吸収微粒子粉末において、含有される炭素濃度は0.2質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、0.5質量%以上3.0質量%以下である。
[4]亜リン酸エステル系化合物
本発明者らは、上述した表面処理赤外線吸収微粒子を含有する赤外線吸収微粒子分散液、当該分散液を用いて作製した分散体へ、特定の構造を有する亜リン酸エステル系化合物を添加することにより、本発明に係る赤外線吸収微粒子分散体およびそれを用いて製造される赤外線吸収基材の耐候性を向上させ、当該分散体、赤外線吸収基材が長期間使用された際の赤外線吸収特性の低下を抑制することが出来ることを知見した。
即ち、表面処理赤外線吸収微粒子を含有する分散体の耐候性を向上させ、当該分散体が長期間使用された際の赤外線吸収特性の低下を抑制する目的で、本発明に係る亜リン酸エステル系化合物を、赤外線吸収微粒子分散液、または、当該分散液を用いて作製した分散体へ添加するものである。
そして、当該亜リン酸エステル系化合物に加えて、当該亜リン酸エステル化合物以外のリン酸系安定剤、ヒンダードフェノール系安定剤、スルフィド系安定剤、金属不活性化剤から選ばれる1種類以上の耐候性改良剤を、併用して添加することも好ましい構成である。
以下、(1)亜リン酸エステル系化合物、(2)亜リン酸エステル化合物以外のリン酸系安定剤、(3)ヒンダードフェノール系安定剤、(4)スルフィド系安定剤、(5)金属不活性化剤、の順に説明する。
(1)亜リン酸エステル化合物
本発明に用いる亜リン酸エステル類は、構造式(1)で示される化合物において、R1、R2、R4およびR5はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜12の脂環族基、炭素数7〜12のアラルキル基または芳香族基を示す。
炭素数1〜8のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、t−ペンチル基、i−オクチル基、t−オクチル基、2−エチルヘキシル基などが挙げられる。
炭素数5〜12の脂環族基としては、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、1−メチルシクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−メチル−4−i−プロピルシクロヘキシル基などが挙げられる。
炭素数7〜12のアラルキル基としては、例えばベンジル基、α−メチルベンジル基、α、α−ジメチルベンジル基などが挙げられる。
炭素数7〜12の芳香族基としては、例えばフェニル基、ナフチル基、2−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基などが挙げられる。
R1、R2、R4は炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜12の脂環族基などであることが好ましい。R1、R4はt−ブチル基、t−ペンチル基、t−オクチル基などのt−アルキル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロヘキシル基などであることがさらに好ましい。
R2はメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ペンチル基などの炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、メチル基、t−ブチル基、t−ペンチル基などがさらに好ましい。R5は水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、t−ペンチル基などの炭素数1〜5のアルキル基が好ましい。
R3は水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を示すが、炭素数1〜8のアルキル基としては、R1、R2、R4、R5において前記したと同様の炭素数1〜8のアルキル基が挙げられる。R5は水素原子またはR2において前記したと同様の炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、水素原子、メチル基などがさらに好ましい。
Xは単結合、硫黄原子または構造式(1−1)で示される2価の残基を示す。構造式(1−1)で示される2価の残基においてR6は水素原子、炭素数1〜8のアルキル基または炭素数5〜12の脂環族基を示すが、ここで炭素数1〜8のアルキル基および炭素数5〜12の脂環族基としては、R1、R2、R4およびR5において前記したと同様のアルキル基及び脂環族基がそれぞれ例示される。
R6は水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基などの炭素数1〜5のアルキル基が好ましい。Xは単結合、構造式(1−1)で示される2価の残基が好ましく、単結合がさらに好ましい。
Aは、炭素数2〜8のアルキレン基または構造式(1−2)で示される2価の残基を示すが、炭素数2〜8のアルキレン基が好ましく、かかるアルキレン基としては、例えばエチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基などが挙げられ、プロピレン基がさらに好ましい。構造式(1−2)で示される2価の残基は酸素原子とベンゼン核とに結合しているが、*は酸素原子と結合していることを示している。R7は単結合または炭素数1〜8のアルキレン基を示すが、ここで炭素数1〜8のアルキレン基としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基などが挙げられる。かかるR7としては単結合、エチレン基などが好ましい。
Y、Zはいずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基または炭素数7〜12のアラルキルオキシ基を示し、他の一方が水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を示す。ここで、炭素数1〜8のアルキル基としてはR1、R2、R4およびR5として前記したと同様のアルキル基が挙げられる。炭素数1〜8のアルコキシル基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、t−ペントキシ基、i−オクトキシ基、t−オクトキシ基、2−エチルヘキトキシ基などが挙げられる。炭素数7〜12のアラルキルオキシ基としては、例えばベンジルオキシ基、α−メチルベンジルオキシ基、α、α−ジメチルベンジルオキシ基などが挙げられる。Y、Zは、Yがヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基または炭素数7〜12のアラルキルオキシ基であり、Zが水素原子または炭素数1〜8のアルキル基であってもよいし、Zがヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基または炭素数7〜12のアラルキルオキシ基であり、Yが水素原子または炭素数1〜8のアルキル基であってもよい。
構造式(1)で示される亜リン酸エステル類の中でも、R1およびR4がt−アルキル基、シクロヘキシルまたは1−メチルシクロヘキシル基であり、R2が炭素数1〜5のアルキル基であり、R5が水素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、R3が水素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、Xが単結合であり、Aが炭素数2〜8のアルキレン基であることが特に好ましい。
亜リン酸エステル類の好ましい具体例としては、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン〔「Sumilizer(登録商標)GP」(住友化学株式会社製)として市販されている。〕、2,10−ジメチル−4,8−ジ−t−ブチル−6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ]−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[3−(3、5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、2,4,8,10−テトラ−t−ペンチル−6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ]−12−メチル−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、2,10−ジメチル−4,8−ジ−t−ブチル−6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、2,4,8,10−テトラ−t−ペンチル−6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−12−メチル−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、2,10−ジメチル−4,8−ジ−t−ブチル−6−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾイルオキシ)−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾイルオキシ]−12−メチル−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、2,10−ジメチル−4,8−ジ−t−ブチル−6−[3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ]−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ]−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、2,10−ジエチル−4,8−ジ−t−ブチル−6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ]−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[2,2−ジメチル−3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピンなどが挙げられる。
亜リン酸エステル類は、市販品を使用することもできる。例えば、商品名Sumilizer(登録商標)GP(住友化学株式会社製)などが挙げられる。
亜リン酸エステル類の添加量は、赤外線吸収微粒子100質量部に対して500質量部を超えて50000質量部以下が好ましく、特に700質量部以上2000質量部以下がより好ましい。
亜リン酸エステル類の添加量が微粒子100質量部に対して500質量部を超えている場合、120℃の高温の大気雰囲気下に保持した後においても、ヘイズ上昇が抑制され、透過率、特に日射透過率とも好ましい水準に担保される。
一方、亜リン酸エステル類の添加量が赤外線吸収微粒子100質量部に対して50000質量部以下であれば、120℃の高温の大気雰囲気下の保持前後において、ヘイズ上昇が抑制されると伴に透過率、日射透過率とも好ましい水準に担保される。
ここで、本発明の特徴を明確化する為、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子を含む分散液/分散体への亜リン酸エステル系安定剤の添加方法と、従来の技術に係る赤外線吸収微粒子を含まない分散体/分散体への亜リン酸エステル系安定剤の添加方法との比較について説明する。
上述したように、本発明における亜リン酸エステル系安定剤の添加量は、赤外線吸収微粒子100質量部に対して500質量部を超えて50000質量部以下である。これに対し、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子を含まない、従来の技術に係る一般的な分散体における亜リン酸エステル類の安定剤の添加量は、赤外線吸収微粒子を含まない従来の技術に係る分散体における亜リン酸エステル類の安定剤の添加量を、当該赤外線吸収微粒子を100質量部含むと仮定して算出した場合、添加量50質量部〜200質量部に相当する量であり、本発明の添加量500質量部を超えて50000質量部以下とは、大きく異なる。
本発明者らの知見によると、分散液/分散体が本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子を含む場合は、亜リン酸エステル系安定剤の添加量が、赤外線吸収微粒子100質量部に対して500質量部を超えて50000質量部以下であることにより、分散液/分散体の安定性に効力を発揮する。
これに対し、従来の技術に係る赤外線吸収微粒子を含まない分散体/分散体へ、500質量部を超えて50000質量部以下に相当する亜リン酸エステル系安定剤を添加した場合、分散液/分散体には、安定剤の加水分解によると見られる白曇りが生じ、光学特性は著しく悪化する(比較例5、参照)。そして、当該従来の技術に係る分散液/分散体における悪化した光学特性の水準は、表面処理赤外線吸収微粒子および安定剤を添加しない分散液/分散体の水準よりも低いものであった(比較例5、13、参照)。
(2)その他のリン系安定剤
(1)にて説明した亜リン酸エステル化合物以外のリン系安定剤としては、一般式(2)に示す3価のリンを含むリン系官能基を備えたもの、一般式(3)に示す5価のリンを含むリン系官能基を備えたものを挙げることができる。
尚、一般式(2)および一般式(3)において、x、y、zは、0または1の値をとる。また、R1、R2およびR3は、一般式CmHnで表される直鎖、環状、もしくは分岐構造のある炭化水素基、または、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、または、水素原子である。さらに、yまたはzが1の場合には、R2またはR3は金属原子でもよい。
また、本実施の形態において「リン系官能基」とは、一般式(2)(3)において、R1を除いた部分(すなわち、一般式:−Ox−P(OyR2)(OzR3)、または、一般式:−Ox−P(O)(OyR2)(OzR3)で表されるもの)をいう。リン系官能基の例としては、具体的には、ホスホン酸基(−P(O)(OH))、リン酸基(−O−P(O)(OH))、ホスホン酸エステル基(−P(O)(OR2)(OR3))、リン酸エステル基(−O−P(O)(OR2)(OR3))、ホスフィン基(−P(R2)(R3))等が挙げられる。
これらのリン系官能基のうち、ホスホン酸基、リン酸基、ホスホン酸エステル基およびリン酸エステル基、等の5価のリンを含有する官能基は、主として連鎖開始阻害機能(すなわち、隣接するリン系官能基によって金属イオンをキレート的に捕捉する機能)を有していると考えられている。
一方、ホスフィン基、等の3価のリンを含有するリン系官能基は、主として過酸化物分解機能(すなわち、P原子が自ら酸化することによって過酸化物を安定な化合物に分解する機能)を有していると考えられている。
これらのリン系官能基の中でも、ホスホン酸基を備えたホスホン酸系着色防止剤は、金属イオンを効率よく捕捉でき、耐加水分解性などの安定性に優れるので、赤外線吸収特性の低下抑制剤として特に好適である。
低分子型のリン系着色防止剤の好適な例として、具体的には、リン酸(HPO)、トリフェニルフォスファイト((CO)P)、トリオクタデシルフォスファイト((C1827O)P)、トリデシルフォスファイト((C1021O)P)、トリラウリルトリチオフォスファイト([CH(CH11S]P)、等が挙げられる。
また、高分子型のリン系着色防止剤の好適な例として、具体的には、ポリビニルホスホン酸、ポリスチレンホスホン酸、ビニル系リン酸(例えば、アクリルリン酸エステル(CH=CHCOOPO(OH))、ビニルアルキルリン酸エステル(CH=CHR−O−PO(OH)、Rは、−(CH)n−)などの重合体)、ホスホン酸基を導入したポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルエーテルケトン樹脂、直鎖型フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、直鎖型ポリスチレン樹脂、架橋型ポリスチレン樹脂、直鎖型ポリ(トリフルオロスチレン)樹脂、架橋型(トリフルオロスチレン)樹脂、ポリ(2,3−ジフェニル−1,4−フェニレンオキシド)樹脂、ポリ(アリルエーテルケトン)樹脂、ポリ(アリレンエーテルスルホン)樹脂、ポリ(フェニルキノサンリン)樹脂、ポリ(ベンジルシラン)樹脂、ポリスチレン−グラフト−エチレンテトラフルオロエチレン樹脂、ポリスチレン−グラフト−ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリスチレン−グラフト−テトラフルオロエチレン樹脂、等が挙げられる。
かかるリン酸系安定剤は、市販品を使用することもできる。例えば、商品名アデカスタブAS2112(株式会社ADEKA製)などが挙げられる。
(3)ヒンダードフェノール系安定剤
ヒンダードフェノール系安定剤の例としては、フェノール性OH基の一位に第三ブチル基等の大きな基が導入された化合物である。ヒンダードフェノール系安定剤は、主として連鎖禁止機能(すなわち、フェノール性OH基がラジカルを捕捉して、ラジカルによる連鎖反応を抑制する機能)を有していると考えられる。
低分子型のヒンダードフェノール系安定剤の好適な例として、2,6−第三ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−第三ブチル−フェノール、2,4−ジ−メチル−6−第三ブチル−フェノール、ブチルヒドロキシアニソール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−第三ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−第三ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−第三ブチルフェノール)、テトラキス[メチレン−3(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,1,3一トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタン、等が挙げられる。
また、高分子型のヒンダードフェノール系安定剤の好適な例としては、上記ヒンダードフェノール系着色防止剤を側鎖に持つビニル、アクリル、メタクリル、スチリル等のモノマーの重合体や、上記ヒンダードフェノール系着色防止剤の構造が主鎖に組み込まれた重合体、等が挙げられる。
尚、低分子型の化合物よりも高分子型の化合物が好ましい場合があること、および高分子型の化合物を用いる場合には、さらに架橋構造を導入しても良ことは、リン系着色防止剤の場合と同様である。
但し、上記各種の着色防止剤の有害ラジカル補足過程は、未解明な点も多く、上記以外の作用が働いている可能性もあり、上記作用に限定されるわけではない。
ヒンダードフェノール系安定剤としては、市販品を使用することもできる。例えば、商品名イルガノックス1010(BASF社製)などが挙げられる。
(4)スルフィド系安定剤
スルフィド系安定剤の例としては、分子内に2価の硫黄を有する化合物(本実施の形態において「硫黄系着色防止剤」という場合がある。)である。硫黄系着色防止剤は、主として過酸化物分解機能(すなわち、S原子が自ら酸化することによって過酸化物を安定な化合物に分解する機能)を有していると考えられる。低分子型の硫黄系着色防止剤の好適な例としては、ジラウリルチオジプロピオネート(S(CHCHCOOC1225)、ジステアリルチオジプロピオネート(S(CHCHCOOC1837)、ラウリルステアリルチオジプロピオネート(S(CHCHCOOC1837)(CHCHCOOC1225))、ジミリスチルチオジプロピオネート(S(CHCHCOOC1429)、ジステアリルβ、β’−チオジブチレート(S(CH(CH)CHCOOC1839)、2−メルカプトベンゾイミダゾール(CNHNCSH)、ジラウリルサルファイド(S(C1225)等が挙げられる。
スルフィド系安定剤としては、市販品を使用することもできる。例えば、商品名Sumilizer(登録商標)TPM(住友化学株式会社製)などが挙げられる。
(5)金属不活性化剤
金属不活性化剤としては、ヒドラジン誘導体、サリチル酸誘導体、シュウ酸誘導体等が好ましく用いられ、特に2’,3−ビス[[3−[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオニル]]プロピオノヒドラジド、2−ヒドロキシ−N−(2H−1,2,4−トリアゾール−3−yl)ベンザミド、ドデカン二酸ビス[2−(2−ヒドロキシベンゾイル)ヒドラジド]などが好ましい。
本発明に係る赤外線吸収微粒子分散体液または赤外線吸収微粒子分散体への金属不活性化剤の添加量は、要求される性能や併用される亜リン酸エステル系化合物、他の添加剤の種類および使用量によっても変わるため、特に限定されるものではないが、赤外線吸収微粒子分散体液または赤外線吸収微粒子分散体中の赤外線吸収微粒子100質量部に対して1〜10質量部が好ましく、3〜8質量部がより好ましい。金属不活性化剤の添加量が1質量部以上あれば、赤外線吸収機能の低下防止効果が認められ、10質量部で効果はほぼ飽和する。
[5]赤外線吸収微粒子分散液
本発明に係る赤外線吸収微粒子分散液は、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子が液状の媒質(本発明において「液体媒質」と記載する場合がある。)中に分散しているものである。当該液体媒質としては、有機溶剤、油脂、液状可塑剤、硬化により高分子化される化合物、水、から選択される1種以上の液体媒質を用いることが出来る。
本発明に係る赤外線吸収微粒子分散液について(1)製造方法、(2)使用する有機溶剤、(3)使用する油脂、(4)使用する液状可塑剤、(5)使用する硬化により高分子化される化合物、(6)使用する分散剤、(7)赤外線吸収微粒子分散液の使用方法、の順に説明する。
(1)製造方法
本発明に係る赤外線吸収微粒子分散液を製造するには、上述した被覆膜形成用分散液を、表面処理赤外線吸収微粒子の強凝集を回避出来る条件での加熱、乾燥、または、例えば室温下における真空乾燥、噴霧乾燥等によって乾燥し、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子粉末を得る。そして、当該表面処理赤外線吸収微粒子粉末を、上述した液体媒質中に添加し、さらに亜リン酸エステル系化合物を添加して分散させればよい。また、被覆膜形成用分散液を、表面処理赤外線吸収微粒子と媒質とに分離し、溶媒置換の操作によって、被覆膜形成用分散液の媒質を、赤外線吸収微粒子分散液の媒質へ置き換え(所謂、溶媒置換)て、さらに亜リン酸エステル系化合物を添加して赤外線吸収微粒子分散液を製造することも好ましい構成である。
一方、予め、被覆膜形成用分散液の媒質と、赤外線吸収微粒子分散液の媒質とを一致させておき、表面処理後の被覆膜形成用分散液に亜リン酸エステル系化合物を添加して赤外線吸収微粒子分散液とすることも好ましい構成である。
(2)使用する有機溶剤
本発明に係る赤外線吸収微粒子分散液に使用する有機溶剤としては、アルコール系、ケトン系、炭化水素系、グリコール系、水系、等を使用することが出来る。
具体的には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコールなどのアルコール系溶剤;
アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンなどのケトン系溶剤;
3−メチル−メトキシ−プロピオネートなどのエステル系溶剤;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテートなどのグリコール誘導体;
フォルムアミド、N−メチルフォルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミド類;
トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;
エチレンクロライド、クロルベンゼン、等を使用することが出来る。
そして、これらの有機溶剤中でも、特に、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸n−ブチル、等を好ましく使用することが出来る。
(3)使用する油脂
本発明に係る赤外線吸収微粒子分散液に使用する油脂としては、植物油脂または植物由来油脂が好ましい。
植物油としては、アマニ油、ヒマワリ油、桐油、エノ油等の乾性油、ゴマ油、綿実油、菜種油、大豆油、米糠油、ケシ油等の半乾性油、オリーブ油、ヤシ油、パーム油、脱水ヒマシ油等の不乾性油、等を使用することが出来る。
植物油由来の化合物としては、植物油の脂肪酸とモノアルコールを直接エステル反応させた脂肪酸モノエステル、エーテル類、等を使用することが出来る。
また、市販の石油系溶媒も油脂として用いることが出来る。
市販の石油系溶媒として、アイソパー(登録商標)E、エクソール(登録商標)Hexane、Heptane、E、D30、D40、D60、D80、D95、D110、D130(以上、エクソンモービル製)等を挙げることができる。
(4)使用する液状可塑剤
本発明に係る赤外線吸収微粒子分散液に使用する液状可塑剤としては、例えば、一価アルコールと有機酸エステルとの化合物である可塑剤、多価アルコール有機酸エステル化合物等のエステル系である可塑剤、有機リン酸系可塑剤等のリン酸系である可塑剤、等を使用することが出来る。尚、いずれも室温で液状であるものが好ましい。
なかでも、多価アルコールと脂肪酸から合成されたエステル化合物である可塑剤を好ましく使用することが出来る。当該多価アルコールと脂肪酸とから合成されたエステル化合物は特に限定されないが、例えば、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコールと、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2−エチル酪酸、ヘプチル酸、n−オクチル酸、2−エチルヘキシル酸、ペラルゴン酸(n−ノニル酸)、デシル酸等の一塩基性有機酸との反応によって得られた、グリコール系エステル化合物、等を使用することが出来る。
また、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコールと、前記一塩基性有機とのエステル化合物等も挙げられる。
なかでも、トリエチレングリコールジヘキサネート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−オクタネート、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノネート等のトリエチレングリコールの脂肪酸エステル、等を使用することが出来る。さらに、トリエチレングリコールの脂肪酸エステルも好ましく使用することが出来る。
(5)使用する硬化により高分子化される化合物
本発明に係る赤外線吸収微粒子分散液に使用する硬化により高分子化される化合物は、重合等により高分子を形成する単量体やオリゴマーである。
具体的には、メチルメタクリレート単量体、アクレリート単量体、スチレン樹脂単量体、等を使用することが出来る。
以上、説明した液状媒質は、2種以上を組み合わせて用いることが出来る。さらに、必要に応じて、これらの液状媒質へ酸やアルカリを添加してpH調整してもよい。
(6)使用する分散剤
本発明に係る赤外線吸収微粒子分散液中において、表面処理赤外線吸収微粒子の分散安定性を一層向上させ、再凝集による分散粒子径の粗大化を回避する為に、各種の分散剤、界面活性剤、カップリング剤などの添加も好ましい。
当該分散剤、カップリング剤、界面活性剤は用途に合わせて選定可能であるが、アミンを含有する基、水酸基、カルボキシル基、または、エポキシ基を官能基として有するものであることが好ましい。これらの官能基は、表面処理赤外線吸収微粒子の表面に吸着して凝集を防ぎ、均一に分散させる効果を持つ。これらの官能基のいずれかを分子中にもつ高分子系分散剤は、さらに好ましい。
また、官能基を有するアクリル−スチレン共重合体系分散剤も好ましい分散剤として挙げられる。中でも、カルボキシル基を官能基として有するアクリル−スチレン共重合体系分散剤、アミンを含有する基を官能基として有するアクリル系分散剤が、より好ましい例として挙げられる。官能基にアミンを含有する基を有する分散剤は、分子量Mw2000〜200000、アミン価5〜100mgKOH/gのものが好ましい。また、カルボキシル基を有する分散剤では、分子量Mw2000〜200000、酸価1〜50mgKOH/gのものが好ましい。
市販の分散剤における好ましい具体例としては、日本ルーブリゾール社製SOLSPERSE(登録商標)(以下同じ)3000、5000、9000、11200、12000、13000、13240、13650、13940、16000、17000、18000、20000、21000、24000SC、24000GR、26000、27000、28000、31845、32000、32500、32550、32600、33000、33500、34750、35100、35200、36600、37500、38500、39000、41000、41090、53095、55000、56000、71000、76500、J180、J200、M387等;SOLPLUS(登録商標)(以下同じ)D510、D520、D530、D540、DP310、K500、L300、L400、R700等;ビックケミー・ジャパン社製Disperbyk(登録商標)(以下同じ)−101、102、103、106、107、108、109、110、111、112、116、130、140、142、145、154、161、162、163、164、165、166、167、168、170、171、174、180、181、182、183、184、185、190、191、192、2000、2001、2009、2020、2025、2050、2070、2095、2096、2150、2151、2152、2155、2163、2164、Anti−Terra(登録商標)(以下同じ)−U、203、204等;BYK(登録商標)(以下同じ)−P104、P104S、P105、P9050、P9051、P9060、P9065、P9080、051、052、053、054、055、057、063、065、066N、067A、077、088、141、220S、300、302、306、307、310、315、320、322、323、325、330、331、333、337、340、345、346、347、348、350、354、355、358N、361N、370、375、377、378、380N、381、392、410、425、430、1752、4510、6919、9076、9077、W909、W935、W940、W961、W966、W969、W972、W980、W985、W995、W996、W9010、Dynwet800、Siclean3700、UV3500、UV3510、UV3570等;エフカアディティブズ社製EFKA(登録商標)(以下同じ)2020、2025、3030、3031、3236、4008、4009、4010、4015、4020、4046、4047、4050、4055、4060、4080、4300、4310、4320、4330、4340、4400、4401、4402、4403、4500、5066、5220、6220、6225、6230、6700、6780、6782、7462、8503等;BASFジャパン社製JONCRYL(登録商標)(以下同じ)67、678、586、611、680、682、690、819、−JDX5050等;大塚化学社製TERPLUS(登録商標)(以下同じ)MD1000、D1180、D1130等;味の素ファインテクノ社製アジスパー(登録商標)(以下同じ)PB−711、PB−821、PB−822等;楠本化成社製ディスパロン(登録商標)(以下同じ)1751N、1831、1850、1860、1934、DA−400N、DA−703−50、DA−325、DA−375、DA−550、DA−705、DA−725、DA−1401、DA−7301、DN−900、NS−5210、NVI−8514L等;東亞合成社製アルフォン(登録商標)(以下同じ)UH−2170、UC−3000、UC−3910、UC−3920、UF−5022、UG−4010、UG−4035、UG−4040、UG−4070、レゼダ(登録商標)(以下同じ)GS−1015、GP−301、GP−301S等;三菱化学社製ダイヤナール(登録商標)(以下同じ)BR−50、BR−52、BR−60、BR−73、BR−77、BR80、BR−83、BR85、BR87、BR88、BR−90、BR−96、BR102、BR−113、BR116等を使用することが出来る。
(7)赤外線吸収微粒子分散液の使用方法
上述のようにして製造された本発明に係る赤外線吸収微粒子分散液は、適宜な基材の表面に塗布し、ここに被覆膜を形成して赤外線吸収基材として利用することが出来る。つまり、当該被覆膜は、赤外線吸収微粒子分散液の乾燥固化物の一種である。
また、当該赤外線吸収微粒子分散液を乾燥し、粉砕処理して、本発明に係る亜リン酸エステル系化合物を含む粉末状の赤外線吸収微粒子分散体(本発明において「分散粉」と記載する場合もある。)とすることが出来る。つまり、当該分散粉は、赤外線吸収微粒子分散液の乾燥固化物の一種である。当該分散粉は表面処理赤外線吸収微粒子がリン酸エステル系化合物を含む固体媒質中(分散剤等)に分散された粉末状の分散体であり、上述の表面処理赤外線吸収微粒子粉末とは区別する。当該分散粉は分散剤を含んでいるため、適宜な媒質と混合することで表面処理赤外線吸収微粒子を媒質中へ容易に再分散させることが可能である。
他方、当該赤外線吸収微粒子分散液に亜リン酸エステル系化合物を添加することなく、まず、亜リン酸エステル系化合物を含有しない赤外線吸収微粒子分散液を調製する構成も可能である。この場合、当該亜リン酸エステル系化合物を含有しない赤外線吸収微粒子分散液、または、これを乾燥して得た赤外線吸収微粒子分散粉を、樹脂等の媒質と混合、混錬する際に、所定量の亜リン酸エステル系化合物を添加して、本発明に係る赤外線吸収微粒子分散体を調製することが出来る。
一方、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子を液状の媒質に混合・分散させた赤外線吸収微粒子分散液は光熱変換を利用した様々な用途に用いられる。
例えば、表面処理赤外線吸収微粒子を未硬化の熱硬化性樹脂へ添加する、または、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子を適宜な溶媒中に分散した後、未硬化の熱硬化性樹脂を添加することにより、硬化型インク組成物を得ることが出来る。硬化型インク組成物は、所定の基材上に設けられ、赤外線などの赤外線を照射されて硬化した際、当該基材への密着性に優れたものである。そして、当該硬化型インク組成物は、従来のインクとしての用途に加え、所定量を塗布し、ここへ赤外線などの電磁波を照射して硬化させて積み上げ、後3次元物体を造形する光造形法に最適な硬化型インク組成物となる。
[6]赤外線吸収微粒子分散体、赤外線吸収基材、並びに物品
(1)赤外線吸収微粒子分散体
本発明に係る赤外線吸収微粒子分散体は、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子が固体媒質中に分散しているものである。尚、当該固体媒質としては、樹脂、ガラス、等の固体媒質を用いることが出来る。
本発明に係る赤外線吸収微粒子分散体について(i)製造方法、(ii)耐湿熱性、(iii)耐熱性、の順に説明する。
(i)製造方法
上述したように、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子を樹脂等の媒質に練り込み、フィルムやボードに成形する場合、当該表面処理赤外線吸収微粒子と亜リン酸エステル系化合物とを、直接樹脂に練り込むことが可能である。また、前記赤外線吸収微粒子分散液と樹脂とを混合すること、または、当該表面処理赤外線吸収微粒子が固体媒質に分散された粉末状の分散体を液体媒質に添加しかつ樹脂と混合することも可能である。
固体媒質として樹脂を用いた場合、例えば、厚さ0.1μm〜50mmのフィルムまたはボードを構成する形態であってもよい。
一般的に、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子を樹脂に練り込むとき、樹脂の融点付近の温度(200〜300℃前後)で加熱混合して練り込むこととなる。
この場合、さらに、当該表面処理赤外線吸収微粒子を樹脂に混合してペレット化し、当該ペレットを各方式でフィルムやボードを形成することも可能である。例えば、押し出し成形法、インフレーション成形法、溶液流延法、キャスティング法等により形成可能である。この時のフィルムやボードの厚さは、使用目的によって適宜設定すればよく、樹脂に対するフィラー量(すなわち、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子の配合量)は、基材の厚さや必要とされる光学特性、機械特性に応じて可変であるが、一般的に樹脂に対して50重量%以下が好ましい。
樹脂に対するフィラー量が50重量%以下であれば、固体状樹脂中での微粒子同士が造粒を回避出来るので、良好な透明性を保つことが出来る。また、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子の使用量も制御出来るのでコスト的にも有利である。
一方、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子を固体媒質に分散させた赤外線吸収微粒子分散体を、さらに粉砕し粉末とした状態でも利用することが出来る。当該構成を採る場合、粉末状の赤外線吸収微粒子分散体において、既に、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子が固体媒質中で十分に分散している。従って、当該粉末状の赤外線吸収微粒子分散体と亜リン酸エステル系化合物の混合物を所謂マスターバッチとして、適宜な液体媒質に溶解させたり、樹脂ペレット等と混練することで、容易に、液状または固形状の赤外線吸収微粒子分散体を製造することが出来る。
また、上述したフィルムやボードにおいてマトリクスを構成する固体状樹脂とは、室温で固体の高分子媒質のことであり、三次元架橋したもの以外の高分子媒質も含む概念である。固体状樹脂は、特に限定されるものではなく用途に合わせて選択可能であるが、耐候性を考慮するとフッ素樹脂が好ましい。尤も、フッ素樹脂に較べ、低コストで透明性が高く汎用性の広い樹脂として、PET樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、等も使用することが出来る。
(ii)耐湿熱性
本発明に係る赤外線吸収微粒子分散体は、可視光透過率80%前後に設定した当該分散体を、85℃90%の湿熱雰囲気中に9日間暴露を行ったとき、当該暴露前後における可視光透過率の変化量が2.0%以下であり、優れた耐湿熱性を有している。
(iii)耐熱性
本発明に係る赤外線吸収微粒子分散体は、可視光透過率80%前後に設定した当該分散体を、120℃の大気雰囲気下に30日間暴露を行ったとき、当該暴露前後における可視光透過率の変化量が2.0%以下であり、優れた耐熱性を有している。
(2)赤外線吸収基材
本発明に係る赤外線吸収基材は、所定の基材表面に、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子と亜リン酸エステル系化合物とを含有する被覆膜が形成されているものである。
所定の基材表面に、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子と亜リン酸エステル系化合物とを含有する被覆膜が形成されていることにより、本発明に係る赤外線吸収基材は、耐湿熱性および化学安定性に優れ、且つ赤外線吸収材料として好適に利用出来るものである。
本発明に係る赤外線吸収基材について(i)製造方法、(ii)耐湿熱性、(iii)耐熱性、の順に説明する。
(i)製造方法
例えば、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子と亜リン酸エステル系化合物を、アルコール等の有機溶剤や水等の液体媒質と、樹脂バインダーと、所望により分散剤とを混合した赤外線吸収微粒子分散液を、適宜な基材表面に塗布した後、液体媒質を除去することで、赤外線吸収微粒子分散体が基材表面に直接積層された赤外線吸収基材を得ることが出来る。
前記樹脂バインダー成分は用途に合わせて選択可能であり、紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂、常温硬化樹脂、熱可塑樹脂、等が挙げられる。一方、樹脂バインダー成分を含まない赤外線吸収微粒子分散液を、基材表面に赤外線吸収微粒子分散体を積層しても良いし、当該積層の後に、バインダー成分を含む液体媒質を当該赤外線吸収微粒子分散体の層上に塗布することとしても良い。
具体的には、有機溶剤、樹脂を溶解させた有機溶剤、樹脂を分散させた有機溶剤、水、から選ばれる1種以上の液体媒質が亜リン酸エステル系化合物を含み、表面処理赤外線吸収微粒子が分散している液状の赤外線吸収微粒子分散体が、基材表面に塗布膜形成している赤外線吸収基材が挙げられる。また、樹脂バインダー成分を含む液状の赤外線吸収微粒子分散体が、基材表面に塗布膜形成している赤外線吸収基材が挙げられる。さらに、粉末状である固体媒質中に亜リン酸エステル系化合物を含み、表面処理赤外線吸収微粒子が分散している赤外線吸収微粒子分散体を、所定媒質に混合した液状の赤外線吸収微粒子分散体が、基材表面に塗布膜形成している赤外線吸収基材も挙げられる。勿論、当該各種の液状の赤外線吸収微粒子分散液の2種以上を混合した赤外線吸収微粒子分散液が、基材表面に塗布膜形成している赤外線吸収基材も挙げられる。
上述した基材の材質は、透明体であれば特に限定されないが、ガラス、樹脂ボード、樹脂シート、樹脂フィルムが好ましく用いられる。
樹脂ボード、樹脂シート、樹脂フィルムに用いる樹脂としては、必要とするボード、シート、フィルムの表面状態や耐久性に不具合を生じないものであれば特に制限はない。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体等のスチレン系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体等のオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマーや、さらにこれらの二元系、三元系各種共重合体、グラフト共重合体、ブレンド物等の透明ポリマーからなるボード、シート、フィルムが挙げられる。特に、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートあるいはポリエチレン−2,6−ナフタレート等のポリエステル系2軸配向フィルムが、機械的特性、光学特性、耐熱性および経済性の点より好適である。当該ポリエステル系2軸配向フィルムは共重合ポリエステル系であっても良い。
(ii)耐湿熱性
上記赤外線吸収基材においては、可視光透過率80%に設定した当該赤外線吸収基材へ、85℃90%の湿熱雰囲気中に9日間暴露を行ったとき、当該暴露前後における可視光透過率の変化量が2.0%以下であり、優れた耐湿熱性を有している。
(iii)耐熱性
本発明に係る赤外線吸収微粒子分散体は、可視光透過率80%前後に設定した当該分散体を、120℃の大気雰囲気下に30日間暴露を行ったとき、当該暴露前後における可視光透過率の変化量が2.0%以下であり、優れた耐熱性を有している。
(3)赤外線吸収微粒子分散体や赤外線吸収基材を用いた物品
上述したように、本発明に係る赤外線吸収微粒子分散体や赤外線吸収基材であるフィルムやボード等の赤外線吸収物品は、耐湿熱性および耐熱性および化学安定性に優れている。
そこで、これらの赤外線吸収物品は、例えば、各種建築物や車両において、可視光線を十分に取り入れながら赤外領域の光を遮蔽し、明るさを維持しつつ室内の温度上昇を抑制することを目的とした窓材等、PDP(プラズマディスプレイパネル)に使用され、当該PDPから前方に放射される赤外線を遮蔽するフィルター等、に好適に使用することができる。
また、本発明に係る赤外線吸収微粒子分散液を、樹脂などの固体媒質または硬化により高分子化される化合物と混合して塗布液を作製し、公知の方法で基板フィルムまたは基板ガラスから選択される透明基板上にコーティング層を形成すると、赤外線吸収微粒子が固体媒質に分散された赤外線吸収フィルムまたは赤外線吸収ガラスを製造することが出来る。赤外線吸収フィルムまたは赤外線吸収ガラスは、本発明に係る微粒子分散体の一例である。
また、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子は赤外線領域に吸収を有する為、当該表面処理赤外線吸収微粒子を含む印刷面へ赤外線レーザーを照射したとき、特定の波長を有する赤外線を吸収する。従って、この表面処理赤外線吸収微粒子を含む偽造防止インクを被印刷基材の片面又は両面に印刷して得た偽造防止用印刷物は、特定波長を有する赤外線を照射し、その反射若しくは透過を読み取ることによって、反射量又は透過量の違いから、印刷物の真贋を判定することが出来る。当該偽造防止用印刷物は、本発明に係る赤外線吸収微粒子分散体の一例である。
また、本発明に係る赤外線吸収微粒子分散液とバインダー成分とを混合してインクを製造し、当該インクを基材上に塗布し乾燥させた後、当該乾燥させたインクを硬化させることにより光熱変換層を形成することができる。当該光熱変換層は、赤外線などの電磁波レーザーの照射により、高い位置の精度をもって所望の箇所のみで発熱させることが出来、エレクトロニクス、医療、農業、機械、等の広い範囲に分野において適用可能である。
例えば、有機エレクトロルミネッセンス素子をレーザー転写法で形成する際に用いるドナーシート、感熱式プリンタ用の感熱紙や熱転写プリンタ用のインクリボンとして好適に用いることが出来る。当該光熱変換層は、本発明に係る赤外線吸収微粒子分散体の一例である。
また、本発明に係る表面処理赤外線吸収微粒子を適宜な媒質中に分散させ、亜リン酸エステル系化合物を含有させて赤外線吸収微粒子分散液とし、当該分散物を繊維の表面および/または内部に含有させることにより、赤外線吸収繊維が得られる。当該構成を有することで、赤外線吸収繊維は、赤外線吸収微粒子の含有により太陽光などからの近赤外線等を効率良く吸収し、保温性に優れた赤外線吸収繊維となり、同時に可視光領域の光は透過させるので意匠性に優れた赤外線吸収繊維となる。その結果、保温性を必要とする防寒用衣料、スポーツ用衣料、ストッキング、カーテン等の繊維製品やその他産業用繊維製品等の種々の用途に使用することができる。赤外線吸収繊維は、本発明に係る赤外線吸収微粒子分散体の一例である。
また、本発明に係るフィルム状又はボード状の赤外線吸収微粒子分散体を農園芸用ハウスの屋根や外壁材等に用いられる資材に応用することが出来る。当該資材は、可視光を透過して農園芸用ハウス内の植物の光合成に必要な光を確保しながら、それ以外の太陽光に含まれる近赤外光等の光を効率よく吸収することにより断熱性を備えた農園芸施設用断熱資材として使用することが出来る。農園芸施設用断熱資材は、本発明に係る赤外線吸収微粒子分散体の一例である。
以下、実施例を参照しながら本発明を具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例および比較例における分散液中の微粒子の分散粒子径は、動的光散乱法に基づく粒径測定装置(大塚電子株式会社製ELS−8000)により測定した平均値をもって示した。また、結晶子径は、粉末X線回折装置(スペクトリス株式会社PANalytical製X’Pert−PRO/MPD)を用いて粉末X線回折法(θ―2θ法)により測定し、リートベルト法を用いて算出した。
表面処理赤外線吸収微粒子の被覆膜の膜厚は、透過型電子顕微鏡(日立製作所株式会社社製 HF−2200)を用いて得た30万倍の写真データより、赤外線吸収微粒子の格子縞のないところを被覆膜として読み取った。
赤外線吸収シートまたはプレートの光学特性は、分光光度計(日立製作所株式会社製 U−4100)を用いて測定し、可視光透過率と日射透過率とはJISR3106に従って算出した。当該赤外線吸収シートまたはプレートのヘイズ値は、ヘイズメーター(村上色彩株式会社製 HM−150)を用いて測定し、JISK7105に従って算出した。
赤外線吸収シートまたはプレートの耐湿熱性の評価方法は、可視光透過率80%前後の当該赤外線吸収シートを85℃90%の湿熱雰囲気中に9日間暴露する。そして、例えば六方晶セシウムタングステンブロンズの場合は、当該暴露前後における日射透過率の変化量が2.0%以下のものを耐湿熱性が良好と判断し、変化量が2.0%を超えるものは耐湿熱性が不足と判断した。
赤外線吸収シートまたはプレートの耐湿熱性の評価方法は、可視光透過率80%前後の当該赤外線吸収シートを120℃の大気雰囲気下に30日間暴露する。そして、例えば六方晶セシウムタングステンブロンズの場合は、当該暴露前後における日射透過率の変化量が2.0%以下のものを耐熱性が良好と判断し、変化量が2.0%を超えるものは耐熱性が不足と判断した。
尚、ここでいう赤外線吸収シートまたはプレートの光学特性値(可視光透過率、ヘイズ値)は、基材である樹脂シートまたはプレートの光学的特性値を含む値である。
[実施例1]
Cs/W(モル比)=0.33の六方晶セシウムタングステンブロンズ(Cs0.33WOz、2.0≦z≦3.0)粉末CWO(登録商標)(住友金属鉱山株式会社製YM−01)25質量%と純水75質量%とを混合して得られた混合液を、0.3mmφZrOビーズを入れたペイントシェーカーに装填し10時間粉砕・分散処理し、実施例1に係るCs0.33WOz微粒子の分散液を得た。得られた分散液中のCs0.33WOz微粒子の分散粒子径を測定したところ、100nmであった。尚、粒径測定の設定として、粒子屈折率は1.81とし、粒子形状は非球形とした。また、バックグラウンドは純水を用いて測定し、溶媒屈折率は1.33とした。また、得られた分散液の溶媒を除去したあと、結晶子径を測定したところ32nmであった。得られたCs0.33WOz微粒子の分散液と純水とを混合し、Cs0.33WOz微粒子の濃度が2質量%である実施例1に係る被覆膜形成用分散液Aを得た。
一方、アルミニウム系のキレート化合物としてアルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレート2.5質量%と、イソプロピルアルコール(IPA)97.5質量%とを混合して表面処理剤希釈液aを得た。
得られた被覆膜形成用分散液A890gをビーカーに入れ、羽根の付いた攪拌機によって強く攪拌しながら、ここへ表面処理剤希釈液a360gを3時間かけて滴下添加した。当該表面処理剤希釈液aの滴下添加後、さらに温度20℃で24時間の攪拌を行い、実施例1に係る熟成液を作製した。次いで、真空流動乾燥を用いて、当該熟成液から媒質を蒸発させて実施例1に係る表面処理赤外線吸収微粒子を含む粉末(表面処理赤外線吸収微粒子粉末)を得た。
ここで、実施例1に係る表面処理赤外線吸収微粒子の被覆膜の膜厚を、透過型電子顕微鏡(日立製作所株式会社社製 HF−2200)を用いて得た30万倍の写真データより読み取ったところ2nmであることが判明した。尚、実施例1に係る表面処理赤外線吸収微粒子の30万の透過型電子顕微鏡写真を図2に示す。
実施例1に係る表面処理赤外線吸収微粒子粉末8質量%とポリアクリレート系分散剤24質量%とトルエン68質量%とを混合した。得られた混合液を、0.3mmφZrOビーズを入れたペイントシェーカーに装填し、1時間粉砕・分散処理し、実施例1に係る赤外線吸収微粒子分散液を得た。次いで、この赤外線吸収微粒子分散液から真空流動乾燥により媒質を蒸発させ、実施例1に係る赤外線吸収微粒子分散粉を得た。
実施例1に係る赤外線吸収微粒子分散粉と、固体状樹脂であるポリカーボネート樹脂と、六方晶セシウムタングステンブロンズ100質量部に対してSumilizerGPを2000質量部とを添加し、後に得られる赤外線吸収シートの可視光透過率が80%前後となるようにドライブレンドした。得られたブレンド物を、二軸押出機を用いて290℃で混練し、Tダイより押出して、カレンダーロール法により0.75mm厚のシート材とし、実施例1に係る赤外線吸収シートを得た。尚、赤外線吸収シートは本発明に係る赤外線吸収微粒子分散体の一例である。
得られた実施例1に係る赤外線吸収シートの光学特性を測定したところ、可視光透過率が79.6%、日射透過率が48.6%、ヘイズは0.9%であった。
得られた実施例1に係る赤外線吸収シートを85℃90%の湿熱雰囲気中に9日間暴露後、光学特性を測定したところ、可視光透過率が80.2%、日射透過率が49.5%、ヘイズは0.9%であった。湿熱雰囲気暴露による可視光透過率の変化量は0.6%、日射透過率の変化量は0.9%とどちらも小さく、また、ヘイズは変化しないことが分かった。
また、得られた実施例1に係る赤外線吸収シートを120℃の大気雰囲気下に30日間暴露後、光学特性を測定したところ、可視光透過率が80.2%、日射透過率が50.0%、ヘイズは0.9%であった。湿熱雰囲気暴露による可視光透過率の変化量は0.6%、日射透過率の変化量は1.4%とどちらも小さく、また、ヘイズは変化しないことが分かった。
実施例1の製造条件と評価結果とを表1〜4に記載する。
[実施例2、3]
六方晶セシウムタングステンブロンズ粉末100質量部に対して、SumilizerGPを4000質量部(実施例2)、または、700質量部(実施例3)添加した以外は実施例1と同様にして、実施例2、3に係る赤外線吸収シートを得た。
得られた実施例2、3に係る赤外線吸収シートを実施例1と同様に評価した。
実施例2、3の製造条件と評価結果とを表1〜4に記載する。
[実施例4]
実施例1に係る赤外線吸収微粒子分散粉とポリカーボネート樹脂とを、赤外線吸収微粒子の濃度が0.05wt%となるようにブレンダーで均一に混合した後、二軸押出機で溶融混練し、押出されたストランドをペレット状にカットし、実施例4に係る赤外線吸収微粒子含有マスターバッチを得た。尚、赤外線吸収微粒子含有マスターバッチは本発明に係る赤外線吸収微粒子分散体の一例である。
得られた実施例4に係る赤外線吸収微粒子含有マスターバッチ10質量部とポリカーボネート樹脂ペレット90質量部とをドライブレンドし、射出成型機を用いて厚さ10mmのプレート材とし、実施例4に係る赤外線吸収プレートを得た。尚、赤外線吸収プレートは本発明に係る赤外線吸収微粒子分散体の一例である。
得られた実施例4に係る赤外線吸収プレートを実施例1と同様に評価した。
実施例4の製造条件と評価結果とを表1〜4に記載する。
[実施例5]
六方晶セシウムタングステンブロンズ粉末100質量部に対して、SumilizerGPを1500質量部、IRGANOX1010を150質量部添加した以外は、実施例1と同様にして実施例5に係る赤外線吸収シートを得た。
得られた実施例5に係る微粒子分散液と赤外線吸収シートを実施例1と同様に評価した。
実施例5の製造条件と評価結果とを表1〜4に記載する。
[実施例6]
IRGANOX1010の代わりにADEKA STAB 2112を用いた以外は実施例5と同様にして、実施例6に係る微粒子分散液と赤外線吸収シートを得た。
得られた実施例6に係る微粒子分散液と赤外線吸収シートを実施例1と同様に評価した。
実施例6の製造条件と評価結果とを表1〜4に記載する。
[実施例7、8]
表面処理剤希釈液aの量とその滴下添加時間とを変更したこと以外は、実施例1と同様の操作をすることで、実施例7および8に係る表面処理赤外線吸収微粒子粉末、赤外線吸収微粒子分散液、赤外線吸収微粒子分散粉、赤外線吸収シートを得て、実施例1と同様の評価を実施した。
実施例7、8の製造条件と評価結果とを表1〜4に記載する。
[実施例9]
実施例1に係る熟成液を、1時間静置させ、表面処理赤外線吸収微粒子と媒質とを固液分離させた。次いで、上澄みである媒質のみを除去して赤外線吸収微粒子スラリーを得た。得られた赤外線吸収微粒子スラリーにイソプロピルアルコールを添加して1時間攪拌させた後、1時間静置させ、再び表面処理赤外線吸収微粒子と媒質とを固液分離させた。次いで、上澄みである媒質のみを除去し、再び赤外線吸収微粒子スラリーを得た。
再び得られた赤外線吸収微粒子スラリー16質量%とポリアクリレート系分散剤24質量%とトルエン60質量%とを混合攪拌させた後、超音波ホモジナイザーを用いて分散処理し、実施例9に係る赤外線吸収微粒子分散液を得た。
実施例9に係る赤外線吸収微粒子分散液を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作をすることで、実施例9に係る赤外線吸収微粒子分散粉、赤外線吸収シートを得て、実施例1と同様の評価を実施した。
実施例9の製造条件と評価結果とを表1〜4に記載する。
[実施例10]
ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート2.4質量%とイソプロピルアルコール97.6質量%とを混合して実施例10に係る表面処理剤希釈液bを得た。表面処理剤希釈液aの代わりに表面処理剤希釈液bを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作をすることで、実施例10に係る表面処理赤外線吸収微粒子粉末、赤外線吸収微粒子分散液、赤外線吸収微粒子分散粉、赤外線吸収シートを得て、実施例1と同様の評価を実施した。
実施例10の製造条件と評価結果とを表1〜4に記載する。
[実施例11]
ジイソプロポキシチタンビスエチルアセトアセテート2.6質量%とイソプロピルアルコール97.4質量%とを混合して実施例11に係る表面処理剤希釈液cを得た。表面処理剤希釈液aの代わりに表面処理剤希釈液cを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作をすることで、実施例11に係る表面処理赤外線吸収微粒子粉末、赤外線吸収微粒子分散液、赤外線吸収微粒子分散粉、赤外線吸収シートを得て、実施例1と同様の評価を実施した。
実施例11の製造条件と評価結果とを表1〜4に記載する。
[実施例12]
固体状樹脂としてポリカーボネート樹脂の代わりにポリメタクリル酸メチル樹脂を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作をすることで、実施例12に係る表面処理赤外線吸収微粒子粉末、赤外線吸収微粒子分散液、赤外線吸収微粒子分散粉、赤外線吸収シートを得て、実施例1と同様の評価を実施した。
実施例12の製造条件と評価結果とを表1〜4に記載する。
[実施例13]
Na/W(モル比)=0.33の立方晶ナトリウムタングステンブロンズ粉末(住友金属鉱山株式会社製)25質量%とイソプロピルアルコール75質量%とを混合し、得られた混合液を、0.3mmφZrOビーズを入れたペイントシェーカーに装填して10時間粉砕・分散処理し、実施例13に係るNa0.33WOz微粒子の分散液を得た。得られた分散液中のNa0.33WOz微粒子の分散粒子径を測定したところ、100nmであった。尚、粒径測定の設定として、粒子屈折率は1.81とし、粒子形状は非球形とした。また、バックグラウンドはイソプロピルアルコールを用いて測定し、溶媒屈折率は1.38とした。また、得られた分散液の溶媒を除去したあと、Na0.33WOz微粒子の結晶子径を測定したところ32nmであった。
実施例13に係るNa0.33WOz微粒子の分散液とイソプロピルアルコールとを混合し、赤外線吸収微粒子(立方晶ナトリウムタングステンブロンズ微粒子)の濃度が2質量%である被覆膜形成用分散液Bを得た。得られた被覆膜形成用分散液B520gをビーカーに入れ、羽根の付いた攪拌機によって強く攪拌しながら、表面処理剤希釈液a360gと、希釈剤dとして純水100gとを、3時間かけて並行滴下添加した。滴下添加後、温度20℃で24時間の攪拌を行い、実施例13に係る熟成液を作製した。次いで、この熟成液から真空流動乾燥により媒質を蒸発させ、実施例13に係る表面処理赤外線吸収微粒子粉末を得た。
実施例1に係る表面処理赤外線吸収微粒子粉末の代わりに実施例13に係る表面処理赤外線吸収微粒子粉末を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作をすることで、実施例13に係る赤外線吸収微粒子分散液、赤外線吸収微粒子分散粉、赤外線吸収シートを得て、実施例1と同様の評価を実施した。
実施例13の製造条件と評価結果とを表1〜4に記載する。
[実施例14〜16]
六方晶セシウムタングステンブロンズ粉末の代わりに、K/W(モル比)=0.33の六方晶カリウムタングステンブロンズ粉末(実施例14)を用いた、Rb/W(モル比)=0.33の六方晶ルビジウムタングステンブロンズ粉末(実施例15)を用いた、マグネリ相のW1849(実施例16)を用いた以外は、実施例1と同様にして赤外線吸収微粒子の分散粒子径および結晶子径を測定し、更に被覆膜形成用分散液C〜Eを得た。
被覆膜形成用分散液Bの代わりに被覆膜形成用分散液C〜Eを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作をすることで、実施例14〜16に係る表面処理赤外線吸収微粒子粉末、赤外線吸収微粒子分散液、赤外線吸収微粒子分散粉、赤外線吸収シートを得て、実施例1と同様の評価を実施した。
実施例14〜16の製造条件と評価結果とを表1〜4に記載する。
[実施例17]
テトラエトキシシラン309gを表面処理剤eとした。表面処理剤希釈液aの代わりに表面処理剤eを用い、イソプロピルアルコールを添加しなかったこと以外は、実施例1と同様の操作をすることで、実施例14に係る表面処理赤外線吸収微粒子粉末、赤外線吸収微粒子分散液、赤外線吸収微粒子分散粉、赤外線吸収シートを得て、実施例1と同様の評価を実施した。当該製造条件と評価結果を表1〜4に示す。
[実施例18]
亜鉛アセチルアセトナート4.4質量%とイソプロピルアルコール95.6質量%とを混合して実施例15に係る表面処理剤希釈液fを得た。表面処理剤希釈液aの代わりに表面処理剤希釈液fを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作をすることで、実施例15に係る表面処理赤外線吸収微粒子粉末、赤外線吸収微粒子分散液、赤外線吸収微粒子分散粉、赤外線吸収シートを得て、実施例1と同様の評価を実施した。当該製造条件と評価結果を表1〜4に示す。
[実施例19]
真空流動乾燥の代わりに噴霧乾燥によって、実施例1に係る熟成液から媒質を蒸発させて実施例19に係る表面処理赤外線吸収微粒子を含む粉末(表面処理赤外線吸収微粒子粉末)を得た。得られた表面処理赤外線吸収微粒子粉末と純水とを混合し、赤外線吸収微粒子分散液を得た以外は、実施例1と同様の操作をすることで、実施例19に係る赤外線吸収微粒子分散液、赤外線吸収微粒子分散粉、赤外線吸収シートを得て、実施例1と同様の評価を実施した。当該製造条件と評価結果を表1〜4に示す。
[比較例1]
SumilizerGPの代わりに何も添加しなかった以外は実施例1と同様にして、比較例1に係る微粒子分散液と赤外線吸収シートを得た。
得られた比較例1に係る微粒子分散液と赤外線吸収シートを実施例1と同様に評価した。
比較例1の製造条件と評価結果とを表1〜3、5に記載する。
[比較例2]
六方晶セシウムタングステンブロンズ100質量部に対して、SumilizerGPを500質量部添加した以外は実施例1と同様にして、比較例2に係る微粒子分散液、赤外線吸収シートを得た。
得られた比較例2に係る微粒子分散液と赤外線吸収シートを実施例1と同様に評価した。
比較例2の製造条件と評価結果とを表1〜3、5に記載する。
[比較例3、4]
六方晶セシウムタングステンブロンズ100質量部に対して、SumilizerGPの代わりにIRGANOX1010を300質量部添加した(比較例3)、または、SumilizerGPの代わりにADEKA STAB 2112を300質量部添加した(比較例4)以外は実施例1と同様にして、比較例3、4に係る微粒子分散液、赤外線吸収シートを得た。
得られた比較例3、4に係る微粒子分散液と赤外線吸収シートを実施例1と同様に評価した。
比較例3、4の製造条件と評価結果とを表1〜3、5に記載する。
[比較例5]
分散粉の代わりに何も添加せずにした以外は、SumilizerGPを実施例1と同量添加して、比較例5に係る樹脂シートを得た。つまり、比較例5に係る樹脂シートは吸収微粒子を含有せず、SumilizerGP(構造式(2))の安定化剤のみを含む樹脂シートである。
得られた比較例5に係る試験前は透明であった樹脂シートは、85℃90%の湿熱雰囲気中に9日間暴露後は白曇りして不透明になった。
比較例5の製造条件と評価結果とを表1〜3、5に記載する。
[比較例6]
六方晶セシウムタングステンブロンズ粉末7質量%とポリアクリレート系分散剤24質量%とトルエン69質量%とを混合し、得られた混合液を、0.3mmφZrOビーズを入れたペイントシェーカーに装填し4時間粉砕・分散処理し、比較例6に係る赤外線吸収微粒子分散液を得た。得られた分散液中の赤外線吸収微粒子の分散粒子径を測定したところ、100nmであった。尚、粒径測定の設定として、粒子屈折率は1.81とし、粒子形状は非球形とした。また、バックグラウンドはトルエンを用いて測定し、溶媒屈折率は1.50とした。また、得られた分散液の溶媒を除去したあと、結晶子径を測定したところ32nmであった。
次いで、この赤外線吸収微粒子分散液から真空流動乾燥により媒質を蒸発させ、比較例6に係る赤外線吸収微粒子分散粉を得た。
実施例1に係る赤外線吸収微粒子分散粉の代わりに比較例6に係る赤外線吸収微粒子分散粉を用いた以外は実施例1と同様にして比較例6に係る赤外線吸収シートを得て、実施例1と同様の評価を実施した。
比較例6の製造条件と評価結果とを表1〜3、5に記載する。
[比較例7]
固体状樹脂としてポリカーボネート樹脂の代わりにポリメタクリル酸メチル樹脂を用いたこと以外は、比較例6と同様の操作をすることで、比較例7に係る赤外線吸収微粒子分散液、赤外線吸収微粒子分散粉、赤外線吸収シートを得て、実施例1と同様の評価を実施した。
比較例7の製造条件と評価結果とを表1〜3、5に記載する。
[比較例8〜11]
六方晶セシウムタングステンブロンズ粉末の代わりに、Na/W(モル比)=0.33の立方晶ナトリウムタングステンブロンズ粉末(比較例8)や、K/W(モル比)=0.33の六方晶カリウムタングステンブロンズ粉末(比較例9)や、Rb/W(モル比)=0.33の六方晶ルビジウムタングステンブロンズ粉末(比較例10)や、マグネリ相のW1849(比較例11)を用いたこと以外は、比較例6と同様の操作をすることで、比較例8〜11に係る赤外線吸収微粒子分散液、赤外線吸収微粒子分散粉、赤外線吸収シートを得て、実施例1と同様の評価を実施した。
比較例8〜11の製造条件と評価結果とを表1〜3、5に記載する。
[比較例12]
Cs/W(モル比)=0.33の六方晶セシウムタングステンブロンズ粉末13質量%とイソプロピルアルコール87質量%とを混合し、得られた混合液を、0.3mmφZrOビーズを入れたペイントシェーカーに装填し5時間粉砕・分散処理し、比較例7に係るCs0.33WOz微粒子の分散液を得た。得られた分散液中のCs0.33WOz微粒子の分散粒子径を測定したところ、100nmであった。尚、粒径測定の設定として、粒子屈折率は1.81とし、粒子形状は非球形とした。また、バックグラウンドはイソプロピルアルコールを用いて測定し、溶媒屈折率は1.38とした。また、得られた分散液の溶媒を除去したあと、結晶子径を測定したところ32nmであった。
比較例12に係るCs0.33WOz微粒子の分散液とイソプロピルアルコールを混合し、赤外線吸収微粒子(六方晶セシウムタングステンブロンズ微粒子)の濃度が3.5質量%である希釈液を得た。得られた希釈液733gに、アルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレートを21g添加し、混合攪拌した後、超音波ホモジナイザーを用いて分散処理した。
次いで、当該分散処理物をビーカーに入れ、羽根の付いた攪拌機によって強く攪拌しながら水100gを希釈剤dとして1時間かけて滴下添加した。さらに、攪拌しながらテトラエトキシシラン140gを希釈剤eとして2時間かけて滴下添加した後、20℃で15時間の攪拌を行い、この液を70℃で2時間加熱熟成した。次いで、この熟成液から真空流動乾燥により媒質を蒸発させ、さらに窒素雰囲気中において温度200℃で1時間加熱処理して、比較例12に係る表面処理赤外線吸収微粒子粉末を得た。
比較例12に係る表面処理赤外線吸収微粒子粉末8質量%とポリアクリレート系分散剤24質量%とトルエン68質量%とを混合した。得られた混合液を、0.3mmφZrOビーズを入れたペイントシェーカーに装填し、5時間粉砕・分散処理し、比較例12に係る赤外線吸収微粒子分散液を得た。
実施例1に係る赤外線吸収微粒子分散液の代わりに、比較例12に係る赤外線吸収微粒子分散液を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作をすることで、比較例12に係る赤外線吸収微粒子分散粉、赤外線吸収シートを得て、実施例1と同様の評価を実施した。
比較例12の製造条件と評価結果とを表1〜3、5に記載する。
[比較例13]
SumilizerGPの代わりに何も添加せず、且つ、分散粉の代わりに何も添加せずにした以外は実施例1と同様にして、比較例13に係る樹脂シートを得た。つまり、比較例13に係る樹脂シートは、表面処理赤外線吸収微粒子もSumilizerGP等の添加物も含有していない。
得られた比較例13に係る樹脂シートを実施例1と同様に評価した。この結果を、表5に記載する。比較例13に係る樹脂シートは、120℃の大気雰囲気下に30日間保持した後も、85℃90%の湿熱雰囲気中に9日間暴露した後も、殆ど光学特性に変化は見られなかった。
比較例13の製造条件と評価結果とを表1〜3、5に記載する。
*1:dは純水
*2:dは純水
*3:表面処理剤希釈液aを360g滴下、純水dを100g滴下
*4:純水dを100g滴下、テトラエトキシシランeを140g滴下
*5:表面処理剤希釈液aと純水dとを3時間並行滴下
*6:純水dを1時間滴下、テトラエトキシシランeを2時間滴下
添加量※1:複合タングステン酸化物微粒子の100質量部に対する添加剤の添加量[質量部]

Claims (27)

  1. 液状の媒質と、前記媒質中に分散された表面処理赤外線吸収微粒子と、亜リン酸エステル系化合物とを含む赤外線吸収微粒子分散液であって、
    前記表面処理赤外線吸収微粒子の表面が、金属キレート化合物の加水分解生成物、金属キレート化合物の加水分解生成物の重合物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物の重合物、から選択される1種以上を含む被覆膜で被覆されており、
    前記亜リン酸エステル系化合物が、構造式(1)で示される亜リン酸エステル系化合物であり、且つ、前記亜リン酸エステル系化合物の添加量が、前記赤外線吸収微粒子100質量部に対して、500質量部を超えて50000質量部以下であることを特徴とする赤外線吸収微粒子分散液。
    但し、前記構造式(1)において、R1、R2、R4およびR5は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜12の脂環族基、炭素数7〜12のアラルキル基または芳香族基のいずれかであり、
    R3は、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基のいずれかであり、
    Xは、単結合、または、以下の構造式(1−1)で示される2価の残基のいずれかであり、
    Aは、炭素数2〜8のアルキレン基または以下の構造式(1−2)で示される2価の残基のいずれかであり、
    Y、Zは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基または炭素数7〜12のアラルキルオキシ基のいずれかであり、他の一方が水素原子または炭素数1〜8のアルキル基のいずれかであり、
    前記構造式(1−1)において、R6は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基のいずれかであり、
    前記構造式(1−2)において、R7は、単結合または炭素数1〜8のアルキレン基のいずれかであり、*は、当該端末が、構造式(1)で示される亜リン酸エステル系化合物の酸素原子側に結合していることを示す。
  2. 前記被覆膜の膜厚が0.5nm以上であることを特徴とする請求項1に記載の赤外線吸収微粒子分散液。
  3. 前記金属キレート化合物または/および前記金属環状オリゴマー化合物が、Al、Zr、Ti、Si、Znから選択される1種類以上の金属元素を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の赤外線吸収微粒子分散液。
  4. 前記金属キレート化合物または前記金属環状オリゴマー化合物が、エーテル結合、エステル結合、アルコキシ基、アセチル基から選択される1種以上を有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の赤外線吸収微粒子分散液。
  5. 前記赤外線吸収微粒子が、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.2≦z/y≦2.999)、または/および、一般式MxWyOz(但し、M元素は、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、I、Ybのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.0≦z/y≦3.0)で表記される赤外線吸収微粒子であることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の赤外線吸収微粒子分散液。
  6. 前記M元素が、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Snのうちから選択される1種類以上であることを特徴とする請求項5に記載の赤外線吸収微粒子分散液。
  7. 前記赤外線吸収微粒子が、六方晶の結晶構造を持つ微粒子であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の赤外線吸収微粒子分散液。
  8. 前記赤外線吸収微粒子の結晶子径が、1nm以上200nm以下であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の赤外線吸収微粒子分散液。
  9. 前記表面処理赤外線吸収微粒子からなる表面処理赤外線吸収微粒子粉末において、炭素濃度が0.2質量%以上5.0質量%以下であることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の赤外線吸収微粒子分散液。
  10. 前記液状の媒質が、有機溶剤、油脂、液状可塑剤、硬化により高分子化される化合物、水から選択される1種以上の液状の媒質であることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の赤外線吸収微粒子分散液。
  11. さらに、前記亜リン酸エステル系化合物以外のリン酸系安定剤、ヒンダードフェノール系安定剤、スルフィド系安定剤、金属不活性化剤から選択される1種類以上の安定剤を含むことを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の赤外線吸収微粒子分散液。
  12. 媒質中に分散された表面処理赤外線吸収微粒子と、亜リン酸エステル系化合物とを含む赤外線吸収微粒子分散体であって、
    前記表面処理赤外線吸収微粒子の表面が、金属キレート化合物の加水分解生成物、金属キレート化合物の加水分解生成物の重合物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物の重合物、から選択される1種以上を含む被覆膜で被覆されており、
    前記亜リン酸エステル系化合物が、構造式(1)で示される亜リン酸エステル系化合物であり、且つ、前記亜リン酸エステル系化合物の添加量が、前記赤外線吸収微粒子100質量部に対して、500質量部を超えて50000質量部以下であることを特徴とする赤外線吸収微粒子分散体。
    但し、前記構造式(1)において、R1、R2、R4およびR5は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜12の脂環族基、炭素数7〜12のアラルキル基または芳香族のいずれかであり、
    R3は、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基のいずれかであり、
    Xは、単結合、または、以下の構造式(1−1)で示される2価の残基のいずれかであり、
    Aは、炭素数2〜8のアルキレン基または以下の構造式(1−2)で示される2価の残基のいずれかであり、
    Y、Zは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基または炭素数7〜12のアラルキルオキシ基のいずれかであり、他の一方が水素原子または炭素数1〜8のアルキル基のいずれかであり、
    前記構造式(1−1)において、R6は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基のいずれかであり、
    前記構造式(1−2)において、R7は、単結合または炭素数1〜8のアルキレン基のいずれかであり、*は、当該端末が、構造式(1)で示される亜リン酸エステル系化合物の酸素原子側に結合していることを示す。
  13. 前記金属キレート化合物または/および前記金属環状オリゴマー化合物が、Al、Zr、Ti、Si、Znから選択される1種類以上の金属元素を含むことを特徴とする請求項12に記載の赤外線吸収微粒子分散体。
  14. 前記金属キレート化合物または前記金属環状オリゴマー化合物が、エーテル結合、エステル結合、アルコキシ基、アセチル基から選択される1種以上を有することを特徴とする請求項12または13に記載の赤外線吸収微粒子分散体。
  15. 前記赤外線吸収微粒子は、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.2≦z/y≦2.999)、または/および、一般式MxWyOz(但し、M元素は、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、I、Ybの内から選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.0≦z/y≦3)で表記される赤外線吸収微粒子であることを特徴とする請求項12から14のいずれかに記載の赤外線吸収微粒子分散体。
  16. 前記M元素が、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Snのうちから選択される1種類以上であることを特徴とする請求項15に記載の赤外線吸収微粒子分散体。
  17. 前記赤外線吸収微粒子が、六方晶の結晶構造を持つ微粒子であることを特徴とする請求項12から16のいずれかに記載の赤外線吸収微粒子分散体。
  18. 前記赤外線吸収微粒子の結晶子径が、1nm以上200nm以下であることを特徴とする請求項12から17のいずれかに記載の赤外線吸収微粒子分散体。
  19. 前記表面処理赤外線吸収微粒子からなる表面処理赤外線吸収微粒子粉末において、炭素濃度が0.2質量%以上5.0質量%以下であることを特徴とする請求項12から18のいずれかに記載の赤外線吸収微粒子分散体。
  20. 前記媒質が、高分子であることを特徴とする請求項12から19のいずれかに記載の赤外線吸収微粒子分散体。
  21. 前記媒質が、固体状樹脂であることを特徴とする請求項12から20のいずれかに記載の赤外線吸収微粒子分散体。
  22. 前記固体状樹脂が、フッ素樹脂、PET樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、から選択される1種以上の樹脂であることを特徴とする請求項21に記載の赤外線吸収微粒子分散体。
  23. さらに、前記亜リン酸エステル系化合物以外のリン酸系安定剤、ヒンダードフェノール系安定剤、スルフィド系安定剤、金属不活性化剤から選択される1種類以上の安定剤を含むことを特徴とする請求項12から22のいずれかに記載の赤外線吸収微粒子分散体。
  24. 赤外線吸収微粒子と、水と、
    有機溶剤、液状樹脂、油脂、前記樹脂用の液状可塑剤、高分子単量体、または、これらの群から選択される2種以上の混合物とを、混合し、分散処理を行って前記赤外線吸収微粒子の被膜形成用分散液を得る工程と、
    前記被膜形成用分散液へ、金属キレート化合物または/および金属環状オリゴマー化合物を添加し、前記赤外線吸収微粒子の表面を、金属キレート化合物の加水分解生成物、金属キレート化合物の加水分解生成物の重合物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物の重合物、から選択される1種以上で被覆する工程と、
    前記被覆する工程の後に、前記被膜形成用分散液を構成する液状の媒質を除去して、表面処理赤外線吸収微粒子を含む表面処理赤外線吸収微粒子粉末を得る工程と、
    前期表面処理赤外線吸収微粒子粉末を所定の媒質に加え、分散させて表面処理赤外線吸収微粒子の分散液を得る工程と、
    前記表面処理赤外線吸収微粒子の分散液へ、前記赤外線吸収微粒子100質量部に対して、500質量部を超えて50000質量部以下の亜リン酸エステル系化合物を添加し、亜リン酸エステル系化合物を含む表面処理赤外線吸収微粒子の分散液を得る工程とを、有することを特徴とする赤外線吸収微粒子分散液の製造方法。
  25. 赤外線吸収微粒子と、水と、
    有機溶剤、液状樹脂、油脂、前記樹脂用の液状可塑剤、高分子単量体、または、これらの群から選択される2種以上の混合物とを、混合し、分散処理を行って前記赤外線吸収微粒子の被膜形成用分散液を得る工程と、
    前記被膜形成用分散液へ、金属キレート化合物または/および金属環状オリゴマー化合物を添加し、前記赤外線吸収微粒子の表面を、金属キレート化合物の加水分解生成物、金属キレート化合物の加水分解生成物の重合物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物、金属環状オリゴマー化合物の加水分解生成物の重合物、から選択される1種以上で被覆する工程と、
    前記被覆する工程の後に、前記被膜形成用分散液を構成する液状の媒質を、所定の媒質に溶媒置換し、表面処理赤外線吸収微粒子の分散液を得る工程と、
    前記表面処理赤外線吸収微粒子の分散液へ、前記赤外線吸収微粒子100質量部に対して、500質量部を超えて50000質量部以下の亜リン酸エステル系化合物を添加し、亜リン酸エステル系化合物を含む表面処理赤外線吸収微粒子の分散液を得る工程とを、有することを特徴とする赤外線吸収微粒子分散液の製造方法。
  26. 請求項24または25に記載の亜リン酸エステル系化合物を含む表面処理赤外線吸収微粒子の分散液、または、当該亜リン酸エステル系化合物を含む表面処理赤外線吸収微粒子の分散液を乾燥して得た、亜リン酸エステル系化合物を含む表面処理赤外線吸収微粒子の分散粉と、
    適宜な媒体とを混合して、赤外線吸収微粒子分散体を得る工程とを、有することを特徴とする赤外線吸収微粒子分散体の製造方法。
  27. 請求項24または25に記載の表面処理赤外線吸収微粒子の分散液を乾燥して得た表面処理赤外線吸収微粒子の分散粉と、亜リン酸エステル系化合物と、適宜な媒体とを混合して、赤外線吸収微粒子分散体を得る工程とを、有することを特徴とする赤外線吸収微粒子分散体の製造方法。
    但し、前記亜リン酸エステル系化合物の混合量は、前記赤外線吸収微粒子100質量部に対して、500質量部を超えて50000質量部以下である。
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