JP5564207B2 - 赤外線遮蔽材料、赤外線遮蔽用塗料、赤外線遮蔽膜、並びに、赤外線遮蔽基材 - Google Patents

赤外線遮蔽材料、赤外線遮蔽用塗料、赤外線遮蔽膜、並びに、赤外線遮蔽基材 Download PDF

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本発明は、赤外線遮蔽材料、当該赤外線遮蔽材料を含む赤外線遮蔽用塗料、当該赤外線遮蔽用塗料を用いて成膜された赤外線遮蔽膜、並びに、透明基材に当該赤外線遮蔽膜が設けられた赤外線遮蔽基材に関する。
酸化インジウム、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化タングステン、錫を含有するインジウム酸化物(本発明において、「ITO」と記載する場合がある。)、錫を含有するアンチモン酸化物、等の透明な赤外線遮蔽材料は、可視光には透明であるが赤外光に対して遮蔽効果がある。そして、これらの赤外線遮蔽材料を塗膜したガラスやフィルム、また、これらの赤外線遮蔽材料を混合した透明樹脂は、可視光を透過させるが赤外線(熱線)は遮蔽する機能を発揮する。したがって、赤外線遮蔽材料をガラス、フィルム、および、透明樹脂に直接または、他の素材で挟み込んだものが、建築物の窓、車両の窓、等に多く用いられている。
従来、これらの赤外線遮蔽機能を有するガラス、フィルム、および、透明樹脂等において、赤外線の遮蔽率を向上させるには、要求される赤外線の遮蔽率にもよるが、赤外線遮蔽材料が含有される部分の厚みを厚くし、または2種以上の異なる赤外遮蔽材料を用いて、当該赤外線遮蔽材料の存在量を確保することによって対応していた。
例えば、特許文献1、2には透明な赤外線遮蔽材料としてITOやアンチモン含有酸化錫(ATO)、6ホウ化ランタン、酸化タングステンを用い、2〜10g/m程度の使用を確保する赤外線遮蔽膜について提案されている。
また、これらの赤外線遮蔽材料の製造方法に関しては、いくつかの提案がなされている。例えば、透明な赤外線遮蔽材料であるITO粉体の製造方法としては、特許文献3に記載されている方法がある。
特許文献3には、ITO粉末の原料として、インジウムと錫との水溶性化合物 (例えば、塩化物、硝酸塩など。) を水に溶解させた水溶液を、アルカリ水溶液 (例、アルカリ金属またはアンモニウムの水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩などの水溶液) と反応させて、各水溶性化合物を加水分解し、インジウム−錫共沈水酸化物を析出させることが提案されている。そして、当該析出したインジウム−錫共沈水酸化物を加熱乾燥して水分を除去した無水の混合水酸化物、または、脱水をさらに進めた混合水酸化物を、酸素を遮断した不活性ガス、または還元性雰囲気中で焼成してITO粉末を得ることが提案されている。
このように製造された赤外線遮蔽材料粒子を、分散溶媒、分散剤、または微細なシリカ等のバインダーと伴に、ペイントシェーカー等の分散機を用いて分散溶媒中に分散させ、赤外線遮蔽材料粒子分散液を得る。さらに当該分散液を、透明性を有する樹脂中に混合・分散させ、透明基材に塗布、または挟み込むことにより、赤外線遮蔽機能を有する透明基材を得ることが出来る。
特開2007−145712号公報 特開2008−44609号公報 特開平7−70481号公報
上述した従来技術によれば、高い赤外線遮蔽機能を有する透明基材を作製するには、多くの赤外線遮蔽材料が必要であった。しかし、赤外線遮蔽材料として、例えばITOを用いた場合、当該ITO粉体を多く配合すれば、それと共に赤外線の透過率、日射透過率は低下するので、必要特性を満たすためには少なくともITO粉体が約3g/m程度は必要であった。その結果、透明基材の可視光透過率も低下していた。
また、高い可視透過性と赤外線遮蔽機能を有するには、赤外線遮蔽機能を有する膜中において、赤外線遮蔽材料粒子が均一に分散していることが重要である。しかしながら、従来技術に係る焼成工程を経た赤外線遮蔽材料粒子は、一次粒子径は小さいものの、最終工程が乾式で処理されているため、粒子同士が焼結または凝集している。この為、赤外線遮蔽材料分散液の調製に先立ち当該粒子同士の凝集をほぐす為、外的な力が必要でありペイントシェーカーなどを用いた分散工程が必要であった。さらに当該分散工程を経ても、主溶媒のみでは十分な分散力が得られない為、分散性を向上させる分散剤の添加、場合によっては、バインダー樹脂の添加、pH調整剤、が必要であった。しかし、このような分散性の向上手段を尽くしても、一旦、凝集してしまった粒子を再度分離して溶媒中に分散させることは難しく、そのため十分な分散性が得られない、という課題があった。
一方、赤外線遮蔽効果(赤外線カット波長)は、赤外線遮蔽材料粒子の酸素欠陥やキャリアの濃度に依存するため、使用する赤外線遮蔽材料粒子は、酸素欠陥量とキャリア濃度とが高い状態を維持しながら、ガラス、フィルム基材上、または樹脂中に存在することが求められる。
従来技術に係る焼成工程を経た赤外線遮蔽材料粒子を分散させる方法では、還元工程から分散工程での工程間において、または、分散中に溶剤に含まれる、混入する水分等の影響で、赤外線遮蔽材料粒子表面の酸化が起こり、酸素欠陥とキャリアが低減する可能性があるという課題があった。
本発明は、上述の課題を考慮して成されたものであり、その解決しようとする課題としては、粒子凝集が少なく、透明度が高く、ヘイズの値が小さく、粒子表面の酸化が抑えられ、少ない使用量で高い赤外線遮蔽率を有する赤外線遮蔽膜を成膜することの出来る赤外線遮蔽材料、当該赤外線遮蔽材料を含む赤外線遮蔽用塗料、当該赤外線遮蔽用塗料を用いて成膜された赤外線遮蔽膜、並びに、透明基材に当該赤外線遮蔽膜が設けられた赤外線遮蔽基材を提供することである。
本発明者らは、上述の課題の解決をすべく研究を行った結果、赤外線遮蔽材料粒子の分散性と、当該粒子のキャリア量の低減抑制に着目し、赤外線遮蔽材料粒子の共沈前駆体を240℃以上の有機溶媒中で直接加熱合成し、表面が有機物層で被覆された赤外線遮蔽材料粒子を作製した。そして当該赤外線遮蔽材料粒子においては、酸化によるキャリアの低減が抑制されていること、当該赤外線遮蔽材料粒子を用いることで分散性が向上した赤外線遮蔽用塗料が得られること、赤外線遮蔽用塗料を用いて成膜された赤外線遮蔽膜は赤外線遮蔽効率が高いこと、透明基材に当該赤外線遮蔽膜が設けられた赤外線遮蔽基材は赤外線遮蔽効果が高いとの画期的な知見を得て、本発明を完成した。
即ち、上述の課題を解決するための第1の発明は、
表面が有機物で被覆された赤外線遮蔽材料粒子を含む赤外線遮蔽材料であって、
当該赤外線遮蔽材料粒子を被覆している有機物の炭素含有量が、当該赤外線遮蔽材料の0.2質量%以上、5質量%以下である赤外線遮蔽材料である。
但し、当該有機物は沸点が150℃以上でOH基を2つ以上有する多価アルコールであって、当該赤外線遮蔽材料粒子の粒子形成段階において赤外線遮蔽材料粒子の表面に被覆されたものである。
第2の発明は、
前記赤外線遮蔽材料がITOである第1の発明に記載の赤外線遮蔽材料である。
第3の発明は
前記赤外線遮蔽材料を200℃から400℃へ加熱した際の重量減少率が、0.5%以上10%以下である第1または第2の発明に記載の赤外線遮蔽材料である。
第4の発明は
前記赤外線遮蔽材料は、球状、立方状、直方状のいずれかの形状を有し、BET比表面積が10m/g以上60m/g以下の粒子を含む第1から第3の発明のいずれかに記載の赤外線遮蔽材料である。
第5の発明は
第1から第4の発明のいずれかに記載の赤外線遮蔽材料を含有する赤外線遮蔽用塗料である。
第6の発明は
第5の発明に記載の赤外線遮蔽用塗料を塗布して得られた赤外線遮蔽膜である。
第7の発明は
赤外線遮蔽膜におけるITO粉体の含有量が5g/m以下、可視光透過率が80%以上であって、(可視光透過率/日射透過率)の値が1.2以上である第6の発明に記載の赤外線遮蔽膜である。
第8の発明は
透明基体に第6または第7の発明に記載の赤外線遮蔽膜が設けられた赤外線遮蔽基材である。
本発明に係る赤外線遮蔽材料に含まれる赤外線遮蔽材料の粒子は、当該粒子の酸化が抑制され、分散溶媒中にて容易に分散し、分散性の高い赤外線遮蔽材料粒子の分散液となる。当該分散液を赤外線遮蔽用塗料として赤外線遮蔽膜を成膜した透明基材は、粒子凝集が少なく、透明度が高く、ヘイズの値が小さく、高い赤外線遮蔽性を有する赤外線遮蔽基材となった。
実施例1から5に係る赤外線遮蔽膜の分光透過曲線である。 実施例2と比較例1に係る赤外線遮蔽膜の分光透過曲線である。
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
尚、本発明に係る実施形態の説明において、赤外線遮蔽材料としてITOを用いる場合を例として説明する。透明な赤外線遮蔽材料として、例えば、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化インジウム−亜鉛酸化物(IZO)、アルミニウム−亜鉛酸化物(AZO)、アンチモン−錫酸化物(ATO)等を用いる場合も、当業者であれば、以下に説明する実施形態を容易に適用することが出来る。
単に、赤外線遮蔽材料粒子の表面を有機物で覆う方法として、例えば、当該粒子と有機溶媒とを混合して分散させることが考えられる。しかしながら、たとえ、当該粒子がシングルナノサイズの粒子であったとしても、一旦、乾燥工程や焼成工程を経由した当該粒子は、粒子間で凝集を起こしている。当該粒子間の凝集の為、当該粒子と有機溶媒を混合して分散させても、凝集粒子として有機物で覆われることになる。この結果、当該有機物で覆われた凝集粒子を、再度有機溶媒中にて分散を試みても、凝集物として分散するものの一次粒子としては充分に分散しない。
これに対し、本実施形態に係る赤外線遮蔽材料粒子は、あらかじめ有機溶媒中で結晶性の良い赤外線遮蔽材料粒子を生成させて、当該粒子表面を有機物で被覆している。その後、当該有機物で被覆された当該粒子表面の有機物の被覆量を調整している。このため、当該粒子間同士の凝集が抑制されており、たとえ凝集していたとしても、当該粒子が有機物で被膜されているため、分散が容易に行われ、有機溶媒中にて分散を試みた場合、分散性の向上した分散液を得ることが出来る。
[赤外線遮蔽材料粒子を被覆している有機物の被覆重量]
本実施形態に係る赤外線遮蔽材料粒子の表面を被覆する有機物量としては、被覆する有機物の種類にもよるが、有機物中に含まれる炭素成分で換算して、赤外線遮蔽材料粉体の0.2質量%以上、5質量%以下が好ましい範囲である。尚、当該赤外線遮蔽材料粒子の表面を被覆する有機物量は、全個数の粒子を考慮した場合の平均的な有機物量から換算した炭素量から算出したものである。
詳細は実施例にて後述するが、炭素量が、赤外線遮蔽材料粉体の0.2質量%以上好ましくは0.3質量%以上になると、急速に赤外線遮蔽材料粒子の分散が良くなり分散性が保たれる。また炭素量が、赤外線遮蔽材料粉体の5質量%以下であると、赤外線遮蔽材料粒子表面を被覆する有機物量が多くなりすぎることが回避されるため、溶剤中に分散し易くなり、分散性を保つことが出来る。
これは、赤外線遮蔽材料粒子表面を炭素量で換算して0.2質量%以上の有機物で被覆することで、赤外線遮蔽材料粒子を分散溶媒に分散時した際の分散性が確保できるからである。さらに、得られた赤外線遮蔽材料粒子を分散した分散溶媒を保存した際、分散溶媒の蒸発が進んでも赤外線遮蔽材料粒子の分散の安定性が保たれるからである。
また、赤外線遮蔽材料粒子表面を炭素量で換算して5質量%以下の有機物で被覆することで、赤外線遮蔽材料粒子を分散溶媒に分散した分散液を赤外線遮蔽用塗料として塗膜を形成し、乾燥させた際、赤外線遮蔽材料粒子を被覆する有機物が素早く蒸発または分解して赤外線遮蔽材料粒子間の接触を保つことが出来る。この結果、塗膜内において赤外線遮蔽材料粒子間の接触が良好になり塗膜密度の向上に寄与するので、赤外線遮蔽膜という観点から好ましいからである。また、分散液の製造の観点からは、目的の物性値を有する分散液に向けて、表面張力や乾燥性の調整を行う際に、赤外線遮蔽材料粒子表面を被覆する有機物量が少なければ、分散液剤の調整範囲を広くとれ、好ましいからである。
詳細は後述するが、本発明で赤外線遮蔽材料粒子の表面を被覆する有機物の沸点は150℃以上、好ましくは200℃以上、400℃未満の有機物であることが好ましい。具体的には、下記(式1)にて評価した、赤外線遮蔽材料粒子を200℃から400℃へ加熱
したときの重量減少率が0.5%以上、10%以下であることが好ましい。重量減少率の評価方法としては、示差熱天秤を用い、赤外線遮蔽材料粒子の200℃から400℃への加熱における重量減少から算出すれば良い。
重量減少率=(200℃に加熱時の重量−400℃加熱時の重量)/400℃に加熱時の重量・・・・(式1)
[赤外線遮蔽材料粒子に被覆する有機物の沸点]
本実施形態に係る赤外線遮蔽材料粒子表面を被覆する有機物としては、アルコール系の有機物が好ましく、沸点が150℃以上、好ましくは200℃以上、400℃未満の有機物が好ましい。
これは、有機物の沸点が150℃以上であれば、長期に保管していても被覆する有機物が脱離せずに、赤外線遮蔽材料粒子の分散性が保持できる効果が得られるからである。
一方、被覆する有機物の乾燥速度が速ければ、当該赤外線遮蔽材料粒子を分散した赤外線遮蔽用塗料により塗膜を形成した場合、当該被覆有機物が蒸発し易い。この結果、溶媒の沸点が400℃未満であれば、低温かつ短時間で赤外線遮蔽材料粒子の接触が得られ、好ましいからである。
[赤外線遮蔽材料粒子を被覆する有機物の種類]
赤外線遮蔽材料粒子を被覆する有機物の種類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1.2−プロピレングリコール、1.3−ブチレングリコール、1.4−ブチレングリコール、2.3−ブチレングリコール、1.5ペンタジオール、ヘキシレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリン等が挙げられる。尤も、上記以外でも、沸点が150℃以上、好ましくは200℃以上、400℃未満のアルコール系の有機溶媒であれば良い。
[赤外線遮蔽材料粒子を被覆する有機物量の調整方法]
赤外線遮蔽材料粒子を被覆する有機物量の調整方法としては、赤外線遮蔽材料粒子の生成反応と併行して有機物を被覆し、被覆した有機物を洗浄により適正な被覆量に調整する方法と、赤外線遮蔽材料粒子の生成反応時に当該赤外線遮蔽材料粒子を被覆した溶媒を、目的の被覆濃度に調整された所定溶媒に溶媒置換し、適正な被覆量に調整する方法とがある。調整方法はどちらでもよい。本実施の形態では、前者の洗浄による調整を行った。
[赤外線遮蔽材料粒子の比表面積]
BET法により算出される赤外線遮蔽材料粒子の比表面積が、10m/g以上、さらに好ましくは20m/g以上あれば粒子のサイズが大き過ぎず、塗膜化した際の表面粗さを滑らかなものに保つことが出来る。
一方、BET法により算出される赤外線遮蔽材料粒子の比表面積が60m/g以下、さらに好ましくは40m/g以下あれば粒子のサイズが小さ過ぎず、粒子合成中に生成する不要な有機成分を取り除くのが容易であり、合成時において粒子の捕集が行い易く、製造時のロスが少なく収率が高くなるので好ましい。
[赤外線遮蔽材料としてのITO粒子の結晶構造]
ITO粒子の生成相および結晶性ついては、X線回折にて酸化インジウムの単一の生成相が生成していることが確認出来ればよい。不純物相である水酸化インジウム、酸化錫は、確認されないほうが好ましい。尚、酸化インジウムの単一の生成相は、生成時の反応温度、反応時間の制御により生成させることが出来る。
また、ITO粒子は結晶性が良いことが好ましく、できることならば「BET径=結晶子径」であることが好ましい。従って、当該観点からも、X線回折ピークから求めた結晶子径は、ITO粒子の比表面積より算出される粒子径サイズが、10nm以上(BET法
により算出されるITO粒子の比表面積、約60m/g)、40nm以下(BET法により算出されるITO粒子の比表面積、約20m/g)であることが好ましい。
[赤外線遮蔽材料粒子の分散性評価方法]
赤外線遮蔽用塗料においては、当該赤外線遮蔽用塗料を静置したときに、赤外線遮蔽材料粒子が沈降せずに分散していることが求められる。
赤外線遮蔽用塗料において赤外線遮蔽材料粒子が沈降するということは、当該赤外線遮蔽材料粒子が凝集したか、または、初めから粗大粒子が形成されていたことが考えられる。そして、赤外線遮蔽用塗料において、赤外線遮蔽材料粒子の凝集や当初からの粗大粒子が存在することは、当該塗料を用いて赤外線遮蔽膜を形成した際に膜厚の不均一が生じ、可視光透過性の低下や、ヘイズの値の増加につながる。従って、赤外線遮蔽用塗料において、赤外線遮蔽材料粒子がブラウン運動のみで分散し、沈降せずにいる状態が理想である。
ここで、本実施の形態に係る赤外線遮蔽材料粒子の分散性評価方法について説明する。
当該赤外線遮蔽材料粒子の分散性は、例えば、当該赤外線遮蔽材料粒子を分散させた赤外線遮蔽用塗料に対し、遠心分離機を用いて3000rpm、30分間の遠心分離をしたときに、赤外線遮蔽用塗料が沈降層と透明な上澄み層とに分離するか否かにより判定することが出来る。
さらに、本発明者等は、本実施に形態に係る赤外線遮蔽材料粒子の分散性は、赤外線遮蔽用塗料の表色を測定することで評価出来ることにも想到した。
具体的には、赤外線遮蔽用塗料の表色を日本電色工業(株)社製 分光式色差計 SQ−2000を用いJISZ8722で準じた方法で、8°照明、D受光の測定条件で、反射物体色をL、a、b表色系で評価した。
ここで、Lは明度、a、bは色相と彩度を表す色座標である。赤外線遮蔽材料粒子が塗料に良好に分散した場合、明度Lは小さくなる(暗くなる)方向に進む。これは分散粒子による反射が少なく赤外線遮蔽用塗料により光が透過・吸収するからである。一方、赤外線遮蔽材料粒子同士が凝集していると、明度Lは大きくなる(明るくなる)方向に進行していく。これは凝集した粒子が光を反射し、明るく見えるからである。尚、L、a、b表色系に限らず、Y、x、y表色系、L、a、b表色系を用いてもよく、各表色間で比較すれば良い。
[本実施形態に係る赤外線遮蔽材料としてのITO粉体の製造方法]
本実施形態に係るITO粉体の製造方法について説明する。
尚、本発明に係る赤外線遮蔽用塗料に使用しているITO粉体を、他の透明な赤外遮蔽材料の粉体、例えば、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化インジウム−亜鉛酸化物(IZO)、アルミニウム−亜鉛酸化物(AZO)、アンチモン−錫酸化物(ATO)の各粉体に代替、または混合した場合であっても、本発明と同様の構成により、透明な赤外遮蔽材料の分散性に優れた透明な赤外遮蔽塗料およぶ赤外遮蔽膜を得ることが出来る。
<原料>
本実施形態に係るITO粉体の製造方法に用いる、錫含有水酸化インジウムについて説明する。
当該錫含有水酸化インジウムの一般的な製造方法は、錫塩とインジウム塩と純水とを混合して水溶液とし、当該錫塩とインジウム塩との混合水溶液とアルカリとを反応させて、水酸化錫と水酸化インジウムとのスラリーを生成させるものである。
ここで、当該各塩を具体的に示す。
インジウム塩としては、硝酸インジウム、硫酸インジウム、リン酸インジウム、塩化イ
ンジウム等の無機塩、酢酸インジウム、シュウ酸インジウム、酒石酸インジウム、インジウムアルコキシド等の有機塩が挙げられる。これらの塩は、単独で使用しても良く、混合して使用しても良い。
錫塩としては、硝酸錫、硫酸錫、リン酸錫、塩化錫等の無機塩、酢酸錫、シュウ酸錫、酒石酸錫、錫メトキシド、錫エトキシド、錫プロポキシド、錫ブトキシド等の錫アルコキシドなどの有機塩が挙げられる。これらの塩は、単独で使用しても良く、混合して使用しても良い。
但し、有機塩は、一般的に無機塩と比べて高価であり親水性が低い。さらに、有機塩は、本実施形態に係る水溶液や親水性の有機溶媒に溶解させた際、当該有機溶媒に対する溶解度が足りずに溶け残りができたり、2層に分かれる等、当該塩が、水溶液や有機溶媒中に均一分散しない場合がある。
従って、安価に入手でき、親水性の強い無機塩の方が好ましい原料であり、特に、インジウム塩としては硝酸インジウム塩が、錫塩としては塩化錫が好ましく用いられる。
次に、前記インジウム塩および錫塩を沈殿させるアルカリについて説明する。
前記インジウム塩および錫塩を沈殿させるアルカリ塩としては、NaOH、KOH、NHOH、NH、NHHCOおよび(NHCOの群から選ばれる少なくとも1種のアルカリ塩を、水溶液中に溶解することによって得ることができる。尚、これらアルカリ塩の群のうちでも、アンモニアを使用することが好ましい。
上述したインジウムと錫とを含有した水溶液を、5℃〜95℃、好ましくは30℃〜70℃の範囲の液温に維持した前記アルカリ塩を溶解させた水溶液へ、24時間以内、好ましくは1分間〜120分間の添加時間で添加し、錫含有水酸化インジウム(水酸化インジウム−水酸化錫沈殿物)を含む沈殿溶液を生成させる。当該アルカリ塩の濃度は、インジウム塩の1.0〜10当量となるまでの濃度とし、錫含有水酸化インジウムの沈殿溶液を生成させる。
また、当該錫含有水酸化インジウムは、上述した水溶液中ばかりでなく、アルコール中で作製してもよい。
生成した水酸化インジウムと水酸化錫とのスラリーを、フィルタープレス等の固液分離操作にて採集する。そして、当該採集されたスラリーを、純水等により洗浄して不純物を除去することで、純度を高めた錫含有インジウム水酸化物のケーキが得られる。当該ケーキには、不純物として反応の副生成物であるアンモニア、塩素、硝酸塩が不純物として存在するため、各々の濃度が100ppm以下の濃度になるように充分に洗浄する。このとき洗浄剤としては、純水、アルコールが挙げられる。但し、コスト面の観点からは、純水洗浄が好ましい。
水洗後の錫含有インジウム水酸化物は、粒子の大きさによるが、20%から70%程度水分を含んだケーキの状態に調整する。当該ケーキを水溶性の有機溶媒中に直接分散させる際、原料となる水酸化物中の水分が20%以上であると、反応溶媒中へ水酸化物の分散性が良く、水酸化物粒子の凝集物(ダマ)が発生しないので、凝集物がそのままの状態で反応し粗大なITO粒子が生成するのを回避できる。当該ケーキ中の水分が20%以上であることで、含まれる水分と親水性の有機溶媒の溶解により、ITO粒子が凝集することなく速やかに有機溶媒中に水酸化物粒子が分散し、当該有機溶剤が水酸化物粒子表面に吸着され、ITO粒子の分散性の向上に寄与していると考えられる。
ケーキ中の水分が多いほどITO粒子の分散が容易になるが、原料中の水分が過剰になると、反応時に有機溶媒中に溶解している水分の蒸発熱分の熱量を余分に加えなければならないため、余分なエネルギーを費やすこととなる。したがってケーキ中の水分量は、上述した水酸化物の分散性と水の発熱量を考慮し適時調整すればよいが、具体的には、20
%から70%が好ましい。なお、錫含有水酸化インジウムに含まれる水分の算出方法としては、下記(式2)により算出している。
水分=(乾燥前重量−120℃で4時間大気乾燥後の重量)/乾燥前重量・・・(式2)
尚、有機溶媒中へのケーキの分散方法としては、攪拌による分散、または、超音波による分散方法をとればよい。
<有機溶媒>
本実施形態に用いる有機溶媒は、沸点が240℃以上、好ましくは250℃以上の有機溶媒を用いればよい。
これは、240℃以上の加熱処理でITO粒子の生成がなされるため、有機溶媒の沸点が240℃以上であれば、ITO粒子の生成反応の際に当該有機溶媒が反応系外に揮発することを回避できるからである。
さらに、当該有機溶媒は、50体積%以上の水を含むことが出来る親水性の強い水溶性の有機溶媒であることが好ましい。当該有機溶媒の水溶性が高いほど、ケーキの分散時およびITO粒子の生成反応時に水分を多く含むことが出来るからである。
さらに、本実施形態に用いる有機溶媒は、1分子当たりに、少なくともOH基を1個以上持つ溶媒が好ましい。中でも、多価アルコールが好ましく、さらに好ましくは、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1.5ペンタンジオール、グリセリンが挙げられる。しかし、これらに限られず、沸点が240℃以上の多価アルコールまたは、その誘導体であれば良く、または、イオン性液体でも良い。
これは、出発原料となる錫含有インジウム水酸化物の親水性が強いため、OH基を有するか、または、イオン性の有機溶媒であれば、当該粒子表面に吸着され易くなり、最終的に生成するITO粒子の分散性が良くなる為ではないかと考えられる。勿論、これらの有機溶媒は単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。
上述したように、本実施形態に係るITO粒子の製造に用いる有機溶媒は、分子1個あたりにOH基を1個以上持つものであることが好ましいが、当該有機溶媒が、分子1個あたりにOH基を1個以上持つことで、異なる効果も発揮する。当該異なる効果とは、当該有機溶媒中に存在するOH基が、生成するITOからO(酸素)を奪って、これを還元し、当該ITO中に酸素欠陥を生成させる効果である。当該生成した酸素欠陥に起因して、生成するITO粒子中にキャリアが発生するので、本実施形態に係るITO粒子の赤外線遮蔽効果が向上する。
従って、OH基を多く有する化合物という観点から、本実施形態に係るITO粒子の製造に用いる有機溶媒は、分子1個あたりにOH基を2個以上もつポリオールであることがさらに好ましい。
ただし、好ましい有機溶媒はポリオールに限られる訳ではなく、多価アルコール、または、その誘導体でも良い。さらには、有機溶媒自体に当初の時点においてOH基が無くても、原料中に含有される水分等の存在により加水分解を起こし、結果的にアルコールが生成するタイプの有機溶媒であっても良い。このタイプの有機溶媒としては、例えば、オレイン酸、オレイルアミンがある。また、上述した有機溶媒は、カルボン酸基、アミン基を含んでいても良い。
以上のことから、本実施形態に係るITO粒子生成における好ましい有機溶媒の例として、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1,5ペンタンジオールの中から選ばれる、少なくとも1種以上の有機溶媒が挙げられる。中でも、常温で液体であること、か
つ安価であること等の観点を考慮すると、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコールが好ましい。
<錫含有インジウム水酸化物からITO粒子への反応>
錫含有水酸化インジウムケーキを上記有機溶媒に分散させて得た錫含有インジウム水酸化物スラリーを、加熱処理装置に装填する。そして、当該錫含有インジウム水酸化物スラリー中に、不活性ガスおよび/または還元性ガスを通気させ、且つ、水または水蒸気を添加しながら、0.05MPaの圧力以下の状態を保持し、240℃以上、350℃以下の温度で反応させる。錫含有インジウム水酸化物からITO粒子への反応は、230℃以上で開始するが、反応温度を上げることにより反応時間の短縮が計れる。
錫含有インジウム水酸化物からITO粒子への反応終了後の反応液は、青色系の反応液となる。酸素欠損を持たないITO粒子は、一般的に白色または黄色の粒子であるが、酸素欠損を持つことにより緑色または青色の粒子となる。ここで、本実施形態に係るITO粒子はすべて青色系の粒子であり、酸素欠陥を有するITO粒子が生成していることが判明した。
<通気させる不活性ガスおよび/または還元性ガス、および、添加する水分>
錫含有インジウム水酸化物からITO粒子への反応中に通気されるガスは、不活性ガスおよび/または還元性ガスである。好ましくは、一酸化炭素、窒素、水素、希ガス、アンモニアガスである。さらに好ましくは、窒素、水素が挙げられる。これらの通気ガスは、1種類の使用でも良いが2種類以上を混合して使用しても良い。
当該通気ガスの1分間当たりの通気量は、水酸化インジウムと水酸化錫と水とを含む有機溶媒溶液の0.001体積%以上、5体積%以下とすることが好ましい。これは、通気量が少ないと、反応溶媒中に溶存する酸素と有機溶媒の酸化が進み易くなり、溶媒が変質する。逆に通気する通気量が多過ぎると、通気ガスとともに反応溶媒および水分が系外に出されてしまうため、有機溶媒溶液の0.001体積%以上、5体積%以下とすることが好ましい。また、当該通気ガスは、当該有機溶媒の底部からバブリングする形で通気することが好ましい。
錫含有インジウム水酸化物からITO粒子への反応中に添加される水分は、水または水蒸気のどちらの形態で添加しても良いし、両方を加えても良い。但し、水添加の場合は、添加された水が直接高温の有機溶媒に接触する為、接触時に水蒸気爆発を起こす危険性がある。当該観点からは、予め、反応温度付近に加熱された水蒸気添加が好ましい。
当該水または水蒸気の1分間当たりの通気量は、水酸化インジウムと水酸化錫と水とを含む有機溶媒溶液の0.001体積%以上、5体積%以下とすることが好ましい。これは、水分量が少ないと、通気ガスと同様、反応溶媒中に溶存する酸素と有機溶媒の酸化が進み易くなり、溶媒が変質する。逆に水分量が多過ぎると、蒸発した水蒸気とともに反応溶媒およびが系外に出されてしまうため、反応時間とともに反応溶媒の減少が起こってしまう。したがって、有機溶媒溶液の0.001体積%以上、5体積%以下とすることが好ましい。
また、当該水または水蒸気は、当該有機溶媒の底部から注入またはバブリングする形で添加することが好ましい。
<加熱装置>
本実施形態で反応時に使用される加熱装置として、例えば、マントルヒーター、リボンヒーター、オイルバス等が挙げられる。尤も、350℃まで加熱可能ならば、多様な加熱装置が適用可能である。
<反応器>
本実施形態で使用される反応器は、350℃に耐えうる反応器であればよい。但し、上述したように錫含有水酸化インジウムケーキの加熱処理中に、スラリーへ水または水蒸気を添加することを考慮すると、密閉状態を保持する反応器よりも、少なくとも0.05MPaの圧力以下の状態を保持し、大気開放系の反応器であることが好ましい。
<固液分離>
生成したITO粒子を、固液分離により回収する。
当該固液分離には、遠心分離法や吸引ろ過法や加圧濾過法等が適用可能である。
<洗浄>
生成したITO粒子表面を被覆している有機物を、洗浄により適正な被覆量に調整する。
洗浄溶媒としては、粒子表面を被覆している有機物を溶解する溶媒であれば良く、かつ後述するITO塗料の溶媒でもある溶剤が好ましい。たとえば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、デカノール、シクロヘキサノール、及びテルピネオール等のアルコール類、エチレングリコール、及びプロピレングリコール等のグリコール類、アセトン、メチルエチルケトン、及びジエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、及び酢酸ベンジル等のエステル類、メトキシエタノール、及びエトキシエタノール等のエーテルアルコール類、ジオキサン、及びテトラヒドロフラン等のエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の酸アミド、アミン類、ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、及びドデシルベンゼン等の芳香族炭化水素類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、オクタデカン、ノナデカン、エイコサン、及びトリメチルペンタン等の長鎖アルカン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、および、シクロオクタン等の環状アルカン等のような常温で液体の溶媒を適宜選択して使用すればよい。
ただし、ITO粒子表面を被覆する有機物として水溶性の有機溶媒を用いている場合、より好ましい洗浄・分散溶媒としては、純水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等の水溶性アルコール類、エチレングリコール、および、プロピレングリコール等のグリコール類等の極性を持った有機溶媒、または、それらの混合溶媒が好ましく適用できる。
ここで、例えばメタノールは洗浄力が高く、イソプロピルアルコールは洗浄力が低い。
一方、洗浄方法として、遠心分離法を用いた固液分離法は分離・洗浄効率が高く、濾過法は洗浄効率が低い。従って、洗浄工程の時間短縮の観点からは、洗浄溶媒としてメタノールを用い、洗浄方法として遠心分離法を用いた固液分離法を用いることが考えられる。他方、ITO粒子表面を被覆する有機物量を精密に制御する観点からは、洗浄溶媒としてイソプロピルアルコールを用い、洗浄方法として濾過法を用いることが考えられる。
本実施の形態においは、ITO粒子表面に被覆させる有機物が、反応溶媒であるテトラエチレングリコールである。そして、ITO粒子表面を被覆しているテトラエチレングリコール量を、洗浄溶媒による洗浄によって所定の被覆量に精密に調整する観点から、洗浄溶媒としてイソプロパノールを用い、洗浄方法として濾過法を用いた。そして、洗浄の際の洗浄溶媒量は被洗浄物の1/2量を1単位量とした。
そして、ITO粒子表面を被覆しているテトラエチレングリコール量が、洗浄溶媒による洗浄によって所定の被覆量となる迄、再度洗浄溶媒を添加し、当該洗浄操作を繰り返し実施する。
洗浄操作後に、乾燥したITO粉体試料の200℃から400℃における重量減少率を
評価した。
具体的には、洗浄操作後の乾燥したITO粉体試料を示差熱天秤に装填し、200℃に加熱して重量を測定し、次に400℃へ加熱して重量を測定する。そして、上述した(式1)により、ITO粉体の200℃から400℃への加熱における重量減少率を算出する。
[本実施形態に係る赤外線遮蔽用塗料]
本実施形態に係る赤外線遮蔽用塗料の主溶媒は、水、極性をもつ有機溶媒、または、それらの混合溶媒が好ましく用いられる。これは、赤外線遮蔽材料粒子表面が極性を持ち、且つ親水性であるため、赤外線遮蔽用塗料となっているときには、溶媒中に水のような極性溶媒が存在することが好ましいからである。赤外線遮蔽用塗料を作製するには、上述した洗浄終了後の赤外線遮蔽材料粒子を含むケーキを、所定割合で分散液中に分散させ赤外線遮蔽材料粒子を含む分散液を作製すればよい。
<分散液の調整>
赤外線遮蔽用塗料作製のため、赤外線遮蔽材料粒子を分散させる分散溶媒は、その沸点が300℃以下、好ましくは200℃以下である溶媒が使用できる。沸点が300℃以下であれば、当該赤外線遮蔽用塗料を塗布して塗膜焼成する際に、当該溶媒が揮発し尽くし残留しないので、得られる透明な導電膜の表面抵抗が増大を回避できるからである。
赤外線遮蔽用塗料を得るための分散溶媒としては、前述した洗浄溶媒と同様の溶媒が使用できる。たとえば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、デカノール、シクロヘキサノール、及びテルピネオール等のアルコール類、エチレングリコール、及びプロピレングリコール等のグリコール類、アセトン、メチルエチルケトン、及びジエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、及び酢酸ベンジル等のエステル類、メトキシエタノール、及びエトキシエタノール等のエーテルアルコール類、ジオキサン、及びテトラヒドロフラン等のエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の酸アミド、アミン類、ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、及びドデシルベンゼン等の芳香族炭化水素類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、オクタデカン、ノナデカン、エイコサン、及びトリメチルペンタン等の長鎖アルカン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、および、シクロオクタン等の環状アルカン等のような常温で液体の溶媒を適宜選択して使用すればよい。ただし、分散溶媒に水溶性の有機溶媒を用いているため、より好ましい洗浄・分散溶媒としては、純水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等の水溶性アルコール類、エチレングリコール、および、プロピレングリコール等のグリコール類等の極性を持った有機溶媒、または、それらの混合溶媒が、最も好ましくは、本実施の形態に係る赤外線遮蔽材料粒子への分散性が高い、純水およびエチレングリコールの混合溶媒が挙げられる。
本実施形態に係る赤外線遮蔽用塗料は、本実施形態に係る赤外線遮蔽材料粉体と、水、極性をもつ有機溶媒、または、それらの混合溶媒とを含み、静置しても赤外線遮蔽材料粒子が沈降しないものである。当該赤外線遮蔽用塗料を用いることで均一な赤外線遮蔽塗膜を成膜することが出来、可視光透過率が高くヘイズ値が低い赤外線遮蔽膜が得られる。
[本実施形態に係る赤外線遮蔽用塗料を用いた赤外線遮蔽膜・赤外線遮蔽材料基材の製造方法例]
本実施形態に係る赤外線遮蔽用塗料を用いて赤外線遮蔽膜・赤外線遮蔽材料基材を作製するに際しては、スクリーン印刷、スピンコート、ディップコート、ロールコート、刷毛コート、スプレーコート、インクジェットにおける配線形成等の公知の方法を用いること
が出来る。また、当該赤外線遮蔽用塗料を基板上に塗布する場合には、当該基板材料として、有機高分子、プラスチック、ガラス等をあげることが出来るが、当該基板形状としてはフィルム状のものが一般的である。特に、窓ガラスに貼り付けるような用途に用いられる際には、フレキシビリティを要求される基板には高分子フィルムが好ましく、当該高分子フィルムには、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンタフタレート(PEN)、ポリイミド、アラミド、ポリカーボネート等のフィルムを用いることが出来る。
[本実施形態に係る赤外線遮蔽用塗料を用いた赤外線遮蔽膜・赤外線遮蔽材料基材]
本実施形態に係る赤外線遮蔽膜の可視光透過率(τ)は、高い透明性を有するという観点から80%以上であることが好ましい。さらに同様の観点から、(可視光透過率(τ)/日射透過率(τ))の値が1.2以上であることが好ましい。
ここで、可視光透過率(τ)は波長380〜780nmの可視光領域における透過率を示し、日射透過率(τ)は、波長300〜2100nmにおける透過率を示す。
当該 ((τ)/ (τ))の値が1.2以上であれば、本実施形態に係る赤外線遮蔽膜を車両の窓ガラス等に取り付けた際に、ITO粉体の含有量が3g/m以下で、熱線の遮蔽に有効な1500nm以上の赤外線を20%以下にカットでき、赤外線遮蔽膜・赤外線遮蔽材料基材として有用であるからである。
また、一般的に、当該 ((τ)/ (τ))の値は、当該赤外線遮蔽膜の膜厚に比例するため、赤外線遮蔽膜の膜厚を厚くすれば、((τ)/ (τ))>1.2を満たすこと
ができる。尤も、赤外線遮蔽膜の膜厚を厚くし過ぎると、可視透過率(τ)が下がるため、可視透過率80%以上の高い可視透明性を維持するのが困難になる。
本実施形態に係る赤外線遮蔽膜はITO粉体の含有量が5g/m以下、好ましくは3g/m以下で上記条件を満たすことが可能である。
(実施例1)
純インジウム換算で、インジウム濃度が22.99質量%の硝酸インジウム水溶液(In(NO)293.6gと、塩化錫(SnCl2HO)13.6gとを秤量し、純水に溶解して、硝酸インジウムと塩化錫との混合溶液1.5Lを調製した。なお、当該混合溶液において錫の濃度はインジウムと錫の合計に対して10mol%となっている。
一方、濃度25質量%のNH水溶液256gを純水2100gで希釈し、液温を50℃とした。尚、当該NH水溶液において、NH量は、前記塩化インジウムと塩化錫との混合溶液を中和するのに必要な量の2倍当量である。
当該NH水溶液を撹拌し、ここに前記塩化インジウムと塩化錫との混合溶液を3分間かけて添加し、錫含有水酸化インジウムの懸濁液とした。生成した錫含有水酸化インジウムの懸濁物を濾過収集し、純水で洗浄して、錫含有水酸化インジウムケーキ212gを得た。
当該錫含有水酸化インジウムケーキを130g秤量してセパラブルフラスコに充填し、さらにテトラエチレングリコールを400ml添加して撹拌し、錫含有水酸化インジウムケーキをテトラエチレングリコール中に分散させた。ここで、当該テトラエチレングリコール中へ窒素ガスを、30分間バブリングにより吹き込み、セパラブルフラスコ内をガスパージした。なお、反応容器は開放系の反応容器を用いるため、仕込みから反応まですべて大気圧下で行われる。当該窒素吹き込みと併行して、撹拌回転数を300rpmに設定して当該テトラエチレングリコールを攪拌した。ここで、加熱を開始するとともに、テトラエチレングリコール中へ水蒸気を0.2ml/min、および、窒素ガスを0.2L/minの条件でバブリングにより通気しつつ、室温から260℃まで2℃/minの昇温速度で加熱し、260℃に到達後2時間保持した。
加熱、保温が終了したら、セパラブルフラスコ内容物を室温まで冷却した後、これを取り出して加圧濾過器により、固液分離を行い、液体部分であるテトラエチレングリコールを分離した。尚、反応終了時のセパラブルフラスコ内容物の色は青色をしており、酸素欠陥を有するITO粒子の生成が確認できた。 また、セパラブルフラスコ内容物を目開き20μmの篩に通したが、篩の上部に残る凝集物は確認されなかった。このことから、当該ITO粒子には径が20μmを超える粒子が存在していないことが確認できた。得られた固形成分であるITOスラリーへ、今度は、洗浄液としてイソプロパノールを添加して洗浄を行った後、固液分離を行って、当該ITO粒子を洗浄した。当該「洗浄液添加−固液分離」による洗浄を1洗浄単位として、ITOスラリーを洗浄し、洗浄を終了した。
<生成したITO粒子の粒子特性の評価>
イソプロパノール洗浄後のITOスラリーを、大気中200℃で2時間乾燥させ、実施例1に係るITO粉体を得た。この実施例1に係るITO粉体に対し、BET測定(比表面積)、XRD測定、ITO粒子表面を被覆している有機物が含んでいる炭素量の測定、乾燥したITO粒子試料の200℃から400℃における重量減少率を測定した。すると、BET径は、BET値38.5m/gから、21.8nmであること、生成物中に含まれる炭素量は0.85質量%であることと、生成した粒子は酸化インジウムの単一相であることが判明した。
尚、BET比表面積は、測定器としてカンタクロム社製のMONOSORBを用い、B.E.T式1点法により求めた。BET径は、下記(式3)により求めた。
BET径=6/(ρ×10×BET値)×10・・・(式3)
但し、ρ:粒子の密度=7.2g/cm
含有炭素量の測定には、測定器として堀場製作所製 EMIA−U510を用いた。
XRD測定において、X線源はCoのKα1線を用いた。
<ITO塗料の調製と評価>
イソプロパノール洗浄後のITOスラリー5.5gを、水4gとエチレングリコール10.5gとの混合溶媒に溶解し、超音波バス中で1時間分散させ、実施例1に係るITO塗料を得た。
実施例1に係るITO塗料100gを孔径が1μmのフィルター(ミリポア社製マイレクスFA50)に通過させたところ、フィルターの目詰まりを起こすことなく全量が通液することを見出した。このことから、当該ITO塗料には粒子径が1μmを超える粒子が存在していないことが確認できた。
また、実施例1に係るITO塗料におけるITO粒子の分散性評価として、実施例1に係るITO塗料に対し、遠心分離機を用いて3000rpm、30分間の沈降性評価を行ったところ、沈降層と透明な上澄み層への分離はみられなかった。
さらに、ITO塗料の表色をJISZ8722で準じた反射物体色をL、a、b表色系で評価した。
その結果、Lは0.28、aは11.62、bは−20.17であった。
<調製したITO塗料の塗膜化>
ガラス基板(コーニング社製 1737ガラス:28×28×0.7mm)を、スピンコーター(ABLE社製)により、当該回転するガラス基板へ実施例1に係るITO塗料2mlを滴下し、500rpmの回転数で10秒間回転させ、当該ITO塗料にてコートした。尚、実施例1に係るITO塗料は、ITO粒子濃度が20質量%となるように調整されたエチレングリコール・水分散液である。
当該ITO塗料によるコート後、ガラス基板を60℃で10分間大気乾燥させた。乾燥後、当該ITO塗料がコートされたガラス基板を、大気雰囲気にて100℃まで昇温させ
て20分間保持した後、自然冷却し、実施例1に係るITO塗布ガラス基板を得た。得られた実施例1に係るITO塗布ガラス基板のITO塗膜の膜厚はSEMでの膜の断面観察から980nmであった。
ここで、ITO塗膜中のIn濃度を確認するため、当該ITO塗料を200℃で乾燥させた乾燥物のIn濃度を測定したところ74.24質量%であった。
<ITO塗布ガラス基板の表面抵抗値の測定>
作製した実施例1に係るITO塗布ガラス基板の表面抵抗値を測定した。測定には三菱化学社製のロレスタHP MCP−T410を用い、四端子法にて測定した。測定値は、4.3×10Ω/□であった。
本実施例に係るITO塗布ガラス基板は抵抗値が高いものの導電性を持ち、赤外遮蔽効果とともに帯電防止効果も得られた。
<ITO塗布ガラス基板上のITO塗膜量の算出>
作製した実施例1に係るガラス基板上のITO粒子の塗膜量の算出には、塗膜基板上に付着するITO塗膜を酸に溶解させ、Inの濃度を分析し、Inの重量値からITO塗膜の膜重量を算出した。
上述したように、塗膜したITO塗膜中に含まれるIn濃度は74.24質量%である。従って、実施例1に係わる28mm×28mm角ガラス上のIn重量は2.61mgであるので、1mあたりのITO粉体の含有量を算出すると、2.61×10−3(g)÷0.7424÷(0.028×0.028)(m)=4.48(g/m)と、算出できる。
<ITO塗布ガラス基板のヘイズ、可視光透過率、日射透過率の測定>
作製した実施例1に係るITO塗布ガラス基板のヘイズの値、および、可視光透過率、日射透過率を測定した。ヘイズ値の測定には、測定器として日本電色社製の濁度計:NDH2000を用いた。可視光透過率および日射透過率の測定には、島津製作所製の分光光度計UV−3100PCを用い波長200〜3000nmの透過率を測定した。そして、JIS R3106に準拠して、波長380〜780nmの可視光透過率(τ)、および、波長300〜2100nmの日射透過率(τ)を求めた。
当該測定結果を表1に示す。
尚、ITO塗膜を塗布しないガラス基板のみの場合、ヘイズ値は0.17%、全光線透過率は91.7%、日射透過率は91.9%であった。
(実施例2〜5)
実施例2においては、実施例1と同様のITO塗料を使用し、スピンコーターの回転数を調整して、実施例1とは異なる膜厚620nmの塗布膜を作製した。
以下、同様に、実施例3では膜厚400nmの塗布膜、実施例4では膜厚340nmの塗布膜、実施例5では膜厚270nmの塗布膜を作製した。
作製された実施例2〜5に係る塗布膜に対し、実施例1と同様に、ヘイズ値、可視光透過率(τ)、日射透過率(τ)の測定を行った。当該測定結果を表1に示す。
(実施例6)
上述した実施例1と同様に、セパラブルフラスコ内で錫含有水酸化インジウムケーキをテトラエチレングリコール中に分散させ、当該テトラエチレングリコールを260℃で2時間保持し反応させた。加熱、保温が終了したら、セパラブルフラスコ内容物を室温まで冷却した後、これを取り出して固液分離を行い、液体部分であるテトラエチレングリコールを分離した。
しかし、得られた固形成分であるITOスラリーに対し、イソプロパノール添加による洗浄を行わなかった。その後、実施例1と同様にして、ITOスラリーを大気中200℃
で2時間乾燥させ、実施例6に係るITO粉体を得た。
得られた実施例6に係るITO粉体に対し、実施例1と同様に、BET測定、XRD測定、ITO粒子表面を被覆している有機物が含んでいる炭素含有量の測定を行った。この結果、BET径は23.9nmであること、生成物中に含まれる炭素量は2.80質量%であること、生成した粒子は酸化インジウムの単一相であることが判明した。
さらに、実施例6に係るITOスラリー5.5gを、水4gとエチレングリコール10.5gとの混合溶媒に溶解し、超音波バス中で1時間分散させ、実施例6に係るITO塗料を得た。
実施例6に係るITO塗料100gを孔径が1μmのフィルター(ミリポア社製マイレクスFA50)に通過させたところ、フィルターの目詰まりを起こすことなく全量が通液することを見出した。このことから、当該ITO塗料には粒子径が1μmを超える粒子が存在していないことが確認できた。
また、実施例6に係るITO塗料におけるITO粒子の分散性評価として、実施例6に係るITO塗料に対し、遠心分離機を用いて3000rpm、30分間の沈降性評価を行ったところ、沈降層と透明な上澄み層への分離はみられなかった。
さらに、ITO塗料の表色をJISZ8722で準じた反射物体色をL、a、b表色系で評価した。
その結果、Lは0.37、aは13.74、bは−23.08であった。
実施例6に係る得られたITO塗料を、実施例1と同様にスピンコーターの回転数を調整して、膜厚420nmの塗布膜を作製した。
作製された塗布膜に対し、実施例1と同様に、ヘイズ値、可視光透過率(τ)、日射透過率(τ)の測定を行った。当該測定結果を表1に示す。
(実施例7)
上述した実施例1と同様に、セパラブルフラスコ内で錫含有水酸化インジウムケーキをテトラエチレングリコール中に分散させ、当該テトラエチレングリコールを260℃で2時間保持し反応させた。加熱、保温が終了したら、セパラブルフラスコ内容物を室温まで冷却した後、これを取り出して固液分離を行い、液体部分であるテトラエチレングリコールを分離した。
得られた固形成分であるITOスラリーへ、今度は、洗浄液としてイソプロパノールを添加して洗浄を行った後、固液分離を行って、当該ITO粒子を洗浄した。当該「洗浄液添加−固液分離」による洗浄を1洗浄単位として、ITOスラリーを20洗浄単位洗浄し、洗浄を終了した。
その後、実施例1と同様にして、ITOスラリーを大気中200℃で2時間乾燥させ、実施例7に係るITO粉体を得た。
得られた実施例7に係るITO粉体に対し、実施例1と同様に、BET測定、ITO粒子表面を被覆している有機物が含んでいる炭素含有量の測定を行った。この結果、BET径は21.4nmであること、生成物中に含まれる炭素量は0.34質量%であることが判明した。
さらに、実施例7に係るイソプロパノール洗浄後のITOスラリー5.5gを、水4gとエチレングリコール10.5gとの混合溶媒に溶解し、超音波バス中で1時間分散させ、実施例7に係るITO塗料を得た。
実施例7に係るITO塗料100gを孔径が1μmのフィルター(ミリポア社製マイレクスFA50)に通過させたところ、フィルターの目詰まりを起こすことなく全量が通液することを見出した。このことから、当該ITO塗料には粒子径が1μmを超える粒子が
存在していないことが確認できた。
また、実施例7に係るITO塗料におけるITO粒子の分散性評価として、実施例7に係るITO塗料に対し、遠心分離機を用いて3000rpm、30分間の沈降性評価を行ったところ、沈降層と透明な上澄み層への分離はみられなかった。
さらに、ITO塗料の表色をJISZ8722で準じた反射物体色をL、a、b表色系で評価した。
その結果、Lは0.76、aは18.76、bは−29.47であった。
実施例7に係る得られたITO塗料を、実施例1と同様にスピンコーターの回転数を調整して、膜厚390nmの塗布膜を作製した。
作製された塗布膜に対し、実施例1と同様に、ヘイズ値、可視光透過率(τ)、日射透過率(τ)の測定を行った。当該測定結果を表1に示す。
(比較例1)
実施例1と同様に錫含有水酸化インジウムケーキを作製した。当該錫含有水酸化インジウムケーキを、大気中200℃、2時間で乾燥させた後、還元性雰囲気下において600℃で焼成した。そして、当該焼成物を、2次粒子径が20μm以下になるように粉砕して、比較例1に係るITO粉体を得た。尚、前記還元性雰囲気としては、NHとHとの混合ガスを窒素ガスなどの不活性ガスで希釈したものを用いた。
得られた比較例1に係るITO粉体に対し、実施例1と同様に、BET測定、XRD測定、ITO粒子表面を被覆している有機物が含んでいる炭素含有量の測定を行った。この結果、BET径は29.2nmであること、生成物中に含まれる炭素量は0.13質量%であること、生成した粒子は酸化インジウムの単一相であることが判明した。
さらに、還元後に得られた比較例1に係る青色系のITO粒子4.0gを、エチレングリコール10.5g、水4.0g、イソプロパノール1.5gの混合溶媒中に投入し、ビーズミルにて1時間分散させて比較例1に係るITO塗料を得た。
当該比較例1に係るITO塗料に対し、遠心分離機を用いて3000rpm、30分間の沈降性評価を行ったところ、実施例に係るITO塗料と異なり、沈降層と透明な上澄み層への分離が見られた。そこで、当該比較例1に係るITO塗料は、塗料としての安定性に問題があると考えられた。
ここで、比較例1に係るITO塗料の表色系(L、a、b)の測定を行った。その結果、当該ITO塗料のLは29.07、aは−5.03、bは−28.47であった。
比較例1に係るITO塗料100gを、孔径が1μmのフィルター(ミリポア社製マイレクスFA50)に通過させたところ、フィルターの目詰まりが起こり殆ど通過できなかった。このことから、当該ITO塗料には径が1μmを超える粒子が多数存在していることが確認できた。
また、実施例と同様に、1000rpmのスピンコーターによってITO塗布ガラス基板を作製した。得られたガラス基板上の、比較例1に係るITO塗膜の膜厚を測定すると750nmであった。また、実施例と同様に、比較例1に係るITO塗膜のヘイズ値、可視光透過率、日射透過率について測定を行った。当該測定結果を表1に示す。
(比較例2および3)
比較例1と同様のITO塗料を使用し、スピンコーターの回転数を調整して、比較例1と異なる膜厚の塗布膜を作製した。比較例2では380nm、比較例3では210nmの膜厚の赤外線遮蔽膜を作製した。
比較例2および3に係るITO塗膜のヘイズ値、可視光透過率、日射透過率について測
定を行った。当該測定結果を表1に示す。
(比較例4)
実施例1と同様に作製した錫含有水酸化インジウムケーキを、100℃で6時間、大気中で乾燥した。
当該錫含有水酸化インジウムケーキを乾燥させた以外は実施例1と同様にして、比較例4に係るITO塗料とITO粉体とを得た。
得られた比較例4に係るITO塗料に対し、実施例1と同様に20μmの篩を通過させて凝集物評価を行った。すると、当該20μmの篩の上部に凝集物が確認された。このことから、当該ITO塗料には径が20μmを超える凝集粒子が存在していることが確認できた。
Figure 0005564207
(実施例1〜7および比較例1〜4のまとめ)
実施例1〜7および比較例1〜3に係るITO塗料の、表色におけるLの値は、実施例1〜7に係るITO塗料のLの値は、比較例1〜3に係る塗料よりも低い。当該結果は、実施例1〜7に係るITO塗料が、比較例1〜3に係る塗料よりも分散性が良好であることによると考えられる。
他方、比較例4に係るITO塗料は、20μmを超える凝集粒子が存在していることからITO塗料としては適していないと考えられる。
次に、図1を参照しながら実施例1〜5に係る赤外線遮蔽膜の光学特性について説明する。
図1は、縦軸に透過率をとり、横軸に光の波長をとり、実施例1〜5係る赤外線遮蔽膜の透過率をプロットした分光透過曲線のグラフである。尚、当該赤外線遮蔽膜の透過率を明確化するため、使用したガラス基材の透過率も併せてプロットした。
図1のデータから、実施例1〜5に係る赤外線遮蔽膜は、熱線の遮蔽に有効な1500nm以上の赤外線を20%以下にカットできる高い赤外遮蔽性を有していることが判明した。さらに、実施例1〜5に係る赤外線遮蔽膜は、可視光透過率は80%以上と高透明性を有していることも判明した。
さらに、表1の結果から、実施例1〜7および比較例1〜3に係る赤外線遮蔽膜を比較すると、従来製法で得られる比較例1〜3に係る赤外線遮蔽膜は、ITO粉体量が3g/
以下では、((τ)/(τ))の値が1.2を超えない。これに対し、実施例1〜
5に係る赤外線遮蔽膜は、ITO粉体量が1.2g/m以上で((τ)/(τ))の
値が1.2以上あり、非常に赤外線遮蔽効率が高いことが判明した。
当該結果を、図2を参照しながら、さらに説明する。
図2は、図1と同様に縦軸に透過率をとり、横軸に光の波長をとったグラフに、同量のITO粉体含有量を有する、実施例2と比較例1とに係る赤外線遮蔽膜の透過率をプロットした分光透過曲線のグラフである。尚、当該赤外線遮蔽膜の透過率を明確化するため、使用したガラス基材の透過率も併せてプロットした。
図2より、可視光領域においては、実施例2、比較例1ともほぼ同等の透過率を示している。しかし、実施例2に係る赤外線遮蔽膜の透過率が、近赤外光領域から赤外光領域にかけて急速に低下するのに対し、比較例1に係る赤外線遮蔽膜の透過率低下は、長波長側にずれていることが解る。当該近赤外光領域から赤外光領域にかけての、実施例2と比較例1とに係る赤外線遮蔽膜の透過率の差が、実施例2の((τ)/(τ))値:1.3
1と、比較例1の((τ)/(τ))値:1.17の差になったと考えられる。
以上、詳細に説明したように、本発明に係る実施例1〜7に係る赤外線遮蔽膜は、可視光透過率が80%以上、ヘイズ値が0.5以下と、高透明性・低ヘイズ値な膜が得られ、かつ、ITO粉体の含有量が3g/m以下でも、熱線の遮蔽に有効な1500nm以上の赤外線を20%以下にカットできる高い赤外遮蔽性を有する膜である。
つまり、ITO粒子表面に有機物が付着している実施例1〜7に係るITO粉体を含むITO塗料では、ITO粒子の分散性が向上している。この結果、当該ITO塗料により成膜される赤外線遮蔽膜は、緻密な膜が形成され、高透明性(可視透過率)、低ヘイズ値を維持し、且つ、ITO粉体の使用量を1/2に低減させることが出来た。

Claims (8)

  1. 表面が有機物で被覆された赤外線遮蔽材料粒子を含む赤外線遮蔽材料であって、
    当該赤外線遮蔽材料粒子を被覆している有機物の炭素含有量が、当該赤外線遮蔽材料の0.2質量%以上、5質量%以下である赤外線遮蔽材料。
    但し、当該有機物は沸点が150℃以上でOH基を2つ以上有する多価アルコールであって、当該赤外線遮蔽材料粒子の粒子形成段階において赤外線遮蔽材料粒子の表面に被覆されたものである。
  2. 前記赤外線遮蔽材料がITOである請求項1に記載の赤外線遮蔽材料。
  3. 前記赤外線遮蔽材料を200℃から400℃へ加熱した際の重量減少率が、0.5%以上10%以下である請求項1または2に記載の赤外線遮蔽材料。
  4. 前記赤外線遮蔽材料は、球状、立方状、直方状のいずれかの形状を有し、BET比表面積が10m/g以上60m/g以下の粒子を含む請求項1から3のいずれかに記載の赤外線遮蔽材料。
  5. 請求項1から4のいずれかに記載の赤外線遮蔽材料を含有する赤外線遮蔽用塗料。
  6. 請求項5に記載の赤外線遮蔽用塗料を塗布して得られた赤外線遮蔽膜。
  7. 赤外線遮蔽膜におけるITO粉体の含有量が5g/m以下、可視光透過率が80%以上であって、(可視光透過率/日射透過率)の値が1.2以上である請求項6に記載の赤外線遮蔽膜。
  8. 透明基体に請求項6または7に記載の赤外線遮蔽膜が設けられた赤外線遮蔽基材。
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