JP4617493B2 - 酸化物超電導合成粉およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高い臨界電流密度を得ることができるBi(Pb)2223系酸化物超電導線材を製造する際に用いる、酸化超電導合成粉およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、酸化物超電導体を線材化する際の主な作製方法として以下の方法がある。
1.PIT(Powder in Tube)法
2.コーティング法
3.薄膜法
次に、それぞれの方法の概要について説明する。
【0003】
1.のPIT法とは、酸化物超電導体と一緒に加熱しても、その酸化物超電導体と反応を起こさない金属をマトリクスとして準備する(例えばAg、またはAg合金)。次にこの金属でチューブを作製し、その中に前記酸化物超電導体の粉末を充填する。そして、伸線、圧延および熱処理を繰り返しながら細線へと加工していく方法である。
このPIT法は、主に(BiPb)2Sr2Ca2Cu3Ox系の酸化物超電導線材を製造するのに適した方法である。
何故なら、Bi系酸化物超電導体は結晶粒が板状に成長する特徴があり、ここへPIT法のような長手方向へ引き延ばす手法を適用すると、板状結晶粒が長手方向に揃いやすくなる。一方、超電導電流は板状結晶の長手方向に流れやすい性質を持っているので、PIT法により良好な超電導特性を有する線材を比較的安価に製造することができる。
【0004】
2.のコーティング法とは、酸化物超電導体の粉末に適宜な有機バインダーを添加してペースト状にした後、Agテープの表面にコーティングし、これを熱処理して線材を得る方法である。この方法は主にBi2Sr2Ca1Cu2Oy系の酸化物超電導線材を製造するのに適した方法である。
【0005】
3.の薄膜法とは、まず金属テープ線材上に、酸化物超電導体と格子定数が近い、反応性が少ない等の相性の良い中間層を成膜し、その中間層上に酸化物超電導体層を積層して線材とする方法である。この方法は主にY1Ba2Cu3Oz系の酸化物超電導線材を製造するのに適した方法である。何故ならY1Ba2Cu3Oz系の酸化物超電導体はBi系酸化物超電導体と比較して、結晶及び結晶成長の2次元性が弱いので例えば前記PIT法の適用は困難である。
この薄膜法においては中間層の性質が超電導特性に大きな影響を与える。例えば、IBAD(Ion Beam Assist Deposition)法により中間層としてYSZの2次元膜を形成させたことにより、その上に蒸着成膜されたY1Ba2Cu3Oz系の酸化物超電導体の超電導特性が劇的に向上することが確認されている。しかし、長尺線材製造技術が未だ開発途上であり、現在のところ実用に必要な長さの線材は得られていない。
【0006】
以上、現在の代表的な酸化物超電導線材の製造方法について説明したが、製造の容易性、製造コスト、および超電導特性を勘案して最も実用レベルに近いと考えられるのは1.のPIT法である。
現在のところ、臨界電流密度が20,000〜25,000A/cm2のものまで得られているが、実用的には35,000A/cm2以上の特性が望まれている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
マトリクスとしてAgまたはAg合金を用いたPIT法において、さらに臨界電流密度を上げようと試みる場合、前記金属チューブに充填される酸化物超電導体の粉末、すなわち酸化物超電導合成粉の有する諸特性によって、最終的に得られる酸化物超電導線材の臨界電流密度、等の超電導特性が大きく変化することが知られている。
しかし、どの様な特性を有する酸化物超電導合成粉を用いれば、高い臨界電流密度を有する酸化物超電導線材を得ることができるのかは、いまだに明らかになっていない。
本発明は上述の背景のもとでなされたものであり、主に(BiPb)2Sr2Ca2Cu3Ox系の酸化物超電導線材において臨界電流密度の向上に大きく寄与する、酸化物超電導合成粉とその製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上述の課題を解決するために、本発明者らが鋭意研究した結果、酸化物超電導合成粉が満たすべき特性として、X線回折装置を用いX線としてCuKα線を用い、入射角θでX線照射をおこなった際、Ca2PbO4の(110)面のピークとCa2PbO4(020)面のピークとの間である、2θで17.70°〜17.90°にピークを有する物質を含有していることが重要であることを見出し、本発明を完成したものである。
【0009】
すなわち第1の発明は、マトリクスとしてAgまたはAg合金を用いるBi−Pb−Sr−Ca−Cu系酸化物超電導線の製造の際に用いられる酸化物超電導合成粉であって、
X線回折装置を用いて、前記酸化物超電導合成粉にCuKα線を照射した際の回折X線強度の測定結果を、縦軸を回折X線強度とし、横軸を回折角度とするグラフに表した場合に、
Ca2PbO4の(110)面のピークとCa2PbO4(020)面のピークとの間に、Ca2PbO4(110)面のピーク強度を100とした場合に3以上のピーク強度比を有するピークが存在することを特徴とする酸化物超電導合成粉である。
【0010】
第2の発明は、前記CuKα線の照射において、入射角θをもって照射した際、
Ca2PbO4の(110)面のピークとCa2PbO4(020)面のピークとの間に存在するピークが2θで17.70°〜17.90°の位置にあることを特徴とする第1の発明にかかる酸化物超電導合成粉である
【0011】
第3の発明は、前記CuKα線の照射において、Ca2PbO4の(110)面のピークとCa2PbO4(020)面のピークとの間にPbOのピークが存在することを特徴とする第1の発明にかかる酸化物超電導合成粉である。
【0012】
第4の発明は、第1から第3の発明のいずれかにかかる酸化物超電導合成粉を用い、且つマトリクスとしてAgまたはAg合金を用いて作製したことを特徴とする酸化物超電導線である。
【0013】
第5の発明は、前記酸化物超電導合成粉の製造方法であって、
Bi化合物、Pb化合物、Sr化合物、Ca化合物およびCu化合物の粉末を混合し、温度750〜850℃、時間10〜20時間、酸化性ガスフロー中にて焼成することを特徴とする第1から第3の発明にかかる酸化物超電導合成粉の製造方法である。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、上述の課題を解決するために、様々な試行錯誤を続けた結果、以下に記載するような方法で酸化物超電導合成粉を製造すると、これを用いた酸化物超電導線材において臨界電流密度の向上に大きく寄与するすることを発見した。
以下、まずその製造方法について説明する。
【0015】
(原料準備および混合工程)
Bi化合物、Pb化合物、Sr化合物、Ca化合物およびCu化合物の粉末を所望のモル比となるように混合する。このとき、Bi化合物としてはBi2O3が、Pb化合物としてはPbOが、Sr化合物としてはSrCO3が、Ca化合物としてはCaCO3、CaO、Ca(OH)2が、Cu化合物としてはCuOが好ましかった。
また上述の原料以外でも、湿式共沈法等にてBi、Pb、Sr、Ca、Cuの各元素を所要のモル比になるよう調製した原料も好ましかった。
【0016】
(仮焼工程)
混合した原料粉末を次の条件で仮焼した。
仮焼温度は600〜1,000℃より好ましくは750〜850℃で、仮焼時間は3〜50時間、仮焼雰囲気は大気(酸素分圧20%)あるいはそれ以上の酸素分圧を有するガスを仮焼炉の内容積1立方メートルに対して少なくとも50ml/min以上のフローを保つこととした。
この工程により仮焼粉を得た。
【0017】
(粉砕・乾燥工程)
仮焼工程で得られた仮焼粉を、Zrボール等の粉砕メディア、トルエン等の有機溶媒と共にセラミックスポットに入れて、回転台にセットしボール粉砕をおこなった。この粉砕のねらいは、仮焼粉を細かく粉砕して均一性を向上させるとともに、次工程の焼成における熱的反応性を上げることが目的である。
粉砕が完了したスラリー状の仮焼粉は乾燥機で乾燥させる。
【0018】
(再仮焼工程)
乾燥が完了した仮焼粉を再度仮焼する。
仮焼温度、仮焼時間、および仮焼雰囲気は最初の仮焼工程と同条件とした。
この工程により再仮焼粉を得た。
【0019】
(再粉砕・乾燥工程)
再仮焼工程で得られた再仮焼粉を、再度、粉砕・乾燥した。
粉砕・乾燥条件は最初の粉砕・乾燥工程と同条件とした。
【0020】
(再仮焼、再粉砕・乾燥の繰り返し実施工程)
乾燥が完了した再仮焼粉は、この後も適宜、再仮焼、再粉砕・乾燥の各工程を繰り返し実施して、目的とする酸化物超電導合成粉試料を得た。
【0021】
(酸化物超電導合成粉試料の特性測定、回折X線強度の測定)
上述の酸化物超電導合成粉製造工程で得られた酸化物超電導合成粉試料に対し、線材化してその超電導特性を測定すると同時に、X線回折装置を用いて、前記酸化物超電導合成粉にCuKα線を照射した際の回折X線強度の測定結果と、超電導特性との関係を検討した。
この検討の結果、本発明者は以下に記載するような、回折X線強度の測定結果と超電導特性との関連を突き止めることに成功した。
【0022】
図1に、良好な超電導特性を有していた酸化物超電導合成粉試料の、2θが17°〜19°の範囲における回折X線強度を示す。
但し、図1は粉末試料への入射角θに対する回折角2θ横軸にとり、回折X線の強度を縦軸にとったチャートを示すグラフである。
回折X線強度は、Ca2PbO4の(110)面のピークすなわち2θ:約17.6°(以下「ピーク▲1▼」と記載する。)、Ca2PbO4の(020)面のピークすなわち2θ:18.1°(以下「ピーク▲2▼」と記載する。)、および2θ:17.8°(以下「ピーク▲3▼」と記載する。)に、主な3個のピークを有していた。
(但し、前記ピーク値の値は、X線回折装置の機種、校正方法等の差により±1%程度変動する。)
このうちピーク▲3▼の存在とその強度が試料の超電導特性と大きな相関を有する一方、酸化物超電導合成粉試料の製造工程によりその強度が大きく変化することを見出し、本発明を完成したものである。
【0023】
すなわち、前記酸化物超電導合成粉試料を線材化した際に、ピーク▲3▼の存在が確認できない試料を線材化した場合、臨界電流密度は9,600A/cm2であるのに対し、ピーク▲1▼の強度を100とした場合に、ピーク▲3▼の強度の比が3以上ある試料を線材化した場合、臨界電流密度は31,000A/cm2以上の著しい向上を示すのである。
さらに、前記ピーク▲1▼の強度を100とした場合に、ピーク▲3▼の強度の比が8以上ある試料を線材化した場合、臨界電流密度は実用的に望まれる35,000A/cm2を超えて37,000A/cm2以上を示し、強度の比が28ある試料を線材化した場合、臨界電流密度は52,000A/cm2以上を示すことも判明した。
ここで、ピーク▲1▼とピーク▲3▼との強度の比を求める方法について図1、2を用いて説明する。
但し、図2とは図1に、後述するピーク▲1▼とピーク▲3▼との強度比を算出する過程を記載したものである。
まず、図1において、[ピーク▲1▼の回折X線強度]=ピーク▲1▼の強度+バックグラウンド、[ピーク▲3▼の回折X線強度]=ピーク▲3▼の強度+ピーク▲3▼の位置におけるピーク▲1▼の裾の部分の強度+バックグラウンド、と考えられる。
ここでバックグラウンドの値は、ピークの存在しない、2θが18.99°〜19.00°の範囲における回折X線強度の平均値とする。(この値を図2において2点鎖線で記載した。)
次に、ピーク▲3▼の位置におけるピーク▲1▼の裾の部分の強度は、ピーク▲1▼にローレンツ関数を当てはめ、その関数のピーク3の位置、2θ=17.8°における強度を算出することで求めることが出来る。(ローレンツ関数の値を図2において点線で記載した。)
(このようにして ピーク▲1▼とピーク▲3▼の強度は、図2における実線の部分として求められる。)
すなわち、ピーク▲1▼とピーク▲3▼との強度比は、以下のように算出すればよい。
強度比=[(ピーク▲3▼の回折X線強度−ピーク▲3▼の位置におけるピーク▲1▼の裾の部分の強度−バックグラウンド)/(ピーク▲1▼の回折X線強度−バックグラウンド)]×100
そして、このピーク▲3▼の強度はPbOの存在を示唆していることから、本発明における、前記臨界電流密度の著しい向上にはPbOの存在が重要な働きをしていると考えられる。
【0024】
一方、前記酸化物超電導合成粉試料の製造工程により、ピーク▲3▼の強度は大きく変動し、後述する製造条件を満足しない場合はピーク▲3▼を有しない試料となってしまうのである。
この前記ピーク▲1▼とピーク▲3▼との強度の比が3以上ある酸化物超電導合成粉試料は、仮焼工程において、大気(酸素分圧20%)あるいはそれ以上の酸素分圧を有するガスのフローを保ちながら試料を仮焼した際に顕著に生成するのである。
そして、前記ガスのフローは十分な量を保つとともに、初回の仮焼開始から最後の仮焼終了まで継続しておこなうことが必要である。すなわち、試料を熱処理しているしている際は、常に前記ガスのフローを保つことが重要である。
反対に、外部との雰囲気のやり取りのない密閉空間、または窒素100%、Ar100%といった非酸化性ガスのフロー下においては、前記ピーク▲3▼の強度比が3以上ある試料は生成しないことも判明した。
【0025】
上述した酸化物超電導合成粉試料の生成機構、および超電導特性への寄与の機構は、完全には明らかでないが、おおよそつぎのように推論される。
すなわちPbを含有しない、いわゆるBi2223系超電導体は、短時間の焼成では、120K付近の臨界温度を有する高温相への単相化が非常に困難である。しかしここへPbを添加しBi(Pb)2223系とすることでこの問題点を解決できることが知られている。
一方、Pbを添加することで、試料の熱処理温度、時間によって、Ca2PbO4、PbO、PbO2、Pb3O4、Pb2O3等の様々なPb化合物が生成する。
【0026】
ここで、前記酸化物超電導合成粉試料の存在形態は、前記Bi2223系の高温相の単相ではなく、Bi(Pb)2212系、Ca2PbO4、CaCuO2を主とした未反応相の混合として構成されている。このような未反応相で構成された酸化物超電導合成粉試料がAgまたはAg合金チューブに充填され、圧延、伸線、熱処理等の各処理を繰り返す過程で、高温相であるBi(Pb)2223系への単相化が進行するのである。
この過程において、従来その役割が重視されてこなかったPbOが、所定量以上存在すると、マトリクスであるAgまたはAg合金との界面において、前記高温相の生成反応が安定化され、この部分における超電導特性が大きく改善されるとともに、界面以外の部分においてもBi(Pb)2223系への単相化が良好且つ完全に近いかたちで進行するのではないかと考えられる。
そして、上記工程により調製された酸化物超電導合成粉を用いて、例えばPIT法にて酸化物超電導線を作製すれば、高い臨界電流密度を有する酸化物超電導線を得ることが出来る。
【0027】
(実施例)
純度3N以上、メディアン粒径で1〜数μmのBi2O3、PbO、SrCO3、CaCO3、CuOの各原料粉末をBi:Pb:Sr:Ca:Cu=1.85:0.35:1.90:2.05:3.05の組成比となるよう秤量し、混合する。
次に、混合した原料粉末を次の条件で仮焼した。
仮焼温度は750〜850℃で、仮焼時間は10〜20時間、仮焼雰囲気は100%の酸素ガスとし、仮焼炉の内容積1立方メートルに対して、図5に示すように、5l/min、2l/min、1l/min、0.5l/min、0.1l/min、および0.05l/min、のフローを保ち6種類の仮焼粉を得た。
この仮焼粉を、Zrボール等の粉砕メディア、有機溶媒(トルエン)と共にセラミックスポットに入れて、回転台にセットしボール粉砕をおこなった後、乾燥機で乾燥させた。
本実施例においては、この仮焼−粉砕−乾燥の操作サイクルを同条件の下で3回繰り返しておこない、図5に示す6種類の酸化物超電導合成粉試料(試料1〜6)を得た。
【0028】
次に、この6種の試料に対し、線材化してその超電導特性を測定する、と同時に回折X線強度の測定を実施した。
まず、超電導特性の測定について説明する。
前記6種の試料のそれぞれを1.2g秤量し、中空部が3.8φ×95mmL肉厚が10mmの円筒状ゴム型に充填した。ゴム型の両端開口部をゴム栓で密閉し、水の侵入を防ぐためにビニールテープを用いて隙間を塞いでから、冷間静水圧プレス(CIP)を用いて最大圧力1.5ton/cm2で加圧成形し、約1.95φ×90mmLの成形体を得た。
この成形体を、内径2.0mmφ、外径3.0mmφ×100mmLのAgパイプの中に挿入し、伸線、圧延の後、835〜845℃でトータル150時間の熱処理を加えることにより、幅約5.0mm、厚さ約0.2mmのテープ状をしたAgシース酸化物超電導線材を得た。この線材において、断面の超電導部分の領域は、幅約4.0mm、厚さ約0.07mmであった。
尚、測定は4端子法を用い、電圧端子間に1μV/cmの電圧が発生したときの電流値を臨界電流値と定義した。
この結果を図5に示す。
【0029】
次に、X線回折装置による回折X線強度の測定について説明する。
X線回折装置として(株)リガク製、RINT−1000を用い下記の条件を設定した。
前記6種の試料のそれぞれを4g秤量し、15mmφの金型に充填する。そして、一軸圧5kg/cm2で加圧圧粉したものを回折X線強度の測定用試料とし、前記X線回折装置にて測定をおこなった。その測定結果を図3に示す。またこの測定結果より、ピーク▲1▼の強度を100とした場合のピーク▲3▼の強度の比を求めた結果を図5に示した。
以上の結果より、ピーク▲3▼の強度の比が3以上ある試料を線材化した場合、臨界電流密度は31,000A/cm2以上の著しい向上を示すことが判明した。
さらに、前記ピーク▲1▼の強度を100とした場合に、ピーク▲3▼の強度の比が8以上ある試料を線材化した場合、臨界電流密度は実用的に望まれる35,000A/cm2を超えて37,000A/cm2以上を示し、強度の比が28ある試料を線材化した場合、臨界電流密度は52,000A/cm2以上を示すことも判明した。
【0030】
(比較例)
Bi2O3、PbO、SrCO3、CaCO3、CuOの各原料粉末をBi:Pb:Sr:Ca:Cu=1.85:0.35:1.90:2.05:3.05の組成比となるよう秤量し、混合する。
次に、混合した原料粉末を次の条件で仮焼した。
仮焼温度は750〜850℃で、仮焼時間は10〜20時間、外部との雰囲気流通のない密閉炉中でおこない、仮焼粉を得た。
得られた仮焼粉に対し、実施例と同条件にて、仮焼−粉砕−乾燥の操作サイクルを繰り返しておこない、比較例試料を得た。
【0031】
比較例試料に対し、実施例試料と同様に線材化してその超電導特性を測定する、と同時に回折X線強度の測定を実施した。
その結果、臨界電流値は27A、臨界電流密度は9,600A/cm2であり、回折X線強度の測定結果は図4のようであった。
以上のことより、 Ca2PbO4の(110)面のピークとCa2PbO4(020)面のピークとの間に、Ca2PbO4(110)面のピーク強度を100とした場合に3以上のピーク強度比を有するピークが存在しない酸化物超電導合成粉試料を線材化しても、臨界電流密度の高いものを得ることは出来なかった。
【0032】
【発明の効果】
以上詳述したように、PIT法によって製造される酸化物超電導線材の臨界電流密度、等の超電導特性を向上させることを目的とし、(BiPb)2Sr2Ca2Cu3Ox系の酸化物超電導合成粉であって、前記合成粉にCuKα線を用いた回折X線強度の測定をおこなった際、2θで17.75°〜17.85°にピークを有することを特徴とする合成粉を用いることで、前記酸化物超電導線材の臨界電流密度を大きく向上させることが実現でき、実用レベルに迄到達することが出来た。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例にかかる(BiPb)2Sr2Ca2Cu3Ox系酸化物超電導合成粉における回折X線強度の測定結果例のチャートを示すグラフである。
【図2】本発明の実施例にかかる(BiPb)2Sr2Ca2Cu3Ox系酸化物超電導合成粉における回折X線強度の測定結果より、ピーク強度の比を求める方法を記載したグラフである。
【図3】本発明の実施例にかかる、酸化物超電導合成粉試料1〜6における回折X線強度の測定結果例のチャートを示すグラフである。
【図4】本発明の比較例にかかる(BiPb)2Sr2Ca2Cu3Ox系酸化物超電導合成粉における回折X線強度の測定結果例のチャートを示すグラフである。
【図5】本発明の実施例にかかる、酸化物超電導合成粉試料1〜6の調製において、仮焼の際における雰囲気の酸素ガスフロー量と、得られた試料のピーク強度比と、得られた試料から作製された酸化物超電導線材の臨界電流値および臨界電流密度と、の関係を記載した表を示す図である。
Claims (2)
- マトリクスとしてAgまたはAg合金を用いるBi−Pb−Sr−Ca−Cu系酸化物超電導線の製造の際に用いられる酸化物超電導合成粉であって、X線回折装置を用いて、前記酸化物超電導合成粉にCuKα線を照射した際の回折X線強度の測定結果を、縦軸を回折X線強度とし、横軸を回折角度とするグラフに表した場合に、Ca2PbO4の(110)面のピークとCa2PbO4(020)面のピークとの間に、Ca2PbO4(110)面のピーク強度を100とした場合に3以上のピーク強度比を有するPbOのピークが存在し、当該PbOのピークが2θで17.70°〜17.90°の位置にあることを特徴とする酸化物超電導合成粉。
- 前記酸化物超電導合成粉の製造方法であって、Bi化合物としてBi 2 O 3 、Pb化合物としてPbO、Sr化合物としてSrCO 3 、Ca化合物としてCaCO 3 、CaO、Ca(OH) 2 から選択される1種以上、および、Cu化合物としてCuOの粉末を混合し、温度750〜850℃、時間10〜20時間、大気(酸素分圧20%)あるいはそれ以上の酸素分圧を有するガスフロー中にて焼成することを特徴とする請求項1に記載の酸化物超電導合成粉の製造方法。
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JP2002208322A (ja) | 2002-07-26 |
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