図1は、本発明の実施形態による車両の概略構成図である。図1に示すように、車両は、エンジン(ENG)2と、自動変速機(TM)4と、油圧回路(CV)6と、電子制御ユニット(ECU)8と、スロットル開度センサ10と、エンジン回転数センサ12と、メインシャフト回転数センサ14と、カウンタ軸回転数センサ16と、油温センサ17と、油圧SW18と、シフト操作装置20と、シフトレバー20aを含む。
エンジン2の出力を変速して車輪に伝達する自動変速機4により動力伝達機構が構成される。この自動変速機4の変速制御は、油圧回路6への油圧制御信号により行われ、油圧回路6の作動はECU8からの変速・トルコン制御信号(以下、制御信号)により後述するソレノイドバルブを作動させて行われる。
油圧回路6は、メイレギュレータバルブ、シフトバルブ群、Dインヒビッターバルブ、カットバルブ群、コントロールバルブ群、オン・オフソレノイドバルブ群及びリニアソレノイドバルブ群からなるソレノイドバルブ群、並びにこれらのバルブ間を接続する油路から構成される。変速クラッチ及びロックアップクラッチの係合は、ECU8からのオン・オフソレノイドバルブ群及びリニアソレノイドバルブ群に入力される制御信号に基づいて行われる。
エンジン2のスロットル弁にはスロットル開度センサ10が連結されており、スロットル弁の開度に応じて電気信号を出力する。エンジン回転数センサ12は図2中のエンジン出力軸Esの回転数NEを検出して対応する電気信号を出力する。入力軸回転数センサ14は図2中の入力軸31,32の回転数NMを検出する。カウンタ軸回転数センサ16は図2中のカウンタ軸33の回転数NCを検出する。図示しない車速センサは車速Vを検出する。油温センサ17は油圧回路6の作動油の温度を検出して対応する電気信号を出力する。
油圧SW18は、所定のクラッチに対して油圧回路6に設けられ、該クラッチの実油圧が所定の目標油圧に達した場合に油圧SW信号をオンにする。センサ10,12,14,16,17のセンサ出力値はECU8に入力される。また、油圧SW18からの油圧SW信号はECU8に入力される。
シフトレバー20aは、図示しない車両運転席付近に設けられて、車両の運転者の操作によって、例えば、8種のレンジ、P,R,N,D5,D4,D3,2,1のいずれかが選択される。シフト操作装置20は、運転者によるシフトレバー20aの操作により選択されたポジションを示す信号を出力する。シフト操作装置20より検出されたポジションを示す信号はECU8に入力される。シフトレバー20aはケーブルを介して油圧回路6のマニュアルバルブと繋がり、シフトレバー20aの操作に応じてマニュアルバルブのスプールを移動させる。
ECU8は次のようにして自動変速機4の変速を制御する。(1)各ポジション(P,R,N)に応じて油圧回路6中の該当するオン・オフソレノイドバルブ及びリニアソレノイドバルブを制御することにより、変速クラッチの係合を制御する。(2)ポジションDであるとき、車速V及びスロットル開度THから、シフトマップを検索し、車速V及びスロットル開度THに応じた行先段(変速段)を選択する。現在係合している現在段と行先段が異なるとき、現在段(OFF側クラッチ)及び行先段(ON側クラッチ)に対応するオン・オフソレノイドバルブをONするとともに、準備、トルク相、イナーシャ相及びエンゲージにおいて、OFF側クラッチ及びON側クラッチのクラッチ油圧指令値(以下、油圧指令値)QOF,QONを算出する。油圧指令値QON,QOFに応じた制御信号をON,OFF側クラッチに対応するリニアソレノイドバルブに出力する。更に、所定のアップシフトでは、例えば、LOW−2ND,2ND−3RDでは、油圧SW18からの油圧SW信号に基づいて、制御する。(3)変速終了後には定常状態とするべく現在段のクラッチに対応するオン・オフソレノイドバルブをONするとともに、必要に応じてリニアソレノイドバルブに制御信号を出力する。(4)車両の走行状態に応じて、ロックアップクラッチLCの係合を制御するために、対応するオン・オフソレノイドバルブのON/OFFをするとともにリニアソレノイドバルブに制御信号を出力する。
まず、自動変速機4の構成を図2及び図3に基づいて説明する。この自動変速機4は、変速機ハウジング20内に、エンジン出力軸Esに繋がるトルクコンバータ22(インペラ22a、タービン22b及びステータ22cからなる)と、トルクコンバータ22のタービンシャフト31に繋がった平行軸式変速機構4と、この変速機構4の終減速駆動ギヤ36aと噛合する終減速従動ギヤを有した図示しないデファレンシャル機構を配設して構成されており、デファレンシャル機構から左右の車輪に駆動力が伝達される。
エンジン出力軸Esはトルクコンバータ22のインペラ22aに接続され、トルクコンバータ22のタービン22bはタービンシャフト31(前後進切換機構24の第1入力シャフト31)と繋がる。さらに、このトルクコンバータ22はエンジン出力軸Esとタービン22bとを直接接続可能なロックアップクラッチLCを有する。
平行軸式変速機4は、互いに平行に延びた第1入力軸31、第2入力軸32、カウンタ軸33及びアイドル軸35を有して構成され、これら各軸の軸線位置は図3においてS1,S2,S3及びS5で示す位置にそれぞれ配置されている。この平行軸式変速機構4の動力伝達構成が図2(A)及び図2(B)に示されており、図2(A)は図3の2A−2Aに沿って第1入力軸31(S1)、カウンタ軸33(S3)及び第2入力軸32(S2)を通る断面を示しており、図2(B)は図3の2B−2Bに沿って第1入力軸31(S1)、アイドル軸35(S5)及び第2入力軸32(S2)を通る断面を示している。
第1入力軸31はトルクコンバータ20のタービン22bに連結されており、ベアリング71a,71bにより回転支持され、タービン22bからの駆動力を受けてこれと同一回転する。第1入力軸31には、トルクコンバータ22側(図における右側)から順に、5速駆動ギヤ55a、5THクラッチ45、4THクラッチ44、4速駆動ギヤ44a、リバース駆動ギヤ46a及び第1連結ギヤ41が配設されている。
5速駆動ギヤ55aは第1入力軸31の上に回転自在に配設されており、油圧力により作動される5THクラッチ45により第1入力軸31と係脱される。また、4速駆動ギヤ54a及びリバース駆動ギヤ56aは一体的に連結されると共に第1入力軸31の上に回転自在に配設されており、油圧力により作動される4THクラッチ44により第1入力軸31と係脱される。第1連結ギヤ61は第1入力軸31を回転自在に支持するベアリング71aの外側に位置して、片持ち状態で第1入力軸31と結合されている。
第2入力軸32はベアリング72a,72bにより回転支持され、この軸上には、図における右側から順に、2NDクラッチ42、2速駆動ギヤ52a、LOW駆動ギヤ51a、LOWクラッチ41、3RDクラッチ43、3速駆動ギヤ53a及び第4連結ギヤ64が配設されている。
2速駆動ギヤ52a、LOW駆動ギヤ51a及び3速駆動ギヤ53aはそれぞれ第2入力軸32の上に回転自在に配設されており、油圧力により作動される2NDクラッチ42、LOWクラッチ41及び3RDクラッチ43により第2入力軸32と係脱される。第4連結ギヤ64は第2入力軸32と結合されている。
図2(B)に示されるように、アイドル軸35はベアリング75a,75bにより回転支持され、この軸と一体に第2連結ギヤ62及び第3連結ギヤ63が配設されている。第2連結ギヤ62は第1連結ギヤ63と噛合し、第3連結ギヤ63は第4連結ギヤ64と噛合している。これら第1〜第4連結ギヤにより連結ギヤ列60が構成され、第1入力軸31の回転が連結ギヤ列60を介して第2入力軸32に常時伝達される。
カウンタ軸33はベアリング73a,73bにより回転支持され、この軸上には、図における右側から順に、終減速駆動ギヤ36a、2速従動ギヤ52b、LOW従動ギヤ51b、5速従動ギヤ55b、3速従動ギヤ53b、4速従動ギヤ54b、ドグ歯式クラッチ46及びリバース従動ギヤ56cが配設されている。
終減速駆動ギヤ36a、2速従動ギヤ52b、LOW従動ギヤ51b、5速従動ギヤ55b及び3速従動ギヤ53bはカウンタ軸33に結合されており、これと一体回転する。4速従動ギヤ54bはカウンタ軸33の上に回転自在に配設されている。
また、リバース従動ギヤ56cもカウンタ軸33の上に回転自在に配設されている。ドグ歯式クラッチ46が軸方向に作動されて、4速従動ギヤ54bとカウンタ軸33と係脱させたり、リバース従動ギヤ56cとカウンタ軸33とを係脱させたりすることができる。なお、図示のように、LOW駆動ギヤ51aとLOW従動ギヤ51bとが噛合し、2速駆動ギヤ52aと2速従動ギヤ52bとが噛合し、3速駆動ギヤ53aと3速従動ギヤ53bとが噛合し、4速駆動ギヤ54aと4速従動ギヤ54bとが噛合し、5速駆動ギヤ55aと5速従動ギヤ55bとが噛合する。さらに、リバース駆動ギヤ56aは図示しないアイドラギヤを介してリバース従動ギヤ56cと噛合する。
以上のような構成の変速機において、各速度段の設定及びその動力伝達経路について以下に説明する。なお、この変速機においては、前進レンジにおいてはドグ歯式クラッチ46が図において右方向に移動されて4速従動ギヤ54bとカウンタ軸33とが結合される。一方、後進(リバース)レンジにおいては、ドグ歯式クラッチ46が左方向に移動されてリバース従動ギヤ56cとカウンタ軸33とが係合される。
まず、前進レンジにおける各速度段について説明する。LOW速度段はLOWクラッチ41を係合させて設定される。トルクコンバータ22から第1入力軸31に伝達された回転駆動力は、連結ギヤ列60を介して第2入力軸32に伝達される。
ここで、LOWクラッチ41が係合されているため、LOW駆動ギヤ51aが第2入力軸32と同一回転で駆動され、これと噛合するLOW従動ギヤ51bが回転駆動され、カウンタ軸33が駆動される。この駆動力は終減速ギヤ列を介して図示しないデファレンシャル機構に伝達される。
2速段は2NDクラッチ42を係合させて設定される。トルクコンバータ22から第1入力軸31に伝達された回転駆動力は、連結ギヤ列60を介して第2入力軸32に伝達される。ここで、2LDクラッチ42が係合されているため、2速駆動ギヤ52aが第2入力軸32と同一回転で駆動され、これと噛合する2速従動ギヤ52bが回転駆動され、カウンタ軸33が駆動される。この駆動力は終減速ギヤ列を介して図示しないデファレンシャル機構に伝達される。
3速段は3RDクラッチ43を係合させて設定される。トルクコンバータ22から第1入力軸31に伝達された回転駆動力は、連結ギヤ列60を介して第2入力軸32に伝達される。ここで、3RDクラッチ43が係合されているため、3速駆動ギヤ53aが第2入力軸32と同一回転で駆動され、これと噛合する3速従動ギヤ53bが回転駆動されて、カウンタ軸33が駆動される。この駆動力は終減速ギヤ列を介して図示しないデファレンシャル機構に伝達される。
4速段は4THクラッチ44を係合させて設定される。トルクコンバータ22から第1入力軸31に伝達された回転駆動力は、4THクラッチ44を介して4速駆動ギヤ54aを回転駆動させ、これと噛合する4速従動ギヤ54bを回転駆動する。
ここで、前進レンジにおいては、ドグ歯式クラッチ46により4速従動ギヤ54bがカウンタ軸33と係合されているため、カウンタ軸33が駆動され、この駆動力は終減速ギヤ列を介して図示しないデファレンシャル機構に伝達される。
5速段は5THクラッチ45を係合させて設定される。トルクコンバータ22から第1入力軸31に伝達された回転駆動力は、5THクラッチ45を介して5速駆動ギヤ55aを回転させ、これと噛合する5速従動ギヤ55bを回転駆動する。5速従動ギヤ55bはカウンタ軸33と結合されているため、カウンタ軸33が駆動され、この駆動力は終減速ギヤ列を介して図示しないデファレンシャル機構に伝達される。
一方、後進(リバース)段は、4THクラッチ44を係合させると共にドグ歯式クラッチ46を左方向に移動させて設定される。トルクコンバータ22から第1入力軸31に伝達された回転駆動力は、4THクラッチ44を介してリバース駆動ギヤ56aを回転駆動させ、図示しないリバースアイドラギヤを介してこのアイドラギヤと噛合するリバース従動ギヤ56cを回転駆動する。
ここで、後進(リバース)レンジにおいては、ドグ歯式クラッチ46によりリバース従動ギヤ56cがカウンタ軸33と係合されているため、カウンタ軸33が駆動され、この駆動力は終減速ギヤ列を介して図示しないデファレンシャル機構に伝達される。このことから判るように、4THクラッチ44はリバースクラッチの作用を兼用する。
以上のような構成の自動変速機において、トルクコンバータ制御及び変速制御を行わせるバルブ群を構成する油圧回路6を図4に示している。この油圧回路図において、油路が開放しているところはドレン(オイルタンク(OT))に繋がる。
この装置は、オイルタンクOTの作動油を吐出するオイルポンプOPを有しており、オイルポンプOPはエンジンにより駆動されて油路130に作動油を供給する。油路130は油路130aを介してメインレギュレータバルブ80に繋がり、ここで調圧されて油路130,130aにライン圧PLが発生する。
このライン圧PLは油路130bを介してマニュアルバルブ88に供給される。油路130bは、マニュアルバルブ88のポートを介して油路130dと常時繋がっており(マニュアルバルブ88の作動の如何に拘わらず常に繋がっており)、油路130dを介してライン圧PLが第1〜第4オン・オフソレノイドバルブ111〜114及び第1リニアソレノイドバルブ116に常時供給される。
メインレギュレータバルブ80においてライン圧PLを調圧した余剰油は油路221に供給され、更に油路222に供給される。油路221に供給された余剰油は、ロックアップシフトバルブ81、ロックアップコントロールバルブ82、トルクコンバータチェックバルブ83により制御され、トルクコンバータ22のロックアップクラッチLCの係合制御及び作動油供給に用いられ、この後、オイルクーラー84を通ってオイルタンクOTに戻される。油路222に供給された余剰油は、潤滑リリーフバルブ85により調圧されて各部の潤滑油として供給される。
この油圧回路図においては、上述の変速機を構成するLOWクラッチ41、2NDクラッチ42、3RDクラッチ43、4THクラッチ44、5THクラッチ45を示しており、各クラッチにはそれぞれLOWアキュムレータ105、2NDアキュムレータ106、3RDアキュムレータ107、4THアキュムレータ108、5THアキュムレータ109が油路を介して繋がっている。また、ドグ歯式クラッチ46を作動させるための前後進選択油圧サーボ機構100を備える。
これら各クラッチ41〜45及び前後進選択油圧サーボ機構100への作動油圧供給制御を行うため、第1シフトバルブ90、第2シフトバルブ92、第3シフトバルブ94、第4シフトバルブ96、Dインヒビターバルブ98、第1カットバルブ120、第2カットバルブ122が図示のように配設されている。また、ロックアップクラッチLCの係合制御を行うため、ロックアップシフトバルブ81、ロックアップコントロールバルブ82、トルクコンバータチェックバルブ83が図示のように配設されている。
そして、これらのバルブの作動制御及び各クラッチ等への供給油圧制御を行うため、第1〜第4オン・オフソレノイドバルブ111〜114と、第1〜第3リニアソレノイドバルブ116〜118が図示のように配設されている。油圧SW18として、符号142,143で示す油圧SWが2NDクラッチ42及び3RDクラッチ43に対して設けられている。油圧SW142は2NDクラッチ42が繋がる油路152に繋がっている。油圧SW143は3RDクラッチ43が繋がる油路153に繋がっている。
図6はECU8の自動変速機の制御に係る機能ブロック図である。ECU8はロックアップ制御手段250と変速制御手段252を含む。ロックアップ制御手段250は、ロックアップクラッチLCの係合を制御する。変速制御手段252は、P,R,N制御手段260と、D制御手段262を含む。D制御手段262は、主制御手段270と、アップシフト制御手段272と、ダウンシフト制御手段274と、定常制御手段276を含む。
各速度段の設定は、シフト操作装置20のシフトレバー20aの操作、もしくは車速V及びスロットル開度THに基づきシフトマップを検索した結果に対応してマニュアルバルブ88のスプール88aが移動されて油路の切り替えが行われるとともに、変速制御手段252により第1〜第4オン・オフソレノイドバルブ111〜114及び第1〜第3リニアソレノイドバルブ116〜118の作動を図5に示すように設定して行われる。なお、これら第1〜第4オン・オフソレノイドバルブ111〜114及び第1〜第3リニアソレノイドバルブ116〜118はノーマルクローズタイプのソレノイドバルブであり、通電時(オン時)に開放作動され信号油圧を発生させる。
図5において、符号×及び○はそれぞれソレノイドが通電オフ及びオンとなることを意味する。図5のオン・オフソレノイドバルブの欄において、符号A〜Dがそれぞれ第1〜第4オン・オフソレノイドバルブ111〜114を意味する。
第1及び第2カットバルブの欄における「セ」及び「作」はセット状態及び作動状態を示す。さらに、クラッチ油圧供給欄における1,2,3,4,5はそれぞれLOWクラッチ41、2NDクラッチ42、3RDクラッチ43、4TH(リバース)クラッチ44、5THクラッチ45を示し、上述の説明から明らかなようにリバースクラッチと4THクラッチは同一クラッチ44が兼用する。
図5のクラッチ油圧供給欄において、PLはライン圧PLが供給されることを意味し、A〜Cは第1〜第3リニアソレノイドバルブ116〜118を意味する。さらに、サーボ位置欄は前後進選択油圧サーボ機構100がR(後進)及びD(前進)のいずれか側に作動されるかを示している。
図5において、ポジションはシフトレバー20aの操作位置及びマニュアルバルブ88の作動位置を示し、このポジションとしては、駐車(P)ポジション、後進(R)ポジション、中立(N)ポジション及び前進(D)ポジションが少なくとも設けられて、本実施形態では更に前進ポジションとしてもう3つのポジションが設けられている。なお、図4においては、マニュアルバルブ88がNポジションに位置した状態を示している。
P,R,N制御手段260は、シフトレバー20aが駐車(P)ポジション、後進(R)ポジション、中立(N)ポジションである場合には、図5に示すように、各ポジションでのモードに従って、第1〜第4オン・オフソレノイドバルブ111〜114及び第1〜第3リニアソレノイドバルブ116〜118への通電を制御する。
D制御手段262は、前進(D)ポジションである場合に、図5に示すように、変速クラッチの制御を行うが、油圧回路6の動作説明の詳細は省略する。なお、シフトレバー20aが前進(D)ポジションに操作されているときには、図5に示すような10種類のモードが設定される。
アップシフト時の変速制御を詳細に説明する。主制御手段270は、シフト操作装置20からのポジションを示す信号、若しくは車速V及びスロットル開度センサ10より検出されたスロットル開度THから、車速及びスロットル開度と変速段の関係を示すシフトマップを検索して得られた行先段と現在段とを比較して、アップシフト/ダウンシフト/シフトなしのいずれであるかを判断する。アップシフトの場合は、アップシフト制御手段272が実行されるよう制御する。ダウンシフトの場合は、ダウンシフト制御手段274が実行されるよう制御する。シフトなしの場合は、定常制御手段276が実行されるよう制御する。
アップシフト制御手段272は、図7に示すように、準備制御手段280と、トルク相制御手段282と、イナーシャ相制御手段284と、エンゲージ制御手段286を有する。準備制御手段280は、ON側クラッチに対する無効ストローク詰め作業を実施する。例えば、(1)準備開始時点でSFTMONに11hを代入する。SFTMONは変速状態を示すカウンタであり、hは16進を示す。(2)行先段のクラッチに対する油圧指令値QON(ON準備圧)QDB1A及び準備時間TMDB1Aを算出する。具体的には、クラッチ回転数(入力軸回転数NM)及び油温センサ17により検出された油温TATFから準備データベースを検索し、ON準備圧QDB1A及び準備時間TMDB1Aを算出する。ON準備圧QDB1Aを油圧指令値QONとし、油圧指令値QONに対応する制御信号を油圧回路6に出力する。(3)後述する入力軸推定トルクTTAPに余裕加算トルク値#dTQUTRFを加算して得た値をOFF棚トルクTQOFとする。OFF棚トルクTQOFに相当する油圧指令値QOFを算出し、油圧指令値QOFに対応する制御信号を油圧回路6に出力する。(4)準備時間TMDB1Aを準備タイマ(ダウンカウンタ)にセットして時計計時を開始する。(5)図9に示すように、準備開始時刻t1〜準備終了時刻t2までの準備時間TMDB1Aは油圧SW18からの油圧SW信号を見ないゾーンZN1であるとし、油圧SW信号を見ないように制御する。(6)準備終了するとSFTMON=20hをセットする。
トルク相制御手段282は、図8に示すように、油圧SW誤動作判定手段300と、油圧SW信号ON判定手段302と、油圧SW信号ON相当時刻算出手段304と、ONトルク相圧算出手段306と、OFFトルク相圧算出手段308と、油圧特性データベース310を有する。
油圧SW誤動作判定手段300は、図9中のトルク相開始時点t2から一定の時間内はON側実油圧が不安定でありこの間の油圧SW信号のオンは実油圧が所定の目標油圧(#QUTSWG)に安定した状態で到達しておらず誤っていること及び油圧SW18がオン側に故障している場合にはトルク相開始時点t2から油圧SW18が油圧SW信号をオン出力することから、トルク相開始時点t2から所定時間#TMUTSWGが経過する時刻t3までは油圧SW誤動作判定ゾーンZN2であるとし、油圧SW誤動作判定タイマに#TMUTSWGをセットして時計計時を開始する。
油圧SW誤動作判定タイマがタイムアウトするまでに油圧SW信号のオンが油圧SW18より出力された場合には、油圧SW18の誤動作であると判定し、ONトルク相圧算出手段306及びOFFトルク相圧算出手段308に通知、例えば、油圧SW誤動作フラグをセットする。所定時間#TMUTSWGは、固定値でも良いが、トルク相開始時点からの油圧が不安定である時間が依存するパラルータ、例えば、ON側クラッチの油圧特性、油温TATF等から算出するようにしても良い。
油圧SW信号ON判定手段302は、油圧SW誤動作判定手段300により油圧SW誤動作判定ゾーンZN2内で油圧SW18の誤動作が判定されず、所定時間#TMUTSWG経過後(油圧SW誤動作判定タイマがタイムアウト)に出力される油圧SWON信号を検出し、油圧SWON信号が検出されると、ON圧作動判断フラグをセットし、ON側クラッチ圧算出手段306及びOFF側クラッチ圧算出手段308にその旨を通知する。尚、油圧SW信号ON判定手段302は、図9に示すように、油圧SW誤動作判定ゾーンZ2の直後t3〜トルク相開始時刻t2から後述の油圧SWON相当時間TDMB2C+所定時間#TMUTSWHが経過した時刻t7までを油圧SW信号ON判定ゾーンZN3として、油圧SW信号を判定する。所定時間#TMUTSWHは、油圧SW18がOFF故障している場合には、油圧SW信号がONされないことから、トルク相開始時刻t2から(TMDB2C+#TMUTSWH)すると強制的にイナーシャ相に移行するための時間でもある。
油圧SWON相当時刻算出手段304は、トルク相開始時刻t2から油圧SW信号がオンする(ONクラッチの実油圧が目標油圧#QUTSWGに到達する)時刻t5までの時間(油圧SWON相当時間)TMDB2Cを算出し、油圧SWON相当タイマに油圧SWON相当時間TMDB2Cをセットして時計計時を開始する。例えば、図9のように、トルク相を待機及びブーストで油圧指令値を切り換える場合には、変速モード、待機でのトルク相圧#QUTAHA、ブーストでのトルク相圧QUTA1、入力軸回転数NM及び油温TATFから油圧特性データベース310を検索し、該当する油圧SWON相当時間TMDB2Cを算出する。油圧SW信号ON判定手段302により、油圧SW誤動作フラグがセットされている場合には、油圧SW信号が使用できないため、油圧SWON相当タイマがタイムアウトすると、ON圧作動判断フラグを設定し、ON側クラッチ圧算出手段306及びOFF側クラッチ圧算出手段308にその旨を通知する。
ONトルク相算出手段306は、次の機能を有する。(1)トルク相開始時点t2において、SFTMONに21hをセットする。(2)トルク相開始時点t2において、変速モード、入力軸回転数NM及び油温TATFから、油圧特性データベース310を検索し、トルク相開始時点t2のトルク相圧#QUTAHA及び待機時間#TMUTAHAを算出する。(3)トルク相開始時点t2において、入力軸推定トルクTTAPに基づいて、図9に示すように、トルク相終了時刻t6での目標トルクTQUTA1を算出し、目標トルクTQUTA1に相当するGt圧QUTA1を算出する。(4)トルク相開始時点t2において、変速モード、入力軸回転数NM、油温TATF、トルク相圧#QUTAHA及びGt圧QUTA1から、油圧特性データベース310を検索し、トルク相開始時点t2からトルク相終了時点t6までのトルク相制御時間TMDB2Aを算出する。(5)トルク相開始時点t2において、待機時間#TMUTAHAを待機制御タイマにセットして時間計時を開始する。(6)待機では、トルク相圧#QUTAHAに対応する制御信号を油圧回路6に出力する。(7)ブーストでは、トルク相圧QUTA1に対応する制御信号を油圧回路6に出力する。(8)ON作動判断フラグが最初に設定されると、SFTMON=22hをセットするとともに、(TMDB2A−TMDB2C)をイナーシャ開始タイマにセットして時間計時を開始する。イナーシャ開始タイマの経過時間に応じてON側クラッチトルクTQONを算出する。(9)トルク相終了時点でSFTMON=30hをセットする。
OFFトルク相算出手段308は、次の機能を有する。次の機能を有する。(1)トルク相開始時点t2からON圧作動判定フラグがセットされるまでの間は、入力軸推定トルクTTAPに余裕加算トルク値#dTQUTRFを加算して得た値をOFFトルクTQOFとし、TQOFに相当する油圧指令値QOFを算出し、油圧指令値QOFに対応する制御信号を油圧回路6に出力する。(2)SFTMON=22hになると、トルク相終了時刻まで、ON側クラッチトルクTQON及び現在のOFF側クラッチトルクTQOFからOFF側クラッチトルクTQOFを算出する。TQOFに相当する油圧指令値QOFを算出し、油圧指令値QOFに対応する制御信号を油圧回路6に出力する。
油圧特性データベース310は、油圧SWON相当時間TMDB2C、トルク相制御時間TMDB2A等が変速モード、入力軸回転数NM及び油温TATF等について、実験に基づいて格納されたデータベースである。
入力軸推定トルクTTAPはエンジン回転数NEからその変化に使用されたイナーシャ相開始時点のエンジンイナーシャトルクDTEIを算出し、算出されたエンジンイナーシャトルクDTEI及び変速開始時点でのエンジン回転数NEに対する入力軸回転数NMの比(NM/NE)で示されるトルコントルク比KTRLATより、トルコン滑り率とトルコントルク比の関係を記憶したマップを検索して得られたトルコン滑り率ETRに対応するトルクコンバータ22のトルコントルク比KTRLATを用いて入力軸推定トルクTTAPを次式(1)により推定する。
TTAP=(TQGAIR−DTEI)*KTR ・・・ (1)
但し、TQGAIRは制御時点のエンジン出力推定トルクであり、DTEIは制御時点のエンジンイナーシャトルクである。KTRは制御時点のトルコントルク比である。エンジン出力推定トルクは、例えば、エンジン2への吸入空気量及びエンジン回転数NEに基づいて、算出する。
イナーシャ相制御手段284は、入力軸推定トルクTTAPに基づいて変速ショック軽減の観点より、ON側クラッチトルクTQONを算出する。例えば、イナーシャ相前側クラッチトルクTQUIA0=TTAP*{1+KGUIA0*((#RATIOn/#RATIOm)−1)}、イナーシャ相第1中間クラッチトルクTQUIA1=TTAP*{1+KGUIA1*((#RATIOn/#RATIOm)−1)}、イナーシャ相第2中間クラッチトルクTQUIA2=TTAP*{1+KGUIA2*((#RATIOn/#RATIOm)−1)}、イナーシャ相後側クラッチトルクTQUIA3=TTAP*{1+KGUIA3*((#RATIOn/#RATIOm)−1)}を算出し、TQUIA0,TQUIA1,TQUIA2,TQUIA3及び制御時点の入出力回転数比GRATIOに基づいて、ON側クラッチトルクTQONを算出する。
入出力回転数比GRATIOとは、入力軸回転数NMとカウンタ軸NCの比を所定のテーブル(図示せず)にてテーブル換算した値である。このため、GRATIOはクラッチが完全に係合していれば各変速段のギヤ比を基準にした一定の範囲内に収束すると共に変速時においてはその進行度に応じて逐次変化することから、変速の進行度を示す指標とすることができる。従って、このGRATIOを用いることで、変速開始からの経過時間に関わらず、変速の進行度を正確に検出することができる。また、#RATIOnは現在段のギアレシオ、#RATIOmは行先段のギアレシオ、KGUIA0〜KGUIA3は変速ショック軽減の観点より決まる係数である。
そして、イナーシャ相の区間をGRATIOにより3区間に分ける。例えば、GRATIO(GA)に第1所定値を加算した値GRUIA1、GRATIO(GA)に第2所定値を加算した値GRUIA2、GRATIO(GB)に第3所定値を減算した値#GRUEAGを設定する。
GRATIO(GA)〜GRUIA1(SFTMON=31h)では、クラッチトルクTQUIA0,TQUIA1及び入力軸推定トルクTTAPに基づいて、ONトルクTQONを算出する。GRUIA1〜GRUIA2(SFTMON=32h)では、クラッチトルクTQUIA1,TQUIA2及び入力軸推定トルクTTAPに基づいて、ONトルクTQONを算出する。GRUIA2〜#GRUEAG(SFTMON=33h)では、クラッチトルクTQUIA2,TQUIA3及び入力軸推定トルクTTAPに基づいて、ONトルクTQONを算出する。
イナーシャ相の終了は、GRATIOが#GRUEAGよりも大となった時点である。ON側クラッチトルクTQONに相当する油圧指令値QONを算出し、油圧指令値QONに対応する制御信号を油圧回路6に出力する。また、OFFトルクTQOFを0とする。OFF側クラッチトルクTQOFに相当する油圧指令値QOFを算出し、油圧指令値QOFに対応する制御信号を油圧回路6に出力する。
エンゲージ制御手段286は、行先段クラッチが完全係合するために必要なエンゲージ油圧指令値QON及び現在段クラッチが完全係合解除する油圧指令値QOFを算出し、油圧指令値QON,QOFに対応する制御信号を油圧回路6に出力する。
図10〜図13は、自動変速機の制御方法の一例を示すフローチャートである。図10〜図13は一定周期、例えば、10msec毎に実行される。図14〜図16は自動変速機の制御に係るタイムチャートである。以下、これらの図面を参照して、アップシフト時の変速制御方法の説明をする。
図10中のステップS2で、シフト判断を行う。図11中のステップS20で車速V、スロットル開度THから、車速及びスロットル開度と変速段の関係を記憶したシフトマップを検索し、ステップS22で検索値を行先段(変速段)SHと書き換える。行先段は、シフトレバー20aによる選択によっても決定される。ステップS24で現在段をGAと書き換えるとともに、目標段SHを先行段GBと書き換える。ステップS26で変速モードQATNUMを検索する。変速モードは、11h(1速から2速へのアップシフト)、12h(2速から3速へのアップシフト)、21h(2速から1速へのダウンシフト)、31h(1速ホールド)等で示される。最初の文字が1であればアップシフトを、2であればダウンシフトを、3であればホールドを示す。
ステップ28でSFTMONを00hに初期化する。SFTMONは変速制御のためのカウンタであり、変速制御開始前は00h、準備で10h、11h,トルク相で20h,21h,22h,イナーシャ相で30h,31h,32h、33h、エンゲージで40h,41hと変化する。ステップS20〜S28は変速初回のみで実行され、それ以外はスキップされる。
図10中のステップS4で行先段と現在段とを比較して、変速有りか否かを判定する。肯定判定(変速有り)ならば、ステップS6に進む。否定判定(変速無し)ならば、定常制御を行う。ステップS6でUPシフトであるか否かを判定する。肯定判定(UPシフト)ならが、ステップS8に進む。ここでは、行き先段のクラッチに対して、油圧SW18が設けられている1−2速、又は2−3速の場合について説明する。否定判定(DOWNシフト)ならば、ステップS10に進み、DOWNシフト制御手段274がダウンシフトを制御する。
ステップS8で図12のUPシフト制御を行う。図12中のステップS50で変速初回(SFTMON=10h)であるか否かを判定する。肯定判定(変速初回)ならばステップS52に進む。否定判定ならば、ステップS54に進む。ステップS52で準備時間TMDB1Aを準備圧タイマにセットして時計計時を開始する。図14,15中の時刻t1,t11で準備圧タイマが時計計時を開始する。
(a) 準備
ステップS54で図13に示すOFF側クラッチの係合解除の開始判断を行うON圧作動判断をする。図13中のステップS100で準備圧タイマがタイムアウトしたか否かを判定する。肯定判定ならば、ステップS104に進む。否定判定ならば、ON圧作動判断を終了し、図12中のステップS56に進む。ここでは、準備圧タイマがタイムアウトしていないので、ON圧作動判断を終了し、図12中のステップS56に進む。ステップS56でON圧作動判断済みであるか否かを判定する。否定判定ならば、ステップS58に進む。肯定判定ならば、ステップS70に進む。ここでは、ON圧作動判断済みではないので、ステップS58に進む。ステップS58で準備圧タイマがタイムアウトしたか否かを判定する。否定判定ならば、ステップS60に進む。肯定判定ならば、ステップS62に進む。ここでは、準備期間であり、準備圧タイマがタイムアウトしないことから、ステップS60に進む。ステップS60で準備圧QDB1Aを油圧指令値QONとし、油圧指令値QONに相当する制御信号を油圧回路6に出力し、UPシフト制御を終了する。準備圧タイマがタイムアウトするまで、図12中のステップS50,S54,S56,S58,S60が実行される。尚、準備では油圧SW信号は見ない。
(b) トルク相
準備圧タイマがタイムアウトすると、図13中のステップS102で準備圧タイマ経過後の初回か否かが判定される。肯定判定ならば、ステップS104に進む。否定判定ならば、ステップS110に進む。ここでは、準備圧タイマ経過後の初回なので、ステップS104に進む。ステップS104で油圧SW誤動作判定時間#TMUTSWGを油圧SW誤動作判定タイマにセットして時計計時を開始する。図14,15中の時刻t2,t12で油圧SW誤判定タイマが時計計時を開始する。ステップS106で油圧特性データベース310を検索し、油圧SWON相当時間TMDB2C及び油圧SWガード時間(TMDB2C+#TMUTSWG)を算出し、TMDB2C,(TMDB2C+#TMUTSWG)を油圧SWONタイマ,油圧SWガードタイマにセットして時間計時を開始する。図14,15中の時刻t2,t12で油圧SW誤判定タイマ及び油圧SWガードタイマが時計計時を開始する。
ステップS110で油圧SW誤判定タイマがタイムアウトしたか否かを判定する。否定判定ならば、ステップS112に進む。肯定判定ならば、ステップS120に進む。ここでは、油圧SW誤判定タイマがタイムアウトしていないので、ステップS112に進む。
(b1) 油圧SW18の誤判定の場合
油圧SW18が誤判定をした場合を説明する。ステップS112で油圧SW信号がオンしたか否かを判定する。肯定判定ならば、ステップS114に進む。否定判定ならば、ON圧作動判断を終了する。ステップS114で油圧SW誤動作フラグをセットしてON圧作動判断を終了する。例えば、油圧SW18がON故障している場合には、図14中の時刻t2では油圧SW信号がONなので、油圧SW誤動作フラグがセットされる。また、連続変速された場合のように、実油圧が不安定である場合には、時刻t2〜t3までの間に油圧SW18がONすることがあり、このような場合にも、油圧SW誤動作フラグがセットされる。更に、図16中の破線で示す低油温時の実圧が示すように、低油温時では管路抵抗が増えるため、実際には、無効ストローク詰めが完了していないのに、油圧SW18がONすることがある。このような場合にも、油圧SW18の誤動作であると判断され、油圧SW誤動作フラグがセットされる。
図12中のステップS56でON圧作動判断済み(ON圧作動判断フラグがセット)であるか否かを判定する。否定判定ならば、ステップS58に進む。肯定判定ならば、ステップS70に進む。ここでは、ON圧作動判断済みではないので、ステップS58に進む。ステップS58で準備圧タイマがタイムアウトしたか否かを判定する。肯定判定ならば、ステップS62に進む。否定判定ならば、ステップS60に進む。ここでは、準備圧タイマがタイムアウトしているので、ステップS62に進む。ステップS62において、トルク相出力し、UPシフト制御を終了する。ここでは、待機(SFTMON=21h)であるので、ON,OFF相圧算出手段306,308がONトルク相圧QON,OFFトルク相圧QOFを算出し、QON,QOFに相当する制御信号を油圧回路6に出力する。待機では、油圧指令値QONがONトルク相圧QUTAHAとなり、待機終了するまで、ONトルク相圧QUAHAに相当する制御信号が油圧回路6に出力される。尚、ONトルク相圧QUATAはSW18がONする実油圧よりも低いため、待機が終了する図14中の時刻t4までは、ON圧作動判断フラグがセットされない。
待機が終了すると、ONトルク相圧算出手段306はブーストでの油圧指令値QONを算出し、QONに相当する制御信号を油圧回路6に出力する。また、図13中のステップS100,S102,S110,S112が実行され、油圧SW誤判定タイマがタイムアウトするまでに油圧SW信号がオンすると、油圧SW誤動作フラグがセットされる。ステップS100,S102,S110が実行され、図14中の時刻t3が経過して油圧SW誤判定タイマがタイムアウトすると、ステップS120で油圧SW誤動作フラグがオンであるか否かを判定する。肯定判定ならば、ステップS122に進む。否定判定ならば、ステップS130に進む。ここでは、油圧誤動作フラグがオンなので、ステップS122に進む。
ステップS122で油圧特性データベース310によるON圧作動判断を行う。ON圧作動判断は油圧SWON相当タイマがタイムアウトしたことにより行う。図14中の油圧SWON相当タイマがタイムアウトした時刻t5でON圧作動判断済みとする。ステップS124で油圧特性データベース310によるON圧作動判断済みであるか否かを判定する。肯定判定ならば、ステップS126に進む。否定判定ならば、ON圧作動判断を終了する。ステップS126でON圧作動判断フラグをセットする。ここでは、図14中の時刻t5でON圧作動判断フラグがセットされる。
図12中のステップS56でON圧作動判断済みであるか否かを判定する。否定判定ならば、ステップS58に進む。肯定判定ならば、ステップS70に進む。ここでは、ON圧作動判断フラグがセットされているので、ステップS70に進む。ステップS70でON圧作動判断初回であるか否かを判定する。肯定判定ならば、ステップS72に進む。否定判定ならば、ステップS74に進む。ステップS72で(トルク相制御時間TMDB2A−油圧SWON相当時間TMDB2C)をイナーシャ相移行タイマにセットして時間計時を開始する。ここでは、図14中の時刻t5でイナーシャ相移行タイマがセットされる。ON圧作動判断初回では、SFTMON=21hにセットされる。
ステップS74でイナーシャ相移行タイマがタイムアウトしたか否かを判定する。否定判定ならば、ステップS76に進む。肯定判定ならば、ステップS78に進む。ここでは、イナーシャ相移行タイマがタイムアウトしていないのでステップS76に進む。ステップS76で油圧SWガードタイマ経過したか否かを判定する。否定判定ならば、ステップS62に進む。肯定判定ならば、ステップS76に進む。ここでは、否定判定されて、ステップS62に進む。
ステップS62で、OFFトルク圧算出手段308は前回のOFF側クラッチトルクTQOF及びONトルク相圧算出手段306より算出された今回のONトルクTQONより今回のOFF側クラッチトルクTQOFを算出し、TQOFに対応する油圧指令値QOFを算出する。QOFに相当する制御信号を油圧回路6に出力することにより、OFF側クラッチの係合の解放を開始する。尚、本例では、ONトルク油圧指令値QONはブーストではQUTA1で一定である。イナーシャ相移行タイマがタイムアウトすると、ステップS78に進む。ステップS78でイナーシャ相制御手段284がイナーシャ相出力する。イナーシャ相が終了すると、エンゲージ制御手段286がエンゲージ圧を出力する。
このように、油圧SW18が誤動作していると判断されると、油圧特性データベース310による油圧SWON相当時間TMDB2Cに基づいて、OFF側クラッチの係合解除が制御されることから、油圧SW18のON故障等によるエンジン吹きに至ることが防止できる。
(b2) 油圧SW18の正常判定の場合
油圧SW18の油圧SW信号が正常である場合を説明する。ステップS120で油圧SW誤動作フラグがオンであるか否かが判定されるが、油圧SW誤動作フラグがオフなので、ステップS130に進む。ステップS130で油圧SW18がオンであるか否かを判定する。否定判定ならば、ON圧作動判断を終了する。肯定判定ならば、ステップS132に進む。ステップS132でON圧作動判断フラグをセットしてON圧作動判断を終了する。図15中の時刻t15で油圧SW18がONし、ON圧作動判断フラグがセットされる。図12中のステップS70,S72,S74,S76,S62,S78の処理は(b1)の場合と同様なので説明を省略する。このように、油圧SW18が誤動作をしていないと判断される場合には、油圧SW信号がオンした時点に基づいて、OFF側クラッチの係合開始の制御及びイナーシャ相開始の制御を行うので、実油圧に基づく正確な制御を行うことができる。
ルク相でのトルク相圧は、本実施形態に限らず、トルク相圧を1区間で一定とする方法、トルク相を3区間以上に分け、各区間でトルク相圧を一定又は入力軸推定トルクに基づきリニアに変化させる方法でも良く、また、油圧SWON相当時刻はその最初の区間にあっても他の区間にあっても良い。
以上説明したように、本実施形態によれば、実油圧が不安定な状態で油圧SW18がONした場合には、油圧特性データベース310に基づいて、ON,OFF側クラッチを制御するので、目標油圧に到達していないにも関わらず、油圧SW信号がONし目標油圧に到達したと判断しないため、NE吹きに至ることを防止できる。また、油圧SWがON故障していた場合にも、油圧特性データベースに基づいて、ON,OFF側クラッチを制御するので、プリチャージ圧指令値、即ON側クラッチの作動油圧が予め設定された目標油圧に到達したと判断しないため、NE吹きに至ることを防止できる。更に、油圧SW18のSWON信号が正常である場合には、油圧SW信号のオンした時点をOFF側クラッチの係合解除の制御開始時点とするので、最適な変速制御を行うことができることから、商品性的にも、クラッチ耐久性的にも優位になる。