JP4594605B2 - 正極活物質およびこれを含む非水電解質二次電池 - Google Patents
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Description
つぎに、複合酸化物の結晶構造および粒子の形態に関しては、以下のような従来技術がある。
前記複合酸化物が欠陥部分または歪み部分を有するのが好ましい。
前記複合酸化物がニッケル元素とマンガン元素を実質的に同比率で含むのが好ましい。
前記複合酸化物が、R3mを仮定して帰属したX線回折ピークにおいて、積分強度比(003)/(104)≦1.2の関係を満たすのが好ましい。
前記複合酸化物が、R3mを仮定した電子線回折において、実質的にすべてのパターンでエクストラスポットまたはストリークスを有するのが好ましい。
前記一次粒子が0.1〜2μmの粒径を有し、さらに2〜20μmの粒径を有する前記複合酸化物の二次粒子を含むのが好ましい。
また、本発明においては、前記複合酸化物が層状の結晶構造を有し、酸素の配列が立方最密充填構造であること、および前記複合酸化物が欠陥(defect)部分または歪み(disorder)部分を有することを特徴とする。なお、本明細書においては、正極活物質のことを単に材料という場合もある。
組成に関しては、ニッケルとマンガンを同時に含むことが前提となるが、その比率は1:1(同比率)であることが重要である。また、これら元素は酸化物中で相互に電子の状態の干渉を行い超格子の挙動を示す。これらは結晶内でニッケルおよびマンガン元素がナノレベルで均一に分散されていることが重要であると考えられる。結晶構造の観点からは、層構造を有し、酸素配列はABCABCスタッキングを持つ立方最密充填構造である。X線回折図形は層構造であるにも拘わらずR3mで帰属されるX線回折パターンの積分強度比が(003)/(104)≦1.2を満たすことが特徴的である。
形態に関しては、さらに一歩進んだところに踏み込み、一次粒子内の組織および粒界にいたるまで好ましい形態に制御することで、より優れた活物質を得る。
以下において、これらの第3元素としたコバルト、アルミニウム、マグネシウムに代表させて記載することがあるが、これに他の機能を付加することは容易に推測され実施も可能である。
以下に、本発明を、LiNi1/2Mn1/2O2およびLiNi1/3Mn1/3Co1/3O2に代表させて説明する。
図1および図2に本発明のリチウム含有複合酸化物のTEM(透過型電子顕微鏡:transmission electron microscope)写真を示す。図1はLiNi1/2Mn1/2O2のTEM写真であり、図2はLiNi1/3Mn1/3Co1/3O2のTEM写真である。これらの写真から、それぞれの複合酸化物の一次粒子径は100nm〜500nmおよび200nm〜1000nmであることがわかる。写真には代表的な部分のみが写っているが、観察したほぼ全ての部分において粒子径としてはこの範囲にあった。したがって、実際の粉末としては100nm〜2000nmの一次粒子から構成されているものと考えられる。
以上のように、本発明に係る正極活物質を構成する複合酸化物は、1)一次粒子の大部分が球状あるいは長方形の平行六面体形状であること、および2)一次粒子内にツイニング部分が存在することの2点を満たすことにより、優れた効果を奏する。
本発明に係る正極活物質も同様の層構造を有するが、前述の1)または2)、好ましくは両者を満たすことで粒子のあらゆる方向からリチウムイオンが出入りできることとなる。このことでリチウムイオンの物質移動に関わる分極抵抗が大幅に軽減され、結果として、レート特性の優れた活物質を実現することが可能である
また、図6はLiNi1/2Mn1/2O2の酸素配列を示すTEM写真である。図6中の枠内において白い部分が酸素で、層方向にABCABCの立方最密充填をしていることがわかる。図7はLiNi1/3Mn1/3Co1/3O2の酸素配列を示すTEM写真であり、同様にABCABCのように酸素が配列していることがわかる。
これらの欠陥および歪みは、本発明に係る良好な活物質を得るためには重要である。これらの欠陥および歪みを有する活物質は、充放電に伴って格子が膨張・収縮を繰り返す。この膨張・収縮によるストレスは、格子を破壊し、サイクル寿命を低下する原因の一つとなる。本発明においては、この格子の膨張・収縮によるストレスを、これらの欠陥および歪みが緩和することが可能であり、結果としてサイクル寿命が改良されるものと考えられる。
LiCox/3Ni((3-x)/6)Mn((3-x)/6)O2 (2)
(式中、0≦x≦1)で示される領域で上記の特徴が強く現れた。
積分強度はピークの高さではなくピークの面積で示される。図13の(b)に示したX線回折パターンにおいては、(104)面の積分強度が最高であり、従来までの知見では、このようなピークを有する材料にはリチウムサイトに遷移金属が落ち込んだ岩塩型構造が含まれ、容量の小さい、分極の大きい好ましくない活物質であると判断されていた。
図15にLiNi1/3Mn1/3Co1/3O2のX線回折パターンを示した。Coの添加により層構造が強く観測され、(003)/(104)=1.15と1以上の値を示した。また、図16に、R3mを仮定したミラー指数と、測定または計算から得られたd値と、強度比を示した。
なお、本発明者らは、以前からこれら一連の材料において、ニッケル元素は2価、マンガン元素は4価、コバルト元素は3価に制御することが重要であることを、理論的計算(第1原理計算)およびX線吸収微細構造測定(X-ray Absorption Fine Structure, XAFS)による解析結果から見出しており、本発明の活物質においてもこれらの解析結果が当てはまることを確認している。
現在リチウム二次電池用の正極活物質として最も広く使用されているLiCoO2はリチウム金属に対して4.3V充電で140〜145mAh/gの電気容量を有する。負極に炭素材料を使用した実電池に用いた場合も、ほぼこの数値と同様の利用率を発揮する。したがって、この電位領域で同等以上の容量が確保できないようであれば、LiCoO2は魅力に欠ける材料となる。
上記(1)において説明した粒子形態および結晶構造を具備する本発明に係る正極活物質の電気化学特性を、コイン型電池を作製することにより評価した。コイン型電池は以下の手順で作製した。正極活物質、導電材であるアセチレンブラック、結着剤であるポリフッ化ビニリデン樹脂(以下、「PVDF」という。)を80:10:10の重量比で混合し、シート状成形物を得た。そしてこの成形物を円盤状に打ち抜き、真空中で80℃の温度で約15時間乾燥させ、正極を得た。また、シート状に成形されたリチウム金属を円盤状に打ち抜いて負極とした。セパレータとしてはポリエチレンの微多孔膜を用い、電解液は、EC(エチレンカーボネート)とEMC(エチルメチルカーボネート)の1:3(体積比)の混合溶媒に、1モルのLiPF6を溶解して調製した。そして、これらを用いて常法により、2016サイズ(径が20ミリ、厚み1.6ミリ)のコイン型電池を作製した。
同様にLiNi1/3Mn1/3Co1/3O2について、図21および図22にそれぞれ4.6V充電時の充放電カーブおよびサイクル寿命を示した。図より約200mAh/gの充放電容量を得ることができ、かつ、サイクル寿命も極めて良好であることがわかる。
以上より、本発明は、従来の材料に比較し、高容量でサイクル寿命に優れた活物質を提供できる。
つぎに、本発明の正極活物質の具体的な製造方法に関して説明する。ここでは、代表的な製造方法を説明するが、上述したように、本発明においては粒子形態が重要であるため、かかる粒子形態を実現できるのであれば、以下に説明する方法に限られるものではない。
本発明に係る正極活物質の製造方法は、2種以上の遷移金属塩を含む水溶液または異なる遷移金属塩の2種以上の水溶液と、アルカリ溶液とを同時に反応槽に投入し、還元剤を共存させながらまたは不活性ガスを通気しながら共沈させることにより前駆体である水酸化物を得る工程(ア)、前記前駆体を300〜500℃で乾燥して乾燥前駆体を得る工程(イ)、ならびに前記前駆体とリチウム化合物との混合物を焼成及び冷却してリチウム含有遷移金属酸化物を得る工程(ウ)を含む。
図23に、比較のために、ニッケルとマンガンの組成比が1:1からずれた組成比を有する材料のX線回折パターンを示した。図23の(a)が、Ni:Mn=1.02:0.98の場合、図23の(b)がNi:Mn=1.005:0.995の場合である。また、図24に、これらの材料を用いた場合の充放電カーブを示した。図24から、Ni:Mn=1.02:0.98のものに比較しNi:Mn=1.005:0.995のものの方が、初期容量およびサイクル寿命に優れていることがわかる。このとき、X線回折パターンは全くと言って良いほど同一で区別できない。従来から、組成およびX線回折パターンのみで材料の出来不出来が論じられてきたが、これらのみで材料の評価をすることは不充分であることがわかる。コバルトが添加された場合に関してもNi:Mnの比率は厳密に1:1にする方が好ましい。
ここで、図25にLiNi1/2Mn1/2O2の焼成温度による充放電挙動を示した。図25の(a)は750℃で焼成した場合、図25の(b)は1000℃で焼成した場合のX線回折パターンである。また、図26の(a)は750℃で焼成した場合、図26の(b)は1000℃で焼成した場合の充放電カーブである。図25および図26から、電気容量およびサイクル寿命ともに1000℃焼成のほうが好ましいことがわかる。焼成時間としては設定温度に達してから1〜10時間焼成することが好ましい。
以上をまとめると、本発明の材料を合成するために従来の共沈法をベースに、主として、1) 溶存酸素の除去、硝酸イオンの除去、および還元剤の投入による徹底したMnイオンの酸化防止、2) ニッケルおよびマンガン元素の1:1比率の精度アップ、ならびに3) 焼成工程での急速加熱および急冷を行う。
したがって、本発明の正極活物質にはその他の新たな異種元素が含まれていてもよい。特に、前記正極活物質を構成するリチウム含有遷移金属酸化物からなる正極活物質の結晶粒子は粒状であるため、その表面近傍にそのような添加元素を含めるのが実際的である。このような添加元素による付加機能を有する正極活物質もすべて本発明に含まれる。
このことは、結晶粒子の特性X線分析などで確認できる。したがって、ドープによると正極活物質を構成する結晶粒子の母体は遷移金属元素の結晶構造の効果を保ち、結晶粒子の表面の状態だけが変わることにより上述した効果を付加することができる。
以下、本発明の正極活物質を用いた非水電解質(リチウム)二次電池を作製する場合に使用可能な他の構成材料に関して説明する。
本発明における正極を作製するために用いる正極合剤中の導電剤は、構成された電池において、化学変化を起こさない電子伝導性材料であれば特に制限はない。例えば、天然黒鉛(鱗片状黒鉛など)および人造黒鉛などのグラファイト類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック類、炭素繊維および金属繊維などの導電性繊維類、フッ化カーボン、銅、ニッケル、アルミニウムおよび銀などの金属粉末類、酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー類、酸化チタンなどの導電性金属酸化物、ならびにポリフェニレン誘導体などの有機導電性材料などをあげることができる。これらは、それぞれ単独で、または本発明の効果を損なわない範囲で任意に混合して用いることができる。 これらのなかでも、人造黒鉛、アセチレンブラック、ニッケル粉末が特に好ましい。導電剤の添加量は、特に限定されないが、1〜50重量%が好ましく、特に1〜30重量%が好ましい。カーボンやグラファイトでは、2〜15重量%が特に好ましい。
特に、このなかで最も好ましいのはポリフッ化ビニリデン(PVDF)およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。
特に、アルミニウムあるいはアルミニウム合金が好ましい。これらの材料の表面を酸化しておくこともできる。また、表面処理により集電体表面に凹凸を付けてもよい。形状としては、電池の分野において採用されているものであってよく、例えば箔、フィルム、シート、ネット、パンチされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群および不織布などがあげられる。厚さは、特に限定されないが、1〜500μmのものが好ましく用いられる。
リチウム合金としては、Li−Al系合金、Li−Al−Mn系合金、Li−Al−Mg系合金、Li−Al−Sn系合金、Li−Al−In系合金、Li−Al−Cd系合金、Li−Al−Te系合金、Li−Ga系合金、Li−Cd系合金、Li−In系合金、Li−Pb系合金、Li−Bi系合金およびLi−Mg系合金などがあげられる。この場合、リチウムの含有量は10重量%以上であることが好ましい。
合金、金属間化合物としては遷移金属と珪素の化合物や遷移金属とスズの化合物などがあげられ、特にニッケルと珪素の化合物が好ましい。
なお、炭素質材料には、炭素以外にも、O、B、P、N、S、SiCおよびB4Cなどの異種化合物を含んでもよい。含有量としては0〜10重量%が好ましい。
また、無機カルコゲナイドとしては、例えば硫化鉄、硫化モリブデンおよび硫化チタンなどがあげられる。
有機高分子化合物としては、例えばポリチオフェンおよびポリアセチレンなどの高分子化合物があげられ、窒化物としては、例えばコバルト窒化物、銅窒化物、ニッケル窒化物、鉄窒化物およびマンガン窒化物などがあげられる。
これらの負極材料は、組み合わせて用いてもよく、例えば炭素と合金の組合せ、または炭素と無機化合物の組合せなどが考えられる。
本発明においては、正極活物質にLiが含有されているため、Liを含有しない負極材料(炭素など)を用いることができる。また、そのようなLiを含有しない負極材に、少量(負極材料100重量部に対し、0.01〜10重量部程度)のLiを含有させておくと、一部のLiが電解質などと反応したりして不活性となっても、上記負極材料に含有させたLiで補充することができるので好ましい。
負極合剤中の導電剤は、正極合剤中の導電剤と同様に、構成された電池において、化学変化を起こさない電子伝導性材料であれば特に制限はない。また、負極材料に炭素質材料を用いる場合は炭素質材料自体が電子伝導性を有するので導電剤を含有してもしなくてもよい。
形状は、上記正極の場合と同様に、例えば箔、フィルム、シート、ネット、パンチされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体および繊維群の成形体などが用いられる。厚みは、特に限定されないが、1〜500μmのものが好ましく用いられる。
本発明における正極および負極は、正極活物質または負極材料を含む合剤層の他に、集電体と合剤層の密着性、導電性、サイクル特性および充放電効率の改良などの目的で導入する下塗り層や合剤層の機械的保護や化学的保護の目的で導入する保護層などを有してもよい。この下塗り層や保護層は、結着剤や導電剤粒子、導電性を持たない粒子などを含むことができる。
セパレータの孔径は、電極シートより脱離した活物質、結着剤および導電剤などが透過しない範囲であることが望ましく、例えば、0.1〜1μmであるのが望ましい。セパレータの厚みは、一般的には、10〜300μmが好ましく用いられる。また、空孔率は、電子やイオンの透過性と素材や膜圧に応じて決定されるが、一般的には30〜80%であることが望ましい。また、ガラスや金属酸化物フィルムなどの難燃材、不燃材を用いればより電池の安全性は向上する。
前記溶媒の具体例、および本発明において用いられるその他の溶媒を以下に例示する。
環状カーボネートとしてはEC、PC、VCなどが特に好ましく、環状カルボン酸エステルとしてはGBLなどが特に好ましく、非環状カーボネートとしてはDMC、DEC、EMCなどが好ましい。また、必要に応じて、脂肪族カルボン酸エステルを含むものも好ましい。脂肪族カルボン酸エステルは溶媒重量全体の30%以下、より好ましくは20%以下の範囲で含むことが好ましい。
また、本発明の電解液の溶媒は上記エステルを80%以上含む以外に、公知の非プロトン性有機溶媒を含んでもよい。
これら電解液を電池内に添加する量は、特に限定されないが、正極活物質や負極材料の量や電池のサイズによって必要量用いればよい。リチウム塩の非水溶媒に対する溶解量は、特に限定されないが、0.2〜2mol/リットルが好ましい。特に、0.5〜1.5mol/リットルであるのがより好ましい。
この電解液は、通常、多孔性ポリマー、ガラスフィルタ、不織布などのセパレータに含浸または充填させて使用される。また、電解液を不燃性にするために、含ハロゲン溶媒、例えば、四塩化炭素、三弗化塩化エチレンを電解液に含ませることができる。また、高温保存に適性をもたせるために電解液に炭酸ガスを含ませることができる。
無機固体電解質には、Liの窒化物、ハロゲン化物、酸素酸塩などがよく知られている。なかでも、Li4SiO4、Li4SiO4−LiI−LiOH、xLi3PO4−(1−x)Li4SiO4、Li2SiS3、Li3PO4−Li2S−SiS2、硫化リン化合物などが有効である。
有機固体電解質では、例えば、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリホスファゼン、ポリアジリジン、ポリエチレンスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレンなどやこれらの誘導体、混合物、複合体などのポリマー材料が有効である。
また、有機固体電解質に上記非水電解液を含有させたゲル電解質を用いることもできる。上記有機固体電解質としては、例えば、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリホスファゼン、ポリアジリジン、ポリエチレンスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレンなどやこれらの誘導体、混合物、複合体などの高分子マトリックス材料が有効である。特に、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体やポリフッ化ビニリデンとポリエチレンオキサイドの混合物が好ましい。
また、電池の形状がシート型、円筒型、角型のとき、正極活物質または負極材料を含む合剤は、主として集電体の上に塗布(コート)、乾燥、圧縮されて用いられる。塗布方法は、一般的な方法を用いることができる。例えば、リバースロール法、ダイレクトロール法、ブレード法、ナイフ法、エクストルージョン法、カーテン法、グラビア法、バー法、キャスティング法、ディップ法およびスクイーズ法などあげることができる。そのなかでもブレード法、ナイフ法およびエクストルージョン法が好ましい。
合剤のペレットまたはシートの乾燥または脱水方法としては、一般に採用されている方法を利用することができる。特に、熱風、真空、赤外線、遠赤外線、電子線および低湿風を、単独あるいは組み合わせて用いることが好ましい。
温度は80〜350℃の範囲が好ましく、特に100〜250℃の範囲が好ましい。電池全体の含水量は2000ppm以下が好ましく、正極合剤、負極合剤および電解質それぞれの含水量は500ppm以下にすることがサイクル性の点で好ましい。
プレス温度は、室温〜200℃が好ましい。負極シートに対する正極シートの幅の比率は、0.9〜1.1が好ましい。特に、0.95〜1.0が好ましい。正極活物質と負極材料の含有量比は、化合物種類や合剤処方により異なるため限定できないが、容量、サイクル性および安全性の観点から当業者であれば最適な値を設定できる。
なお、本発明における電極の巻回体は、必ずしも真円筒形である必要はなく、その断面が楕円である長円筒形または長方形などの角柱状の形状であっても構わない。
以下に、実施例に代表させて本発明を説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
まず、正極板は、以下のように作製した。本発明の正極活物質粉末85重量部に対し、導電剤の炭素粉末10重量部と結着剤のポリフッ化ビニリデン樹脂5重量部を混合した。これらを脱水N−メチルピロリジノンに分散させてスラリーを得、アルミニウム箔からなる正極集電体上に塗布し、乾燥・圧延した後、所定の大きさに切断した。
負極板は、炭素質材料を主材料とし、これとスチレンブタジエンゴム系結着剤とを重量比で100:5の割合で混合したものを銅箔の両面に塗着、乾燥、圧延した後所定の大きさに切断して得た。
セパレータとしてはポリエチレン製の微多孔フィルムを用いた。また、有機電解液には、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートの体積比1:1の混合溶媒に、LiPF6を1.5モル/リットル溶解したものを使用した。作製した円筒型電池は直径18mm、高さ650mmであった。
また、比較のために、本発明に係る正極活物質の製造方法ではなく、水酸化リチウム、水酸化ニッケルおよびオキシ水酸化マンガンの粉末を用いて、実施例1と同様の組成比になるように混合した。焼成以降の工程はすべて本発明の方法で行った。このようにして得られた材料を用いて、実施例1と同様にして円筒型電池を作製した(比較例1)。この材料のTEM像および電子線回折からは前述のようなツイニング部分および超格子を示すシグナルは確認されなかった。
また、急冷工程を行わずに、1000℃での焼成を行った後、48時間で段階的に室温まで徐冷して得たLi[Li0.03(Ni1/2Mn1/2)0.97]O2(参考例1)およびLi[Li0.03(Ni1/3Mn1/3Co1/3)0.97]O2(参考例2)を用い、実施例1と同様にして円筒型電池を作製して評価を行った。
これらの電池の電気容量、レート特性およびサイクル寿命を評価した。
1)電気容量
電池を100mAの定電流で、まず4.2Vになるまで充電した後、100mAの定電流で2.0Vになるまで放電する充放電を行った。この充放電を数サイクル繰り返し、ほぼ電池容量が一定になったところで容量を確認した。
容量は以下のようにして確認した。まず、充電は、4.2Vの定電圧充電で最大電流は1Aとした。充電は電流値が50mAに達したときに終了した。放電は300mAの定電流放電で2.5Vまで放電した。このとき得られた放電容量を、電池の電気容量とした。表4に示した電気容量の値は、比較例2の従来のLiCoO2を用いた場合の電気容量を100としたときの比率で示した。なお、充放電の雰囲気は25℃で行った。
1000mAの定電流で2.5Vまで放電した容量を測定し、(1000mA放電での容量)/(300mA放電での容量)の比率(%)を算出してレート特性値を求めた。したがって、この値が大きいほどレート特性の良好な電池であることを示す。
3)サイクル寿命
この充放電を1サイクルとして500サイクルの試験を行った。実施例1、参考例1および2、比較例1および2の電池の容量が異なるので、表4にはサイクル寿命試験を行う前に確認した各電池の容量を100とし、500サイクル後の電池の容量を比率で示した。したがって、この値がサイクル劣化率を表す数字となり、数値が大きいほどサイクル寿命が良好である。
充電によりLiNiO2からLiが抜けるとLiNiO2は非常に不安定になり、比較的低温で酸素を離してNiOに還元される。このことは、電池の正極活物質として使用する場合は致命的で、発生する酸素が要因で電池の熱暴走、つまり、発火や破裂に導かれることが予想される。
本発明者らは、このような不都合も、ニッケル:マンガンを1:1、ニッケル:マンガン:コバルトを1:1:1の比率で固溶させた酸化物を用いることで改善できることを提案してきた。さらに、Li[Li0.03(Ni1/2Mn1/2)0.97]O2や、Li[Li0.03(Ni1/3Mn1/3Co1/3)0.97]O2にアルミニウムをドープした正極活物質を用いた電池についても同様に提案してきた。
これらの材料を使用して、図27に示す電池を作製し、4.8Vまで過充電し、その後、電池を分解して正極合剤を取り出した。この正極合剤をそのままDSC(示差走査熱量計)測定にかけ、このとき最も低い温度で観測される発熱ピーク(1stピーク)を表5に示した。実施例1および2の電池も同様に評価した。
本発明のLi[Li0.03(Ni1/2Mn1/2)0.97]O2に異種元素をドープすることで付加機能を発現させることができるが、マグネシウムを添加することにより電子伝導性を飛躍的に向上させることができることはすでに提案してきた。本発明の、粒子形態を緻密に制御したものに関しても表面近傍にマグネシウムをドープすることにより電子伝導性向上が可能であることが明らかとなった。
このことで正極板中に添加する導電剤の添加量を減らすことが可能で、その分だけ活物質を多く充填することができ、結果として容量アップが可能である。
なお、実施例では正極の性能を評価するために負極の活物質として炭素質材料を用いたが、これに限定されるものではなく、合金、リチウム金属、その他比較的電位の低い酸化物、窒化物なども採用できる。また、電解液に関しても実施例では、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートの体積比1:1の混合溶媒に、LiPF6を1.5モル/リットル溶解したものを使用したが、これに限定されるものではなく、有機あるいは無機の固体電解質なども採用できる。
2 封口板
3 絶縁パッキング
4 極板群
5 正極リード
6 負極リード
7 絶縁リング
Claims (10)
- 少なくともニッケル元素およびマンガン元素を含むリチウム含有複合酸化物からなり、ツイニング部分を有する前記複合酸化物の一次粒子を含み、
前記ツイニング部分は塑性変形により結晶の向きが変わる部分であり、
前記複合酸化物が層状の結晶構造を有し、酸素の配列が立方最密充填構造であり、
前記複合酸化物の結晶内で、前記ニッケル元素および前記マンガン元素がナノレベルで均一に分散されていることを特徴とする正極活物質。 - 前記複合酸化物が欠陥部分または歪み部分を有することを特徴とする請求項1記載の正極活物質。
- 前記複合酸化物が、R3mを仮定した場合に[√3×√3]R30°の超格子配列を含むことを特徴とする請求項1または2記載の正極活物質。
- 前記複合酸化物がニッケル元素とマンガン元素を実質的に同比率で含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の正極活物質。
- 前記複合酸化物が、R3mを仮定して帰属したX線回折ピークにおいて、積分強度比(003)/(104)≦1.2の関係を満たすことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の正極活物質。
- 前記複合酸化物が、遷移金属元素として、ニッケル元素およびマンガン元素のみを含む場合には、前記積分強度比が(003)/(104)<1.15の関係を満たすことを特徴とする請求項5記載の正極活物質。
- 前記複合酸化物が、R3mを仮定した電子線回折において、実質的にすべてのパターンでエクストラスポットまたはストリークスを有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の正極活物質。
- 前記一次粒子が、球および長方形の平行6面体の少なくとも一種の形状を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の正極活物質。
- 前記一次粒子が0.1〜2μmの粒径を有し、さらに2〜20μmの粒径を有する前記複合酸化物の二次粒子を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の正極活物質。
- リチウムを吸蔵・放出する材料および/または金属リチウムを負極活物質として含む負極と、請求項1〜9のいずれかに記載の正極活物質を含む正極と、電解質とを具備することを特徴とする非水電解質二次電池。
Priority Applications (1)
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