JP4981617B2 - 正極活物質の安定化方法および非水電解質二次電池の製造方法 - Google Patents
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Description
例えば、層構造を有するLiNiO2は大きな放電容量が期待されるが、充放電にともなって結晶構造が変化することから劣化の程度が大きい。そこで、充放電時の結晶構造を安定化し、劣化を抑制することのできる元素をLiNiO2に添加することが提案されている。このような添加元素としては、具体的には、コバルト、マンガン、チタンおよびアルミニウムなどの元素があげられている。
例えば、特許文献1においては、Niの水酸化物、Mnの水酸化物およびLiの水酸化物を一度に乾式混合して焼成し、さらに室温まで冷却した後再び加熱焼成して、式:LiyNi1-xMnxO2(式中、0≦x≦0.3、0≦y≦1.3)で示される組成の活物質を製造する方法が提案されている。
また、特許文献5においては、マンガンとニッケルを含む水溶液中にアルカリ溶液を加えてマンガンとニッケルを共沈させ、これに水酸化リチウムを加え、ついで焼成することによって、式:LiNixMn1-xO2(式中、0.7≦x≦0.95)で示される活物質を得る方法が提案されている。
なお、特許文献8には層構造を有するLiMnO2の製造方法が示されているが、これは実質的に3V級の活物質である。
上述のように、現在市販されている4Vの高電圧を持つLiCoO2の代替材料として、同様の層構造を有しつつ高容量で低コストの正極活物質であるLiNiO2およびLiMnO2の研究開発がなされている。
さらに、前記結晶粒子の結晶構造において、ミラー指数(108)および(110)に帰属される粉末X線回折ピークが2本のスプリットしたピークとして観測されるのが好ましい。
また、前記正極活物質は、0.1〜2μmの粒径を有する前記リチウム含有酸化物の結晶粒子と、2〜20μmの粒径を有する前記結晶粒子の二次粒子との混合物からなるのが有効である。
また、ニッケル元素とマンガン元素の比率の誤差が10原子%以内であるのが有効である。
H1≧2×H2
を満たすのが好ましい。
Li[Lix(Ni1/2Mn1/2)1-x]O2
(式中、0≦x≦0.3)で表されるのが好ましい。
本発明の正極活物質の安定化方法では、リチウムイオンを吸蔵および放出することが可能な物質および/または金属リチウムを負極活物質として含む負極、セパレータ、式:Li[Li x (Ni y Mn y C p ) 1-x ]O 2 (式中、CはAlまたはCo、0.1≦x≦0.3、0<2y+p≦1、0≦p≦1/3)で表されるリチウム含有酸化物を正極活物質として含む正極、ならびに電解質を有する非水電解質二次電池において、前記リチウム含有酸化物を過充電状態にすることにより、前記リチウム含有酸化物の結晶構造を変化させ、安定化させる。
本発明の非水電解質電池用正極活物質の製造方法は、前記非水電解質二次電池を、前記リチウム含有酸化物が過充電状態になるまで充電することにより、前記リチウム含有酸化物の結晶構造を変化させ、安定化させる工程を含む。
前記リチウム含有酸化物は、式:Li[Li x (Ni 1/2 Mn 1/2 ) 1-x ]O 2 (式中、0.1≦x≦0.3)またはLi[Li x (Ni 1/3 Mn 1/3 Co 1/3 ) 1-x ]O 2 (式中、0.1≦x≦0.3)で表される酸化物であってもよい。
まず、結晶構造の観点から、本発明の正極活物質の特徴を説明する。
本発明の正極活物質は、結晶構造的には層構造を有し、ミラー指数(003)および(104)に帰属されるX線回折ピークの積分強度比I003/I104がI003/I104<1を満たし、さらに、ミラー指数(108)および(110)に帰属される粉末X線回折ピークが2本のスプリットしたピークとして観測されるものであるのが好ましい。
一方、本発明の正極活物質を得るためには、上記リチウム含有酸化物を合成するための製造方法にも工夫が必要である。
従来、正極活物質であるリチウム含有酸化物を合成する場合、それぞれの元素を含む水酸化物、オキシ水酸化物および酸化物などを混合して焼成する。例えば、本発明の代表的なLiNi0.5Mn0.5O2を合成する場合、LiOH・H2O、Ni(OH)2およびMnOOHを2:1:1(モル比)で充分に混合した後、反応が進行する適当な温度で焼成する。
ところが、実際には、上記米国特許に係る乾式混合合成法を用いた場合、ニッケルとマンガンが原子レベルで固溶することが難しく、単一相が極めて得られにくい。一方、上記の3種類の混合粉末が非常に細かい粒子である場合、例えば0.3μm以下の粒子を用いることでX線回折パターンだけで見る限りでは単相のものが得られる。
ニッケルの複合酸化物を作成するためには湿式共沈法を用いると良い結果が得られることが最近の研究で明らかになってきた。例えば、ニッケルとマンガン共沈法は特開平8−171910号公報に開示されている。共沈法は、水溶液中で中和反応を利用して2元素を同時に沈殿させて前駆体である複合水酸化物を得る手法である。現在までは、ニッケルの一部を少量の他元素で置き替えるだけであったため、通常の共沈法で充分であった。しかし、本発明のように実質的に同じ量のニッケル元素とマンガン元素を原子レベルで固溶させるためには高度の技術を要し、従来の方法では無理であった。共沈法で得られた前駆体である水酸化物とリチウムを反応させ、目的のリチウム含有複合酸化物を得る場合にも、その粒子形状よって電池に使用した場合の電気化学的特性に大きな差が生じ、従来の方法ではその差の制御が困難である。また、焼成温度も電気化学特性に大きな影響を及ぼすことから、適当な焼成温度を選ぶべきである。
本発明において、ニッケルとマンガンの組み合わせを選ぶことには大きな意味があり、従来のようにLiNiO2を改良するために様々な元素を微量加えることとは異なる。
共沈法で正極活物質を製造する場合をより具体的に説明する。ここで用いた実験設備の概略図を図1に示す。原料としては、硫酸ニッケルおよび硫酸マンガンを使用した。
このチューブの中で共沈による前駆体である水酸化物が得られるが、同時にチューブの中に設置されている攪拌棒によって下向き(反応槽の底向き)の力が加えられる。この力で得られた水酸化物の微結晶が互いに衝突して結晶成長し、結晶粒子を形成する。
また、水溶液中に酸素が溶存すると、マンガンが非常に酸化し易く二価から三価になってしまう。したがってβ型のNi1-xMnx(OH)2を得ようとすると、この反応槽から溶存酸素を追い出すために窒素またはアルゴンなどの不活性ガスをバブリングしたり、何らかの還元剤を添加するなどしてマンガンの酸化を抑制する必要がある。
本発明者らの実験によれば、X線回折像の結果から、約30℃の低温領域の方が結晶性のより高い水酸化物が得られることがわかった。このような反応槽は連続的にしかも高速で複合水酸化物を製造することができるため、工業的には非常に有用である。しかし、得られる粒子の粒度分布が広くなり、大小さまざまな粒径の粒子が混合されてしまうことになる。
ここで、図2に、このような反応槽で得られた代表的な粒子の表面のSEM(走査式電子顕微鏡)写真を示した。
さらに、図3に、このような反応槽で得られた代表的な粒子の断面のSEM(走査式電子顕微鏡)写真を示した。なお、これらの写真の倍率は、1000、3000、10000および30000倍である。
ここで、この方法で得られた粒子の代表的なSEM写真を図5に示す。図5の(a)、(b)および(c)に、それぞれ1000、2000および20000倍のSEM写真を示した。粒子の中には、前述した多孔質のものとは少し異なり、結晶子が高密度に充填され、大きな球状の粒子が形成されている。なお、結晶粒子は水酸化物のままでも良いが、保存中の経時変化が問題となる場合は低温で乾燥・焼成することで酸化物にすることもできる。
つぎに、得られた前駆体である水酸化物または酸化物を水酸化リチウムなどのリチウム源と混合し、焼成することによって、目的とするリチウム二次電池用の正極活物質であるLiyNi1-xMnxO2を得る。
球状のニッケルマンガン水酸化物(前駆体)の内部にまで、均一にリチウムを供給することが望ましい。水酸化リチウムを使用した場合は、まず比較的低温で水酸化リチウムが溶融し、ニッケルマンガン水酸化物粒子の内部までリチウムが供給され、ついで、温度が上昇するに伴って、粒子の外側から徐々に酸化反応がおこるため、理想的である。
つぎに、好ましい焼成条件に関して説明する。
図6の(a)はNi、MnおよびCo元素を1:1:1の割合で共晶させて得られる材料を示し、(b)〜(j)はNiおよびMnを1:1の割合で共晶させて得られる材料を示す。これらのピークパターンを見ると、(a)および(b)とそれ以外のものには2点の顕著な違いが有ることがわかる。
(c)〜(j)は、全体としてブロードなピークを有するが、(e)に代表されるように一部にシャープなピークX(図6を参照)が存在する。これらのピークはマンガン酸化物、特にMn2O3に帰属されるピークであると考えられ、JCPDSカードのNo.330900に示されている。
H1≧2×H2
を満たすことがわかる。
Li[Lix(Ni1/2Mn1/2)1-x]O2
(式中、0≦x≦0.3)で表されるリチウム含有酸化物があげられる。このリチウム含有酸化物中のリチウム原子比をこれ以上に増加させると、活物質としての電気容量が低下するのみならず、目的とする層構造の活物質が合成できなくなる。したがって、0≦x≦0.3を満たすのが好ましい。さらには、0.03≦x≦0.25を満たすのが特に好ましい。焼成の雰囲気は酸化雰囲気であればよい。ここでは、通常の大気雰囲気で検討した。
このズレは、結晶構造が変化したことによるものではなく、遷移金属とリチウム元素の比率が変わったことにより散乱強度比が微妙に変化したことによるものと考えられる。a軸長およびc軸長は、共にリチウム元素比が増加するに伴って減少した。
つぎに、得られた正極活物質の電気化学特性を、コイン型電池を作製することにより評価した。
コイン型電池は以下の手順で作製した。各焼成温度で得られた正極活物質、導電材であるアセチレンブラック、結着剤であるポリフッ化ビニリデン樹脂(以下、「PVDF」という。)を80:10:10の重量比で混合し、シート状成形物を得る。そしてこの成形物を円盤状に打ち抜き、真空中で80℃の温度で約15時間乾燥させ、正極を得た。また、シート状に成形されたリチウム金属を円盤状に打ち抜いて負極とした。セパレータとしてはポリエチレンの微多孔膜を用い、電解液は、EC(エチレンカーボネート)とEMC(エチルメチルカーボネート)の1:3(体積比)の混合溶媒に、1モルのLiPF6を溶解して調製した。
従来技術では、4Vクラスの層構造を有する活物質材料を調製しようとする場合は、CoとNiとを組み合わせたり、これらの元素の電位的な特徴を残したまま微量の第三元素を結晶構造の安定化のために添加する方法が通常なされている。しかし、上述のように、このような従来技術は、本発明のように2種の元素をほぼ同一の比率で混合し、新たな機能を発現させるものとは明らかに異なる。
これら添加元素の量は、添加元素と遷移金属元素の合計に対して5〜35モル%の範囲であるのが有効である。5モル%未満では充分な効果が得られず、35モル%を超えると容量が低下するという不具合が生じるからである。また、コバルトを除く添加元素は、結晶粒子を構成する前記リチウム含有酸化物の表面近傍にのみ添加されるのが好ましい。
以下、本発明の正極を用いた非水電解質(リチウム)二次電池を作製する場合に使用可能な他の構成材料に関して述べる。
本発明における正極を作製するために用いる正極合剤中の導電剤は、構成された電池において、化学変化を起こさない電子伝導性材料であれば特に制限はない。例えば、天然黒鉛(鱗片状黒鉛など)および人造黒鉛などのグラファイト類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック類、炭素繊維および金属繊維などの導電性繊維類、フッ化カーボン、銅、ニッケル、アルミニウムおよび銀などの金属粉末類、酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー類、酸化チタンなどの導電性金属酸化物、ならびにポリフェニレン誘導体などの有機導電性材料などをあげることができる。これらは、それぞれ単独で、または本発明の効果を損なわない範囲で任意に混合して用いることができる。
特に、この中で最も好ましいのはポリフッ化ビニリデン(PVDF)およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。
炭素質材料としては、コークス、熱分解炭素類、天然黒鉛、人造黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ、黒鉛化メソフェーズ小球体、気相成長炭素、ガラス状炭素類、炭素繊維(ポリアクリロニトリル系、ピッチ系、セルロース系、気相成長炭素系)、不定形炭素および有機物の焼成された炭素などがあげられる。これらはそれぞれ単独で、または本発明の効果を損なわない範囲で任意に組み合わせて用いてもよい。なかでも、メソフェーズ小球体を黒鉛化したもの、天然黒鉛および人造黒鉛などの黒鉛材料が好ましい。
無機化合物としては、例えばスズ化合物および珪素化合物などがあげられ、無機酸化物としては、例えばチタン酸化物、タングステン酸化物、モリブデン酸化物、ニオブ酸化物、バナジウム酸化物および鉄酸化物などがあげられる。
また、無機カルコゲナイドとしては、例えば硫化鉄、硫化モリブデンおよび硫化チタンなどがあげられる。
これらの負極材料は、組み合わせて用いてもよく、例えば炭素と合金の組合せ、または炭素と無機化合物の組合せなどが考えられる。
負極合剤中の導電剤は、正極合剤中の導電剤と同様に、構成された電池において、化学変化を起こさない電子伝導性材料であれば特に制限はない。また、負極材料に炭素質材料を用いる場合は炭素質材料自体が電子伝導性を有するので導電剤を含有してもしなくてもよい。
例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−クロロ
トリフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE樹脂)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、フッ化ビニリデン−ペンタフルオロプロピレン共重合体、プロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重
合体およびフッ化ビニリデン−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン共重合体などあげることができる。より好ましくは、スチレンブタジエンゴム、ポリフッ化ビニリデンである。なかでも最も好ましいのは、スチレンブタジエンゴムである。
非水溶媒に用いるエステルとしては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)およびビニレンカーボネート(VC)などの環状カーボネート、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)およびジプロピルカーボネート(DPC)などの非環状カーボネート、ギ酸メチル(MF)、酢酸メチル(MA)、プロピオン酸メチル(MP)およびプロピオン酸エチル(MA)などの脂肪族カルボン酸エステル、γ−ブチロラクトン(GBL)などの環状カルボン酸エステルなどがあげられる。
脂肪族カルボン酸エステルは溶媒重量全体の30%以下、より好ましくは20%以下の範囲で含むことが好ましい。
なお、本発明の電解液の溶媒は上記エステルを80%以上含む以外に、公知の非プロトン性有機溶媒を含んでもよい。
また、電解液を不燃性にするために、含ハロゲン溶媒、例えば、四塩化炭素、三弗化塩化エチレンを電解液に含ませることができる。また、高温保存に適性をもたせるために電解液に炭酸ガスを含ませることができる。
また、電解液の他に、つぎのような固体電解質も用いることができる。固体電解質としては、無機固体電解質と有機固体電解質に分けられる。
有機固体電解質としては、例えば、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリホスファゼン、ポリアジリジン、ポリエチレンスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレンなどやこれらの誘導体、混合物、複合体などのポリマー材料が有効である。
ペレットやシートの乾燥または脱水方法としては、一般に採用されている方法を利用することができる。特に、熱風、真空、赤外線、遠赤外線、電子線および低湿風を、単独あるいは組み合わせて用いることが好ましい。
シートのプレス法は、一般に採用されている方法を用いることができるが、特に金型プレス法やカレンダープレス法が好ましい。プレス圧は、特に限定されないが、0.2〜3t/cm2が好ましい。カレンダープレス法のプレス速度は、0.1〜50m/分が好ましい。
なお、本発明における電極の巻回体は、必ずしも真円筒形である必要はなく、その断面が楕円である長円筒形や長方形等の角柱状の形状であっても構わない。
以下に、実施例に代表させて本発明を説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
図12に作製した円筒型電池の概略縦断面図を示す。
正極板および負極板がセパレータを介して複数回渦巻状に巻回された極板群14が電池ケース11内に収納されている。そして、正極板からは正極リード15が引き出されて封口板12に接続され、負極板からは負極リード16が引き出されて電池ケース11の底部に接続されている。電池ケースやリード板は、耐有機電解液性の電子伝導性をもつ金属や合金を用いることができる。例えば、鉄、ニッケル、チタン、クロム、モリブデン、銅、アルミニウムなどの金属またはそれらの合金が用いられる。特に、電池ケースはステンレス鋼板、Al−Mn合金板を加工したもの、正極リードはアルミニウム、負極リードはニッケルが最も好ましい。また、電池ケースには、軽量化を図るため各種エンジニアリングプラスチックスおよびこれと金属の併用したものを用いることもできる。
なお、比較のために正極活物資としてLiCO2を用いて同様の方法で円筒電池を作製した。表2にこれらの電池の電気特性を比較した結果を示した。
これらの電池を100mAの定電流で、まず4.2Vになるまで充電した後、100mAの定電流で2.0Vになるまで放電する充放電を行った。この充放電を数サイクル繰り返し、ほぼ電池容量が一定になったところで容量を確認した。
放電は300mAの定電流放電で2.5Vまで放電した。このとき得られた放電容量を、電池の放電容量とした。充放電の雰囲気は25℃で行った。また、ハイレート放電比率は電池容量を1Cとしたときに5時間率放電の電流値(0.2C)と0.5時間率放電の電流値(2C)でそれぞれの放電容量を測定し、0、2C/2Cの容量比率で表したものである。低温放電比率は1C電流で20℃で放電した場合と−10℃で放電した場合の放電容量比率(−10℃/20℃)で示した。また、サイクル寿命は100サイクル時点での初期容量に対する容量比率を示した。
LiNiO2やLiMnO2は電子伝導性がそれほど良好であるとはいえない。これにより、放電末期に大きな分極を起こし、ハイレート放電時などには特に容量が減少することになる。ニッケル元素とマンガン元素は互いに異なった電子構造をもつ。ところが、これらを原子レベルで固溶すると近接した異種元素の電子構造と相互作用を起こす。
LiNiO2は充電してLiが抜けると非常に不安定になり、比較的低温で酸素を離してNiOに還元される。このことは、電池の正極活物質として使用する場合は致命的で、発生する酸素が要因で電池の熱暴走、つまり、発火や破裂に導かれることが予想される。
1.2モル/リットルの硫酸ニッケル水溶液、1.2モル/リットルの硫酸マンガン水溶液および1.2モル/リットルの硫酸コバルト水溶液の混合溶液、ならびに4.8モル/リットルのNaOH水溶液および4.8モル/リットルのNH3溶液を、0.5ミリリットル/分の速度で図4に示す装置の反応槽6に導入し、本発明の前駆体aであるニッケルマンガンコバルト複合水酸化物を得た。なお、反応槽中の溶存酸素は、アルゴンガスでバブリングすることによってパージした。また、反応物である前駆体の中に過度に還元されたCoOなどの磁性体が混入しないように、ヒドラジンを調整しながら添加した。この前駆体aのX線回折パターンは図6の(a)に示した。
さらに、前記前駆体bと水酸化リチウムとをLi、NiおよびMnの原子比がLi/(Ni+Mn)=1を満たすように混合し、得られた混合物を一気に1000℃まで昇温してその温度で10時間焼成した。そして、焼成が終了した後に温度を下げるときは、一度700℃で5時間アニールした後に除冷をし、リチウム含有酸化物からなる本発明に係る正極活物質b(LiNi1/2Mn1/2O2)を得た(参考例4)。
つぎに、得られた正極活物質の電気化学特性を、コイン型電池を作製することにより評価した。
また、参考例1と同様にして円筒型電池を作製し、同様にサイクル寿命を求めた。これらの結果を表5に示した。
2 チューブ
3 撹拌棒
4 ポンプ
5 供給口
6 反応槽
7 捕集部
11 電池ケース
12 封口板
13 絶縁パッキング
14 極板群
15 正極リード
16 負極リード
17 絶縁リング
Claims (6)
- リチウムイオンを吸蔵および放出することが可能な物質および/または金属リチウムを負極活物質として含む負極、セパレータ、式:Li[Lix(NiyMnyCp)1-x]O2(式中、CはAlまたはCo、0.1≦x≦0.3、0<2y+p≦1、0≦p≦1/3)で表されるリチウム含有酸化物を正極活物質として含む正極、ならびに電解質を有する非水電解質二次電池において、
前記リチウム含有酸化物を過充電状態にすることにより、前記リチウム含有酸化物の結晶構造を変化させ、安定化させる、正極活物質の安定化方法。 - 前記リチウム含有酸化物が、式:Li[Li x (Ni 1/2 Mn 1/2 ) 1-x ]O 2 (式中、0.1≦x≦0.3)またはLi[Li x (Ni 1/3 Mn 1/3 Co 1/3 ) 1-x ]O 2 (式中、0.1≦x≦0.3)で表される、請求項1記載の正極活物質の安定化方法。
- 前記リチウム含有酸化物の結晶粒子において、NiとMnとが原子レベルで均一に分散している、請求項1または2記載の正極活物質の安定化方法。
- リチウムイオンを吸蔵および放出することが可能な物質および/または金属リチウムを負極活物質として含む負極、セパレータ、式:Li[Lix(NiyMnyCp)1-x]O2(式中、CはAlまたはCo、0.1≦x≦0.3、0<2y+p≦1、0≦p≦1/3)で表されるリチウム含有酸化物を正極活物質として含む正極、ならびに電解質を有する非水電解質二次電池を、前記リチウム含有酸化物が過充電状態になるまで充電することにより、前記リチウム含有酸化物の結晶構造を変化させ、安定化させる工程、を含む非水電解質二次電池の製造方法。
- 前記リチウム含有酸化物が、式:Li[Li x (Ni 1/2 Mn 1/2 ) 1-x ]O 2 (式中、0.1≦x≦0.3)またはLi[Li x (Ni 1/3 Mn 1/3 Co 1/3 ) 1-x ]O 2 (式中、0.1≦x≦0.3)で表される、請求項4記載の非水電解質二次電池の製造方法。
- 前記リチウム含有酸化物の結晶粒子において、NiとMnとが原子レベルで均一に分散している、請求項4または5記載の非水電解質二次電池の製造方法。
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