JP4592046B2 - 光学フィルムの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コレステリック配向を固定化したコレステリック液晶フィルムを備えた光学フィルムの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶材料をデバイスとして利用するためには、一般には、液晶を一定の配列に並べて分子配向させる必要がある。これは電場・磁場・せん断応力あるいは界面などの外場の影響により変化する。そして、この配向変化に由来する光制御機能を利用して、各種光電子産業用途への応用展開がなされている。たとえば、液晶材料は、光学フィルムとして賞用されている。
【0003】
従来、液晶材料を配向させる方法を、大きく分けると次の二つの方法がある。
(1)配向膜を設けた基材に液晶材料を塗布することで液晶の配向状態を制御する方法。(2)延伸高分子フィルム上に液晶材料を塗布し、延伸方向にそって配向させる方法(たとえば、特開平3−9325号公報等)。これらの方法はいずれも基材に施した配向処理による配向規制力を利用する方法である。
【0004】
前記配向方法(1)としては、たとえば、基材をラビング処理したラビング配向膜を用いる方法がある。この方法ではラビングによる配向処理時にケバ立ちが発生する問題がある。また、前記配向方法(1)としては、基材上に配向剤により配向膜を設ける方法があるが、この方法では配向膜を基材に設ける際に異物が混入する問題や、配向膜を設ける層の分だけ全体の厚みが厚くなるなどの問題がある。
【0005】
前記配向方法(2)では、基材として用いる延伸高分子フィルムが得られる光学フィルムの光学特性に影響を及ぼす場合がある。これらの影響を考慮すると、得られる光学フィルムをそのままフィルム化することが不可能であり、得られた光学フィルムは他の基材に転写する必要がある。その際、基材として使用した延伸高分子フィルムは産廃となり、材料コスト・製造コスト・プロセスの全ての面において無駄が生じる。転写を行う際には、異物の混入・面荒れ・ムラ・傷付があり、これらも光学フィルムの光学特性に悪影響を及ぼす。またフィルムを多層化する際には各層毎に転写が必要となるため上記のような光学特性への悪影響が考えられフィルムの多層化が困難である。また、配向規制を行う際の面内のバラツキが、面内に配向のムラとして生じる。さらには、転写を行う際には、基材と光学フィルムの密着に必要な粘着層または接着層により全体の厚みが厚くなるなどの問題もある。
【0006】
このように、従来の配向方法はいずれも配向規制力を必要とする方法であるため、配向領域が大面積化した場合には配向制御が困難であったり、得られる光学フィルムを転写する必要がある等の不都合を有している。すなわち、液晶材料の配向を高度に制御し、固定化する技術は確立しているとはいい難い。
【0007】
【発明が解決しようとしている課題】
本発明は、配向膜や延伸高分子フィルムによる配向規制力に依ることなく、液晶材料を配向させて、光学フィルムを製造する方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、 前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す製造方法により前記目的を達成できることを見出し本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、配向処理が施されていない、面内位相差50nm以下の未延伸高分子フィルム上に、サーモトロピック液晶性化合物を含有しかつ液晶状態においてコレステリック液晶相を呈する溶液を、塗布し、熱処理により配向させた後、硬化させることによって、前記未延伸高分子フィルム上にコレステリック配向液晶フィルムを形成することを特徴とする光学フィルムの製造方法、に関する。
【0010】
上記本発明の製造方法では、面内位相差50nm以下の未延伸高分子フィルムにコレステリック液晶相を呈する液晶材料を塗布し、加熱、硬化するだけで、優れた配向性を示す光学フィルムが得られる。光学フィルムの生産段階において、ラビング処理や配向剤により配向膜を形成する配向処理工程を省けるため、材料コスト・製造コスト・プロセスを節約できる。また未延伸高分子フィルムを基材として用いるため光学フィルムへの光学特性の影響を無視でき、製造後の他の基材への転写の必要がなくなる。また、配向処理層、粘着層が不要であり薄層化が図れる。このように配向して得られたコレステリック液晶相は、均一・透明で極めて優れた光学的性質を持ったものである。
【0011】
配向基材となる未延伸高分子フィルムは面内位相差50nm以下であり、面内位相差が50nmを超えると良好な配向性のコレステリック液晶相が得られない。前記面内位相差は生産性の理由から、好ましくは20nm以下であり、さらに好ましくは10nm以下である。
【0012】
面内位相差(Δnd)は、厚さ(d:nm)の未延伸高分子フィルムのフィルムの厚さ方向の軸に対して垂直方向に延び、かつこのフィルムの厚み内に含まれる複数の軸に沿った屈折率のうち最大値を示す方向に延びる軸を主軸とし、この主軸方向の屈折率をnx、この主軸と厚さ方向の軸の双方に垂直な軸に沿った方向の屈折率をnyとしたとき、
面内位相差:Δnd=(nx−ny)×d
で表される。
【0013】
前記光学フィルムの製造方法において、サーモトロピック液晶性化合物として、たとえば、重合性液晶モノマーが用いられる。
【0014】
前記光学フィルムの製造方法において、サーモトロピック液晶性化合物として、たとえば、液晶ポリマーが用いられる。
【0015】
前記光学フィルムの製造方法において、サーモトロピック液晶性化合物として、たとえば、重合性液晶モノマーと液晶ポリマーの混合物が用いられる。
【0016】
重合性液晶モノマーは塗布後、加熱等により配向後に紫外線照射により架橋硬化させる方法、液晶ポリマーは塗布後、加熱等により配向後に冷却硬化することで光学フィルムを形成するができる。
【0017】
また、光学フィルムの製造方法において、液晶状態においてコレステリック液晶相を呈する溶液が、サーモトロピック液晶性化合物とカイラル剤を含有し、その合計に対して、カイラル剤を7重量%以上含有してなり、下記式で表されるねじり力:
ねじり力=1/{コレステリック液晶相の選択反射波長(nm)×カイラル剤重量比(重量%)}
が、1×10-6以上になるよう調整されていることが好ましい。
【0018】
前記ねじり力は、光学特性の点から、1×10-6以上であるのが好ましく、さらには1×10-5以上、1×10-4以上であるのがコストの面からより好ましい。またこのカイラル剤の重量は、サーモトロピック液晶性化合物に対して7重量%以上であるのが好ましく、特に7. 5〜17重量%であると非常に優れた光学特性を示すためより好ましい。
【0019】
【発明の実施形態】
本発明で用いる、面内位相差50nm以下の高分子フィルムは、表面ラビング処理や配向剤により配向膜の形成等の配向処理が施されておらず、また延伸配向処理が施されていないものである。
【0020】
高分子フィルムは、面内位相差50nm以下であり、配向させる温度で変化しないものであれば特に制限はない。たとえば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー等の透明ポリマーからなるフィルムがあげられる。またポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体等のスチレン系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体等のオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー等の透明ポリマーからなるフィルムもあげられる。さらにイミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマーや前記ポリマーのブレンド物等の透明ポリマーからなるフィルムなどもあげられる。これらプラスチックフィルム厚さは、通常、10〜1000μm程度である。
【0021】
これらのなかでも水素結合性が高く、光学フィルムとして用いられるトリアセチルセルロース、ノルボルネン構造を有するノルボルネン系ポリオレフィン等のプラスチックフィルムが賞用される。これらプラスチックフィルムは光学異方性が非常に小さいため、プラスチックフィルム上に前記液晶性化合物を配向し形成された光学フィルム層は、当該光学フィルム層を別のプラスチックフィルムヘ転写することなく、そのままコレステリック配向位相差フィルムとして選択反射板等の光学フィルムに用いることができる。
【0022】
液晶状態においてコレステリック液晶相を呈する溶液は、サーモトロピック液晶性化合物を含有してなり、液晶状態においてはコレステリック液晶相を呈するものであれば特に制限はない。前記サーモトロピック液晶性化合物としては、重合性液晶モノマーおよび/または液晶ポリマーがあげられる。
【0023】
前記重合性液晶モノマーとしては、たとえば、ネマティック液晶性モノマーがあげられる。これらネマティック液晶性モノマーには液晶状態においてコレステリック液晶相を呈するように、コレステリック液晶性モノマーやカイラル剤が配合される。
【0024】
ネマティック液晶性モノマーは、末端にアクリロイル基、メタクリロイル基等の重合性官能基を有し、これに環状単位等からなるメソゲン基を有するものがあげられる。また重合性官能基として、アクリロイル基、メタアクリロイル基等を2つ以上有するものを用いて架橋構造を導入して耐久性を向上させることもできる。メソゲン基となる前記環状単位としては、たとえば、ビフェニル系、フェニルベンゾエート系、フェニルシクロヘキサン系、アゾキシベンゼン系、アゾメチン系、アゾベンゼン系、フェニルピリミジン系、ジフェニルアセチレン系、ジフェニルベンゾエート系、ビシクロへキサン系、シクロヘキシルベンゼン系、ターフェニル系等があげられる。なお、これら環状単位の末端は、たとえば、シアノ基、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基等の置換基を有していてもよい。
【0025】
カイラル剤としては、光学活性基を有し、ネマティック液晶性モノマー等の配向を乱さないものであれば特に制限されない。カイラル剤は液晶性を有していてもよく液晶性を有しなくてもよいが、コレステリック液晶性を示すものを好ましく使用できる。カイラル剤は反応性基を有するもの、有しないもののいずれも使用できるが、硬化して得られるコレステリック液晶配向フィルムの耐熱性、耐溶剤性の点では反応性基を有するものが好ましい。反応性基としては、たとえば、アクリロイル基、メタアクリロイル基、アジド基、エポキシ基などがあげられる。
【0026】
前記液晶ポリマーとしては、たとえば、コレステリック性の液晶配向を示す主鎖型、側鎖型またはこれらの複合型の各種骨格の液晶ポリマーを使用できる。液晶ポリマーは、液晶状態においてコレステリック液晶相を呈するように、液晶ポリマー中にカイラル成分を導入することにより調製することができる。また、液晶ポリマーとしてネマチック系液晶ポリマーを用い、液晶状態においてコレステリック液晶相を呈するように、これにカイラル剤を含有させることができる。
【0027】
主鎖型の液晶ポリマーとしては、芳香族単位等からなるメソゲン基を結合した構造を有する縮合系のポリマー、たとえば、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリカーボネート系、ポリエステルイミド系などのポリマーがあげられる。メソゲン基となる前記芳香族単位としては、フェニル系、ビフェニル系、ナフタレン系のものがあげられ、これら芳香族単位は、シアノ基、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基等の置換基を有していてもよい。
【0028】
側鎖型の液晶ポリマーとしては、ポリアクリレート系、ポリメタクリレート系、ポリシロキサン系、ポリマロネート系の主鎖を骨格とし、側鎖に環状単位等からなるメソゲン基を有するものがあげられる。メソゲン基となる前記環状単位としては、たとえば、ビフェニル系、フェニルベンゾエート系、フェニルシクロヘキサン系、アゾキシベンゼン系、アゾメチン系、アゾベンゼン系、フェニルピリミジン系、ジフェニルアセチレン系、ジフェニルベンゾエート系、ビシクロへキサン系、シクロヘキシルベンゼン系、ターフェニル系等があげられる。なお、これら環状単位の末端は、たとえば、シアノ基、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基等の置換基を有していてもよい。
【0029】
前記重合性液晶モノマー、液晶ポリマーのいずれのメソゲン基も屈曲性を付与するスペーサ部を介して結合していてもよい。スペーサー部としては、ポリメチレン鎖、ポリオキシメチレン鎖等があげられる。スペーサー部を形成する構造単位の繰り返し数は、メソゲン部の化学構造により適宜に決定されるがポリメチレン鎖の繰り返し単位は0〜20、好ましくは2〜12、ポリオキシメチレン鎖の繰り返し単位は0〜10、好ましくは1〜3である。
【0030】
液晶ポリマーの分子量は特に制限されないが重量平均分子量に基づき2千〜10万程度のものが好ましい。液晶ポリマーの重量平均分子量が大きくなると、液晶としての配向性が乏しくなって液晶ポリマーが均一な配向状態を形成しにくくなる傾向があることからことから、液晶ポリマーの重量平均分子量は、5万以下とするのがより好ましい。また、液晶ポリマーの重量平均分子量が小さくなると非流動層としての成膜性に乏しくなる傾向があることから、液晶ポリマーの重量平均分子量は、2.5千以上とするのがより好ましい。
【0031】
前記液晶状態においてコレステリック液晶相を呈する溶液は、サーモトロピック液晶性化合物として、重合性液晶モノマーおよび/または液晶ポリマーを含有するが、サーモトロピック液晶性化合物として重合性液晶モノマーを含有する場合には、通常、光重合開始剤を含有する。光重合開始剤は各種のものを特に制限なく使用できる。光重合開始剤としては、たとえば、チバスペシャリフィケミカルズ社製のイルガキュア(Irgacure)907,同184、同651、同369などを例示できる。光重合開始剤の添加量は、サーモトロピック液晶性化合物の配向性を乱さない程度に加えられる。通常、重合性液晶モノマー100重量部に対して、0.5〜30重量部程度が好ましい。特に3〜15重量部が好ましい。
【0032】
前記サーモトロピック液晶性化合物を含有する溶液を調製する際に用いられる溶媒としては、通常、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類、フェノール、パラクロロフェノールなどのフェノール類、ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキベンゼンなどの芳香族炭化水素類、その他、アセトン、酢酸エチル、tert−ブチルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレンブリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ピリジン、トリエチルアミン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ブチロニトリル、二硫化炭素などを用いることができる。溶液の濃度は、サーモトロピック液晶性化合物の溶解性や最終的に目的とする光学フィルムの膜厚に依存するため一概には言えないが、通常3〜50重量%、好ましくは7〜30重量%の範囲である。
【0033】
基板である前記高分子フィルムに前記溶液を塗工する方法としては、例えば、ロールコート法、グラビアコート法、スピンコート法、バーコート法などを採用することができる。溶液の塗工後、溶媒を除去し、基板上に液晶層を形成させる。溶媒の除去条件は、特に限定されず、溶媒をおおむね除去でき、液晶ポリマー層または液晶性組成物層が流動したり、流れ落ちたりさえしなければ良い。通常、室温での乾燥、乾燥炉での乾燥、ホットプレート上での加熱などを利用して溶媒を除去する。液晶層の厚みは1〜10μm程度とするのが好ましい。
【0034】
次いで、前記高分子フィルム上に形成された液晶層を液晶状態とし、コレステリック配向させる。たとえば、液晶層が液晶温度範囲になるように熱処理を行う。熱処理方法としては、上記の乾燥方法と同様の方法で行うことができる。熱処理温度は、サーモトロピック液晶性化合物と高分子フィルムの種類により異なるため一概には言えないが、通常60〜300℃、好ましくは70〜200℃の範囲において行う。また熱処理時間は、熱処理温度および使用するサーモトロピック液晶性化合物や高分子フィルムの種類によって異なるため一概には言えないが、通常10秒〜2時間、好ましくは20秒〜30分の範囲で選択される。
【0035】
熱処理終了後、冷却操作を行う。冷却操作としては、熱処理後のコレステリック配向液晶フィルムを、熱処理操作における加熱雰囲気中から、室温中に出すことによって行うことができる。また空冷、水冷などの強制冷却を行ってもよい。前記コレステリック液晶配向層は、サーモトロピック液晶性化合物のガラス転移温度以下に冷却することにより配向が固定化される。
【0036】
サーモトロピック液晶性化合物として、重合性液晶モノマーを含有している場合には、このように固定化されたコレステリック液晶配向層に対して、光照射を行い光重合性液晶化合物を重合または架橋させて光重合性液晶化合物を固定化して、耐久性を向上したコレステリック配向液晶フィルムを得る。光照射は、たとえば、紫外線照射により行う。紫外線照射条件は、十分に反応を促進するために、不活性気体雰囲気中とすることが好ましい。通常、約80〜160mW/cm2 の照度を有する高圧水銀紫外ランプが代表的に用いられる。メタハライドUVランプや白熱管などの別種ランプを使用することもできる。なお、紫外線照射時の液晶層表面温度が液晶温度範囲内になるように、コールドミラー、水冷その他の冷却処理あるいはライン速度を速くするなどして適宜に調整する。
【0037】
このようにして、コレステリック配向液晶フィルム(光学フィルム)が得られる。こうして得られた光学フィルムは、基板ある高分子フィルムから剥離することなく用いられる他、基板から剥離して用いてもよい。
【0038】
光学フィルムの具体例として、例えば、選択反射フィルムが挙げられる。選択反射フィルムは可視光領域の一部に選択反射波長帯域を有し、当該選択反射波長帯域はカイラル剤の使用量を適宜に調整することにより変更できる。なお、選択反射フィルムの選択反射波長帯域を、可視光領域全体に広げる方法としては、カイラル剤の添加量を変えて作製した複数の選択反射フィルムを積層する方法と、得られた選択反射フィルム上に異なる選択反射波長帯域を有する液晶性組成物溶液を重ねて塗工する方法がある。前記選択反射フィルムに位相差フィルムを積層するとコレステリック偏光子が得られる。また、得られた光学フィルム(液晶配向フィルム) は上記選択反射フィルム以外に位相差フィルム(光学補償フィルム)、ねじれ位相差フィルム、傾斜位相差フィルムなどとして使用される。
【0039】
【実施例】
以下、実施例や比較例を参照して本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0040】
実施例1
(サーモトロピック液晶性化合物含有溶液の調製)
重合性のネマティック液晶性化合物(ジアクリロイル基を有するフェニルエステル化合物)92重量部とカイラル剤(具体的には:環状カイラル構造を有するジアクリルロイル化合物)8重量部および光重合開始剤(チバスペシャリフィケミカルズ社製,イルガキュア907)5重量部をトルエン20重量部に溶解した溶液を調製した。
【0041】
(高分子フィルム)
面内位相差(Δnd)5nm、厚み方向位相差(Rth)50nmである高分子フィルム(TAC:トリアセチルセルロース)を用いた。
【0042】
(光学フィルムの製造)
当該溶液を、前記高分子フィルム上にアプリケーターにより塗工した。次いで、90℃で1分間熱処理後、その後室温まで一気に冷却することにより、前記液晶層をコレステリック配向させ、かつ配向を維持したままガラス化しコレステリック配向液晶層(2μm)を固定化した。さらに、固定化したコレステリック配向液晶層に紫外線を照射することにより完全透明で平滑なコレステリック配向液晶フィルム(光学フィルム)を作製した。コレステリック液晶相の選択反射波長は、390nmであり、ねじり力は、3.21×10-4であった。
【0043】
比較例1
実施例1において、高分子フィルムとして、実施例1と同様のTACフィルム上に1重量%のポリビニルアルコール溶液を塗布し、90℃で乾燥して、膜厚約0. 01μmの皮膜を形成し、この皮膜にラビング処理を施しラビング膜を形成したものを用い、当該ラビング膜に、前記溶液を塗工したこと以外は実施例1と同様にして光学フィルムを作製した。
【0044】
比較例2
実施例1において、実施例1と同様のTACフィルム上に1重量%のポリビニルアルコール溶液を塗布し、90℃で乾燥して、膜厚約0. 01μmの皮膜を形成し、この皮膜にラビング処理を施しラビング膜を形成したものを用いた。また、カイラル剤を含有していないこと以外は実施例1と同様にして調製した溶液を、当該ラビング膜に塗工したこと以外は実施例1と同様にして光学フィルムを作製した。
【0045】
比較例3
実施例1において、高分子フィルムとして、延伸透明高分子フィルム(PET:ポリエチレンテレフタレート:Δnd1700nm)を用いたこと以外は実施例1と同様にして光学フィルムを作製した。
【0046】
比較例4
実施例1において、高分子フィルムとして、延伸透明高分子フィルム(PET:ポリエチレンテレフタレート:Δnd1700nm)を用いた。また、カイラル剤を含有していないこと以外は実施例1と同様にして調製した溶液を、当該延伸PETフィルムに塗工したこと以外は実施例1と同様にして光学フィルムを作製した。
【0047】
比較例5
実施例1において、カイラル剤を含有していないこと以外は実施例1と同様にして調製した溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にして光学フィルムを作製した。得られた光学フィルム面は白濁した。
【0048】
実施例および比較例で得られた光学フィルムについて、配向性を調べた。結果を表1に示す。実施例1、比較例1、3の配向性の検討は、クロスニコルにした偏光板に試料(光学フィルム:基材付)を挿入し、方位を変えて透過率の変化の確認を行った。どの方位においても透過率の変化のないものを配向性:○とした。比較例2、4、5の配向性の検討は、試料をクロスニコルにした偏光顕微鏡で観察し、基材の配向軸と偏光板の透過軸が一致したところでの暗視野の確認によって行った。透過率変化がないものを配向性:○とした。位相差の測定は王子計測機器:KOBRAを用いて測定を行った。また、ヘイズは、次式で表せ、(拡散透過率/全光透過率)×100、MURAKAMI COLOR RESEARCH LABORATORY:HAZEMETER HM−150により測定した。
【0049】
【表1】
実施例1では、配向処理を施していない未延伸の高分子フィルムを用いて配向性良好なコレステリック配向液晶フィルム(光学フィルム)が作製されている。高分子フィルムは未延伸のため作製後の他の基材への転写工程が不要である。一方、比較例1、3では、配向性良好なコレステリック配向液晶フィルムが得られているが、比較例1では高分子フィルムに配向処理が施されており、また比較例3では高分子フィルムとして延伸フィルムが用いられており製造工程上の不都合がある。
【0050】
比較例2、4、5はネマチック配向液晶フィルム(光学フィルム)を作製した例であり、高分子フィルムとして配向処理が施されているもの(比較例2)や高分子フィルムとして延伸フィルムを用いたもの(比較例4)では配向性良好であるが上記同様の製造工程上の不都合がある。また、比較例5のように、面内位相差50nm以下の未延伸の高分子フィルムでは白濁し配向性不良である。
【0051】
【発明の効果】
本発明によれば、配向膜や延伸高分子フィルム による配向規制力に依ることなくコレステリック性液晶相の優れた配向性を示す光学フィルムが得られる。すなわち、生産段階での配向処理を省けるため、具体的には、以下の効果がある。配向基材やラビング等による配向膜を必要としない。配向規制力が必要ではないため、配向処理による配向ムラがない。配向処理を必要としないため、大面積の配向が容易である。配向処理が必要ではないため、配向処理による精密な配向制御が必要ではない。配向処理時に発生するケバ立ち、異物混入が防げる。また未延伸高分子フィルムを基材として用いることで、光学特性に及ぼす影響を無視できるため、光学フィルム製造後に他の基材への転写の必要がなくなる。具体的には、以下の効果がある。配向処理層と粘着層が不要であるため、薄層化が図れる。得られた配向した液晶性化合物膜は、均一・透明で極めて優れた光学的性質を持ったものである。材料コスト・製造コスト・プロセスを節約できる。等方性基材を使用しているため、光学特性に影響がないため、そのままフィルム化(偏光板直接塗工)が可能であり、転写の必要がない。転写を行う際、異物の混入・面荒れ・ムラ・傷付を防ぎ、非常に光学特性の高いフィルムを得ることができる。フィルムを多層化する際、転写が必要ないため容易にそれが行える。
Claims (5)
- 配向処理が施されていない、面内位相差50nm以下の未延伸高分子フィルム上に、サーモトロピック液晶性化合物を含有しかつ液晶状態においてコレステリック液晶相を呈する溶液を、塗布し、熱処理により配向させた後、硬化させることによって、前記未延伸高分子フィルム上にコレステリック配向液晶フィルムを形成することを特徴とする光学フィルムの製造方法。
- サーモトロピック液晶性化合物が、重合性液晶モノマーであることを特徴とする請求項1記載の光学フィルムの製造方法。
- サーモトロピック液晶性化合物が、液晶ポリマーであることを特徴とする請求項1記載の光学フィルムの製造方法。
- サーモトロピック液晶性化合物が、重合性液晶モノマーと液晶ポリマーの混合物であることを特徴とする請求項1記載の光学フィルムの製造方法。
- 液晶状態においてコレステリック液晶相を呈する溶液が、サーモトロピック液晶性化合物とカイラル剤を含有し、その合計に対してカイラル剤を7重量%以上含有してなり、下記式で表されるねじり力:ねじり力=1/{コレステリック液晶相の選択反射波長(nm)×カイラル剤重量比(重量%)}
が、1×10-6以上になるよう調整されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光学フィルムの製造方法。
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