JP3899482B2 - ホメオトロピック配向液晶フィルムの製造方法およびホメオトロピック配向液晶フィルム - Google Patents
ホメオトロピック配向液晶フィルムの製造方法およびホメオトロピック配向液晶フィルム Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ホメオトロピック配向液晶フィルムの製造方法に関する。また本発明は当該製造方法により得られるホメオトロピック配向液晶フィルム、さらには光学フィルムに関する。ホメオトロピック配向液晶フィルムは単独でまたは他のフィルムと組み合わせて、位相差フィルム、視角補償フィルム、光学補償フィルム、楕円偏光フィルム等の光学フィルムとして使用できる。また上記光学フィルムを用いた液晶表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶化合物のホメオトロピック配向は、液晶相の分子長軸が平均して薄膜(液晶相)を形成する基板に対して実質的に垂直である場合に生じる。自発的にホメオトロピック配向する物質は非常に僅かしかなく、従って、かかる配向を生じさせるためには、一般的に垂直配向剤が用いられる。垂直配向剤によりホメオトロピック配向させることができる液晶化合物としては、たとえば、ネマチック液晶化合物が知られている。かかる液晶化合物の配向技術にかかわる概説は、例えば、化学総説44(表面の改質,日本化学会編,156〜163頁)に記載されている。
【0003】
前記液晶化合物をホメオトロピック配向させるうる垂直配向剤としては各種の有機系または無機系配向剤が知られているが、慣用されている配向剤の多くはガラス基板上で有効に作用するようにデザインされている。
【0004】
このような慣用の有機系配向剤としては、たとえば、レシチン、シラン系界面活性剤、n−オクタデシルトリエトキシシラン、チタネート系界面活性剤、ピリジニウム塩系高分子界面活性剤、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムハライドまたはクロム錯体などがあげられる。これら有機系配向剤は、活性成分が非常に少量(代表的には1%よりも少ない量)となるように適当な揮発性溶剤に溶解され、次いで例えばスピンコーティングまたはその他周知の塗工方法によって基板上に塗工された後、揮発性溶剤を蒸発させることにより、ガラス基板上に有機配向剤の薄膜として形成される。これら有機系配向剤は、極性のガラス表面に引き付けられると考えられる極性末端基とガラス表面に対して垂直に配列する無極性の長鎖状アルキル鎖を有することを特徴とするものであり、このような表面上において液晶化合物にホメオトロピック配向を生じさせる。
【0005】
また無機系配向剤としては、例えば、ガラス基板上にSiOX またはIn2 O3 /SnO2 を垂直角度で蒸着させたものが知られており、液晶化合物にホメオトロピック配向を生じさせる。その他、アルキル側鎖付ポリイミド膜も液晶ディスプレイなどのホメオトロピック配向膜として用いられている。
【0006】
しかしながら、前記慣用の配向剤は、いずれもガラス基板上においてのみ液晶化合物にホメオトロピック配向を与えるものであり、プラスチックフィルムやプラスチックシート等のポリマー物質からなる基板上での配向にはあまり有効に作用するものではない。ポリマー物質からなる基板の表面は前記慣用されている配向剤の極性末端基に対する親和性に乏しいものと推測され、それゆえ、一般的には、ホメオトロピック配向を全然示さないか、またはほんの僅かに配向を示すに留まる。また、アルキル側鎖付ポリイミド膜の形成には高温での熱処理が必要であるが、ポリイミド配向膜を焼成するに耐えることができ、光学用途として使用できる透明プラスチックフィルムはほんの僅かである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
これに対し本出願人は、液晶性フラグメント側鎖を含有するモノマーユニット(a)と非液晶性フラグメント側鎖を含有するモノマーユニット(b)を含有する側鎖型液晶ポリマーが、垂直配向膜を使用することなく基板上でホメオトロピック配向させることができ、これによりホメオトロピック配向液晶フィルムを製造できることを見出している(特願2000−370978)。
【0008】
これら側鎖型液晶ポリマーは垂直配向膜を使用することなく基板上でフィルムを形成しているため、液晶フィルムのTgが低く設計されている。これら液晶フィルムには液晶ディプレイ等の用途として用いうる耐久性の向上が望まれている。耐久性については、光重合性液晶化合物を含有してなるホメオトロピック配向液晶性組成物を、配向させ、固定化した後、紫外線等の光照射により解決できることを見出している(特願2001−136848)。
【0009】
しかし、前記ホメオトロピック配向液晶層は、基板の材質と液晶ポリマーや液晶性組成物の組み合わせによっては、ホメオトロピック配向性を示さないものが得られる場合があった。
【0010】
本発明は、垂直配向膜を使用することなく、基板上で、直接、側鎖型液晶ポリマーを用いて形成されるホメオトロピック配向液晶層、特に側鎖型液晶ポリマーに光重合性液晶化合物を配合してなるホメオトロピック配向液晶性組成物から形成されるホメオトロピック配向液晶層のホメオトロピック配向性を、基板の材質に拘わりなく満足させうるホメオトロピック配向液晶フィルムの製造方法を提供すること、また前記製造方法により得られたホメオトロピック配向液晶フィルムを提供することを目的とする。さらには基板上にホメオトロピツク配向液晶フィルム層を有する光学フィルムを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解消するための手段】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示すホメオトロピック配向液晶性組成物により前記目的を達成できることを見出し本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、液晶性フラグメント側鎖を含有するモノマーユニット(a)として、一般式(a):
【化1D】
(ただし、R1は水素原子またはメチル基を、aは1〜6の正の整数を、X1は−CO2−基または−OCO−基を、R2はシアノ基、炭素数1〜6のアルコキシ基、フルオロ基または炭素数1〜6のアルキル基を、bおよびcは1または2の整数を示す。)で表されるネマチック液晶性を有する側鎖を有するモノマーユニットと、
非液晶性フラグメント側鎖を含有するモノマーユニット(b)として、一般式(b):
【化2D】
(ただし、R3は水素原子またはメチル基を、R4は炭素数7〜22のアルキル基、炭素数1〜22のフルオロアルキル基、または一般式(b1):
【化3D】
ただし、dは1〜6の正の整数を、R5は炭素数1〜6のアルキル基を示す。)で表される直鎖状側鎖を有するモノマーユニットを含有する側鎖型液晶ポリマーを、垂直配向膜の設けられていない基板上に、アンカーコート層を介して塗工し、さらに当該側鎖型液晶ポリマーを液晶状態においてホメオトロピック配向させ、その配向状態を維持した状態で固定化することを特徴とするホメオトロピック配向液晶フィルムの製造方法、に関する。
【0013】
また、本発明は、液晶性フラグメント側鎖を含有するモノマーユニット(a)として、一般式(a):
【化1E】
(ただし、R1は水素原子またはメチル基を、aは1〜6の正の整数を、X1は−CO2−基または−OCO−基を、R2はシアノ基、炭素数1〜6のアルコキシ基、フルオロ基または炭素数1〜6のアルキル基を、bおよびcは1または2の整数を示す。)で表されるネマチック液晶性を有する側鎖を有するモノマーユニットと、
非液晶性フラグメント側鎖を含有するモノマーユニット(b)として、一般式(b):
【化2E】
(ただし、R3は水素原子またはメチル基を、R4は炭素数7〜22のアルキル基、炭素数1〜22のフルオロアルキル基、または一般式(b1):
【化3E】
ただし、dは1〜6の正の整数を、R5は炭素数1〜6のアルキル基を示す。)で表される直鎖状側鎖を有するモノマーユニットを含有する側鎖型液晶ポリマーと光重合性液晶化合物を含有してなるホメオトロピック配向液晶性組成物を、垂直配向膜の設けられていない基板上に、アンカーコート層を介して塗工し、さらに当該液晶性組成物を液晶状態においてホメオトロピック配向させ、その配向状態を維持した状態で固定化した後、光照射することを特徴とするホメオトロピック配向液晶フィルムの製造方法、に関する。
【0014】
前記本発明の製造方法では、垂直配向膜の設けられていない基板上にアンカーコート層を形成しており、当該アンカーコート層によって良好なホメオトロピック配向性を確保できる。
【0015】
前記ホメオトロピック配向液晶フィルムの製造方法において、アンカーコート層が透明ガラス質高分子膜であることが好ましい。
【0016】
アンカーコート層としては、側鎖型液晶ポリマーまたは液晶性組成物により形成される液晶層がホメオトロピック配向性を確保しうるものを特に制限なく使用できるが、透明ガラス質高分子膜が、液晶層のホメオトロピック配向性を確保するうえで好ましい。
【0017】
また前記ホメオトロピック配向液晶フィルムの製造方法は、基板の材質が、ポリマー物質である場合に有効である。
【0018】
基板としては、ポリマー物質、ガラス基板、金属等の各種材質のものを用いることができるが、特に基板の材質がポリマー物質の場合には、その材質により、液晶ポリマーや液晶性組成物の組み合わせによっては、ホメオトロピック配向性が低下するものがある。このような材質のポリマー物質を基材とする場合に、当該基板上にアンカーコート層を設けてホメオトロピック配向性が確保するのが有効である。
【0019】
また本発明は、前記製造方法により得られたホメオトロピック配向液晶フィルム、に関する。
【0020】
また本発明は、垂直配向膜の設けられていない基板上に、アンカーコート層を介して、液晶性フラグメント側鎖を含有するモノマーユニット(a)として、一般式(a):
【化1F】
(ただし、R1は水素原子またはメチル基を、aは1〜6の正の整数を、X1は−CO2−基または−OCO−基を、R2はシアノ基、炭素数1〜6のアルコキシ基、フルオロ基または炭素数1〜6のアルキル基を、bおよびcは1または2の整数を示す。)で表されるネマチック液晶性を有する側鎖を有するモノマーユニットと、
非液晶性フラグメント側鎖を含有するモノマーユニット(b)として、一般式(b):
【化2F】
(ただし、R3は水素原子またはメチル基を、R4は炭素数7〜22のアルキル基、炭素数1〜22のフルオロアルキル基、または一般式(b1):
【化3F】
ただし、dは1〜6の正の整数を、R5は炭素数1〜6のアルキル基を示す。)で表される直鎖状側鎖を有するモノマーユニットを含有する側鎖型液晶ポリマーまたは当該側鎖型液晶ポリマーと光重合性液晶化合物を含有してなるホメオトロピック配向液晶性組成物がホメオトロピック配向し、固定したホメオトロピック配向液晶フィルム層が設けられている光学フィルム、に関する。
【0021】
さらには本発明は、前記光学フィルムを適用した液晶表示装置、に関する。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明においてホメオトロピック配向液晶層を形成しうる液晶ポリマーとしては、下記、液晶性フラグメント側鎖を含有するモノマーユニット(a)と非液晶性フラグメント側鎖を含有するモノマーユニット(b)を含有する側鎖型液晶ポリマーが用いられる。
【0023】
前記側鎖型液晶ポリマーは、垂直配向膜を用いずに、液晶ポリマーのホメオトロピック配向を実現することができる。当該側鎖型液晶ポリマーは、通常の側鎖型液晶ポリマーが有する液晶性フラグメント側鎖を含有するモノマーユニット(a)の他に、アルキル鎖等を有する非液晶性フラグメント側鎖を含有するモノマーユニット(b)を有しており、非液晶性フラグメント側鎖を含有するモノマーユニット(b)の作用により、垂直配向膜を用いなくても、たとえば熱処理により液晶状態としネマチック液晶相を発現させ、ホメオトロピック配向を示すようになったものと推察する。
【0024】
前記モノマーユニット(a)はネマチック液晶性を有する側鎖を有するものであり、たとえば、一般式(a):
【化1】
(ただし、R1 は水素原子またはメチル基を、aは1〜6の正の整数を、X1 は−CO2 −基または−OCO−基を、R2 はシアノ基、炭素数1〜6のアルコキシ基、フルオロ基または炭素数1〜6のアルキル基を、bおよびcは1または2の整数を示す。)で表されるモノマーユニットがあげられる。
【0025】
またモノマーユニット(b)は、直鎖状側鎖を有するものであり、たとえば、一般式(b):
【化2】
(ただし、R3は水素原子またはメチル基を、R4は炭素数7〜22のアルキル基、炭素数1〜22のフルオロアルキル基、または一般式(b1):
【化3】
ただし、dは1〜6の正の整数を、R5は炭素数1〜6のアルキル基を示す。)で表されるモノマーユニットがあげられる。
【0026】
また、モノマーユニット(a)とモノマーユニット(b)の割合は、特に制限されるものではなく、モノマーユニットの種類によっても異なるが、モノマーユニット(b)の割合が多くなると側鎖型液晶ポリマーが液晶モノドメイン配向性を示さなくなるため、(b)/{(a)+(b)}=0.01〜0.8(モル比)とするのが好ましい。特に0.1〜0.5とするのがより好ましい。
【0027】
またホメオトロピック配向液晶層を形成しうる液晶ポリマーとしては、前記液晶性フラグメント側鎖を含有するモノマーユニット(a)と脂環族環状構造を有する液晶性フラグメント側鎖を含有するモノマーユニット(c)を含有する側鎖型液晶ポリマーがあげられる。
【0028】
前記側鎖型液晶ポリマーによれば、垂直配向膜を用いずに、液晶ポリマーのホメオトロピック配向を実現することができる。当該側鎖型液晶ポリマーは、通常の側鎖型液晶ポリマーが有する液晶性フラグメント側鎖を含有するモノマーユニット(a)の他に、脂環族環状構造を有する液晶性フラグメント側鎖を含有するモノマーユニット(c)を有しており、当該モノマーユニット(c)の作用により、垂直配向膜を用いなくても、たとえば熱処理により液晶状態としネマチック液晶相を発現させ、ホメオトロピック配向を示すようになったものと推察する。
【0029】
前記モノマーユニット(c)はネマチック液晶性を有する側鎖を有するものであり、たとえば、一般式(c):
【化4】
(ただし、R6 水素原子またはメチル基を、hは1〜6の正の整数を、X2 −CO2 −基または−OCO−基を、eとgは1または2の整数を、fは0〜2の整数を、R7 はシアノ基、炭素数1〜12のアルキル基を示す。)で表されるモノマーユニットモノマーユニットがあげられる。
【0030】
また、モノマーユニット(a)とモノマーユニット(c)の割合は、特に制限されるものではなく、モノマーユニットの種類によっても異なるが、モノマーユニット(c)の割合が多くなると側鎖型液晶ポリマーが液晶モノドメイン配向性を示さなくなるため、(c)/{(a)+(c)}=0.01〜0.8(モル比)とするのが好ましい。特に0.1〜0.6とするのがより好ましい。
【0031】
ホメオトロピック配向液晶層を形成しうる液晶ポリマーは、前記例示のモノマーユニットを有するものに限られず、また前記例示モノマーユニットは適宜に組み合わせることができる。
【0032】
前記側鎖型液晶ポリマーの重量平均分子量は、2千〜10万であるのが好ましい。重量平均分子量をかかる範囲に調整することにより液晶ポリマーとしての性能を発揮する。側鎖型液晶ポリマーの重量平均分子量が過少では配向層の成膜性に乏しくなる傾向があるため、重量平均分子量は2.5千以上とするのがより好ましい。一方、重量平均分子量が過多では液晶としての配向性に乏しくなって均一な配向状態を形成しにくくなる傾向があるため、重量平均分子量は5万以下とするのがより好ましい。
【0033】
なお、前記例示の側鎖型液晶ポリマーは、前記モノマーユニット(a)、モノマーユニット(b)、モノマーユニット(c)に対応するアクリル系モノマーまたはメタクリル系モノマーを共重合することにより調製できる。なお、モノマーユニット(a)、モノマーユニット(b)、モノマーユニット(c)に対応するモノマーは公知の方法により合成できる。共重合体の調製は、例えばラジカル重合方式、カチオン重合方式、アニオン重合方式などの通例のアクリル系モノマー等の重合方式に準じて行うことができる。なお、ラジカル重合方式を適用する場合、各種の重合開始剤を用いうるが、そのうちアゾビスイソブチロニトリルや過酸化ベンゾイルなどの分解温度が高くもなく、かつ低くもない中間的温度で分解するものが好ましく用いられる。
【0034】
前記側鎖型液晶ポリマーには、光重合性液晶化合物を配合して液晶性組成物とすることができる。光重合性液晶化合物は、光重合性官能基として、たとえば、アクリロイル基またはメタアクリロイル基等の不飽和二重結合を少なくとも1つ有する液晶性化合物であり、ネマチック液晶性のものが賞用される。かかる光重合性液晶化合物としては、前記モノマーユニット(a)となるアクリレートやメタクリレートを例示できる。光重合性液晶化合物として、耐久性を向上させるには、光重合性官能基を2つ以上有するものが好ましい。このような光重合性液晶化合物として、たとえば、下記化5:
【化5】
(式中、Rは水素原子またはメチル基を、AおよびDはそれぞれ独立して1,4−フェニレン基または1,4−シクロヘキシレン基を、Xはそれぞれ独立して−COO−基、−OCO−基または−O−基を、Bは1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、4,4’−ビフェニレン基または4,4’−ビシクロヘキシレン基を、mおよびnはそれぞれ独立して2〜6の整数を示す。)で表される架橋型ネマチック性液晶モノマー等を例示できる。また、光重合性液晶化合物としては、前記化5における末端の「H2 C=CR−CO2 −」を、ビニルエーテル基またはエポキシ基に置換した化合物や、「−(CH2 )m −」および/または「−(CH2 )n −」を「−(CH2 )3 −C* H(CH3 )−(CH2 )2 −」または「−(CH2 )2 −C* H(CH3 )−(CH2 )3 −」に置換した化合物を例示できる。
【0035】
上記光重合性液晶化合物は、熱処理により液晶状態として、たとえば、ネマチック液晶層を発現させて側鎖型液晶ポリマーとともにホメオトロピック配向させることができ、その後に光重合性液晶化合物を重合または架橋させることによりホメオトロピック配向液晶フィルムの耐久性を向上させることができる。
【0036】
液晶性組成物中の光重合性液晶化合物と側鎖型液晶ポリマーの比率は、特に制限されず、得られるホメオトロピック配向液晶フィルムの耐久性等を考慮して適宜に決定されるが、通常、光重合性液晶化合物:側鎖型液晶ポリマー(重量比)=0.1:1〜30:1程度が好ましく、特に0.5:1〜20:1が好ましく、さらには1:1〜10:1が好ましい。
【0037】
前記液晶性組成物中には、通常、光重合開始剤を含有する。光重合開始剤は各種のものを特に制限なく使用できる。光重合開始剤としては、たとえば、チバスペシャリフィケミカルズ社製のイルガキュア(Irgacure)907,同184、同651、同369などを例示できる。光重合開始剤の添加量は、光重合液晶化合物の種類、液晶性組成物の配合比等を考慮して、液晶性組成物のホメオトロピック配向性を乱さない程度に加えられる。通常、光重合性液晶化合物100重量部に対して、0.5〜30重量部程度が好ましい。特に3〜15重量部が好ましい。
【0038】
前記側鎖型液晶ポリマーまたは液晶性組成物を塗工する基板は、ガラス基板、金属箔、プラスチックシートまたはプラスチックフィルムのいずれの形状でもよい。基板の厚さは、通常、10〜1000μm程度である。
【0039】
プラスチックフィルムは配向させる温度で変化しないものであれば特に制限はなく、たとえば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー等の透明ポリマーからなるフィルムがあげられる。またポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体等のスチレン系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体等のオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー等の透明ポリマーからなるフィルムもあげられる。さらにイミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマーや前記ポリマーのブレンド物等の透明ポリマーからなるフィルムなどもあげられる。これらのなかでも水素結合性が高く、光学フィルムとして用いられるトリアセチルセルロース、ポリカーボネート、ノルボルネンポリオレフィン等のプラスチックフィルムが賞用される。
【0040】
また金属フィルムとしては、例えばアルミニウムなどから形成される当該フィルムが挙げられる。
【0041】
プラスチックフィルムとしては、特にゼオノア(商品名,日本ゼオン(株)製)、ゼオネックス(商品名,日本ゼオン(株)製)、アートン(商品名,JSR(株)製)などのノルボルネン構造を有するポリマー物質からなるプラスチックフィルムが光学的にも優れた特性を有する。これらポリマー物質(プラスチックフィルム)は光学異方性が非常に小さいため、プラスチックフィルム上に形成された前記液晶性組成物の配向液晶フィルム層は、当該配向液晶フィルム層を別のプラスチックフィルムヘ転写することなく、そのままホメオトロピック配向位相差フィルムとして液晶ディスプレイの光学補償用途等の光学フィルムに用いることができる。また、光学異方性を有するプラスチックフィルムやアルミホイルなどの金属フィルム上に形成した前記液晶性組成物の配向液晶フィルム層に関しては、前記液晶性組成物を配向液晶フィルム化した後、ノルボルネン構造を有するフィルムやセルローストリアセテートなどの透明で光学異方性の小さいプラスチックフィルム上に直接または粘着剤もしくは接着剤を介して転写することにより、光学補償フィルム等の光学フィルムに利用することができる。
【0042】
アンカーコート材料としては、金属アルコキシド、特に金属シリコンアルコキシドゾルが賞用される。金属アルコキシドは、通常アルコール系の溶液として用いられる。前記溶液は、基材に塗工後された後、溶媒を除去し、加熱によりゾルゲル反応を促進させることで、基材上で透明ガラス質高分子膜を形成する。金属属シリコンアルコキシドゾルからは金属シリコンアルコキシドゲル層が形成される。上記の金属アルコキシドゾル溶液を、基板上に塗工する方法としては、例えばロールコート法、グラビアコート法、スピンコート法、バーコート法などを採用することができる。溶媒除去や反応を促進する方法としては、通常、室温での乾燥、乾燥炉での乾燥、ホットプレート上での加熱などを利用される。
【0043】
アンカーコート層の厚みは、ホメオトロピック配向液晶層との密着性に寄与する因子であり、特にホメオトロピック配向液晶層が、側鎖型液晶ポリマーと光重合性液晶化合物を含有してなるホメオトロピック配向液晶性組成物により形成される場合には、ホメオトロピック配向液晶層は架橋による3次元構造が形成されているため、液晶層内の凝集性が向上して、特に基板との密着性が低下する傾向があり、アンカーコート層上に形成させるホメオトロピック配向液晶フィルムの厚みに応じた厚みに調整される。一般的には、ホメオトロピック配向液晶層とアンカーコート層の作製条件によりほぼ決定される。厚みの範囲としては0.05〜1μm程度とすることが好ましい。
【0044】
前記側鎖型液晶ポリマーまたは液晶性組成物を基板に塗工する方法は、当該側鎖型液晶ポリマーまたは液晶性組成物を溶媒に溶解した溶液を用いる溶液塗工方法または当該液晶ポリマーまたは液晶性組成物を溶融して溶融塗工する方法が挙げられるが、この中でも溶液塗工方法にて支持基板上に側鎖型液晶ポリマーまたは液晶性組成物の溶液を塗工する方法が好ましい。
【0045】
前記溶液を調製する際に用いられる溶媒としては、側鎖型液晶ポリマー、光重合性液晶化合物や基板の種類により異なり一概には言えないが、通常、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類、フェノール、パラクロロフェノールなどのフェノール類、ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキベンゼンなどの芳香族炭化水素類、その他、アセトン、酢酸エチル、tert−ブチルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレンブリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ピリジン、トリエチルアミン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ブチロニトリル、二硫化炭素などを用いることができる。溶液の濃度は、用いる側鎖型液晶ポリマーまたは液晶性組成物の溶解性や最終的に目的とする配向液晶フィルムの膜厚に依存するため一概には言えないが、通常3〜50重量%、好ましくは7〜30重量%の範囲である。
【0046】
塗工された前記側鎖型液晶ポリマーまたは液晶性組成物からなるホメオトロピック配向液晶フィルム層の厚みは1〜10μm程度とするのが好ましい。なお、特にホメオトロピック配向液晶フィルムの膜厚を精密に制御する必要がある場合には、膜厚が基板に塗工する段階でほぼ決まるため、溶液の濃度、塗工膜の膜厚などの制御は特に注意を払う必要がある。
【0047】
上記の溶媒を用いて所望の濃度に調整した側鎖型液晶ポリマーまたは液晶性組成物の溶液を、基板上のアンカーコート層に塗工する方法としては、例えば、ロールコート法、グラビアコート法、スピンコート法、バーコート法などを採用することができる。塗工後、溶媒を除去し、基板上に液晶ポリマー層または液晶性組成物層を形成させる。溶媒の除去条件は、特に限定されず、溶媒をおおむね除去でき、液晶ポリマー層または液晶性組成物層が流動したり、流れ落ちたりさえしなければ良い。通常、室温での乾燥、乾燥炉での乾燥、ホットプレート上での加熱などを利用して溶媒を除去する。
【0048】
次いで、支持基板上に形成された側鎖型液晶ポリマー層または液晶性組成物層を液晶状態とし、ホメオトロピック配向させる。たとえば、側鎖型液晶ポリマーまたは液晶性組成物が液晶温度範囲になるように熱処理を行い、液晶状態においてホメオトロピック配向させる。熱処理方法としては、上記の乾燥方法と同様の方法で行うことができる。熱処理温度は、使用する側鎖型液晶ポリマーまたは液晶性組成物と支持基板の種類により異なるため一概には言えないが、通常60〜300℃、好ましくは70〜200℃の範囲において行う。また熱処理時間は、熱処理温度および使用する側鎖型液晶ポリマーまたは液晶性組成物や基板の種類によって異なるため一概には言えないが、通常10秒〜2時間、好ましくは20秒〜30分の範囲で選択される。10秒より短い場合、ホメオトロピック配向形成が十分に進行しないおそれがある。
【0049】
熱処理終了後、冷却操作を行う。冷却操作としては、熱処理後のホメオトロピック配向液晶フィルムを、熱処理操作における加熱雰囲気中から、室温中に出すことによって行うことができる。また空冷、水冷などの強制冷却を行ってもよい。前記側鎖型液晶ポリマーのホメオトロピック配向層は、側鎖型液晶ポリマーのガラス転移温度以下に冷却することにより配向が固定化される。
【0050】
液晶性組成物の場合には、このように固定化されたホメオトロピック液晶配向層に対して、光照射を行い光重合性液晶化合物を重合または架橋させて光重合性液晶化合物を固定化して、耐久性を向上したホメオトロピック配向液晶フィルムを得る。光照射は、たとえば、紫外線照射により行う。紫外線照射条件は、十分に反応を促進するために、不活性気体雰囲気中とすることが好ましい。通常、約80〜160mW/cm2 の照度を有する高圧水銀紫外ランプが代表的に用いられる。メタハライドUVランプや白熱管などの別種ランプを使用することもできる。なお、紫外線照射時の液晶層表面温度が液晶温度範囲内になるように、コールドミラー、水冷その他の冷却処理あるいはライン速度を速くするなどして適宜に調整する。
【0051】
このようにして、側鎖型液晶ポリマーまたは液晶性組成物の薄膜が生成され、配向性を維持したまま固定化することにより、ホメオトロピック配向した配向液晶フィルムが得られる。当該配向液晶層は同一の方向で配向された分子を有する。従ってこの配向液晶層の配向ベクトルの凍結または安定化およびその異方性物性の保存が達成されることは周知であり、このような薄膜はそれらの光学的性質が確認され、各種の用途で使用される。前記配向液晶層は一軸性の正の複屈折率を有する薄膜である。
【0052】
以上のようにして得られるホメオトロピック配向液晶層の配向は、当該液晶層の光学位相差を垂直入射から傾けた角度で測定することによって量化することができる。ホメオトロピック配向液晶フィルムの場合、この位相差値は垂直入射について対称的である。光学位相差の測定には数種の方法を利用することができ、例えば自動複屈折測定装置(オーク製)および偏光顕微鏡(オリンパス製)を利用することができる。このホメオトロピック配向液晶フィルムはクロスニコル偏光子間で黒色に見える。このようにしてホメオトロピック配向性を評価した。
【0053】
こうして得られたホメオトロピック配向液晶フィルムは、光学フィルムとして用いられる。前記配向液晶フィルムは基板から剥離して用いてもよいし、剥離することなく基板上に形成された配向液晶層としてそのまま用いてもよい。
【0054】
また、ホメオトロピック配向液晶フィルムは光学フィルムとして用いられる。例えば、一軸配向した位相差フィルムを基材としてホメオトロピック配向液晶フィルムを作製すると、広視野角の位相差フィルが得られ、これをSTN型液晶表示装置に適用することにより、液晶表示装置の表示特性、特に視野角特性を著しく向上させることができる。
【0055】
【実施例】
以下に実施例をあげて本発明の一態様について説明するが、本発明は実施例に限定されないことはいうまでもない。得られたホメオトロピック配向液晶フィルムについては、配向性、密着性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0056】
実施例1
アンカーコート用のゾル溶液としてエチルシリケート2%溶液(商品名コルコートP,コルコート(株)製)を、ポリカーボネート(鐘淵化学(株)製)をポリマー材料とするプラスチックフィルム(35μm)にバーコーティングにより塗工した。次いで、120℃で1分間加熱し、透明ガラス質高分子膜(0.3μm)を形成した。
【0057】
【化6】
上記の化6(式中の数字はモノマーユニットのモル%を示し、便宜的にブロック体で表示している、重量平均分子量5000)に示される側鎖型液晶ポリマー12.5重量部、ネマチック液晶層を示す光重合性液晶化合物(BASF社製,PaliocolorLC242)12.5重量部および光重合開始剤(チバスペシャリフィケミカルズ社製,イルガキュア907)5重量部をシクロヘキサノン75重量部に溶解した溶液を、フィルム基材に設けたアンカーコート層上に、スピンコーティングにより塗工した。次いで、130℃で1分間加熱し、その後室温まで一気に冷却することにより、前記液晶層をホメオトロピック配向させ、かつ配向を維持したままガラス化しホメオトロピック配向液晶層(2μm)を固定化した。さらに、固定化したホメオトロピック配向液晶層に紫外線を照射することによりホメオトロピック配向液晶フィルムを作製した。
【0058】
(ホメオトロピック配向性)
サンプル(基板付きホメオトロピック配向液晶フィルム)をクロスニコルさせた偏光顕微鏡により、当該フィルム表面に対し垂直な方向からサンプルを観察したところ、正面からは何も見えなかった。これによりホメオトロピック配向を確認した。すなわち光学位相差が発生していないことがわかった。このフィルムを傾けて斜めから光を入射し、同様にクロスニコルで観察したところ、光の透過が観測された。
【0059】
また、同フィルムの光学位相差を自動複屈折測定装置により測定した。測定光をサンプル表面に対して垂直あるいは斜めから入射して、その光学位相差と測定光の入射角度のチャートから、ホメオトロピック配向を確認した。ホメオトロピック配向では、サンプル表面に対して垂直方向での位相差(正面位相差)がほぼゼロである。このサンプルに関しては、液晶層の遅相軸方向に斜めから位相差を測定したところ、測定光の入射角度の増加に伴い、位相差値が増加したことからホメオトロピック配向が得られていると判断できた。以上から、ホメオトロピック配向性は良好であると判断した。
【0060】
(密着性試験)
密着性を調べるために、剥離試験を行った。剥離試験としては、得られたホメオトロピック配向液晶フィルムに1mm角の切れ目碁盤目状に入れこれにJISZ 0237−1991にて測定したときの接着力が7N/25mmの接着テープを液晶表面に貼付け、12時間室温に放置した後、テープを引き剥がし、剥がれなかった部分を光学的手法(フィルムを偏光板の間に挟み色変化の違いにより位相差の値に違いが見られるのかを観察する方法、または位相差測定により得られ値を試験前後のもので比較する方法)で観察、記録し、以下の式により密着度を求めた。密着度は95%であった。
密着度(%)=(剥がれなかった部分/テープを貼り付けた領域)×100。
【0061】
実施例2
実施例1において、ホメオトロピック配向液晶層の厚みを1. 2μm、アンカーコート層の厚みを0. 1μmとしたこと以外は実施例1と同様にしてホメオトロピック配向液晶フィルムを作製した。得られたホメオトロピック配向液晶フィルムについて、実施例1と同様にして評価した。ホメオトロピック配向性は良好であった。密着度は100%であった。
【0062】
実施例3
実施例1において、アンカーコート層の厚みを0.1μmとしたこと以外は実施例1と同様にしてホメオトロピック配向液晶フィルムを作製した。得られたホメオトロピック配向液晶フィルムについて、実施例1と同様にして評価した。ホメオトロピック配向性は良好であった。密着度は5%であった。
【0063】
実施例4
実施例1において、アンカーコート層の厚みを0.2μmとしたこと以外は実施例1と同様にしてホメオトロピック配向液晶フィルムを作製した。得られたホメオトロピック配向液晶フィルムについて、実施例1と同様にして評価した。ホメオトロピック配向性は良好であった。密着度は10%であった。
【0064】
比較例1
実施例1において、アンカーコート層を形成しなかったこと以外は実施例1と同様の操作を行った。得られたフィルムについて、実施例1と同様にして評価した。ホメオトロピック配向は確認できなかった。正面から観察すると白濁しており、液晶ディレクターがあらゆる方向に存在し、液晶の配向性の乱れが生じていると考えられる。密着度は100%であった。
【0065】
【表1】
Claims (7)
- 液晶性フラグメント側鎖を含有するモノマーユニット(a)として、一般式(a):
非液晶性フラグメント側鎖を含有するモノマーユニット(b)として、一般式(b):
- 液晶性フラグメント側鎖を含有するモノマーユニット(a)として、一般式(a):
非液晶性フラグメント側鎖を含有するモノマーユニット(b)として、一般式(b):
- アンカーコート層が、透明ガラス質高分子膜であることを特徴とする請求項1または2記載のホメオトロピック配向液晶フィルムの製造方法。
- 基板の材質が、ポリマー物質であることを特徴とする請求項1、2または3記載のホメオトロピック配向液晶フィルムの製造方法。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法により得られたホメオトロピック配向液晶フィルム。
- 垂直配向膜の設けられていない基板上に、アンカーコート層を介して、液晶性フラグメント側鎖を含有するモノマーユニット(a)として、一般式(a):
非液晶性フラグメント側鎖を含有するモノマーユニット(b)として、一般式(b):
- 請求項6記載の光学フィルムを適用した液晶表示装置。
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