JP4370642B2 - 光学補償シート - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶ディスプレイにおいて、視野によるコントラストの低下などを改善するための光学補償シートに関し、詳しくは、従来の液晶性高分子を用いた光学補償シートではなしえなかった配向状態を完全に保持することによる膜安定性、膜強度に優れた光学補償シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
現在用いられているアクティブマトリックス駆動のツイステッドネマティック型液晶表示素子(以下TN−LCDと省略する)は低電圧駆動、低消費電力、薄型、軽量化が可能であり、多様な表示機能をもたせることが可能であることなど数多くの特徴を有しており、又、正面から見た場合CRTに匹敵する画質を有することからワードプロセッサ、ノートパソコン、携帯用情報端末のみならずデスクトップ型のパソコン等の表示装置としても広く利用されている。しかしながら、従来のTN−LCDにおいては、液晶分子を利用するために必然的に発生する複屈折性のために、斜めから見たときに表示色が変化すること或いは表示コントラストが低下するといった視野角の問題が根本的に避けられず、その改良が強く望まれている。TN−LCDは駆動方式で分類すれば、単純マトリックス方式、能動素子を電極として用いるTFT(Thin Film Transister)電極、MIM(Metal Insulater Metal)、或いはTFD(Thin Film Diode)電極を用いるアクティブマトリックス方式などのように細分化できる。本発明の補償シートはいずれの駆動方式に関しても絶大なる効果を有する。尚、公知の技術であるハーフトーングレースケール方式や、ドメイン分割方式など、液晶表示素子(LCD)の視野角拡大を液晶セルの側から行おうという試みで考えられたものであり、これらのような方式で視野角がある程度改善されたLCDに対しても本発明の補償シートは有効に作用し、さらなる視野角拡大が可能となる。
【0003】
上記のような問題に関して改良のために様々な試みがなされている。TN−LCDの表示方法に変化を与えることで問題を解決しようという方法がある。1つの画素を複数に分割してそれぞれの画素への印加電圧を一定の比率で変化させる方法(half tone方式)、一つの画素を複数に分割してそれぞれの部分で液晶分子の立ち上がりの方向を変化させる方法(マルチドメイン方式)、液晶分子をディスプレイと平行方向の電圧をかける方法(IPS方式)、負の誘電異方性をもった液晶分子を垂直に配向させ駆動する方法(VA方式)、ベンド配向セルと光学補償シートの組み合わせによる方法(OCB方式)などが開発されている。これらの方法は一定の効果が認められるものの、配向膜、電極など様々な面においてTN−LCDの構造を大きく変える必要があることから従来の方式に比べ、新たな製造技術の確立、新たな製造設備の設置が必要となり、結果として製造の困難さ、コスト高を招いている。
【0004】
一方、TN−LCDの構造は一切変えず、従来のTN−LCDに光学補償シートを組み込むことで視野角を拡大させる方法がある。この方法はTN−LCD製造設備の増設等が不要であることからコスト的に優れており、又簡便に使用できる利点があるため注目されており多くの提案がある。ノーマリーホワイト(NW)モードのTN−LCDに視野角問題が発生する原因は、電圧を印加した黒表示時の液晶分子の配向状態にある。この場合液晶分子はセル中で基板に対してほぼ垂直配向しており、光学的に正の一軸性となっている。従って視野角を広げるための光学補償シートとしては液晶セルの黒表示時の正の一軸性を補償するために、光学的に負の一軸性を示すフィルムを用いる提案がなされている。又、セル中の液晶分子が黒表示時においても配向膜界面付近ではセル界面と平行もしくは傾いた配向をしていることに着目し、光学軸が傾いた負の一軸性のフィルムを用いて補償することによって、更に視野角拡大効果を高める方法も検討されている。
【0005】
例えば、特開平4−349424号、同6−250166号公報にはらせん軸が傾いたコレステリックフィルムを用いた光学補償シート及びそれを用いたLCDが提案されている。しかしながららせん軸が傾いたコレステリックフィルムを製造することは困難であり、実際にもこれらの特許中にはらせん軸を傾けるための方法が全く記載されていない。又、特開平5−249547号、同6−331979号公報には光軸の傾いた負の光学一軸性補償基を用いたLCDが提案されており、具体的な実施態様としては多層薄膜補償基を用いている。更に特開平7−146409号、同8−5837号公報などにおいて光軸が傾いた負の一軸性補償シートとしてディスコティック液晶を傾斜配向させた光学補償シート及びそれを用いたLCDが提案されている。しかしながらディスコティック液晶は化学構造が複雑であり、合成が煩雑であることから結果的にコスト高となってしまう。
【0006】
補償シートの他の形態としては正の一軸性を有する液晶性高分子を用いたフィルムも提案されている。例えば、特開平7−140326号公報においてねじれチルト配向した液晶性高分子フィルムからなるLCDの視野角拡大フィルムが用いられている。しかしながらチルト配向に加えてねじれ配向を導入することは工業的には容易ではない。又、特開平7−198942号、同7−181324号公報には類似技術として、ネマティック液晶性高分子を光軸が板面と交差する様に配向させたフィルムからなる視野角補償板及びそれを用いたLCDが提案されている。しかしながらこの場合も光軸を単純に傾斜させた補償板を用いているため、視野角拡大効果は充分には得られていない。
【0007】
これらの問題を解決する方法として、特開平10−186356号公報には、正の一軸性を有する液晶性高分子を熱処理によって配向させ、ガラス転位点以下にすることでその配向状態を保持した光学補償シートが開発され、工業的なコストの面のみならず光学補償に関しても非常に優れた機能を有していることが提案されている。しかしながらこのフィルムは、液晶性高分子の配向状態を、高分子がガラス転位点以下では流動性を失うことを利用して保持しているにすぎず、実際は配向状態の完全な保持は不可能であり、又、膜安定性、及び膜強度の面で大きな問題を抱えていることからこれらの点において改良が強く望まれている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、液晶性高分子を用いた光学補償シートを組み込んだLCDにおいて、視野によるコントラストの低下などを改善し、かつ従来の液晶性高分子を用いた光学補償シートではなしえなかった液晶性高分子の配向状態の完全な保持、及び膜安定性、膜強度に優れた光学補償シートを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、以下の手段により達成される。
【0010】
1.透明支持体上に少なくとも一層の配向膜層及び少なくとも一層の液晶性高分子が配向状態を示す層を有する光学補償シートにおいて、該液晶性高分子が熱又は光エネルギーを加えることにより反応を起こし得る化学反応性基を有し、該液晶性高分子が液晶状態において形成した配向状態を化学反応性基間の反応によって固定化せしめたことを特徴とする光学補償シート。
【0011】
2.透明支持体上に少なくとも一層の配向膜層及び少なくとも一層の液晶性高分子が配向状態を示す層を有する光学補償シートにおいて、少なくとも一種の熱又は光エネルギーによって該液晶性高分子と化学反応可能な配向固定化化合物が該液晶性高分子含有層に含まれることを特徴とする光学補償シート。
【0012】
3.透明支持体上に少なくとも一層の配向膜層及び少なくとも一層の液晶性高分子が配向状態を示す層を有する光学補償シートにおいて、少なくとも一種の熱又は光エネルギーを加えることにより反応を起こし得る化学反応性基を有する化合物が該液晶性高分子含有層に含有され、かつ該化学反応性基を有する化合物が該液晶性高分子とは化学的に反応せずに、液晶性高分子の配向状態を固定化せしめたことを特徴とする光学補償シート。
【0013】
4.液晶性高分子含有層に含有される化学反応性基を有する化合物が1分子中に少なくとも2つ以上の化学反応性基を有する化合物である前記3に記載の光学補償シート。
【0014】
5.液晶性高分子が光学的に正の一軸性を有し、かつ該液晶性高分子が塗布された光学補償シートの光学異方性が負であることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載の光学補償シート。
【0015】
6.液晶性高分子がネマティックハイブリッド配向である前記1〜5のいずれか1項に記載の光学補償シート。
【0016】
7.化学反応性基が光を照射することによって反応することを特徴とする前記1〜6のいずれか1項に記載の光学補償シート。
【0017】
8.化学反応性基が、不飽和エチレン性基であることを特徴とする前記1〜7のいずれか1項に記載の光学補償シート。
【0018】
9.液晶性高分子含有層に重合開始剤を0.001〜7重量%含むことを特徴とする前記7に記載の光学補償シート。
10.前記透明支持体がトリアセチルセルロースフィルムであることを特徴とする前記1〜9のいずれか1項に記載の光学補償シート。
【0019】
以下本発明について更に詳しく説明する。本発明の光学補償シートはTN−LCDの視野角依存性を大幅に改善するものである。先ず、補償の対象となるTN−LCDについて説明する。TN−LCDは駆動方式で分類すれば、単純マトリックス方式、能動素子を電極として用いるTFT電極,MIM、或いはTFD電極を用いるアクティブマトリックス方式などのように細分化できる。本発明の補償シートはいずれの駆動方式に関しても絶大なる効果を発揮する。尚、公知の技術であるハーフトーングレースケール方式や、ドメイン分割方式など、LCDの視野角拡大を液晶セルの側から行おうという試みで考えられた方式で視野角がある程度改善されたLCDに対しても本発明の補償シートは有効に作用し、更なる視野角拡大が可能となる。
【0020】
上記の如きTN−LCDに対し、優れた視野角拡大効果を与えうる本発明の補償シートは光学的に正の一軸性を示す液晶性高分子、具体的には正の一軸性を示す液晶性高分子化合物又は少なくとも1種の該液晶性高分子化合物を含有する光学的に正の一軸性を示す液晶性高分子組成物からなり、該液晶性化合物又は該液晶性高分子組成物が液晶状態において形成したネマティックハイブリッド配向状態を該液晶性高分子中又は該光学的異方層内に含まれる別の化合物中の化学反応性基による反応により固定化したものである。これにより従来の光学補償シートでは得ることの出来なかった高い熱安定性及び膜強度を光学補償シートに付与したものである。
【0021】
本発明でいう液晶性高分子とはいわゆる高分子、即ち分子量が1万以上のもので液晶性を有するものであればよい。
【0022】
本発明の液晶表示素子用補償シートはネマティックハイブリッド配向状態を光学異方層内の液晶性高分子中又は該光学的異方層内に含まれる別の化合物中の化学反応性基による反応により固定化したものを利用するものである。本発明でいうネマティックハイブリッド配向とは、光学異方層において液晶性高分子がネマティック配向しており、この時液晶性高分子のディレクターと光学異方層を含むフィルム平面のなす角度がフィルムの膜厚方向に変化している状態をいう。従って上面界面近傍と下面界面近傍とで該ディレクターとフィルム平面とのなす角度が異なっていることから、該フィルムの上面と下面の間では該角度が連続的に変化しているものといえる。
【0023】
本発明の補償シートはネマティックハイブリッド配向状態を該光学異方層中の液晶性高分子が有する化学反応性基、或いは該光学異方層中に含まれる化合物が有する化学反応性基が様々な架橋反応を起こすことによって液晶状態における配向状態を固定化し、更にはその状態を広い条件で保持できるもので、そのために液晶性高分子のディレクターがフィルムの膜厚方向ですべての場所において異なる角度を向いている。従って本発明の補償シートは、フィルムという構造体としてみた場合、もはや光軸は存在しない。
【0024】
本発明の透明支持体は光透過率が良好で、80%以上であることが好ましい。これらの素材としてはトリアセチルセルロースなど、固有複屈折値が小さい素材から形成された素材が好ましく、トリアセチルセルロースフィルム(コニカ(株)製)などを用いることができる。
【0025】
但し、光透過率が良好であれば、固有屈折率が大きい素材でも製膜時に特に正面から見たときに光学的等方性を有するものが好ましい。この様な材料としては、ゼオネックス(日本ゼオン(株)製)、ARTON(日本合成ゴム(株)製)などの市販品を使用することができる。更に、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルフォン及びポリエーテルスルフォンなどの固有複屈折率の大きい素材であっても、溶液流延、溶融押し出し等の条件、更には縦、横方向に延伸条件等を適宜設定することにより、得ることが出来る。
【0026】
次に用いる配向膜について説明する。本発明に用いることのできる配向基板として、具体的には面内の異方性を有しているものが望ましく、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリケトンサルファイド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリアリレート、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、セルロース系プラスチックス、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などのプラスチックフィルム基板及び一軸延伸プラスチックフィルム基板、表面にスリット状の溝を付けたアルミ、鉄、銅などの金属基板、表面をスリット状にエッチング加工したアルカリガラス、ホウ珪酸ガラス、フリントガラスなどのガラス基板などである。
【0027】
本発明においては上記プラスチックフィルム基板にラビング処理を施したラビングプラスチックフィルム基板、又はラビング処理を施したプラスチック薄膜、例えばラビングポリイミド膜、ラビングポリビニルアルコール膜などを有する上記各種基板、更に酸化珪素の斜め蒸着膜などを有する上記各種基板なども用いることができる。
【0028】
上記各種基板において、本発明の液晶性高分子組成物をネマティックハイブリッド配向に形成せしめるのに好適な該基板としては、ラビングポリイミド膜を有する各種基板、ラビングポリエーテルスルフォン基板、ラビングポリフェニレンサルファイド基板、ラビングポリエチレンテレフタレート基板、ラビングポリエチレンなフタレート基板、ラビングポリアリレート基板、セルロース系プラスチック基板を挙げることができる。
【0029】
又、LCDの配向膜として広く用いられているポリイミド膜(好ましくは弗素原子含有ポリイミド)も有機配向膜として好ましい。これはポリアミック酸(例えば日立化成(株)製のLQ/LXシリーズ、日産化学(株)製のSEシリーズ等)を支持体面に塗布し、100〜300℃で0.5〜1時間焼成した後、ラビングすることにより得られる。
【0030】
又、前記ラビング処理は、LCDの液晶配向処理工程として広く採用されている処理方法を利用することができる。即ち、配向膜の表面を、紙やガーゼ、フェルト、ゴム或いはナイロン、ポリエステル繊維などを用いて一定方向に擦ることにより配向を得る方法を用いることができる。一般的には、長さ及び太さが均一な繊維を平均的に植毛した布などを用いて数回程度ラビングを行うことにより実施される。或いは、この様なラビング処理の代わりに、例えばポリビニルアルコールの薄膜を4〜5倍に延伸する方法、或いはガラス板を直接ラビングする方法も利用することができる。
【0031】
又無機斜方蒸着膜の蒸着物質としては,SiO2を代表とし,TiO2、ZnO等の金属酸化物、或いはMgF2等のフッ化物更にAu、Al等の金属が挙げられる。尚、金属酸化物は、高誘電率のものであれば斜方蒸着物質として用いることができ、上記に限定されるものではない。無機斜方蒸着膜は、蒸着装置を用いて形成することができる。フィルム(支持体)を固定して蒸着するか、或いは長尺フィルムを移動させて連続的に蒸着することにより無機斜方蒸着膜を形成することができる。
【0032】
光学異方層を配向膜を使用せずに配向させる方法として、支持体上の光学異方層を液晶層を形成しうる温度に加熱しながら、電場或いは磁場を付与する方法を挙げることができる。又、熱風を吹き付ける方法や、液晶温度範囲で基板を傾斜させ、液晶性化合物が流れることによって配向状態を得ることもできる。
【0033】
メソゲン基とは液晶性を発現させるために必須の構造であり、本発明の液晶性化合物はこの構造を分子中に有することによって液晶性を発現することができる。即ちこの構造が存在しなければ液晶性は発現しない部分のことをいい、本来は剛直な部分(コア)、柔軟な部分(スペーサー)、更に末端基の3種からなる構造である。この構造は液晶性を発現させることができればよく、上記の3種の部分からなる構造に必ずしも限定されるものではない。
【0034】
本発明に用いる液晶性高分子は均一な欠陥のない配向のために、良好なドメイン合一性を示すことが望ましい。均一な欠陥のない配向状態を得るためには、配向膜と、その上に塗布した液晶性高分子を含む光学異方層との相性も関係してくるが、ドメインの合一性が悪い場合には得られるフィルム内に無数のドメインができ更にドメイン同士の境界に配向欠陥が生じ、光を散乱するようになる。又、これらはフィルムの光透過率の低下にもつながるので望ましくない。
【0035】
次に、本発明に用いるネマティックハイブリッド配向状態をとる液晶性高分子について説明し、ついで本発明の液晶性高分子組成物について説明する。
【0036】
本発明に該高分子量成分として用いられる液晶性高分子は、主鎖型の液晶性高分子、例えばポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエステルイミド等が挙げられる。又、側鎖型の液晶性高分子、例えばポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリシロキサン、ポリマロネート等も例示できる。以下、具体的に本発明に用いることのできる液晶性高分子の構造の好ましい例を示す。
【0037】
本発明の光学補償シートは透明支持体上に液晶性高分子を塗布後、乾燥、熱処理、固定化という操作を行うことによって得られるものである。本発明の用途においては光学補償シート内の液晶性高分子を配向させることが求められており、例えば、ネマティック層を形成する温度が室温以上かつ支持体の熱安定性の観点からは上限は支持体のガラス転移点以下で処理することができる。この時、該液晶性高分子の液晶温度範囲は構造などにより異なるために上記の範囲で定義することは困難である。
【0038】
本発明に用いることのできる主鎖型液晶性高分子のコアの部分の構造の好ましい例としては以下のようなA、B、C、Dのコア構造を組み合わせたものを挙げることができる。これらの構造をコアとして組み合わせることで本発明に用いることのできる液晶性高分子が得られる。例として上げた部分のA〜Dまですべての構造が必須ではなく、液晶性の発現が得られるものであればこれらの組み合わせは特に制限されるものではない。又、これらの構造以外にも液晶性を発現させることが出来るものであれば組み合わせて用いることができ、これらの構造に特に限定されるものではない。
【0039】
【化1】
Figure 0004370642
【0040】
1〜R4は水素又は炭化水素の置換基を表す。主鎖にこれらの構造が含まれる時には、少なくともR1〜R4の中1つは化学反応性基を有する置換基であることが必要であるが、光学異方層内に化学反応性基を有する化合物が他に存在する場合はR1〜R4が化学反応性基を有する置換基である必要はなく、液晶性高分子の本来の性質、即ち液晶性を阻害するものでなければ構造は特に限定されるものではない。
【0041】
又これらの主鎖型液晶性高分子化合物はスペーサーとして以下のような基を含んでいることが好ましい。
【0042】
スペーサーとは、液晶相を発現させるための構造の中の柔軟な部分であり、これは、コアの両側、片側、或いは放射状についていることもある。又、本発明でいうコアとはメソゲンコアともいい、メソゲン基内の剛直な部分である。又、液晶相が発現するためにスペーサーが特に必要ない場合もあり、長さ、数、構造などは特に限定されるものではないが、アルキレン鎖、アルキレンオキシド鎖、シロキサンなどの柔軟なものが好ましい。
【0043】
【化2】
Figure 0004370642
【0044】
上記コアの部分をX、スペーサーの部分をYとすると、本発明に用いることのできる液晶性高分子はXとYの組み合わせによってえられる。コアの部分の例として示したA、B、C、Dの組み合わせはRの構造にもよることから、一概にはいえないが、n1〜n3の範囲は0〜16が好ましく0〜12の範囲が更に好ましい。又、上に示したスペーサーの構造は一例であり、液晶相の発現に寄与できるものであればこの限りである必要はなく、又、直鎖構造である必要もない。
【0045】
代表的な液晶性高分子の例を以下に示す。
【0046】
【化3】
Figure 0004370642
【0047】
上記の構造は一例であり、液晶性をもつものはこの構造に限ることはない。従って、本発明に用いられる構造は液晶性をもつものであれば、この構造に限定されるものではない。上記のような高分子に化学反応性基をもたせることによって本発明における化学反応性基を有する液晶性高分子が得られるものである。化学反応性基を導入する方法としては、主鎖型液晶性高分子のモノマーと化学反応性基を有するモノマーを共重合させる方法、主鎖型液晶性高分子のモノマーに化学反応性基を有する構造部分を反応させ反応性基を側鎖として含有するモノマーを合成する方法、或いは高分子反応によって化学反応性基を高分子に導入する方法などがある。
【0048】
ついで、本発明の該光学異方層内の液晶性高分子の有する化学反応性基、或いは該光学異方層内に含まれる他の化合物が有する化学反応性基について説明する。化学反応性基の好ましい例は以下に構造を示した。該液晶性高分子にこの構造の部分を導入する場合、該化学反応性基を有するユニットをモノマーに導入し、液晶をモノマーとの共重合体とする場合や、高分子反応を用いて液晶性高分子に該化学反応性基を有するユニットを導入する場合がある。導入できる化学反応性基や化学反応性基を有するユニットの種類は該液晶性高分子の種類、即ち主鎖型や側鎖型、その複合型、或いは該液晶性高分子の液晶性やメソゲン基の構造、種類によって、変化するため一概に言えないが、該高分子の液晶性高分子としての性質、即ち液晶性を阻害しない限りはこの範囲に特に限定されるものではない。
【0049】
本発明に用いられることの出来る化学反応性基としては、ラジカル重合性基や、イオン重合性基等、反応性基同士の化学反応により架橋を行うような基が好ましく、例えばイソシアナート基、エポキシ基、アジリジン基、ビニルスルホニル基、オキサゾリン基、アクリロイル基、ビニル基、ビニルオキシ基、プロパルギル基、メタクリロイル基、アセチレニル基、アレニル基、シンナモイル基などが挙げられる。これらのうち不飽和エチレン性基、エポキシ基、又はシンナモイル基であることが好ましく、エポキシ基、シンナモイル基であることが更に好ましく、シンナモイル基であることが最も好ましい。
【0050】
該液晶性高分子が化学反応性を有する場合の、化学反応性基を有するユニットの導入率について説明する。該液晶性高分子が主鎖型の場合や側鎖型の場合、或いは高分子反応などによる導入の場合によって、更にはメソゲン基の構造を含めた高分子の構造によって大きく変化することから該高分子の液晶性高分子としての性質即ち液晶性を阻害しない限りはその範囲が特に限定されるものではないが、その範囲が化学反応性基の割合を重量%で表すと側鎖型の場合、高分子にしめる化学反応性基を有するユニットが0.001〜70%の範囲が好ましく、1〜40%の範囲が更に好ましい。主鎖型液晶性高分子の場合0.001〜40%の範囲が好ましく0.5〜20%の範囲が更に好ましい。高分子反応によって化学反応性基を高分子に導入した場合は概ね0.001〜30%の範囲が好ましく0.1〜15%の範囲が更に好ましい。
【0051】
本発明における前記の不飽和エチレン性基には、例えばラジカル的な反応によって重合し化学結合を形成するもの、或いはビニルスルホニル基のように例えばアミノ基との付加反応によって化学結合を形成するものなどがある。この反応性は条件によって変化することから両者を区別することは困難である。
【0052】
従って、液晶性高分子の反応性基としては例えば付加反応をするような基同士、代表的な例としてはエポキシ基とヒドロキシ基或いはカルボキシ基等のような基、或いは上記のビニルスルホニル基とヒドロキシ基、アミノ基のような基を異なった分子間に導入し架橋を行うことで配向を固定化する方法も本発明は除外するものではない。
【0053】
該光学補償シートは透明支持体上に液晶性高分子を塗布後、乾燥、熱処理、固定化という操作を行うことによって得られるものである。ここに示した構造は本発明に用いる事の出来る液晶性高分子の好ましい例であるが、本発明の用途においては光学補償シート内の液晶性高分子を配向させることが求められており、例えばネマティック層を形成する温度が室温以上かつ支持体の熱安定性の観点から上限は支持体のガラス転位点以下で処理することが出来る。この時、該液晶性高分子の液晶温度範囲は構造などにより異なるために上記の範囲で定義することは困難である。
【0054】
本発明にはこれら主鎖型液晶性高分子の他、側鎖型液晶性高分子を用いる事も出来る。側鎖型液晶性高分子は前記液晶性を示す構造部分であるメソゲン基すなわち、コア、スペーサー、末端基等の成分が高分子ポリマー骨格の側鎖として導入された高分子液晶化合物である他は特に主鎖型の液晶性高分子化合物と液晶性を示す点においては変わらず、共に液晶性高分子としてよくしられているものであり、本発明において主鎖型液晶性高分子と共に有利に用いることができる液晶性化合物である。
【0055】
光学補償シートは透明支持体上に液晶性高分子を塗布後、乾燥、熱処理、固定化という操作を行うことによって得られるものである。ここに示した構造は本発明に用いることの出来る液晶性高分子の好ましい例であるが、本発明の用途においては光学補償シート内の液晶性高分子を配向させることが求められており、例えばネマティック層を形成する温度が室温以上かつ支持体の熱安定性の観点から上限は支持体のガラス転位点以下で処理することが出来る。この時、該液晶性高分子の液晶温度範囲は構造などにより異なるために上記の範囲を定義することは困難である。
【0056】
本発明に用いられる液晶性高分子の合成法は、特に限定されるものではない。本発明に用いることが出来る高分子成分は、当該分野で公知の重合法で合成することが出来る。例えばポリアクリル酸エステル誘導体の場合、アクリル単位に対応する不飽和エチレン性モノマーをラジカル重合で高分子化する方法などがある。又、ポリエステル合成を例に取れば、溶融重合法或いは対応するジカルボン酸の酸クロライドを用いる酸クロライド法で合成することが出来る。又、ポリエーテル骨格を有する液晶性高分子の合成にはヒドロキシ基を有するモノマー化合物とアルキルハライド等を塩基の存在中で反応させることにより得ることが出来る。
【0057】
本発明に用いることが出来る化学反応性基を有する液晶性高分子の好ましい一例を示す。
【0058】
【化4】
Figure 0004370642
【0059】
ここにおいて、mは0〜16、好ましくは0〜12を表す。x,yは各成分のモル%を表し、xは0.001〜70、yは0〜100を表し、x+y=100である。
【0060】
本発明に用いる事の出来る化学反応性基を有する液晶性高分子の製造は公知の方法により実施することができるが、上記の液晶性高分子化合物又、実施例において使用した液晶性高分子化合物は、Peter J.Collings and Michael Hird,Introduction to Liquid Crystals,−Chemistry and Physics− 98頁などを参考に合成を行った。
【0061】
本発明に用いることのできる液晶性高分子はネマティックハイブリッド配向状態を化学反応性基間の反応によって固定化できるものであればよく、又透明支持体のガラス転位点以下の温度領域でネマティック相を発現することが好ましい。これらの条件を満たすものであれば本発明に用いることの出来る液晶性高分子は上記の構造に限定されるものではなく、いかなる構造のものでも用いる事が出来る。上記した液晶性高分子は本発明に用いることが出来る液晶性高分子の一例であり、これらの構造に限らず、ネマティックハイブリッド構造をとることが出来るものがあればよい。
【0062】
又、本発明においては、該光学異方層内の液晶性高分子成分の配向状態を固定化するために化学反応性基を有する液晶性、又は非液晶性高分子成分、或いは化学反応性基を有する液晶性又は非液晶性成分を、該光学異方層に用いる液晶性高分子と混合することが出来る。又、該化学反応性基含有成分を用いることにより、組成比の調節でネマティックハイブリッド配向の平均チルト角を自在に制御することが出来る。更にこれらが液晶性を有する場合はホメオトロピック、ホモジニアス、チルト配向又はそれ以外の配向性など、いずれの配向性を示すものであっても特に構わず、例えばホメオトロピック配向性高分子を用いることもできるし、ホモジニアス配向性高分子をあてることもできる。該高分子量成分として用いられる液晶性高分子は、主鎖型の液晶性高分子、例えばポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエステルイミド等の誘導体が挙げられる。又、側鎖型の液晶性高分子、例えば、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリシロキサン、ポリマロネート等も使用できる。ホメオトロピック配向性液晶性高分子との相溶性を有するものならば特に限定されないが、中でも高分子中に化学反応性基を有する前記のような液晶性高分子が最も好ましい。更にこれら液晶性高分子は、ホモジニアス、チルト配向又はそれ以外の配向性など、いずれの配向性を示すものであっても特に構わず、例えば前述のホメオトロピック配向性高分子を用いることもできるし、ホモジニアス配向性高分子を用いてもよい。又、該非液晶性成分を該液晶性成分と併用する場合は該液晶性化合物の構造もしくは添加する量は特に限定されるものでなく、光学異方層内の液晶性成分の本来の性質、即ち液晶性を阻害しない範囲で用いることも出来る。
【0063】
本発明における該光学異方層内の液晶性高分子と混合する化学反応性基含有成分について更に説明する。化学反応性基としては、前述したようなものが同様に挙げられるが、この成分は液晶性の場合でも、非液晶性の場合でもよく、該液晶性高分子の液晶性を損なわないものであれば構造は特に限定されるものではない。又、光学異方層内の化学反応性基を有する化合物が低分子である場合は、1分子内に箇所以上の化学反応性基を有することが好ましい。以下に該化学反応性基含有成分の構造の好ましい例を示す。これらの化合物を混合する割合は該光学異方層内の液晶性高分子が液晶性を発現するのが阻害されるのでなければよく、更に該液晶性高分子が液晶状態で形成したハイブリッド配向状態を固定化できるものであればよい。この割合は液晶性高分子の構造や化学反応性基の構造などによって大きく変化するため、一概には言えないが、概ね0.1〜40%の範囲であることが好ましい。しかし、この値は液晶性高分子の構造、液晶状態或いは化学反応性基を有する化合物によって大きく変化するため、この範囲の限りではない。以下に本発明に用いられる化学反応性基を有する化合物の例を示す。
【0064】
【化5】
Figure 0004370642
【0065】
化学反応性基を有する化合物は、上記の化合物の他、本発明に用いられる液晶性高分子化合物の本来の性質、すなわち液晶性を阻害しない限りどの様な化合物でもよく、光反応性基や、光重合性基、熱重合性基などの分野で公知の化合物であればどの様なものでも用いる事が出来る。
【0066】
本発明の光学素子用フィルム(光学補償シート)は、該フィルムの上面と下面では、正の一軸性をを有する液晶性高分子のダイレクターとフィルム平面とのなす角度が異なる。該基板側のフィルム面は、その配向処理の方法や正の一軸性を有する液晶性高分子の種類によって0度以上50度以下又は50度以上90度以下のどちらかの角度範囲に調節できる。通常、配向基板に接したフィルムの界面近傍の該液晶性高分子のダイレクターとフィルム平面とのなす角度を0度以上50度以下の角度範囲に調製する方が製造プロセス上望ましい。本発明の光学素子用フィルム(光学補償シート)は、上記の如き配向基板上に均一に正の一軸性を有する液晶性高分子を塗布し、次いで均一配向過程、配向形態の固定化過程を経て得られる。該液晶性高分子の配向基板への塗布は、通常正の一軸性を有する液晶性高分子を各種溶媒に溶解した溶液状態又は該液晶性高分子を溶融した溶融状態で行うことが出来る。製造プロセス上、正の一軸性を有する液晶性高分子を溶媒に溶解した溶液を用いて塗布する溶液塗布が望ましい。
【0067】
溶液塗布について説明する。本発明の液晶性高分子を溶媒にとかし、所定濃度の溶液を調製する。フィルムの膜厚(正の一軸性を有する液晶性高分子より形成される層の膜厚)は、該液晶性高分子を基板に塗布する段階で決まるため、精密に濃度、塗布膜の膜厚などの制御をする必要がある。
【0068】
塗布用の溶液は化学反応性基を有する液晶性高分子、化合物及び光重合開始剤或いは増感剤等の化合物を溶剤に溶解することにより作製することが出来る。上記溶剤の例としては、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)及びピリジン等の極性溶剤、トルエン及びヘキサン等の無極性溶剤、クロロフォルム及びジクロロメタン等のアルキルハライド類、酢酸メチル及び酢酸ブチル等のエステル類、アセトン及びメチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン及び1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類を挙げることができる。これらの中でもアルキルハライド類及びケトン類が好ましい。溶剤は単独でも、組み合わせて使用してもよい。
【0069】
又、表面張力の高い溶媒を用いる場合などにおいては、塗布を安定に行うために必要であれば溶液に界面活性剤を添加することも可能である。用いる事が出来る界面活性剤は、溶液の表面張力を下げ塗布膜を安定化できるものであればいずれのものでも使用できるが、フッ素系界面活性剤が特に好ましく使用される。具体例を商品名として挙げるならばフロラード(3M社製)、ペインタッド(ダウ・コーニング社製)、サーフロン(旭硝子社製)、ユニダイン(ダイキン工業社製)、メガファック(大日本インキ社製)、エフトップ(新秋田化成社製)、フタージェント(ネオス社製)、アロン−G(東亞合成社製)、モディバー(日本油脂社製)などが好適に使用でき、これらと同等の化学構造をもつ界面活性剤を使用することも差し支えない。界面活性剤を使用する場合の使用量は、通常溶液1kgにたいし0.001g〜2gの範囲であるが、使用量が多すぎると液晶性高分子組成物中の異物となり欠陥の原因となったり、ネマティックハイブリッド配向を形成し難くなるなど、液晶の配向状態に悪影響を与えるため好ましくない。
【0070】
溶液の濃度は、液晶性高分子の溶解性や最終的に目的とする光学補償シートの液晶層の膜厚に依存するため一概にはいえないが、通常0.3〜55重量%の範囲で使用され、好ましくは5〜30重量%の範囲である。上記の溶媒を用いて所望の濃度に調整した液晶性高分子溶液を、前記の配向基板上に塗布する。塗布の方法としては、カーテンコーティング、押し出しコーティング、ロールコーティング、ディップコーティング、スピンコーティング、印刷コーティング、スプレーコーティング及びスライドコーティングなどを採用できる。塗布後、溶媒を除去し、配向基板上に膜厚の均一な液晶性高分子の層を形成させる。溶媒除去条件は、特に限定されず、溶媒がおおむね除去でき、該液晶性高分子の層が流動しなければよい。通常、室温下、乾燥炉下、もしくは温風や熱風の吹きつけなどを利用して溶媒を除去し乾燥することができる。この塗布・乾燥工程の段階は、まず基板上に均一に液晶性高分子の層を形成させることが目的であり、液晶性高分子は、熱処理工程、更には化学反応性基間の反応により、モノドメインなネマティックハイブリッド配向及び固定化を行うこともできる。
【0071】
本発明の光学異方層は化学反応性基を有する化合物が化学反応性基間の反応によって一種の架橋構造を付与することによりひっかき強度の向上を達成するものである。これらは前記重合性基を有する液晶性高分子と光重合開始剤を適宜組み合わせることにより又、重合性基を有する化合物と液晶性高分子と光重合開始剤を適宜組み合わせることによりえることが出来る。本発明における光重合開始剤としては、光源である高圧水銀ランプやメタルハライドランプなどの近紫外線を強く吸収できるものが好ましく、360nm〜450nmの光に対するモル吸光係数の最大値が100以上、更には500以上のものが好ましい。光重合用の光線としては、電子線、紫外線、可視光線、赤外線(熱線)を必要に応じて用いることができるが、一般的には、紫外線が好ましい。紫外線の光源としては、低圧水銀ランプ(殺菌ランプ、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト)、高圧放電ランプ(高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ)及びショートアーク放電ランプ(超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水銀キセノンランプ)を挙げることができる。
【0072】
重合開始剤の例としてはアゾビス化合物、パーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、レドックス触媒など、例えば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、tert−ブチルパーオクトエート、ベンゾイルパーオキサイド、イソプロピルパーカーボネート、2,4−ジクロルベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、クメンハイドロパーキサイド、ジクミルパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)ハイドロクロライド或いはベンゾフェノン類、アセトフェノン類、ベンゾイン類、チオキサントン類等を挙げることができる。これらの詳細については「紫外線硬化システム」総合技術センター、63頁〜147頁、1989年等に記載されている。又、エポキシ基を有する化合物の重合には、紫外線活性化カチオン触媒として、アリルジアゾニウム塩(ヘキサフルオロフォスフェート、テトラフルオロボラート)、ジアリルヨードニウム塩、VIa族アリロニウム塩(PF6、AsF6、SbF6のようなアニオンをもつアリルスルホニウム塩)が一般的に用いられる。
【0073】
本発明の光学異方層は、上記材料を用いて、上記光照射条件にて形成される。すなわち、一般的な塗布法により透明支持体上(又は支持体上に設けられた配向膜上)に、化学反応性基を有する液晶性高分子と光重合開始剤からなる薄膜を形成し、乾燥後、液晶層形成温度範囲内の温度で、ディスコティックネマティック液晶層又は一軸性の柱状層を形成させつつ一定時間熱処理し、続いて上記光源を用いて上記照射エネルギーの範囲で、光重合により架橋させた後、冷却することによって、本発明の光学特性、強度、及び耐熱性を有する改良された光学補償シートを得ることが出来る。
【0074】
該光学補償シートは透明支持体上に液晶性高分子を塗布後、乾燥、熱処理、固定化という操作を行うことによって得られるものであるが、熱処理によってネマティックハイブリッド配向を形成するにあたって、前記液晶性高分子の粘性は、配向を付与する上で低い方がよく、従って熱処理温度は支持体が耐えうる温度範囲内で高い方が好ましい。又液晶性高分子によっては、得られる平均チルト角が熱処理温度により異なることがある。その場合には、目的に応じた平均チルト角を得るために熱処理温度を設定する必要がある。例えば、あるチルト角を有する配向を得るために比較的低い温度で熱処理を行う必要が生じた場合、低い温度では液晶性高分子の粘性が高く、配向に要する時間が長くなる。そのような場合には、一旦高温で熱処理し、モノドメインな配向を得た後に、段階的、もしくは徐々に熱処理の温度を目的とする温度まで下げる方法が有効となる。いずれにせよ、用いる正の一軸性を有する液晶性高分子の特性に従い、ガラス転位点以上の温度で熱処理することが好ましい。本発明の用途においては光学補償シート内の液晶性高分子を配向させることが求められており、例えばネマティック層を形成する温度が室温以上かつ支持体の熱安定性の観点から上限は支持体のガラス転位点以下で処理することが望ましい。この時、該液晶性高分子の液晶温度範囲は構造などにより異なるため上記の範囲で定義することは困難である。
【0075】
本発明の光学異方層は、上記材料を用いて、上記光照射条件にて形成される。すなわち、一般的な塗布法により透明支持体上(又は透明支持体上に設けられた配向膜上)に、重合性液晶化合物、或いは重合性化合物を含む液晶性化合物と光重合開始剤からなる薄膜を形成し、乾燥後、液晶相形成温度範囲内の温度で、ネマティックハイブリッド配向状態を形成させつつ一定時間熱処理し、そのまま続いて上記光源を用いて上記照射エネルギーの範囲で、光重合(架橋)させた後、冷却することによって、本発明の優れた光学特性と耐熱性を有する光学補償シートを得ることが出来る。
【0076】
本発明では連続塗布が好ましい。従って、カーテンコーティング、押し出しコーティング、ロールコーティング及びスライドコーティングが好ましい。上記光学異方層は、前述したように、上記塗布液を配向膜上に塗布し、乾燥し、次いで液晶温度範囲まで加熱し、熱処理後光照射により硬化させ、冷却することにより得られる。
【0077】
上記光学異方層の上には、保護層を設けてもよい。保護層の材料としては、ポリメチルメタクリレート、アクリル酸/メタクリル酸共重合体、スチレン/無水マレイミド共重合体、ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、スチレン/ビニルトルエン共重合体、ニトロセルロース、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル/塩化ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリカーボネート等のポリマー及びこれらの誘導体を挙げる事ができる。
【0078】
【実施例】
以下実施例により本発明を具体的に説明するが本発明はこれにより限定されるものではない。
【0079】
実施例及び比較例に用いた液晶性高分子及び化合物の構造を以下に示す。又、実施例で行った操作についてはそれぞに示す。更にA−Bなどの記載はAとBが連結していることを示す。又、A−O−BはAとBの間に酸素原子が入ることを示す。
【0080】
【化6】
Figure 0004370642
【0081】
【化7】
Figure 0004370642
【0082】
【化8】
Figure 0004370642
【0083】
【化9】
Figure 0004370642
【0084】
〈液晶性の評価〉
高分子の分子量測定はゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法を用い、ポリスチレン換算で算出した。実施例に用いたサンプルの高分子で液晶性を発現する高分子は、全てネマティック液晶相を発現することが、偏光顕微鏡観察、示差走査熱量計(DSC)測定及びX線回折測定の結果などから確認された。又、界面活性剤を加えた場合はガラス基板で挟んだサンプルは全てホメオトロピック配向状態になることがクロスニコル下でのコノスコープ像の観察から確認された。
【0085】
(実施例1)
ゼラチン薄膜(0.1μm)を塗布した80μmの厚さを有するトリアセチルセルロースのフィルム(コニカ(株)製)上に以下の構造で示されるポリビニルアルコール誘導体MP203(クラレ製)を含む塗布液を塗布し、40℃の温風にて乾燥させた後、ラビング処理を行い、配向膜を形成した。この配向膜上に、化合物1及び重合開始剤としてイルガキュア907(チバ・ガイギー社製)を0.3重量%溶解させた塩化メチレン溶液を、スピンコート法により配向膜上に塗布した。この塗布層を130℃まで加熱し、6分後(光学異方層の化合物を配向させた後)、130℃のまま紫外線照射装置を用いて、照度100mW/cm2で10秒間紫外線(UV)照射し、室温まで冷却して、厚さ2.6μmの硬化した架橋ポリマーを有する光学異方層を有する本発明の光学補償シート(F−1)を作製した。
【0086】
【化10】
Figure 0004370642
【0087】
(比較例1)
実施例1において、重合開始剤の量を8.0重量%として、他は同様の条件下で光学補償シート(F−2)を作製した。
【0088】
(実施例2)
実施例1において、化合物1の代わりに化合物2を用い、イルガキュア907に代えて重合開始剤として5−ニトロアセナフテンをポリマーの1重量%用い、130℃で15分間熱処理を行った他は同様の条件下で光学補償シート(F−3)を作製した。
【0089】
(実施例3)
実施例1において、化合物1の代わりに化合物3を用い、又イルガキュア907に代えて重合触媒としてカリウムt−ブトキシドをポリマーの1重量%用い、130℃で20分間熱処理を行い放冷することで光学補償シート(F−4)を作製した。
【0090】
(実施例4)
実施例1において、化合物1の代わりに化合物4を用い、130℃で15分間熱処理を行い、他は同様の条件下で光学補償シート(F−5)を作製した。
【0091】
(比較例2)
実施例1において、化合物1の代わりに化合物5を用い、イルガキュア907を除いた他は同様の条件下で光学補償シート(F−6)を作製した。
【0092】
(実施例5)
実施例1において、化合物1の代わりに化合物6を用い、イルガキュア907に代えて重合開始剤として5−ニトロアセナフテンをポリマーの1重量%用い、130℃で15分間熱処理を行い、他は同様の条件下で光学補償シート(F−7)を作製した。
【0093】
(実施例6)
実施例1において、化合物1の代わりに化合物7を用い、又イルガキュア907に代えて重合触媒としてカリウムt−ブトキシドをポリマーの1重量%用い、130℃で15分間熱処理を行い放冷することで光学補償シート(F−8)を作製した。
【0094】
(実施例7)
実施例1において、化合物1の代わりに化合物8を用い、重合開始剤を1.0重量%とし、130℃で熱処理を行い他は同様の条件下で光学補償シート(F−9)を作製した。
【0095】
(比較例3)
実施例4において、化合物4の代わりに化合物9を用い、重合開始剤を1.0重量%とし、130℃で15分間熱処理を行い他は同様の条件下で光学補償シート(F−10)を作製した。
【0096】
(実施例8)
実施例1において、化合物1の代わりに化合物10及び化合物11を9:1の重量比で混合したものを用い、イルガキュア907に代えて重合開始剤として5−ニトロアセナフテンをポリマーの1重量%用い、他は同様の条件下で光学補償シート(F−11)を作製した。
【0097】
(実施例9)
実施例8において、化合物11の代わりに化合物12を用い、化合物10と化合物12とを9:1の重量比で混合したものを用い、又5−ニトロアセナフテンに代えて重合触媒としてカリウムt−ブトキシドをポリマーの1重量%用い、同様の方法で塗布後130℃で15分間熱処理を行い放冷することで光学補償シート(F−12)を作製した。
【0098】
(実施例10)
実施例8において、化合物11の代わりに化合物Sを用い、化合物10と化合物Sとを92:8の重量比で混合したものを用い、5−ニトロアセナフテンに代えて重合開始剤としてイルガキュア907をポリマーの0.3重量%用い、他は同様の条件下で光学補償シート(F−13)を作製した。
【0099】
(実施例11)
実施例1において、化合物1の代わりに化合物13と化合物14とを用い、化合物13と化合物14とを86:14の重量比で混合したものを用い、125℃で熱処理した他は同様の条件下で光学補償シート(F−14)を作製した。
【0100】
(実施例12)
実施例11において、化合物14の代わりに化合物12を用い、化合物13と化合物12とを91:9の重量比で混合したものを用い、又イルガキュア907に代えて重合触媒としてカリウムt−ブトキシドをポリマーの1重量%用い、同様の方法で塗布後130℃で15分間熱処理後放冷することで光学補償シート(F−15)を作製した。
【0101】
(実施例13)
実施例11において、化合物14の代わりに化合物Sを用い、化合物13と化合物Sとを88:12の重量比で混合したものを用い、他は同様の条件下で光学補償シート(F−16)を作製した。
【0102】
(実施例14)
実施例2において、化合物2の代わりに化合物2と化合物13とを9:1の重量比で混合したものを用い、他は同様の条件下で光学補償シート(F−17)を作製した。
【0103】
(実施例15)
実施例6において、化合物7の代わりに化合物12と化合物13とを9:1の重量比で混合したものを用い、同様の方法で塗布した後130℃で熱処理後放冷することで光学補償シート(F−18)を作製した。
【0104】
(実施例16)
実施例7において、化合物8の代わりに化合物8と化合物Sとを92:8の重量比で混合したものを用い、他は同様の条件下で光学補償シート(F−19)を作製した。
【0105】
〈光学補償シートの評価〉
上記実施例1〜16及び比較例1〜3で得られた光学補償シートについて以下の項目について評価した。
【0106】
(1)光学補償シートにおけるリターデーション値(Re)の最小値の方向とその光軸の傾き角
尚、リターデーション値とは
Re=|(nx y)/2−nz|×d
で表されるものであり、nx、nyはそれぞれ液晶を含む層の面内のx方向及びy方向の主屈折率を表し、nzは厚さ方向の屈折率を表し、又、dは液晶を含む層の厚さを表し、光学異方層の異方性を示す指標である。
【0107】
上記で得られた光学補償シートにについて、ラビング軸を含み位相差板面に垂直な面において、あらゆる方向からのリターデーション値をKSシステムズ(株)製自動複屈折計KOBRA−21DHを用いて測定を行い、Reの最小値の方向の傾き角を求めた。又測定値より、得られた光学異方層は負の複屈折を有していることが判った。その結果、本発明における光学補償シートはフィルム面と垂直な方向から傾いた方向に0でないリターデーションの最小値をもつことが判った。尚、透明支持体であるトリアセチルセルロースの光軸はフィルム法線方向であり、面配向(正面)Re値は80nmであった。
【0108】
(2)引っ掻き強度
円錐頂角が90度で、先端の直径が0.25mmのサファイア針を用いて得られた光学補償シートの光学異方層の表面を引っ掻き、引っ掻きあとが目視で認められた時の加重(g)を測定し、引っ掻き強度を測定した。
【0109】
(3)高温下放置後の光学補償シートの光学異方層の耐熱性
得られた光学補償シートを100℃の雰囲気に1000時間放置し、割れ目等の形状変化、リターデーション値変化の測定を行い下記のように評価を行った。
【0110】
《リターデーション》
A:変化無し
B:若干変化するが実用上問題なし
C:変化あり
《割れ目など》
A:変化無し
C:変化あり
上記、引っ掻き強度及び高温下放置後の割れ目等の形状変化、リターデーション値変化の結果を表1に示す。
【0111】
【表1】
Figure 0004370642
【0112】
(実施例17)
〈液晶表示装置の作製〉
ネマティック液晶を90度の捻れ角で、かつ4.5μmのギャップサイズとなる様に挟み込まれた液晶セルの一方の表面に、実施例1で作製した本発明の光学補償シート(F−1)を2枚積層して貼りつけ、液晶表示装置を作成した。但し、下側の光学補償シートのリターデーションの最小値を示す投影方向と上側基板のラビング方向とのなす角が180度となり、そして上側の光学補償シートのリターデーションの最小値を示す投影方向と上側基板のラビング方向とのなす角が0度となる様に、上記積層体を液晶セル上に配置した。更に、一対の偏光板を、光学補償シートを有する液晶セルの両側に、2つの偏光軸が直交するように貼りつけた。得られたTN−LCDは、ノーマリーホワイトモード用に設定した。比較として、上記光学補償シートをもたないTN−LCDも作製した。
【0113】
得られたTN−LCDに55Hzの矩形波電圧を、0〜5Vで印加し、正面方向及び上/下及び左/右方向へ傾いた方向からのコントラストの全方位測定をエレクトロニクス・フォー・ディスプレイ・アンド・イメージングデバイス社製視野角検査装置イージー・コントラストを用いて測定し、正面コントラスト及びコントラストが10以上となる上/下及び左/右の視野角を求めた。得られた結果を表2に示す。
【0114】
【表2】
Figure 0004370642
【0115】
【発明の効果】
本発明の光学補償シートは、TN型液晶セルを有する液晶表示装置及びカラー液晶表示装置に使用した場合、視野角を大きく拡大させる事ができ、更に視野角の増加に伴う黒表示部の斑点、階調の反転、画像の着色等の発生を大きく低減させることができ、優れた視野角特性を付与することができる。更に本発明の光学補償シートは耐熱性に優れ、特に低照射エネルギーにより得られるシートは黄変が少なく、液晶表示装置に使用した場合に耐久性の向上が得られ、更には鮮明な画像を得ることが出来る。又、耐熱性、耐水性においても従来の製品と比較して圧倒的な向上が見られ従来のものよりも使用条件の範囲が大きく広がることが期待できる。本発明の光学補償シートを用いたTN型液晶セルを有する液晶表示装置は、視野角が大きく拡大しており、視野角の増加に伴う黒表示部の反転、階調の反転、画像の着色等の発生が大きく低減されており、優れた視野角特性を示す。

Claims (10)

  1. 透明支持体上に少なくとも一層の配向膜層及び少なくとも一層の液晶性高分子が配向状態を示す層を有する光学補償シートにおいて、該液晶性高分子が熱又は光エネルギーを加えることにより反応を起こし得る化学反応性基を有し、該液晶性高分子が液晶状態において形成した配向状態を化学反応性基間の反応によって固定化せしめたことを特徴とする光学補償シート。
  2. 透明支持体上に少なくとも一層の配向膜層及び少なくとも一層の液晶性高分子が配向状態を示す層を有する光学補償シートにおいて、少なくとも一種の熱又は光エネルギーによって該液晶性高分子と化学反応可能な配向固定化化合物が該液晶性高分子含有層に含まれることを特徴とする光学補償シート。
  3. 透明支持体上に少なくとも一層の配向膜層及び少なくとも一層の液晶性高分子が配向状態を示す層を有する光学補償シートにおいて、少なくとも一種の熱又は光エネルギーを加えることにより反応を起こし得る化学反応性基を有する化合物が該液晶性高分子含有層に含有され、かつ該化学反応性基を有する化合物が該液晶性高分子とは化学的に反応せずに、液晶性高分子の配向状態を固定化せしめたことを特徴とする光学補償シート。
  4. 液晶性高分子含有層に含有される化学反応性基を有する化合物が1分子中に少なくとも2つ以上の化学反応性基を有する化合物である請求項3に記載の光学補償シート。
  5. 液晶性高分子が光学的に正の一軸性を有し、かつ該液晶性高分子が塗布された光学補償シートの光学異方性が負であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学補償シート。
  6. 液晶性高分子がネマティックハイブリッド配向である請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学補償シート。
  7. 化学反応性基が光を照射することによって反応することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の光学補償シート。
  8. 化学反応性基が、不飽和エチレン性基であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の光学補償シート。
  9. 液晶性高分子含有層に重合開始剤を0.001〜7重量%含むことを特徴とする請求項7に記載の光学補償シート。
  10. 前記透明支持体がトリアセチルセルロースフィルムであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の光学補償シート。
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