JPH10292005A - 液晶性硬化物の製造法 - Google Patents

液晶性硬化物の製造法

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JPH10292005A
JPH10292005A JP10113397A JP10113397A JPH10292005A JP H10292005 A JPH10292005 A JP H10292005A JP 10113397 A JP10113397 A JP 10113397A JP 10113397 A JP10113397 A JP 10113397A JP H10292005 A JPH10292005 A JP H10292005A
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cured
light
water
film
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JP10113397A
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Teruaki Yamanashi
輝昭 山梨
Hitoshi Mazaki
仁詩 真崎
Yasushi Sato
康司 佐藤
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Original Assignee
Nippon Oil Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 液晶性を示す硬化物を光架橋(硬化)によっ
て製造する方法において架橋時の液晶の配向の変化を抑
制する方法を提供する。 【解決手段】 液晶性を示す被硬化物を水の中に浸した
状態照射し、硬化せしめる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光ラジカル反応を
利用する液晶性硬化物の製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】アクリル系の樹脂は、原料となるモノマ
ーのラジカル反応により得ることができる。反応は開始
剤からのラジカルの発生により始まり、連鎖的に反応が
進行する。開始剤は熱によりラジカルを発生させるもの
と光によりラジカルを発生させるものがある。
【0003】この反応での大きな問題の一つは、反応を
担うラジカルが空気中の酸素によって捕捉され、それに
より反応が停止したり大幅に反応速度が遅くなる、いわ
ゆる酸素阻害の問題である。被硬化物が薄膜の場合にお
いては、酸素に触れる面積が大きいため特に酸素阻害が
問題となる。またラジカル反応を熱で開始する場合と光
で開始する場合とを比較すると、後者は迅速な硬化に大
きな特徴があり、酸素阻害の問題はより重要である。
【0004】光ラジカル反応における酸素阻害に対する
従来の対処法としては、開始剤の量を増やす、露光
量を増やす、膜厚を大きくする、被硬化物表面を酸
素遮断膜で覆うなどの方法が知られている。
【0005】まずの場合、非硬化性の開始剤の量が増
えることにより硬化後の樹脂の性状が悪くなるおそれが
ある。また開始剤の分解物が、硬化物の着色に寄与して
しまうという問題が生じる恐れもある。またの方法
は、ランプや冷却設備の大型化が必要であり、ランニン
グコストが大幅に高くなる。また面積当たりの照射効率
を高めるためにプロセス速度を落とすと生産性が低下す
る。やの方法では、これらの問題を度外視したとし
ても十分な硬化性の改善に至らない場合が多い。また
の方法は、膜厚を選べる製品の種類が限られるため一般
的な方法とはいえない。
【0006】の方法は、遮断膜としてポリビニルアル
コール等の膜で被硬化物表面を覆い、酸素を遮断する方
法である。該方法は、上記からの対処法の中では最
も効果が大きいといえる。しかしながら、遮断膜を形成
するプロセスと硬化後に該遮断膜を除去するプロセスと
が必要となるため大きなコストアップにつながる。また
遮断膜形成過程において、被硬化物の変質が起こる場合
があり、一概に優れた酸素阻害の対処法として利用する
ことができない状況にある。
【0007】近年アクリル系樹脂の応用として、液晶性
化合物を光架橋させることにより機能性フィルムを得る
方法が、例えば特開平8−50206号公報に提案され
ている。該方法で用いられている液晶性化合物は、分子
構造内に液晶性を発現させる部位と硬化のためのアクリ
ル基などの重合性基を合わせ持つものである。該方法は
このような液晶性化合物を架橋前に配向させて、次いで
光照射により液晶の配向構造を固定化させる、というも
のである。この場合、架橋前後で液晶の配向に変化がな
いことが必要であるが、硬化時に酸素阻害の影響により
架橋速度が低下した場合、架橋反応の進行と平行して液
晶配向の乱れが生じてしまう恐れがある。極端な場合で
は、硬化中に液晶性そのものが失われることもある。こ
れは、架橋の前後において液晶性化合物の物理的性質が
異なるためである。つまり硬化速度が遅いために、該化
合物がより安定な状態へ転移してしまうために起こるの
である。このように重合性の液晶化合物を架橋させる場
合は、最終的な架橋密度だけでなく、その反応速度が十
分速いことが必要とされる。
【0008】上述のように、液晶性を示す材料を用いて
該液晶の配向形態を利用した機能性フィルムなどの薄膜
状物を光ラジカル反応によって得る場合においては、該
反応の酸素阻害の問題は、きわめて重大であるにもかか
わらず、優れた対処法が未だ見出されていないというの
が現状である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は液晶性
を示す硬化物を光架橋(硬化)によって製造する方法に
おいて架橋時の液晶の配向の変化を抑制する方法を提供
することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】すなわち本発明の第1
は、液晶性を示す被硬化物を水の中に浸した状態で光を
照射し、硬化せしめることを特徴とする液晶性硬化物の
製造法に関する。さらに本発明の第2は、液晶性を示す
被硬化物が、膜厚10μm以下の薄膜状であることを特
徴とする第1に記載の方法に関するものである。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、詳細について説明する。本
発明の方法に供される被硬化物とは液晶性を示し光によ
って硬化(架橋)が進行する物質、即ち液晶性を発現す
る部分(メソゲンと呼ばれる)と光(ラジカル)重合性
基をもつ物質である。メソゲンと重合性基は一つの分子
内にあってもよいし、それぞれ別の分子中にあってもよ
い。後者の典型的な例は、重合性基を持たない液晶性化
合物と液晶性を持たない一般的な光重合性化合物との組
成物であり、組成物として液晶性を示す場合である。こ
こで化合物とは一般的な光硬化性樹脂におけると同様単
量体だけでなくオリゴマーやポリマーも包含する。
【0012】メソゲンの種類及び重合性基の種類は従来
知られた適宜のものを用いうる。一般に液晶を相構造で
分類すれば、ネマチック液晶性、スメクチック液晶性、
ディスコチック液晶相を示すものなどを挙げることがで
きる。また液晶によっては、温度によって複数の液晶相
を有するものもある。いずれも本発明で用いうる。重合
性基としては通常の光硬化性化合物において用いられて
いるアクリル基やメタクリル基などのオレフィン性二重
結合が例示される。
【0013】以下、更に具体的に例示すると、ネマチッ
ク液晶性やスメクチック液晶性を示す化合物としては、
例えばメソゲンとして、ベンゼン環を複数有するもの、
ビフェニル基を有するもの、ピリミジン環を有するも
の、ビシクロヘキサン環を有するもの、トラン構造を有
するものなどを挙げることができ、より具体的には以下
のような化合物を例示することができる。
【0014】
【化1】
【0015】
【化2】
【0016】
【化3】
【0017】これらは単独で用いてもよいし混合物とし
て用いてもよい。またこれら以外の重合性あるいは非重
合性の化合物を添加してもよい。次にディスコチック液
晶性の化合物としては、例えばメソゲンとしてトリフェ
ニレン骨格やトルクセン骨格を有する化合物が代表的で
あり、より具体的には以下のような化合物を例示するこ
とができる。
【0018】
【化4】
【0019】
【化5】
【0020】
【化6】
【0021】ここでは、メソゲンに結合した6本の側鎖
が同質のもののみ例示したが、使用できる化合物は必ず
しも6本の側鎖は同一でなくてもよく、また6本の側鎖
がすべて重合性基を含んでいる必要は必ずしもない。ま
たこれらは単独で用いてもよいし混合物として用いても
よい。またこれら以外の重合性あるいは非重合性の化合
物を添加してもよい。
【0022】本発明の方法は、きわめて迅速な硬化速度
が要求される物品、具体的には液晶の配向構造を固定化
した機能性フィルムの製造に際して特に有効である。該
フィルムに対する光硬化の操作は、フィルムの機械的安
定性、熱的安定性などを図る目的で施される操作であ
る。一般に液晶より形成される機能性フィルムは、該液
晶の特性を利用するために非常に薄く、通常10μm以
下の薄さに形成される。このような機能性フィルムの光
硬化操作として、本発明の方法を用いるとその効果を最
大に発現することができる。
【0023】機能性フィルムを形成する液晶の硬化は、
硬化度のみならず、その反応速度も重要となる。硬化度
が不十分な場合、膜そのものは熱に対して安定でも、内
部の配向構造が変化することにより光学機能が失われる
恐れがある。また硬化中に配向が乱れた場合、目的とし
ない配向構造のまま固定化されてしまい、その結果目的
とする光学機能を発現できなくなる恐れがある。
【0024】本発明の方法により、特異な光学機能を有
する機能性フィルムを得ることができる。ただし液晶の
種類により配向が異なるため、機能性フィルムなどの光
学用途に用いる物品を形成する場合には、最終用途で目
的とする光学機能に応じて用いる液晶の種類等適宜選択
する必要がある。
【0025】本発明では、液晶性を示す光重合性物質に
よって構成される被硬化物の硬化反応を光により開始さ
せるため、通常ラジカルを発生させるいわゆる光開始剤
を被硬化物中に共存させる。光開始剤としては、適宜周
知の光開始剤を用いることができる。具体的には以下の
ような化合物を挙げることができる。
【0026】例えばベンジル、ベンゾイルエーテル、ベ
ンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピル
エーテル、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベン
ゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4’−メチル
ジフェニルサルファイド、ベンジルメチルケタール、ジ
メチルアミノメチルベンゾエート、2−n−ブトキシエ
チル−4−ジメチルアミノベンゾエート、p−ジメチル
アミノ安息香酸イソアミル、3,3’−ジメチル−4−
メトキシベンゾフェノン、メチロベンゾイルフォーメー
ト、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)
−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル
−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニ
ル)−ブタン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニ
ル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オ
ン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2
−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1
−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒド
ロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−クロロチ
オキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン2,4
−ジイソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチ
オキサントン、イソプロピルチオキサントン、1−クロ
ロ−4−プロポキシチオキサントン等が挙げられる。こ
れらの光開始剤は、被硬化物中に含まれる光重合性の化
合物に対し、通常0.5〜30重量%、好ましくは2〜
15重量%の範囲内で使用される。また光開始剤は、単
独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0027】さらに被硬化物には、照射用の光源の波長
に合わせて適当な増感剤を共存させうる。被硬化物を光
反応工程に供する際の該被硬化物の形状は、塊状、薄膜
状など特に制限はない。なお、薄膜状物は、適当な基板
の上に被硬化物を適宜の方法により塗布することによっ
て得ることができる。その膜厚が10μm以下、特に6
μm以下の場合に、特に顕著な効果が得られる。
【0028】被硬化物を薄膜状に形成する際の塗布法は
特に制限はなく、適当な基板などの塗布面に被硬化物そ
のものを塗布してもよいし、一旦溶媒に溶かしてから塗
布して、その後溶媒を除去してもよい。塗布方法として
は例えば、バーコート法、ロールコート法、スピンコー
ト法、ダイコート法、ディッピング法、グラビア印刷
法、スクリーン印刷法、スプレー塗装法などをあげるこ
とができる。
【0029】また被硬化物の塗布に用いられる基板は、
用途により異なり一概には言えないが、通常、ガラスや
プラスチックフィルム、プラスチックシートなどが用い
られる。これらの基板はそのまま用いてもよいし、表面
処理を施してもよい。例えばモノドメインな配向を目的
とするためには、該基板表面にラビング処理を施した
り、液晶材料とは異なる別の有機薄膜を一旦基板上に形
成し、該有機薄膜表面をラビング処理して用いることが
好ましい。
【0030】本発明の方法により所望の機能性フィルム
を得るには、通常基板上に被硬化物を塗布した後、基板
上にて該被硬化物の配向処理を行う。配向処理は、通常
熱により行うが、被硬化物を構成する液晶の種類によっ
ては室温付近の温度ですでに配向している場合や、溶液
の乾燥時にライオトロピック的に配向している場合もあ
る。熱を加えることにより配向する性質を有する液晶を
被硬化物として使用した場合、熱処理温度や処理時間
は、該液晶により異なるので一概には言えない。用いる
液晶の物性に応じて適宜最適条件が調整される。ただし
被硬化物を構成する液晶の中には、重合性基を有する化
合物が含まれているため、温度が高すぎると熱重合が進
行する恐れがある。したがって、通常200℃以下の温
度で熱処理し、被硬化物を配向させることが望ましい。
配向処理中に熱重合が進んだ場合、配向が完全に達成さ
れなかったり、重合の進行と共に液晶の配向構造が乱れ
る恐れがある。上記熱処理によって被硬化物の配向が完
了した後、該被硬化物を室温または所定温度まで冷却す
る。冷却後の被硬化物膜の状態については、特に制限は
ないが、該状態としては液晶の配向構造が半固定化され
た状態にあることが好ましい。ここでいう半固定化と
は、液晶状態において形成した配向構造を室温または所
定温度において、該配向構造を損なうことなく維持でき
る状態にせしめることを意味する。ただし該状態におい
ては、被硬化物は硬化されておらず強度的には十分とは
いえない状態である。
【0031】上記の如く、基板上に被硬化物を塗布、配
向処理、および冷却して室温または所定温度にした後、
液晶状態もしくは半固定化状態の該被硬化物を水の中に
浸し光硬化反応を行う。本発明の方法では、水の中にて
光硬化反応を行うため、酸素阻害の影響をほとんど受け
ることなく、均一に配向が維持された機能性フィルムを
得ることができる。
【0032】一般に水の中の溶存酸素量は、室温下にお
いては通常8ppm程度と低く酸素阻害の影響をなくす
上で適している。水の中の溶存酸素量の低さについては
ブンゼンの吸収係数(Bunsen’s abosor
ption coefficient)からも明らかで
ある。すなわち水に対する酸素の該係数は20℃におい
て0.028であり、このことは一定体積中に占める酸
素の量(重量あるいはモル数)が、空気中での値を1と
すると空気と接している水の中では0.028に過ぎな
いことを示している。
【0033】なお用いる水に関しては特に制限はなく、
例えば蒸留水、イオン交換水、水道水などを適宜使用す
ることができる。また本発明の効果が損なわれる恐れが
ないのであるならば、該水に有機溶剤等が共存していて
も差し支えないし、さらに有機物や無機物が溶解されて
いても何等差し支えない。
【0034】また水中での酸素阻害は、通常の空気雰囲
気下に比べ圧倒的に小さいが、水の中の溶存酸素の影響
までをなくし、より良好な硬化条件を得るためには、窒
素やアルゴンなどの不活性ガスで水をバブリングするこ
とが好ましい。コスト的には窒素ガスにてバブリングを
行うのが望ましい。また不活性ガスの流量は、製造スケ
ールに起因するため一概には言えないが、目安としては
1リッターの水に対し、通常20ml/分〜1000m
l/分、好ましくは50ml/分〜500ml/分の範
囲である。流量が20ml/分より少ないと、水中の溶
存酸素濃度の低下効果が不十分な場合があり、バブリン
グを行うメリットが少ない。また1000ml/分より
多いと、水面が安定し難く、そのために水面にて光源か
らの光が乱反射を起こしやすくなり、照射効率の低下に
つながる恐れがある。
【0035】水の温度は特に制限されない。通常は室温
程度の水温でよい。但し被硬化物を構成する液晶の種類
によって、硬化時の温度、すなわち水温の制御が重要に
なる場合がある。具体的には、100℃以下の温度にお
いて液晶相を発現する液晶を被硬化物として用いた場
合、硬化時の水温は目的とする光学特性に応じた液晶の
配向状態を示す温度範囲、またはその配向状態を維持で
きる温度範囲において光硬化する必要がある。例えば、
100℃以下の温度において、結晶相−スメクチック相
−ネマチック相−等方相という相系列を有する液晶を被
硬化物として用いた場合、スメクチック相の温度範囲で
光硬化反応を行った場合には、スメクチック液晶の配向
構造が固定化された状態で光硬化物を得ることができ、
またネマチック相の温度範囲で光硬化反応を行った場
合、ネマチック液晶の配向構造が固定化された状態で光
硬化物を得ることができる、といったことが可能とな
る。したがって、上記のような液晶を被硬化物として本
発明に供する際には、該液晶の物性などに応じて水温を
制御すべきである。ただしプロセス上は室温付近の水温
で光硬化を行うことがより好ましく、室温付近まで目的
とする液晶相を有する液晶、あるいは目的とする液晶相
の温度範囲が室温以上であっても、室温下において液晶
状態における配向形態を維持しうる液晶などから構成さ
れる被硬化物を用いることが本発明ではより好ましい。
【0036】また硬化に伴い被硬化物は発熱を伴うが、
水は冷却効果も持ち、この点でも優れている。被硬化物
を水の中に浸す際に、該被硬化物の水面からの距離は、
水が高い透明性を有するため特に制限はないが、通常1
mm以上50cm程度以下、好ましくは5mm以上20
cm以下である。一般に1mmより浅い場合、被硬化物
の表面が水面から露出してしまう可能性があるため望ま
しくない。また50cmより深い場合には、被硬化物と
光源との距離が長くなることにより被硬化物に照射され
る光の強度が弱くなる恐れがあるので望ましくない。
【0037】次いで照射する光の波長は特に限定され
ず、紫外線、可視光線、赤外線(熱線)を必要に応じて
用いることができる。通常は、紫外光が用いられる。そ
の光源としては、低圧水銀ランプ(殺菌ランプ、蛍光ケ
ミカルランプ、ブラックライト)、高圧放電ランプ(高
圧水銀ランプ、メタルハライドランプ)、ショートアー
ク放電ランプ(超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水
銀キセノンランプ)などが挙げられる。なかでも高圧水
銀ランプからの紫外光が最も一般的であり、本発明に好
ましく用いることができる。また被硬化物に適当な増感
剤を含有させた場合、あるいは被硬化物自体に増感作用
がある場合は、可視光領域の光源を使用することももち
ろん可能である。
【0038】上記の如き光源から照射する光の量は、被
硬化物の種類や開始剤の添加量などにもよるため一概に
は言えないが、通常1〜5000mJ/cm2 、好まし
くは20〜3000mJ/cm2 、さらに好ましくは2
0〜2000mJ/cm2 の範囲である。なお、水は該
光源からの光に対し、高い透過率を示すため吸収による
光のロスはほとんどない。
【0039】光照射後は硬化物を水の中から取りだし、
表面の水滴を除去する。除去の方法は、エアー等で吹き
飛ばしても良いし、熱や風により乾燥させてもよい。な
お、水を除去した後、未反応部位をさらに反応させる、
いわゆる熱処理によるエージングを行ってもよい。
【0040】以上説明した本発明の方法によって光硬化
を行った場合、光ラジカル反応による酸素阻害の影響を
ほとんど受けることなく硬化物を得ることができる。ま
た被硬化物として、機能性フィルムを得る目的で液晶の
薄膜状物を本発明に供した際には、液晶状態において形
成した配向構造を、酸素阻害の影響などを受けずに安定
に保持した状態で光硬化反応を行うことができる。さら
に得られた硬化物は、熱などによる配向構造の変化が極
めて起こりにくく、液晶から構成される種々の機能性フ
ィルムを製造する上で非常に有効に利用できる方法であ
る。
【0041】
【実施例】以下に実施例について述べるが、本発明はこ
れらに限定されるものではない。実施例で用いた光照射
装置の概略を図1に示した。 (実施例1)
【0042】
【化7】
【0043】式(1)のアクリル基を有するディスコチ
ック液晶10gを塩化メチレン90gに溶かし、光開始
剤としてIrgacure−907(CIBA−GEI
GY社製)を0.2g添加して、被硬化物溶液を得た。
この溶液を、30cm角のラビングポリイミド膜を有す
るガラス基板に、スピンコート法により塗布し、被硬化
物溶液層/ラビングポリイミド膜/ガラス基板とした。
次いで乾燥により該溶液の溶媒を除去し、140℃のオ
ーブンで10分間熱処理することにより、液晶を均一に
配向させた膜厚1.6μmの薄膜をガラス基板上に形成
した。この液晶から形成されている薄膜の光学測定を詳
細に行ったところ、図2に示したようなディスコチック
液晶がハイブリッド配向構造が得られていることが分か
った。また該薄膜は、面内にリターデションをもってお
り、その値は45nmであった。なお、被硬化物からな
る薄膜は硬化前であるためタックがあった。上記の方法
によって得られた、被硬化物より形成された薄膜/ラビ
ングポリイミド膜/ガラス基板という構成の試料1を光
硬化工程に供した。熱処理後の試料1を、23℃の10
μmのフィルターでろ過した8リッターの水道水の中
に、およそ水面から5cmの深さに沈めた。水はあらか
じめ窒素ガスによりバブリングしておき、紫外線照射時
も引き続き1000ml/分の流量で窒素ガスでバブリ
ングを行った。光照射は80ワットの高圧水銀灯ランプ
により行い、800mJ/cm2 の光を試料1の被硬化
物より形成された薄膜表面に照射した。照射した後、試
料1を水中より取りだし、エアーガンで試料1表面の水
滴を吹き飛ばした。こうして水滴を除去した後、60℃
のホットプレート上で10分間、試料1を乾燥させた。
乾燥した後、硬化された薄膜の硬度を測定したところ、
鉛筆硬度でHであった。次いで該薄膜の光学測定を行っ
たところ、光照射前に形成していたディスコチック液晶
のハイブリッド配向は保持されており、面内のリターデ
ーションは42nmとほぼ光照射前と変わらなかった。
【0044】(比較例1)実施例1で作製した試料1に
対し、被硬化物表面に空気雰囲気下で光照射を行った。
まず硬化性に違いが見られ、3000mJ/cm2 の光
量を当ててようやく被硬化物層表面のタック感がなくな
った。また硬化後、硬化前の光学的性質と大きく違って
おり、配向構造により発現される屈折率異方性が小さく
なっていることがわかった。そのため面内のリターデー
ションは10nmと大幅に減少していた。
【0045】(実施例2)
【0046】
【化8】
【0047】式(2)−a,b,およびcに示した化合
物を合成した。これらは混合物として少なくとも室温か
ら160℃の範囲内でディスコチックネマチック相を示
した。式(2)−aはアクリル基を有するディスコチッ
ク液晶、式(2)−bは非重合性のディスコチック液
晶、式(2)−cは非液晶性の重合性化合物である。各
化合物の配合比a:b:cは、重量比で40:40:2
0とした。また光開始剤としてビイミダゾール(黒金化
成(株)製)を2.0重量%、増感剤としてミヒラーケ
トンを0.5重量%添加し、被硬化物を調製した。次い
で該被硬化物を、N−メチルピロリドンに溶かし10重
量%溶液を、30cm角のラビングポリイミド膜を有す
るガラス基板に、スピンコート法により塗布し、被硬化
物溶液層/ラビングポリイミド膜/ガラス基板とした。
次いで乾燥により被硬化物溶液層の溶媒を除去し、12
0℃のオーブンで10分間熱処理し、室温に取り出して
冷却することにより、液晶を均一に配向させた薄膜を得
た。この被硬化物より形成される薄膜の光学測定を行っ
たところ、膜厚は1.8μmで、ディスコチック液晶の
ハイブリッド配向構造が得られていることが分かった。
面内のリターデションは60nmであった。上記の方法
によって得られた、被硬化物より形成された薄膜/ラビ
ングポリイミド膜/ガラス基板という構成の試料2を次
の光硬化工程に供した。上記熱処理後の試料2を、30
℃のイオン交換水の中、およそ水面から20cmの深さ
に沈め、高圧水銀灯ランプで被硬化物より形成された薄
膜表面に対し500mJ/cm2 の照射を行った。照射
した後、試料2を取りだしエアーガンで表面の水滴を吹
き飛ばした。こうして水滴を除去した後、試料2を60
℃のホットプレート上で10分間乾燥させた。乾燥した
後、光硬化された薄膜の硬度を測定したところ、鉛筆硬
度はHBであった。また光学測定を行ったところ、光照
射前に形成していたディスコチック液晶のハイブリッド
配向が保持されており、面内のリターデーションは60
nmと光照射前と全く変わらなかった。
【0048】(比較例2)実施例2で作製した試料2の
被硬化物より形成された薄膜表面に対し、空気雰囲気下
で光照射を行った。光照射は、試料2に30℃に加熱し
た温風を吹き付けながら露光を行った。3000mJ/
cm2 の光量を当てて、ようやく薄膜表面のタック感が
なくなった。しかしながら、硬化後の薄膜は曇ってお
り、光を強く散乱した。顕微鏡観察の結果、該薄膜中に
ゲル状のものが析出していることがわかった。これは、
光硬化の過程において被硬化物中で不均化が起きたため
と考えられる。
【0049】(実施例3)
【0050】
【化9】
【0051】式(3)−a,bおよびcからなる液晶
(重量比70:20:10)を調製した。光開始剤とし
てIrgacure−184(CIBA−GEIGY社
製)を1.0重量%添加した。こうして得られた液晶
は、ネマチック相を有していた。該液晶を90℃で混練
して均一混合し、被硬化物とした。該被硬化物は、10
0℃において粘凋な液晶状態を示し、該状態においてラ
ビング処理を施した30cm角、厚さ50μmのポリエ
ーテルスルフォンフィルム(三井東圧化学(株)製)の
上に塗布した。塗布後100℃に保持したまま、10分
間放置した。放置した後、ポリエーテルスルフォンフィ
ルム上の被硬化物層は、均一なネマチック液晶のハイブ
リッド配向を形成していることが分かった。次いで該配
向を保持すべく、室温まで冷却したところ、冷却時に特
に配向の乱れは生じなかった。また被硬化物層は、膜厚
6μmであった。上記の方法によって、被硬化物より形
成された薄膜/ポリエーテルスルフォンフィルムという
構成の試料3を次の光硬化工程に供した。試料3を、2
3℃のイオン交換水の中、およそ水面から5mmの深さ
に沈め、メタルハライドランプで300mJ/cm2
光量を薄膜表面に照射した。照射後、水を除去し、光硬
化された薄膜の光学測定を行った結果、ネマチック液晶
のハイブリッド配向した構造が光照射前とほぼ同じ状態
で保持されていることがわかった。
【0052】(比較例3)試料3を、空気雰囲気下で光
照射を行う以外は実施例3と同じ条件にて行ったとこ
ろ、被硬化物より形成された薄膜中に式(3)−aの単
独重合物と思われる結晶状の粒子が多数発生した。
【0053】
【発明の効果】本発明の方法は、水の中で光照射を行う
ことにより、酸素阻害の影響を大幅に軽減することがで
き、迅速な光硬化を達成することができる。そのため照
射エネルギーが少なくてすみ、コストを低く抑えること
ができる。さらには照射装置の簡素化にもつながるた
め、工業的価値が高い。また液晶のような分子配向が重
要な材料に対しては迅速な硬化は不可欠ともいえ、本発
明の方法は液晶などから形成される機能性フィルムの製
造に極めて有効に用いることができる、など格別の効果
を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例で使用した光照射装置の概略図。
【図2】実施例1のハイブリッド配向構造のモデル図。
【符号の説明】
1 試料、2 水、3 バット、4 ランプ、5 石英
板、6 排気、7、ハイブリッド配向構造、8 ディス
コチック液晶分子、9 ラビングポリイミド膜、10
ガラス基板

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 液晶性を示す被硬化物を水の中に浸した
    状態で光を照射し、硬化せしめることを特徴とする液晶
    性硬化物の製造法。
  2. 【請求項2】 液晶性を示す被硬化物が、膜厚10μm
    以下の薄膜状であることを特徴とする請求項1記載の方
    法。
JP10113397A 1997-04-18 1997-04-18 液晶性硬化物の製造法 Pending JPH10292005A (ja)

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Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2000086589A (ja) * 1998-09-11 2000-03-28 Fuji Photo Film Co Ltd 光学補償シート、液晶表示素子、ディスコティック化合物、および液晶組成物
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JP2018095736A (ja) * 2016-12-13 2018-06-21 大日本印刷株式会社 側鎖型液晶ポリマー、液晶組成物、位相差フィルム及びその製造方法、転写用積層体、光学部材、並びに表示装置

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