JP4323205B2 - 液晶フィルムの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶フィルムの製造方法、及び該製造方法によって得られる液晶フィルムに関する。本発明の液晶フィルムは、光学フィルムとして有用である。また本発明は、該光学フィルムを用いた照明装置及び液晶表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、液晶ディスプレイは、透明電極を形成したガラス板の間に液晶を注入し、上記ガラス板の前後に偏光子を配置した構造を有する。このような液晶ディスプレイに用いられる偏光子は、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素や二色性染料などを吸着させ、これを一定方向に延伸することにより製造される。このように製造された偏光子それ自体は一方方向に振動する光を吸収し、他の一方方向に振動する光だけを通過させて直線偏光を作る。そのため、偏光子の効率は理論的に50%を超えることができず、液晶ディスプレイの効率を低下させる一番大きい要因となっている。また、この吸収光線のため、液晶表示装置は光源出力の増大をある程度以上まで行うと吸収光線の熱変換による発熱で偏光子が破壊されたり、またはセル内部の液晶層への熱影響にて表示品位が劣化する等の弊害を招いていた。
【0003】
円偏光分離機能を有するコレステリック液晶は、液晶の螺旋の回転方向と円偏光方向とが一致し、波長が液晶の螺旋ピッチであるような円偏光の光だけを反射する選択反射特性がある。この選択反射特性を用いて、一定した波長帯域の自然光の特定の円偏光のみを透過分離し、残りを反射し再利用することにより高効率の偏光膜の製造が可能である。この時、透過した円偏光は、λ/4波長板(位相差板)を通過することにより直線偏光に変換され、この直線偏光の方向を液晶ディスプレイに用いる吸収型偏光子の透過方向と揃えることで高透過率の液晶表示装置を得ることができる。すなわち、コレステリック液晶フィルムをλ/4波長板(位相差板)と組み合わせて直線偏光子として用いると理論的に光の損失がないため、50%の光を吸収する従来の吸収型偏光子を単独で用いた場合に比べて理論上は2倍の明るさ向上を得ることができる。
【0004】
従来、コレステリック液晶フィルムと位相差板は粘着剤や接着剤を用いて主にオフライン工程にて積層されていた。積層枚数が増えると工程数もそれに伴って増えるため生産性が低下するという問題があった。
【0005】
また、積層型光学素子として、コレステリック液晶層からなるベース層の間に、偏光状態を変化させる媒体を配置した円偏光分離層が開示されいる(特許文献1)。このように入射角により透過率/反射率が変化する光学素子は表面形状によらず機能するため、他の光学素子と貼り合わせて用いることができるが、光学素子の積層枚数が多いため異物が混入したり、粘着層の厚みにより光学素子が厚くなるという問題があった。
【0006】
【特許文献1】
特開平10−321025号公報
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、液晶フィルムの厚みを低減することができ、簡易かつ低コストで液晶フィルムを製造する方法を提供することを目的とする。また、該製造方法によって得られる液晶フィルムを提供することを目的とする。さらには、該液晶フィルムを用いた光学フィルム、照明装置、及び液晶表示装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、以下に示す液晶フィルムの製造方法により上記目的を達成できることを見出し本発明を完成するに至った。即ち、本発明は下記の通りである。
【0008】
1.重合性液晶化合物を含有する液晶性組成物を配向基板上に塗布する塗布工程、
配向による液晶状態を維持しながら前記重合性液晶化合物を光又は熱重合する重合工程、
前記重合工程中に、前記液晶性組成物からなる未硬化膜上に位相差板を積層する積層工程、及び
前記積層工程後に前記未硬化膜を硬化させる液晶層形成工程、
を含むことを特徴とする液晶フィルムの製造方法。
【0009】
2.前記液晶性組成物が、重合性液晶化合物として重合性ネマチック液晶化合物を含有し、さらに重合性カイラル化合物を含有することを特徴とする前記1記載の液晶フィルムの製造方法。
【0010】
3.重合工程において、前記配向基板側から光照射又は加熱することを特徴とする前記1又は2記載の液晶フィルムの製造方法。
【0011】
4.光重合に用いる光が紫外線であることを特徴とする前記1〜3のいずれかに記載の液晶フィルムの製造方法。
【0012】
5.酸素を含む気体の存在下で前記光重合を行うことを特徴とする前記4記載の液晶フィルムの製造方法。
【0013】
6.積層工程時における前記未硬化膜表面のクリープコンプライアンスが1×10-8cm2 /dyn以上であることを特徴とする前記1〜5のいずれかに記載の液晶フィルムの製造方法。
【0014】
7.前記液晶性組成物は溶液であって、積層工程時における前記液晶性組成物中の溶媒残存率が20重量%以下であることを特徴とする前記1〜6のいずれかに記載の液晶フィルムの製造方法。
【0015】
8.積層工程前の重合性液晶化合物の反応率が10〜95モル%であることを特徴とする前記1〜7のいずれかに記載の液晶フィルムの製造方法。
【0016】
9.コレステリック液晶ポリマーを溶媒に溶解した溶液を配向基板上に塗布する塗布工程、
前記コレステリック液晶ポリマーのコレステリック螺旋軸が前記配向基板面に対し垂直方向になるように配向させる配向工程、
前記配向による液晶状態を維持しながら加熱乾燥して配向膜を形成する際に、未形成の配向膜上に位相差板を積層する積層工程、及び
前記積層工程後、前記配向膜の配向を固定してコレステリック液晶層を形成する液晶層形成工程、
を含むことを特徴とする液晶フィルムの製造方法。
【0017】
10.前記位相差板が、樹脂フィルムを一軸延伸処理したものであることを特徴とする前記1〜9のいずれかに記載の液晶フィルムの製造方法。
11.前記位相差板が、液晶配向型フィルムであることを特徴とする前記1〜10のいずれかに記載の液晶フィルムの製造方法。
【0018】
12.前記液晶配向型フィルムは、リオトロピック液晶ポリマーを配向させた後、溶媒を除去することにより配向を固定したものであることを特徴とする前記11記載の液晶フィルムの製造方法。
【0019】
13.前記液晶配向型フィルムは、サーモトロピック液晶ポリマーを配向させた後、冷却することにより配向を固定したものであることを特徴とする前記11記載の液晶フィルムの製造方法。
【0020】
14.前記液晶配向型フィルムは、液晶性モノマーを配向させた後、重合させることにより配向を固定したものであることを特徴とする前記11記載の液晶フィルムの製造方法。
【0021】
15.前記位相差板に支持基材が設けられており、前記積層工程後に支持基材を剥離除去することを特徴とする前記1〜14のいずれかに記載の液晶フィルムの製造方法。
【0022】
16.前記1〜15のいずれかに記載の製造方法により得られる液晶フィルム。
【0023】
17.前記16記載の液晶フィルムを少なくとも1枚有する光学フィルム。
【0024】
18.光学フィルムが直線偏光子である前記17記載の光学フィルム。
【0025】
19.前記18記載の光学フィルムの透過軸に吸収型偏光子をその透過軸方向を合わせて貼り合わせて得られる光学フィルム。
【0026】
20.裏面側に反射層を有する面光源の表面側に前記17〜19のいずれかに記載の光学フィルムを有する照明装置。
【0027】
21.前記20記載の照明装置の光出射側に液晶セルを有する液晶表示装置。
【0028】
(作用効果)
本発明の液晶フィルムの製造方法は、液晶層上に位相差板を貼り合わせる際に接着剤や粘着剤などを用いる必要がないため、液晶フィルムの厚みを低減することができ、さらに液晶層の形成と位相差板の貼り合わせを同時に行うことができるため、製造工程数を低減し、生産性の向上を図ることができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
本発明の液晶フィルムの製造方法では、液晶層形成材料として重合性液晶化合物を含有する液晶性組成物を用いる。重合性液晶化合物としては、ネマチック液晶性、スメチック液晶性、又はコレステリック液晶性などを示す公知の液晶化合物(モノマー、オリゴマー、ポリマー、及びこれらの混合物)を特に制限なく用いることができる。
【0030】
本発明においては、前記液晶性組成物が、重合性液晶化合物として重合性ネマチック液晶化合物を含有し、さらに重合性カイラル化合物を含有することが好ましい。以下、重合性ネマチック液晶化合物及び重合性カイラル化合物を含有する液晶性組成物を用いた液晶フィルムの製造方法について説明する。
【0031】
重合性ネマチック液晶化合物は、重合性官能基を少なくとも1つ有し、これに環状単位等からなるメソゲン基を有するものがあげられる。重合性官能基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、エポキシ基、ビニルエーテル基等があげられるが、これらのなかでアクリロイル基、メタクリロイル基が好適である。また重合性官能基を2つ以上有するものを用いることにより架橋構造を導入して耐久性を向上させることもできる。メソゲン基となる環状単位としては、たとえば、ビフェニル系、フェニルベンゾエート系、フェニルシクロヘキサン系、アゾキシベンゼン系、アゾメチン系、アゾベンゼン系、フェニルピリミジン系、ジフェニルアセチレン系、ジフェニルベンゾエート系、ビシクロへキサン系、シクロヘキシルベンゼン系、ターフェニル系等があげられる。なお、これら環状単位の末端は、たとえば、シアノ基、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基等の置換基を有していてもよい。前記メソゲン基は屈曲性を付与するスペーサ部を介して結合していてもよい。スペーサ部としては、ポリメチレン鎖、ポリオキシメチレン鎖等があげられる。スペーサ部を形成する構造単位の繰り返し数は、メソゲン部の化学構造により適宜に決定されるがポリメチレン鎖の繰り返し単位は0〜20、好ましくは2〜12、ポリオキシメチレン鎖の繰り返し単位は0〜10、好ましくは1〜3である。
【0032】
重合性カイラル化合物は、重合性官能基を少なくとも1つ有し、かつ光学活性基を有し、重合性ネマティック液晶化合物の配向を乱さないものであれば特に制限されない。重合性官能基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、エポキシ基、ビニルエーテル基等があげられるが、これらのなかでアクリロイル基、メタクリロイル基が好適である。重合性カイラル化合物は、液晶性を有していてもよく液晶性を有しなくてもよいが、コレステリック液晶性を示すものを好ましく使用できる。
【0033】
前記重合性ネマチック液晶化合物は重合性官能基数を1つ以上有する化合物であり、重合性カイラル化合物が重合性ネマチック液晶化合物の重合性官能基数以上の重合性官能基数を有する化合物であることが好ましい。重合性ネマチック液晶化合物と重合性カイラル化合物として、それぞれの重合性官能基数が前記関係にあるものを用いることにより、光照射又は加熱における反応性の違いにより、より広帯域化した螺旋状ねじれ分子構造を有する高分子液晶層からなる光学素子が得られる。たとえば、重合性ネマチック液晶化合物が重合性官能基数を1つ有する化合物の場合には、重合性カイラル化合物が重合性官能基を2つ以上有する化合物を用いるのが好ましい。
【0034】
重合性カイラル化合物の添加量は、その添加量により選択反射波長を決定するピッチが変化することから添加量の制御で選択反射波長に基づく色を調節することができる。重合性カイラル化合物の配合量は、重合性ネマチック液晶化合物100重量部に対し1〜30重量部程度、好ましくは2〜20重量部程度である。
さらに、前記液晶性組成物には、反応性基を有するアクリルモノマー、反応性基を有するウレタンオリゴマー、ポリエステルオリゴマー、及びエポキシアクリレートオリゴマーなどの重合性化合物を適宜添加してもよい。
【0035】
前記液晶性組成物に光(紫外線)を照射する場合には、当該液晶性組成物に光重合開始剤を加えることが好ましい。光重合開始剤は各種のものを特に制限なく使用できる。光重合開始剤としては、チバスペシャリティケミカルズ社製のイルガキュア(Irgacure)907,同184、同651、同369などが例示できる。光重合開始剤の添加量は、重合性ネマチック液晶化合物と重合性カイラル化合物の合計量に対して0.5〜10重量%であることが好ましい。大気雰囲気下では光重合開始剤の必要量が増大する傾向にあるが、イルガキュア184やイルガキュア907を用いれば1〜5重量%程度の添加量で所用の目的を達成できる。
【0036】
前記液晶性組成物には、得られるコレステリック液晶層の帯域幅を広げるために、紫外線吸収剤を添加して厚み方向での紫外線露光強度差を大きくするすることができる。また、モル吸光係数の大きな光重合開始剤を用いることで同様の効果を得ることもできる。
【0037】
また、前記液晶性組成物を加熱する場合には、熱重合開始剤を用いることが好ましい。熱重合開始剤としては公知のものを特に制限なく用いることができ、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブチル バレレート、ジクミルパーオキサイドなどの過酸化物類、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物類、テトラメチルチウラムジスルフィドなどが挙げられる。熱重合開始剤の含有量は、液晶性組成物中に0.01〜10重量%が好ましく、さらに好ましくは1〜5重量%である。
【0038】
前記液晶性組成物は溶液として用いることができる。溶液を調製する際に用いる溶媒としては、通常、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類、フェノール、パラクロロフェノールなどのフェノール類、ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキベンゼンなどの芳香族炭化水素類、その他、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、tert−ブチルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレンブリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ピリジン、トリエチルアミン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ブチロニトリル、二硫化炭素、シクロヘキサノン、シクロヘプタン、シクロペンタノンなどである。溶液の濃度は、重合性ネマチック液晶化合物の溶解性や目的とするコレステリック液晶層の膜厚に依存するため一概には言えないが、通常3〜50重量%程度とするのが好ましい。
【0039】
本発明の液晶フィルムの製造方法は、1)前記液晶性組成物を配向基板上に塗布する塗布工程、2)配向による液晶状態を維持しながら前記重合性液晶化合物を光又は熱重合する重合工程、3)前記重合工程中に、前記液晶性組成物からなる未硬化膜上に位相差板を積層する積層工程、4)前記積層工程後に前記未硬化膜を硬化させる液晶層形成工程を含む。なお、塗布工程においては、配向基板と液晶層とが複数積層された複合体の配向基板上に塗布してもよい。また、複合体表面にラビング処理などの配向処理を行ってもよい。
【0040】
配向基板としては、従来知られているものを採用できる。たとえば、基板上にポリイミドやポリビニルアルコール等からなる薄膜を形成して、それをレーヨン布等でラビング処理したラビング膜、斜方蒸着膜、シンナメートやアゾベンゼンなど光架橋基を有するポリマーあるいはポリイミドに偏光紫外線を照射した光配向膜、延伸フィルムなどが用いられる。その他、磁場、電場配向、ずり応力操作により配向させることもできる。
【0041】
基材の種類は特に限定しないが、配向基板側から光(紫外線)を照射する場合には、透過率の高い素材が望ましい。たとえば、基材は、200nm以上400nm以下、より望ましくは300nm以上400nm以下の紫外域に対して透過率10%以上、望ましくは20%以上であることが求められる。具体的には、波長365nmの紫外光に対する透過率が10%以上、さらには20%以上のプラスチックフィルムであることが好ましい。なお、透過率は、HITACHI製U−4100Spectrophotometerにより測定される値である。
【0042】
なお、前記基板としては、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース、ノルボルネン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリスルホンやポリエーテルスルホン等のプラスチックからなるフィルムやガラス板が用いられる。例えば富土写真フイルム社製トリアセチルセルロースやJSR製ARTON、日本ゼオン製ゼオネックスなどがあげられる。
【0043】
また、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルム、たとえば、(A)側鎖に置換および/または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、(B)側鎖に置換および/非置換フェニルならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物があげられる。具体例としてはイソブチレンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体とアクリロニトリル・スチレン共重合体とを含有する樹脂組成物のフィルムがあげられる。フィルムは樹脂組成物の混合押出品などからなるフィルムを用いることができる。
【0044】
前記基材は液晶層と貼り合わせたまま用いても良いし剥離除去しても良い。貼り合わせたまま用いる場合には位相差値が実用上十分小さな材質を用いる必要がある。
【0045】
基材を貼り合わせたまま用いる場合には、基材は加熱されたり、光(紫外線)が照射されても分解・劣化・黄変しないものが望ましい。たとえば、前述の基材には光安定剤等を配合することのより所用の目的を達成しうる。光安定剤としては、チバスペシャルティケミカルズ社製チヌビン120、同144等が好適に用いられる。露光光線から波長300nm以下をカットしておけば着色・劣化・黄変を低減することができる。
【0046】
配向基板上に液晶性組成物を塗布する方法としては、例えば、ロールコート法、グラビアコート法、スピンコート法、バーコート法など公知の方法を採用することができる。液晶性組成物の塗布厚み(溶液の場合は乾燥後の塗布厚み)は、1〜20μm程度が好ましく、さらに好ましくは5〜12μm程度である。
【0047】
前記塗布工程後、配向による液晶状態を維持しながら前記重合性ネマチック液晶化合物と重合性カイラル化合物を光又は熱重合する。
【0048】
液晶状態にする方法としては、例えば熱処理が挙げられる。熱処理温度は、液晶材料や配向基板等の種類により異なるため、一概には言えないが、通常60〜300℃、好ましくは70〜200℃の範囲で行う。また熱処理時間は、熱処理温度および使用する液晶材料や配向基板等の種類によって異なるため一概には言えないが、通常10秒〜2時間、好ましくは20秒〜30分である。
【0049】
光照射においては、紫外線、電子線、α線、β線、γ線などの電離放射線、可視光線、赤外光線、マイクロ波、高周波などが用いられるが、特に紫外線が好ましい。紫外線を用いることにより、重合性液晶化合物の紫外線吸光係数と光重合開始剤の吸光係数から厚み方向における紫外線照射量を制御することができる。さらに、紫外線吸収剤の添加により、照射面側とその反対側とで重合速度に差をつけることが可能であり、液晶フィルムを作製する際の自由度が高くなる。
【0050】
また、本発明においては、酸素を含む気体の存在下で紫外線照射を行うことが好ましい。酸素を含む気体は、0.5%以上の酸素を含んでいることが好ましい。当該気体としては空気が好ましく用いられる。
【0051】
紫外線を用いて光重合を行う際に、酸素含有雰囲気下で行うと酸素による重合阻害効果により、未硬化膜表面の重合速度を制御することができ、粘着性を十分有する状態で位相差板を貼り合わせることができる。さらに、配向基板側からの紫外線照射と酸素含有雰囲気下での紫外線照射とを組み合わせることによりコレステリック液晶層の選択反射帯域幅を拡大することが可能である。
【0052】
紫外線を発生する装置としては、例えば、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、水銀−キセノンランプ、及びショートアーク灯などが挙げられ、ラジカル性活性種を発生させる化合物の吸収波長を考慮して適宜選択する。
【0053】
光照射中の温度は40℃以上であることが好ましい。光照射中の温度を40℃以上とすることで良好な配向状態で液晶材料を重合させることができる。光照射中の温度は50〜90℃程度がより好ましい。
【0054】
光(紫外線)の照射強度は、光重合開始剤の種類やその濃度、重合性液晶化合物の反応性等を考慮して適宜決定することができる。
【0055】
熱重合する場合、その加熱温度も熱重合開始剤の種類やその濃度、重合性液晶化合物の反応性等を考慮して適宜決定することができる。
【0056】
重合工程において、光照射又は加熱は配向基板側から行ってもよく、その反対側(液晶性組成物上)から行ってもよいが、配向基板側から行うことが好ましい。光照射又は加熱方向を配向基板側から行うことにより、未硬化膜の厚さ方向における重合速度差を顕著に拡大せしめることができ、前記液晶性組成物の組成比を厚み方向で変化させて形成し、これによりコレステリック液晶ピッチ長を配向基板面側と露出面側とで差を設けることができる。それにより、可視光全域をカバーする選択反射波長領域幅を持つコレステリック液晶層を形成することができる。なお、熱重合する場合には、反対側(液晶性組成物上)を風冷するなどして温度差をつけることが可能である。
【0057】
本発明においては、前記重合工程中に、前記液晶性組成物からなる未硬化膜上に位相差板を積層する(積層工程)。
【0058】
位相差板は、公知のものを特に制限なく使用可能であるが、λ/2板又はλ/4板が好ましく用いられ、特にλ/4板を用いることが好ましい。λ/4板を組み合わせることで透過光線を直線偏光に変換する直線偏光子として用いることができる。
【0059】
λ/4板は、特に限定されないがポリカーボネート、ノルボルネン系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピレンやその他のポリオレフィン、ポリアリレート、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリスルホンの如き適宜なポリマーからなる樹脂フィルムを一軸延伸処理してなる複屈折性フィルムや液晶配向型フィルム、液晶材料の配向層をフィルムにて支持したものなどがあげられる。
【0060】
前記液晶配向型フィルムは、1)リオトロピック液晶ポリマーを配向させた後、溶媒を除去することにより配向を固定したもの、2)サーモトロピック液晶ポリマーを配向させた後、冷却することにより配向を固定したもの、又は3)液晶性モノマーを配向させた後、重合させることにより配向を固定したものであることが好ましい。
【0061】
λ/4板の厚さは、延伸フィルムの場合には25〜300μm程度であり、液晶配向型フィルムの場合には0.2〜10μm程度である。
【0062】
λ/4板は単一材料による単層では特定の波長に対してのみ良好に機能するが、その他の波長に対しては波長分散特性上λ/4板として機能が低下する問題がある。そこでλ/2板と軸角度を規定して積層すれば可視光全域で実用上差し支えない程度の範囲で機能する広帯域λ/4板として用いることができる。この場合の各λ/4板、λ/2板は同一材料でも良いし上記記述のλ/4板と同様の手法で得られる別個の材料によって作製した物を組み合わせても良い。
【0063】
位相差板の接着表面は、コロナ処理、ケン化処理、オゾン処理、低圧水銀灯による紫外線処理、プラズマ処理などの易接着処理を行うことが望ましい。位相差板と未硬化膜との接着は、主に未硬化膜中の残存モノマーと位相差板との界面反応によるため分子結合箇所を十分に得る必要があるからである。
【0064】
本発明においては、前記積層工程においても光照射又は加熱方向を配向基板側から行うことが好ましい。配向基板側から光照射又は加熱をすることにより、未硬化膜表面の重合速度を配向基板面側に比べて小さくすることができる。これにより、未硬化膜表面のモノマー残存率が相対的に多くなるため位相差板との接着時の反応性が向上する。
【0065】
また、積層工程時における前記未硬化膜表面のクリープコンプライアンスが1×10-8cm2 /dyn以上であることが好ましい。C.ADahlquistの経験則より一般的なポリマーによる良好な粘着特性を得る条件は、クリープコンプライアンスが1×10-7cm2 /dyn以上であることが示されている。しかし、本発明のような平滑面同士の貼り合わせで、残存モノマーの重合による界面接着を行う場合には初期接着は比較的軽度でもよい。クリープコンプライアンスが1×10-8cm2 /dyn以上であり、界面がある程度馴染む堅さであれば貼り合わせ時に十分な圧着を行うことにより求める接着強度は得られる。本発明においては、クリープコンプライアンスが1×10-7cm2 /dyn以上であれば軽圧着で十分に密着することができるのでより好ましく、1×10-6cm2 /dyn以上であれば被着体の表面が凹凸を有する場合でも密着性が良好になるため特に好ましい。一方、塗膜のクリープコンプライアンスが1×10-3cm2 /dyn以上の場合には、柔らかすぎて貼り合わせの際に塗膜構造が破壊されるおそれがあるが、本発明のような膜強度が厚み方向で均一でなく、未硬化膜表面のモノマー残存率が相対的に多い構造の場合には特に上限値に制限はない。
【0066】
また、未硬化膜は位相差板と貼り合わせた状態で重合反応を行う必要があることから、未硬化膜中の溶媒は少ないほうが好ましい。一般に溶媒は重合禁止剤、連鎖移動剤として機能するため重合が十分に進行しない傾向にある。そのため、積層工程時における前記液晶性組成物中の溶媒残存率は20重量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは10重量%以下、特に好ましくは5重量%以下である。また、残存溶媒は、位相差板を積層した後でも除去することができるが、溶媒残存率が20重量%を超える場合には除去するのに時間がかかり、生産効率が低下する傾向にある。なお、位相差板が支持基材を有する場合には、積層後に支持基材を剥離除去することにより溶媒の除去を促進させることができる。また、位相差板を液晶ポリマーで形成することにより溶媒の除去を促進させることもできる。一般に液晶ポリマーからなる位相差板は、樹脂フィルムを延伸処理して得られる位相差板よりもかなり薄いためである。
【0067】
また、積層工程前の重合性液晶化合物の反応率は10〜95モル%であることが好ましく、さらに好ましくは20〜90モル%、特に好ましくは30〜85モル%である。反応率が10モル%未満の場合には積層工程後の液晶層の形成に時間がかかり過ぎる傾向にあり、反応率が95モル%を超える場合には未硬化膜の粘着性(タック感)が低下し、位相差板との接着が困難になる傾向にある。
【0068】
前記積層工程後、前記未硬化膜をさらに光又は熱重合することにより硬化させて液晶層を形成し(液晶層形成工程)、本発明の液晶フィルムを製造する。
【0069】
積層工程後、前記未硬化膜をさらに光重合する際には、前記位相差板は酸素阻害防止層としての機能を有する。このため、位相差板と重合性液晶化合物などとの界面反応は良好に進行する。この場合の光照射は配向基板面側から行ってもよく、位相差板面側から行ってもよいが、接着界面までの紫外線透過率が大きい面から照射することが好ましい。例えば、例えば厚み30μm程度のPC製位相差板であれば光重合に十分な紫外線が透過するので位相差板面側からの光照射にて十分硬化しうるが、富士写真フィルム製のTACフィルム(厚さ80μm)や、それを支持体として用いた富士写真フィルム製のWVフィルム(ディスコチック液晶位相差板)などは紫外線透過率が低いので、配向基板面側から光照射を行うことが好ましい。
【0070】
従来、配向基板上に液晶層を配向形成する場合において、配向基板面側の配向状態は良好である(垂直配向特性を示す)が、空気界面側の配向状態が悪い(傾斜した異常配向特性を示す)という問題があった。本発明の製造方法によると、重合完結前に未硬化膜上に液晶配向基板として機能する位相差板を貼り合わせることにより、未硬化膜表面近傍の傾斜異常配向が該位相差板の液晶配向により解消される傾向にある。
【0071】
また、本発明の他の液晶フィルムの製造方法は、コレステリック液晶ポリマーを溶媒に溶解した溶液を配向基板上に塗布する塗布工程、
前記コレステリック液晶ポリマーのコレステリック螺旋軸が前記配向基板面に対し垂直方向になるように配向させる配向工程、
前記配向による液晶状態を維持しながら加熱乾燥して配向膜を形成する際に、未形成の配向膜上に位相差板を積層する積層工程、
前記積層工程後、前記配向膜の配向を固定してコレステリック液晶層を形成する液晶層形成工程を含むことを特徴とする。
【0072】
コレステリック液晶ポリマーは特に制限されず、例えば、前記重合性ネマチック液晶化合物と重合性カイラル化合物を含む液晶組成物をラジカル重合方式、カチオン重合方式、アニオン重合方式などの公知の重合方式に準じて行うことができる。なお、ラジカル重合方式を適用する場合、各種の重合開始剤を用いうるが、そのうちアゾビスイソブチロニトリルや過酸化ベンゾイルなどの分解温度が高くもなく、かつ低くもない中間的温度で分解するものが好ましく用いられる。コレステリック液晶ポリマーの数平均分子量は、2千〜10万程度であるのが好ましく、さらに好ましくは5千〜5万程度である。
【0073】
前記コレステリック液晶ポリマーを溶解する溶媒としては、前記溶媒と同様のものを用いることができる。溶液の濃度は、通常3〜50重量%程度に調整することが好ましい。
【0074】
前記溶液の配向基板上への塗布方法は特に制限されず、前記方法と同様の方法を採用することができる。
【0075】
前記配向は、コレステリック液晶ポリマーの液晶転移温度以上で行う。配向温度、時間はコレステリック液晶ポリマーの種類に応じて適宜に決定される。
【0076】
位相差板は、公知のものを特に制限なく使用可能であり、例えば前記記載のものを用いることができる。位相差板の接着表面は、前記と同様に易接着処理を行うことが望ましい。
【0077】
積層工程時における前記未形成配向膜表面のクリープコンプライアンス及び溶液中の溶媒残存率は、前記と同様である。
【0078】
本発明の液晶フィルムは、直線偏光子などの光学フィルムに好ましく用いられる。本発明の光学フィルムは、前記液晶フィルムを少なくとも1枚有するものである。また、前記液晶フィルムからなる直線偏光子の透過軸に吸収型偏光子をその透過軸方向を合わせて貼り合わせた光学フィルムとすることも好ましい態様である。
【0079】
偏光子は、特に制限されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、たとえば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等があげられる。これらのなかでもポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる偏光子が好適である。これら偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に、5〜80μm程度である。
【0080】
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、たとえば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作製することができる。必要に応じてホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色の前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸してもよし、また延伸してからヨウ素で染色してもよい。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液中や水浴中でも延伸することができる。
【0081】
前記偏光子は、通常、片側または両側に透明保護フィルムが設けられ偏光板として用いられる。透明保護フィルムは透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、等方性などに優れるものが好ましい。透明保護フィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー等の透明ポリマーからなるフィルムがあげられる。またポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体等のスチレン系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体等のオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー等の透明ポリマーからなるフィルムもあげられる。さらにイミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマーや前記ポリマーのブレンド物等の透明ポリマーからなるフィルムなどもあげられる。特に光学的に複屈折の少ないものが好適に用いられる。偏光板の保護フィルムの観点よりは、トリアセチルセルロース、ポリカーボネート、アクリル系ポリマー、シクロオレフィン系樹脂、ノルボルネン構造を有するポリオレフィンなどが好適である。本発明は、トリアセチルセルロースのように、高い温度での焼成が難しい透明基材について好適である。なお、トリアセチルセルロースは、130℃以上ではフィルム中の可塑剤が揮発し特性が著しく低下する。
【0082】
また、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルム、たとえば、(A)側鎖に置換および/または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、(B)側鎖に置換および/非置換フェニルならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物があげられる。具体例としてはイソブチレンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体とアクリロニトリル・スチレン共重合体とを含有する樹脂組成物のフィルムがあげられる。フィルムは樹脂組成物の混合押出品などからなるフィルムを用いることができる。
【0083】
偏光特性や耐久性などの点より、特に好ましく用いることができる透明基板は、表面をアルカリなどでケン化処理したトリアセチルセルロースフィルムである。透明基板の厚さは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性、薄層性などの点より10〜500μm程度である。特に20〜300μmが好ましく、30〜200μmがより好ましい。
【0084】
また、透明保護フィルムは、できるだけ色付きがないことが好ましい。したがって、Rth=[(nx+ny)/2−nz]・d(ただし、nx、nyはフィルム平面内の主屈折率、nzはフィルム厚方向の屈折率、dはフィルム厚みである)で表されるフィルム厚み方向の位相差値が−90nm〜+75nmである保護フィルムが好ましく用いられる。かかる厚み方向の位相差値(Rth)が−90nm〜+75nmのものを使用することにより、保護フィルムに起因する偏光板の着色(光学的な着色)をほぼ解消することができる。厚み方向位相差値(Rth)は、さらに好ましくは−80nm〜+60nm、特に−70nm〜+45nmが好ましい。
【0085】
前記透明保護フィルムは、表裏で同じポリマー材料からなる透明保護フィルムを用いてもよく、異なるポリマー材料等からなる透明保護フィルムを用いてもよい。
【0086】
前記直線偏光子などの光学フィルムの積層、さらには各種光学層の積層は、液晶表示装置等の製造過程で順次別個に積層する方式にても行うことができるが、これらを予め積層したのものは、品質の安定性や組立作業等に優れていて液晶表示装置などの製造工程を向上させうる利点がある。積層には粘着層等の適宜な接着手段を用いうる。前記接着に際し、それらの光学軸は目的とする位相差特性などに応じて適宜な配置角度とすることができる。
【0087】
前記直線偏光子などの光学フィルムには、液晶セル等の他部材と接着するための粘着層を設けることもできる。粘着層を形成する粘着剤は特に制限されないが、例えばアクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、アクリル系粘着剤の如く光学的透明性に優れ、適度な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れるものが好ましく用いうる。
【0088】
また上記に加えて、吸湿による発泡現象や剥がれ現象の防止、熱膨張差等による光学特性の低下や液晶セルの反り防止、ひいては高品質で耐久性に優れる液晶表示装置の形成性などの点より、吸湿率が低くて耐熱性に優れる粘着層が好ましい。
【0089】
粘着層は、例えば天然物や合成物の樹脂類、特に、粘着性付与樹脂や、ガラス繊維、ガラスビーズ、金属粉、その他の無機粉末等からなる充填剤や顔料、着色剤、酸化防止剤などの粘着層に添加されることの添加剤を含有していてもよい。また微粒子を含有して光拡散性を示す粘着層などであってもよい。
【0090】
粘着層の付設は、適宜な方式で行いうる。その例としては、例えばトルエンや酢酸エチル等の適宜な溶剤の単独物又は混合物からなる溶媒にベースポリマーまたはその組成物を溶解又は分散させた10〜40重量%程度の粘着剤溶液を調製し、それを流延方式や塗工方式等の適宜な展開方式で前記偏光子上に直接付設する方式、あるいは前記に準じセパレータ上に粘着層を形成してそれを光学素子上に移着する方式などがあげられる。粘着層は、各層で異なる組成又は種類等のものの重畳層として設けることもできる。粘着層の厚さは、使用目的や接着力などに応じて適宜に決定でき、一般には1〜500μmであり、5〜200μmが好ましく、特に10〜100μmが好ましい。
【0091】
粘着層の露出面に対しては、実用に供するまでの間、その汚染防止等を目的にセパレータが仮着されてカバーされる。これにより、通例の取扱状態で粘着層に接触することを防止できる。セパレータとしては、上記厚さ条件を除き、例えばプラスチックフィルム、ゴムシート、紙、布、不織布、ネット、発泡シートや金属箔、それらのラミネート体等の適宜な薄葉体を、必要に応じシリコーン系や長鎖アルキル系、フッ素系等の適宜な剥離剤でコート処理したものなどの、従来に準じた適宜なものを用いうる。
【0092】
なお、粘着層などの各層には、例えばサリチル酸エステル系化合物やべンゾフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物やシアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤で処理する方式などの方式により紫外線吸収能をもたせたものなどであってもよい。
【0093】
本発明の直線偏光子などの光学フィルムは、液晶表示装置等の各種装置の形成などに好ましく用いることができる。液晶表示装置の形成は、従来に準じて行いうる。すなわち液晶表示装置は一般に、液晶セルと光学素子、及び必要に応じての照明システム等の構成部品を適宜に組立てて駆動回路を組込むことなどにより形成されるが、本発明の光学フィルムを用いる点を除いて特に限定はなく、従来に準じうる。液晶セルについても、例えばTN型やSTN型、π型などの任意なタイプのものを用いうる。
【0094】
液晶セルの片側又は両側に前記光学フィルムを配置した液晶表示装置や、照明システムにバックライトあるいは反射板を用いたものなどの適宜な液晶表示装置を形成することができる。その場合、本発明の光学フィルムは液晶セルの片側又は両側に設置することができる。両側に光学フィルムを設ける場合、それらは同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。
【0095】
【実施例】
以下、実施例、比較例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0096】
<重合性液晶化合物の反応率の測定>
紫外線照射前(乾燥後)の配向基板上の液晶性組成物を50mg採取し、溶媒(アセトニトリル)110mlに溶かしサンプル溶液Aを調製した。また、紫外線照射後の未硬化膜から液晶性組成物を50mg採取し、溶媒(アセトニトリル)100mlに溶かしサンプル溶液Bを調製した。液相クロマトグラフィー(HPLC)によりサンプル溶液A及びサンプル溶液B中の重合性ネマチック液晶化合物の含有量を測定し、その存在比から重合性液晶化合物の反応率を測定した。なお、測定条件は、カラム(Inertsil社製、ODS−3(φ4.6mm×15cm、5μm))、溶媒アセトニトリル、測定温度40℃である。
【0097】
<溶媒残存率の測定>
位相差板の積層工程前に、未硬化膜から液晶性組成物を50mg採取し、熱風乾燥機を用いて液晶性組成物を重量変化しなくなるまで(170℃まで)加熱した。加熱後の液晶性組成物を重量を測定し、加熱前の重量と比較することにより溶媒残存率を算出した。
【0098】
<クリープコンプライアンスの測定>
動的粘弾性測定装置(RSI社製、ARES測定機)を用いて未硬化膜表面のクリープコンプライアンスを測定した。なお、測定条件は周波数11Hzである。
【0099】
実施例1
重合性ネマチック液晶化合物である4−[2−[2−[(1−オキソ−2−プロペニル)オキシ]エトキシ]エトキシ]−4−[(4−シアノフェニル)エチニル]−2−フルオロフェニル ベンゾエートを94重量部、重合性カイラル化合物(BASF社製、LC756)6重量部、及び光重合開始剤(チバスペシャリティケミカルズ社製、イルガキュア369)0.5重量部をシクロヘプタンに溶解して液晶性組成物(溶質20重量%)を調製した。前記液晶性組成物をPET配向基板(東レ社製、S27、厚さ75μm)上にワイヤーバーにて溶媒除去後の厚さが6μmになるように塗布し、液晶温度(100℃)以上で1分間乾燥・配向させた。その後、酸素濃度21%の大気中で、配向基板側から紫外線照射(露光照度:40mW/cm2 ×1秒、温度:80℃)を行った。この段階での配向基板面側と空気界面側の重合性ネマチック液晶化合物の反応率差は15%程度であった。さらに、露光照度5mW/cm2 ×60秒、温度80℃の条件にて紫外線照射を行った。該紫外線照射後の重合性ネマチック液晶化合物の反応率は70%、液晶性組成物中の溶媒残存率は2重量%、液晶性組成物からなる未硬化膜表面のクリープコンプライアンスは2×10-7cm2 /dynであった。前記液晶性組成物からなる未硬化膜表面には粘着感(タック感)が残っており、重合は完結しておらず、このままでは液晶表示装置用途としては使用に耐えない膜質であった。
その後、該未硬化膜上にλ/4板であるNRFフィルム(日東電工社製、PC、正面位相差:140nm、厚さ:50μm)をラミネーターにて貼り合わせ、NRFフィルム側から紫外線を照射し(50mW/cm2 ×60秒)、重合反応を完結した。NRFフィルムは貼り合わせ前にコロナ処理を行い、その表面の易接着化を施した。本処理にて光重合はおよそ完結し、重合性ネマチック液晶化合物の反応率は95%以上であった。位相差板と液晶層(約6μm)とは接着され一体化していた。接着力を180度ピール試験計測(20mm幅、引っ張り速度300mm/分、23℃、65RH環境下)にて測定したところ、凝集破壊し計測不能な強度で一体化していた。
【0100】
実施例2
重合性ネマチック液晶化合物(BASF社製、LC242)97.5重量部、重合性カイラル化合物(BASF社製、LC756)2.5重量部、及び光重合開始剤(チバスペシャリティケミカルズ社製、イルガキュア907)1重量部をシクロヘキサノンに溶解して液晶性組成物(溶質20重量%)を調製した。前記液晶性組成物をPET配向基板(東レ社製、S27、厚さ75μm)上にワイヤーバーにて溶媒除去後の厚さが6μmになるように塗布し、液晶温度(90℃)以上で1分間乾燥・配向させた。その後、酸素濃度21%の大気中で、配向基板側から紫外線照射(露光照度:40mW/cm2 ×1秒、温度:80℃)を行った。この段階での配向基板面側と空気界面側の重合性ネマチック液晶化合物の反応率差は8%程度であった。さらに、露光照度5mW/cm2 ×30秒、温度90℃の条件にて紫外線照射を行った。該紫外線照射後の重合性ネマチック液晶化合物の反応率は80%、液晶性組成物中の溶媒残存率は3重量%、液晶性組成物からなる未硬化膜表面のクリープコンプライアンスは7×10-8cm2 /dynであった。前記液晶性組成物からなる未硬化膜表面には粘着感(タック感)が残っており、重合は完結しておらず、このままでは液晶表示装置用途としては使用に耐えない膜質であった。
その後、該未硬化膜上にネガティブCフィルム(日東電工社製、正面位相差:0、厚み方向位相差:140nm、厚さ:50μm)をラミネーターにて貼り合わせ、ネガティブCフィルム側から紫外線を照射し(30mW/cm2 ×60秒)、重合反応を完結した。ネガティブCフィルムは貼り合わせ前にコロナ処理を行い、その表面の易接着化を施した。本処理にて光重合はおよそ完結し、重合性ネマチック液晶化合物の反応率は95%以上であった。位相差板と液晶層(6μm)とは接着され一体化していた。接着力を180度ピール試験計測(20mm幅、引っ張り速度300mm/分、23℃、65RH環境下)にて測定したところ、凝集破壊し計測不能な強度で一体化していた。
【0101】
比較例1
実施例1と同様の液晶性組成物を調製した。前記液晶性組成物をPET配向基板(東レ社製、S27、厚さ75μm)上にワイヤーバーにて厚さ10μmで塗布し、液晶温度以上で乾燥・配向させた。その後、酸素濃度21%の大気中で、配向基板側から紫外線照射(露光照度:50mW/cm2 ×60秒、温度:80℃)を行い、重合性ネマチック液晶化合物をほぼ完全に重合させて硬化膜を形成した。硬化膜の表面は粘着性(タック感)がほとんどなかった。該硬化膜表面を熱ラミネーターにて100℃まで加熱し、前記NRFフィルムを重ねて紫外線照射を行ったが接着しなかった。
【0102】
比較例2
実施例1と同様の液晶性組成物を調製した。前記液晶性組成物をPET配向基板(東レ社製、S27、厚さ75μm)上にワイヤーバーにて厚さ10μmで塗布し、液晶温度以上で乾燥・配向させた。その後、酸素濃度21%の大気中で、配向基板側から紫外線照射(40mW/cm2 ×1秒、及び5mW/cm2 ×60秒、温度80℃)を行った。該紫外線照射後の重合性ネマチック液晶化合物の反応率は70%程度であった。さらに、窒素雰囲気下で紫外線照射(露光照度:50mW/cm2 ×60秒、温度:80℃)を行ったところ、重合性ネマチック液晶化合物はほぼ完全に重合し、硬化膜が形成された。硬化膜の表面は粘着性(タック感)がほとんどなかった。該硬化膜表面を熱ラミネーターにて100℃まで加熱し、前記NRFフィルムを重ねて紫外線照射を行ったが接着しなかった。

Claims (15)

  1. 重合性液晶化合物を含有する液晶性組成物を配向基板上に塗布する塗布工程、
    配向による液晶状態を維持しながら前記重合性液晶化合物を光又は熱重合する重合工程、
    前記重合工程中に、前記液晶性組成物からなる未硬化膜上に位相差板を積層する積層工程、及び
    前記積層工程後に前記未硬化膜を硬化させる液晶層形成工程、を含むことを特徴とする液晶フィルムの製造方法。
  2. 前記液晶性組成物が、重合性液晶化合物として重合性ネマチック液晶化合物を含有し、さらに重合性カイラル化合物を含有することを特徴とする請求項1記載の液晶フィルムの製造方法。
  3. 重合工程において、前記配向基板側から光照射又は加熱することを特徴とする請求項1又は2記載の液晶フィルムの製造方法。
  4. 光重合に用いる光が紫外線であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の液晶フィルムの製造方法。
  5. 酸素を含む気体の存在下で前記光重合を行うことを特徴とする請求項4記載の液晶フィルムの製造方法。
  6. 積層工程時における前記未硬化膜表面のクリープコンプライアンスが1×10−8cm/dyn以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の液晶フィルムの製造方法。
  7. 前記液晶性組成物は溶液であって、積層工程時における前記液晶性組成物中の溶媒残存率が20重量%以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の液晶フィルムの製造方法。
  8. 積層工程前の重合性液晶化合物の反応率が10〜95モル%であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の液晶フィルムの製造方法。
  9. コレステリック液晶ポリマーを溶媒に溶解した溶液を配向基板上に塗布する塗布工程、
    前記コレステリック液晶ポリマーのコレステリック螺旋軸が前記配向基板面に対し垂直方向になるように配向させる配向工程、
    前記配向による液晶状態を維持しながら加熱乾燥して配向膜を形成する際に、未形成の配向膜上に位相差板を積層する積層工程、及び
    前記積層工程後、前記配向膜の配向を固定してコレステリック液晶層を形成する液晶層形成工程、を含むことを特徴とする液晶フィルムの製造方法。
  10. 前記位相差板が、樹脂フィルムを一軸延伸処理したものであることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の液晶フィルムの製造方法。
  11. 前記位相差板が、液晶配向型フィルムであることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の液晶フィルムの製造方法。
  12. 前記液晶配向型フィルムは、リオトロピック液晶ポリマーを配向させた後、溶媒を除去することにより配向を固定したものであることを特徴とする請求項11記載の液晶フィルムの製造方法。
  13. 前記液晶配向型フィルムは、サーモトロピック液晶ポリマーを配向させた後、冷却することにより配向を固定したものであることを特徴とする請求項11記載の液晶フィルムの製造方法。
  14. 前記液晶配向型フィルムは、液晶性モノマーを配向させた後、重合させることにより配向を固定したものであることを特徴とする請求項11記載の液晶フィルムの製造方法。
  15. 前記位相差板に支持基材が設けられており、前記積層工程後に支持基材を剥離除去することを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の液晶フィルムの製造方法。
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