JP4591878B2 - 既設擁壁の補強構造および既設擁壁の補強工法 - Google Patents
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Description
また、アンカー工法により既製コンクリート擁壁を安定化することも知られていた(非特許文献1参照)。
更に、削孔後にセメントミルクなどを注入し、芯材を挿入することによって地山補強土を築造して斜面や切り土を安定させることも知られていた(非特許文献2参照)。
しかしこれらの工法は、いずれも掘削工程が終了した時点からセメントミルクやグラウト材を注入する工法であった。
一方、ソイルセメント柱体とその中心部に存在する大径の棒状補強体を用いて斜面や切り土を安定させることも知られていた(非特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6参照)。
それ故にスライムが単管ケーシングの外周壁面を伝わって地表部へ環流することから、土留壁の背面が緩みやすいので、口元パイプを設けることにより対処している(特許文献1の「0002」参照)。
また、この工法では、「ケーシングの引抜き時に、止水パッカーを膨張して組立体とケーシングとの間をシールしてケーシングを引き抜き、引き抜いたケーシングから順次接続を分離し、最後のケーシングが止水パッカーを越えた時点で止水パッカーを膨張して組立体とガイド管との間をシールし、水及び土砂の逆流を防止すると共に、注入した止水材により止水することにより、水及び土砂の逆流を確実に防止することができると記載されている(特許文献2の「0007」)。
このようにガイド管は止水パッカーを膨張させてガイド管壁に密接させて止水するためのものであり、特許文献1の口元パイプはスライムが単管ケーシングの外周壁面を伝わって地表部へ環流することによる土留壁の背面の緩みを防止するためのものである。
また、連壁に削孔した透孔にガイド管を打込むために、削孔機のドリルで連壁に孔を削孔することも公知(特許文献2の「0014」〜「0017」)であり、既設コンクリート擁壁を安定化させるためのアンカーを施工する際にコンクリート擁壁に開口を設けるためにダイヤモンドカッターを使用することも公知(非特許文献1のP78の4.1)である。
それと共に、いずれも掘削具が所定の深度に到達して掘削工程が終了した時点でセメントミルク等のグラウト材を注入充填するものであるので、施工されたアンカーの径は100mm(非特許文献1のP77の図−4)と細いものであった。また上記したような従来の地山補強材(補強材:グラウト材+補強芯)の径は60mmとやはり小径のもの(非特許文献2のP186)であった。
即ち、固化体は掘削土とは混合撹拌されていない固化体からなる従来の小径のアンカーなどの補強体を施工する際には、掘削時に水を使用するので、使用した水がスライム状態で掘削ケーシングの外周壁面を伝わって地表部へ環流するために、地表部分が緩みやすいので、口元パイプを設けることにより対処しているのである。
このような施工法であるために地表面には水の環流がなく、口元パイプを使用する必要がない工法であった。
即ち、本発明者は、穿孔された擁壁部及び栗石部を貫通しているケーシングが存在しない状態で、即ち擁壁部及び栗石部を貴通する孔を穿った後に、ケーシングを使用することなく、中空ロッドの周囲に掘削翼と撹拌翼を設けた掘削撹拌ロッドを用いて地中を掘進しながら掘削撹拌土と固化材液とを撹拝混合して、芯材入りのソイルセメント柱体を築造してみたが、どうしても粟石部付近で脆弱な部分が生じ満足な補強体が得られなかった。
本発明者は、擁壁部から栗石部を貫いて栗石部後方まで大径のケーシングを存在させると満足できる強度の補強体となることを見い出した。本発明はこの知見に基づくものである。
特に好ましいのは、補強体の径が特定できるという点から、ケーシング後方の地盤内に築造されている棒状補強体の径がケーシングの内径と等しいか、それよりも小さな掘削具(掘削撹拌ロッド)の掘削径と同径であるものである。
また、ケーシングの後方に形成された棒状補強体の直径が30cm〜60cmであると、特により少ない本数の棒状補強体の施工で補強された擁壁とすることができるという優れた効果(即ち、施工における工期の短縮と工費の低減が図れるという効果)が大きくなるので、特に好ましい。
なお、棒状補強体の径が15cm未満であると大径とした効果が発現できず、60cmを超過しすぎると施工時に上方からの地盤の圧力により未硬化の棒状補強体が非円柱状になる恐れがあるので、ケーシングの後方に形成された棒状補強体の直径が15cm〜60cmであることが好ましい範囲である。
このように中空ロッドの周囲に少なくとも掘削翼と撹拌翼が設けられた掘削撹拌ロッドを使用して掘進時に掘削土と固化材液とを撹拌混合して地盤内にソイルセメント柱体を形成し、このソイルセメント柱体に芯材を存在させた大径の棒状補強体とすることができる。
更に、地表側の擁壁部の内側に栗石部が存在する既設擁壁において、ケーシングを擁壁部から栗石部を貫いて栗石部後方まで存在させるようにしたので、掘進時に吐出する固化材液と掘削土とが撹拌混合されて生成されたソイルセメントや、掘削土と混合される前の固化材液が、栗石部に流出する恐れがなく、ケーシング内とそれに続く地盤内に棒状補強体を一体的に築造することができる。
また、中空ロッドの周囲に掘削翼と撹拌翼の他にこれらの翼の径よりも大きく掘削軸の回転によっては回転しない共回り防止翼を設けた掘削撹拌ロッドを使用する場合は、その共回り防止翼の径よりも大きな径、例えば2cm〜5cm大きい内径のケーシングを使用すればよい。
勿論、径の大きな共回り防止翼を使用しない場合は、ケーシングの内径は棒状補強体の直径と同一であるかそれよりも2cm〜10cm大きいこととが最も好ましい。
一つの方法は、細い径のドリルを使用して既製のコンクリート擁壁に孔を円環状に多数の孔を空けることによりコンクリート擁壁部分を円状に切り取り、ケーシングを差し込みながら、続く栗石を取り除くことによって、擁壁部及びそれに続く栗石部を貫通する所望径の孔にケーシングが存在する工程としてもよく、またコンクリート擁壁に所望の径の孔を空けることができる円環状のダイヤモンドカッターを用いてコンクリート擁壁部分を円状に切り取り、ケーシングを差し込みながら、続く栗石を取り除くことによって、擁壁部及びそれに続く粟石部を貫通する大径の孔にケーシングが存在する工程としてもよい。
更に、先端に硬質チップが付いたケーシングでコンクリート擁壁部分を円状に切り取りながら、更に栗石部まで掘進し、その内部の粟石を取り除くことによって、擁壁部及びそれに続く栗石部を貫通する大径の孔にケーシングが存在する工程としてもよい。但し、この方法によると、穿孔とケーシングの設置が一工程で実施できるという特徴があるが、一方、本発明ではケーシングは回収しないので、先端に硬質チップが付いたケーシングは埋め殺しになる。
また、前記のように予め孔を空けた後に金属製のケーシングを差し込むので栗石部まで孔を空けた後にプラスチック製のケーシングに差し替えることにより、埋め殺しとなるケーシングを安価なものとしてもよい。
また、後から金属製のケーシングから差し替えるのではなく、最初からプラスチック製のケーシングが使用できるのであれば、最初からプラスチック製のケーシングが使用できる。
中でも前記2つの工法に従うと大径棒状補強体が、ソイルセメント柱体と、その軸心部に存在する芯材と、芯材の周囲に存在する固化材層とからなるものを築造することができる。
これに対してこの発明のケーシングの後方に続く地盤内とに大径の棒状補強体が、中空ロッドの周囲に掘削翼と撹拌翼を設けた掘削撹拌ロッドを使用して掘進時に固化材液を吐出しながら撹拌翼等にて固化材液と掘削された土とを撹拌混合しながらソイルセメント柱体を形成する工法による場合は、掘削翼と撹拌翼の径に合わせた径のソイルセメント柱体とすることができる。
芯材を最初から中空ロッドの先端から挿入して使用する場合は、先端に定着部を有し、かつ所定の位置に芯材を残置した際に少なくともケーシング内の外部側までに達する長さの芯材を使用する。
また、未硬化のソイルセメント柱体に芯材を挿入する場合は、下端がソイルセメント柱体の下端部に達した際に少なくともケーシング内部の外部側まで到達可能な長さの芯材を使用する。
さらに、掘削撹拌ロッドを芯材として使用する場合は、所定の位置に掘削撹拌ロッドを残置した際にロッド上部が少なくともケーシング内部の外部側まで到達可能な長さの中空ロッドを使用する。この場合、掘削撹拌ロッドの上方に少なくとも1本の中空ロッドを継ぎ足すことによって、所定の位置に掘削撹拌ロッドを残置した際にロッド上部が少なくともケーシング内の外部側まで突出可能な長さの中空ロッドとすることもできる。
なお、芯材の上端がケーシングの地表側の面と同じ長さにしてもよく、また、ケーシングよりも地表側に突出できる長さにしてもよい。
さらに、ケーシング内に形成される固化体は、ケーシング内に溢れ出たソイルセメントであっても、ケーシング内のソイルセメントが溢れ出していない部分に固化材を充填することにより形成されていてもよい。
例えば、この発明の補強工法によると、ケーシング内には掘削土が存在しないが、少なくともケーシング内の地盤面側には固化材液中の固化材の注入量だけ溢れ出したソイルセメントが到達する可能性がある。しかし場合によっては、反対側にはソイルセメントが到達しない可能性がある場合がある。このときはこの発明で使用されている引き揚げ回収時の掘削撹拌ロッドから吐出される固化材液を使用することもできる。また他に用意した固化材や、地上に溢れ出したソイルセメントをケーシング内の未充填部に充填してもよい。
いずれにしてもケーシング内にも固化体を築造してケーシング内にもその軸心部に前記ソイルセメント柱体に配した前記芯材を連続して配置させることができると共に、ソイルセメント柱体とケーシング内の固化体が一体的になっている棒状補強体を築造することができる。
なお、この発明で対象とする既設擁壁は、コンクリート壁のものでも、ブロック積擁壁でも石積擁壁でもよく、背後に栗石が存在する擁壁であればよい。
(1)請求項1の発明では、ケーシングが栗石部も貫通しているので、ケーシング内の補強体とその後方に形成された補強体が欠陥部を生じることなく一体的に築造することができ、しかも築造された補強体は大径の棒状補強体であると共に中心に芯材を有するものであるから地盤上方から作用する曲げ剪断力に耐えることができると共に、補強体の径が大きいので擁壁を補強するための補強体の本数を少なくすることができる。
このように棒状補強体は擁壁と一体的に挙動することができる構造となっていると共に、請求項1の発明に従うと上記したように棒状補強体の本数が少なくなっても地盤の滑り崩壊現象を防ぐことができる。従って、築造後の経時変化で崩壊の恐れがある擁壁であっても充分に既設擁壁の補強構造になる。
更に請求項1の発明に従うと補強体が大径の棒状補強体であるので、小径の補強体の場合よりも棒状補強体の長さを短くしても補強効果を発揮できるので、施工に要する時間も短くすることができる。
請求項4の補強工法において請求項5、6、7、8の補強工法により芯材を挿入された補強工法とすることは更に有効な工法である。
更に請求項6と請求項7の補強工法は、請求項2の補強された擁壁構造とするために有効な工法である。
また、請求項8の補強工法のように、掘削撹拌ロッド自体を芯材とする工法は、掘削撹拌ロッドを回収する工程を省略することが出来るので、施工時間を短くすることが出来る。
即ち、いずれの工法に従っても、ケーシング内の補強体とその後方に形成された補強体が欠陥部を生じることなく一体的に築造することができ、しかも築造された補強体は大径の棒状補強体であると共に中心に芯材を有するものであるから地盤上方から作用する曲げ剪断力に耐えることができると共に、補強体の径が大きいので擁壁を補強するための補強体の本数を少なくすることができ、施工に要する時間をより少なくできる。
更に補強体が大径の棒状補強体であるので、小径の補強体の場合よりも棒状補強体の長さを短くしても補強効果を発揮できるので、施工に要する時間も短くすることができる。
この既設擁壁の補強構造においては、地表側の擁壁部の内側に栗石部が存在する既設擁壁において、ケーシング2が擁壁部8から栗石部9を貫いて栗石部9の後方まで存在している。固化体3が該ケーシング2内に形成されている。ケーシング2後方の地盤G内にソイルセメント固化体柱4が築造されている。それと共に大径のソイルセメント固化体柱4とケーシング2内に形成された固化体3は、一体的に築造された大径の棒状補強体1であり、この棒状補強体1の軸心部に芯材5を有している。
このように棒状補強体1が軸心部に芯材5を有することにより、地盤上から作用する曲げ剪断力に耐え、擁壁部8と一体的に挙動することができる。
本例の棒状補強体1は、特にソイルセメント固化体柱4において、ソイルセメント固化体柱4の軸心部に芯材5を有する構造であるが、この棒状補強体1は、図2にソイルセメント固化体柱4における要部の断面を拡大して示すように、ソイルセメント固化体柱4と、その軸心部に存在する芯材5と、その芯材5の周りに存在する固化材層6とからなる構造としてもよい。このような構造とすると、地盤上方から曲げ剪断力が作用する際に、芯材5と固化材層6、固化材層6とソイルセメント固化体柱4との剥離現象がより生じ難く、擁壁部8の補強効果が更に向上するので好ましい。
なお、図1において、既設擁壁はコンクリート壁であり、更に図1には、既設擁壁部8の上に新たに設けたコンクリート壁19も示している。このように新たにコンクリート壁19を設けることにより、棒状補強体1により補強されていない部分の既設擁壁部を更に補強してもよい。
図3に使用するケーシング2を示す。以下の工程で使用するケーシング2は図3(a)に示した先端に硬質チップ2aがついているものである。
図4は、既設擁壁にケーシングを設置する工法を工程順(a)(b)(c)(d)(e)(f)に示す断面説明図である。まず、図4(a)に示すように棒状補強体1を設置すべき中心位置にケーシング2の先端を位置合せする。次に、そのまま水を使用することなく、図4(b)に示すように、ケーシング2を押圧しながら回転させて、既設擁壁部8を貫通させる。ケーシング2が擁壁部8を貫通したら、図4(c)に示すように一度擁壁部8からケーシング2を引き戻し、くり抜かれた擁壁部材片を取り除く。その後に図4(d)に示すように、ケーシング2をくり抜かれた擁壁部8の孔7に戻す。更に図4(e)に示すように、ケーシング2を押圧しながら回転させて栗石部9に貫入させ、栗石部9を貫通させる。即ち、ケーシング2の端部が既設擁壁8の外表面側端面に位置するようになるまで、ケーシング2の貫入を続ける。その後、図4(e)に示すように、ケーシング2内部に貯まった栗石9aを手もしくは熊手状の治具を用いて取り除き、図4(f)に示すようにケーシング2の設置が完了する。
なお、ケーシング2内部に貯まった栗石の除去は、栗石部9の貫入途中に行ってもよく、更に貫入が進んだ段階で再度栗石の除去を行ってもよい。
掘削撹拌ロッド11は、図6に示すように中空ロッド12に、先端側から順に掘削翼13、共回り防止翼14、撹拌翼15が設けられたものであり、掘削翼13および撹拌翼15は中空ロッド12に固設されているが、共回り防止翼14は中空ロッド12に回動自在となっている。また、中空ロッド12先端の掘削翼13近辺のロッド12側面には固化材液の吐出口16が設けられている。
図6においては中空ロッド12の先端側から先端にコーン状の定着部17を有する芯材5が差し込まれた状態を示しており、この状態では中空ロッド12の先端開口はコーン状の定着部17で閉塞されている。
中空ロッド12の管内はセメントミルクなどの固化材液の通路となっており、中空ロッド12内の通路より供給された固化材液は吐出口16より吐出され、中空ロッド12先端の開口がコーン状の定着部17での閉塞から開放されると中空ロッド12先端の開口より固化材液は吐出する。
なお、本例では掘削翼13と撹拌翼15の径は400mmであり、共回り防止翼14の外径は500mmであり、外径400mmの棒状補強体1を築造できるものとなっている。
続いて掘削撹拌ロッド11をケーシング2内に進入し、先端の掘削翼13がケーシング2を超えたならば、中空ロッド12内にセメントミルクなどの固化材液を供給し、ロッド12先端の掘削翼近辺の側面に設けた吐出口16から固化材液を吐出しながら地盤中を回転、掘進する(図5(b))。この掘進により掘削土と固化材液は撹拌翼15などで撹拌混合されてソイルセメント4a(これがソイルセメント柱体4’となる)とされる。このようにして所定の深度まで掘進すると、所定の深さまでソイルセメント4aとなり、ソイルセメント柱体4’が築造される。図5(c)は所定の深度まで掘進された状態を示す。
この例ではロッド12先端から吐出する固化材液でケーシング2内を充填したが、ケーシング2内のソイルセメントが溢れ出していない部分に固化材が充填できれば他の方法であってもよい。
なお、栗石部9においてはケーシング2が存在するので、このようなソイルセメント柱体4’の形成時おいて、固化材液や形成されたばかりのソイルセメントが栗石内に流れ落ちることが防止でき、固化材液を余分に吐出する必要はない。
また、大径の棒状補強体1とするために孔の径は大きくなるが、ケーシング2の存在によって栗石部9の崩落を防止することができる。
このようにして棒状補強体1の施工が完了した後、ケーシング2内にできる末充填部にモルタルもしくは固化材液を充填し、図1に示す固化体3を形成し既設擁壁部8の前面と同じ面に成るように築造する。このようにして形成されたソイルセメント柱体4’が固化することにより、図1に示したソイルセメント固化体柱4となるのである。
その後、コンクリートを打設して既設の擁壁部8の表側に新規のコンクリート壁19を築造する。このようにして新規なコンクリート壁19の築造後の状態が図1に示されている。
このケーシング2の構造は、鋼製のケーシングであり先端にピット2aが設けられている。このピット2aは超硬合金などの超硬チップが最も好ましい。
このように、前述の例では、図3(a)に示した先端ピット2a付きのケーシング2をそのまま残置させる例で説明したが、このケーシング2は高価となるため、次のように貫通用のケーシングと残置させるケーシングを使い分けする方が好ましい。
この場合、残置させるケーシングは、図3(b)に示すようにチップのないものである。図3(b)に示したケーシング23は、先端にピットがないケーシングで、鋼製であってもよいが、例えばプラスチック製であってもよい。このケーシング23は後述するように、貫通用のケーシング22内に差し込んで使用されるものであり、貫通用のケーシング22を回収した状態で棒状補強体の築造時のケーシングとして使用され、そのまま残置させるものである。
貫入用のケーシング22は、図3(a)に示したように、前の例で使用した先端にチップ2aが設けられたケーシング2と同じ構造のものである。
但し、残置させるケーシング23よりも径の大きな貫入用ケーシング22を使用する。
以下の例に示した実施の形態で対象とした既設擁壁も、コンクリート壁を擁壁部8とする擁壁であり、その擁壁部8の厚さが40cmであり、その擁壁部8の後方に栗石部9が約30cm幅で設けられているものである。
この例で使用する貫入用ケーシング23は、例えば外径560mm、内径540mm、長さ700mmのプラスチック製ケーシングであり、貫入用に使用するケーシング22
は先端に硬質チップが付いている鋼製ものであり、例えば外径610mm、内径590mmで長さ700mmである。この長さ700mmは、既設擁壁の擁壁部8の厚さと擁壁後部の栗石部9の厚さを足した長さよりも大きいものである。
上記に示した大きさの貫入用ケーシング22を使用して、図7(a)(b)(c)(d)(e)に示すように擁壁部8の棒状補強体を築造する位置に貫入用ケーシング22を貫入する。この貫入用ケーシング22の設置は、図4に示す工程と同じでよい。図7(c)に示すように、この設置したケーシング22内には擁壁部材片や栗石を取り出し擁壁部材片や栗石が存在しない状態にする。
このように、内部に擁壁部材片や栗石が存在しない状態にされた貫入用ケーシング22の中に、例えば前述した大きさでのプラスチック製の残置用のケーシング23を差し込み(図7(d)参照)、貫入用ケーシングを引き抜く(図7(e)参照)。
このように置き換えたケーシング23を使用して、先に図4や図5を用いて説明した手順にしたがって棒状補強体1を築造する。
このようにして所定長さのソイルセメント柱体4’を築造されたら、末硬化のソイルセメント柱体4’中に芯材を挿入して芯材が挿入された棒状補強体1としてもよい。
更に、この場合、芯材をソイルセメント柱体中に残した状態で、掘削撹拌ロッドの先端部から固化材液を吐出しながら掘削撹拌ロッドを回収すると共に、ケーシング内にも固化体を築造してケーシング内にもその軸心部に前記ソイルセメント柱体に配した前記芯材を連続して配置させ、前記ソイルセメント柱体とケーシング内の固化体が一体的になっている棒状補強体を築造すると、ケーシング後方の地盤内に形成されて軸心部に芯材を有するソイルセメント固化体柱の部分は、その軸心部の芯材の周囲に固化材層を有するものとすることができる。
この場合でもケーシング2内の一部にもソイルセメントが盛り上がる。この盛り上がりは、掘削された体積に固化材液が加えられたことによる体積増加のためである。
なお、ケーシング2中のソイルセメントが満たされていない部分には、後からケーシング2内にソイルセメントやセメントミルクなどの固化材液を注入してケーシング2内に棒状補強体1を形成すればよい。
図10は、図1に対応する図であり、既設擁壁を更に補強するために、既設擁壁部8よりも少し長く突出可能な芯材5を使用し、少し長く突出可能な芯材5にプレート18を設置し、例えば、鉄筋を配筋した後にコンクリートを打設して補強された新規なコンクリート壁19を既設の擁壁部8の表側に築造し、プレート18の存在により新規なコンクリート擁壁19と芯材5との一体化をより確実にさせて、芯材5に作用する引っ張り力を新規なコンクリート擁壁19に伝達させている状態を示す図である。
なおケーシングが短く、例えば栗石部9の途中までしか届かない場合は、ソイルセメント柱体4’の築造時において、固化材液や形成されたばかりのソイルセメントが下方の栗石の間に流れ落ちる恐れがあり、更にブロック積擁壁や石積擁壁などの擁壁の場合は、その隙間より栗石間に流れ出した固化材液や形成されたばかりのソイルセメントが更に下方の擁壁表面に流れ出す恐れがある。しかしながら、ケーシングの長さを本発明の栗石部9の後方にまで達する長さとすると、栗石部間への流出が防止できるためか、本発明のように大径の棒状補強体1として孔の径を大きくしても、また、ケーシングの内径をケーシング後方に形成されるソイルセメント柱体の径よりも大きくした場合でも、ケーシング内の固化体とその後方に形成された補強体が欠陥部がなく一体的に築造でき、充分に補強された既設擁壁構造することができる。
2、22、23 ケーシング
3 固化体
4 ソイルセメント固化体柱
4’ ソイルセメント柱体
4a ソイルセメント
5 芯材
6 固化材層
7 孔
8 擁壁部
9 栗石部
11、111 掘削撹拌ロッド
12、112 中空ロッド
13、113 掘削翼
14、114 共回り防止翼
15、115 撹拌翼
16、116 吐出口
17 定着部
Claims (11)
- 地表側の擁壁部の内側に栗石部が存在する既設擁壁において、擁壁部から栗石部を貫いて栗石部後方まで存在するケーシングと、該ケーシング内に形成された固化体と、ケーシング後方の地盤内に形成されたソイルセメント固化体柱とからなり、該ケーシング内に形成された固化体とソイルセメント固化体柱が一体的に築造された大径の棒状補強体であると共に、該棒状補強体の軸心部に芯材を有していることを特徴とする既設擁壁の補強構造。
- 前記の棒状補強体において、ケーシング後方の地盤内に形成されて軸心部に芯材を有するソイルセメント固化体柱の部分は、その軸心部の芯材の周囲に固化材層を有するものであることを特徴とする請求項1記載の既設擁壁の補強構造。
- ケーシングの後方の地盤内に形成されたソイルセメント固化体柱の直径が15cm〜60cmであり、ケーシングの内径が該ソイルセメント固化体柱の直径と同一であるかそれよりも2cm〜20cm大きいことを特徴とする請求項1または2に記載の既設擁壁の補強構造。
- 地表側の擁壁部の内側に栗石部が存在する既設擁壁において、擁壁部から栗石部を貫いて栗石部後方まで穿孔すると共に、その孔にケーシングを貫入する工程を有すると共に、中空ロッドの周囲に少なくとも掘削翼と撹拌翼が設けられ、中空ロッド先端の掘削翼近辺のロッド側面に固化材液の吐出口が設けられた掘削撹拌ロッドをケーシング内に貫通させて地中を回転して前進させ、同時に吐出口より固化材液を吐出させ、掘削土と固化材液とを撹拌混合し、ケーシング後方の地盤内にソイルセメント柱体を形成する工程と、ケーシング内にソイルセメント柱体と一体となる固化体を形成する工程とからなり、芯材はソイルセメント柱体内に存在させるとともに少なくともケーシング内の外部側にまで至っているようにすることを特徴とする既設擁壁の補強工法。
- 掘削土と固化材液とを撹拌混合して地盤内にソイルセメント柱体を築造後、該ソイルセメント柱体が未硬化のうちに芯材をソイルセメント柱体の中心部に貫入することを特徴とする請求項4記載の既設擁壁の補強工法。
- 先端に定着部を有し、かつ所定の位置に芯材を残置した際に少なくともケーシング内の外部側にまでに達する長さの芯材を使用すると共に、中空ロッドの周囲に少なくとも掘削翼と撹拌翼が設けられていると共に中空ロッドの掘削翼近辺のロッド部分に固化材液の吐出口が設けられている掘削撹拌ロッドを使用し、そのロッドの先端側から、前記の先端に定着部を有する芯材を中空ロッド内に挿入し、この状態でケーシングを貫通しケーシングより後方の地中に掘削撹拌ロッドを回転させ吐出口より固化材液を吐出させつつ前進させると共に、掘削土と固化材液とを撹拌混合することにより地盤内にソイルセメント柱体を形成し、その後にソイルセメント柱体の先端部に芯材の定着部を位置させた状態で芯材を残置すると共に、芯材の定着部が離脱してロッドの先端が開放された状態になった掘削撹拌ロッドの先端部から固化材液を吐出しながら掘削撹拌ロッドを回収することによって、ソイルセメント柱体とその軸心部に残置させた芯材と芯材の周りに存在することになった固化材層とからなる棒状補強体を一体的に築造すると共に、ケーシング内にも固化体を築造してケーシング内にもその軸心部に前記ソイルセメント柱体に配した前記芯材を連続して配置させ、前記ソイルセメント柱体とケーシング内の固化体が一体的になっている棒状補強体を築造することを特徴とする請求項4記載の既設擁壁の補強工法。
- 中空ロッドの周囲に少なくとも掘削翼と撹拌翼が設けられていると共に中空ロッドの掘削翼近辺のロッド部分に固化材液の吐出口が設けられ、かつロッド先端部が開放されているか開放可能になっている掘削撹拌ロッドを使用し、ケーシングを貫通しケーシングより後方の地中に掘削撹拌ロッドを撹拌回転させ吐出口より固化材液を吐出させつつ前進させると共に、掘削土と固化材液とを撹拌混合することにより地盤内にソイルセメント柱体を形成し、下端がソイルセメント柱体の下端部に達した際に少なくともケーシング内部の外部側まで到達可能な長さの芯材を使用し、所定の長さのソイルセメント柱体を形成した状態における掘削撹拌ロッドの中に該芯材を挿入し、ロッド先端部が開放可能になっている場合は芯材挿入により先端を開放し、芯材をソイルセメント柱体の軸心部に配置可能な状態にした後に、掘削撹拌ロッドの先端部から固化材液を吐出しながら掘削撹拌ロッドを回収すると共に、ケーシング内にも固化体を築造してケーシング内にもその軸心部に前記ソイルセメント柱体に配した前記芯材を連続して配置させ、前記ソイルセメント柱体とケーシング内の固化体が一体的になっている棒状補強体を築造することを特徴とする請求項4記載の既設擁壁の補強工法。
- 所定の位置に掘削撹拌ロッドを残置した際にロッド上部が少なくともケーシング内部の外部側まで到達可能な長さの中空ロッドの周囲に少なくとも掘削翼と撹拌翼が設けられていると共に中空ロッドの掘削翼近辺のロッド部分に固化材液の吐出口が設けられている掘削撹拌ロッドを使用しケーシングを貫通しケーシングより後方の地中に掘削撹拌ロッドを撹拌回転させ吐出口より固化材液を吐出させつつ前進させると共に、掘削土と固化材液とを撹拌混合することにより地盤内にソイルセメント柱体を形成し、そのまま掘削撹拌ロッドを芯材として残置することによってソイルセメント柱体とその軸心部に存在する芯材からなる棒状補強体を築造すると共に、ケーシング内にも固化体を築造してソイルセメント柱体とケーシング内の固化体が一体的になっている棒状補強体を築造することを特徴とする請求項4記載の既設擁壁の補強工法。
- 掘削翼と撹拌翼が設けられていると共に中空ロッドの掘削翼近辺のロッド部分に固化材液の吐出口が設けられている掘削撹拌ロッドの上方に少なくとも1本の中空ロッドを継ぎ足すことによって、所定の位置に掘削撹拌ロッドを残置した際にロッド上部が少なくともケーシング内の外部側まで突出可能な長さの中空ロッドとすることを特徴とする請求項8記載の既設擁壁の補強工法。
- ケーシング内の固化体の築造が、ケーシング内に溢れ出たソイルセメントによってなされていることを特徴とする請求項4乃至8のいずれかに記載の既設擁壁の補強工法。
- ケーシング内の固化体の築造が、ケーシング内のソイルセメントが溢れ出していない部分に固化材を充填することによってなされていることを特徴とする請求項4乃至8のいずれかに記載の既設擁壁の補強工法。
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