JP4590647B2 - 光源装置およびプロジェクタ装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、LEDなどの半導体光源を用いた、プロジェクタなどに利用される光源装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
LED素子(発光ダイオード)は、バブルランプと比較して一般的に長寿命であり、さらに、光への変換効率が高いなどの利点がある。このため、近年、多くの照明応用分野において光源をブルランプからLED素子を利用したものに取り替えることが検討されている。
【0003】
LED素子は単体では発光量が小さい。このため、プロジェクタ装置の光源など比較的大きな光量が要求される応用分野では、図12に示す光源装置90のように、多数のLED素子91を面状に分布して配置することにより必要とされる光量を確保している。さらに、特にプロジェクタ装置においては、光源の絶対発光量(光束量(luminous flux: Q)が大きな光源装置であって、それと共に単位立体角あたりの光束量、すなわち光度(luminous intensity: I)、さらには、特定方向の単位面積あたりの光度である輝度(luminance)の高い光源装置が要求される。したがって、このような応用分野においては、発光源である多数のLED素子91から出射された光束をレンズを用いた集光光学系95によって集光して断面積の細い光束とすることにより輝度を高くする必要がある。たとえば、図12に示した光源装置90では、LED素子91の各々の直前にマイクロレンズ92を配置して発散するのを防止し、さらに、こうして得られた各光束を集光用の正レンズ93で集光し、負レンズ94により平行光束化する集光光学系95を設けている。そして、このような多数枚のレンズを用いて高輝度の集光光束にした後に、その光束97をLCD(液晶パネル)96あるいはDMD(デジタルマイクロミラーデバイス)などのライトバルブに照射して変調し、投影用の画像を形成するようにしている。
【0004】
LEDは、その特性上、ピーク波長を中心とした比較的バンド幅の狭い単色の光束を出射する発光素子であり、オンオフの応答性も高く、オンオフを繰り返すことによっても寿命には影響がほとんどない。したがって、赤色(R)、緑色(G)および青色(B)の光束をそれぞれ出射するLEDを配置して3原色の光源を設け、各々の色の画像を生成するLCDを介して投写することによりカラー画像をスクリーンに投影するプロジェクタを構成することができる。あるいは、3原色の光源により時分割で1つのLCDを照射することによってもカラー画像を生成することができる。
【0005】
そして、LED光源を採用することにより、電球切れ等というトラブルは解消するので、メンテナンスフリーのプロジェクタ装置を実現することができる。また、LED光源であれば、輝度調整も簡単に行えるので、性能の安定したプロジェクタ装置を提供することができる。
【0006】
さらに、ハロゲンランプに比べ熱の発生量は多くないので、光源の冷却構造は非常に簡素化される。このように、プロジェクタ装置において光源をハロゲンランプなどからLED光源に変えることによって得られるメリットは非常に大きい。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、多数のLED素子を照明光(集光光束)の光軸に垂直な面に沿って分布あるいは分散配置することにより必要とされる大きな光量(光束量)は確保でき、また、集光光学系を採用することにより輝度を上げることができる。しかしながら、光量および輝度に応じて多数のLED素子を平面的に配置するために光源装置は大きなものになってしまう。LED素子の改良により発光量が増加すればこの傾向は改善されるが、現状のハロゲンランプなどと等価な光量を得ようとすると多数のLED素子が必要であり、これらを基板などに配置することを考えるとハロゲンランプなどより大きな面積が必要となってしまう。
【0008】
そして、上述したように、個々のLED素子の発光量は小さいので、LED素子を平面的に並べても発光部分の輝度は低いので複数のレンズあるいはマイクロレンズなどを用いた集光光学系を使って輝度を上げる必要がある。このため、光学系を含めた光源装置のサイズは大きくなる。また、マイクロレンズあるいはその他のレンズを付加することによりコストも高くなり、ハロゲンランプなどの光源装置に対するコスト競争力を得ることができない。
【0009】
さらに、LED素子から出射された光束を光学系などで集光していく段階で様々なロスが発生するので、光の利用効率も下がってしまう。
【0010】
したがって、LED素子自体は、小型で低コストでありながら、長寿命で発光効率も高い単色の発光源であり、上述したように、プロジェクタなどには優れた特性を備えているにも関わらず、それを実際にプロジェクタあるいはその他の照明系の光源として一般的に利用する段階には至っていない。
【0011】
そこで、本発明においては、このような利点の多いLED素子などの半導体発光素子を用いて、実用に足る充分な光量と輝度の単一原色の光を出射できるコンパクトな光源装置を提供することを目的としている。そして、本発明の光源装置を用いて、低コストでコンパクトでありながら、高輝度の白色の光源装置を実現することを目的としている。また、本発明の光源装置を用いてコンパクトでメンテナンスもいらないプロジェクタ装置を提供することも本発明の目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
このため、本発明においては、人の肉眼が単一の光の原色と感じる程度の光スペクトル領域内で発光する、発光スペクトル域の僅かに異なる複数種のLED素子などの半導体発光源を用意する。そして、それらの半導体発光源から出射された光束を、それらの隣接する発光スペクトル域を分離可能なダイクロイックミラーなどの波長選択性のある光学素子により合成することにより、光源装置から出射される投射照明光束の断面積の増加を防ぐようにしている。
【0013】
本発明の装置は、可視光の特定の波長領域の光を反射し、他の波長領域の光を透過する光学素子と、この光学素子の反射率特性が急変する境界波長の近傍で該境界波長を挟む第1および第2の波長をピーク波長とする第1および第2の光束をそれぞれ出射する第1および第2の半導体発光源とをそれぞれ有し、これら第1および第2の光束を光学素子により合成して出射する第1、第2および第3の光源装置を含む
【0014】
LEDなどの半導体光源においては、その成分などを変えることによりピーク波長および半値幅の異なる光源を製造することができる。したがって、人間がほぼ単一の色として捉える、たとえば赤色では約100nm程度の波長範囲(光スペクトル領域)内で、複数のピーク波長を持った光源を用意することが可能である。本発明においては、このような半導体光源の特性に着目し、中心波長(ピーク波長)の微妙な差を利用して複数の光源から出射された光束を合成するようにしている。したがって、波長選択性のある光学素子で複数の光束を一つに合成することが可能となる。このため、本発明の光源装置においては、半導体光源の配置は、複数のグループに分割して立体的に配置することが可能となり、光源配置の自由度が増し集積度を大幅に向上できる。
【0015】
さらに、例えば、ダイクロイックミラーなどの波長選択性のある光学素子により光束の輝度を上げられるので、光束の断面積を小さくするために従来用いられている複数のレンズを組み合わせた複雑で設置スペースの必要な集光光学系を用いなくても良い。もちろん、ダイクロイックミラーなどの光学素子に対して入出力する光束を集光するためにレンズシステムを用いることはあり、そのような光源装置も本発明に含まれるが、本発明においては、レンズシステムだけで光束の輝度を上げるのではなく、波長選択性のある光学素子によって光束を合成して輝度を上げている。このため、本発明の光源装置においては、半導体光源の配置は、レンズの焦点距離などの集光光学系(屈折光学系あるいは幾何光学系)のシステムに合うように制限されることはなく、光源の配置の自由度が増し集積度を大幅に向上できる。したがって、コンパクトで発光量が大きく、高輝度の光束を出射できる光源装置を提供できる。また、複数のレンズを組み合わせた集光光学系を省く、あるいは簡略化できるので、コストも低くできる。そして、多数枚のレンズを組み合わせた集光光学系を省いたりあるいは簡略化できるのでそれに伴うロスも削減することができ、光の利用効率の高い光源装置を提供できる。
【0016】
したがって、コンパクトで発光量が大きく、高輝度の光束を出射できる第1、第2および第3の光源装置を提供できる。そして、これらの光源装置の発光源の物理的な広がりが小さくてすむので、これらの光源装置から出射された光束を集光照明光学系などにより利用する際の光の利用効率は高くできる。
【0017】
このように、これらの光源装置においては、光学素子の境界波長を挟むピーク波長の異なる狭い発光スペクトル領域の光束を合成して出射することができるので、その境界波長前後のスペクトル域を合成したほぼ単色、特に、単一原色で輝度の高い光束を出射する光源装置を提供できる。そして、境界波長を、赤色、緑色または青色のスペクトル領域に相当する波長に設定することにより、3原色の高輝度の光束を出射する光源装置をそれぞれ提供することができる。
【0018】
これらの光源装置では輝度を高くすることができるので、半導体光源は、低コストなLED(発光ダイオード)を用いた光源装置に適している。さらには、SLD(スーパールミネッセントダイオード、超放射発光ダイオード)を採用すると、この発光素子は出射光の指向性が強いので、出射光束の輝度をいっそう向上できる。また、ピーク波長の近い光源を選択しても発光スペクトル幅が狭いので、ダイクロイックミラーなどの波長選択性の光学素子によってロスとなる成分を少なくすることができる。さらに、第1および第2の半導体光源は、単一の半導体発光素子で構成しても良いが、多くの場合は、十分な光量を得るために複数の同一のピーク波長をもった半導体発光素子を並べて各々の半導体光源を構成することが望ましい。このような同一の波長特性を備えた光源を簡単に得ることができるのも半導体光源を採用している本発明の光源装置のメリットの1つである。
【0019】
また、波長選択性があり、光束を合成できる光学素子としては、ダイクロイックミラーまたはダイクロイックプリズムが適している。これらの光学素子により、一方の波長の光束を透過し、他方の波長の光束を反射することにより、出射光束(合成光束)の断面積を増やさずに複数の光束を合成することができる。さらに、この種の光学素子は1つに限らず、複数の光学素子を用いてスペクトル領域の狭い範囲で3つ以上の波長の異なる光束を合成することも可能である。
【0020】
このように、これらの光源装置においては、LEDなどの半導体発光素子を用いて光学素子の境界波長に相当する、あるいは近傍の単色、特に単一原色で高輝度の光束を出射することができる。したがって、境界波長が赤色、緑色および青色に各々が相当する第1、第2および第3の光源装置を設け、これらから出射された光束を合成して出射することにより白色光を出射する光源装置を提供できる。第1、第2および第3の光源装置はコンパクトでありながら高光量で高輝度の光束が出射されるので、これらを合成して白色光とすることにより、コンパクトでありながら、高光量で高輝度の光線を出射する光源装置を提供できる。この光源装置は、さらに、ハロゲンランプに近い強力な光を発することができると共に、LEDが発光源であるので、発熱量が小さく、低消費電力であり、さらに、寿命が長いといった特性を持つ光源であるので、自動車のヘッドライトなど、様々な用途に用いることができる。
【0021】
さらに、プロジェクタにおいては、これら第1、第2および第3の光源装置をライトバルブを介して投写する投写光の光源として採用することが可能である。
そして、本発明の半導体光源を用いた光源装置は、コンパクトで高輝度の光を出射できるので、半導体光源を用いたコンパクトで明るく、さらに、玉切れがなくメンテナンスの不用なプロジェクタを提供することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1に、本発明に係る光源装置を示してある。図1に示した光源装置10Rは、赤色Rの光束20Rを出射する光源装置である。そのため、眼に赤色光Rとして見える可視光スペクトル領域内(一般的には約600〜700nm程度の範囲)の僅かに異なるピーク波長λ1とλ2の光を出射する2種類のLED素子(以降においてはLED)11および12と、これらのLED11および12から出射された光束21および22を合成して出射光束20Rを得るダイクロイックミラー19とを備えている。
【0023】
本例の光源装置20Rにおいては、ダイクロイックミラー19が波長λ1とλ2のほぼ中間の波長λ0で透過率が急激に変動する特性を備えており、波長λ1の光を反射し、波長λ2の光を透過する。したがって、LED11からの光束21はダイクロイックミラー19で反射され、LED12からの光束22はダイクロイックミラー19を透過する。このため、LED11とLED12とをたとえば相対的に90度回転した位置に配置し、ダイクロイックミラー19を図1に示すように45度傾けた状態で配置することにより、LED11からの光束21とLED12からの光束22をダイクロイックミラー19で合成し出射光束20Rを得ることができる。本例の光源装置20Rは、さらに、各LED11および12から出射される光束を平行光束にしてからダイクロイックミラー19に供給するためのコリメータレンズ15が各々のLED11および12の前方に配置されている。
【0024】
図2に、本例の光源装置10Rに用いた2種類のLED11および12の波長特性を示してある。まず、LED11から出射される光束21の波長特性(発光スペクトル曲線)は、実線21aで示すように、ピーク波長λ1が623nm、半値幅が15nmである。他方のLED12から出射される光束22の波長特性(発光スペクトル曲線)は、実線22aで示すように、ピーク波長λ2が660nm、半値幅が25nmである。このようなLED11および12としては、たとえば、(株)東芝製のTLSEシリーズLED(InGaAlP系)と、同社製のTLURシリーズLED(GaAlAs系)を用いることができる。したがって、これらのLED11および12を用いると、ほぼ単一の赤色として視覚されるスペクトル領域に入り、その光量はほぼ各LEDの発光量の和となる光源が得られる。
【0025】
ダイクロイックミラー19の透過特性は、図2に一点鎖線19aで示してある。このように、本例のダイクロイックミラー19は、その透過特性(或いは反射率特性)が急激に変わる境界波長(選択境界波長)λ0が、光束21および22の中心波長λ1およびλ2のほぼ中間であり、半値幅よりも外側となる640nmになるように設計されている。したがって、光束21は、そのほとんどがダイクロイックミラー19により反射され、光束22は、そのほとんどがダイクロイックミラー19を透過する。ただし、各々の光束21および22の裾の部分では、ダイクロイックミラー19の透過率曲線19aと交差するので、この部分よりピーク波長λ1およびλ2に対する反対側のスペクトル域部分は、ダイクロイックミラー19によりカットされる。しかしながら、ダイクロイックミラー19によりカットされる部分は非常に小さく、また、ダイクロイックミラー19の透過率(或いは反射率)は90数%程度と非常に高くできるので、ダイクロイックミラー19によるロスは非常に小さいと考えて良い。
【0026】
したがって、ダイクロイックミラー19により光束21および22は合成され、図3に曲線20aで示すようなツインピークの波長特性を備えた出射光束20Rを得ることができる。すなわち、ダイクロイックミラー19の選択境界波長λ0(640nm)の近傍を中心波長とし、両側にそれぞれ幅が20nm程度の発光スペクトルの山を2つ備えた光束20Rを得ることができる。そして、本例の光源装置10Rでは、LED12から出射される光束22を基準にすれば、投射照明光(出射光束)20Rの光軸方向から見たLED12からの放射の断面積を変えずにLED11の光束21を合成することができる。したがって、光束の断面積を変えずに光量を約2倍にできるので、出射される光束20Rの輝度は、LED12だけの場合に対し約2倍にすることができる。したがって、本例の光源装置10Rから出射される光束20Rを赤色の画像を生成するLCD8Rに供給することにより、高輝度の投写画像を形成することができる。
【0027】
さらに、本例の光源装置10Rにおいては、発光源であるLED11および12を平面ではなく90度旋回した位置に配置している。したがって、出射光束20Rの軸方向から見たときの発光源の設置面積(配置面積)は、LED11および12を同一平面上に配置したときの半分程度になる。
【0028】
また、本例の光源装置10Rでは、コリメータレンズ15を除くと、LED11および12からの光束21および22を合成するために、多数枚のレンズを組み合わせた集光光学系は用いられておらず、ダイクロイックミラー19だけで複数の光束21および22を合成している。このように、光束を合成するためには集光光学系を省くことができ、集光光学系は一般的に複雑で高価であり、さらにスペースを取りやすいので、本例の光源装置10Rは、コンパクトに纏めることが可能であり、さらに、低コストで提供することができる。
【0029】
また、光源装置10Rの内部では、これらのLED11および12から出射された光をレンズシステムによって集光および合成しなくて良いので、その過程におけるロスもなくなり、LED11および12から出射された光束の利用効率も高くできる。したがって、本例の光源装置10Rにより、コンパクトで低コストであり、さらに実用に足りる充分な光量と輝度の単色の光を出射できるLEDを用いた光源装置を提供することが可能となる。
【0030】
図1では、LED11およびLED12を各々1個づつ配置した例を参考に示してあるが、LED11およびLED12として同一の特性の複数のLEDを平面的に、あるいはコリメータレンズなどの特性に合わせて湾曲した状態で配置しても良いことはもちろんである。また、図1に示した例ではLED11およびLED12を90度旋回した位置に配置してあるが、各々のLED11およびLED12の成す角度、あるいはLED11およびLED12を代表として示した複数のLEDからなるグループのなす角度(相対的な角度)は90度に限らず、ダイクロイックミラー19により反射された光束が、ダイクロイックミラー19を透過した他の光束と重なる角度で配置されていれば良い。
【0031】
たとえば、図4に示すように、ダイクロイックミラー19の角度θがLED12の光束22の軸方向に対し45度より大きくした場合は、LED11とLED12の成す相対的な角度は90度より大きくなり、さらに、LED11の光束21がダイクロイックミラー19を透過した光束22の方向に投影される面積は小さくなる。このため、複数のLED11を配置する面積を大きくすることができ、光束21の出射時点での光量を高くできると共に、合成するポイントにおいて出射されたポイントよりも輝度を高くすることができる。したがって、ダイクロイックミラー19で合成される合成光束20Rにおける光束21の強度(輝度あるいは集光度)は光束22よりも大きくなる。一方、ダイクロイックミラー19の角度θが光束22の軸方向に対し45度より小さくすると、LED11とLED12の成す相対的な角度は90度より小さくなり、さらに、LED11の光束21が光束22の方向に投影される面積は大きくなる。したがって、光束21の輝度は光束22に対して低く合成される。このように、ダイクロイックミラー19の角度を変えることにより、LED11および12あるいはこれらが代表する複数のLEDの配置は自由にデザインすることができ、また、ダイクロイックミラー19の角度によって合成する際にLED11および12からの光束21および22の輝度調整も可能となる。
【0032】
また、ダイクロイックミラー19に対するLED11および12の位置関係が変わるので、光源装置10Rのサイズにも影響する。たとえば、ダイクロイックミラー19の角度θを45度より大きくするとLED11および12を光束20Rの出射方向に対し後方に配置できるので、光源装置10Rを出射方向に対し短くすることができるであろう。
【0033】
さらに、図5に示すように、LED11を上下2つ、すなわち、LED12に対しプラス90度およびマイナス90度の方向に配置された2つのグループに分けて配置し、これらから出射された光束をそれぞれの方向に45度に傾いたダイクロイックミラー19でLED12からの光束と合成することも可能である。このような配置を採用することにより、光源装置10Rを光束20Rの出射方向に対して短くできる。
【0034】
また、ダイクロイックミラー19と同様に境界波長λ0を備えた光学素子としてダイクロイックプリズムが知られており、ダイクロイックミラー19の代わりにダイクロイックプリズムを採用しても本発明の光源装置を実現できる。多層干渉膜(ダイクロイック膜)などによって波長選択性が与えられたこれらの光学素子を利用することによりLEDをフレキシブルに配置することができる。
【0035】
本発明における光源装置においては、LED11および12、さらには、これらに代表されるLEDグループの配置は上記の例に限定されることはない。しかしながら、上述した例からもわかるようにLEDの配置は非常にフレキシブルになり、従来の照明装置のように平面に限定されることはなくなる。したがって、所望の光量および輝度の光束を得るために要求される数のLEDを高い集積度でアレンジすることが可能であり、コンパクトで高光量および高輝度の出射光の得られる半導体光源を提供することができる。
【0036】
また、上記の例は、赤色Rの光束を出射する照明装置であるが、同様に他の原色、すなわち、緑色Gの光束あるいは青色Bの光束を出射する照明装置も構成できる。たとえば、緑色Gを放射する光源装置では、半導体発光源として、約490〜550nmの領域で僅かに異なるピーク波長を備えた複数のタイプのLED素子を選択し、それらのピーク波長の間に境界波長λ0を持つダイクロイックミラーを用いることにより、同様に、放射輝度の高い緑色の合成光束光を得ることができる。また、青色光Bを放射する光源装置では、発光源として、約430〜460nmの領域で僅かに異なる波長ピークを備えた複数のタイプのLED素子を選択することで、同様に放射輝度の高い青色の合成光束を得ることができる。
【0037】
さらに、上記では、2種類のLEDから出射される光束を合成しているが、適当な放射スペクトルのLEDがあれば、3種類以上のLEDから出射される光束を同様に合成することが可能である。図6ないし図8に3種類のLEDから出射された光束を合成する光源装置を示してある。本例の光源装置10Rも赤色Rの光束を出射する光源装置である。この光源装置10Rでは、半導体光源としてピーク波長λ11が636nmで半値幅17nmのLED111と、ピーク波長λ12が612nmで半値幅15nmのLED112と、先の光源装置にも用いたピーク波長λ2が660nmで半値幅25nmのLED12が用いられている。そして、境界波長λ01が約645nmのダイクロイックミラー191と、境界波長λ02が約620nmのダイクロイックミラー192とを用いてこれらのLED12、111および112から出射される光束22、211および212を合成するようにしている。このような放射スペクトルを備えたLEDとして、LED111には(株)東芝製のTLSUシリーズLEDを、LED素112には、同社製TLOUシリーズLEDを、さらに、LED12には同社製TLURシリーズLEDを用いることができる。
【0038】
図7に示すように、この光源装置10Rでは、ピーク波長の差Δλが48nmに収まる3種類の光束22(スペクトル22a)、211(スペクトル211a)および212(スペクトル212a)を合成し、図8に示すようなスペクトルの出射光束20R(スペクトル20a)を、その断面積を増加させずに得ることができる。したがって、それぞれのLED12、111および112の出射光量にも依存するが、単一のLEDを平面的に並べた光源装置と比較し、3倍弱程度の輝度の光束を得ることができる。上記のような具体的なLEDを選択した光源装置においては、LED12を単体で用いた場合と比較し、出射される光束の断面(投射照明光束の光路に垂直な断面積)を変えずに、半導体光源からの放射光量を全体で約2.5倍にできるので、出射光束の放射輝度も約2.5倍となる。
【0039】
もちろん、同一原色と見なせる波長領域内で4つ以上の異なるピーク波長を備えた適当なLEDを選択できれば、上記と同様にそれらのLEDあるいはLEDグループから出射される光束を合成して高輝度でコンパクトな光源装置を実現することができる。また、これらの3つ以上のタイプのLEDから光束を合成する光源装置においても、それらのLEDを配置する自由度は大きく、上述したような配置のバリエーションはもちろん可能である。
【0040】
さらに、半導体光源はLEDに限らず、SLD素子(超放射発光ダイオード素子、以降においてはSLD)を採用することもできる。図9に示すようにSLDは、通常のLEDに比べ発光スペクトルの帯域幅が狭い。したがって、狭いスペクトル領域内でLEDよりも多くの異なるピーク波長を備えたタイプを選択できる可能性があり、単一原色を僅かに発光スペクトル域に差のある、より多数の半導体光源から出射された光束で合成することができる。このため、さらに高輝度の光束を出射できる光源装置を提供することができる。
【0041】
さらに、SLDは発光の発散角が狭いので、それから出射される光束自体の集光および伝送効率を高くしやすい。したがって、光源装置自体を更にコンパクトにできる。また、個々のSLDの発光スペクトル帯域幅が狭いので、ダイクロイックミラーあるいはダイクロイックプリズムの境界波長λ0を挟んで、これに隣接したピーク波長のSLDからの光束を合成したときにダイクロイックミラーなどによってカットされるスペクトル領域が非常に小さくなる。したがって、光の利用効率もさらに向上する。
【0042】
このように、本発明により、高輝度の単色光を出射することができる、コンパクトな半導体光源を用いた光源装置を実現できる。半導体光源は、光への変換効率が高く熱出力は小さい。さらに長寿命であり、また、制御応答性が良いなどの利点を多く備えている反面、高輝度を求めようとすると、エネルギー密度を上げにくいという欠点があったが、本発明により、このような問題も解決できた。したがって、ハロゲンランプなどを光源として採用している応用分野、特に、発熱が少なく、高輝度の光源を必要としている分野の全てに本発明に係る光源装置を適用することができる。
【0043】
図10には、本発明により赤色光R、緑色光Gおよび青色光Bの出射光20R、20Gおよび20Bを放射可能な3つの光源装置10R、10Gおよび10Bを用いた白色光源装置2を示してある。本発明における光源装置は、これらの3原色以外の色の光束であっても、高輝度の光を出射することが可能である。しかしながら、加法混色によって、白色あるいはその他の全ての色を表現できることを考えると、これら3原色の単色光を出射する光源装置が本発明を適用した光源装置として最も有用なものである。
【0044】
本例の白色光源装置2においては、これら3原色の光源装置10R、10Gおよび10Bからの光束を赤色R、緑色Gおよび青色Bの波長の間の適当な波長を境界波長としてもつダイクロイックプリズム7により合成し、出射レンズ5を介して外部に放射するようにしている。もちろん、その他の光学系によって光源装置10R、10Gおよび10Bからの光束を合成することも可能である。たとえば、2つのダイクロイックミラーあるいはプリズムを用いれば、シーケンシャルにこれらの光源装置からの光束を合成することができる。本発明に係る白色光源装置は、一般照明などにももちろん適用できるが、コンパクトで高輝度の白色光束を得ることができるので、スポットライト、車のヘッドランプ、さらには液晶ディスプレイのバックライトなどに適している。
【0045】
図11は、本発明により赤色光R、緑色光Gおよび青色光Bの出射光20R、20Gおよび20Bを放射可能な3つの光源装置10R、10Gおよび10Bを用いた液晶プロジェクタ1を示してある。図11に示したプロジェクタ1は、3板式のものであり、光源装置10R、10Gおよび10Bから出射された光束20R、20Gおよび20Bを、それぞれに対応したライトバルブ、本例ではLCD8R、8Gおよび8Bで変調し、ダイクロイックプリズム7で合成した後に投影レンズあるいはレンズシステム6により出射し、スクリーン9にカラー画像を投影する。
【0046】
近年、プレゼンテーション用の機器あるいは大画面のテレビ用の機器などとして、コンパクトで明るく、さらに静かなプロジェクタ装置が要望されている。本発明の光源装置はコンパクトで高輝度の単一原色の光束を出射することができるので、このような要望のプロジェクタ装置には好適である。さらに、半導体光源を採用しているので、光変換効率が高く、発熱量が小さいので、冷却ファンなどによる騒音も小さくすることができる。そして、長寿命であるので、ハロゲンランプのような玉切れの心配はなく、メンテナンスフリーのプロジェクタを提供できる。したがって、本発明の光源装置を採用することにより、家庭用あるいは携帯用に適したコンパクトで低コストのプロジェクタ装置を提供できる。
【0047】
本発明に係る光源装置を採用したプロジェクタは、図11に示したものに限らない。たとえば、図10に示した白色光源とほぼ同様に3原色の光源装置10R、10Gおよび10Bを並べて共通のLCDに出射光束を導き、これらの光源装置10R、10Gおよび10Bの点灯を時分割で制御すると共に、LCDではそれに同期して各色毎の画像を表示するようにすれば単板式のプロジェクタを構成することができる。また、LCD(液晶パネル)に代わり、マイクロマシン技術を用いて機械的に光の反射方向を変えて画像を形成するDMD(デジタルマイクロミラーデバイス)をライトバルブとして用いたプロジェクタに本発明の光源装置を提供することも可能である。DMDは、LCDよりも応答速度が速く、明るい画像が得られるので、さらに小型で高輝度、高画質のプロジェクタを実現するのに適している。
【0048】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明に係る光源装置は、LED素子などの半導体発光素子から得られるピーク波長が僅かに異なる複数の光束を、それらピーク波長の僅かな差を利用してダイクロイックミラーなどの波長選択性のある光学素子により合成している。このため、LED素子などの半導体光源を平面的な配置から集積度が高くなるように立体的に配置することが可能となり、高輝度、大出力のコンパクトな半導体光源装置を提供できる。さらに、LED素子の代わりにSLD素子を用いることにより、より高輝度の光源がコンパクトに構成できる。
【0049】
このように、本発明により、小型で低コストでありながら、長寿命で発光効率も高い単色の発光源である半導体発光素子を用いて、実用に足る充分な光量と輝度の単一原色の光を出射できるコンパクな光源装置を実現できるので、さらに、本発明により、高輝度の白色の光源装置、また、コンパクトでメンテナンスもいらないプロジェクタ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る光源装置の概略構成を示す図である。
【図2】図1に示した単色光源装置の波長特性を示す図である。
【図3】図2の2つの光源からの光をダイクロイックミラーで合成したスペクトルを示す図である。
【図4】光源装置の異なる例を示す図である。
【図5】光源装置のさらに異なる例を示す図である。
【図6】光源装置の更に異なる例を示す図である。
【図7】図6に示した光源装置の波長特性を示す図である。
【図8】図7の3つの光源からの光をダイクロイックミラーで合成したスペクトルを示す図である。
【図9】LEDとSLDの特性差を模式的に示す図である。
【図10】本発明の光源装置を用いた白色光源装置の一例を示す図である。
【図11】本発明の光源装置を用いたプロジェクタの一例を示す図である。
【図12】従来のLED素子を用いた光源装置の一例を示す図である。
【符号の説明】
1 プロジェクタ
2 白色光源装置
6 投影レンズ(投写レンズシステム)
7 ダイクロイックプリズム
8 液晶ライトバルブ(LCD)
9 スクリーン
10 光源装置
11、12 LED素子
19 ダイクロイックミラー
20 出射光束(合成光束)
21、22 LEDの光束

Claims (6)

  1. 可視光の特定の波長領域の光を反射し、他の波長領域の光を透過する光学素子であって、反射率特性が急変する境界波長を備えた光学素子と、前記境界波長を挟む第1および第2の波長をピーク波長とする第1および第2の光束をそれぞれ出射する第1および第2の半導体発光源とをそれぞれ含む、第1の光源装置と、第2の光源装置と、第3の光源装置とを有し、
    前記第1の光源装置の前記境界波長、および前記第1および第2の波長は赤色の領域に含まれ、前記第1の光源装置は、赤色の領域に含まれる前記第1および第2の光束を前記光学素子により合成して出射し、
    前記第2の光源装置の前記境界波長、および前記第1および第2の波長は緑色の領域に含まれ、前記第2の光源装置は、緑色の領域に含まれる前記第1および第2の光束を前記光学素子により合成して出射し、
    前記第3の光源装置の前記境界波長、および前記第1および第2の波長は青色の領域に含まれ、前記第3の光源装置は、青色の領域に含まれる前記第1および第2の光束を前記光学素子により合成して出射し、
    さらに、前記第1、第2および第3の光源装置から出射された光束を合成して白色光を出射する光学系を有する装置。
  2. 請求項1において、前記半導体発光源は、発光ダイオードまたは超放射発光ダイオードである装置
  3. 請求項1または2において、前記光学素子は、ダイクロイックミラーまたはダイクロイックプリズムである装置
  4. 可視光の特定の波長領域の光を反射し、他の波長領域の光を透過する光学素子であって、反射率特性が急変する境界波長を備えた光学素子と、前記境界波長を挟む第1および第2の波長をピーク波長とする第1および第2の光束をそれぞれ出射する第1および第2の半導体発光源とをそれぞれ含む、第1の光源装置と、第2の光源装置と、第3の光源装置とを有し、
    前記第1の光源装置の前記境界波長、および前記第1および第2の波長は赤色の領域に含まれ、前記第1の光源装置は、赤色の領域に含まれる前記第1および第2の光束を前記光学素子により合成して出射し、
    前記第2の光源装置の前記境界波長、および前記第1および第2の波長は緑色の領域に含まれ、前記第2の光源装置は、緑色の領域に含まれる前記第1および第2の光束を前記光学素子により合成して出射し、
    前記第3の光源装置の前記境界波長、および前記第1および第2の波長は青色の領域に含まれ、前記第3の光源装置は、青色の領域に含まれる前記第1および第2の光束を前記光学素子により合成して出射し、
    さらに、前記第1、第2および第3の光源装置から出射された光束をそれぞれ変調する少なくとも1つのライトバルブと、
    このライトバルブによって変調された光をスクリーンに投射する投射レンズとを有するプロジェクタ装置。
  5. 請求項4において、前記半導体発光源は、発光ダイオードまたは超放射発光ダイオードであるプロジェクタ装置。
  6. 請求項4または5において、前記光学素子は、ダイクロイックミラーまたはダイクロイックプリズムであるプロジェクタ装置。
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