JP4586682B2 - 鋼板の熱間圧延設備および熱間圧延方法 - Google Patents

鋼板の熱間圧延設備および熱間圧延方法 Download PDF

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Description

本発明は、鋼板の熱間圧延設備および熱間圧延方法に関するものである。
近年、熱間圧延により鋼板を製造するプロセスでは、圧延材の温度を制御して優れた特性を有する鋼板の製造を行っている。
例えば、圧延材の温度が未再結晶温度域にある状態で仕上圧延を行うという制御圧延(Controlled Rolling;CR)を施すことによって、優れた性能の鋼板を造り込んでいる。また、熱間圧延機のロールバイトを出た直後の鋼板に冷却水を供給して鋼板の表面温度を下げ、スケール生成量を抑えることによって薄スケール鋼板を製造することが検討されている。
そのような圧延材の温度を制御する際に用いられる技術しては、以下のようなものがある。
例えば、薄鋼板の熱間仕上圧延中に冷却水を供給して鋼板を冷却する技術として、特許文献1に記載の技術がある。これは、仕上スタンド間に設置したヘッダのスリット状ノズルから膜状の冷却水を噴射させて、高い冷却速度を得ることにより、微細粒鋼板の製造に用いることができるとされている。
また、冷却水を供給して熱鋼板を冷却する技術として、特許文献2に記載の技術がある。これは、冷却水を対向して噴射するノズルユニットを昇降させるものであり、別に設けたラミナーノズルやスプレーノズルとともに使用することで、広範囲の冷却速度を確保できるとされている。
特開2002−361315号公報 特開昭62−260022号公報
しかしながら、前記特許文献1、2に記載の技術は、設備コストや設備保全性及び冷却能力等の面で以下のような問題点がある。
まず、特許文献1に記載の技術では、鋼板上面に供給した冷却水は鋼板上にしばらく滞留するが、この滞留状態が変化することで鋼板の冷却領域が変動し、高い温度制御精度を得られないという問題がある。また、ヘッダが整流器を内蔵していることから設備が大きくなるため、圧延機に近づけて設置するのに限界があり、薄スケール鋼板の製造には適していない。
また、特許文献2に記載の技術では、スリットノズルユニットを鋼板に近づけなければならず、先端や尾端が反った鋼板を冷却する場合は、鋼板がスリットノズルユニットに衝突して、スリットノズルユニットを破損したり、鋼板が移動できなくなって製造ラインの停止や歩留の低下を招いたりすることがある。そこで、先端や尾端が通過する時に、昇降機構を作動させて、スリットノズルユニットを上方に退避させることも考えられるが、その場合は先尾端の冷却が足りず、目的とする材質が得られなくなる。また、昇降機構を設けるための設備コストがかかるという問題もある。しかも、昇降機構があるために、ノズルユニットを圧延機に近づけて設置することが難しいので、薄スケール鋼板の製造には適していない。
さらに、特許文献1、2に記載の技術では、スリット状のノズルを用いることが前提とされているが、噴出口が常に清浄な状態にメンテナンスされていないと、冷却水が膜状にならない。例えば、図6に示すように、スリットノズル52の噴出口に異物60が付着し詰まりが生じた場合には、冷却水膜53が破れる。また、冷却水を噴射領域内(冷却領域内)に堰き止めるためには高圧で噴射しなければならないが、膜状の冷却水53を高圧で噴射すると、噴射圧力のバランスが悪くなって冷却水膜53が破れやすいという問題があった。冷却水膜53がうまく形成されないと、冷却水が噴射領域の上流や下流方向に漏れ出てしまい、それが鋼板10上に滞留して鋼板10を部分的に冷やし、温度むらが発生するという問題がある。鋼板10上面に滞留する冷却水をサイドスプレーなどで排除する技術もあるが、冷却水量が多い場合には完全に排除しきれず、やはり温度むらを生じるという問題がある。
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、鋼板の熱間圧延を行うに際して、設備コスト面や設備保全性に優れるとともに良好な冷却能力を有し、それに基づいて圧延材の温度を適切に制御することで、優れた特性を有する鋼板を効率よく製造することができる鋼板の熱間圧延設備および鋼板の熱間圧延方法を提供することを目的とするものである。
上記の課題を解決するために、本発明は以下の特徴を有する。
[1]鋼板を熱間圧延する圧延機の入側または/および出側の前記圧延機に近接する位置に、鋼板を通過させながら鋼板の上面に冷却水を供給する冷却設備を配置し、該冷却設備は、鋼板の上面に対して棒状冷却水を圧延機側に向いて伏角30°〜60°で噴射するノズルを有するヘッダを、鋼板に供給した後の冷却水が圧延機のワークロールで堰き止められるような位置に備えていることを特徴とする鋼板の熱間圧延設備。
[2]前記該冷却設備は、さらに、鋼板の下面に対して棒状冷却水を圧延機側に向いて仰角45°〜90°で噴射するノズルを有するヘッダを、圧延機のワークロールとそれに隣接するテーブルローラとの間に備えていることを特徴とする前記[1]に記載の鋼板の熱間圧延設備。
[3]前記[1]または[2]に記載の鋼板の熱間圧延設備を用いて、鋼板に供給した後の冷却水が圧延機のワークロールに到達するように冷却水を噴射しながら圧延を行うことを特徴とする鋼板の熱間圧延方法。
[4]前記[1]または[2]に記載の鋼板の熱間圧延設備を用いて、鋼板が圧延されていない間に、ワークロールのロール隙を2mm以内として冷却水を噴射することを特徴とする鋼板の熱間圧延方法。
本発明においては、鋼板の熱間圧延を行うに際して、設備コスト面や設備保全性に優れるとともに良好な冷却能力を有し、それに基づいて圧延材の温度を適切に制御することで、優れた特性を有する鋼板を効率よく製造することができる。
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1、図2は、本発明の実施形態における熱間圧延設備を示す図である。図1は、厚鋼板の熱間圧延設備または薄鋼板の熱間粗圧延設備を示しており、図2は、薄鋼板の熱間仕上圧延設備を示している。
図1においては、スラブを所定温度に加熱する加熱炉11と、加熱炉11から抽出されたスラブ10を所定の板厚の鋼板10に圧延する圧延機(ここではレバース圧延機)12と、圧延機12の入側(上流側)および出側(下流側)の近接する位置に、スラブ(鋼板)10を通過させながらスラブ(鋼板)10の上下面に冷却水を供給する冷却設備20が配置されている。なお、図中の13はテーブルローラである。
図2においては、スラブを所定温度に加熱する加熱炉11と、加熱炉11から抽出されたスラブ10を所定の板厚の鋼板10に粗圧延する粗圧延機(図示せず)と、粗圧延機で所定の板厚に粗圧延された鋼板10を所定の仕上板厚に圧延する仕上圧延機(ここではタンデム圧延機)12と、圧延機12の出側(下流側)の近接する位置に、鋼板10を通過させながら鋼板10の上下面に冷却水を供給する冷却設備20が配置されている。なお、図中の13はテーブルローラである。
そして、この冷却設備20は、図3に示すように、鋼板10の上面に対して棒状冷却水23を圧延機12のワークロール12a側に向いて伏角θ=30°〜60で噴射する上ノズル(円管ノズル)22を有する上ヘッダ21を、鋼板10の上面に供給した後の滞留冷却水24が圧延機12のワークロール12aで堰き止められるような位置に備えているとともに、鋼板10の下面に対して棒状冷却水33を圧延機12のワークロール12a側に向いて仰角θ=30°〜60°で噴射する下ノズル(円管ノズル)32を有する下ヘッダ31を、圧延機12のワークロール12aとそれに隣接するテーブルローラ13aとの間に備えている。
なお、図5は、上ヘッダ21に取り付けられている円管ノズル22の配置例を示したものである。円管ノズル22が鋼板10の搬送方向に複数列(ここでは6列)配置されているとともに、板幅方向には、通過する鋼板10の全幅に冷却水を供給できるように配置されている。また、下ヘッダ31に取り付けられている円管ノズル32についても、これと同様に配置されている。
ちなみに、この実施形態において、上ノズル22から噴射する冷却水を棒状冷却水としているのは、棒状冷却水の方がラミナーフロー等に比べて安定的に水流が形成され、滞留冷却水を堰き止める力が大きいからである。
また、上ノズル22から噴射される棒状冷却水23の伏角θを30°〜60°としているのは、伏角θが30°より小さいと、棒状冷却水23の鉛直方向速度成分が小さくなって鋼板10への衝突が弱くなり、冷却能力が低下するからであり、伏角θが60°より大きいと、棒状冷却水23の搬送方向速度成分が十分でないため、滞留冷却水24を堰き止める力が弱く、滞留冷却水24が搬送方向外側に漏れて、冷却領域が不安定になるからである。
また、下ノズル32から噴射される棒状冷却水33の仰角θを45°〜90°としているのは、仰角θが45°より小さいと、棒状冷却水の鉛直方向速度成分が小さくなって鋼板10への衝突が弱くなり、冷却能力が低下するとともに、ワークロール12aとテーブルローラ13aの間の距離を長くしなければならないからであり、仰角θが90°より大きいと、冷却水が圧延機12周辺に飛散するので、操業性や設備保全性の点で好ましくないからである。
さらに、水流が安定しない膜状冷却水を鋼板10に供給する場合には、ヘッダを鋼板10に近づける必要があるのに対して、棒状冷却水23を鋼板に供給する場合には、パスラインから上方に離れた位置に上ヘッダ21を配置することができる。したがって、鋼板10の反り等によって上ノズル22a、22bが損傷するのを防止するために、上ノズル22の先端の位置をパスラインから離すようにするのがよい。ただし、あまり離すと冷却水が分散して棒状でなくなり冷却水を堰き止める作用がなくなるので、上ノズル22の先端とパスラインの距離を500mm〜1800mmとするのが好ましい。
そして、上記のように構成された熱間圧延設備を用いて鋼板の熱間圧延を行う際には、鋼板10上面に供給した後の滞留冷却水24および鋼板10下面に供給した後の冷却水34が圧延機12のワークロール12aに到達するように棒状冷却水23、33を噴射しながら圧延を行う。
このようにして、この実施形態においては、鋼板10の上面に対して棒状冷却水23をワークロール12a側に向いて伏角θ=30°〜60で噴射し、鋼板10の上面に供給した後の滞留冷却水24がワークロール12aに到達するようにしているので、滞留冷却水24がワークロール12aと棒状冷却水23の間に堰き止められ、安定した冷却領域が形成される。これによって、滞留冷却水24が鋼板10上を勝手に移動して鋼板10を不均一に冷却し、温度むらが発生するという問題が解消され、鋼板10を均一に冷却することができる。
ここで冷却領域とは、上ヘッダにおいて圧延ロールから最も遠い側の列(最外側の列)の円管ノズルからの棒状冷却水が鋼板10に衝突する位置と圧延ロールに挟まれた領域のことである。
そして、このように冷却領域が形成されることによって、ワークロール12aのロールバイトから冷却開始位置(冷却水による冷却が開始する位置)までの距離は0ということになる。
また、上ノズル22の先端の位置をパスラインからある程度離すことができるので、先端や尾端が反った鋼板を冷却する場合でも、鋼板10が上ヘッダ21に衝突して、上ヘッダ21を破損したり、鋼板10が移動できなくなって製造ラインの停止や歩留の低下を招いたりするといったことがない。したがって、鋼板10が上ヘッダ21に衝突するのを避けるために昇降装置を設ける必要がないので、設備コストを抑えることができる。
さらに、昇降装置等を有していないので、上ヘッダ21を圧延機12に近づけて設置することが可能となる。これによって、圧延機12のロールバイトを出た直後の鋼板10に冷却水を供給することで、鋼板10の表面温度を下げてスケール生成量を抑えることができるので、薄スケール鋼板の製造にも適している。
しかも、鋼板10に供給された後の冷却水24、34がワークロール12aの表面に当たって、ワークロール12aを冷却する効果もあるので、ロール冷却用の冷却装置を別に備える必要がなくなり、設備コストを抑えることができる。
さらに、圧延パス間あるいは先行圧延材と後行圧延材の間といった、ワークロール12aが鋼板10を噛んでいない時にも、冷却水23、33を噴射すれば、噴射後の冷却水25が図4に示すように流れるので、上下のワークロール12aに多量の冷却水を供給することができる。それによって、サーマルクラウンの成長を抑制して、精度の高い寸法制御が可能となる。その際に、ロールギャップの設定に余裕がある場合、例えば、先行圧延材と後行圧延材の間が45秒以上あいてしまう場合などには、ワークロール12aのロールギャップをいったん2mm程度まで狭めて冷却水23、33を噴射すればよい。冷却水25がロールギャップを抜けて飛散することを抑えることができるし、冷却水25がワークロール12aに対して外周方向により広い範囲で供給されるからである。もちろん、上記のような圧延パス間等でのロール冷却を必要としない場合は、冷却水23、33の噴射を止めればよい。
このようにして、この実施形態においては、鋼板の熱間圧延を行うに際して、設備コスト面や設備保全性に優れるとともに良好な冷却能力を有し、それに基づいて圧延材の温度を適切に制御することで、優れた特性を有する鋼板を効率よく製造することができる。
なお、この実施形態において、図1では、圧延機12の入側および出側にそれぞれ上ヘッダ21と下ヘッダ31を設け、図2では、圧延機12の出側に上ヘッダ21と下ヘッダ31を設けているが、本発明はこれに限るものではない。設置スペースに制限がある場合や、得られる効果を限定してもよい場合には、例えば、圧延機12の入側または出側のいずれか一方のみに設置してもよいし、また、下ヘッダ31を設けず、上ヘッダ21のみを設置してもよい。ただし、圧延機12に圧延材が噛み込む際の反りの発生を抑えるためにも、上ヘッダ21と下ヘッダ31の両方を設置して、冷却能力を上下で同程度とすることが望ましい。
本発明の実施例1として、厚鋼板の熱間圧延ラインでの制御圧延を行った。ここでは、板厚を28mmまで圧延した後、最終3パスで所定の圧延温度での制御圧延を行った。
その際に、本発明例1として、前述の実施形態に示した熱間圧延設備(図1)を用い、制御圧延を行う前の4パスにおいて、圧延機12の入側および出側に設けた冷却設備20から棒状冷却水を噴射して、当該4パスが終了した時に鋼板10の温度が所定の温度となるように鋼板10を冷却しながら圧延を行い、その後の最終3パスで制御圧延を行った。なお、上ノズル22の伏角θを45°とし、下ノズル32の仰角θを60°とした。また、上ノズル22および下ノズル32の内径は6mmとし、棒状冷却水の噴射速度は8m/sとした。
これに対して、比較例1として、圧延中に鋼板を冷却するための冷却設備を備えていない熱間圧延設備を用いて制御圧延を行った。比較的高温で板厚28mmに圧延された鋼板を、制御圧延を行う前に、30sの空冷待機を行って所定の温度とした後、最終3パスで制御圧延を行った。
また、比較例2として、本発明例1の冷却設備20に替えて、前記特許文献2に記載の冷却設備を備えた熱間圧延設備を用い、本発明例1と同様にして制御圧延を行った。すなわち、制御圧延を行う前の4パスにおいて、スリットノズルから膜状冷却水を噴射して、当該4パスが終了した時に鋼板の温度が所定の温度となるように鋼板を冷却しながら圧延を行い、その後の最終3パスで制御圧延を行った。なお、ヘッダは、ワークロールのロールバイトから冷却開始位置(冷却水による冷却が開始する位置)までの距離が4mとなる場所に設置して、鋼板を通過させながら冷却を行った。
その結果を表1に示す。
Figure 0004586682
表1に示すように、比較例1においては、制御圧延を行う前に30sの空冷待機を行っているので、圧延ピッチが210sとなり、圧延能率が低くなっている。
また、比較例2においては、昇降機構を設けなければならなかったので、設備コストが高かった。そして、先端が反った鋼板がノズルユニットに衝突して設備を破損させることが散発した。設備を破損させた鋼板は変形しており、製品にならないので、歩留が10%も低下した。なお、30sの空冷待機を行わないで制御圧延を行うことができたが、制御圧延を行う前の4パスにおける鋼板の搬送距離が長くなった分だけ搬送時間が増加し、全体として圧延ピッチは、比較例1より24s短い186sであった。
また、比較例1、2ともに、他に圧延ロールを冷却する冷却装置が必要であり、そのための設備コストがかかった。
これに対して、本発明例1においては、滞留冷却水24がワークロール12aと棒状冷却水23の間に堰き止められ、安定した冷却領域が形成され、これによって、滞留冷却水24が鋼板10上を勝手に移動して鋼板10を不均一に冷却し、温度むらが発生するという問題が解消され、鋼板10を均一に冷却することができた。
また、先端や尾端が反った鋼板を冷却した場合でも、鋼板10が上ヘッダ21に衝突して、上ヘッダ21を破損したり、鋼板10が移動できなくなって製造ラインの停止や歩留の低下を招いたりするといったことがなかった。したがって、鋼板10が上ヘッダ21に衝突するのを避けるために昇降装置を設ける必要がなく、設備コストを抑えることができた。
そして、30sの空冷待機を行わないで制御圧延を行うことができたとともに、制御圧延を行う前の4パスにおける鋼板の搬送距離は比較例1と同程度であったので、圧延ピッチは、比較例2より、さらに6s短い180sであった。
しかも、鋼板10に供給された後の冷却水24、34がワークロール12aの表面に当たって、ワークロール12aを冷却する効果もあるので、ロール冷却用の冷却装置を別に備える必要がなく、設備コストを抑えることができた。
本発明の実施例2として、薄鋼板の熱間圧延ラインでの粗圧延を行った。ここでは、スラブを粗圧延機によって板厚42mmまで圧延した。
その際に、本発明例2として、前述の実施形態に示した熱間圧延設備(図1)を用い、粗圧延での3パスにおいて、圧延機12の入側および出側に設けた冷却設備20から棒状冷却水を噴射して鋼板10を冷却しながら圧延を行った。なお、上ノズル22の伏角θを45°とし、下ノズル32の仰角θを60°とした。また、上ノズル22および下ノズル32の内径は6mmとし、棒状冷却水の噴射速度は8m/sとした。
これに対して、比較例3として、圧延中に鋼板を冷却するための冷却設備を備えていない熱間圧延設備を用いて粗圧延を行った。スラブが比較的高温で加熱された場合には、粗圧延の終了温度が高くなったので、スケール疵の発生を抑えるために仕上圧延機の入側で15sの空冷待機を行った。
また、比較例4として、本発明例2の冷却設備20に替えて、前記特許文献2に記載の冷却設備を備えた熱間圧延設備を用い、本発明例2と同様にして粗圧延を行った。すなわち、粗圧延での3パスにおいて、スリットノズルから膜状冷却水を噴射して鋼板を冷却しながら圧延を行った。なお、ヘッダは、ワークロールのロールバイトから冷却開始位置(冷却水による冷却が開始する位置)までの距離が4mになる場所に設置して、鋼板を通過させながら冷却を行った。
その結果を表2に示す。
Figure 0004586682
表2に示すように、比較例3においては、スラブが比較的高温で加熱された場合に、仕上圧延機の入側で15sの空冷待機を行っているので、圧延ピッチが105sとなり、圧延能率が低くなっている。
また、比較例4においては、昇降機構を設けなければならなかったので、設備コストが高かった。そして、先端が反った鋼板がノズルユニットに衝突して設備を破損させることが散発した。設備を破損させた鋼板は変形しており、製品にならないので、歩留が10%も低下した。なお、仕上圧延機入側での15sの空冷待機を行う必要がなかったが、冷却設備までの搬送距離が長くなった分だけ搬送時間が増加し、全体として圧延ピッチは、比較例3より12s短い93sであった。
また、比較例3、4ともに、他に圧延ロールを冷却する冷却装置が必要であり、そのための設備コストがかかった。
これに対して、本発明例2においては、滞留冷却水24がワークロール12aと棒状冷却水23の間に堰き止められ、安定した冷却領域が形成され、これによって、滞留冷却水24が鋼板10上を勝手に移動して鋼板10を不均一に冷却し、温度むらが発生するという問題が解消され、鋼板10を均一に冷却することができた。これによって、材質のばらつきを生じることなくスケール疵の発生を適切に抑えることができた。
また、先端や尾端が反った鋼板を冷却した場合でも、鋼板10が上ヘッダ21に衝突して、上ヘッダ21を破損したり、鋼板10が移動できなくなって製造ラインの停止や歩留の低下を招いたりするといったことがなかった。したがって、鋼板10が上ヘッダ21に衝突するのを避けるために昇降装置を設ける必要がなく、設備コストを抑えることができた。
そして、仕上圧延機入側での15sの空冷待機を行う必要がなかったとともに、冷却設備20で冷却を行った場合の鋼板の搬送距離も比較例3と同程度であるので、圧延ピッチは、比較例4より、さらに3s短い90sであった。
しかも、鋼板10に供給された後の冷却水24、34がワークロール12aの表面に当たって、ワークロール12aを冷却する効果もあるので、ロール冷却用の冷却装置を別に備える必要がなく、設備コストを抑えることができた。
本発明の実施例3として、薄鋼板の熱間圧延ラインでの仕上圧延を行った。ここでは、F1〜F7の7スタンドの仕上圧延機によって仕上板厚3mmに圧延した。
その際に、本発明例3として、前述の実施形態に示した熱間仕上圧延設備(図2)を用い、F4〜F7の4スタンドにおいて、圧延機12の出側に設けた冷却設備20から棒状冷却水を噴射して鋼板10を冷却しながら圧延を行った。なお、上ノズル22の伏角θを45°とし、下ノズル32の仰角θを60°とした。また、上ノズル22および下ノズル32の内径は6mmとし、棒状冷却水の噴射速度は8m/sとした。
これに対して、比較例5として、本発明例3の冷却設備20に替えて、前記特許文献1に記載の冷却設備を備えた熱間圧延設備を用い、本発明例3と同様にして仕上圧延を行った。すなわち、F4〜F7の4スタンドにおいて、スリットノズルから膜状冷却水を噴射して鋼板を冷却しながら圧延を行った。なお、ヘッダは、ワークロールのロールバイトから冷却開始位置(冷却水による冷却が開始する位置)までの距離が2mとなる場所に設置した。
また、比較例6として、本発明例3の冷却設備20に替えて、前記特許文献2に記載の冷却設備を備えた熱間圧延設備を用い、本発明例3と同様にして仕上圧延を行った。すなわち、F4〜F7の4スタンドにおいて、スリットノズルから膜状冷却水を噴射して鋼板を冷却しながら圧延を行った。なお、ヘッダは、ワークロールのロールバイトから冷却開始位置(冷却水による冷却が開始する位置)までの距離が2mとなる場所に設置した。
その結果を表3に示す。
Figure 0004586682
表3に示すように、比較例5においては、鋼板上面に滞留した冷却水の滞留状態が変化して鋼板の冷却領域が変動し、温度むらが大きくなった。それにより、製品の材質(強度)のばらつきが大きくなり、品質の高い鋼板を製造することができなかった。
また、比較例6においては、昇降機構を設けなければならなかったので、設備コストが高かった。そして、先端が反った鋼板がノズルユニットに衝突して設備を破損させることが散発した。設備を破損させた鋼板は変形しており、製品にならないので、歩留が10%も低下した。
また、比較例5、6ともに、ヘッダをワークロールから2m離れた場所に設置したので、ロールバイトを出た直後の鋼板のスケール生成を抑えることができず、薄スケール鋼板を製造することができなかった。
また、比較例5、6ともに、他に圧延ロールを冷却する冷却装置が必要であり、そのための設備コストがかかった。
これに対して、本発明例3においては、滞留冷却水24がワークロール12aと棒状冷却水23の間に堰き止められ、安定した冷却領域が形成され、これによって、滞留冷却水24が鋼板10上を勝手に移動して鋼板10を不均一に冷却し、温度むらが発生するという問題が解消され、鋼板10を均一に冷却することができた。これによって、材質のばらつきが小さく、品質の高い鋼板を製造することができた。
また、先端や尾端が反った鋼板を冷却した場合でも、鋼板10が上ヘッダ21に衝突して、上ヘッダ21を破損したり、鋼板10が移動できなくなって製造ラインの停止や歩留の低下を招いたりするといったことがなかった。したがって、鋼板10が上ヘッダ21に衝突するのを避けるために昇降装置を設ける必要がなく、設備コストを抑えることができた。
また、圧延機12のロールバイトを出た直後の鋼板10に冷却水を供給し、鋼板10の表面温度を下げることができたので、スケールの発生を抑制し、薄スケール鋼板を製造することができた。
しかも、鋼板10に供給された後の冷却水24、34がワークロール12aの表面に当たって、ワークロール12aを冷却する効果もあるので、ロール冷却用の冷却装置を別に備える必要がなく、設備コストを抑えることができた。
本発明の一実施形態における鋼板の熱間圧延設備の配置図である。 本発明の一実施形態における他の鋼板の熱間圧延設備の配置図である。 本発明の一実施形態における冷却設備の詳細図である。 本発明の一実施形態における冷却設備の詳細図である。 本発明の一実施形態におけるヘッダのノズル配置例を示した図である。 従来技術の説明図である。
符号の説明
10 鋼板
11 加熱炉
12 圧延機
12a ワークロール
13 テーブルローラ
20 冷却設備
21 上ヘッダ
22 上ノズル
23 棒状冷却水
24 滞留冷却水
25 冷却水
31 下ヘッダ
32 下ノズル
33 棒状冷却水
34 供給後の冷却水

Claims (4)

  1. 鋼板を熱間圧延する圧延機の入側または/および出側の前記圧延機に近接する位置に、鋼板を通過させながら鋼板の上面に冷却水を供給する冷却設備を配置し、該冷却設備は、鋼板の上面に対して棒状冷却水を圧延機側に向いて伏角30°〜60°で噴射するノズルを有するヘッダを、鋼板に供給した後の冷却水が圧延機のワークロールで堰き止められるような位置に備えていることを特徴とする鋼板の熱間圧延設備。
  2. 前記該冷却設備は、さらに、鋼板の下面に対して棒状冷却水を圧延機側に向いて仰角45°〜90°で噴射するノズルを有するヘッダを、圧延機のワークロールとそれに隣接するテーブルローラとの間に備えていることを特徴とする請求項1に記載の鋼板の熱間圧延設備。
  3. 請求項1または2に記載の鋼板の熱間圧延設備を用いて、鋼板に供給した後の冷却水が圧延機のワークロールに到達するように冷却水を噴射しながら圧延を行うことを特徴とする鋼板の熱間圧延方法。
  4. 請求項1または2に記載の熱間圧延設備を用いて、鋼板が圧延されていない間に、ワークロールのロール隙を2mm以内として冷却水を噴射することを特徴とする鋼板の熱間圧延方法。
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