JP2005193258A - 細粒鋼製造用圧延機および圧延機列 - Google Patents
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Abstract
【課題】 極低炭素鋼を含む種々の鋼板につき、大圧下圧延法によってそのフェライト組織を細粒化するのに適した細粒鋼製造用圧延機および圧延機列を提供する。
【解決手段】 圧延板に接する一対のワークロール1・2を極小径ロールまたは異径ロールとし、各ワークロール1・2の表面にスプレー水を噴射するロール冷却手段11・13・15・17と、ワークロール1・2の出側における鋼板xの表面から鋼板xとワークロール1との接点にかけてスプレー水を噴射する板冷却手段21とを設け、ワークロール1の表面に接触させまたはその表面から離すことによって鋼板xの表面に至る上記スプレー水の流路を遮断しまたは開放する水切り手段22を設ける。
【選択図】 図1
【解決手段】 圧延板に接する一対のワークロール1・2を極小径ロールまたは異径ロールとし、各ワークロール1・2の表面にスプレー水を噴射するロール冷却手段11・13・15・17と、ワークロール1・2の出側における鋼板xの表面から鋼板xとワークロール1との接点にかけてスプレー水を噴射する板冷却手段21とを設け、ワークロール1の表面に接触させまたはその表面から離すことによって鋼板xの表面に至る上記スプレー水の流路を遮断しまたは開放する水切り手段22を設ける。
【選択図】 図1
Description
請求項に係る発明は、フェライト組織の結晶粒径が10μm程度以下という細粒鋼熱延鋼板を製造するのに適した細粒鋼製造用圧延機、およびそれを含む圧延機列に関するものである。
細粒フェライトを主体とする微細組織を有するいわゆる細粒鋼熱延鋼板は、機械的性質にすぐれており、それを材料とする機器・装置を軽量化したり、それによって消費エネルギーを削減したり効果をもたらすことから、産業界の注目を集めている。
細粒鋼熱延鋼板の製造について記載した文献には、たとえば下記の特許文献1・2がある。
特許文献1は、熱間圧延の際、圧延板に高圧下率の圧延(大圧下)を施しながら強冷却を行うという、いわゆる大圧下圧延法によって細粒鋼熱延鋼板を製造することを示している。大圧下により組織の微細化をはかるとともに、大圧下にともなって加工発熱をする圧延板を強冷却によって適切な温度域(Ar3変態点付近)に保ち、もって粒成長を停止させて細粒鋼熱延鋼板を得るのである。
特許文献1は、熱間圧延の際、圧延板に高圧下率の圧延(大圧下)を施しながら強冷却を行うという、いわゆる大圧下圧延法によって細粒鋼熱延鋼板を製造することを示している。大圧下により組織の微細化をはかるとともに、大圧下にともなって加工発熱をする圧延板を強冷却によって適切な温度域(Ar3変態点付近)に保ち、もって粒成長を停止させて細粒鋼熱延鋼板を得るのである。
一方、特許文献2は、極低炭素鋼について、熱間圧延時に動的再結晶域で繰り返し圧下を行うことによりフェライトを微細粒にすることを示している。その圧下については、大圧下をするのではなく、各スタンドでの圧下率を20%以下にとどめるのがよいとし、また、圧延板の温度を上記の動的再結晶域に保つべく当該板または圧延ロールを加熱するのが好ましいと記載されている。
特開2002−273501号公報
特開平11−92864号公報
特許文献1に記載のように大圧下圧延法を採用する場合、低炭素鋼(たとえば炭素含有量が0.05%程度以下のもの)を細粒化することは一般的に難しいとされている。低炭素鋼については圧延後の粒成長が速いからであり、そのような事情は特許文献2にも説明されている。引用文献1の方法では、後段スタンドの圧延機の出側に強冷却用のカーテンウォール型冷却手段を配置して圧延直後の圧延板を冷却することとしているが、同冷却手段を圧延機に近づけて配置するにも限界があるため、圧延直後に(たとえば圧延後10分の1秒以下で)板を強冷却することが困難であることも少なくない。
一方、引用文献2に記載された方法は、大圧下を行わないことからアスペクト比(フェライト粒の長径と短径との比)の小さい細粒鋼を得やすいという一面があるが、加熱等によって圧延板の温度を維持・管理することが容易でなく、そのためにかなりのコストが必要になる。
請求項に係る発明は、圧延板等を加熱することによる温度維持の困難性がない大圧下圧延法によって、極低炭素鋼を含む種々の鋼板につきフェライト組織を細粒化するのに適した、細粒鋼製造用圧延機および圧延機列を提供するものである。
請求項1に記載した細粒鋼製造用圧延機は、
・ 圧延板に接する一対のワークロールを極小径ロールまたは異径ロールとし、
・ 各ワークロールの表面にスプレー水を噴射するロール冷却手段と、ワークロールの出側における圧延板表面から圧延板とワークロールとの接点にかけてスプレー水を噴射する板冷却手段とを設け、
・ ワークロールの表面に対し選択的に接触(接触に近い状態を含む)させまたは離すことによって圧延板表面に至る上記スプレー水(ロール冷却手段または板冷却手段によるスプレー水)の流路を遮断しまたは開放する(つまりそれら各状態を切り換え得る)水切り手段を設ける
ことを特徴とする。なお、上にいう極小径ロールは、直径600mmを下回る小径のロール対からなるワークロールをいい、異径ロールとは、直径が等しくなく、かつ上下の一対について等価ロール径(ロール径の平均値)が直径で600mm未満であるワークロールをいう。
・ 圧延板に接する一対のワークロールを極小径ロールまたは異径ロールとし、
・ 各ワークロールの表面にスプレー水を噴射するロール冷却手段と、ワークロールの出側における圧延板表面から圧延板とワークロールとの接点にかけてスプレー水を噴射する板冷却手段とを設け、
・ ワークロールの表面に対し選択的に接触(接触に近い状態を含む)させまたは離すことによって圧延板表面に至る上記スプレー水(ロール冷却手段または板冷却手段によるスプレー水)の流路を遮断しまたは開放する(つまりそれら各状態を切り換え得る)水切り手段を設ける
ことを特徴とする。なお、上にいう極小径ロールは、直径600mmを下回る小径のロール対からなるワークロールをいい、異径ロールとは、直径が等しくなく、かつ上下の一対について等価ロール径(ロール径の平均値)が直径で600mm未満であるワークロールをいう。
この請求項の圧延機は、大圧下圧延法によって、極低炭素鋼を含む種々の鋼板につきフェライト組織の微細な細粒鋼熱延鋼板を製造するのに適している。それはつぎのような理由による。
a) 極小径ロールまたは異径ロールで構成した一対のワークロールは、等価ロール径または双方(一対)のロール径が小さいために、低い圧延荷重で圧下率の高い圧延を行うことができる。同じ圧下率をもたらす圧延荷重は、ワークロールの径が小さいほど小さくなり、概ねワークロール径に比例するからである。圧延荷重が小さくなれば、ロール偏平のために高圧下率圧延ができないという現象がなくなるほか、圧延ロールの扁平変形量が減る結果としてエッジドロップも軽減される。上記のような極小径ロールや異径ロールをワークロールとする場合、圧下率が40%以上という圧下をすることも困難ではない。
b) ワークロールの出側に上記のような板冷却手段を設けることから、大圧下圧延にともなう加工発熱による温度上昇を抑制して圧延板を適正温度域に保つことができる。圧延板表面から圧延板とワークロールとの接点にかけてスプレー水を噴射するこの板冷却手段は、圧延板表面にスプレー水を直接かけるため、板を効果的に冷却する能力がある。この冷却手段はまた、ワークロールから離れた直後、すなわち圧延直後の板表面にスプレー水をかけるのであるから、圧延後の粒成長が速い低炭素鋼についても、フェライト組織を細粒化できることになる。
この請求項の圧延機は、通常の圧延によって細粒鋼以外の熱延鋼板を製造することも可能である。上記の水切り手段をワークロールの表面に接触させれば、圧延板表面に至るスプレー水を遮断できるからである。そうした遮断を行うことによってスプレー水が圧延板表面に至らないようにすれば、加工発熱を生じない圧延を行う場合に板を過剰に冷却することを回避し、大圧下でない通常の圧延を円滑に行うことが可能になる。なお、スプレー水の遮断状態を長時間つづける場合には、板冷却手段におけるスプレー水を停止しておくのがよい。板冷却手段のスプレー水を停止していても、別に設けたロール冷却手段を使用することによりワークロールの過熱を防ぐことができる。
請求項2に記載の圧延機はとくに、
・ ロール冷却手段のスプレー水に対して専用の水切り手段を設けるとともに、板冷却手段のスプレー水に対しても別の専用の水切り手段を設け、
・ 後者の(つまり板冷却手段のスプレー水に対する)水切り手段を、上記のようにワークロールの表面に対し選択的に接触させまたは分離させる(つまり接触・分離を任意に切換可能である)ものとする
ことを特徴とする。
・ ロール冷却手段のスプレー水に対して専用の水切り手段を設けるとともに、板冷却手段のスプレー水に対しても別の専用の水切り手段を設け、
・ 後者の(つまり板冷却手段のスプレー水に対する)水切り手段を、上記のようにワークロールの表面に対し選択的に接触させまたは分離させる(つまり接触・分離を任意に切換可能である)ものとする
ことを特徴とする。
この圧延機にはつぎのような作用的特徴もある。まず、大圧下圧延を行って細粒鋼熱延鋼板を製造する場合と、細粒鋼でない一般的な熱延鋼板を製造する場合とにおける圧延機周辺での冷却を、板冷却手段のスプレー水に対する水切り手段の位置変更によって切り換えることができる。前者(細粒鋼圧延)の場合には当該水切り手段をワークロール表面から分離して冷却水が圧延板表面に当たるようにし、後者(一般圧延)の場合には、同じ水切り手段をワークロール表面に接触させて冷却水が圧延板表面に至らないようにすることができるからである。そしていずれの場合にも、ロール冷却手段のスプレー水に対する水切り手段はワークロールの表面に接触させておけばよい。したがって、板冷却手段のスプレー水に対する水切り手段のみについて上記した接触・分離の切換えを行えばよいので、水切り手段に関する構成が簡単化される。
また、板冷却手段は、圧延板表面にスプレー水を噴射するものであるため圧延板(パスライン)に近い位置に配置するのが一般的だが、それだけに、圧延板の先端(下流側の圧延機に届いていないうえ曲がっていることもある)が当該板冷却手段等に接触したり噛み込まれたりする恐れがある。しかしこの圧延機では、板冷却手段に関する水切り手段を上記のようにワークロール表面に接触・分離可能にしておくことから、そのようなトラブルを容易に回避できる。圧延板の先端をワークロール間に通過させるとき、その水切り手段をワークロール表面に接触させておけば、板冷却手段は当該水切り手段に隠れ、上記のような接触・噛み込み等は生じないからである。
請求項3に記載の細粒鋼製造用圧延機はとくに、
・ 板冷却手段として、板幅1mあたり170m3/h以上のスプレー水を圧延板表面にかけ得るものを使用することを特徴とする。
・ 板冷却手段として、板幅1mあたり170m3/h以上のスプレー水を圧延板表面にかけ得るものを使用することを特徴とする。
ワークロールに近い位置で圧延板表面を冷却する上記の板冷却手段としては、配置スペース等の関係で、前掲の特許文献1に記載されたカーテンウォール型のものを採用することが難しく、スプレー水噴射方式のものにならざるを得ない。したがって一般的にはカーテンウォール型冷却手段よりも冷却能力が低く、大圧下時の加工発熱にともなう圧延板の温度上昇を十分に抑制することは容易でない。しかしながら、上記のように板幅1mあたり170m3/h以上(望ましくは270〜300m3/h)のスプレー水を噴射することとすれば、スプレー水方式のものではあっても必要な冷却能力を発揮させることができる。そのため、この請求項の圧延機によれば、細粒鋼熱延鋼板を円滑にかつ能率的に製造することが可能である。
請求項4に記載の細粒鋼製造用圧延機はとくに、
・ 板冷却手段を、上記の水切り手段およびロール冷却手段が取り付けられたフレーム上に(またはそれと一体的なフレーム上に)取り付けることを特徴とする。
なお、1台の圧延機に対して水切り手段やロール冷却手段が複数あるときは、板冷却手段は、近い位置にある少なくとも1の水切り手段およびロール冷却手段が取り付けられたフレーム上に取り付けるものとする。たとえば、当該圧延機の出側のうちパスラインの上方にある板冷却手段については、同じ出側の上方にある水切り手段およびロール冷却手段とともに共通のフレーム上に取り付け、また、出側のうちパスラインの下方にある板冷却手段については、同じ出側の下方にある水切り手段およびロール冷却手段とともに共通のフレームに取り付けるとよい。
・ 板冷却手段を、上記の水切り手段およびロール冷却手段が取り付けられたフレーム上に(またはそれと一体的なフレーム上に)取り付けることを特徴とする。
なお、1台の圧延機に対して水切り手段やロール冷却手段が複数あるときは、板冷却手段は、近い位置にある少なくとも1の水切り手段およびロール冷却手段が取り付けられたフレーム上に取り付けるものとする。たとえば、当該圧延機の出側のうちパスラインの上方にある板冷却手段については、同じ出側の上方にある水切り手段およびロール冷却手段とともに共通のフレーム上に取り付け、また、出側のうちパスラインの下方にある板冷却手段については、同じ出側の下方にある水切り手段およびロール冷却手段とともに共通のフレームに取り付けるとよい。
このようにすれば、圧延機において圧延ロールの組み換えを行うとき、板冷却手段等を退避または除去等することが容易である。圧延ロールは長時間の使用によって摩耗するので、補修などメンテナンスのために圧延機より取り出し、または再度の組み込みをすることが定期的に行われる。その際、板冷却手段や水切り手段、ロール冷却手段は圧延機の周辺から一旦退避させる必要がある。この請求項の圧延機においては、板冷却手段を水切り手段やロール冷却手段とともに共通のフレーム上に取り付けるため、上記のような必要時には、板冷却手段や水切り手段、ロール冷却手段を上記共通のフレームとともに迅速かつ容易に退避等させ得るのである。
請求項5に記載した細粒鋼製造用圧延機列は、
・ 最終段を含む後段の複数のスタンドとして、上記したいずれかの圧延機を配置することを特徴とする。
・ 最終段を含む後段の複数のスタンドとして、上記したいずれかの圧延機を配置することを特徴とする。
この請求項の圧延機列は、金属組織に対する影響の強い後段の複数スタンドに上記の圧延機を設けたものである。上記の圧延機は、一対のワークロールが極小径ロールまたは異径ロールであって圧下率の高い圧延を円滑に行えるうえ、板冷却手段によって圧延板を効果的に冷却できるので、大圧下圧延を適切な温度域で実施することが可能である。そのような圧延機を後段の複数スタンドに配置したこの圧延機列によれば、細粒鋼熱延鋼板の製造を円滑に実施することが可能になる。
なお、炭素含有量が0.5%以下で合金元素の含有量が5%以下という一般的な成分をもつ鋼板を圧延して、内部の平均フェライト粒径が3〜7μm程度の細粒鋼熱延鋼板を得るには、たとえば圧延板の温度をAr3変態点±50℃程度の範囲に保ちながら、累積歪みが0.6以上になるように圧延を行う必要がある。ここで「歪み」とは、各段のスタンドの入り側での圧延板の厚さh0と出側での厚さh1の差を両者の平均厚さで除した
ε=(h0−h1)/{(h0+h1)/2}
をいい、「累積歪み」とは、使用する圧延機のうち後段3スタンドの各段(それらより上流側のスタンドは影響力が小さいので無視する)での歪みを、金属組織に対する影響の強さを考慮して加重積算したもので、最終段とその前段・前々段での歪みをそれぞれεn、εn-1、εn-2とするとき、
εc=εn+εn-1/2+εn-2/4
で表されるεcをいう。この請求項の圧延機列は、たとえばそのような条件での圧延を実現できるわけである。
ε=(h0−h1)/{(h0+h1)/2}
をいい、「累積歪み」とは、使用する圧延機のうち後段3スタンドの各段(それらより上流側のスタンドは影響力が小さいので無視する)での歪みを、金属組織に対する影響の強さを考慮して加重積算したもので、最終段とその前段・前々段での歪みをそれぞれεn、εn-1、εn-2とするとき、
εc=εn+εn-1/2+εn-2/4
で表されるεcをいう。この請求項の圧延機列は、たとえばそのような条件での圧延を実現できるわけである。
請求項6に記載の細粒鋼製造用圧延機列はさらに、
・ 最終段を含む後段の複数のスタンドの各下流側に、圧延板に対する上記の板冷却手段以外の冷却手段(スプレー式、カーテンウォール型など形式は問わない)を配置することを特徴とする。
・ 最終段を含む後段の複数のスタンドの各下流側に、圧延板に対する上記の板冷却手段以外の冷却手段(スプレー式、カーテンウォール型など形式は問わない)を配置することを特徴とする。
こうした圧延機列では、各圧延機が備える板冷却手段による圧延板の冷却が、上記した各下流側の冷却手段によって補われる。そのため、圧延板が厚めのものである場合や、圧延速度が高い場合等においても圧延板を十分に冷却することができ、細粒鋼熱延鋼板を円滑に製造することができる。
請求項1に記載した細粒鋼製造用圧延機によれば、大圧下圧延法によって、極低炭素鋼を含む種々の鋼についてフェライト組織の微細な細粒鋼熱延鋼板を製造することが可能である。また、通常の圧延によって細粒鋼以外の熱延鋼板を製造することも可能である。
請求項2に記載の細粒鋼製造用圧延機によれば、さらに、水切り手段に関する構成が簡単化されるうえ、圧延板の先端が板冷却手段に接触したり噛み込まれたりする不都合が生じない。
請求項3の細粒鋼製造用圧延機によれば、板冷却手段の冷却能力が強いので、細粒鋼熱延鋼板を円滑にかつ能率的に製造することができる。
請求項4の細粒鋼製造用圧延機では、圧延ロールの組み換えを行うとき、板冷却手段等を退避させることが容易である。
請求項5に記載した細粒鋼製造用圧延機列によれば、細粒鋼熱延鋼板の製造を円滑に実施できる。
請求項6の細粒鋼製造用圧延機列ならさらに、圧延板が厚めのものである場合や、圧延速度が高い場合等においても細粒鋼熱延鋼板を円滑に製造することが可能である。
図1〜図3に、発明の実施に関する一形態を紹介する。図1は、細粒鋼熱延鋼板の製造に使用する熱間圧延機(ミル)の要部を模式的に示す側面図である。図2は、図1の圧延機を含む圧延機列を示す概念図、また図3は、圧延機用の冷却手段における冷却能力を示す説明図である。
図2に示す圧延機列は鋼板x(圧延板)のいわゆる仕上圧延設備であって、上流(図2の左方。図示省略)には加熱炉と粗圧延機があり、下流側(図示省略)にはランアウトテーブルや巻取り機などが配置される。この圧延機列は、それぞれに圧延ロールを備える合計6スタンドのミルF1〜F6をタンデムに配置するもので、上流側で粗圧延された鋼板xを連続圧延することによって、通常は、厚さが2〜16mm前後の種々の熱延鋼板xを製造する。一般的な内部組織(平均フェライト粒径が10μm以上のもの)をもつ鋼板xを製造する通常圧延を行うとともに、運転条件を適切に設定することにより細粒鋼圧延、すなわち微細なフェライト組織を有する細粒鋼熱延鋼板xの製造を行えるよう、図示の圧延機列は以下のように構成する。
まず前段の3スタンドとして、いわゆるCVCミルF1・F2・F3をタンデムに配置する。最前段のCVCミルF1は、図2のようにワークロール1’・2’とバックアップロール3’・4’とからなる4重の圧延機として構成し、ワークロール1’・2’にCVCクラウン(公知のように直径に連続的変化を与えたもの)をもたせる。これらワークロール1’・2’は、互いに軸長方向・反対向きに移動(シフト)させることができ、それによってロール間の位置関係、すなわちロールギャップを調整することが可能である。ワークロール1’・2’の径は700mm、最大シフト量は正逆それぞれに100mmである。他の2段のCVCミルF2・F3も、このような構成および機能についてミルF1と相違はない。
こうしたCVCミルF1・F2・F3を前段に配置するので、図示の圧延機列では鋼板xのクラウン(形状)を好適に保つことができる。後段のミルF4・F5・F6では、細粒鋼圧延の際、加工発熱に起因したサーマルクラウン等が発生しやすいため、前段に置いたこれらCVCミルF1・F2・F3によってあらかじめ板クラウンを修正し、鋼板xの中絞り等を軽減するのである。
続く後段の3スタンドとしては、いわゆる異径ロールミルF4・F5・F6を、やはりタンデムに配置する。前述のCVCミルF1・F2・F3を含む全6スタンドのスタンド間隔は、等しく5.5mである。CVCミルF1から数えて第4スタンドにあたる異径ロールミルF4は、図2のようにワークロール1・2とバックアップロール3・4とからなる4重の圧延機として構成し、この例では、ワークロール1・2として互いに直径の異なるものを使用する。ワークロール1・2のうち下側にある大径のロール2のみをモータ(図示せず)にて回転駆動し、上側の小径のロール1については回転を自在にして駆動力をかけないこととする。ワークロール1・2にはベンダー(図示せず)を付設し、ワークロール1・2にベンディングをかけることを可能にする。また各ワークロール4a・4bにもCVCクラウンを付与して上述のCVC機能をもたせるとよい。ワークロール4aの径は480mm、ワークロール4bの径は600mmとし、両者の平均である等価ロール径は540mmと小さくする。以上のような構成および機能について、後方にある他の2段の異径ロールミルF5・F6も上記のミルF4と相違はない。
3スタンドの異径ロールミルF4・F5・F6は、等価ロール径が小径であることと、一方のワークロール2のみを駆動して鋼板xに剪断力を作用させることから、比較的低い圧延荷重によっても圧下率の高い(たとえば圧下率50%程度までの)圧延を行える。そのため、細粒鋼圧延のための大圧下圧延等を小さな圧延荷重にて行うことができ、しかもその際、圧延荷重が小さいために、厚さ2mm前後の薄板の圧延であっても、ロール偏平やエッジドロップによる不都合を回避することができる。
図2の圧延機列のうち第4スタンドに相当する異径ロールミルF4は、そのワークロール1・2の付近を図1のように構成する。
まず、ワークロール1・2のそれぞれに対してロール冷却手段を付設する。ワークロール1・2は、加熱された鋼板xに接触して高温度になるため、その熱疲労等を防止すべく各表面にスプレー水を吹きかけるのである。具体的には、スプレー水噴射用のノズルを含むヘッダ11・13を上側ワークロール1の入側・出側にそれぞれ配置し、同様のヘッダ15・17を下側ワークロール2の入側・出側にそれぞれ配置する。そして各ヘッダ11・13・15・17と鋼板xのパスラインとの間に、通常圧延の際に鋼板xの過冷却を避けるための、水切り手段としてのワイパー12・14・16・18をそれぞれ設ける。ワイパー12・14・16・18は、弾性変形しやすい弾性板を先端縁部に取り付けた板であり、ワークロール1・2と概ね等しい幅をもたせ、当該各ロールの表面に各先端縁部を接触させることにより、スプレー水が鋼板xにかからないようにする。ただし、図示と同様のロール冷却手段および同手段のための水切り手段は、他の異径ロールミルF5・F6にも、また前段に配置するCVCミルF1・F2・F3にも同じように配置する。
まず、ワークロール1・2のそれぞれに対してロール冷却手段を付設する。ワークロール1・2は、加熱された鋼板xに接触して高温度になるため、その熱疲労等を防止すべく各表面にスプレー水を吹きかけるのである。具体的には、スプレー水噴射用のノズルを含むヘッダ11・13を上側ワークロール1の入側・出側にそれぞれ配置し、同様のヘッダ15・17を下側ワークロール2の入側・出側にそれぞれ配置する。そして各ヘッダ11・13・15・17と鋼板xのパスラインとの間に、通常圧延の際に鋼板xの過冷却を避けるための、水切り手段としてのワイパー12・14・16・18をそれぞれ設ける。ワイパー12・14・16・18は、弾性変形しやすい弾性板を先端縁部に取り付けた板であり、ワークロール1・2と概ね等しい幅をもたせ、当該各ロールの表面に各先端縁部を接触させることにより、スプレー水が鋼板xにかからないようにする。ただし、図示と同様のロール冷却手段および同手段のための水切り手段は、他の異径ロールミルF5・F6にも、また前段に配置するCVCミルF1・F2・F3にも同じように配置する。
ミルF4およびそれより後段のミルF5・F6には、ワークロール1・2間を出た直後の鋼板xをスプレー水にて冷却する板冷却手段をも付設する。同手段は、図1のようにパスラインの上方に設けるノズル付きのヘッダ21等で構成し、そのノズルの幅(開口長さ)はワークロール1・2の幅と同程度にして鋼板xの全幅に及ぶようにし、ノズルによるスプレー水の噴射角度は、ロール冷却手段におけるノズルの噴射角度よりもせまく約2〜10°程度とする。そしてこの板冷却手段のノズルの先は、鋼板xの上側表面であってワークロール1との接点にきわめて近い個所に向ける。スプレー水が鋼板xの下流側からワークロール1寄りに噴射されて鋼板xに当たり、鋼板xに当たる部分においてスプレー水の厚さが20〜100mmであり、ワークロール1とスプレー水とが50〜200mm程度離れている、といった位置関係になるのが最も好ましい。このような関係にあれば、圧延直後の鋼板xにスプレー水が集中的に当たって強冷却が実現され得るうえ、ワークロール1の付近に滞留しがちな水によってスプレー水の冷却効果が低下させられる恐れも少ないからである。
板冷却手段であるノズル付きヘッダ21には、鋼板xの幅1mあたり170m3/h以上(最大で300m3/h前後)のスプレー水を供給できるようにする。上記のような噴射形態でこれだけの量のスプレー水を使用すると、前掲した特許文献1の技術のようにカーテンウォール型冷却手段を使用するときと同様に細粒鋼の製造が可能になる。なおこうしたスプレー水の流量設定は、つぎのような根拠によっている。
発明者らの調査では、800℃前後の鋼板xの冷却に関し、上述のようにスプレー水を噴射するときの冷却と、冷却水を幕のように層流状に流し当てるカーテンウォール型冷却手段による冷却とのそれぞれについて熱伝達係数(冷却強度)を比較すると、図3に示す結果が得られた。これによれば、スプレー水を板幅1mあたり170m3/hほど噴射するとき、カーテンウォール型冷却手段にて同100m3/hの冷却水を使用する場合と同等の冷却強度が得られ、ミルF4〜F6の各段において鋼板xを20℃程度冷却でき、細粒鋼製造のための必要条件が満たされる。また、スプレー水の流量を板幅1mあたり270m3/h程度にすれば、カーテンウォール型冷却手段で同180m3/hの冷却水を使用する場合に等しい十分な冷却強度、すなわち1台のミルF4において鋼板xを40℃程度冷却できる能力が発揮される。
発明者らの調査では、800℃前後の鋼板xの冷却に関し、上述のようにスプレー水を噴射するときの冷却と、冷却水を幕のように層流状に流し当てるカーテンウォール型冷却手段による冷却とのそれぞれについて熱伝達係数(冷却強度)を比較すると、図3に示す結果が得られた。これによれば、スプレー水を板幅1mあたり170m3/hほど噴射するとき、カーテンウォール型冷却手段にて同100m3/hの冷却水を使用する場合と同等の冷却強度が得られ、ミルF4〜F6の各段において鋼板xを20℃程度冷却でき、細粒鋼製造のための必要条件が満たされる。また、スプレー水の流量を板幅1mあたり270m3/h程度にすれば、カーテンウォール型冷却手段で同180m3/hの冷却水を使用する場合に等しい十分な冷却強度、すなわち1台のミルF4において鋼板xを40℃程度冷却できる能力が発揮される。
図1に示すように、板冷却手段であるノズル付きヘッダ21の下には、水切り手段としてのワイパー22を配置する。ワイパー22は、前記したワイパー12・14・16・18と同様に先端縁部に弾性板を取り付けた、ワークロール1と概ね等しい幅をもつ板である。その弾性板をワークロール1の表面に接触させた状態では、ヘッダ21から噴射するスプレー水が下向きの流路を遮断され、鋼板xの表面には至らなくなる。
水切り手段であるワイパー22は、上記の先端縁部(弾性板)をワークロール1の表面から引き離すこともできるよう構成する。すなわち図1のように、ワイパー22は、中ほどの部分に設けた支持ピン23aを介して支持フレーム23に支持させるとともに、弾性板とは反対側の端部を流体圧シリンダ(エアシリンダ)24の伸縮端に連結する。シリンダ24を伸ばして当該端部を下向きに押すときは先端縁部の弾性板を上記のとおりワークロール1の表面に接触させるが、逆にシリンダ24を縮めたときは、弾性板をワークロール1から離すことにより、板冷却手段のスプレー水が鋼板xに至るための流路を開放することとなる。こうしてワイパー22が流路を開放した状態で板冷却手段(ヘッダ21)がスプレー水を噴射するとき、そのスプレー水によって前述のように鋼板xを冷却できる。
図1に示すとおり、ミルF4に近い個所には、板冷却のための補助的手段として、スプレーノズル付きのヘッダ26および同31・32も配置する。ヘッダ26は、パスラインの下方からスプレー水にて鋼板xを冷却するもので、ワークロール2から下流側に1m程度離れた、鋼板x用のガイドプレート28の位置に設ける。鋼板xが厚い場合に備え、ヘッダ26による冷却水量についても、板幅1mあたり170m3/h以上(300m3/hまで)供給できるようにするのが望ましい。
ミルF4の出側においてパスラインの上方に設置するロール冷却手段と板冷却手段、および各水切り手段は、共通する一体的なフレーム(図示せず)上に取り付ける。具体的には、図1の右方上部に示すノズル付きのヘッダ13(ロール冷却手段)とそのワイパー14、ヘッダ21(板冷却手段)とそのワイパー22(支持フレーム23を含む)およびシリンダ24は、ともに当該フレーム上に取り付ける。そのため、ミルF4において摩耗したロールを交換等するとき、上記の各冷却手段や水切り手段を、当該フレームとともに速やかに退避させることが可能である。
なお、板冷却手段や水切り手段、それらのための上記のフレーム、および板用の補助的冷却手段等については、後段のミルF5・F6においても図示のミルF4におけるのと同じように構成し、それぞれのミルに上記と同様に付設する(図2を参照)。
以上に述べた、ミルF1〜F6を有する図2の圧延機列は、たとえば下記a)・b)のように運転することができる。
a) 細粒鋼でない熱延鋼板xを製造する場合: 各ミルF1〜F6において圧下率が20%程度の圧延を行う。いずれのミルF1〜F6でもロール冷却手段は使用するが、後段のミルF4〜F6が有する板冷却手段(ヘッダ21)は使用しない。すなわち、各ミルF1〜F6において、ワイパー12・14・16・18を閉じた状態でヘッダ11・13・15・17によるスプレー水にてワークロールを冷却するとともに、後段の各ミルF4〜F6においては、ヘッダ21への給水を停止しワイパー22をワークロール1に接触させておく。
b) 細粒鋼熱延鋼板xを製造する場合: 後段のミルF4〜F6での累積歪みが0.6以上(好ましくは0.8以上)になるような高圧下率(各ミルでの圧下率は30%以上)の圧延を行う。いずれのミルF1〜F6でもロール冷却手段を使用し、また後段のミルF4〜F6では板冷却手段(ヘッダ21)を用いて鋼板xを強冷却する。さらに適宜に補助的冷却手段であるヘッダ26およびヘッダ31・32をも使用して、圧延中の鋼板xの温度をAr3変態点付近に保つ。このとき、各ミルF1〜F6においてワークロールを冷却すべく、ワイパー12・14・16・18を閉じた状態でヘッダ11・13・15・17からスプレー水を噴射する一方、板冷却手段をつぎのように操作する。すなわち、ミルF4〜F6のそれぞれにおいて、
i) 鋼板xの先端がワークロールを通過する前にヘッダ21によるスプレー水噴射を開始する、
ii) ワークロールへの通板の際、鋼板xの先端がワイパー22に引っ掛かったりヘッダ21の方へ進入したりするのを防止すべく、ワイパー22の先端縁部をワークロール1の表面に接触させておく、
iii) 鋼板xの先端がワークロールを通過しワイパー22の先端縁部の下をくぐったのちに、当該先端縁部をワークロール1から離し、ヘッダ21のスプレー水が鋼板xに当たるようにする。
i) 鋼板xの先端がワークロールを通過する前にヘッダ21によるスプレー水噴射を開始する、
ii) ワークロールへの通板の際、鋼板xの先端がワイパー22に引っ掛かったりヘッダ21の方へ進入したりするのを防止すべく、ワイパー22の先端縁部をワークロール1の表面に接触させておく、
iii) 鋼板xの先端がワークロールを通過しワイパー22の先端縁部の下をくぐったのちに、当該先端縁部をワークロール1から離し、ヘッダ21のスプレー水が鋼板xに当たるようにする。
板冷却手段であるヘッダ21による冷却能力(またはさらに補助的冷却手段であるヘッダ26・31・32を加えた冷却能力)は、適切に構成されたカーテンウォール型冷却手段の冷却能力に匹敵する(図3を参照)ため、図2の圧延機列によれば鋼板xの温度を適切に保ちながら上記のように大圧下圧延を実施でき、したがって細粒鋼熱延鋼板を円滑に製造できる。したがってたとえば、C(炭素)0.16%、Si(ケイ素)0.35%、Mn(マンガン)1.38%(いずれも重量%)を含む鋼板xについて、粗圧延された厚さ40mmのシートバーに対し上記のような累積歪みとなる圧延をすることにより、平均フェライト粒径が3.2μmで、引張強度が637kg/mm2、降伏点が589kg/mm2、伸びが26%といった機械的性質をもつ厚さ2.0mmの細粒鋼熱延鋼板を、速度7〜9m/secで円滑に製造することが可能である。後段のミルF4〜F6において圧延直後の鋼板xを冷却することから、炭素含有量が0.05%以下の鋼種についても平均フェライト粒径を5μm以下にすることができる。
F1〜F6 ミル(圧延機)
x 鋼板(圧延板)
1・2 ワークロール
11・13・15・17 ヘッダ(ロール冷却手段)
12・14・16・18 ワイパー(ロール冷却手段の水切り手段)
21 ヘッダ(板冷却手段)
22 ワイパー(板冷却手段の水切り手段)
x 鋼板(圧延板)
1・2 ワークロール
11・13・15・17 ヘッダ(ロール冷却手段)
12・14・16・18 ワイパー(ロール冷却手段の水切り手段)
21 ヘッダ(板冷却手段)
22 ワイパー(板冷却手段の水切り手段)
Claims (6)
- 圧延板に接する一対のワークロールが極小径ロールまたは異径ロールであり、各ワークロールの表面にスプレー水を噴射するロール冷却手段と、ワークロールの出側において圧延板表面から圧延板とワークロールとの接点にかけてスプレー水を噴射する板冷却手段とを有し、ワークロールの表面に対し選択的に接触しまたは離れることによって圧延板表面に至る上記スプレー水の流路を遮断しまたは開放する水切り手段を備えることを特徴とする細粒鋼製造用圧延機。
- ロール冷却手段のスプレー水について専用の水切り手段があるとともに板冷却手段のスプレー水についても別の専用の水切り手段があり、後者の水切り手段が、上記のようにワークロールの表面に対し選択的に接触しまたは離れるものであることを特徴とする請求項1に記載の細粒鋼製造用圧延機。
- 板冷却手段が、板幅1mあたり170m3/h以上のスプレー水を圧延板表面に噴射し得るものであることを特徴とする請求項1または2に記載の細粒鋼製造用圧延機。
- 板冷却手段が、上記の水切り手段およびロール冷却手段が取り付けられたフレーム上に取り付けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の細粒鋼製造用圧延機。
- 最終段を含む後段の複数のスタンドに、請求項1〜4のいずれかに記載の圧延機が配置されていることを特徴とする細粒鋼製造用圧延機列。
- 最終段を含む後段の複数のスタンドの各下流側に、圧延板に対する上記板冷却手段以外の冷却手段が配置されていることを特徴とする請求項5に記載の細粒鋼製造用圧延機列。
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