JP4670538B2 - 微細フェライト組織を有する熱延鋼板の製造方法 - Google Patents
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Description
(1)最終パスたる第3圧延(40)まではフェライト変態させず、フェライト変態前のオーステナイトは、極力微細化した上で、且つ転位密度を高める。
(2)第1圧延(20)において、十分にオーステナイトを微細化し、再結晶させる。
(3)第2圧延(30)においては、動的再結晶・静的再結晶が著しく早くなるような超高圧下圧延を避けつつも、十分な圧下率の圧延を行って、歪みを蓄積し、転位密度を高める。
(4)第2圧延(30)と最終パスたる第3圧延(40)とのパス間時間はオーステナイトの再結晶や回復を極力少なくし、歪みの蓄積効果を高めるために、従来圧延方法に比べて短いパス間時間とするとともに、温度を過冷オーステナイト域も含む比較的低い温度とする。
(5)最終パスたる第3圧延(40)においても、十分な圧下率の圧延を行って、歪みを蓄積し、転位密度を高める。このときの出側温度を所定の範囲とする。
(6)第3圧延(40)後は速やかに冷却(50)して、フェライト変態を促進し、フェライト粒成長を抑制する。
ことを本質とする。
(1)質量%でC:0.04〜0.20%、Si:0.01〜2.0%、Mn:0.5〜3.0%を含有し残部はFe及び不可避的不純物よりなる素材鋼板を圧延終了時の組織がオーステナイト単相で平均粒径が30μm以下となるように圧延する第1圧延(20)を含むA工程と、前記第A工程に引き続き圧延機入側温度がAe3変態点以上の温度域で圧下率30〜55%の1パス圧延を行う第2圧延(30)を含むB工程と、前記第B工程の後、圧延機入側温度が(Ae3変態点−60℃)以上(Ae3変態点+20℃)未満の温度域で圧下率35〜60%の1パス圧延を行う第3圧延(40)を含むC工程と、引き続き第3圧延後0.2sec以内に600℃/sec以上の冷却速度で(Ae3変態点−130℃)以下の温度まで冷却するD工程とを備え、前記第3圧延は、該第3圧延の入側温度が(Ae3変態点−60℃)以上(Ae3変態点−30℃)未満ならば、第2圧延後0.6sec以内に、入側温度が(Ae3変態点−30℃)以上(Ae3変態点−5℃)未満ならば、第2圧延後0.5sec以内に、入側温度が(Ae3変態点−5℃)以上(Ae3変態点+20℃)未満ならば、第2圧延後0.3sec以内に行うことを特徴とする熱延鋼板の製造方法。
(2)前記第一圧延(20)は、連続する複数パスの圧延であり、かつ、該第1圧延の入側温度が850℃以上900℃未満であれば総圧下率65%以上、900℃以上950℃未満であれば総圧下率70%以上、950℃以上1000℃未満であれば総圧下率75%以上、1000℃以上であれば総圧下率80%以上であることを特徴とする(1)に記載の熱延鋼板の製造方法。
(3)前記第3圧延(40)の入側温度が(Ae3変態点−60℃)以上(Ae3変態点+20℃)未満となるように、第2圧延(30)と第3圧延の間で鋼板を冷却することを特徴とする(1)または(2)に記載の熱延鋼板の製造方法。
(素材鋼板):質量%で、C:0.04〜0.20%、Si:0.01〜2.0%、Mn:0.5〜3.0%を含有し、残部はFe及び不可避的不純物よりなる。
(A工程):圧延終了時の組織がオーステナイト単相で平均粒径が30μm以下となるように圧延する第1圧延を行う。具体的方法として、連続する複数パスからなる圧延を行い、入側温度が850℃以上900℃未満であれば総圧下率65%以上、900℃以上950℃未満であれば総圧下率70%以上、950℃以上1000℃未満であれば総圧下率75%以上、1000℃以上であれば総圧下率80%以上の圧延を行えばよいが、これに限定されるわけではない。ここで複数パスの入側温度とは、第1圧延として総圧下率を規定するパス群の先頭パスの入側温度を指す。
(B工程):引き続きAe3変態点以上の温度域で、圧下率30〜55%の1パス圧延である第2圧延を行う。
(C工程):第2圧延の後、(Ae3変態点−60℃)以上(Ae3変態点+20℃)未満の温度域で、圧下率35〜60%の1パス圧延を行う第3圧延を行う。その際、第3圧延の入側温度が(Ae3変態点−60℃)以上(Ae3変態点−30℃)未満ならば、第2圧延後0.6sec以内に、入側温度が(Ae3変態点−30℃)以上(Ae3変態点−5℃)未満ならば、第2圧延後0.5sec以内に、入側温度が(Ae3変態点−5℃)以上(Ae3変態点+20℃)未満ならば、第2圧延後0.3sec以内に第3圧延を行う。また、第3圧延の入側温度が(Ae3変態点−60℃)以上(Ae3変態点+20℃)未満となるように、必要に応じ、圧延前に鋼板を冷却する。
(D工程):第3圧延の後、0.2sec以内に600℃/sec以上の冷却速度で(Ae3変態点−130℃)以下の温度まで冷却する。
本発明による素材の成分としては、普通炭素鋼成分でよく、具体的には、質量%でC:0.04〜0.20%、Si:0.01〜2.0%、Mn:0.5〜3.0%を含有し、残部はFe及び不可避的不純物よりなる素材鋼板とされる。
Cは、主に鋼の強度を確保するために必要な元素であるが、多量に含有させると鋼材の溶接性劣化、靱性の著しい低下、プレス成形時の成形性劣化を引き起こす。したがって、本発明の微細フェライト組織を有する熱延鋼板のC含有量は0.20質量%を上限とする。また、C含有量が0.04質量%未満になると結晶粒微細化効果を確保しにくくなるので、C含有量の下限は0.04質量%とする。好ましいC含有量は、 0.07質量%〜0.16質量%である。
Siは、製鋼時の脱酸を行うために必要であり、また鋼板の加工性を高める作用がある合金元素であるが、含有量が2.0質量%を超えると、本発明の微細フェライト組織を有する熱延鋼板としての靭性が損なわれるため、その含有量は2.0質量%を上限とする。一方、含有量が少なすぎると製鋼時の脱酸が十分に行われないので、Si量の下限値は、0.01質量%である。好ましいSi含有量は、0.01質量%〜1.5質量%である。
Mnは、安価な元素であり、鋼の強度を高める効果を有する元素である。またSによる熱間脆性を防ぎ、Ae3変態点を低下させる。Mnの含有量が0.5質量%未満であると、かかる効果を十分に発現することができないのでMn含有量の下限値は0.5質量%である。一方、Mnの含有量が3.0質量%を超えるとかかる効果は飽和し、むしろ、熱延鋼板の加工性を劣化させるとともに、熱延鋼板の表面性状を悪化させるため、好ましくない。したがって、Mnの含有量は3.0質量%以下とする。好ましいMn含有量は、0.5質量%〜2.0質量%である。
上記A工程における第1圧延に連続して、上記圧延により得られた被圧延材に入側温度がAe3変態点以上の温度域で、圧下率30〜55%の1パス圧延を行う(第2圧延)。圧下率がこの範囲より小さいと微細粒が得られない。その理由は明確でないが、圧下率が不十分であると圧下による歪み蓄積が不十分となるためと推察される。また、圧下率がこの範囲より大きくなると圧延負荷が過大となり、設備の巨大化、設備限界の超過、焼き付き発生等の圧延の不安定化、などの問題も生じる。
入側温度をAe3変態点以上の温度域とするのは、第2圧延前の温度がAe3変態点未満となると、被圧延材が過冷オーステナイト域である時間が長くなり、第3圧延に至るまでにフェライト変態してしまうためである。
B工程における1パス圧延(第2圧延)に連続して、第2圧延により得られた被圧延材に
<1> 第3圧延前温度が(Ae3変態点−60℃)以上(Ae3変態点−30℃)未満ならば、第2圧延の後0.6sec以内に、圧下率35〜60%の1パス圧延である第3圧延を行う。
<2> 第3圧延前温度が(Ae3変態点−30℃)以上(Ae3変態点−5℃)未満ならば、第2圧延の後0.5sec以内に、圧下率35〜60%の1パス圧延である第3圧延を行う。
<3> 第3圧延前温度が(Ae3変態点−5℃)以上(Ae3変態点+20℃)未満ならば、第2圧延の後0.3sec以内に、圧下率35〜60%の1パス圧延である第3圧延を行う。
パス間時間は上記の値以上であると結晶粒微細化効果が明らかに低下する。その理由は、B工程における第2圧延とC工程における第3圧延との間のパス間時間が長い程、また第3圧延前温度が高い程、静的再結晶が発生してしまうため、歪みの蓄積が不十分となるためと推察する。第3圧延前温度が低い程、第2圧延〜第3圧延間の時間が長くてもよいのは、温度が低いほど再結晶が抑制されるためと推察する。また、第3圧延前温度を低くし過ぎると第3圧延前のフェライト変態が生じやすくなるため、本発明では(Ae3変態点―60℃)以上とする。本下限温度は正確にはC行程およびその後のD行程で行う冷却に要する時間との関連があると考えられる。結晶粒微細化に効果があると推定している「未再結晶域での歪みを蓄積」を効果的に行うためには、上記<1>、<2>、又は<3>の範囲とする必要がある。
上記C工程における1パス圧延(第3圧延)により得られた被圧延材を、0.2sec以内に600℃/sec以上の冷却速度で、(Ae3変態点−130℃)以下の温度域まで冷却を行う。これにより、平均粒径が2.0μm以下の細粒フェライト組織が60%以上を占める熱延鋼板が得られる。上記条件での冷却を行うことによりオーステナイトの再結晶・回復が抑制され、フェライト変態が促進される。好ましくは、(Ae3変態点−130℃)以下で、(Ae3変態点−200℃)以上の温度域まで冷却をおこなう。
なお、上記D工程において、C工程の第3圧延終了後、冷却の開始までの時間を0.1sec以内とすることが好ましい。さらに冷却速度を900℃/sec以上とすることが望ましい。これらにより、平均粒径が1.5μm以下の細粒フェライト組織が50%以上を占める熱延鋼板を得ることができる。
本発明の微細フェライト組織を有する熱延鋼板を製造する設備は、熱処理設備と、2スタンド以上からなるタンデム圧延設備と、該圧延設備の出側に配置された冷却装置よりなる。圧延設備の各スタンドは所定値以上の圧下率を実現することが必要であり、また第2圧延と第3圧延との間のパス間時間を長くとも0.6秒以内に収めるため、所定の圧延速度を要し、圧延機間の距離は所定値以内に設定することが必要である。また冷却装置はタンデム圧延設備の出側近傍に配置して、第三圧延後の被圧延材を直ちに冷却できるようにすることが必要である。また、第2圧延と第3圧延の間で水冷を行う場合は、水冷ヘッダーを圧延機ハウジング内、あるいはハウジング間に配置することが必要である。
試番17、19、21、および23は第1圧延終了時点でのオーステナイト粒径が、本発明で規定する30μmを超えており、第2、第3圧延における歪みの蓄積が不十分、かつ、フェライト変態の核生成サイトが不十分となり、フェライトの平均粒径が2.0μmを超えるものとなったと考えられる。
具体的には、試番17は、第1圧延の入側温度が850℃以上900℃未満であり、総圧下率が、本発明の規定する「65%以上」に満たない60%であったために、オーステナイト粒径が30μmを超えてしまったものと思われる。
試番19は、第1圧延の入側温度が900℃以上950℃未満であり、総圧下率が、本発明の規定する「70%以上」に満たない68%であったために、オーステナイト粒径が30μmを超えてしまったものと思われる。
試番21と23は、第1圧延の入側温度が950℃以上1000℃未満であり、総圧下率が、それぞれ本発明の規定する「75%以上」に満たない74%と73%であったために、オーステナイト粒径が30μmを超えてしまったものと思われる。
試番10は、B工程の第2圧延における圧下率が、本発明が規定する「30〜55%」に満たない20%であったため、平均粒径が2.0μmを超えるものとなった。圧下率20%の第2圧延によっては、歪みの蓄積、転位の高密度化が十分なものではなかったものと推定される。
試番11は、B工程の第2圧延前温度が、本発明が規定する「Ae3変態点以上」、すなわち830℃に満たない780℃であったため、層状のフェライト組織となった。Ae3変態点以下の過冷状態が長くなり、第3圧延前にフェライト変態が生じたためと思われる。
試番14は、C工程の第3圧延における圧下率が、本発明が規定する「35〜60%」に満たない30%であったため、平均粒径が2.0μmを超えるものとなった。圧下率30%の第3圧延によっては、歪みの蓄積、転位の高密度化が十分なものではなかったものと推定される。
試番1は、C工程において、第3圧延の入側温度が、本発明が規定する「(Ae3変態点−60℃)以上」、すなわち770℃に満たない、750℃であったため、層状のフェライト組織となった。Ae3変態点以下の過冷度が大きくなり、第3圧延前にフェライト変態が生じたためと思われる。
試番3は、第3圧延の入側温度が(Ae3変態点−60℃)以上(Ae3変態点−30℃)未満、具体的には770〜800℃の間の770℃であり、第2圧延後、第3圧延までの間のパス間時間が、本発明が規定する「0.6sec以内」を超える0.8secであったため、平均粒径が2.0μmを超えるものとなった。パス間時間が本発明の規定する時間を超えたため、静的な再結晶が発生して、歪の蓄積が十分ではなかったからであると思われる。
試番5、7は、第3圧延の入側温度が(Ae3変態点−30℃)以上(Ae3変態点−5℃)未満、具体的には800〜825℃の範囲である、800℃、820℃であり、第2圧延後、第3圧延までの間のパス間時間が、本発明が規定する「0.5sec以内」を超える0.7sec、0.6secであったため、平均粒径が2.0μmを超えるものとなった。パス間時間が本発明の規定する時間を超えたため、静的な再結晶が発生して、歪の蓄積が十分ではなかったからであるものと思われる。
試番9は、第3圧延の入側温度が(Ae3変態点−5℃)以上(Ae3変態点+20℃)未満、具体的には825〜850℃の範囲である830℃であり、第2圧延後、第3圧延までの間のパス間時間が、本発明が規定する「0.3sec以内」を超える0.6secであったため、平均粒径が2.0μmを超えるものとなった。パス間時間が本発明の規定する時間を超えたため、静的な再結晶が発生して、歪の蓄積が十分ではなかったからであるものと思われる。
試番12、13は、既存の熱間圧延設備における圧延後冷却設備を想定した試験条件であり、D工程において、C工程の第3圧延後冷却開始までの時間が、本発明が規定する「0.2sec以内」を超える、0.5secであり、かつD工程における冷却速度が、本発明が規定する「600℃/sec以上」に満たない100℃/secであったため、平均粒径が2.0μmを大きく超えて4〜5μmとなった。
試番15は、D工程における冷却速度が、本発明が規定する「600℃/sec以上」に満たない250℃/secであったため、平均粒径が2.0μmを超えるものとなった。この場合、冷却速度が本発明の規定する「600℃/sec以上」に満たなかったため、再結晶、回復の抑制が十分ではなく、フェライト変態の促進が不十分であったためと推定される。
試番16は、D工程における冷却停止温度が、710℃であり、本発明が規定する「(Ae3変態点−130℃)以下」、すなわち本実施例ではAe3変態点が830℃なので、「700℃以下」を超えていた。このため、冷却によるフェライト変態促進が不十分で且つフェライト変態後の粒成長が大きいと考えられ、平均粒径が2.0μmを超えるものとなった。
2 第2スタンド(F2)
3 第3スタンド(F3)
4 供試材
10 3スタンド熱間圧延機
11 加熱炉
12 冷却装置
13 スタンド間水冷ヘッダ
20 第1圧延
30 第2圧延
40 第3圧延
50 冷却
Claims (3)
- 質量%でC:0.04〜0.20%、Si:0.01〜2.0%、Mn:0.5〜3.0%を含有し残部はFe及び不可避的不純物よりなる素材鋼板を圧延終了時の組織がオーステナイト単相で平均粒径が30μm以下となるように圧延する第1圧延を含むA工程と、前記第A工程に引き続き圧延機入側温度がAe3変態点以上の温度域で圧下率30〜55%の1パス圧延を行う第2圧延を含むB工程と、前記第B工程の後、圧延機入側温度が(Ae3変態点−60℃)以上(Ae3変態点+20℃)未満の温度域で圧下率35〜60%の1パス圧延を行う第3圧延を含むC工程と、引き続き第3圧延後0.2sec以内に600℃/sec以上の冷却速度で(Ae3変態点−130℃)以下の温度まで冷却するD工程とを備え、
前記第3圧延は、該第3圧延の入側温度が(Ae3変態点−60℃)以上(Ae3変態点−30℃)未満ならば、第2圧延後0.6sec以内に、入側温度が(Ae3変態点−30℃)以上(Ae3変態点−5℃)未満ならば、第2圧延後0.5sec以内に、入側温度が(Ae3変態点−5℃)以上(Ae3変態点+20℃)未満ならば、第2圧延後0.3sec以内に行うことを特徴とする熱延鋼板の製造方法。 - 前記第一圧延は、連続する複数パスの圧延であり、かつ、該第1圧延の入側温度が850℃以上900℃未満であれば総圧下率65%以上、900℃以上950℃未満であれば総圧下率70%以上、950℃以上1000℃未満であれば総圧下率75%以上、1000℃以上であれば総圧下率80%以上であることを特徴とする請求項1に記載の熱延鋼板の製造方法。
- 前記第3圧延の入側温度が(Ae3変態点−60℃)以上(Ae3変態点+20℃)未満となるように、前記第2圧延と第3圧延の間で鋼板を冷却することを特徴とする請求項1または2記載の熱延鋼板の製造方法。
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