JP4670538B2 - 微細フェライト組織を有する熱延鋼板の製造方法 - Google Patents

微細フェライト組織を有する熱延鋼板の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、炭素鋼のフェライト結晶粒径を微細化する熱延鋼板の製造方法に関する。
フェライト結晶粒の微細化により強度と共に靱性が高められることは知られており、微細フェライト組織を持つ熱延鋼板の製造技術は、鉄鋼材料の材料機能発現のための重要な技術である。また特殊な元素を用いずに強度強化が図れるため、製品のリサイクル性も高く、地球環境に対する負荷も少ない。
微細フェライト組織を持つ熱延鋼板を得る手段として、大歪み加工法が従来から多く研究されている。例えば、特許文献1には、変態域で、1パスまたは累積の大圧下により炭素鋼で粒径3〜5μmの細粒フェライト組織を有する高強度熱延鋼板が得られることが開示されている。
また、特許文献2には、650〜950℃の温度域で、圧下率40%以上で圧下し、更に2秒以内に連続して圧下率40%以上の圧下を加えることにより2〜3μm程度の細粒フェライト組織が得られることが開示されている。
これらはいずれも圧延中のフェライト変態やフェライト再結晶による結晶粒微細化機構を活用するものとされている。
特開昭58−123823号公報 特開昭59−229413号公報
上記公報などによる方法では、2〜3μm程度が細粒化の限界であった。本発明は、従来以上の結晶粒微細化、具体的には平均2μm未満のフェライト結晶粒径を実現するための製造方法を提供することを課題とするものである。
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
本発明は、図1の工程図に概略的に示されるように、熱間加工に適する高温状態にあり、所定の組成を有する素材鋼板を、オーステナイト単相で平均粒径が30μm以下となるように圧延する第1圧延(20)、1パスの第2圧延(30)、その直後に行う第3圧延(40)、及びその直後に行う冷却(50)を含む各工程により処理して、微細フェライト組織を有する熱延鋼板を得るものである。
本発明者らは、短パス間時間で高圧下圧延が可能な多スタンド熱間試験圧延機(10)(図2参照。詳細は後述する。)を用いて実験した結果から、微細結晶粒を得るため有効な下記の条件を見出した。これらの適切な組み合わせにより、従来の方法によるもの以上の結晶粒微細化が得られることを知見し本発明を完成するに至った。これを金属結晶組織に注目して表現すれば、
(1)最終パスたる第3圧延(40)まではフェライト変態させず、フェライト変態前のオーステナイトは、極力微細化した上で、且つ転位密度を高める。
(2)第1圧延(20)において、十分にオーステナイトを微細化し、再結晶させる。
(3)第2圧延(30)においては、動的再結晶・静的再結晶が著しく早くなるような超高圧下圧延を避けつつも、十分な圧下率の圧延を行って、歪みを蓄積し、転位密度を高める。
(4)第2圧延(30)と最終パスたる第3圧延(40)とのパス間時間はオーステナイトの再結晶や回復を極力少なくし、歪みの蓄積効果を高めるために、従来圧延方法に比べて短いパス間時間とするとともに、温度を過冷オーステナイト域も含む比較的低い温度とする。
(5)最終パスたる第3圧延(40)においても、十分な圧下率の圧延を行って、歪みを蓄積し、転位密度を高める。このときの出側温度を所定の範囲とする。
(6)第3圧延(40)後は速やかに冷却(50)して、フェライト変態を促進し、フェライト粒成長を抑制する。
ことを本質とする。
かくして本発明は、微細フェライト組織を有する熱延鋼板の製造方法であって、以下の特徴を有することにより前記課題を解決するものである。
(1)質量%でC:0.04〜0.20%、Si:0.01〜2.0%、Mn:0.5〜3.0%を含有し残部はFe及び不可避的不純物よりなる素材鋼板を圧延終了時の組織がオーステナイト単相で平均粒径が30μm以下となるように圧延する第1圧延(20)を含むA工程と、前記第A工程に引き続き圧延機入側温度がAe3変態点以上の温度域で圧下率30〜55%の1パス圧延を行う第2圧延(30)を含むB工程と、前記第B工程の後、圧延機入側温度が(Ae3変態点−60℃)以上(Ae3変態点+20℃)未満の温度域で圧下率35〜60%の1パス圧延を行う第3圧延(40)を含むC工程と、引き続き第3圧延後0.2sec以内に600℃/sec以上の冷却速度で(Ae3変態点−130℃)以下の温度まで冷却するD工程とを備え、前記第3圧延は、該第3圧延の入側温度が(Ae3変態点−60℃)以上(Ae3変態点−30℃)未満ならば、第2圧延後0.6sec以内に、入側温度が(Ae3変態点−30℃)以上(Ae3変態点−5℃)未満ならば、第2圧延後0.5sec以内に、入側温度が(Ae3変態点−5℃)以上(Ae3変態点+20℃)未満ならば、第2圧延後0.3sec以内に行うことを特徴とする熱延鋼板の製造方法。
(2)前記第一圧延(20)は、連続する複数パスの圧延であり、かつ、該第1圧延の入側温度が850℃以上900℃未満であれば総圧下率65%以上、900℃以上950℃未満であれば総圧下率70%以上、950℃以上1000℃未満であれば総圧下率75%以上、1000℃以上であれば総圧下率80%以上であることを特徴とする(1)に記載の熱延鋼板の製造方法。
(3)前記第3圧延(40)の入側温度が(Ae3変態点−60℃)以上(Ae3変態点+20℃)未満となるように、第2圧延(30)と第3圧延の間で鋼板を冷却することを特徴とする(1)または(2)に記載の熱延鋼板の製造方法。
上記B工程の第2圧延(30)前の板表面温度は、歪み蓄積効果を高める観点から、(Ae3変態点+30℃)未満となることが好ましく、そのために圧延前に鋼板を待機させて空冷によって温度を調整しても良いし、水冷によって温度を調整してもよい。
本発明によれば、汎用的な炭素鋼のフェライト結晶粒径を著しく微細化できる。その効果として、特殊な元素を用いずに強度強化が図れるため、製品のリサイクル性も高く、地球環境に対する負荷を軽減することができる。
以下、本発明について具体的に説明する。本発明は下記の5点により構成され、それらに制約をかけるものである。
(素材鋼板):質量%で、C:0.04〜0.20%、Si:0.01〜2.0%、Mn:0.5〜3.0%を含有し、残部はFe及び不可避的不純物よりなる。
(A工程):圧延終了時の組織がオーステナイト単相で平均粒径が30μm以下となるように圧延する第1圧延を行う。具体的方法として、連続する複数パスからなる圧延を行い、入側温度が850℃以上900℃未満であれば総圧下率65%以上、900℃以上950℃未満であれば総圧下率70%以上、950℃以上1000℃未満であれば総圧下率75%以上、1000℃以上であれば総圧下率80%以上の圧延を行えばよいが、これに限定されるわけではない。ここで複数パスの入側温度とは、第1圧延として総圧下率を規定するパス群の先頭パスの入側温度を指す。
(B工程):引き続きAe3変態点以上の温度域で、圧下率30〜55%の1パス圧延である第2圧延を行う。
(C工程):第2圧延の後、(Ae3変態点−60℃)以上(Ae3変態点+20℃)未満の温度域で、圧下率35〜60%の1パス圧延を行う第3圧延を行う。その際、第3圧延の入側温度が(Ae3変態点−60℃)以上(Ae3変態点−30℃)未満ならば、第2圧延後0.6sec以内に、入側温度が(Ae3変態点−30℃)以上(Ae3変態点−5℃)未満ならば、第2圧延後0.5sec以内に、入側温度が(Ae3変態点−5℃)以上(Ae3変態点+20℃)未満ならば、第2圧延後0.3sec以内に第3圧延を行う。また、第3圧延の入側温度が(Ae3変態点−60℃)以上(Ae3変態点+20℃)未満となるように、必要に応じ、圧延前に鋼板を冷却する。
(D工程):第3圧延の後、0.2sec以内に600℃/sec以上の冷却速度で(Ae3変態点−130℃)以下の温度まで冷却する。
以下、それぞれの項目について詳細に説明する。
(素材鋼板)
本発明による素材の成分としては、普通炭素鋼成分でよく、具体的には、質量%でC:0.04〜0.20%、Si:0.01〜2.0%、Mn:0.5〜3.0%を含有し、残部はFe及び不可避的不純物よりなる素材鋼板とされる。
C:0.04〜0.20質量%
Cは、主に鋼の強度を確保するために必要な元素であるが、多量に含有させると鋼材の溶接性劣化、靱性の著しい低下、プレス成形時の成形性劣化を引き起こす。したがって、本発明の微細フェライト組織を有する熱延鋼板のC含有量は0.20質量%を上限とする。また、C含有量が0.04質量%未満になると結晶粒微細化効果を確保しにくくなるので、C含有量の下限は0.04質量%とする。好ましいC含有量は、 0.07質量%〜0.16質量%である。
Si:0.01〜2.0質量%
Siは、製鋼時の脱酸を行うために必要であり、また鋼板の加工性を高める作用がある合金元素であるが、含有量が2.0質量%を超えると、本発明の微細フェライト組織を有する熱延鋼板としての靭性が損なわれるため、その含有量は2.0質量%を上限とする。一方、含有量が少なすぎると製鋼時の脱酸が十分に行われないので、Si量の下限値は、0.01質量%である。好ましいSi含有量は、0.01質量%〜1.5質量%である。
Mn:0.5〜3.0質量%
Mnは、安価な元素であり、鋼の強度を高める効果を有する元素である。またSによる熱間脆性を防ぎ、Ae3変態点を低下させる。Mnの含有量が0.5質量%未満であると、かかる効果を十分に発現することができないのでMn含有量の下限値は0.5質量%である。一方、Mnの含有量が3.0質量%を超えるとかかる効果は飽和し、むしろ、熱延鋼板の加工性を劣化させるとともに、熱延鋼板の表面性状を悪化させるため、好ましくない。したがって、Mnの含有量は3.0質量%以下とする。好ましいMn含有量は、0.5質量%〜2.0質量%である。
素材鋼板は、鋳造材ままでもよいが、鋳造時の内部欠陥の低減やオーステナイト径の微小化のために、1回以上の熱間加工を施しておき、粒径600μm以下のオーステナイト組織を得ておくことが好ましい。具体的には、連続鋳造−熱間圧延プロセスにおいては1パス以上の粗圧延を終えた状態であればよい。本発明に関わる基礎実験においては、結晶粒径が約30μmのフェライト組織を有する素材を、下記A工程に入る前に所定温度(例えば1000〜1200℃)にて所定時間(例えば1〜2時間)保持し、オーステナイト粒径を30〜600μmとして実験を行った。
(A工程)
圧延終了時の組織がオーステナイト単相で平均粒径が30μm以下となるように、上記素材を圧延する第1圧延を行う。この時点でフェライト組織が混在すると、後工程の圧延で伸ばされ、最終的に加工組織のまま残ってしまうため、鋼板の機械特性上好ましくない。オーステナイト粒径が小さく単位体積当たりの粒界面積が大きいほど、後工程の第2、第3圧延において効率良く歪みが蓄積され、更にその後のフェライト変態の際に変態の核生成サイトが増して、フェライト粒の微細化に寄与するものと考えられる。
オーステナイト粒径を30μm以下にするために、具体的には、連続する複数パスからなる圧延を行い、入側温度が850℃以上900℃未満であれば総圧下率65%以上、900℃以上950℃未満であれば総圧下率70%以上、950℃以上1000℃未満であれば総圧下率75%以上、1000℃以上であれば総圧下率80%以上の圧延を行えばよい。
本発明に関わる基礎実験において、パス数を2〜4パス、総圧下率を60〜80%、圧延前温度を830℃〜1050℃として、圧延終了後に圧延材を組織凍結し、オーステナイト粒径を計測した結果、上記の温度および総圧下率条件に含まれていればオーステナイト平均粒径は30μm以下となることが確認できた。
オーステナイト平均粒径を30μm以下にする条件は本条件に限定されるわけではないが、パス数1の圧延では1パス超大圧下圧延が必要となり圧延負荷が過大となるため、好ましくない。圧下率を限定してパス数を増やしすぎると1パスあたりの圧下率が低下しオーステナイト粒の再結晶による微細化効果を得にくくなるため、好ましくない。1パスあたりの圧下率としては27%以上であることが好ましい。
なお、本発明では、第一圧延前の素材に圧延を施してもよいため、鋳造状態からの圧延の総パス数を限定するものではない。また、上記第1圧延の後、短時間の内にB工程の第2圧延を行っても差し支えないが、反対に第2圧延までが長時間になると、オーステナイト粒が成長するため好ましくない。基礎実験において全行程を連続して行う場合には、第1圧延の最終パス終了後1〜10sec程度の内に第2圧延を行ったが、この範囲であれば最終的に得られたフェライト組織に大きな違いは見られなかった。
(B工程)
上記A工程における第1圧延に連続して、上記圧延により得られた被圧延材に入側温度がAe3変態点以上の温度域で、圧下率30〜55%の1パス圧延を行う(第2圧延)。圧下率がこの範囲より小さいと微細粒が得られない。その理由は明確でないが、圧下率が不十分であると圧下による歪み蓄積が不十分となるためと推察される。また、圧下率がこの範囲より大きくなると圧延負荷が過大となり、設備の巨大化、設備限界の超過、焼き付き発生等の圧延の不安定化、などの問題も生じる。
入側温度をAe3変態点以上の温度域とするのは、第2圧延前の温度がAe3変態点未満となると、被圧延材が過冷オーステナイト域である時間が長くなり、第3圧延に至るまでにフェライト変態してしまうためである。
また第2圧延前の温度が高すぎると、再結晶や回復が発生し易くなり、微細粒フェライトを得にくくなるため、(Ae3変態点+30℃)未満とすることが好ましい。
第2圧延前温度の調整は空冷・待機時間の変更で調整可能である。また温度を大きく下げる必要がある場合は水冷を行ってもよい。
(C工程)
B工程における1パス圧延(第2圧延)に連続して、第2圧延により得られた被圧延材に
<1> 第3圧延前温度が(Ae3変態点−60℃)以上(Ae3変態点−30℃)未満ならば、第2圧延の後0.6sec以内に、圧下率35〜60%の1パス圧延である第3圧延を行う。
<2> 第3圧延前温度が(Ae3変態点−30℃)以上(Ae3変態点−5℃)未満ならば、第2圧延の後0.5sec以内に、圧下率35〜60%の1パス圧延である第3圧延を行う。
<3> 第3圧延前温度が(Ae3変態点−5℃)以上(Ae3変態点+20℃)未満ならば、第2圧延の後0.3sec以内に、圧下率35〜60%の1パス圧延である第3圧延を行う。
歪みの蓄積効果を高めるには第2圧延と第3圧延の間隔、すなわちパス間時間は極力短い方が良いが、パス間時間の短縮には、圧延機群の設置空間や圧延速度の点で制約がある。
パス間時間は上記の値以上であると結晶粒微細化効果が明らかに低下する。その理由は、B工程における第2圧延とC工程における第3圧延との間のパス間時間が長い程、また第3圧延前温度が高い程、静的再結晶が発生してしまうため、歪みの蓄積が不十分となるためと推察する。第3圧延前温度が低い程、第2圧延〜第3圧延間の時間が長くてもよいのは、温度が低いほど再結晶が抑制されるためと推察する。また、第3圧延前温度を低くし過ぎると第3圧延前のフェライト変態が生じやすくなるため、本発明では(Ae3変態点―60℃)以上とする。本下限温度は正確にはC行程およびその後のD行程で行う冷却に要する時間との関連があると考えられる。結晶粒微細化に効果があると推定している「未再結晶域での歪みを蓄積」を効果的に行うためには、上記<1>、<2>、又は<3>の範囲とする必要がある。
また、上記C工程の第3圧延前の温度が(Ae3変態点−60℃)以上(Ae3変態点+20℃)未満となるように制御する手段としては、第2圧延における発熱、昇温を予測し、圧延後の温度が上記温度域となるように第2圧延前の温度を調整することが考えられるが、第2圧延前温度は圧延前の変態を避けるためAe3変態点以上とする制約がある。一方、第2圧延における昇温を抑制する手段として第2圧延の速度を下げてロール抜熱量を増やす方法などもあるが、第3圧延までのパス間時間を短くする必要から圧延速度低減には限界があり、圧延後温度を調整しきれないこともある。そこで、第2圧延以降第3圧延までの間で鋼板を冷却する手段が求められる。設備配置の自由度を高める観点から、短い距離で大きな温度降下量が得られる急速冷却装置の使用が望ましく、例えば10℃の温度降下が必要であれば、長くても0.6secのパス間時間内で冷却するために17℃/sec以上の冷却速度が必要となる。パス間での再結晶や回復を極力少なくし歪みの蓄積効果を高めるという視点から言えば、パス間冷却による温度調整は極力第2圧延後短時間の内に完了する方が良く、より大きな冷却速度を有する冷却手段を用いて第2圧延直後に冷却を完了するのが望ましい。
本発明における実施例においては、第2圧延後0.2sec以内から150℃/sec以上の冷却速度にて冷却を実施した。
第3圧延の圧下率が35%未満では歪みの蓄積が不足し、その後の冷却過程でのフェライト変態を促進する効果が不十分である。一方第3圧延の圧下率が60%を超えると、加工中の再結晶・変態の発生、その後の冷却に影響を与える程の加工発熱が生じるため、結晶粒の微細化効果が薄れる。また、圧延負荷が過大となり、設備の巨大化、設備限界の超過、圧延の不安定化、などの問題も生じる。
(D工程)
上記C工程における1パス圧延(第3圧延)により得られた被圧延材を、0.2sec以内に600℃/sec以上の冷却速度で、(Ae3変態点−130℃)以下の温度域まで冷却を行う。これにより、平均粒径が2.0μm以下の細粒フェライト組織が60%以上を占める熱延鋼板が得られる。上記条件での冷却を行うことによりオーステナイトの再結晶・回復が抑制され、フェライト変態が促進される。好ましくは、(Ae3変態点−130℃)以下で、(Ae3変態点−200℃)以上の温度域まで冷却をおこなう。
なお、上記D工程において、C工程の第3圧延終了後、冷却の開始までの時間を0.1sec以内とすることが好ましい。さらに冷却速度を900℃/sec以上とすることが望ましい。これらにより、平均粒径が1.5μm以下の細粒フェライト組織が50%以上を占める熱延鋼板を得ることができる。
(製造設備)
本発明の微細フェライト組織を有する熱延鋼板を製造する設備は、熱処理設備と、2スタンド以上からなるタンデム圧延設備と、該圧延設備の出側に配置された冷却装置よりなる。圧延設備の各スタンドは所定値以上の圧下率を実現することが必要であり、また第2圧延と第3圧延との間のパス間時間を長くとも0.6秒以内に収めるため、所定の圧延速度を要し、圧延機間の距離は所定値以内に設定することが必要である。また冷却装置はタンデム圧延設備の出側近傍に配置して、第三圧延後の被圧延材を直ちに冷却できるようにすることが必要である。また、第2圧延と第3圧延の間で水冷を行う場合は、水冷ヘッダーを圧延機ハウジング内、あるいはハウジング間に配置することが必要である。
表1に示す成分に調整した素材を、幅100mm、長さ70〜200mmの切り板に切断して供試材とした。この供試材を炉内温度1000℃の加熱炉中に1時間保持した後、熱間圧延・冷却を実施した。なお、表中に記載のとおり、本供試材のAe3変態点は、830℃である。また、Ae3変態点とは鋼がオーステナイト域である温度からフェライト変態を開始する熱的平衡温度である。
Figure 0004670538
熱間圧延は図2に示すような、加熱炉11に引き続き配置される3スタンド熱間圧延機10を製作して使用した。第1スタンド(F1)1と第2スタンド(F2)2との間の距離は、2.1m、第2スタンド(F2)2と第3スタンド(F3)3との間の距離は1.0mであり、パス間時間が0.6秒以下の圧延が可能である。なお、第2スタンド(F2)2と第3スタンド(F3)3との間に、スタンド間水冷ヘッダ13を配設した。各圧延スタンドの圧下率は、40%以上取れるようにした。加熱炉11から各スタンド1〜3を通過した供試材4は冷却装置12に導かれる。圧延機仕様及び圧延条件を表2に示す。
Figure 0004670538
表2に示されているように、供試材4は、第1スタンド(F1)1において、70〜80%の総圧下率となるように4〜5パスの圧延を行なった。その後、第2スタンド(F2)2と第3スタンド(F3)3とにより、第2圧延、第3圧延をそれぞれ実施した。
熱間圧延・冷却後の各供試材の結晶粒平均粒径、及びフェライト分率を、第1〜3圧延の圧延条件、冷却条件と共に表3に示す。なお、結晶粒の平均粒径の測定は、ASTM切断法により行った。
第1圧延後のγ粒径は第1圧延後、試片を室温まで急冷し、組織観察によりオーステナイト粒径を計測した。
同一試番で整理しているが、工程の最後まで連続して行うものと、工程の途中で組織観察を行うなど、ひとつの試番のデータを取るために複数の試験を行った。
Figure 0004670538
表3において、本発明が規定する範囲からはずれる試番1、3、5、7、9〜17、19、21、および23は、熱間圧延・冷却後の平均フェライト粒径が2.0μmを超えるものであるか、あるいは典型的な圧延組織である層状のフェライト組織であった。
試番17、19、21、および23は第1圧延終了時点でのオーステナイト粒径が、本発明で規定する30μmを超えており、第2、第3圧延における歪みの蓄積が不十分、かつ、フェライト変態の核生成サイトが不十分となり、フェライトの平均粒径が2.0μmを超えるものとなったと考えられる。
具体的には、試番17は、第1圧延の入側温度が850℃以上900℃未満であり、総圧下率が、本発明の規定する「65%以上」に満たない60%であったために、オーステナイト粒径が30μmを超えてしまったものと思われる。
試番19は、第1圧延の入側温度が900℃以上950℃未満であり、総圧下率が、本発明の規定する「70%以上」に満たない68%であったために、オーステナイト粒径が30μmを超えてしまったものと思われる。
試番21と23は、第1圧延の入側温度が950℃以上1000℃未満であり、総圧下率が、それぞれ本発明の規定する「75%以上」に満たない74%と73%であったために、オーステナイト粒径が30μmを超えてしまったものと思われる。
試番10は、B工程の第2圧延における圧下率が、本発明が規定する「30〜55%」に満たない20%であったため、平均粒径が2.0μmを超えるものとなった。圧下率20%の第2圧延によっては、歪みの蓄積、転位の高密度化が十分なものではなかったものと推定される。
試番11は、B工程の第2圧延前温度が、本発明が規定する「Ae3変態点以上」、すなわち830℃に満たない780℃であったため、層状のフェライト組織となった。Ae3変態点以下の過冷状態が長くなり、第3圧延前にフェライト変態が生じたためと思われる。
試番14は、C工程の第3圧延における圧下率が、本発明が規定する「35〜60%」に満たない30%であったため、平均粒径が2.0μmを超えるものとなった。圧下率30%の第3圧延によっては、歪みの蓄積、転位の高密度化が十分なものではなかったものと推定される。
試番1は、C工程において、第3圧延の入側温度が、本発明が規定する「(Ae3変態点−60℃)以上」、すなわち770℃に満たない、750℃であったため、層状のフェライト組織となった。Ae3変態点以下の過冷度が大きくなり、第3圧延前にフェライト変態が生じたためと思われる。
試番3は、第3圧延の入側温度が(Ae3変態点−60℃)以上(Ae3変態点−30℃)未満、具体的には770〜800℃の間の770℃であり、第2圧延後、第3圧延までの間のパス間時間が、本発明が規定する「0.6sec以内」を超える0.8secであったため、平均粒径が2.0μmを超えるものとなった。パス間時間が本発明の規定する時間を超えたため、静的な再結晶が発生して、歪の蓄積が十分ではなかったからであると思われる。
試番5、7は、第3圧延の入側温度が(Ae3変態点−30℃)以上(Ae3変態点−5℃)未満、具体的には800〜825℃の範囲である、800℃、820℃であり、第2圧延後、第3圧延までの間のパス間時間が、本発明が規定する「0.5sec以内」を超える0.7sec、0.6secであったため、平均粒径が2.0μmを超えるものとなった。パス間時間が本発明の規定する時間を超えたため、静的な再結晶が発生して、歪の蓄積が十分ではなかったからであるものと思われる。
試番9は、第3圧延の入側温度が(Ae3変態点−5℃)以上(Ae3変態点+20℃)未満、具体的には825〜850℃の範囲である830℃であり、第2圧延後、第3圧延までの間のパス間時間が、本発明が規定する「0.3sec以内」を超える0.6secであったため、平均粒径が2.0μmを超えるものとなった。パス間時間が本発明の規定する時間を超えたため、静的な再結晶が発生して、歪の蓄積が十分ではなかったからであるものと思われる。
試番12、13は、既存の熱間圧延設備における圧延後冷却設備を想定した試験条件であり、D工程において、C工程の第3圧延後冷却開始までの時間が、本発明が規定する「0.2sec以内」を超える、0.5secであり、かつD工程における冷却速度が、本発明が規定する「600℃/sec以上」に満たない100℃/secであったため、平均粒径が2.0μmを大きく超えて4〜5μmとなった。
試番15は、D工程における冷却速度が、本発明が規定する「600℃/sec以上」に満たない250℃/secであったため、平均粒径が2.0μmを超えるものとなった。この場合、冷却速度が本発明の規定する「600℃/sec以上」に満たなかったため、再結晶、回復の抑制が十分ではなく、フェライト変態の促進が不十分であったためと推定される。
試番16は、D工程における冷却停止温度が、710℃であり、本発明が規定する「(Ae3変態点−130℃)以下」、すなわち本実施例ではAe3変態点が830℃なので、「700℃以下」を超えていた。このため、冷却によるフェライト変態促進が不十分で且つフェライト変態後の粒成長が大きいと考えられ、平均粒径が2.0μmを超えるものとなった。
本発明で規定する範囲で熱間圧延、冷却が行われた試番2、4、6、8、18、20、22及び24にあっては、製造後の平均粒径が2.0μm未満の層状でない細粒フェライト組織が主体となる熱延鋼板が得られた。
本発明の製造方法の工程を示す図である。 実施例に使用した熱間圧延機等の設備を示す図である。
符号の説明
1 第1スタンド(F1)
2 第2スタンド(F2)
3 第3スタンド(F3)
4 供試材
10 3スタンド熱間圧延機
11 加熱炉
12 冷却装置
13 スタンド間水冷ヘッダ
20 第1圧延
30 第2圧延
40 第3圧延
50 冷却

Claims (3)

  1. 質量%でC:0.04〜0.20%、Si:0.01〜2.0%、Mn:0.5〜3.0%を含有し残部はFe及び不可避的不純物よりなる素材鋼板を圧延終了時の組織がオーステナイト単相で平均粒径が30μm以下となるように圧延する第1圧延を含むA工程と、前記第A工程に引き続き圧延機入側温度がAe3変態点以上の温度域で圧下率30〜55%の1パス圧延を行う第2圧延を含むB工程と、前記第B工程の後、圧延機入側温度が(Ae3変態点−60℃)以上(Ae3変態点+20℃)未満の温度域で圧下率35〜60%の1パス圧延を行う第3圧延を含むC工程と、引き続き第3圧延後0.2sec以内に600℃/sec以上の冷却速度で(Ae3変態点−130℃)以下の温度まで冷却するD工程とを備え、
    前記第3圧延は、該第3圧延の入側温度が(Ae3変態点−60℃)以上(Ae3変態点−30℃)未満ならば、第2圧延後0.6sec以内に、入側温度が(Ae3変態点−30℃)以上(Ae3変態点−5℃)未満ならば、第2圧延後0.5sec以内に、入側温度が(Ae3変態点−5℃)以上(Ae3変態点+20℃)未満ならば、第2圧延後0.3sec以内に行うことを特徴とする熱延鋼板の製造方法。
  2. 前記第一圧延は、連続する複数パスの圧延であり、かつ、該第1圧延の入側温度が850℃以上900℃未満であれば総圧下率65%以上、900℃以上950℃未満であれば総圧下率70%以上、950℃以上1000℃未満であれば総圧下率75%以上、1000℃以上であれば総圧下率80%以上であることを特徴とする請求項1に記載の熱延鋼板の製造方法。
  3. 前記第3圧延の入側温度が(Ae3変態点−60℃)以上(Ae3変態点+20℃)未満となるように、前記第2圧延と第3圧延の間で鋼板を冷却することを特徴とする請求項1または2記載の熱延鋼板の製造方法。
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