JP7256383B2 - 熱延鋼板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、熱延鋼板の製造方法に関し、より詳しくは連続鋳造機において鋳造された薄スラブを熱間圧延機に直送して熱間圧延するための連続鋳造-直送圧延設備を用いた無変態組織を有する熱延鋼板の製造方法に関する。
近年、設備費や操業コストを抑えることを目的として、従来のスラブよりも薄いスラブを製造するための薄スラブ連続鋳造機と、当該薄スラブを熱間圧延するための圧延設備とを組み合わせた薄スラブ鋳造圧延(TSCR:Thin Slab Casting and Rolling)プロセスが広く採用されている。このTSCRプロセスは、連続鋳造と熱間圧延を直結した連続鋳造-直送圧延設備で行われるものであって従来のプロセスに比べてコンパクトであり、また、連続鋳造において鋳造された薄スラブを切断することなくそのまま圧延することでエンドレス圧延を行うことができる。したがって、TSCRプロセスでは、薄手鋼板を安定的に製造することが可能であり、寸法、形状及び特性などについても全長にわたって均一な品質を実現することが可能である。加えて、TSCRプロセスでは、従来のプロセスに比べて低コストで製品を製造できることなどから、当該TSCRプロセスを利用した鋼板の製造についてこれまで多くの検討がなされている(例えば、特許文献1~3を参照)。
特許第2726919号公報 特許第5646643号公報 特表2009-540113号公報
一般的に、鉄鋼材料は、その組織が高温域でオーステナイト(γ)相、低温域でフェライト(α)相となるものが多いものの、高合金鋼板やフェライト系ステンレス鋼板などに代表される成分系では、全温度域、より具体的にはその成分系の融点から常温(25℃)までの温度域にわたってα相が安定であることが知られている。このような高温から低温にかけて安定な相が1つであるような成分系は一般に無変態系と称される。ここで、このような無変態系の鋼材を、先に述べたTSCRプロセスを利用して製造しようとすると、製品の板表面にリジングと呼ばれる凹凸模様の表面欠陥が発生する場合がある。
より詳しく説明すると、無変態系である高合金鋼やフェライト系ステンレス鋼では、変態系である一般的な鋼に比べて鋳造時に形成される組織、具体的にはフェライト組織が変態を伴わないために粗大になる傾向がある。このため、このような粗大組織、例えば、結晶粒径が数mmから数十mm程度にもなる場合がある粗大組織をその後の熱間圧延によって微細化することは一般に難しく、その結果としてリジングが発生するものと考えられている。一方で、TSCRプロセスでは、従来のプロセスと比較してスラブ厚さが薄いために、熱間圧延において十分な圧下比(スラブ厚/製品厚)を取ることができない。したがって、TSCRプロセスを利用して無変態組織を有する鋼板を製造する場合には、鋳造時に形成される粗大組織をその後の熱間圧延によって十分に微細化することができないために、リジングのような表面欠陥の発生を抑制することが極めて難しいという問題がある。
そこで、本発明は、新規な構成により、TSCRプロセスを利用して表面性状が改善された無変態組織を有する熱延鋼板を製造するための方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成する本発明は下記のとおりである。
(1)連続鋳造と熱間圧延が直結された連続鋳造-直送圧延設備を用いた無変態組織を有する熱延鋼板の製造方法であって、
50~150mmの厚さを有するスラブを連続鋳造する鋳造工程、及び
鋳造されたスラブを切断することなしに粗圧延し、次いで仕上げ圧延する熱間圧延工程
を含み、前記粗圧延の第1パスにおいて、前記スラブの板厚中心温度が1000℃以上の条件下で圧延を実施して動的再結晶を発現させることを特徴とする、熱延鋼板の製造方法。
(2)前記熱延鋼板がフェライト系ステンレス鋼板用の熱延鋼板であり、前記粗圧延の第1パスにおいて、前記スラブの板厚中心温度が1150℃以上であり、ひずみ量が0.40以上であり、かつひずみ速度が4.00/s以下である条件下で圧延を実施することを特徴とする、上記(1)に記載の熱延鋼板の製造方法。
(3)前記熱延鋼板が、質量%で、C:0.100%以下、Si:2.00%以下、Mn:2.00%以下、P:0.100%以下、S:0.010%以下、Cr:8.0~40.0%、Mo:5.00%以下、Ni:5.00%以下、Cu:3.00%以下、Al:5.00%以下、N:0.030%以下、Ti:0~1.000%、Nb:0~1.000%、Sn:0~0.500%、及びB:0~0.0030%を含有し、残部がFe及び不純物からなることを特徴とする、上記(2)に記載の熱延鋼板の製造方法。
(4)前記熱延鋼板が高合金鋼板用の熱延鋼板であり、前記粗圧延の第1パスにおいて、前記スラブの板厚中心温度が1100℃以上であり、ひずみ量が0.40以上であり、かつひずみ速度が4.50/s以下である条件下で圧延を実施することを特徴とする、上記(1)に記載の熱延鋼板の製造方法。
(5)前記熱延鋼板が、質量%で、C:0.050%以下、Si:1.00~7.00%、Mn:2.000%以下、P:0.100%以下、S:0.010%以下、及びAl:5.00%以下を含有し、残部がFe及び不純物からなることを特徴とする、上記(4)に記載の熱延鋼板の製造方法。
(6)前記粗圧延の第1パスにおける圧延形状比が4.00以下であることを特徴とする、上記(1)~(5)のいずれか1項に記載の熱延鋼板の製造方法。
本発明の熱延鋼板の製造方法によれば、連続鋳造直後(すなわちスラブの厚み中心部が凝固した直後)の高温下でかつスラブの搬送速度が十分に遅い(すなわち圧延速度が十分に遅い)粗圧延の第1パスにおいて適切な圧延を実施して動的再結晶を発現させることにより鋼中の粗大組織を微細化することができ、その結果として最終的に得られる熱延鋼板においてリジングの発生を顕著に抑制することができるので、無変態組織を有する熱延鋼板であっても、表面性状を確実に改善することが可能である。
牧正志ら,「動的再結晶の組織的特徴および静的再結晶との比較」,鉄と鋼,第70年(1984年)第15号,pp.283-290から抜粋した動的再結晶粒径とZパラメータ(Zener-Hollomonパラメータ)の関係を示すグラフである。 牧正志ら,「動的再結晶の組織的特徴および静的再結晶との比較」,鉄と鋼,第70年(1984年)第15号,pp.283-290から抜粋した動的再結晶に関するZパラメータ(Zener-Hollomonパラメータ)の影響を示すグラフである。 本発明に係る連続鋳造-直送圧延設備の1つの実施形態を説明する模式図である。
<熱延鋼板の製造方法>
本発明の実施形態に係る連続鋳造と熱間圧延が直結された連続鋳造-直送圧延設備を用いた無変態組織を有する熱延鋼板の製造方法は、
50~150mmの厚さを有するスラブを連続鋳造する鋳造工程、及び
鋳造されたスラブを切断することなしに粗圧延し、次いで仕上げ圧延する熱間圧延工程
を含み、前記粗圧延の第1パスにおいて、前記スラブの板厚中心温度が1000℃以上の条件下で圧延を実施して動的再結晶を発現させることを特徴としている。
ここで、本発明において「無変態組織を有する熱延鋼板又は鋼」とは、その融点から常温(25℃)までの温度域で組織が変態しない熱延鋼板又は鋼を言うものである。
先に述べたとおり、TSCRプロセスを利用して無変態組織を有する熱延鋼板を製造する場合には、鋳造時に形成される粗大組織をその後の熱間圧延によって十分に微細化することができないために、リジングのような表面欠陥の発生を抑制することが極めて難しいという問題がある。従来の熱間圧延ラインでは、リジング対策として、例えば、粗圧延において粗大組織を再結晶により微細化することが行われている。例えば、特公昭56-43091号公報では、粗圧延の最終パスを900℃以上でかつ50~70%の強圧下圧延で終了することにより、粗大組織を微細に再結晶化することが提案されている。また、TSCRプロセスにおいても、例えば、特許第5646643号公報では、連続鋳造後の粗圧延段階において、第1の圧延スタンド及び第2の圧延スタンドにおける圧下率を調整することで、粗圧延と仕上げ圧延の間で再結晶を促進することが提案されている。
従来技術において提案される上記の再結晶及びそれによる組織の微細化は、圧延加工によってひずみを導入した後に再結晶させるもの及びそれによって組織を微細化するものであり、このようにひずみを導入した後に生じる再結晶は一般に静的再結晶と呼ばれる。静的再結晶は、結晶粒を微細化するために従来から利用されている現象ではあるものの、当該静的再結晶は、結晶粒の初期粒径が大きいほど再結晶し難くなることに加えて、再結晶後の粒径も大きくなることが一般に知られている。一方で、上記のとおり、TSCRプロセスでは、従来のプロセスと比較してスラブ厚さが薄いために、熱間圧延において十分な圧下比(スラブ厚/製品厚)を取ることができない。したがって、たとえ従来技術において提案される静的再結晶をTSCRプロセスにおいて適用したとしても、無変態組織を有する鋼を鋳造する際に形成される粗大組織、例えば結晶粒径が数十mmにも及ぶ場合がある粗大組織を効率よく微細化して、リジングの発生が十分に又は完全に抑制された表面性状に優れる熱延鋼板を製造することは非常に困難である。
そこで、本発明者らは、静的再結晶による組織の微細化ではなく、圧延加工中に再結晶が生じるいわゆる動的再結晶によって組織を微細化することに着目し、連続鋳造-直送圧延設備を用いた熱延鋼板の製造においてリジングの発生を抑制して優れた表面性状を達成するための圧延条件等について検討を行った。その結果として、本発明者らは、連続鋳造-直送圧延設備で行われる粗圧延において、スラブ温度が比較的高い条件下で適切な圧延を実施して動的再結晶を発現させることにより鋼中の粗大組織を微細化することができ、その結果として最終的に得られる熱延鋼板においてリジングの発生を顕著に抑制することができることを見出した。
より詳しく説明すると、まず第一に、本発明において、動的再結晶とは、圧延加工中に起こる再結晶を言うものであり、圧延加工後の無荷重下で起こる静的再結晶とは現象的に明確に区別されるものである。ここで、動的再結晶は、一般的に低温かつ高ひずみ速度の加工又は高温かつ低ひずみ速度の加工ほど起きやすく、また、動的再結晶後の結晶粒径Ddrxは下記式(1)によって表されることが一般に知られている。
drx=AZ-B ・・・(1)
式中、ZはZener-Hollomonパラメータであり、A及びBは定数である。一方で、上記式(1)中のZパラメータは、下記式(2)によって表されることが一般に知られている。
Z=εドットexp(Q/RT) ・・・(2)
式中、εドットはひずみ速度(/s)であり、Qは活性化エネルギー(J/mol)、Rは気体定数(J/K・mol)であり、Tは加工温度(K)である。
上記式(1)及び(2)から明らかなように、さらには図1(牧正志ら,「動的再結晶の組織的特徴および静的再結晶との比較」,鉄と鋼,第70年(1984年)第15号,pp.283-290から抜粋)において明確に示されるように、動的再結晶後の結晶粒径Ddrxは、Zパラメータのみによって一義的に決まり、すなわちひずみ速度εドットと加工温度Tのみによって一義的に決まり、動的再結晶前の初期粒径には依存しないことがわかる。したがって、静的再結晶を利用した場合には、先に述べたとおり、結晶粒の初期粒径が大きいほど再結晶後の粒径も大きくなり、すなわち結晶粒の初期粒径が大きいほど再結晶による微細化が難しくなるのに対し、動的再結晶を利用した場合には、結晶粒の初期粒径に関係なくひずみ速度εドットと加工温度Tのみによって動的再結晶後の結晶粒径を決定することが可能である。このため、無変態組織を有する鋼を鋳造する際に形成される粗大組織であっても、動的再結晶を利用することで効率よく微細化することが可能となる。
式(1)及び図1から明らかなように、Zが大きいほど(すなわち低加工温度かつ高ひずみ速度ほど)、動的再結晶後の結晶粒径は小さくなり、このような高ひずみ速度を得るのに必要なひずみ量は当然ながら大きくなる。一方で、Zが小さいほど(すなわち高加工温度かつ低ひずみ速度ほど)、動的再結晶後の結晶粒径は大きくなり、このような低ひずみ速度を得るのに必要なひずみ量は小さくなる。このため、結晶粒をより微細化するという観点からは、Zが大きいほど好ましいと言えるものの、そのためには高ひずみ速度及び高ひずみ量の圧延加工を行う必要がある。しかしながら、この場合には、圧延機にかかる負荷が非常に大きくなり、また制御も難しくなるため、このような圧延加工は、低コストで安定な操業を行うという観点からは実現することが極めて困難といえる。
一方で、無変態組織を有する鋼を鋳造する際に形成される粗大組織は、上記のとおり、結晶粒径が数mmから数十mm程度にもなるものであり、このような結晶粒径を有する粗大組織を粗圧延においてある程度、例えば数百μm程度まで微細化することができれば、その後は以降の圧延等によってさらなる微細化を図ることが可能である。図1において示される動的再結晶粒径とZパラメータの関係からも明らかなように、動的再結晶後の結晶粒径が数百μm程度までの微細化であれば、Zの値が比較的小さい範囲における動的再結晶であっても十分に達成することが可能であると予想される。
そこで、本発明者らは、連続鋳造-直送圧延設備を用いた熱延鋼板の製造において、圧延加工によってZの値が比較的小さい範囲、すなわち高加工温度でかつ低ひずみ速度の範囲における動的再結晶を発現させるための条件について検討し、高加工温度でかつ低ひずみ速度を満足する条件、より具体的には連続鋳造直後(すなわちスラブの厚み中心部が凝固した直後)の高温下でかつスラブの搬送速度が十分に遅い(すなわち圧延速度が十分に遅い)粗圧延の第1パスにおいて適切な圧延を実施して動的再結晶を発現させることにより鋼中の粗大組織を微細化することができ、その結果として最終的に得られる熱延鋼板においてリジングの発生を顕著に抑制することができることを見出した。
本発明において、動的再結晶を発現しているか否かは、応力-ひずみ曲線における応力の挙動から判断することが可能である。図2(牧正志ら,「動的再結晶の組織的特徴および静的再結晶との比較」,鉄と鋼,第70年(1984年)第15号,pp.283-290から抜粋)を参照してより詳しく説明すると、まず、図2には、比較的大きいZパラメータに関する応力-ひずみ曲線(図2中の上側の応力-ひずみ曲線)と比較的小さいZパラメータに関する応力-ひずみ曲線(図2中の下側の応力-ひずみ曲線)が描かれていることがわかる。両方の曲線について、当初は鋼材に導入されるひずみ量を大きくするにつれて、転位密度が増加して加工硬化が生じるため、応力が次第に上昇する。しかしながら、図中のε1(動的再結晶の開始点)で示されるひずみ量を超えると直ぐに極大応力を示した後、動的回復、動的再結晶が生じて軟化しそして応力が低下する。その後は、ひずみ量を増加しても応力は変動せず一定の値(図2中のεs点に対応する応力値)を示す。動的再結晶が生じる条件の場合には、加工によって導入された転位やひずみが当該加工中に回復したり、さらには再結晶が生じたりするために、このような特徴的な応力-ひずみ曲線が得られる。
上記のとおり、動的再結晶が発現する場合には、図2に示されるような特徴的な応力-ひずみ曲線が得られることから、連続鋳造-直送圧延設備を用いて製造される熱延鋼板についても同様に、応力-ひずみ曲線における応力の挙動から動的再結晶が発現しているか否かを判断することが可能である。より具体的には、例えば、実際の連続鋳造-直送圧延設備を用いて製造される熱延鋼板と同じ化学組成を有する鋼材について予備実験を多数行い、所定の加工温度に関する応力-ひずみ曲線を予め作成しておき、この鋼材に関して動的再結晶が発現する加工温度(スラブの板厚中心温度)、ひずみ量ε、及び/又はひずみ速度εドットの範囲を事前に決定しておいてもよい。このようにすることで、実際の連続鋳造-直送圧延設備を用いた熱延鋼板製造時の圧延条件が、事前に決定された加工温度、ひずみ量ε、及び/又はひずみ速度εドットの範囲内にある場合には、動的再結晶が発現していると判断することが可能となる。
付け加えて言えば、比較的大きいZパラメータに関する応力-ひずみ曲線(図2中の上側の応力-ひずみ曲線)と比較的小さいZパラメータに関する応力-ひずみ曲線(図2中の下側の応力-ひずみ曲線)とを比べると、図2中の両曲線におけるひずみ量ε1及びそれに対応する応力の値から、Zパラメータが比較的大きい場合には、動的再結晶を発現させるのに必要なひずみ量及び応力がかなり大きくなることがわかる。逆に言えば、Zパラメータが比較的小さい場合には、動的再結晶を発現させるのに必要なひずみ量及び応力が非常に小さくなることが明らかである。したがって、本発明においては、Zパラメータが比較的小さい条件下、すなわち連続鋳造直後の高温下でかつスラブの圧延速度が十分に遅い粗圧延の第1パスの条件下において適切な圧延を実施して動的再結晶を発現させることにより、粗圧延機に大きな負荷をかけることなしに比較的容易にかつ安定的に表面性状が優れた熱延鋼板を製造することが可能となる。
なお、図2中のε1は動的再結晶の開始点を示し、εsは動的再結晶の終点、すなわち動的再結晶率が100%となる点を示している。ここで、動的再結晶率は、応力-ひずみ曲線中のε1からεs点にかけての積分値に対する同曲線中のε1から特定のひずみ量εにかけての積分値の割合として算出することができる。本発明においては、動的再結晶を発現させることができれば、結晶粒微細化の効果は得られる。したがって、動的再結晶率については特に規定しないが、結晶粒の微細化をより促進させるという観点からは、動的再結晶率は、一般的には50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらにより好ましくは90%以上、最も好ましくは100%となるような条件下で粗圧延の第1パスにおける圧延が実施される。
以下、本発明の実施形態に係る連続鋳造-直送圧延設備を用いた熱延鋼板の製造方法についてより詳しく説明する。しかしながら、これらの説明は、本発明の好ましい実施形態の単なる例示を意図するものであって、本発明をこのような特定の実施形態に限定することを意図するものではない。
図3は、本発明に係る連続鋳造-直送圧延設備の1つの実施形態を説明する模式図である。図3を参照すると、本発明の実施形態に係る連続鋳造-直送圧延設備10は、スラブ17を連続鋳造するための連続鋳造機16を含む当業者に周知の連続鋳造設備11と、当該連続鋳造設備11に直結された熱間圧延設備12とから構成されている。そして、当該熱間圧延設備12は、必須の構成として、上流側から、鋳造されたスラブ17を粗圧延するための1つ又は複数の圧延スタンドを備えた粗圧延機19、及び一般的に複数の圧延スタンドを備えた仕上げ圧延機22を具備している。また、熱間圧延設備12は、任意選択で、連続鋳造機16と粗圧延機19の間に連続鋳造の際にスラブ17上に形成されるスケールを除去するためのデスケーリング装置18をさらに具備してもよい。同様に、熱間圧延設備12は、任意選択で、粗圧延機19の出側に上流側からスラブ17を仕上げ圧延に適した温度に加熱するための誘導加熱装置等の加熱装置20、及びデスケーリング装置21をさらに具備してもよい。加えて、熱間圧延設備12は、任意選択で、仕上げ圧延機22の出側に上流側から冷却装置23、シャー切断機24、及び巻取装置25をさらに具備してもよい。
図3を参照してより具体的に説明すると、連続鋳造-直送圧延設備10を用いた熱延鋼板の製造では、まず、無変態系の化学組成を有する溶鋼が取鍋13からタンディッシュ14に注がれ、次いでタンディッシュ14内に貯湯された溶鋼がタンディッシュ14の底部に設けられた浸漬ノズルを介して鋳型15内に注がれる。当該溶鋼は、鋳型15との接触及び冷却水の散水によって表面から冷却凝固され、そして連続鋳造機16のロール群(図示せず)により搬送されて、50~150mmの厚さを有するスラブ17に鋳造される。次に、鋳造されたスラブ17は、必要に応じて任意選択のデスケーリング装置18によってその表面に形成されたスケールを除去され、次いでシャー切断機等によって切断されることなく1つ又は複数の圧延スタンドを備えた粗圧延機19に搬送されそして粗圧延を施される。
粗圧延機19での最初の圧延スタンド(粗圧延の第1パス)における圧延は、連続鋳造直後の高温下でかつスラブの圧延速度が十分に遅い条件下で行われるものであり、それゆえ高加工温度でかつ低ひずみ速度の条件を満足し得るものである。したがって、本発明の実施形態によれば、粗圧延機19での最初の圧延スタンドにおいて適切なひずみ量及び/又はひずみ速度となるように粗圧延を施して動的再結晶を発現させることにより、鋼中の数mmから数十mm程度まで及ぶ場合のある粗大組織を確実に微細化、例えば数百μm程度まで微細化することができる。
粗圧延機19において複数の圧延スタンドがある場合には、以降の圧延スタンドによる圧延でさらに鋼中の組織を微細化して粗圧延を終了した後、スラブ17は、任意選択の加熱装置20及びデスケーリング装置21によって必要に応じて加熱及びデスケーリングされ、次いで仕上げ圧延機22によって仕上げ圧延が施される。仕上げ圧延されたスラブ17は、任意選択で、必要に応じて冷却装置23により組織制御され、次いで同様に任意選択のシャー切断機24によって切断されて、最後に巻取装置25によって巻き取られる。以下、本発明の実施形態に係る熱延鋼板の製造方法における各工程についてより詳しく説明する。
[スラブの鋳造工程]
スラブの鋳造は、所望の組成を有するスラブが得られるように、高炉や電炉等による溶製に続き、各種の二次精錬を行い、化学組成を調整し、次いで図3に示されるような垂直曲げ型の連続鋳造機16、又は湾曲型若しくは水平型などの連続鋳造機を用いて、鋼種等に応じて適切な条件を適宜選択して実施すればよい。本発明の実施形態では、スラブは、50~150mmの厚さを有する薄スラブとなるように連続鋳造される。50mm以下の厚さを有するスラブは、タンディッシュの底部に設けられた浸漬ノズルが鋳型内に入らない場合があるために製造が難しい。一方で、150mm以上の厚さを有するスラブを連続鋳造するためには、連続鋳造機における各セグメントの剛性を強化する必要が生じる場合があり、このような場合には設備コストの上昇を招く。
鋳造工程におけるスラブの鋳造速度は、以降の粗圧延の際に動的再結晶を発現させるのに必要な低ひずみ速度を達成し得るものであればよい。このような観点からは、スラブの鋳造速度は3~8m/分であることが好ましい。スラブの鋳造速度が3m/分よりも遅くなると、設備全体における生産性の低下を招く場合がある。一方で、スラブの鋳造速度が8m/分を超えるような高速下で連続鋳造を行うと、溶鋼を鋳型で固める際に凝固殻が不均一に成長し、その薄い部分が破れて中の溶鋼が流出するいわゆるブレークアウトが生じる虞がある。
[スラブ及び熱延鋼板の組成]
次に、本発明の実施形態に係るスラブ及び当該スラブから製造される熱延鋼板の化学組成について説明する。以下の説明において、スラブ及び熱延鋼板に含まれる各元素の含有量の単位である「%」は、特に断りがない限り「質量%」を意味する。
本発明の実施形態に係るスラブ及び熱延鋼板は、無変態組織を構成し得る化学組成を有するものであり、特に限定されないが、例えば、高合金鋼板やフェライト系ステンレス鋼板などに適用できるものである。そこで、本発明の実施形態に係るスラブ及び熱延鋼板が高合金綱板及びフェライト系ステンレス鋼板に適用された場合のそれぞれの好ましい化学組成について以下に具体的に説明する。
<高合金鋼板に適用する場合>
[C:0.050%以下]
Cは、オーステナイト安定化元素である。C含有量が0.050%を超えると、一部がオーステナイトへ変態する。したがって、C含有量は好ましくは0.050%以下、より好ましくは0.030%以下又は0.010%以下である。C含有量は0%であってもよいが、過剰な低減はコスト上昇を招くため、好ましくは0.0001%以上又は0.0005%以上である。
[Si:1.00~7.00%]
Siは、フェライト系安定化元素である。Si含有量が1.00%未満であると、一部がオーステナイトへ変態する。したがって、Si含有量は好ましくは1.00%以上、より好ましくは1.50%以上又は2.00%以上である。一方、Si含有量が7.00%を超えると、鋼が脆化し、圧延の際に疵及び割れ等のトラブルが発生しやすくなる。したがって、Si含有量は好ましくは7.00%以下、より好ましくは6.00%以下又は5.00%以下である。
[Mn:2.000%以下]
Mnは、オーステナイト安定化元素である。Mn含有量が2.000%を超えると、一部がオーステナイトへ変態する。したがって、Mn含有量は好ましくは2.000%以下、より好ましくは1.500%以下又は1.000%以下である。
[P:0.100%以下]
Pは、フェライト安定化元素である。添加するほどフェライト単相になるが、P含有量が0.100%を超えると、冷間圧延時に破断を生じる可能性がある。したがって、P含有量は0.100%以下であることが好ましい。
[S:0.010%以下]
Sは、不純物として含有され、多量に含有すると硫化物が多数析出し材質特性が劣化する。そのため、S含有量は好ましくは0.010%以下、より好ましくは0.008%以下又は0.005%以下である。一方、S含有量は0%であってもよいが、過度の低減は精錬コストの増加に繋がるため、S含有量は好ましくは0.0001%以上、より好ましくは0.0005%以上又は0.001%以上である。
[Al:5.00%以下]
Alは、フェライト安定化元素である。添加するほどフェライト単相になるが、Al含有量が5.00%を超えると、鋼が脆化し、圧延の際に疵及び割れ等のトラブルが発生しやすくなる。したがって、Al含有量は好ましくは5.00%以下、より好ましくは4.00%以下又は3.00%以下である。
上記成分以外の残部はFe及び不純物からなる。不純物とは、スラブ又は熱延鋼板を工業的に製造する際に、鉱石やスクラップ等のような原料を始めとして、製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、本発明の実施形態に係るスラブ又は熱延鋼板に対して意図的に添加した成分でないもの(いわゆる不可避的不純物)を包含するものである。また、不純物とは、上で説明した成分以外の元素であって、当該元素特有の作用効果が本発明の実施形態に係るスラブ又は熱延鋼板の特性に影響しないレベルで当該スラブ又は熱延鋼板中に含まれる元素をも包含するものである。
<フェライト系ステンレス鋼板に適用する場合>
[C:0.100%以下]
Cは、加工性及び耐食性を劣化させるため、その含有量は少ないほどよい。このため、C含有量は好ましくは0.100%以下、より好ましくは0.080%以下又は0.060%以下である。C含有量は0%であってもよいが、過度の低減は精錬コストの増加に繋がるため、C含有量は好ましくは0.001%以上、より好ましくは0.002%以上又は0.005%以上である。
[Si:2.00%以下]
Siは、脱酸元素として添加される場合がある。しかしながら、Si含有量が2.00%を超えると、耐食性が低下する。したがって、Si含有量は好ましくは2.00%以下、より好ましくは1.50%以下又は1.00%以下である。Si含有量は0%であってもよいが、過度の低減は精錬コストの増加に繋がるため、Si含有量は好ましくは0.01%以上、より好ましくは0.02%以上又は0.05%以上である。
[Mn:2.00%以下]
Mnは、固溶強化元素であるため、その含有量は少ないほどよい。Mn含有量が2.00%を超えると、延性が低下する。したがって、Mn含有量は好ましくは2.00%以下、より好ましくは1.50%以下又は1.00%以下である。Mn含有量は0%であってもよいが、過度の低減は精錬コストの増加に繋がるため、Mn含有量は好ましくは0.01%以上、より好ましくは0.02%以上又は0.05%以上である。
[P:0.100%以下]
Pは、Mnと同様、固溶強化元素であるため、その含有量は少ないほどよい。P含有量が0.100%を超えると、延性が低下する。したがって、P含有量は好ましくは0.100%以下、より好ましくは0.080%以下又は0.050%以下である。P含有量は0%であってもよいが、過度の低減は精錬コストの増加に繋がるため、P含有量は好ましくは0.001%以上、より好ましくは0.005%以上又は0.010%以上である。
[S:0.010%以下]
Sは、不純物元素であり、熱間加工性や耐食性を阻害するため、その含有量は少ないほどよい。このため、S含有量は好ましくは0.010%以下、より好ましくは0.008%以下又は0.005%以下である。一方、S含有量は0%であってもよいが、過度の低減は精錬コストの増加に繋がるため、S含有量は好ましくは0.0001%以上、より好ましくは0.0005%以上又は0.001%以上である。
[Cr:8.0~40.0%]
Crは、耐食性を確保するための必須元素である。孔食電位及び耐銹性を確保するため、Cr含有量は好ましくは8%以上、より好ましくは10%以上又は12%以上である。一方、Cr含有量が40%を超えると、その効果が飽和して材料コストの上昇に見合う効果を期待できないことに加え、経済的にも不利である。したがって、Cr含有量は好ましくは40%以下、より好ましくは35%以下又は30%以下である。
[Mo:5.00%以下、Ni:5.00%以下]
Mo及びNiは、耐銹性を向上させる元素であり、必要に応じて添加する。Mo及びNi含有量は0%であってもよいが、添加する場合は、その効果を発現させるために、Mo及びNi含有量は好ましくはそれぞれ0.01%以上、より好ましくは0.02%以上である。一方、Mo及びNi含有量が5.00%を超えると、材料コストの上昇や加工性の低下を招くため、Mo及びNi含有量は好ましくはそれぞれ5.00%以下、より好ましくは4.00%以下又は3.00%以下である。
[Cu:3.00%以下]
Cuは、Mo及びNiと同様に、耐銹性を向上させる元素であり、必要に応じて添加する。Cu含有量は0%であってもよいが、添加する場合は、その効果を発現させるために、Cu含有量は好ましくは0.005%以上、より好ましくは0.008%以上である。一方、Cu含有量が3.00%を超えると、加工性の低下を招くため、Cu含有量は好ましくは3.00%以下、より好ましくは2.00%以下又は1.00%以下である。
[Al:5.00%以下]
Alは、脱酸元素として必要に応じて添加される。Al含有量は0%であってもよいが、添加する場合は、その効果を発現させるために、Al含有量は好ましくは0.01%以上、より好ましくは0.02%以上又は0.03%以上である。一方、Al含有量が5.00%を超えると、鋼が脆化し、圧延の際に疵及び割れ等のトラブルが発生しやすくなる。したがって、Al含有量は好ましくは5.00%以下、より好ましくは4.00%以下又は3.00%以下である。
[N:0.030%以下]
Nは、耐食性及び靭性を劣化させるため、その含有量は少ないほどよい。そのため、N含有量は好ましくは0.030%以下、より好ましくは0.020%以下又は0.010%以下である。一方、N含有量は0%であってもよいが、過度の低減は精錬コストの増加に繋がるため、N含有量は好ましくは0.0001%以上、より好ましくは0.0005%以上又は0.001%以上である。
本発明の実施形態に係るスラブ及び熱延鋼板をフェライト系ステンレス鋼板に適用した場合の基本成分組成は上記のとおりである。さらに当該スラブ及び熱延鋼板は、必要に応じて、以下の任意元素を含有していてもよい。
[Ti:0~1.000%、Nb:0~1.000%、Sn:0~0.500%、及びB:0~0.0030%]
本発明の実施形態に係るスラブ及び熱延鋼板は、例えば、リジングの更なる抑制や加工性の向上、さらには他の性能向上を目的として、Ti、Nb、Sn及びBの少なくとも1種を含有してもよい。しかしながら、これらの元素を過度に添加すると、効果が飽和してコストの増大を招く。したがって、それらの含有量は、Ti:0~1.000%、Nb:0~1.000%、Sn:0~0.500%、及びB:0~0.0030%とする。Ti、Nb及びSnは0.005%以上又は0.010%以上であってもよい。Bは0.0005%以上又は0.0010%以上であってもよい。
上記成分以外の残部はFe及び不純物からなる。不純物とは、スラブ又は熱延鋼板を工業的に製造する際に、鉱石やスクラップ等のような原料を始めとして、製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、本発明の実施形態に係るスラブ又は熱延鋼板に対して意図的に添加した成分でないもの(いわゆる不可避的不純物)を包含するものである。また、不純物とは、上で説明した成分以外の元素であって、当該元素特有の作用効果が本発明の実施形態に係るスラブ又は熱延鋼板の特性に影響しないレベルで当該スラブ又は熱延鋼板中に含まれる元素をも包含するものである。
[第1デスケーリング]
本発明の実施形態においては、連続鋳造の際にスラブ上に形成されたスケールを除去するために、鋳造工程後のスラブに任意選択でデスケーリングを施してもよい。デスケーリングは、当業者に公知の任意の好適なデスケーリング装置によって実施することができ、特に限定されないが、一般的には衝突圧が3MPa以上、5MPa以上若しくは10MPa以上であり、及び/又は20MPa以下、18MPa以下若しくは15MPa以下である高圧水を用いたデスケーリング装置によって実施することができる。このような高い衝突圧の高圧水を使用することで、粗圧延前のスラブからスケールを十分に又は確実に除去することができる。
[熱間圧延工程]
本発明の実施形態によれば、連続鋳造されたスラブは、シャー切断機等によって切断されることなく次の熱間圧延工程において粗圧延され、次いで仕上げ圧延される。スラブを切断することなくそのまま圧延してエンドレス圧延とすることで薄手鋼板を安定的に製造することが可能となる。また、連続鋳造-直送圧延設備においては、連続鋳造と熱間圧延が直結されているために、連続鋳造されたスラブを切断しないことで、その後のスラブの圧延速度が上流側の比較的ゆっくりと進行する連続鋳造の制約を受けることになる。このため、粗圧延において動的再結晶を発現させるのに必要な低ひずみ速度を比較的容易に達成することができる。
[粗圧延]
本発明の実施形態では、粗圧延の第1パスにおいて、スラブの板厚中心温度が1000℃以上の条件下で動的再結晶が発現するように圧延が実施される。粗圧延の第1パスにおける圧延は、連続鋳造直後(すなわちスラブの厚み中心部が凝固した直後)の高温下でかつ圧延速度がスラブの鋳造速度と同程度の非常に遅い条件下で行われるものであり、それゆえ高加工温度でかつ低ひずみ速度の条件を満足する。このため、粗圧延機に過度に負荷をかけることなしに安定的に動的再結晶を発現させるのに最も良い条件であるといえる。したがって、この粗圧延の第1パスにおいて、動的再結晶が発現するように具体的な圧延条件、例えば加工温度、ひずみ量及び/又はひずみ速度を適切に選択することで、鋼中の数mmから数十mm程度まで及ぶ場合のある粗大組織を確実に微細化、例えば数百μm程度まで微細化することが可能となる。なお、粗圧延は、上記のとおり、スラブの厚み中心部が凝固した直後に実施され、特に限定されないが、スラブの凝固率が80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、最も好ましくは100%の条件下で実施される。
先に説明したZパラメータ(Zener-Hollomonパラメータ)や応力-ひずみ曲線は、鋼板の化学組成等に応じて鋼板ごとに異なる値や挙動を示すものである。このため、動的再結晶を発現させるための圧延条件は、本発明の実施形態に係る連続鋳造-直送圧延設備を用いて製造される熱延鋼板の化学組成等に応じて変化し得る。したがって、動的再結晶を発現させるための圧延条件を決定するためには、先に説明したとおり、実際の連続鋳造-直送圧延設備を用いて製造される熱延鋼板と同じ化学組成を有する鋼材について予備実験を多数行い、所定の加工温度に関する応力-ひずみ曲線を予め作成しおき、この鋼材に関して動的再結晶が発現する加工温度(スラブの板厚中心温度)、ひずみ量ε、及び/又はひずみ速度εドットの範囲を事前に決定しておくことが好ましい。このようにすることで、実際の連続鋳造-直送圧延設備を用いた熱延鋼板製造時の圧延条件が、事前に決定された加工温度、ひずみ量ε、及び/又はひずみ速度εドットの範囲内にある場合には、動的再結晶が発現していると判断することが可能となる。
当業者であれば、動的再結晶の発現を判断するのに必要なパラメータ及びそれらの数値範囲を適切に決定することができ、特に限定されないが、好ましくは熱延鋼板の化学組成に応じて加工温度(スラブの板厚中心温度)の範囲を決定し、それに応じて適切なひずみ量ε及びひずみ速度εドットが選択される。なお、本発明において、スラブの板厚中心温度は、伝熱凝固計算によって算出され、具体的にはエンタルピー法を用いて算出される。また、ひずみ量ε及びひずみ速度εドットは、例えば、下記式(3)及び(4)により算出することができる。
ε=1.15ln(1/(1-r)) ・・・(3)
εドット=ε/√(R(h0-h1))/Vr ・・・(4)
式中、rは圧下率、Rは圧延機のロール半径、h0は入側板厚、h1は出側板厚、Vrは圧延速度を示す。
スラブの表面温度については特に規定しないが、リジングの発生を抑制するという観点からは、スラブの板厚中心温度と表面温度との間にある程度差がある状態で粗圧延を実施することが好ましい。一方で、スラブの表面温度が低すぎると、例えば、粗圧延等の熱間圧延の際にスラブエッジに割れが生じる虞がある。したがって、圧延による割れの発生を防ぎつつリジングの発生を抑制するためには、スラブの表面温度は、好ましくは800℃以上、より好ましくは1000℃以上である。また、スラブの板厚中心温度と表面温度の差は100~350℃であることが好ましい。例えば、スラブの板厚中心温度と表面温度の差は150℃以上であってもよく、及び/又は300℃以下、250℃以下若しくは200℃以下であってもよい。スラブ表面温度の上限値は、特に限定されないが、例えば1200℃以下であってよい。
[高合金鋼板用の熱延鋼板の製造]
例えば、本発明の実施形態に係る連続鋳造-直送圧延設備を用いて高合金鋼板用の熱延鋼板を製造する場合には、粗圧延の第1パスにおいて、スラブの板厚中心温度が1100℃以上であり、ひずみ量が0.40以上であり、かつひずみ速度が4.50/s以下である条件下で圧延を実施することが好ましい。このような条件下で粗圧延を実施することで、動的再結晶を確実に発現させることができ、より具体的には図2に関連して先に説明した動的再結晶率を100%とすることができる。したがって、結晶粒の微細化をより促進させることができ、その結果として最終的に得られる熱延鋼板においてリジングの発生を顕著に又は確実に抑制することが可能となる。
粗圧延の第1パスにおけるスラブの板厚中心温度は好ましくは1200℃以上である。圧延時のスラブの板厚中心温度を高くすることで、動的再結晶を発現させるのに必要なひずみ量及びひずみ速度を低下させることができるため、粗圧延機にかける負荷をより小さくすることができ、比較的容易に動的再結晶を発現させることが可能となる。粗圧延の第1パスにおけるスラブの板厚中心温度の上限値は特に規定しないが、一般的には固相線温度以下であればよく、例えば1400℃以下である。
ひずみ量が0.40未満になると、動的再結晶を発現させることができないために、結晶粒を十分に微細化できない場合がある。したがって、ひずみ量は0.40以上とし、0.50以上、0.60以上又は0.70以上であってもよい。ひずみ量の上限値は特に規定しないが、過度に高いひずみ量は圧下率の増加を伴うため、圧延負荷の増大を招き、操業及び制御が困難となる。したがって、ひずみ量は一般的には1.10以下であり、1.05以下又は1.00以下であってもよい。
ひずみ速度が4.50/sを超えると、動的再結晶を発現させるのに導入するひずみ量を大きくする必要があり、同様に圧延負荷の増大を招き、操業及び制御が困難となる。したがって、ひずみ速度は4.50/s以下とし、4.30/s以下又は4.00/s以下であってもよい。ひずみ速度の下限値は特に規定しないが、過度に低いひずみ速度は、圧延速度ひいては鋳造速度の過度の低下を伴うため、生産性が大きく低下する。したがって、ひずみ速度は一般的には0.05/s以上であり、0.10/s以上又は0.20/s以上であってもよい。
[フェライト系ステンレス鋼板用の熱延鋼板の製造]
一方、本発明の実施形態に係る連続鋳造-直送圧延設備を用いてフェライト系ステンレス鋼板用の熱延鋼板を製造する場合には、粗圧延の第1パスにおいて、スラブの板厚中心温度が1150℃以上であり、ひずみ量が0.40以上であり、かつひずみ速度が4.00/s以下である条件下で圧延を実施することが好ましい。このような条件下で粗圧延を実施することで、動的再結晶を確実に発現させることができ、より具体的には図2に関連して先に説明した動的再結晶率を100%とすることができる。したがって、結晶粒の微細化をより促進させることができ、その結果として最終的に得られる熱延鋼板においてリジングの発生を顕著に又は確実に抑制することが可能となる。
粗圧延の第1パスにおけるスラブの板厚中心温度は好ましくは1200℃以上である。圧延時のスラブの板厚中心温度を高くすることで、動的再結晶を発現させるのに必要なひずみ量及びひずみ速度を低下させることができるため、粗圧延機にかける負荷をより小さくすることができ、比較的容易に動的再結晶を発現させることが可能となる。粗圧延の第1パスにおけるスラブの板厚中心温度の上限値は特に規定しないが、一般的には固相線温度以下であればよく、例えば1400℃以下である。
ひずみ量が0.40未満になると、動的再結晶を発現させることができないために、結晶粒を十分に微細化できない場合がある。したがって、ひずみ量は0.40以上とし、0.50以上、0.60以上又は0.70以上であってもよい。ひずみ量の上限値は特に規定しないが、過度に高いひずみ量は圧下率の増加を伴うため、圧延負荷の増大を招き、操業及び制御が困難となる。したがって、ひずみ量は一般的には1.10以下であり、1.05以下又は1.00以下であってもよい。
ひずみ速度が4.00/sを超えると、動的再結晶を発現させるのに導入するひずみ量を大きくする必要があり、同様に圧延負荷の増大を招き、操業及び制御が困難となる。したがって、ひずみ速度は4.00/s以下とし、3.90/s以下又は3.50/s以下であってもよい。ひずみ速度の下限値は特に規定しないが、過度に低いひずみ速度は、圧延速度ひいては鋳造速度の過度の低下を伴うため、生産性が大きく低下する。したがって、ひずみ速度は一般的には0.05/s以上であり、0.10/s以上又は0.20/s以上であってもよい。
[圧延形状比]
本発明の特定の実施形態によれば、粗圧延の第1パスにおける圧延形状比mは4.00以下に制御することが好ましい。ここで、圧延形状比とは、ロール接触弧長を平均板厚で除したものを意味し、下記式(5)によって表される。
m=2√(R(h0-h1))/(h0+h1) ・・・(5)
式中、Rは圧延機のロール半径、h0は入側板厚、h1は出側板厚を示す。
粗圧延の第1パスにおける圧延形状比を4.00以下に制御することで、鋼材中に存在する柱状晶を微細化することができるので、圧延形状比を制御しない場合と比較してリジングの発生をさらに抑制して凹凸ない表面性状に優れた熱延鋼板を製造することが可能となる。一方で、圧延形状比が4.00を超えると、スラブの表層近傍の付加的せん断ひずみの低下により柱状晶の変形不足が生じてしまい、圧延形状比を4.00以下に制御した場合と比較すると、表面性状が幾分低下する場合がある。したがって、圧延形状比は4.00以下とし、好ましくは3.80以下又は3.50以下である。圧延形状比の下限値は、特に限定されず任意の適切な値であってよい。しかしながら、圧延形状比が小さすぎると、鋼材中に存在するポロシティなどの空隙欠陥を圧延によって十分に低減又は消滅させることができない場合がある。したがって、圧延形状比は、一般的には0.70以上とし、好ましくは1.00以上又は1.20以上である。
上記の説明では、粗圧延の第1パスにおける圧延条件について詳しく説明したが、粗圧延の第2パス以降における圧延については、特には限定されず、第1パスにおいて動的再結晶により微細化された結晶粒のさらなる微細化を実現するのに適切な条件下で実施すればよい。
[加熱]
本発明の実施形態においては、任意選択で、粗圧延と仕上げ圧延の間でスラブを加熱してもよい。例えば、粗圧延後に温度が低下したスラブをこのような加熱によって仕上げ圧延に適した温度に調整することができる。上記の加熱は、当業者に公知の任意の好適な加熱装置を用いて実施することができ、特に限定されないが、例えば、電磁誘導を利用した誘導加熱装置を用いて実施することができる。当該誘導加熱装置を使用することで、温度が低下したスラブを比較的短時間で所望の温度に加熱することができる。
[第2デスケーリング]
本発明の実施形態においては、粗圧延後のスラブ上のスケール、特には粗圧延後の加熱によってスラブ上に形成されたスケールを除去するために、粗圧延後のスラブに任意選択でデスケーリングを施してもよい。デスケーリングは、当業者に公知の任意の好適なデスケーリング装置によって実施することができ、特に限定されないが、一般的には衝突圧が3MPa以上、5MPa以上若しくは10MPa以上であり、及び/又は20MPa以下、18MPa以下若しくは15MPa以下である高圧水を用いたデスケーリング装置によって実施することができる。このような高い衝突圧の高圧水を使用することで、粗圧延後のスラブからスケールを十分に又は確実に除去することができる。
[仕上げ圧延]
粗圧延後のスラブ、特には任意選択のデスケーリングによりスケールが除去されたスラブは、次に仕上げ圧延を施され、一般的に0.7~3.0mmの板厚を有する熱延鋼板が製造される。仕上げ圧延の開始温度は、特に限定されないが、例えば850℃以上若しくは950℃以上であってよく、及び/又は1150℃以下若しくは1050℃以下であってよい。また、仕上げ圧延は、当業者に公知の任意の好適な圧延機を用いて実施することができ、特に限定されないが、例えば、図3に示されるような複数の圧延スタンドから構成され、スラブを一方向にのみ搬送するタンデム形式の圧延機を用いて実施することができる。
[冷却・巻き取り]
仕上げ圧延を行った後、得られた熱延鋼板は、必要に応じて冷却装置において水冷等により組織制御が行われ、次いで、最後に巻取装置によってコイル状に巻き取られる。巻き取り温度は、任意の適切な温度であってよく特に限定されないが、例えば700℃以下の温度であってよい。本発明の実施形態に係る連続鋳造-直送圧延設備では、連続鋳造スラブから巻取装置までが連続しており、したがって巻取装置前に設置された任意選択のシャー切断機によって熱延鋼板をコイルに切り分けてもよい。
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
[参考例1]
本参考例では、無変態組織を有する高合金鋼板用の熱延鋼板に関し、低ひずみ速度の条件下で動的再結晶が発現する圧延条件について検討した。
まず、下表1に示す化学組成を有する鋼材から、直径8mm、高さ12mmの円柱サンプルを採取し、ひずみ速度0.5/sの条件下で熱間圧縮する試験を実施した。より具体的には、試験は、まず上記の円柱サンプルを1300℃に加熱し、次いでその温度で60分間保持して十分に結晶粒を成長させた後、ひずみ速度0.5/sの条件下で温度及びひずみ量を変化させて圧下を行うことにより実施した。試験の際に得られる応力-ひずみ曲線における応力の挙動から動的再結晶を発現しているか否かを判断した。その結果を下表2に示す。
Figure 0007256383000001
Figure 0007256383000002
表2中のひずみ量0.41及び0.80はそれぞれ圧下率30%及び50%に相当するものである。表2の結果から明らかなように、ひずみ量0.41及びひずみ速度0.5/sの比較的低いひずみ量及びひずみ速度の条件下においても、圧下時の温度を1100℃以上の比較的高い温度に制御することで動的再結晶を発現させることができることがわかった。
[参考例2]
本参考例では、無変態組織を有するフェライト系ステンレス鋼板用の熱延鋼板に関し、低ひずみ速度の条件下で動的再結晶が発現する圧延条件について検討した。
下表3に示す化学組成を有する鋼材を使用したこと以外は、参考例1と同様にして試験を実施し、応力-ひずみ曲線における応力の挙動から動的再結晶を発現しているか否かを判断した。その結果を下表4に示す。
Figure 0007256383000003
Figure 0007256383000004
表4の結果から明らかなように、ひずみ量0.41及びひずみ速度0.5/sの比較的低いひずみ量及びひずみ速度の条件下においても、圧下時の温度を1150℃以上の比較的高い温度に制御することで動的再結晶を発現させることができることがわかった。
[例1:高合金鋼板用の熱延鋼板の製造]
本例では、図3に示すような熱延鋼板の製造設備(連続鋳造と熱間圧延が直結された連続鋳造-直送圧延設備)を用いて、本発明に係る熱延鋼板の製造方法に従って無変態組織を有する高合金鋼板用の熱延鋼板を製造し、その表面性状について調べた。
まず、下表5に示す化学組成を有する鋼材を連続鋳造設備により鋳造速度3~9m/分にて50~150mm厚さのスラブに鋳造した。次に、鋳造されたスラブを高圧水デスケーリング装置によりデスケーリングし、次いで3つの圧延スタンドから構成される粗圧延機に導入した。粗圧延機の第1パスにおいて、下表6に示されるスラブの板厚中心温度、ひずみ量及びひずみ速度の条件下で圧延を施し、第2及び第3パスにおいて引き続き圧延を実施した。なお、粗圧延の際のスラブの凝固率は全ての例で100%であり、またスラブの表面温度についても全ての例で900℃以上であった。次に、粗圧延されたスラブを誘導加熱装置により加熱し、次いで再び高圧水デスケーリング装置によりデスケーリングを行った。
次に、5つの圧延スタンドから構成される仕上げ圧延機を用いて1.6mm厚の熱延鋼板を製造し、次いで冷却装置において冷却し、最後に巻取装置によってコイル状に巻き取ることで熱延コイルを得た。なお、得られた熱延コイルから採取した試料を分析した化学組成は、下表5に示す鋼材の化学組成と同等であった。次に、得られた熱延コイルの鋼板表面について検査し、リジング判定を行った。具体的には、まず、鋼板の圧延方向から切り出したJIS5号試験片を用いてそれに15%の引張予ひずみを付与し、次いで表面の凹凸を表面粗度計によって測定した。次の基準に基づいてリジング性を評価し、◎及び〇を合格とし、×を不合格とした。その結果を下表6に示す。
リジング性 鋼板の最大うねり高さ
◎ <40μm
○ 90~40μm
× >90μm
Figure 0007256383000005
Figure 0007256383000006
例1Aでは、ひずみ量が0.40未満であったために動的再結晶を発現させることができず、結果としてリジングが発生した。また、例1Eでは、スラブの板厚中心温度が1100℃未満であったために、同様に動的再結晶を発現させることができず、結果としてリジングが発生した。さらに、例1Hでは、ひずみ速度が4.50/sを超えたために、同様に動的再結晶を発現させることができず、結果としてリジングが発生した。これとは対照的に、実施例の熱延鋼板では、粗圧延の第1パスにおいて、スラブの板厚中心温度が1100℃以上、ひずみ量が0.40以上、そしてひずみ速度が4.50/s以下となる条件下で圧延を実施して動的再結晶を発現させることにより、特には動的再結晶率を100%とすることにより、鋼中の粗大組織を微細化することができ、その結果として最終的に得られる熱延鋼板においてリジングの発生を顕著に抑制することができ、熱延鋼板の表面性状を改善することができた。なお、例1Kでは、圧延形状比が4.00を超えたために、他の実施例の場合と比較すると表面性状が幾分低下したものの、動的再結晶の発現により表面性状の改善を確認することができた。
[例2:フェライト系ステンレス鋼板用の熱延鋼板の製造]
本例では、図3に示すような熱延鋼板の製造設備(連続鋳造と熱間圧延が直結された連続鋳造-直送圧延設備)を用いて、本発明に係る熱延鋼板の製造方法に従って無変態組織を有するフェライト系ステンレス鋼板用の熱延鋼板を製造し、その表面性状について調べた。
まず、下表7に示す化学組成を有する鋼材を連続鋳造設備により鋳造速度3~9m/分にて50~150mm厚さのスラブに鋳造した。次に、鋳造されたスラブを高圧水デスケーリング装置によりデスケーリングし、次いで3つの圧延スタンドから構成される粗圧延機に導入した。粗圧延機の第1パスにおいて、下表8に示されるスラブの板厚中心温度、ひずみ量及びひずみ速度の条件下で圧延を施し、第2及び第3パスにおいて引き続き圧延を実施した。なお、粗圧延の際のスラブの凝固率は全ての例で100%であり、またスラブの表面温度についても全ての例で900℃以上であった。次に、粗圧延されたスラブを誘導加熱装置により加熱し、次いで再び高圧水デスケーリング装置によりデスケーリングを行った。
次に、5つの圧延スタンドから構成される仕上げ圧延機を用いて3.4mm厚の熱延鋼板を製造し、次いで冷却装置において冷却し、最後に巻取装置によってコイル状に巻き取ることで熱延コイルを得た。なお、得られた熱延コイルから採取した試料を分析した化学組成は、下表7に示す鋼材の化学組成と同等であった。次に、得られた熱延コイルの鋼板表面について検査し、例1の場合と同様にしてリジング判定を行った。その結果を下表8に示す。
Figure 0007256383000007
Figure 0007256383000008
例2Aでは、ひずみ量が0.40未満であったために動的再結晶を発現させることができず、結果としてリジングが発生した。また、例2Dでは、スラブの板厚中心温度が1150℃未満であったために、同様に動的再結晶を発現させることができず、結果としてリジングが発生した。さらに、例2Gでは、ひずみ速度が4.00/sを超えたために、同様に動的再結晶を発現させることができず、結果としてリジングが発生した。これとは対照的に、実施例の熱延鋼板では、粗圧延の第1パスにおいて、スラブの板厚中心温度が1150℃以上、ひずみ量が0.40以上、そしてひずみ速度が4.00/s以下となる条件下で圧延を実施して動的再結晶を発現させることにより、特には動的再結晶率を100%とすることにより、鋼中の粗大組織を微細化することができ、その結果として最終的に得られる熱延鋼板においてリジングの発生を顕著に抑制することができ、熱延鋼板の表面性状を改善することができた。なお、例2Jでは、圧延形状比が4.00を超えたために、他の実施例の場合と比較すると表面性状が幾分低下したものの、動的再結晶の発現により表面性状の改善を確認することができた。
10 連続鋳造-直送圧延設備
11 連続鋳造設備
12 熱間圧延設備
13 取鍋
14 タンディッシュ
15 鋳型
16 連続鋳造機
17 スラブ
18、21 デスケーリング装置
19 粗圧延機
20 加熱装置
22 仕上げ圧延機
23 冷却装置
24 シャー切断機
25 巻取装置

Claims (6)

  1. 連続鋳造と熱間圧延が直結された連続鋳造-直送圧延設備を用いた無変態組織を有する熱延鋼板の製造方法であって、
    50~150mmの厚さを有するスラブを連続鋳造する鋳造工程、及び
    鋳造されたスラブを切断することなしに粗圧延し、次いで仕上げ圧延する熱間圧延工程
    を含み、前記粗圧延の第1パスにおいて、前記スラブの板厚中心温度が1000℃以上の条件下で圧延を実施して動的再結晶を発現させることを特徴とする、熱延鋼板の製造方法。
  2. 前記熱延鋼板がフェライト系ステンレス鋼板用の熱延鋼板であり、前記粗圧延の第1パスにおいて、前記スラブの板厚中心温度が1150℃以上であり、ひずみ量が0.40以上であり、かつひずみ速度が4.00/s以下である条件下で圧延を実施することを特徴とする、請求項1に記載の熱延鋼板の製造方法。
  3. 前記熱延鋼板が、質量%で、C:0.100%以下、Si:2.00%以下、Mn:2.00%以下、P:0.100%以下、S:0.010%以下、Cr:8.0~40.0%、Mo:5.00%以下、Ni:5.00%以下、Cu:3.00%以下、Al:5.00%以下、N:0.030%以下、Ti:0~1.000%、Nb:0~1.000%、Sn:0~0.500%、及びB:0~0.0030%を含有し、残部がFe及び不純物からなることを特徴とする、請求項2に記載の熱延鋼板の製造方法。
  4. 前記熱延鋼板が高合金鋼板用の熱延鋼板であり、前記粗圧延の第1パスにおいて、前記スラブの板厚中心温度が1100℃以上であり、ひずみ量が0.40以上であり、かつひずみ速度が4.50/s以下である条件下で圧延を実施することを特徴とする、請求項1に記載の熱延鋼板の製造方法。
  5. 前記熱延鋼板が、質量%で、C:0.050%以下、Si:1.00~7.00%、Mn:2.000%以下、P:0.100%以下、S:0.010%以下、及びAl:5.00%以下を含有し、残部がFe及び不純物からなることを特徴とする、請求項4に記載の熱延鋼板の製造方法。
  6. 前記粗圧延の第1パスにおける圧延形状比が4.00以下であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の熱延鋼板の製造方法。
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