JP7460894B2 - 熱延鋼板の製造方法及び熱延鋼板製造装置 - Google Patents

熱延鋼板の製造方法及び熱延鋼板製造装置 Download PDF

Info

Publication number
JP7460894B2
JP7460894B2 JP2020049006A JP2020049006A JP7460894B2 JP 7460894 B2 JP7460894 B2 JP 7460894B2 JP 2020049006 A JP2020049006 A JP 2020049006A JP 2020049006 A JP2020049006 A JP 2020049006A JP 7460894 B2 JP7460894 B2 JP 7460894B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
rolling
hot
rolled steel
steel sheet
slab
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2020049006A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2021146372A (ja
Inventor
拓也 高山
寛 原田
健二 山田
真士 阪本
悠衣 山下
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel Corp filed Critical Nippon Steel Corp
Priority to JP2020049006A priority Critical patent/JP7460894B2/ja
Publication of JP2021146372A publication Critical patent/JP2021146372A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7460894B2 publication Critical patent/JP7460894B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Metal Rolling (AREA)
  • Continuous Casting (AREA)
  • Heat Treatment Of Sheet Steel (AREA)

Description

本発明は、熱延鋼板の製造方法及び熱延鋼板製造装置に関する。
薄板鋼板の連続鋳造設備として、例えば50mm~150mm厚の鋳片を製造する連続鋳造機と圧延ラインが組み合わさったライン(以下、「TSCR:Thin Slab Casting and Rolling」という。)が知られている。TSCRは、連続鋳造機と圧延ラインとが直結して設けられることで従来プロセスと比較してコンパクトであり、低コストで熱延鋼板を製造することができる。
特許文献1には、かかるTSCRにより鋼板を連続的に製造する方法であって、連続鋳造素材の凝固後に1100℃よりも高い温度で鋳片を成形し、当該鋳片の全断面にわたり1100℃まで再び誘導加熱した後、圧下することが開示されている。特許文献1によれば、低装置コスト、低エネルギーコストで鋼板を連続鋳造し、また仕上げ圧延をすることができる。
ところで、近年の製品としての鋼板の軽量化及び高強度化の観点から、製造されるスラブには、カーボン(C)、ケイ素(Si)、マンガン(Mn)等の合金元素が添加されている。しかしながら、かかるスラブ成分の高合金化に伴い、スラブの内質劣化が課題となっている。スラブの内質劣化は、例えば中心偏析やポロシティといったスラブの内部欠陥に起因することが知られている。
特許文献2には、中心偏析を低減する鋳片の連続鋳造方法であって、鋳片の厚さ方向中心が凝固した直後に圧下を加え、凝固組織の微細化、偏析の分散化により偏析を低減することが開示されている。また、特許文献2によれば、圧下直前の鋳片の厚みを圧下直後の鋳片の厚みで割った値である圧下比を大きくすることで、鋳片内部に与えるひずみ量を増加させている。
特許文献3には、センターポロシティを低減する連続鋳造方法であって、連続鋳造中において凝固完了後の鋳片を圧下するに際し、鋳片の中心部と表面とで温度差をつけることが開示されている。特許文献3によれば、鋳片内において温度差をつけることにより、同じ圧下比でも鋳片内部のひずみ量を増加させることができ、センターポロシティを低減できる。
特許第2726919号公報 特開2015-006680号公報 特開2016-175104号公報
特許文献1、2に記載されるように、スラブ内部に付与するひずみ量を増加させることにより、スラブの内部欠陥の発生を抑制、すなわち、内質を改善できる。
しかしながら、上述のようなTSCRにより熱延鋼板を製造する場合、製造される熱延鋼板が薄いことから、特許文献2に記載の連続鋳造方法ように圧下比を大きくすることが困難である。また、特許文献3に記載の連続鋳造方法のように温度差をつける場合、欠陥の多い板厚中心部に効率的にひずみを付与するために板厚中心の温度を高くして表面温度を下げる必要があるが、かかる場合、表面温度の低下により表面割れが発生するおそれがある。
また一般的には、鋳片のソーキング処理(長時間熱処理)により偏析拡散を行うことができるが、TSCRにおいては連続鋳造された鋳片はすぐに熱間圧延されるため、ソーキング処理を施すこともできない。
そこで本発明者らは、連続鋳造される鋳片内部のひずみ量を増やすことができる異周速圧延に着目した。具体的には、上下のワークロールをそれぞれ異なる周速で回転させることにより、鋳片内部にせん断ひずみを付与し、これにより熱延鋼板の内質改善効果が得られると推定した。
特許文献2及び特許文献3には、上述のような内部欠陥としての中心偏析やポロシティを改善する方法としての異周速圧延については記載がなく、また、このことについて示唆もされていない。また特許文献1には熱延鋼板の連続鋳造方法が開示されているが、やはり当該熱延鋼板の製造にあたり異周速圧延を行うことについては記載がない。すなわち、従来の熱延鋼板の内質改善方法には改善の余地があった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、連続鋳造により生産される熱延鋼板の内質を改善することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明は、連続鋳造ラインと熱間圧延ラインが直結された熱延鋼板製造装置を用いた熱延鋼板の製造方法であって、前記連続鋳造ラインと前記熱間圧延ラインは、この順に前記熱延鋼板の搬送経路を形成し、前記熱間圧延ラインにおいて、前記連続鋳造ラインで製造された板厚50~150mmの鋳片の板厚中心の固相率が0.8~1.0となる範囲に配置される少なくとも1つの圧延スタンドにおいて、上下の圧延ロールに下記式(1)により求められる異周速率χが0%よりも大きく9%以下の周速差を与える異周速圧延を行った粗バーを、加熱装置によって昇温してから仕上げ圧延することを特徴としている。
χ=(|Va-Vb|/Vf)×100 ・・・(1)
Va:上側の圧延ロールの周速
Vb:下側の圧延ロールの周速
Vf:Va及びVbのうち、高周速側の圧延ロールの周速
本発明によれば、鋳片の固相率が0.8~1.0となる範囲、すなわち凝固末期から凝固直後の熱延鋼板に異周速圧延を行うことにより、当該鋳片の内部に適切にひずみを付与できる。
前記異周速圧延は、前記搬送経路における前記熱間圧延ラインの最上流側に設けられる圧延スタンドにおいて行われることが望ましい。
前記搬送経路における前記異周速圧延を行う圧延スタンドの下流側において、反り防止ロールにより当該異周速圧延により生じる前記鋳片の反りを防止してもよい。
別の観点にかかる本発明は、連続鋳造ラインと熱間圧延ラインが直結された熱延鋼板製造装置であって、前記連続鋳造ラインと前記熱間圧延ラインは、この順に熱延鋼板の搬送経路を形成し、前記熱間圧延ラインにおいて、前記連続鋳造ラインで製造された板厚50~150mmの鋳片の板厚中心の固相率が0.8~1.0となる範囲に配置される少なくとも1つの圧延スタンドは、上下の圧延ロールに下記式(1)により求められる異周速率χが0%よりも大きく9%以下の周速差を与える異周速圧延スタンドであり、当該異周速圧延スタンドで異周速圧延を行った粗バーを、加熱装置によって昇温してから仕上げ圧延することを特徴としている。
χ=(|Va-Vb|/Vf)×100 ・・・(1)
Va:上側の圧延ロールの周速
Vb:下側の圧延ロールの周速
Vf:Va及びVbのうち、高周速側の圧延ロールの周速
前記異周速圧延スタンドは、前記搬送経路における前記熱間圧延ラインの最上流側に設けられることが望ましい。
前記搬送経路における前記異周速圧延スタンドの下流側において、当該異周速圧延スタンドにより生じる前記鋳片の反りを防止する反り防止ロールがさらに設けられていてもよい。
本発明によれば、熱延鋼板の連続鋳造に際して異周速圧延を実施することにより、生産される熱延鋼板の内質を改善できる。
熱延鋼板の製造装置の構造を模式的に示す説明図である。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
<熱延鋼板製造装置の構成>
先ず、本発明の実施形態に係る熱延鋼板製造装置1の構成について説明する。図1は、熱延鋼板製造装置1の構成の概略を模式的に示す説明図である。なお、以下の説明においては、「熱延鋼板製造設備」が前述のTSCRに相当する。
図1に示すように本実施形態に係る熱延鋼板製造装置1においては、連続鋳造ライン10と熱間圧延ライン20とが直結しており、連続鋳造から熱間圧延まで一貫し連続して実施する鋳造圧延連続ラインにより、熱延鋼板を連続的に製造する。より具体的には、連続鋳造ライン10により製造される「鋳片」を粗圧延した後、「粗バー」として仕上げ圧延することで「熱延鋼板」を製造する。製造された熱延鋼板は、所定の切断長で切断され製品として回収される。
連続鋳造ライン10は、タンディッシュ11と、鋳型12と、連続鋳造機13と、を備えている。
タンディッシュ11は、底部に設けられた浸漬ノズル(図示せず)と一体となって鉛直方向に移動自在に構成されており、浸漬ノズルの鋳型12への引き抜きを行うことができる。
鋳型12は、鋳片を所定の断面形状に成形するための矩形の形状を有している。鋳型12は、例えば水冷銅板により構成されている。
連続鋳造機13においては、鋳型12を介してタンディッシュ11から注がれる溶鋼を、当該連続鋳造機13のロール群によって引き出し、例えば50~150mmの板厚を有する鋳片を製造する。
熱間圧延ライン20は、粗圧延機列21と、加熱装置22と、仕上げ圧延機列23と、冷却装置24と、切断機25と、コイラー(例えば、ダウンコイラー)26と、を備えている。
粗圧延機列21は連続鋳造機13の通板方向下流側に配置され、連続鋳造機13による鋳造後の鋳片を熱間圧延(粗圧延)する。粗圧延機列21には、複数、例えば3段の粗圧延スタンド21A、21B、21Cが設けられている。粗圧延スタンド21A、21B、21Cは、それぞれ、1対のワークロールWRおよび1対のバックアップロールBURを有している。なお、粗圧延機列21における圧延スタンドの数は特に制限されず、任意に設計することができる。
加熱装置22は、粗圧延機列21と仕上げ圧延機列23の間に配置され、仕上げ圧延機列23での圧延前に鋳片を加熱する。これは、熱延鋼板製造装置1では、連続鋳造ラインが熱間圧延ラインに直結していることから、通板速度は連続鋳造の速度が律速となる。そのため、バッチ方式の熱間圧延の通板速度よりも遅いため、仕上げ圧延機列23での圧延前に鋳片が通板中に冷却されすぎないように加熱装置22により、鋳片を加熱する。
なお、加熱装置22の構成は任意に選択することができ、例えば加熱帯、保持炉又は誘導加熱装置等、任意の構成をとることができる。
仕上げ圧延機列23は粗圧延機列21の通板方向下流側に配置され、連続鋳造機13による鋳造され、粗圧延後の粗バーを熱間圧延(仕上げ圧延)する。仕上げ圧延機列23には、複数、例えば5段の仕上げ圧延スタンド23A、23B、23C、23D、23Eが設けられている。仕上げ圧延スタンド23A、23B、23C、23D、23Eは、それぞれ、1対のワークロールWRおよび1対のバックアップロールBURを有している。なお、仕上げ圧延機列23における圧延スタンドの数は特に制限されず、任意に設計することができる。
冷却装置24は、仕上げ圧延機列23の通板方向下流側に配置され、最終段の仕上げ圧延スタンド23Eによる熱間圧延(本実施形態では仕上げ圧延)後にランアウトテーブルを搬送される熱延鋼板を、冷却水を用いて冷却(水冷)する。冷却装置24による冷却後の熱延鋼板は、切断機25により任意の切断長に切断された後、コイラー26によりコイル状に巻き取られる。
なお、熱延鋼板製造装置1における任意の位置、例えば粗圧延機列21や仕上げ圧延機列23の上流側には、発生したスケールを除去するためのデスケーラー(図示せず)が設けられていてもよい。
本実施形態にかかる熱延鋼板製造装置1は以上のように構成されており、連続鋳造機13、粗圧延機列21、加熱装置22、仕上げ圧延機列23及び冷却装置24は、この順に鋳片、粗バー及び熱延鋼板の搬送経路を形成している。そして、かかる搬送経路の終端に切断機25及びコイラー26が配置され、所定の切断長に切断された熱延鋼板を巻き取って回収する。
タンディッシュ11から鋳型12を介して搬送経路に引き出された鋳片は、搬送経路に沿って搬送され、連続鋳造機13及び粗圧延機列21においては外表面から内部に向かって徐々に冷却され、凝固が進行していく。すなわち、連続鋳造機13及び粗圧延機列21において鋳片は内部温度が外表面温度に比べて高くなっている。そして、鋳片が搬送経路に沿って下流側へ移動するにつれて鋳片内部の凝固が進行し、図1に示すように完全凝固位置C(例えば本実施形態においては粗圧延機列21内)において鋳片の断面視における全面が凝固、固相率が1.0となる。
ここで、本実施形態に係る熱延鋼板製造装置1においては、後述するように、鋳片の固相率が0.8~1.0となる範囲、例えば本実施形態においては粗圧延機列21において、上下のワークロールWRの周速を変える異周速圧延を行う。異周速圧延は、製造方向に並べて配置される3つの粗圧延スタンド21A、21B、21Cの少なくとも1基において行われる。なお、以下の説明においては粗圧延スタンド21A、21B、21Cのうち異周速圧延を行う粗圧延スタンドを「異周速圧延スタンド」、異周速圧延スタンドが備える上下のワークロールをそれぞれ「上ワークロール」、「下ワークロール」という場合がある。
なお、異周速圧延スタンドの下流側には、図1に示すように異周速圧延により鋳片に生じた反りを吸収するための反り防止ロール27がさらに設けられていてもよい。
<熱延鋼板の製造方法>
次に、熱延鋼板製造装置1を用いて行われる連続鋳造の流れを、前記搬送経路に沿って説明する。
熱延鋼板製造装置1を用いた連続鋳造では、先ず、目的の化学組成に成分調査された溶鋼が取鍋(図示せず)からタンディッシュ11に注入される。なお、タンディッシュ11は、取鍋から注入される溶鋼のバッファ部としても機能する。
タンディッシュ11に貯湯された溶鋼は、次に、図示しない浸漬ノズルを介して鋳型12に注入される。鋳型12に注入された溶鋼は、当該鋳型12との接触及び冷却水の散水によって外殻部分が冷却され、鋳型12の矩形である内側の形状に合わせて凝固シェルが形成される。
鋳型12において凝固シェルが形成された溶鋼は、鋳型12の直下において連続鋳造機13のサポートロールに外殻部分、すなわち凝固シェルが形成された部分が保持され、鋳片として搬送経路に引き出される。
搬送経路に引き出された鋳片は、連続鋳造機13において製造方向に並べて配置されるサポートロールにより、徐々に搬送経路の下流方向へと搬送される。かかる際、搬送される鋳片は外表面側(外殻部分)から冷却され、徐々に内側に向けて凝固が進行し、固相率が上昇していく。
搬送経路に沿って搬送される鋳片は、続いて、粗圧延機列21に搬送され、粗圧延される。本実施形態にかかる熱延鋼板製造装置1の粗圧延機列21においては、鋳片の凝固末期から凝固直後、例えば鋳片の固相率が0.8~1.0となる範囲に位置する少なくとも1基の粗圧延ロール(異周速圧延スタンド)において異周速圧延を行う。なお、固相率は任意の方法によって求められるが、例えば、凝固組織予測シミュレーションによって、計算で求めても良い。
具体的には、下記(1)式により求まる異周速圧延スタンドにおける異周速率χが0%より大きく、かつ、9%以下となるように上ワークロールの周速Va、及び下ワークロールの周速Vbを決定する。なお、下記(1)式におけるVfは、上ワークロールと下ワークロールのうち高速側のワークロールの周速を示している。すなわち異周速率χとは、高速側のロール周速Vfに対する周速Vaと周速Vbの差分(絶対値)の比率である。
χ=(|Va-Vb|/Vf)×100 ・・・(1)
ここで、固相率が0.8未満で異周速圧延を行った場合、すなわち鋳片の内部が充分に凝固していない状態で異周速圧延を行った場合、異周速圧延スタンドによる圧下により鋳片の内部で溶鋼流動が生じ、中心偏析が悪化する。
また、異周速率が9%超で異周速圧延を行った場合、すなわち、上下のワークロールWR間で周速差が大きい場合、鋳片に生じる反りが大きくなり、搬送経路から逸脱、すなわち搬送経路下流側の圧延ロールや反り防止ロール27に鋳片が適切に噛みこまれず、熱延鋼板を製造できなくなる。
その後、更に粗圧延機列21により鋳片が搬送方向の下流側へと搬送、圧延され、完全凝固位置Cにおいて鋳片(薄スラブ)の断面視における全面の凝固が完了し、粗バーが形成される。
形成された粗バーは更に搬送が継続され、次に、加熱装置22に搬送される。粗圧延機列21において圧延されることで冷却された粗バーは、加熱装置22において仕上げ圧延に適する温度、例えば1000~1200℃に昇温される。
加熱装置22において加熱された粗バーは、続いて、仕上げ圧延機列23に搬送される。仕上げ圧延機列23においては、粗バーの仕上げ圧延、具体的には、製造厚みである0.7~3.0mmの板厚まで圧下され、熱延鋼板が形成される。
仕上げ圧延された熱延鋼板は、次に、冷却装置24に搬送される。冷却装置24においては、熱延鋼板は例えば水冷され、これにより所望の組織に制御される。
組織制御された熱延鋼板は、切断機25により所定の切断長に切断される。その後、コイラー26によって熱延鋼板がコイル状に巻き取られて製品とされることで、一連の熱延鋼板の製造工程が終了する。
本実施形態にかかる熱延鋼板の製造方法によれば、連続鋳造される鋳片に対して異周速圧延を行うことにより、適切に当該鋳片の内部にせん断ひずみを付与できる。そしてこのように、鋳片の内部に付与されるひずみ量が増加するため、適切に中心偏析やポロシティの発生を抑制、すなわち、製造される熱延鋼板の内質を改善できる。
また本実施形態によれば、内質を改善するための異周速圧延は鋳片の固相率が0.8~1.0の範囲において、すなわち、凝固末期から凝固直後の鋳片に対して施される。換言すれば、鋳片の内部温度が表面温度に対して高い状態で異周速圧延を行うため、より適切に鋳片の内部にせん断ひずみを付与できる。
また本実施形態によれば、異周速圧延を異周速率0%超~9%以下で行う。これにより、製造される熱延鋼板の内質を改善できるとともに、異周速圧延により鋳片に生じる反りにより熱延鋼板の製造が中断されるのを抑制できる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
上述の実施形態にかかる異周速圧延の効果を確認するための実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお本実施例においては、熱延鋼板製造装置を用いて、圧下前厚み100mm、幅1100mの鋳片を鋳造速度4.8m/minで鋳造し、粗圧延機列における3基の粗圧延スタンドのうち、第1スタンド(上流側)において異周速圧延を行った。なお、粗圧延を施した鋳片は、その下流側に設けられた他の圧延スタンドにおいて熱間まま圧延し、板厚2.5mmtの熱延鋼板に圧延した。
なお、鋳片(熱延鋼板)は鋼種成分として、C:0.16wt%、Si:0.50wt%、Mn:2.10wt%、P:0.009wt%、S:0.002wt%、Al:0.03wt%を含んでいる。
また、異周速圧延による内質改善効果の確認方法としては、コイラーに巻き取られて得られた熱延鋼板の横断面についてEPMA(Electron Probe Micro Analyzer)測定し、偏析指数を求めた。偏析指数は、Mn元素を対象にEPMAを用いてビーム径を50μmとして線分析を行って、試料のMn濃度分布を厚み方向に測定し、測定範囲でのMn最大濃度を求めた。そして、Mnの最大濃度の値を溶鋼段階の化学分析から求めたMnの初期含有率で割った値を偏析指数とした。すなわち、偏析指数が小さくなることで、熱延鋼板の内質改善効果が得られたということができる。
また、得られた熱延鋼板においては、穴拡げ試験をさらに実施した。穴広げ試験は、得られた熱延鋼板から試験用サンプルを切り出し、JIS Z 2256(金属材料の穴拡げ試験方法)に準拠して試験を実施し、穴拡げ限界値(λ[%])を算出した。評価方法としては、孔広げ率λが70%以上を正、それ未満を否とした。
(実施条件1)
実施条件1においては、凝固末期の鋳片内部温度が高い状態で異周速圧延を行う本発明の実施例と、異周速圧延を行わない場合の比較例における偏析指数を比較した。具体的には、実施例においては異周速率5%、比較例においては異周速率0%として圧延を行った。なお実施条件1においては、鋳片の圧下比を1.43、1.66、2.00とそれぞれ変化させた。
(実施結果1)
表1は、実施条件1における実験結果を示す表である。
Figure 0007460894000001
表1に示すように、例えば圧下比1.43で圧延を行った場合、比較例においては偏析指数が1.31、λが60%であったのに対し、実施例では偏析指数は1.20、λが70%となった。すなわち圧下比が同じであっても、異周速圧延を行うことにより、熱延鋼板の内質が改善された。
なお、かかる熱延鋼板の内質改善効果は、圧下比が1.43の場合に限られず、表1に示すように圧下比が1.66、2.00の場合であっても、享受することができた。また、圧下比が大きくなるにつれて、より熱延鋼板の内質改善効果が大きくなることが分かった。具体的には、圧下比1.43で異周速圧延を行った場合の偏析指数は1.20、λは70%であったのに対し、例えば圧下比2.00で異周速圧延を行った場合の偏析指数は1.05、λは76%であった。
すなわち実施条件1の実験結果によれば、熱延鋼板製造装置における鋳片の凝固末期に異周速圧延を行うことにより、熱延鋼板の内質改善効果が得られることがわかった。
(実施条件2)
本実施条件2においては、表1の試験番号1-1の比較例、すなわち鋳片に対して圧下比1.43、異周速率0%で圧延を行う場合を比較例として、異周速率のみを変化させて偏析指数及び穴広げ率λを求めた。具体的には、異周速率を1%、2%、5%、9%、10%として、それぞれ異周速圧延を行った(実施例1~5)。
(実施結果2)
表2は、実施条件2における実験結果を示す表である。
Figure 0007460894000002
表2に示すように、異周速率0%で圧延を行った場合においては偏析指数が1.31、穴広げ率が60%であったのに対して、異周速率が大きくなるに伴い、すなわち、圧延スタンドの上ロールと下ロールの周速差が大きくなるに伴い、偏析指数が小さくなり、穴広げ率は大きくなった。具体的には、異周速率1%における偏析指数は1.29、λは62%であるのに対し、異周速率9%における偏析指数は1.20、λは70%となった。これは、異周速率を大きくすることにより、鋳片の内部に付与されるせん断ひずみが増加することで、より適切に熱延鋼板の内質改善効果を得られたものと推測される。
一方、異周速率を10%として鋳片の異周速圧延を行った場合、当該異周速圧延により鋳片に生じた反りにより、適切に圧延を行うことができなかった。具体的には、粗圧延機列において鋳片を適切に搬送することができなかった。
すなわち実施条件2の実験結果によれば、鋳片を圧延する際の異周速率を大きくすることにより内質改善効果をより高めることができる反面、異周速率が大きくなりすぎると適切に圧延を行うことができなくなることがわかった。このことから、鋳片の圧延を行う際の異周速率は、少なくとも0%よりも大きく、9%以下であることが好ましい。
(実施条件3)
本実施条件3においては、表1の試験番号2の実施例、すなわち鋳片に対して圧下比1.66、異周速率5%で圧延を行う場合に対して、鋳片の固相率のみを変化させて偏析指数を求めた。具体的には、以下の表3に示すように、鋳片の固相率を0.65~1.00の範囲内で変化させ、それぞれ異周速圧延を行った。なお、参考例として、圧下比1.66、固相率0.9の際に異周速圧延を行わなかった場合における偏析指数は、表1に示すように1,24であった。
(実施結果3)
表3は、実施条件3における実験結果を示す表である。
Figure 0007460894000003
表3に示すように、鋳片の固相率が0.8~1.0の範囲において、偏析指数が小さくなり、鋳片の内質改善効果を享受できることがわかった(実施例1~5)。具体的に偏析指数は、固相率0.8において1.13、固相率0.85以上において1.11となった。これは、凝固末期から凝固直後の鋳片内部にせん断ひずみを付与することにより、鋳片内部の凝固組織が適切に微細化、及び偏析の分散化により拡散が促進されることに起因すると推測される。
一方、鋳片の固相率が0.8未満の範囲においては偏析指数の改善は見られず、参考例に対してその偏析指数が悪化した(比較例1~3)。これは、鋳片の内部が充分に凝固していない状態でせん断ひずみが付与されることにより鋳片の内部で溶鋼流動が生じ、この結果、中心偏析が悪化したものと推測される。
すなわち実施条件3の実験結果によれば、熱延鋼板製造装置における鋳片の凝固末期から凝固直後、具体的には鋳片内部の固相率が0.8~1.0となる範囲で異周速圧延を行うことにより、熱延鋼板の内質改善効果を得られることがわかった。
(実施条件4)
以上の実施条件1~3においては粗圧延機列における3基の粗圧延スタンドのうち、第1スタンド(上流側)のみを異周速圧延スタンドとして異周速圧延を行ったが、本実施条件4においては、異周速圧延スタンドの位置及び数をそれぞれ変更した。具体的には、表4に示すように、粗圧延機列における3基の粗圧延スタンドにおいて異周速圧延スタンドの数を1~3基で変更するとともに、異周速圧延スタンドの位置をそれぞれ変更した。
なお、本実施条件4においては、圧下前厚み120mm、幅1100mの鋳片を鋳造速度4.8m/minで鋳造し、3基の粗圧延スタンドにおける圧下比を上流側から順に1.5(板厚120mmから80mmへ圧下)、1.6(板厚80mmから50mmへ圧下)、1.67(板厚50mmから30mmへ圧下)とした。また、異周速圧延スタンドにおける異周速率は5%とした。
(実施結果4)
表4は、実施条件4における実験結果を示す表である。
Figure 0007460894000004
表4に示すように、第1スタンドにおいて異周速圧延を行うことで、第2スタンド(中段)及び第3スタンド(下流側)で異周速圧延を行うか否かに関わらず、好適に内質改善効果を享受できることがわかった。一方で、第1スタンドにおいて異周速圧延を行わない場合、第2スタンド及び第3スタンドで異周速圧延を行ったとしても、得られる内質改善効果が小さいことがわかった。具体的には、第1スタンドで異周速圧延を行った場合にはいずれも偏析指数が1.13となったのに対し、第1スタンドにおいて異周速圧延を行わない場合には偏析指数がいずれも1.20以上となった。
これは、異周速圧延スタンドが下流側に配置されるにつれて、すなわち、搬送経路の下流側に向かうにつれて、異周速圧延を行う際の鋳片の温度が低下することに起因すると推測される。
このことから、熱延鋼板の製造にあたって内質改善効果を享受するために粗圧延機列において異周速圧延を行う場合、異周速圧延スタンドが粗圧延機列のうち少なくとも1基に用いられ、かかる異周速圧延スタンドは搬送経路の上流側に配置されることが望ましい。換言すれば、異周速圧延は鋳片の凝固末期から凝固直後に行われることが望ましい。
本発明は、連続鋳造により生産される熱延鋼板の内質を改善する際に有用である。
1 熱延鋼板製造装置
10 連続鋳造ライン
11 タンディッシュ
12 鋳型
13 連続鋳造機
20 熱間圧延ライン
21 粗圧延機列
21A、21B、21C 粗圧延スタンド
22 加熱装置
23 仕上げ圧延機列
23A、23B、23C、23D、23E 仕上げ圧延スタンド
24 冷却装置
25 切断機
26 コイラー
27 反り防止ロール
BUR バックアップロール
C 完全凝固位置
WR ワークロール

Claims (6)

  1. 連続鋳造ラインと熱間圧延ラインが直結された熱延鋼板製造装置を用いた熱延鋼板の製造方法であって、
    前記連続鋳造ラインと前記熱間圧延ラインは、この順に前記熱延鋼板の搬送経路を形成し、
    前記熱間圧延ラインにおいて、前記連続鋳造ラインで製造された板厚50~150mmの鋳片の板厚中心の固相率が0.8~1.0となる範囲に配置される少なくとも1つの圧延スタンドにおいて、上下の圧延ロールに下記式(1)により求められる異周速率χが0%よりも大きく9%以下の周速差を与える異周速圧延を行った粗バーを、加熱装置によって昇温してから仕上げ圧延することを特徴とする、熱延鋼板の製造方法。
    χ=(|Va-Vb|/Vf)×100 ・・・(1)
    Va:上側の圧延ロールの周速
    Vb:下側の圧延ロールの周速
    Vf:Va及びVbのうち、高周速側の圧延ロールの周速
  2. 前記異周速圧延は、前記搬送経路における前記熱間圧延ラインの最上流側に設けられる圧延スタンドにおいて行われることを特徴とする、請求項1に記載の熱延鋼板の製造方法。
  3. 前記搬送経路における前記異周速圧延を行う圧延スタンドの下流側において、反り防止ロールにより当該異周速圧延により生じる前記鋳片の反りを防止することを特徴とする、請求項1又は2に記載の熱延鋼板の製造方法。
  4. 連続鋳造ラインと熱間圧延ラインが直結された熱延鋼板製造装置であって、
    前記連続鋳造ラインと前記熱間圧延ラインは、この順に熱延鋼板の搬送経路を形成し、
    前記熱間圧延ラインにおいて、前記連続鋳造ラインで製造された板厚50~150mmの鋳片の板厚中心の固相率が0.8~1.0となる範囲に配置される少なくとも1つの圧延スタンドは、上下の圧延ロールに下記式(1)により求められる異周速率χが0%よりも大きく9%以下の周速差を与える異周速圧延スタンドであり、当該異周速圧延スタンドで異周速圧延を行った粗バーを、加熱装置によって昇温してから仕上げ圧延することを特徴とする、熱延鋼板製造装置。
    χ=(|Va-Vb|/Vf)×100 ・・・(1)
    Va:上側の圧延ロールの周速
    Vb:下側の圧延ロールの周速
    Vf:Va及びVbのうち、高周速側の圧延ロールの周速
  5. 前記異周速圧延スタンドは、前記搬送経路における前記熱間圧延ラインの最上流側に設けられることを特徴とする、請求項に記載の熱延鋼板製造装置。
  6. 前記搬送経路における前記異周速圧延スタンドの下流側において、当該異周速圧延スタンドにより生じる前記鋳片の反りを防止する反り防止ロールがさらに設けられることを特徴とする、請求項4又は5に記載の熱延鋼板製造装置。
JP2020049006A 2020-03-19 2020-03-19 熱延鋼板の製造方法及び熱延鋼板製造装置 Active JP7460894B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2020049006A JP7460894B2 (ja) 2020-03-19 2020-03-19 熱延鋼板の製造方法及び熱延鋼板製造装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2020049006A JP7460894B2 (ja) 2020-03-19 2020-03-19 熱延鋼板の製造方法及び熱延鋼板製造装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2021146372A JP2021146372A (ja) 2021-09-27
JP7460894B2 true JP7460894B2 (ja) 2024-04-03

Family

ID=77850246

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2020049006A Active JP7460894B2 (ja) 2020-03-19 2020-03-19 熱延鋼板の製造方法及び熱延鋼板製造装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7460894B2 (ja)

Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2012237035A (ja) 2011-05-11 2012-12-06 Furukawa-Sky Aluminum Corp 高成形性Al−Mg系合金板およびその製造方法

Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2012237035A (ja) 2011-05-11 2012-12-06 Furukawa-Sky Aluminum Corp 高成形性Al−Mg系合金板およびその製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2021146372A (ja) 2021-09-27

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5371421B2 (ja) 連続鋳造および圧延の間に連続性を分断することなく金属ストリップおよび金属シートを製造するプロセスおよびシステム
JP5531109B2 (ja) 双ロール式薄板鋳造工程により製造されたマルテンサイト系ステンレス鋼及びその製造方法
JP6421900B2 (ja) 圧延h形鋼及びその製造方法
JP5775879B2 (ja) マルテンサイト系ステンレス鋼およびその製造方法
RU2491356C1 (ru) Способ и устройство для получения микролегированной стали, в частности трубной стали
JP2009501635A (ja) 中断なしの鋼板の製造方法及びプラント
KR20150119437A (ko) 주조 및 압연을 통한 금속 스트립 제조 방법
JP2016516590A (ja) 金属ストリップを製造するための方法
JP7256383B2 (ja) 熱延鋼板の製造方法
JPH0220650A (ja) 連続鋳造圧延方法
JP7460894B2 (ja) 熱延鋼板の製造方法及び熱延鋼板製造装置
JP7332859B2 (ja) スラブの製造方法
TW202024356A (zh) 薄板鋼板之製造裝置及薄板鋼板之製造方法
JP6120482B2 (ja) 熱間圧延薄鋳造ストリップ品及びその製造方法
JP2021524809A (ja) バッチ運転及び連続運転用の鋳造圧延設備
KR101223107B1 (ko) 마르텐사이트계 스테인리스 열연박판 제조장치 및 마르텐사이트계 스테인리스 열연박판의 제조방법
JP2798694B2 (ja) 薄肉鋳片の製造方法
JP2018130765A (ja) 鋼片の圧延方法及び圧延設備
JP2004237291A (ja) 連続鋳造鋳片の製造方法及びその鋳片を加工した鋼材
JP4415914B2 (ja) 微細フェライト組織を有する熱延鋼板の製造方法
JP2020075291A (ja) 矩形断面鋼片の圧延方法、連続鋳造圧延設備及び圧延設備
JP2006341274A (ja) 鋼板の製造方法
RU2736468C1 (ru) Способ производства рулонного проката из низколегированной стали
JPH0890182A (ja) 広幅薄鋳片の連続鋳造方法
JP5387205B2 (ja) 丸鋳片の連続鋳造方法および連続鋳造設備

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20221104

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20230911

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20231017

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20231127

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20240220

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20240304