JP3037734B2 - 光沢、耐食性および耐リジング性に優れるフェライト系ステンレス鋼板の製造方法 - Google Patents

光沢、耐食性および耐リジング性に優れるフェライト系ステンレス鋼板の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 <産業上の利用分野> 本発明はフェライト系ステンレス鋼板の製造方法に係
り、特に従来に比べて極めて表面光沢、耐食性および耐
リジング性に優れるフェライト系ステンレス鋼板の製造
方法に関する。
<従来の技術> 本発明が対象とする16〜18%のCrを含有し、高温でオ
ーステナイト相が析出するフェライト系ステンレス鋼
は、SUS430で代表され、Cr以外には0.12%以下のC、0.
75%以下のSi、1.00%以下のMn、0.040%以下のPおよ
び0.030%以下のS等を含有し、約850℃以上の温度でオ
ーステナイト相とフェライト相の2相組織となる。その
製造は連続鋳造スラブまたはインゴットを分塊圧延した
スラブを熱間圧延後、必要に応じて熱延板焼鈍、その後
冷間圧延に引き続いて、燃料ガス燃焼雰囲気あるいは還
元性雰囲気で仕上焼鈍を行って製品とする。
SUS430で代表されるフェライト系ステンレス鋼板にお
いて、品質上特に問題となるのは、製品に対してプレス
成形等の加工を行った場合のリジングの発生である。リ
ジングは熱延集合組織が冷延−仕上焼鈍後に残留して生
じる繊維組織間での塑性異方性に起因して発生すること
が知られており、従来から、1)Mn、Ni、Nといったオ
ーステナイト形成元素を増加させオーステナイトポテン
シャルを上昇させる、2)熱延での仕上圧延終了温度低
下により歪蓄積を増加させ、次の焼鈍での再結晶を活性
化させる、3)高温での熱延板焼鈍によって焼鈍中にオ
ーステナイト相を析出させる、4)冷延中に再結晶焼鈍
(2回冷延法)を行う等の方法により熱延集合組織を破
壊する対策が採られてきた。ところが現実には、これら
の対策によってもリジング発生の防止が不十分であるば
かりでなく、1)オーステナイトポテンシャル上昇によ
る延性の劣化、2)熱延での仕上圧延終了温度低下によ
る鋼板の表面性状の劣化、3)高温での熱延板焼鈍によ
る延性の劣化、4)2回冷延法の適用による生産性の低
下という問題を生じている。
この他に、熱間圧延中の再結晶によってリジングを減
少させようとする方法も考えられており、たとえば、特
公昭59−43977号公報では0.01〜0.2%のAlを含有するフ
ェライト系ステンレス鋼を900〜1200℃の温度で加熱保
持後20%/パス以上の圧下を1パス以上行い、その時に
動的再結晶を生じさせてリジングを減少させる方法を開
示している。しかし、このような方法ではAlを添加する
ことにより熱延中のオーステナイト相析出が減少するの
で耐リジング性の向上には不利であり、フェライト系ス
テンレス鋼では強圧下熱延を行っても期待する程動的再
結晶が起こらないのが現実で、十分なリジング防止の対
策とはなっていない。
また、上述のような耐リジング性向上策によってもそ
の効果が十分でないのと同様に、冷延中にリジングと同
じ機構で発生するローピングが、冷延鋼板の光沢を劣化
させ問題となっている。さらに本発明者らは、ローピン
グが冷延鋼板の耐食性をも低下させている重大な事実を
突き止めた。ローピングによる光沢、耐食性の劣化は、
仕上焼鈍を燃焼雰囲気で行う2B仕上げよりも、焼鈍後酸
洗を行わず冷延肌をそのまま製品とする還元性雰囲気焼
鈍によるBA仕上げで顕著な問題となる。冷延中にローピ
ングが発生すると圧延方向の微細なうねりの谷部に圧延
潤滑油による油膜が形成され、その部分でC方向割れに
似た形状を呈するオイルピットが多量に発生し、製品の
光沢を著しく低下させる。さらに、そのようなオイルピ
ットは、発銹の起点となりやすいので、耐食性をも著し
く低下させる結果となっている。
<発明が解決しようとする課題> 本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解決し、冷
延鋼板の延性の劣化および生産性の低下を伴うことなく
熱延集合組織を効果的に破壊し、光沢、耐食性および耐
リジング性に優れるフェライト系ステンレス鋼板の製造
方法を提供することにある。
<課題を解決するための手段> 上記目的を達成するために本発明によれば、重量比で
16〜18%のCrを含有し、高温でオーステナイト相が析出
するフェライト系ステンレス鋼板の熱間圧延、冷間圧
延、仕上焼鈍からなる製造工程において、前記熱間圧延
が連続した複数の圧延パスよりなる粗圧延と仕上圧延に
よって構成され、900〜1100℃の温度範囲で粗圧延して
シートバーとした後、900〜1100℃の温度範囲でそのシ
ートバーを保温後、仕上圧延し、前記粗圧延の最終パス
の圧下率Χと前記粗圧延後の保温時間Yがそれぞれ下記
の条件を満たすことを特徴とする光沢、耐食性および耐
リジング性に優れるフェライト系ステンレス鋼板の製造
方法が提供される。
Y≧271.30÷(Χ−28.30)+6.18 (Χ≧30) Y≧180 (Χ<30) Χ:粗圧延最終パスの圧下率(%) Y:粗圧延後のシートバーの保温時間(秒) また、本発明によれば、重量比で16〜18%のCrを含有
し、高温でオーステナイト相が析出するフェライト系ス
テンレス鋼板の熱間圧延、冷間圧延、仕上焼鈍からなる
製造工程において、前記熱間圧延が連続した複数の圧延
パスよりなる粗圧延と仕上圧延によって構成され、900
〜1100℃の温度範囲で粗圧延してシートバーとした後、
900〜1100℃の温度範囲でそのシートバーを保温後、仕
上圧延し、前記粗圧延の最終パスの圧下率Χと前記粗圧
延後の保温時間Yがそれぞれ下記の条件を満たし、かつ
保温後の仕上圧延において、最終パスを950℃以下の温
度で20%以上の圧下率とすることを特徴とする光沢、耐
食性および耐リジング性に優れるフェライト系ステンレ
ス鋼板の製造方法が提供される。
Y≧271.30÷(Χ−28.30)+6.18 (Χ≧30) Y≧180 (Χ<30) Χ:粗圧延最終パスの圧下率(%) Y:粗圧延後のシートバーの保温時間(秒) 以下に本発明をさらに詳細に説明する。
先に述べたようにリジングおよびローピングの発生お
よびそれに起因する光沢、耐食性の劣化は、熱延集合組
織の残留によって生じることから、本発明者はSUS430鋼
の高温でのフェライト相とオーステナイト相の変態挙動
に着目した研究を重ねた結果、SUS430鋼を制御圧延し熱
延中のオーステナイト相の析出量を増大させることによ
って、フェライト相中に形成される熱延集合組織を破壊
でき、リジングおよびローピングの発生を効果的に抑制
できることを見出した。
SUS430鋼は約850〜1250℃の温度範囲でオーステナイ
ト相が析出しフェライト相とオーステナイト相の2相組
織となるが、900〜1100℃の温度範囲でのオーステナイ
ト相の析出量が最も多く、フェライト相のみの状態のSU
S430鋼を恒温保持した場合にも900〜1100℃の温度範囲
での析出速度が最も大きいことがわかった。本発明者は
熱間圧延での粗圧延最終パスの圧下率を従来の条件であ
る30%として、粗圧延後の熱延途上のシートバーを粗圧
延機と仕上圧延機の間にあるホット・ラン・アウト・テ
ーブルにて1000℃の温度で保温し、冷延−仕上焼鈍後の
耐リジング性との関係を調査したところ、シートバーの
保温によって顕著な耐リジング性向上の効果が認められ
たが、十分な効果を得るには約3分の保温が必要で、生
産性の点でやや問題を有する結果を得た。
そこで、本発明者は、シートバーを保温した場合のオ
ーステナイト相析出におよぼす粗圧延最終パスの圧下率
の影響を検討した結果、粗圧延最終パスの圧下率を増加
させると導入された歪エネルギーによってフェライト相
のオーステナイト相への変態が促進されて、より短時間
で平衡状態に近いオーステナイト相が析出することがわ
かった。すなわち、より短時間のシートバー保温で熱延
集合組織の破壊が可能であるとの知見を得た。
そこで、これらの知見に基づき900〜1100℃の温度範
囲での粗圧延の最終パスの圧下率Χと粗圧延後のシート
バーの保温時間Yが、 Y≧271.30÷(Χ−28.30)+6.18 (Χ≧30) Y≧180 (Χ<30) Χ:粗圧延最終パスの圧下率(%) Y:粗圧延後のシートバーの保温時間(秒) なる条件を満たすことによって、効果的にリジングとロ
ーピングの発生を抑制できるとの結論を得た。第1図は
その範囲を図示したものである。すなわち、粗圧延最終
パスの圧下率を30%以上とすることによって、オーステ
ナイト相析出が促進され、より短時間のシートバー保温
でリジングおよびローピングの発生を抑制できる。粗圧
延最終パスの圧下率が30%未満の場合は180秒以上のシ
ートバー保温が必要である。
ここで、シートバーの保温前の粗圧延による強圧下パ
スは、必ずしも最終の粗圧延パスでなく複数の粗圧延パ
スのいずれでもよいが、後段であるほど、すなわちシー
トバーの保温の直前の粗圧延最終パスで強圧下すること
によって、大きな熱延集合組織の破壊効果が得られる。
粗圧延後のシートバーの保温方法については、実用上
はホット・ラン・アウト・テーブル上でシートバーを保
持し放冷すればよく、一般的な厚み20〜30mmのシートバ
ーでは、たとえば60秒の保持による温度降下は20〜40℃
程度であるので、本発明による冶金的効果を達成する上
では何らさしつかえない。この他の方法としては、シー
トバーのトップ部とボトム部での均質性を得る目的で、
ホット・ラン・アウト・テーブル上のコイルボックスあ
るいは保熱炉によってシートバーの保温を行うことがよ
り好ましい。
このような条件で製造された熱延鋼板は、必要に応じ
てバッチ式あるいは連続式の熱延板焼鈍を施すかあるい
は焼鈍を行わずに、脱スケールし、引き続き1回法ある
いは2回法で冷間圧延したのちBA仕上げあるいは2B仕上
げの製品とすることによって、光沢、耐食性および耐リ
ジング性に優れるフェライト系ステンレス鋼板を製造す
ることができる。
本発明者はさらに、仕上圧延パススケジュールに対す
る検討も行った結果、最終パスを950℃以下の温度で20
%以上の圧下率とすることによって、一層熱延集合組織
の破壊が進み、光沢、耐食性および耐リジング性に極め
て優れるフェライト系ステンレス鋼板を製造することが
できるとの知見を得た。これは、低温度域で強圧下され
ることにより鋼板への歪蓄積が増大することによって、
引き続き熱延板焼鈍する場合あるいは熱延巻取り後、コ
イルを保温あるいはコイルの潜熱により自己焼鈍し、焼
鈍を省略する場合の再結晶が活性化し、(100)遷移組
織が破壊されるためと考えられる。ここで、仕上圧延に
より強圧下パスは、必ずしも最終の仕上圧延パスでなく
複数の仕上圧延パスのいずれでもよいが、後段であるほ
ど、すなわちより低温度での強圧下によって、大きな熱
延集合組織の破壊効果が得られる。
次に、本発明の構成要件の限定理由について述べる。
Crの含有量を16〜18%に限定した理由は、発明の対象
鋼はSUS430であり、Crが16%未満では十分な耐食性が得
られず、Crが18%を超えるとオーステナイト相の析出が
なく耐リジング性および耐ローピング性が劣るので、Cr
の含有量を16〜18%に限定した。同様に高温でオーステ
ナイト相が析出しないと耐リジング性および耐ローピン
グ性が劣り、本発明による製造方法によっても耐リジン
グ性および耐ローピング性向上が期待できないので、高
温でオーステナイト相が析出するフェライト系ステンレ
ス鋼に限定した。
粗圧延の最終パス温度とシートバーの保温を行う温度
を900〜1100℃とした理由は、900℃未満および1100℃を
超える温度では、最終パスでの強圧下およびシートバー
保熱によるオーステナイト相析出量の増大の効果がない
ので900〜1100℃に限定した。粗圧延の最終パスの圧下
率Χと粗圧延後のシートバーの保温時間Yを、 Y≧271.30÷(Χ−28.30)+6.18 (Χ≧30) Y≧180 (Χ<30) Χ:粗圧延最終パスの圧下率(%) Y:粗圧延後のシートバーの保温時間(秒) に限定した理由は、この条件を満たすことによって、効
果的にリジングとローピングの発生を抑制できるからで
ある。
仕上圧延最終パスの温度を950℃以下に限定した理由
は、950℃を超える温度での強圧下を行っても、既に粗
圧延の最終パスの強圧下とシートバーの保温によりオー
ステナイト相析出が飽和しているので、オーステナイト
相析出の効果はなく、与えた歪が急速に回復してしま
い、仕上圧延最終パス強圧下の目的である歪蓄積の効果
がないので950℃以下に限定した。
仕上圧延最終パスの圧下率を20%以上に限定した理由
は20%未満の圧下率では十分な歪蓄積の効果が得られな
いからである。
<実施例> 以下に本発明を実施例に基づき具体的に説明する (実施例1) 第1表に示した化学成分の厚さ200mmの連鋳スラブを
加熱後粗圧延機および仕上圧延機からなる熱間圧延機で
熱延し、その際の粗圧延後のシートバーの厚みを30mm、
仕上圧延後の板厚を4mmとした。これらを一般的な方法
で熱延板焼鈍し1回法で0.7mmの厚みに冷間圧延したの
ち、還元性ガス雰囲気中で光輝焼鈍して製品とした。
この時の、熱延条件と製品の特性の関係を第2表に示
す。リジングのうねり高さは、製品に圧延方向の25%の
伸び加工を与えた後、圧延方向に直角な方向について触
針式表面粗度計を用いてうねり高さを測定した。このう
ねり高さが10μm以下の場合は、肉眼ではリジングの発
生がほとんど観察できず、耐リジング性に極めて優れた
状態である。ローピングのうねり高さは、製品表面の圧
延で生じたうねり高さを触針式表面粗度計を用いて測定
した。このうねり高さが0.02μm以下の場合は、肉眼で
はローピングの発生がほとんど観察できず、耐ローピン
グ性に極めて優れた状態である。光沢度の測定は、JIS
Z 8741に準じて測定した。この光沢度が1000を超えるよ
うな場合は、従来のSUS430に比べて極めて光沢に優れて
いる。孔食電位の測定は、JIS G 0577に準じ、製品表面
を研磨せずに行った。SUS430の光輝焼鈍材の孔食電位
は、一般的には100〜200(mV vs Ag/AgCl)程度であ
る。
第2表に示した結果からわかるように、本発明に従え
ば極めて耐リジング性、耐ローピング性、表面光沢およ
び耐食性にすぐれる冷延鋼板が製造できる。
<発明の効果> 本発明は以上説明したように構成されているので、本
発明によれば、熱延工程における粗圧延条件、シートバ
ー保温条件あるいはそれらと仕上圧延条件を組み合わせ
ることによって、従来のフェライト系ステンレス鋼板で
問題となっていたリジングとローピングの発生を著しく
減少させ、光沢向上によって製品価値を大きく高めると
ともに、従来、成分と一義的に対応すると考えられてい
た耐食性をも向上させることができるという効果を奏す
る。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明における粗圧延最終パスの圧下率
(%)とシートバー保温時間(秒)との関係を示すグラ
フである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C21D 9/46,8/02 C22C 38/00 - 38/18

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量比で16〜18%のCrを含有し、高温でオ
    ーステナイト相が析出するフェライト系ステンレス鋼板
    の熱間圧延、冷間圧延、仕上焼鈍からなる製造工程にお
    いて、前記熱間圧延が連続した複数の圧延パスよりなる
    粗圧延と仕上圧延によって構成され、900〜1100℃の温
    度範囲で粗圧延してシートバーとした後、900〜1100℃
    の温度範囲でそのシートバーを保温後、仕上圧延し、前
    記粗圧延の最終パスの圧下率Χと前記粗圧延後の保温時
    間Yがそれぞれ下記の条件を満たすことを特徴とする光
    沢、耐食性および耐リジング性に優れるフェライト系ス
    テンレス鋼板の製造方法。 Y≧271.30÷(Χ−28.30)+6.18 (Χ≧30) Y≧180 (Χ<30) Χ:粗圧延最終パスの圧下率(%) Y:粗圧延後のシートバーの保温時間(秒)
  2. 【請求項2】重量比で16〜18%のCrを含有し、高温でオ
    ーステナイト相が析出するフェライト系ステンレス鋼板
    の熱間圧延、冷間圧延、仕上焼鈍からなる製造工程にお
    いて、前記熱間圧延が連続した複数の圧延パスよりなる
    粗圧延と仕上圧延によって構成され、900〜1100℃の温
    度範囲で粗圧延してシートバーとした後、900〜1100℃
    の温度範囲でそのシートバーを保温後、仕上圧延し、前
    記粗圧延の最終パスの圧下率Χと前記粗圧延後の保温時
    間Yがそれぞれ下記の条件を満たし、かつ保温後の仕上
    圧延において、最終パスを950℃以下の温度で20%以上
    の圧下率とすることを特徴とする光沢、耐食性および耐
    リジング性に優れるフェライト系ステンレス鋼板の製造
    方法。 Y≧271.30÷(Χ−28.30)+6.18 (Χ≧30) Y≧180 (Χ<30) Χ:粗圧延最終パスの圧下率(%) Y:粗圧延後のシートバーの保温時間(秒)
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