JP3771639B2 - 耐ローピング性、リジング性および成形性に優れたフェライト系ステンレス鋼板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フェライト系ステンレス鋼板の問題点であるリジング、ローピングの発生を抑制し、かつ深絞り性の優れたフェライト系ステンレス鋼板を製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
フェライト系ステンレス鋼板は、プレス加工時にリジングと呼ばれる圧延方向に沿った特有の凸凹が生じ、製品の表面品質の著しい劣化を招くことがある。
このリジング防止策としては、低温仕上げ圧延を行ない、その後熱延板焼鈍をした後、冷延、焼鈍をする方法(特公昭45−34016号公報)や、低温熱延と高温巻取を組み合わせた方法(特開平1−136930号公報)等が開示されている。しかし、このような熱延を低温にし、巻取を高温にする方法は、既存の熱延設備を使用することを前提にすると達成するのが難しい。また、前者が提唱している熱延板焼鈍を加えることは製造コストの増加を招く。
また、冷延時には、ローピングと称し、リジングと類似した圧延方向に沿った凸凹が生じる現象がある。このローピングも商品の表面品質を劣化するのでリジング抑制と同様の対応策が実行されている。
【0003】
一方、フェライト系ステンレス鋼板は深絞り加工に供されることが多く、平均r値の向上策としては鋼をIF(Interstitial atom free)化すること(特公昭54−11770号公報、特公昭57−55787号公報等)や2回冷延法の技術が開示されている。後者の技術は冷延と焼鈍を2回繰り返すため製造コストが高くなる欠点がある。また、IF系のフェライト系ステンレス鋼板も高平均r値の達成とリジング、ローピングの抑制を行なうには1回冷延法で製造する場合は熱延板焼鈍を行なうのが一般的である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、光沢性に優れ、ローピング及びリジングの発生を抑制し、かつ高いr値のフェライト系ステンレス鋼冷延鋼板を1回冷延法で製造する方法を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、光沢性、耐ローピング性、耐リジング性に優れた超深絞り用フェライト系ステンレス鋼板を熱延板焼鈍を省略した1回冷延法で製造する技術の開発に取り組み、以下の知見を得た。
▲1▼仕上圧延前に再結晶が起こっていない場合は、リジングおよびローピングが顕著に起こる。
▲2▼熱延板の組織が再結晶組織でないと、リジング、ローピングが生じる。
▲3▼第2相が10%以上存在しないと、熱延板の組織がたとえ再結晶組織でも平均粒径が100μm以上になると、ローピングが生じる。
▲4▼第2相が10%以上存在すると、1回冷延法では高い平均r値が達成されない。
▲5▼超深絞り性を得るにはIF化が必要。
本発明は、以上の知見に基づき、鋼としてはIF成分系で、仕上圧延前、熱延板状態で再結晶組織を呈し、かつ熱延組織の平均結晶粒径が100μm以下になる製造方法を鋭意検討した結果なされたものである。
【0006】
すなわち、本発明は、
重量%で、
Cr:11〜25%、 C :0.005%以下、
N :0.008〜0.03%、
Ti:C/12+N/14<Ti/48<5(C/12+N/14)
を含有し、さらに必要に応じて、
B :0.005%以下、 Mo:3%以下、
Ni:2%以下、 Cu:3%以下
の1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物よりなるフェライト系ステンレス鋼のスラブを1250℃以下に加熱し、次に1100〜950℃の温度域での1パスあるいは2パス以上の合計圧下率が50%以上、かつ終了温度が950℃以上になるような粗圧延を行ない、次いで粗圧延終了から仕上連続圧延機に噛み込まれるまでに少なくとも10秒以上の時間をとり、その後、最終の2パスの合計圧下率が40%以上、かつ仕上温度が850℃以上となる仕上圧延を行ない、仕上圧延直後から5秒間の平均冷却速度を25℃/sec以下とし、巻き取った後、通常の冷延、焼鈍を施すことを特徴とする耐ローピング性、リジング性および成形性に優れたフェライト系ステンレス鋼板の製造方法である。
【0007】
以下に、本発明を詳細に説明する。
まず、成分の限定条件について述べる。
本発明において、TiをC/12+N/14<Ti/48を満たす範囲で添加することとしたのは、鋼中のCおよびNを析出物の形で固定することによりIF化を図り、製品の深絞り性を向上させるのに有利な方位である(111)<112>,(554)<225>などの集積度の高い集合組織を有する鋼板を得ることができるからである。また、Tiの添加量が多いことは耐食性には好ましいが、過剰な添加は再結晶を抑制するので、Ti/48<5(C/12+N/14)とした。
【0008】
C:0.005%以下としたのは、これを超えてCを添加するとTiCの析出量が多くなり、熱延時の再結晶が抑制されるためである。
【0009】
N量の調整は、本発明の重要なポイントである。NはTiと結合して析出物を生成することにより鋳造組織を微細化することができ、これが熱延時の再結晶を促進する。また、粗大なTiNを核生成サイトとして再結晶が起こり、再結晶が促進されている可能性もある。いずれの原因にしろ熱延時の再結晶を顕著に促進するために、Nの添加量のを0.008%以上とする。しかし、N量が多すぎると、TiNが増え、疵の発生が懸念されるので0.03%以下とした。
【0010】
Crについては、耐食性の劣化が懸念されるので、11%以上とした。しかしながら、Crの増加は加工性を劣化するので25%以下とした。
【0011】
上述の基本成分組成において、2次加工性の向上のためにBを添加することは使用用途によっては有効であるが、B量が多くなると再結晶が抑制されるので、Bの添加量は0.005%以下とした。
他の成分としては、耐食性の観点からMo,Ni,Cuの添加は使用用途によっては有効であるが、Mo>3%,Ni>2%,Cu>3%の添加は再結晶を抑制するので、Mo:3%以下,Ni:2%以下,Cu:3%以下とした。
【0012】
次に、プロセス条件の限定について述べる。
スラブの加熱温度を1250℃以下としたのは、1250℃を超えると結晶粒が粗大化して、熱延後の再結晶が抑制されるためである。また、加熱温度の下限については金属学的には限定する理由はないが、本発明の条件を満足する熱延の仕上温度を確保するには1050℃以上の加熱温度が望ましい。
【0013】
次に、1100〜950℃の温度域で1パスあるいは2パス以上の合計の圧下率が50%以上、かつ終了温度を950℃以上の粗圧延を行ない、仕上圧延開始までに少なくとも10秒以上の時間を取るようにするのは、仕上圧延の前に再結晶組織を得るためである。これらの条件から外れると、仕上圧延前に再結晶組織が得られず、耐ローピング性、耐リジング性が確保されない。
【0014】
また、最終の2パスの合計圧下率が40%以上かつ仕上温度が850℃以上で仕上げ圧延を行ない、仕上圧延直後から5秒間の平均冷却速度を25℃/sec以下とするのは、これにより熱延組織が再結晶組織で、かつフェライトの平均粒径が100μm以下となり、ローピング、リジングの発生が抑制され、高いr値の冷延鋼板が製造できるためである。
【0015】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明する。
表1に示した成分組成を有する鋼の250mm厚スラブを加熱し、粗圧延、仕上圧延を施した後に、捲取り、4mm厚の熱延板を得た。そのときの加熱温度、粗圧延、仕上圧延、捲取温度の各条件を表2に示す。なお、粗圧延後の厚みは30mmとした。次に、冷延率80%で0.8mmに冷延した後、820℃で焼鈍した。その後、焼鈍板のr値、耐ローピング性、耐リジング性を評価した。
【0016】
【表1】
【0017】
【表2】
【0018】
r値はJIS5号試験片を15%引張った後の寸法変化より求めた。r値はr=(r0 +r90+2×r45)/4の関係式より求めた。ここでr0 は圧延方向に平行な方向の試験片より求めたr値、r90は圧延方向に垂直な方向、r45は圧延方向に45°傾いた方向の試験片より求めたr値である。深絞り性に優れるにはr値は少なくとも1.6以上が必要とされる。
【0019】
耐ローピング性を表す指標としては、触針式粗度計を用いて製品板の圧延方向に垂直な方向のうねり高さを求めた。うねり高さが0.2μm以下であれば、肉眼でローピングはほとんど観察できず、極めて優れた状態と判断される。
【0020】
耐リジング性は、圧延方向から切り出したJIS5号引張試験片を15%引張った後、表面を粗度計で測定して鋼板のうねり高さより評価した。ランク1はうねりの高さが20μm以下、ランク2:20〜30μm、ランク3:30〜40μm、ランク4:40〜70μm、ランク5:70μm以上とした。ランク2までは実用上問題がないとされている。
【0021】
以上の評価結果を表3に示した。本発明の範囲を満足した実験番号1,2,3,4,10,11,13,14,15,16,17,18,22の材料はいずれもr値が高く、ローピング、リジングも良好である。
【0022】
【表3】
【0023】
これに対して、仕上圧延後5秒間の平均冷却速度が30℃/secと大きかった実験番号5の材料は、熱延板の再結晶が十分に起きずローピング、リジング、r値すべてにおいて好ましい結果が得られなかった。特に、特性の顕著な劣化が見られたのは仕上最終2パスの合計圧下率が低かった実験番号6の材料であった。仕上圧延温度が低かった実験番号7の材料も好ましい特性が得られなかった。粗圧延において1100〜950℃の温度域での合計圧下率が低かった実験番号8及び粗圧延の最終パスの温度が低かった実験番号9の材料はともに大きなローピングを示した。加熱温度が高かった実験番号12の場合も大きなローピングを示した。比較鋼を用いた実験番号19,20,21の材料では優れたローピング、リジング特性が得られなかった。特にIF化されていない実験番号19のr値は低い。
【0024】
【実施例】
【0025】
【発明の効果】
本発明によれば、熱延板焼鈍をすることなしに耐ローピング性、耐リジング性に優れた超深絞り性フェライト系ステンレス鋼板を1回冷延法で製造することができる。
Claims (2)
- 重量%で、
Cr:11〜25%、
C :0.005%以下、
N :0.008〜0.03%、
Ti:C/12+N/14<Ti/48<5(C/12+N/14)
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物よりなるフェライト系ステンレス鋼のスラブを1250℃以下に加熱し、次に1100〜950℃の温度域での1パスあるいは2パス以上の合計圧下率が50%以上、かつ終了温度が950℃以上になるような粗圧延を行ない、次いで粗圧延終了から仕上連続圧延機に噛み込まれるまでに少なくとも10秒以上の時間をとり、その後、最終の2パスの合計圧下率が40%以上、かつ仕上温度が850℃以上となる仕上圧延を行ない、仕上圧延直後から5秒間の平均冷却速度を25℃/sec以下とし、巻き取った後、通常の冷延、焼鈍を施すことを特徴とする耐ローピング性、リジング性および成形性に優れたフェライト系ステンレス鋼板の製造方法。 - 重量%で、
Cr:11〜25%、
C :0.005%以下、
N :0.008〜0.03%
Ti:C/12+N/14<Ti/48<5(C/12+N/14)
を含有し、さらに、
B :0.005%以下、
Mo:3%以下、
Ni:2%以下、
Cu:3%以下
の1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物よりなるフェライト系ステンレス鋼のスラブであることを特徴とする請求項1記載の耐ローピング性、リジング性および成形性に優れたフェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
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