JP3913088B2 - 深絞り性に優れた中・高炭素鋼板の製造方法 - Google Patents

深絞り性に優れた中・高炭素鋼板の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、深絞り性に優れた中・高炭素鋼板を得るための製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
鋼中のC含有量が概ね0.20〜0.90質量%のいわゆる中・高炭素鋼板は、焼入れ強化が可能であるとともに焼鈍状態ではある程度の加工性も有しているため、自動車部品をはじめ各種機械部品や軸受け部品の素材として広く使用されている。部品の製造にあたっては、一般的には打抜き加工や曲げ加工が施され、さらに比較的軽度な絞り加工,伸びフランジ成形が施されることもある。また、部品形状が複雑な場合は、二ないし三部品を溶接して製造される場合も多い。そしてこれらの加工部品の多くは熱処理が施されて各種用途の部品に仕上げられる。
【0003】
ところが近年、部品の製造コストを低減すべく、部品の一体成形や、部品加工の工程簡略化が進められている。このことは素材側から見ればより加工率の高い(=塑性変形量の大きい)加工に耐えなければならないことを意味する。つまり、加工技術の高度化に伴い、中・高炭素鋼板自体に、より高い加工性が要求されるようになってきた。特に昨今では、打抜き加工や曲げ加工のみならず、深絞り工程を経て得られる複雑形状の部品にも中・高炭素鋼板を適用するケースが増えつつある。
【0004】
特開昭63−317629号公報には、絞り性の良好な高炭素冷延鋼板の製造法が開示されている。これは、化学成分を特定範囲に規制した鋼に冷延と焼鈍を施して鋼中のセメンタイトを黒鉛化し、その後2回目の冷延と再結晶焼鈍を施すものである。この方法によれば、軟鋼板並みの優れた深絞り性を有する高炭素冷延鋼板が得られるという。しかしこの方法は、黒鉛化のためにMn,Al,Nの添加量を限定する必要があり、また製造工程も増えるので、コスト増を余儀なくされる。
【0005】
特開平8−246051号公報には、特定組成の鋼を特定条件で熱延し、さらに必要に応じて冷延・熱処理を組み合わせることにより、鋼中炭素の50%以上を黒鉛化する加工性に優れた中炭素鋼板の製造方法が開示されている。この方法は、特開昭63−317629号のものより工程は簡略化されているが、黒鉛化のためにSi,Nb,B等の特定元素の添加が必要である。
【0006】
特開平11−61272号公報には、ベイナイト組織を持つ特定組成の高炭素鋼熱延鋼板を焼鈍して球状化セメンタイトと針状フェライト結晶粒からなる組織としたのち、冷延を施すことにより、高炭素鋼板のr値を向上させる方法が開示されている。この方法ではBの添加が必要であることに加え、熱延では低温巻取が必要となり製造性に劣る。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
これらの技術は、特定の成分組成に調整された鋼種を用いることを前提としており、一般的に市販されている中・高炭素鋼の鋼種に広く適用できるものではない。そこで本発明は、特殊元素を添加することなく、昨今、特に重要視されつつある中・高炭素鋼板の深絞り性を向上させる技術を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
発明者らは詳細な検討の結果、特定条件下での仕上冷延と、その後に行う仕上焼鈍を組み合わせることにより、特殊元素を添加することなく、中・高炭素鋼板の深絞り性を改善することが可能であることを見出した。
すなわち、上記目的は、質量%で、C:0.20〜0.90%,Si:1.0%以下,Mn:2.0%以下,Cr:0(無添加)〜1.6%,Mo:0(無添加)〜0.5%,Cu:0(無添加)〜0.3%,Ni:0(無添加)〜2.0%,Ti:0(無添加)〜0.10%,B:0(無添加)〜0.010%,P:0.03%以下,S:0.02%以下,T.Al(トータルAl):0.1%以下で、残部がFeおよび不可避的不純物からなる熱延鋼板または焼鈍鋼板を出発材料とし、これに下記(a)(b)を満たす条件で仕上冷延を施し、その後、仕上焼鈍を施す深絞り性に優れた中・高炭素鋼板の製造方法によって達成される。
(a)少なくとも圧延最終パスに、表面粗さRaが0.20〜1.50μmのワークロール、あるいはさらにロール径が50〜200mmであるワークロールを用いる。
(b)仕上冷延のトータル圧延率を20〜70%とする。
上記仕上焼鈍は、
i )仕上焼鈍が、 650 720 ℃で 10 60 時間保持する条件、
ii )仕上焼鈍が、 650 720 ℃で 4 30 時間保持後に 730 770 ℃で 4 20 時間保持し、その後 650 720 ℃の温度範囲まで徐令してこの温度範囲で 0 30 時間保持する条件、
のいずれかが採用される。
【0009】
ここで、表面粗さRaは、JIS B 0601に規定される算術平均粗さRaを意味する。また、Cr,Mo,Cu,Ni,Ti,Bの下限を0(無添加)としたのは、これらの元素はSi,Mn等と異なり、一般的な製鋼プロセスにおいて原料から混入してこないのが通常であるため、無添加の場合は0%(一般的な分析手法による検出限界以下)となることを考慮したものである。なお、本発明において「鋼板」には「鋼帯」が含まれる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の対象鋼は、C含有量が0.20〜0.90質量%の中・高炭素鋼であり、一般的な市販の中・高炭素鋼が使用できる。以下に代表的な成分元素について説明する。
【0012】
Cは、炭素鋼において最も基本となる合金元素であり、その含有量によって焼入れ硬さおよび焼鈍状態での炭化物量が大きく変化する。C含有量が0.20質量%未満では各種機械構造部品に適用する上で十分な焼入れ硬さが得られない。C含有量が0.90質量%を超えると、熱延後の靱性が低下して鋼帯の製造性・取り扱い性が悪くなる。また、焼鈍後に十分な延性が得られなくなり、加工度の高い部品への適用が困難になる。したがって、本発明では適度な焼入れ性と良好な製造性・加工性を兼ね備えた素材鋼板を提供する観点から、C含有量が0.20〜0.90質量%の範囲の鋼を対象とする。
【0013】
Siは、延性への影響が大きい元素である。Si含有量が増大すると固溶強化によりフェライトが硬化し、場合によっては成形加工時に割れが発生する。また製造過程で鋼板表面にスケール疵が発生しやすくなり、表面品質の低下を招く。このため、Siは1.0質量%以下とすることが望ましい。加工性を重視する用途では0.1質量%以下に制限することが好ましい。
【0014】
Mnは、鋼板の焼入れ性を高め、強靱化に有効である。ただし、2.0質量%を超えるとフェライト相が硬化し、加工性が劣化する。
【0015】
Crは、焼入れ性を改善するとともに焼戻し軟化抵抗を大きくする。ただし、1.6質量%を超えると、A1点以下での長時間焼鈍やA1点以上の加熱を利用した焼鈍を施しても軟質化しにくく、焼入れ前のプレス成形性が劣化する。
【0016】
Moは、少量の添加で焼入れ性と焼戻し軟化抵抗の改善に寄与する。しかし、0.5質量%を超えるとCrと同様に焼入れ前のプレス成形性が劣化する。
【0017】
Cuは、熱延中に生成する酸化スケールの剥離性を向上させるので、鋼板の表面性状の改善に有効である。しかし、0.3質量%を超えると溶融金属脆化により鋼板表面に微細なクラックが生じやすくなる。
【0018】
Niは、焼入れ性を改善するとともに低温脆性を抑制する。また、Cu添加によって問題となる溶融金属脆化を打ち消す作用があるので、特にCuを約2.0質量%以上添加する場合にはCuと同程度のNiを含有させることが極めて有効である。しかし、Niが2.0質量%を超えると焼入れ前のプレス成形性が劣化する。
【0019】
Tiは、溶鋼の脱酸調整に添加される元素であるが、脱窒作用および固溶Nの固定作用を有するので、B添加時には有効B量を高めるうえで効果的である。さらに炭窒化物を形成して焼入れ時の結晶粒粗大化を抑制する。これらの作用を安定して得るためには0.01質量%以上のTi添加が望ましい。しかし、過剰のTi添加はコスト増を招くばかりでなく、延性を劣化させるので、Ti含有量は0.10質量%以下とすることが望ましい。
【0020】
Bは、ごく微量の添加で鋼材の焼入れ性を大幅に向上させる。また、粒界の歪みエネルギーを低下させることによって粒界を強化する。このような作用を安定して得るためには0.0005質量%以上のB添加が望ましい。しかし、0.010質量%を超えるとその効果は飽和し、逆に靱性が劣化する。
【0021】
Pは、延性や靱性を劣化させるので、0.03質量%以下に抑えることが望ましい。
Sは、MnS系介在物を形成し、この介在物が多くなると加工性が劣化する。本発明の製造方法ではSを特別に低減していない一般的な市販鋼に対しても深絞り性の向上効果は得られる。しかし、Cが0.90質量%近くまで高くなった場合でも高い加工性を安定して確保するためには、Sを0.02質量%以下に低減した鋼を用いるのが望ましい。
【0022】
Alは、溶鋼の脱酸剤として添加されるが、鋼中のT.Al量が0.1質量%を超えると鋼の清浄度が損なわれて鋼板に表面疵が発生し易くなる。
【0023】
本発明では、仕上冷延に供する出発材料として「熱延鋼板」または「焼鈍鋼板」を用いる。ここで「熱延鋼板」とは、熱延後に熱処理を施していない熱延ままの鋼板を意味する。「焼鈍鋼板」とは、熱延後に焼鈍、または冷延・焼鈍を施したものを意味し、これは「熱延焼鈍鋼板」と「冷延焼鈍鋼板」に分類できる。工程別に出発材料の種類を示すと以下のとおりである。なお、熱延後,焼鈍後には酸洗を行うことができる。
・熱延まま…「熱延鋼板」
・熱延→焼鈍…「熱延焼鈍鋼板」
・熱延→冷延→焼鈍…「冷延焼鈍鋼板」
・熱延→焼鈍→冷延→焼鈍…「冷延焼鈍鋼板」
【0024】
仕上冷延は、鋼板製品の最終的な板厚を決定付ける1パスまたは複数パスからなる冷間圧延工程である。本発明では、この仕上冷延の少なくとも圧延最終パス(1パス圧延の場合は当該パス)に、表面粗さRaが0.20〜1.50μmに調整されたワークロールを用いる。このような条件で仕上冷延を行うと鋼板表面には適度の粗さの凹凸が形成され、深絞り加工において、金型と鋼板表面の凹凸の間に適量の潤滑油が入り込み、金型と鋼板表面の間の摩擦が軽減される。その結果、「かじり」等の加工不良が防止され、深絞り性は大幅に向上する。少なくとも圧延最終パスに上記Ra値に調整されたワークロールを用いるのは、鋼板表面に形成される凹凸は、圧延最終パスのワークロール表面の凹凸形態を最も大きく反映するからである。
【0025】
圧延最終パスに用いるワークロールの表面粗さがRa:0.20μm未満の場合は、鋼板に形成される表面凹凸が小さくなり、深絞り加工において金型と鋼板表面の間に潤滑油が十分に入り込まないため「かじり」等の加工不良が発生し、深絞り性はほとんど向上しない。後述する図1のデータで実証されるように、Ra:0.2μmを境にして限界絞り高さの向上効果は大きく変化する。一方、ワークロールのRaが1.50μmを超えると、鋼板の表面粗さが粗くなりすぎることにより深絞り加工時の金型と鋼板との間の摩擦が増大するため、粗い凹凸によって潤滑油が多く供給されても深絞り性は低下するようになる。
【0026】
多段ミル(タンデム・ミル)を用いて連続圧延する場合は、例えば最終スタンドのみにRaが0.20〜1.50μmに調整されたワークロールを用い、その最終スタンドでの圧下率を5%以上に設定する方法を採用することができる。リバース・ミルを使用して複数パスの仕上冷延を行う場合は、全パスを通してRa:0.20〜1.50μmのワークロールを使用してもよいし、初めは通常のワークロールを用い、圧延最終パスのみRa:0.20〜1.50μmのワークロールに取り替えて圧延してもよい。前者の場合は途中でロール交換しなくて済むため生産性の面で有利であり、後者の場合はワークロールの表面をRa:0.20〜1.50μmに調整する作業頻度を少なくすることができる点で有利である。
【0027】
発明者らは、仕上冷延に使用するワークロールの「径」と深絞り性向上効果の関係についても詳細に調査した。その結果、径の小さいワークロールを用いることが深絞り性を改善する上で有利であることを見出した。特に、圧延最終パスに用いるRa:0.20〜1.50μmに調整されたワークロールに直径200mm以下の小径ロールを用いるのが効果的である。ただし、ワークロール径が50mm未満になるとロールの剛性不足に起因して精度の良い冷延ができなくなる。このため、直径50〜200mmのワークロールを用いることが望ましい。
【0028】
このように本発明は、鋼板表面に形成した凹凸による潤滑油の保持効果によって深絞り性を顕著に向上させるものであるが、その効果を十分に発揮させるためには、鋼板の集合組織が深絞り性に有利な状態になっている必要がある。そのような集合組織は、適正な圧延率で行う仕上圧延と、その後に施される仕上焼鈍の組み合わせによって実現される。
【0029】
仕上圧延のトータル圧延率が20%未満では、仕上焼鈍を施したときに深絞り性に好ましい集合組織が十分に発達しない。一方、仕上圧延のトータル圧延率が70%を超えると蓄積されるせん断歪が多くなり、その後の焼鈍でランダム方位を有する再結晶粒が生成して深絞り性は向上しない。このため、本発明では仕上冷延のトータル圧延率を20〜70%に規定した。
【0030】
仕上焼鈍は、一般的なバッチ焼鈍炉を用いて実施することができる。仕上焼鈍のヒートパターンとしては、 i 650〜720℃で10〜60時間保持する条件、あるいは、 ii 650〜720℃で4〜30時間保持後に730〜770℃で4〜20時間保持し、その後650〜720℃の温度範囲まで徐令して650〜720℃で0〜30時間保持する条件(多段階焼鈍)が採用される
【0031】
【実施例】
〔実施例1〕
表1に示す化学組成の鋼を溶製した。表中には、鋳片から切り出した試料をそのまま900℃で5分間保持したのち水焼き入れした場合の「焼入れ硬さ」を示した。
【0032】
【表1】
Figure 0003913088
【0033】
表1のA鋼は、C量が0.06質量%と低いので、焼入れ後に機械部品として必要な硬度が得られないものであった。A鋼を除く鋼について熱延および酸洗を行い、「熱延鋼板」を得た。さらに熱延鋼板の一部から「熱延焼鈍鋼板」,「冷延焼鈍鋼板」を製造し、これらを仕上冷延に供する出発材料とした。その際、焼鈍は以下のCA1またはCA2のいずれかの条件で行った。
〔CA1〕:650〜720℃で10〜60時間保持
〔CA2〕:650〜720℃で4〜30時間保持→730〜770℃で4〜20時間保持→(徐冷)→650〜720℃で0〜30時間保持
出発材料の製造工程をまとめると以下のとおりである。
・熱延まま…「熱延鋼板」
・熱延→焼鈍CA1またはCA2…「熱延焼鈍鋼板」
・熱延→冷延10〜60%→焼鈍CA1またはCA2…「冷延焼鈍鋼板」
・熱延→焼鈍CA1またはCA2→冷延10〜60%→焼鈍CA1またはCA2…「冷延焼鈍鋼板」
【0034】
これらの材料に仕上冷延および仕上焼鈍を施した。仕上冷延は4パス圧延で行い、その圧下率を40%とした。ワークロールの表面粗さの影響を見るため、種々の表面粗さに調整したワークロールを用いた。ロール径は60〜400mmとした。なお、仕上冷延後の板厚が1.0mmになるように、仕上冷延前の板厚を研削などにより揃えておいた。仕上焼鈍は上記のCA1またはCA2の条件で行った。
【0035】
仕上焼鈍後の材料について、深絞り試験を実施し、限界絞り高さを測定した。深絞り試験は、90mmφの円形に打ち抜いた板厚1.0mmの鋼板の両面に潤滑油を塗布して、直径40mmφ,肩R6mmの平頭ポンチを用いて行った。限界絞り高さは、鋼板が破断した時点のポンチの高さで評価した。
結果を表2に示す。
【0036】
【表2】
Figure 0003913088
【0037】
表2において、仕上冷延で用いたワークロールの表面粗さRaが0.20μmより小さい比較例(No.3,7,12,21,28,33,36,36)、および1.50μmより大きい比較例(No.2,6,9,11,18,20,25,27,31,35,42)は、いずれも限界絞り高さが14.5mm以下と低く、深絞り性の改善効果は小さかった。また、C含有量が本発明規定範囲から外れて高いNo.43も限界絞り高さは低かった。これに対し、表面粗さRaが0.20〜1.50μmに調整されたワークロールを用いた本発明例(No.1,4,5,8,10,13,14,15,16,17,19,22,23,24,26,29,30,32,34,37,38,40,41)では、限界絞り高さは15.5mm以上と高く、深絞り性の顕著な改善効果が認められた。
【0038】
図1は、表2のデータについて、ワークロール表面粗さと限界絞り高さの関係をプロットしたものである(ただし成分組成が本発明規定範囲を外れるNo.43を除く)。ロール表面粗さRa:0.20μmを境に深絞り性の改善効果が大きく変化することがわかる。そして、Ra:0.20〜1.50μmのワークロールを使用した場合にのみ優れた深絞り性改善効果が得られた。
【0039】
〔実施例2〕
表1のF鋼を用いて、深絞り性に及ぼす仕上冷延率(トータル圧延率)の影響を調べた。F鋼の熱延鋼板に700℃×20時間の焼鈍を施した材料について、種々のトータル圧延率で仕上冷延を行い、その後、700℃×20時間の仕上焼鈍を施し、実施例1と同様の方法で深絞り試験を行った。
仕上冷延はリバース式のミルを用いて1パス圧延または複数パス圧延で行った。ワークロールは表面粗さRaが0.4μm,直径100mmのものを用いた(複数パス圧延の場合は1パス目から最終パスまでロール交換しなかった)。なお、仕上冷延後の板厚が1.0mmになるように、仕上冷延前の板厚を研削などで予め調整しておいた。
結果を表3に示す。
【0040】
【表3】
Figure 0003913088
【0041】
仕上冷延のトータル圧延率が20%未満の比較例(No.1,2)は限界絞り高さが14.0mm以下と低かった。また、同70%を超える比較例(No.8)も限界絞り高さが14.4mmと低かった。これに対し、同20〜70%の範囲で行った本発明例(No.3〜6)では15.0mm以上の高い限界絞り高さが得られた。
【0042】
〔実施例3〕
表1のH鋼を用いて、深絞り性に及ぼす仕上冷延のワークロール径の影響を調べた。H鋼の熱延鋼板に700℃×20時間の焼鈍を施した材料について、種々のワークロール径にて仕上冷延を行い、その後、700℃×20時間の仕上焼鈍を施し、実施例1と同様の方法で深絞り試験を行った。
仕上冷延はリバース式のミルを用いて、パス回数:3パス,トータル圧延率60%とし、1パス目から最終パスまでロール交換せずに行った。ワークロールの表面粗さはRa:0.4μmとした。なお、仕上冷延後の板厚が1.0mmになるように、仕上冷延前の板厚を予め調整しておいた。
結果を表4に示す。
【0043】
【表4】
Figure 0003913088
【0044】
ワークロール径が200mmより大きいNo.4,5に比べ、同200mm以下のNo.1〜3では、限界絞り高さがさらに向上している。
【0045】
【発明の効果】
以上のように、本発明では、特殊な元素を添加することなく中・高炭素鋼板の深絞り性を安定して改善する方法を提供した。この方法は一般的な市販の中・高炭素鋼種に広く適用することができ、いずれの鋼種においても高い深絞り性改善効果が得られる。また、仕上冷延に供する材料としては「熱延鋼板」,「熱延焼鈍鋼板」,「冷延焼鈍鋼板」のいずれを用いてよく、出発材料の製造履歴を選ばない。したがって本発明は、より高い加工性が要求される部位への中・高炭素鋼板の適用を容易にし、当該鋼種の用途拡大に寄与するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】中・高炭素鋼板について、仕上冷延のワークロール表面粗さと限界絞り高さの関係を表すグラフである。

Claims (4)

  1. 質量%で、C: 0.20 0.90 %,S i 1.0 %以下,M n 2.0 %以下,C r 0 (無添加)〜 1.6 %,M o 0 (無添加)〜 0.5 %,C u 0 (無添加)〜 0.3 %,N i 0 (無添加)〜 2.0 %,T i 0 (無添加)〜 0.10 %,B: 0 (無添加)〜 0.010 %,P: 0.03 %以下,S: 0.02 %以下,T . l 0.1 %以下で、残部がF e および不可避的不純物からなる熱延鋼板または焼鈍鋼板に下記(a)(b)を満たす条件で仕上冷延を施し、その後、650 720 ℃で 10 60 時間保持する条件で仕上焼鈍を施す深絞り性に優れた中・高炭素鋼板の製造方法。
    (a)少なくとも圧延最終パスに表面粗さRaが0.20〜1.50μmのワークロールを用いる。
    (b)仕上冷延のトータル圧延率を20〜70%とする。
  2. 質量%で、C: 0.20 0.90 %,S i 1.0 %以下,M n 2.0 %以下,C r 0 (無添加)〜 1.6 %,M o 0 (無添加)〜 0.5 %,C u 0 (無添加)〜 0.3 %,N i 0 (無添加)〜 2.0 %,T i 0 (無添加)〜 0.10 %,B: 0 (無添加)〜 0.010 %,P: 0.03 %以下,S: 0.02 %以下,T . l 0.1 %以下で、残部がF e および不可避的不純物からなる熱延鋼板または焼鈍鋼板に下記(a)(b)を満たす条件で仕上冷延を施し、その後、650 720 ℃で 4 30 時間保持後に 730 770 ℃で 4 20 時間保持し、その後 650 720 ℃の温度範囲まで徐令してこの温度範囲で 0 30 時間保持する条件で仕上焼鈍を施す深絞り性に優れた中・高炭素鋼板の製造方法。
    (a)少なくとも圧延最終パスに表面粗さRaが0.20〜1.50μmのワークロールを用いる。
    (b)仕上冷延のトータル圧延率を20〜70%とする。
  3. 質量%で、C: 0.20 0.90 %,S i 1.0 %以下,M n 2.0 %以下,C r 0 (無添加)〜 1.6 %,M o 0 (無添加)〜 0.5 %,C u 0 (無添加)〜 0.3 %,N i 0 (無添加)〜 2.0 %,T i 0 (無添加)〜 0.10 %,B: 0 (無添加)〜 0.010 %,P: 0.03 %以下,S: 0.02 %以下,T . l 0.1 %以下で、残部がF e および不可避的不純物からなる熱延鋼板または焼鈍鋼板に下記(a)(b)を満たす条件で仕上冷延を施し、その後、650 720 ℃で 10 60 時間保持する条件で仕上焼鈍を施す深絞り性に優れた中・高炭素鋼板の製造方法。
    (a)少なくとも圧延最終パスに表面粗さRaが0.20〜1.50μmで、かつロール径が50〜200mmのワークロールを用いる。
    (b)仕上冷延のトータル圧延率を20〜70%とする。
  4. 質量%で、C: 0.20 0.90 %,S i 1.0 %以下,M n 2.0 %以下,C r 0 (無添加)〜 1.6 %,M o 0 (無添加)〜 0.5 %,C u 0 (無添加)〜 0.3 %,N i 0 (無添加)〜 2.0 %,T i 0 (無添加)〜 0.10 %,B: 0 (無添加)〜 0.010 %,P: 0.03 %以下,S: 0.02 %以下,T . l 0.1 %以下で、残部がF e および不可避的不純物からなる熱延鋼板または焼鈍鋼板に下記(a)(b)を満たす条件で仕上冷延を施し、その後、650 720 ℃で 4 30 時間保持後に 730 770 ℃で 4 20 時間保持し、その後 650 720 ℃の温度範囲まで徐令してこの温度範囲で 0 30 時間保持する条件で仕上焼鈍を施す深絞り性に優れた中・高炭素鋼板の製造方法。
    (a)少なくとも圧延最終パスに表面粗さRaが0.20〜1.50μmで、かつロール径が50〜200mmのワークロールを用いる。
    (b)仕上冷延のトータル圧延率を20〜70%とする。
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