JP4003821B2 - 耐リジング性に優れたフェライト系ステンレス鋼板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、リジングの発生が極めて少ない耐リジング性に優れたフェライト系ステンレス鋼板の製造方法、とくにスラブをα相単相域に加熱抽出することにより、深絞り性や加工による肌荒れ性に優れる他、耐リジング性の良好な前記鋼板を安価に製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
リジング (ローピングともいう) は、フェライト系ステンレス鋼の薄鋼板を引張り加工や深絞り加工した場合に、その鋼板表面の圧延方向に沿って発生した畝状の起伏 (細長いすじ状の凹凸) のことであり、フェライト系ステンレス鋼の鋼板に特有の現象である。
【0003】
一般に、フェライト系ステンレス冷延鋼板 (JIS-SUS430など) は耐食性に優れ、長期間にわたって美しい表面光沢を保持すると共に、良好な加工性を有し、しかも、オーステナイト系ステンレス鋼等に比べると安価であることから、厨房器具、家電用電気機器、自動車部品等の広い分野で使用されている。このように、フェライト系ステンレス鋼は、主として装飾性を必要とする用途に供されることが多いため、耐食性やプレス加工性はもとより、加工後の表面性状の美麗さも大切な要件となる。ことに、フェライト系ステンレス鋼は、円筒や角筒などの絞り加工用材料として使用されるが、製造方法に起因する材料特性が悪いと、成形加工時に上述したリジングが現れ、表面の美観を損ねるばかりでなく、ひどい場合にはこれが原因となって、成形中に割れが発生するという問題があった。
【0004】
そのため、斯界においては、リジングの発生を軽減しあるいは消滅させ得るようなフェライト系ステンレス鋼を製造することが大きな研究課題となっている。そうしたリジングの発生防止技術については、従来より多くの研究があり、なかでもリジングの発生防止のために均一な再結晶組織をもつ熱延板を製造する方法が注目されている。例えば、
▲1▼ 特公昭45−34016 号公報には、低温で熱間圧延を施し、ついで 800〜830 ℃の箱型焼鈍を施し、その後冷間圧延、仕上げ焼鈍を行うことにより、耐リジング性を向上させるという方法が開示されている。
▲2▼ 特公昭57−61096 号公報には、異形ロール圧延機により圧下率20%以上の熱間圧延を施した後、熱延板焼鈍、冷間圧延、仕上げ焼鈍を施す方法が開示されている。
▲3▼ 特開平 1−111816号公報では、 850℃以上で熱間圧延し、ただちに10℃/秒以上の速度で冷却し、そして 550℃以下の温度で巻き取ることによりフェライトとマルテンサイトの2相組織とし、その後累積圧下率50%以上の冷間圧延を施す方法が提案されている。
▲4▼ 特開平 7−84617 号公報では、粒径:0.9 mm以下の等軸晶が板厚の70%以上を占める連鋳スラブを鋳造し、このスラブを1100〜1000℃において圧下率40%以上の熱間圧延を施した後、熱延板焼鈍、冷間圧延、仕上げ焼鈍を施す方法が提案されている。
▲5▼ 特開平 7−118754号公報では、フェライト系ステンレス鋼の成分設計に当たって、ガンマポテンシャル (γp) を高め、そして加熱を1100〜1220℃の温度で行い、 950〜1050℃の温度で熱間仕上圧延を行い、そして 450〜800 ℃の温度で巻き取りを行ってから脱スケール処理を行い、その後70%以上のトータル圧下率で冷間圧延を行うという方法を提案している。
【0005】
しかしながら、これらの方法はいずれも、全製造工程中、局部的な対策, 即ち、鋳造工程や熱間圧延工程あるいは焼鈍工程等のいずれかの処理を対象として改善提案しており、十分な対策になっていない。しかも、これらの各処理の内容についても、耐リジング性を直接的な解決課題とする技術ではなく、それ故にリジングの低減対策として十分とは言えないのが実情である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
フェライト系ステンレス鋼の薄鋼板に発生するリジング発生原因については、主として、板に存在している不均一組織 (コロニー組織) に起因するという共通した認識がある。たとえば、連続鋳造スラブの柱状晶は普通の熱間粗圧延や熱間仕上圧延の工程だけでは十分に壊わすことができない。従って、このような熱延鋼板に対し、熱延板焼鈍や冷間圧延を施したとしても、コロニー組織が残存する限りリジングの発生を確実に阻止できるような鋼板を得るのは難しいのが実情である。
そこで、本発明の目的は、リジングの発生原因を突き止めることにより、従来のSUS 430 製造技術の下では得られなかった耐リジング性に優れたフェライト系ステンレス鋼板を製造する技術を確立することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、上掲の目的の実現に向け鋭意研究を重ねた結果、フェライト系ステンレス鋼のスラブの等軸晶率を向上させたり、熱間圧延時に連続鋳造スラブの柱状晶を確実に分断 (破壊) させると、上記リジングの発生を軽減ないし阻止できることを知見した。そこで本発明では、主として、熱間圧延においてオーステナイト相を析出させかつ再結晶しないようにコントロールし、一方で、析出したそのオーステナイト相の量を制御することにより、リジングの発生原因となる帯状組織を分断させ、このことによりリジングを大幅に軽減するようにした。
【0008】
このような作用効果をより確実に実現するために本発明では、以下に述べる点についてさらに検討した。すなわち、リジングの発生をさらに抑制するために必要な成分組成、鋳造組織、加熱条件、熱延条件 (粗熱延条件、仕上熱延条件) 、冷延条件について検討したところ、
▲1▼ 成分組成としては、C≧0.02wt%のフェライト系ステンレス鋼に対するγ相の最大析出量を表わす指標であるガンマポテンシャル (γp ) を高めること、
▲2▼ 鋳造組織については、連続鋳造スラブの等軸晶率をアップさせること、
▲3▼ 加熱条件としては、高温のフェライトα単相域加熱を行うこと、
▲4▼ 熱延条件としては、α相単相の高温域にて加熱することにより、γ相析出量の少ない高温域で粗圧延を行ってα相の再結晶を促進することで、鋳造組織 (柱状晶) を破壊し、よりランダムな組織とし、その後、低温仕上圧延により熱間圧延板に所定の歪みを蓄積させ、次工程の熱延板焼鈍に際してさらに再結晶させることによって、熱延板の組織をより以上ランダムな組織とすること、
などを採用することが、耐リジング性に優れるフェライト系ステンレス鋼板の製造に効果的であることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
また、本発明においては、冷間圧延工程にてトータルの圧下率を大きくすることによって、歪みの蓄積をさらに高め、最後の製品の焼鈍過程において再結晶させることによって、製品板の結晶方位のランダム化と結晶粒の微細化を実現しその後、必要に応じて調質圧延を施すことによって、耐リジング性のさらなる向上をはかることができる。
【0010】
このような考え方の下に完成させた本発明は、
C:0.02〜0.10wt%、Si:0.1〜1.0wt%、Mn:0.1〜1.0wt%、P:0.040wt%以下、S:0.020wt%以下、Cr:15.0〜18.0wt%、N:0.02〜0.06wt%、Ni:0.1〜0.6wt%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、かつ下記 (1) 式で表されるガンマポテンシャル(γp)を満足し、鋳片厚の15%以上(好ましくは20%以上、より好ましくは25%以上)が等軸晶である凝固組織を有するフェライト系ステンレス鋼の連続鋳造スラブを、フェライト単相(α相)域の1200 〜 1250 ℃に加熱し、次いで、そのスラブを圧延開始温度 1150 ℃以上、圧延終了温度 1000 ℃以上のγ相析出量の少ない再結晶温度域において、かつ各パスの間隔が 10 秒以下、2パス以上での合計圧下率が50%以上、圧下率20%以上のパスが総パスの1/2以上の熱間粗圧延を行い、次に、熱間仕上圧延を開始するまでの間を 1.2 ℃/ min 以上の速度で冷却してから、 900 ℃を超えない温度にて、しかも各パスの間隔を5秒以下とした復熱による再結晶が起らない条件において、2パス以上で合計圧下率が50%以上になる低温の熱間仕上圧延を行い、その後、回復しない温度の 700 ℃以下まで冷却して巻き取ることを特徴とする耐リジング性に優れたフェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
50.0≦γp=288C-54Si+7.5Mn+22Ni-18.75Cr+350N+338.5≦70.0・・・(1)
【0012】
さらに、本発明は、上記熱間圧延の終了後、熱延板焼鈍を含む1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延において、合計で60%以上の圧下率で冷間圧延を行い、そして最終焼鈍と脱スケール処理、または光輝焼鈍を行い、さらに必要に応じ調質圧延を行うようにして、耐リジングに優れたフェライト系ステンレス鋼板を製造することが好ましい方法である。
【0013】
なお、本発明は、熱間仕上圧延を、圧延スタンドの入・出側にファーネスコイラーを具えるステッケルミル, 即ち、通常の方法では1パスごとにコイラーに巻込まれたコイルが再結晶温度以上に復熱して、自然に加工歪みが除かれ、再結晶するようなステッケルミルによる熱間仕上圧延方法に適用することが好適である。また、タンデムミルにも応用することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明にかかる製造方法において、適用される鋼種、すなわち出発材料 (スラブ) は下記の成分組成のものを連続鋳造して用いる。
C:0.04〜0.10wt%
Cは、γp に及ぼす影響が大きく、上記(1) 式を満足するように成分設計するには、0.04wt%未満では、他のオーステナイト生成元素を多く添加しなければならず、コストアップ、強度低下あるいは製造性と成形性の劣化を招く。一方、0.1 wt%以上の含有量は、Cr炭化物をより多く析出することによって、耐食性が劣化すると共に加工性も悪くなる。従って、適正バランスにするためのCの含有量は、0.04〜0.10wt%である。好ましくは、0.05〜0.07wt%である。
【0015】
Si:0.1 〜1.0 wt%
Siは、脱酸のために必要な成分であり、通常のフェライト系ステンレス鋼に含有されている程度の0.1 〜1.0 wt%とした。好ましくは 0.1〜0.4 wt%である。
【0016】
Mn:0.1 〜1.0 wt%
Mnは、脱酸のために必要な元素であり、良好な熱間加工性と強度を確保するため 0.1〜1.0 wt%とした。好ましくは0.2 〜0.7 wt%の範囲である。
【0017】
P:0.040 wt%以下
Pは、靱性、熱間加工性および耐食性を劣化させるので、0.040 wt%以下にすることが望ましい。
【0018】
S:0.020 wt%以下
Sは、靱性、熱間加工性および耐食性を劣化させるので、0.020 wt%以下、より好ましくは 0.010wt%以下にする。
【0019】
Cr:15.0〜18.0wt%
Crは、ステンレス鋼において耐食性および耐高温酸化性のため必要不可欠な成分であり、最低限15wt%の添加が必要である。しかし、その含有量が18wt%を超えるとγp が小さくなり、コストが高くなる。
【0020】
N:0.02〜0.06wt%
Nは、Cと同様にフェライト系ステンレス鋼板においては、Cr窒化物を生成し粒界腐食の原因となる。また、γp に及ぼす影響も大きく、上記(1) 式を満足するためには0.02〜0.06wt%とすることが必要である。好ましくは、0.03〜0.05wt%である。
【0021】
Ni:0.1 〜0.6 wt%
Niは、γ相の生成元素であるが、価格が非常に高いので、その添加範囲を0.1 〜0.6 wt%とした。好ましくは、0.02〜0.05wt%である。
【0022】
本発明において、上記フェライト系ステンレス鋼のスラブは、上述した成分組成にするだけでは十分でなく、さらに鋳造組織である柱状晶を分断するのに必要な量のγ相を析出させるために、γpの制御が有効である。このγpは、下記(1) 式で表される数値が50〜70となるように制御する。
50.0≦γp =288C-54Si+7.5Mn+22Ni-18.75Cr+350N+338.5 ≦70.0 …(1)
【0023】
この理由は、図1に示すように、γp が50未満ではγの析出量が少なく、γ相の析出による熱延板組織のランダム化効果が小さく、一方、γp が70超ではガンマ相の析出量が多すぎて製造性が劣化する。従って、要求品質を満たすレベルの耐リジング性を得るにはγp は50〜70の範囲にすることが必要である。
なお、図中のリジングレベルAとはWCM<25μm、Bとは25μm≦WCM<35μm、Cとは35μm≦WCM<45μm、DとはWCM≧45μmである。 (測定長さ:20mm)
【0024】
本発明では、上記スラブを連鋳モールドから抽出するとき、該スラブの少なくとも中心部に等軸晶凝固組織を有し、特にその等軸晶の部分が板厚の15%以上を占める連続鋳造スラブを用いることが必要である。一般に、リジングは、連続鋳造スラブに形成される柱状晶凝固組織に起因し、この組織が冷却の過程で相変態することなく鋳造組織のまま存在し、これが熱延、冷延を経た後も完全には破壊されずに残存して集合組織を形成するためと考えられる。
そこで本発明では、リジングの軽減対策として、リジング発生の根本原因である連鋳スラブの柱状晶組織を低減し、等軸晶凝固組織の割合を上げることにした。とくに、このスラブの等軸晶率が板厚の15%以下ではリジング軽減の効果が小さいため、15%以上とした。好ましくは20%以上、より好ましくは25%以上にする。
【0025】
本発明ではまた、上記スラブを1200℃以上1250℃以下の温度に加熱することが有効である。上記成分組成にかかるフェライト系ステンレス鋼というのは、図2のFe−Cr状態図に示すように、C:0.02〜0.10wt%、例えばC:0.05wt%, N:0.03wt%, Cr:16wt%のものにおいて、γ相の温度領域は 850〜1200℃に存在する。それを1200〜1250℃の温度域に加熱するということはフェライト (α) 単相域の温度に加熱することになる。このような領域で加熱する理由は、熱間粗圧延の段階でフェライト相の再結晶を促進することにより柱状晶を破壊分断し、リジングの発生を阻止しやすくするためである。なお、1250℃以上に加熱すると、スラブ表面が異常酸化を起こし熱延板表面品質が劣化し、一方、1200℃以下に加熱すると、熱間粗圧延中多量γ相の析出によりα相の再結晶が困難になる。
【0026】
本発明では、連鋳スラブの鋳造組織 (柱状晶) を破壊分断するために、熱間粗圧延中高温域において、少なくとも2パス以上 (好ましくは5〜7パス程度) で合計圧下率が50%以上, 好ましくは65%, より好ましくは75%以上、そして圧下率が20%以上のパスが総パスの 1/2 以上 (好ましくは25%以上のパスが、総パス数の1/2 以上、より好ましくは30%以上のパスが総パス数の1/2 以上) である熱間粗圧延を行う。この理由は、高温域において必要な塑性変形量を確保し柱状晶をより効果的に分断するためである。
【0027】
上記の熱間粗圧延は、具体的には、圧延開始温度を1150℃以上、圧延終了温度を1000℃以上, 好ましくは1050℃以上, より好ましくは1100℃以上とし、かつ各パスの間隔, とくに板厚が初期スラブ厚の1/4 以下になるまでのパス時間が10秒以下である多パスにおいて、圧下率が20%以上 (好ましくは25%以上、より好ましくは30%以上) のパスを総パスの1/2 以上とする熱間粗圧延を行い、その熱間粗圧延後、次工程の熱間仕上圧延を開始するまでの間を 1.2℃/min 以上の速度で冷却する多パスの圧延を行う。このような多パスの熱間粗圧延を行う理由は、圧延開始の温度が1150℃以下になると、多量のγ相を析出するため、α相の再結晶が困難になるからである。また、上記パス間の時間を10秒以下にする理由は、10秒以上では温度の低下が大きく、圧延終了温度1000℃以上を確保することが難しくなると共にγ相の含有量が減少し、リジングの低減効果が減少するからである。
そして、この熱間粗圧延の最終パス前または最終パス後、1.2 ℃/min 以上の速度で 850℃以下の温度に冷却して熱間仕上圧延する理由は、低温で熱間仕上圧延を行うためである。即ち、850 ℃以下に冷却しないと、この熱間仕上圧延中に熱延板の最高温度が復熱によって900 ℃超になり、熱延板組織の一部分が回復し、耐リジング性が劣化するからである。
【0028】
本発明においては低温での熱間仕上圧延を行う。この理由は、熱延板焼鈍時に再結晶に必要な変形歪みを蓄積することにある。即ち、熱間仕上圧延中の熱延板の最高温度は 900℃以下 (好ましくは 850〜700 ℃) の温度で2以上のパス (好ましくは5〜7パス) で合計50%以上 (好ましくは65%以上、より好ましくは75%以上) の累計圧下率の多パス熱間仕上圧延を行うためである。また、このときの合計圧下率が50%未満では、熱延板における変形歪みの蓄積量が少なく、次の熱延板焼鈍にて均一な再結晶が得られないため、耐リジング性が劣化する。
【0029】
本発明においては、熱間仕上圧延終了後、得られる熱延板の歪み解放を最小限に止めるには、巻取り温度を 700℃以下 (好ましくは 650℃以下、より好ましくは 600℃以下) にして巻き取ることが必要である。
【0030】
そして、本発明においては、上述のようにして熱間圧延を終了した後は、熱延板焼鈍を経て1回の冷間圧延または中間焼鈍を挟む2回以上の累計圧下率が60%以上の冷間圧延を行い、最終焼鈍と脱スケール、または光輝焼鈍を行い、その後必要に応じて調質圧延を行うことにより、耐リジング性に優れた、即ちリジングが発生しないフェライト系ステンレス鋼板を製造する。
【0031】
【実施例】
以下、本発明にかかる製造方法に従って、フェライト系ステンレス鋼を製造する実施例について説明する。
表1に示す化学成分を有するフェライト系ステンレス鋼を、転炉 (AOD)で溶解し、これを連続鋳造して中心部は板厚の30%以上が等軸晶である200 mm厚さの連続鋳造スラブとした。次に、表2に示す条件で熱間圧延を行い熱延コイルとした。なお、この熱間圧延の粗圧延は、5、7パスで 200mm〜25mmまで圧延し、仕上圧延は5パスで25mmから6mmまでの圧延を行った。得られた熱延板を 820℃の温度でベル焼鈍し、中間焼鈍を挟む2回冷延で 0.6mm厚の冷延板を製造した。熱延板の断面組織ならびに冷延板のリジング評点を表2に併記した。リジング評点は前述した基準による。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
その結果、表2中の記載に明らかなように、本発明例についてはいずれも、うねり (WCM)が25μm以下でリジングの発生は極めて少なかったが、比較例については加熱温度が本発明の範囲を外れる例:No. 5,9,11、仕上圧延温度が 900℃を超えて高い例:6,9,11、粗圧延のパス時間間隔が長く、粗圧延の終了温度が低い例:No. 7、巻取り温度が高い例:No. 8は、WCMがいずれも25μmを超え、大小のリジングの発生が認められた。
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、深絞り性や加工による耐肌荒れ性に優れると共に、リジングの発生が極めて少ないフェライト系ステンレス鋼を安価にかつ確実に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】リジングレベルに及ぼすγpの影響を示すグラフである。
【図2】C:0.02〜0.10wt%、Cr:15〜18wt%のFe−Crの状態図である。
Claims (3)
- C:0.02〜0.10wt%、Si:0.1〜1.0wt%、Mn:0.1〜1.0wt%、P:0.040wt%以下、S:0.020wt%以下、Cr:15.0〜18.0wt%、N:0.02〜0.06wt%、Ni:0.1〜0.6wt%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、かつ下記(1)式で表されるガンマポテンシャル(γp)を満足し、鋳片厚の 15 %以上が等軸晶である凝固組織を有するフェライト系ステンレス鋼の連続鋳造スラブを、
フェライト単相(α相)域の1200 〜 1250 ℃に加熱し、
次いで、そのスラブを圧延開始温度 1150 ℃以上、圧延終了温度 1000 ℃以上のγ相析出量の少ない再結晶温度域において、かつ各パスの間隔が 10 秒以下、2パス以上での合計圧下率が50%以上、圧下率20%以上のパスが総パスの1/2以上の熱間粗圧延を行い、
次に、熱間仕上圧延を開始するまでの間を 1.2 ℃/ min 以上の速度で冷却してから、 900 ℃を超えない温度にて、しかも各パスの間隔を5秒以下とした復熱による再結晶が起らない条件において、2パス以上で合計圧下率が50%以上になる低温の熱間仕上圧延を行い、
その後、回復しない温度の 700 ℃以下まで冷却して巻き取ることを特徴とする耐リジング性に優れたフェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
50.0≦γp=288C-54Si+7.5Mn+22Ni-18.75Cr+350N+338.5≦70.0・・・(1) - 請求項1に記載の方法において、フェライト系ステンレス鋼のスラブとして、中心部に等軸晶凝固組織を有し、かつその等軸晶の部分が板厚の15%以上を占める連続鋳造スラブを用いることを特徴とする耐リジング性に優れたフェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
- 請求項1または2に記載した熱間圧延の後、熱延板焼鈍を含む1回の冷間圧延、または中間焼鈍を挟む2回以上の、合計圧下率で60%以上になる冷間圧延を行い、その後最終焼鈍または光輝焼鈍を行い、さらにその後、必要に応じて調質圧延を行うことを特徴とする耐リジング性に優れたフェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
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