JP3995822B2 - 耐リジング性に優れた高純度フェライト系ステンレス鋼板の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、リジングの発生が極めて少ない耐リジング性に優れた高純度のフェライト系ステンレス鋼板の製造方法、とくにスラブをフェライト相再結晶域に加熱抽出したのち、高温粗圧延−低温熱間仕上圧延することにより、前記鋼板を製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
リジング (ローピングともいう) は、フェライト系ステンレス鋼の薄鋼板を引張り加工や深絞り加工した場合に、その鋼板表面の圧延方向に沿って発生した畝状の起伏 (細長いすじ状の凹凸) のことであり、フェライト系ステンレス鋼の鋼板に特有の現象である。
【0003】
一般に、フェライト系ステンレス冷延鋼板は耐食性に優れ、長期間にわたって美しい表面光沢を保持すると共に、良好な加工性を有し、しかも、オーステナイト系ステンレス鋼等に比べると安価であることから、厨房器具、家電用電気機器、自動車部品等の広い分野で使用されている。このように、フェライト系ステンレス鋼は、主として装飾性を必要とする用途に供されることが多いため、耐食性やプレス加工性はもとより、加工後の表面性状の美麗さも大切な要件となる。ことに、フェライト系ステンレス鋼は、円筒や角筒などの絞り加工用材料として使用されるが、製造方法に起因する材料特性が悪いと、成形加工時に上述したリジングが現れ、表面の美観を損ねるばかりでなく、ひどい場合にはこれが原因となって、成形中に割れが発生するという問題があった。
【0004】
そのため、斯界においては、リジングの発生を軽減しあるいは消滅させ得るようなフェライト系ステンレス鋼を製造することが大きな研究課題となっている。そうしたリジングの発生防止技術については、従来より多くの研究があり、なかでもリジングの発生防止のために均一な再結晶組織をもつ熱延板を製造する方法が注目されている。例えば、
▲1▼ 特公昭45−34016 号公報には、低温で熱間圧延を施し、ついで 800〜830 ℃の箱型焼鈍を施し、その後冷間圧延、仕上げ焼鈍を行うことにより、耐リジング性を向上させるという方法が開示されている。
▲2▼ 特公昭57−61096 号公報には、異形ロール圧延機により圧下率20%以上の熱間圧延を施した後、熱延板焼鈍、冷間圧延、仕上げ焼鈍を施す方法が開示されている。
▲3▼ 特開平 1−111816号公報では、 850℃以上で熱間圧延し、ただちに10℃/秒以上の速度で冷却し、そして 550℃以下の温度で巻き取ることによりフェライトとマルテンサイトの2相組織とし、その後累積圧下率50%以上の冷間圧延を施す方法が提案されている。
▲4▼ 特開平 7−84617 号公報では、粒径:0.9 mm以下の等軸晶が板厚の70%以上を占める連鋳スラブを鋳造し、このスラブを1100〜1000℃において圧下率40%以上の熱間圧延を施した後、熱延板焼鈍、冷間圧延、仕上げ焼鈍を施す方法が提案されている。
▲5▼ 特開平 7−118754号公報では、フェライト系ステンレス鋼の成分設計に当たって、ガンマポテンシャル (γp) を高め、そして加熱を1100〜1220℃の温度で行い、 950〜1050℃の温度で熱間仕上圧延を行い、そして 450〜800 ℃の温度で巻き取りを行ってから脱スケール処理を行い、その後70%以上のトータル圧下率で冷間圧延を行うという方法を提案している。
しかしながら、これらの方法はいずれも、全製造工程中、局部的な対策, 即ち、鋳造工程や熱間圧延工程あるいは焼鈍工程等のいずれかの処理を対象として改善提案しており、十分な対策になっていない。しかも、これらの各処理の内容についても、耐リジング性を直接的な解決課題とする技術ではなく、それ故にリジングの低減対策として十分とは言えないのが実情である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
フェライト系ステンレス鋼の薄鋼板に発生するリジング発生原因については、主として、板に存在している不均一組織 (コロニー組織) に起因するという共通した認識がある。たとえば、連続鋳造スラブの柱状晶は普通の熱間粗圧延や熱間仕上圧延の工程だけでは十分に壊わすことができない。従って、このような熱延鋼板に対し、熱延板焼鈍や冷間圧延を施したとしても、コロニー組織が残存する限りリジングの発生を確実に阻止できるような鋼板を得るのは難しいのが実情である。
そこで、本発明の目的は、リジングの発生原因を突き止めることにより、従来のSUS 430 製造技術の下では得られなかった耐リジング性に優れた高純度フェライト系ステンレス鋼板を製造する技術を確立することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、上掲の目的の実現に向け鋭意研究を重ねた結果、フェライト系ステンレス鋼のスラブの等軸晶率を向上させたり、熱間圧延時に連続鋳造スラブの柱状晶を確実に破壊させると、上記リジングの発生を軽減ないし阻止できることを知見した。そこで本発明では、主として、熱間圧延において再結晶によりリジングの発生原因となる帯状組織を分断させ、このことによりリジングを大幅に軽減するようにした。
【0007】
このような作用効果をより確実に実現するために本発明では、高純度フェライト系ステンレス鋼に対して以下に述べる点についてさらに検討した。すなわち、リジングの発生をさらに、鋳造組織、加熱条件、熱延条件 (粗熱延条件、仕上熱延条件) 、冷延条件について検討したところ、
▲1▼ 鋳造組織については、連続鋳造スラブの等軸晶率をアップさせること、
▲2▼ 加熱条件としては、フェライト相の再結晶域に加熱し、粗圧延の段階において十分に再結晶するように加熱すること、
▲3▼ 熱延条件としては、再結晶温度域にて粗圧延を行うことにより、鋳造組織 (柱状晶) を分断させた後、低温の仕上圧延により、熱間圧延板に所定の歪みを蓄積させ、次工程の熱延板焼鈍に際して再結晶させることによって熱延板の組織をランダムな組織にすること、
などを採用することが、耐リジング性に優れる高純度フェライト系ステンレス鋼板の製造に効果的であることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
また、本発明においては、冷間圧延工程にてトータルの圧下率を大きくすることによって、歪みの蓄積をさらに高め、最後の製品の焼鈍過程において再結晶させることによって、製品板の結晶方位のランダム化と結晶粒の微細化を実現しその後、必要に応じて調質圧延を施すことによって、耐リジング性のさらなる向上をはかることができる。
【0009】
このような考え方の下に完成させた本発明は、
C:0.02wt%未満、Si:1.0wt%以下、Mn:1.0wt%以下、P:0.040wt%以下、S:0.020wt%以下、Cr:16.0〜30.0wt%、N:0.03wt%以下、Ni:0.3wt%以下、O:0.015wt%以下 Nb 0.01 0.6wt を含有し、また、上記の成分に加えて、Ti,Zr,V,TaおよびWのいずれか少なくとも1種の元素を0.01〜0.6wt%、またはこれらの2種以上の元素を合計で0.02〜3wt%含有し、必要に応じて0.1〜3wt%のMo、0.1〜3wt%のCu 含有する他、さらには0.001〜1.0wt%のAlを含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、かつ中心部に等軸晶凝固組織を有しかつその等軸晶の部分が板厚の 20 %以上を占めるフェライト系ステンレス鋼の連続鋳造スラブを、1100 1250 ℃の温度に加熱し、
圧延開始温度を 1050 ℃以上、圧延終了温度 950 ℃以上の温度において、各パスの間隔を5秒以上として2パス以上合計圧下率が50%以上、そして圧下 20%以上のパスが総パスの1/2以上である熱間粗圧延を行い、
次に、熱間仕上圧延を開始するまでの間を 1.2 ℃/ min 以上の速度で冷却してから、 900 ℃を超えない温度にて、しかも各パスの間隔を5秒以下として復熱による再結晶が起こらない条件において、2パス以上で合計圧下率が50%以上になる低温の熱間仕上圧延を行い、
その後、回復しない温度である 700 ℃以下の温度まで冷却して巻取ること、を特徴とする耐リジング性に優れた高純度フェライト系ステンレス鋼板の製造方法である。
【0011】
さらに、本発明は、上記熱間圧延の終了後、熱延板焼鈍を含む1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延において、合計で60%以上の圧下率で冷間圧延を行い、そして最終焼鈍と脱スケール処理、または光輝焼鈍を行い、さらに必要に応じ調質圧延を行うようにして、耐リジングに優れた高純度フェライト系ステンレス鋼板を製造することが好ましい方法である。
【0012】
なお、本発明は、熱間仕上圧延を、圧延スタンドの入・出側にファーネスコイラーを具えるステッケルミル, 即ち、通常の方法では1パスごとにコイラーに巻込まれたコイルが再結晶温度以上に復熱して、自然に加工歪みが除かれ、再結晶するようなステッケルミルによる熱間仕上圧延方法に適用することが好適である。また、タンデムミルにも応用することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明にかかる製造方法において、適用される鋼種、すなわち出発材料 (スラブ) は下記の成分組成のものを連続鋳造して用いる。
C:0.02wt%未満
Cは、もともと耐食性および成形性に有害な元素であり、また、C含有量を多くすることはそれだけTiやNb等の炭化物形成元素の量を増やすことになり、ひいては2次加工性の低下につながると同時にコストアップになるので、0.02wt%未満とした。好ましくは、0.017 wt%以下である。
【0014】
Si:1.0 wt%以下
Siは、脱酸のために必要な成分であり、その含有量が多いとコスト高になると共に材料が降下し成形性が劣化するので1.0 wt%以下とした。好ましくは 0.5wt%以下である。
【0015】
Mn:1.0 wt%以下
Mnは、脱酸のために必要な元素であり、また、MnSとしてSを固定して熱間加工性を向上させるが、一方MnSは孔食の起点となって耐食性を劣化させる。そのために、Sを厳しく制限してMn添加量を低く抑えるのが有利となり、この意味で1.0 wt%以下とした。好ましくは0.5 wt%以下である。
【0016】
P:0.040 wt%以下
Pは、靱性、熱間加工性および耐食性を劣化させるので、0.040 wt%以下にすることが望ましい。
【0017】
S:0.020 wt%以下
Sは、靱性、熱間加工性および耐食性を劣化させるので、0.020 wt%以下、より好ましくは 0.010wt%以下にする。
【0018】
Cr:16.0〜30.0wt%
Crは、ステンレス鋼において耐食性および耐高温酸化性のため必要不可欠な成分であり、その熱間圧延温度で実質上フェライト単相組織を得るためと、良好な耐食性を確保するために、最低限16wt%の添加が必要である。しかし、その含有量が30wt%を超えると熱間加工性と熱延板の靱性が著しく劣化するので16.0〜30.0wt%の範囲とした。
【0019】
N:0.03wt%以下
Nは、Cと同様にフェライト系ステンレス鋼板においては、Cr窒化物を生成し粒界腐食の原因となる。また、その含有量が多くなると材料が硬化し成形性が劣化するので0.03wt%以下とすることが必要である。好ましくは、0.02wt%以下である。
【0020】
Ni:0.6 wt%以下
Niは、スクラップなどの副原料から混入する。また、Niはγ相の生成元素であり、過量に混入するとγ相生成の恐れがあると共にコストも高くなるため、その含有量は0.6 wt%以下とした。
【0021】
O:0.015 wt%以下
Oは、鋼中の非金属介在物を増やすと、耐食性、靱性、成形特性特に曲げ加工性が低下するので、0.015 wt%以下とする。好ましくは0.01wt%以下である。
【0022】
Al:0.001 〜1.0 wt%
Alは、脱酸剤として添加するが、加工性の向上にも有用である。しかし含有量が多くなると熱間加工性と曲げ加工性も低下するので 0.001〜1.0 wt%とする。
【0023】
Ti:0.01〜0.6 wt%
Tiは、炭化物または炭・窒化物の生成元素であり、加工性および耐食性の向上を目的として添加する。また、リジングの低減に対して窒化物の生成は非常に有効である。しかし、過量を添加すると、靱性を低下し、加工性も劣化するので、0.01〜0.6 wt%とする。
【0024】
Nb:0.01〜0.6 wt%
Nbは、Tiと同様効果があるが、0.6 wt%を超えて添加すると熱延板の靱性が低下するので、0.01〜0.6 wt%とする。
【0025】
Mo:0.1 〜3 wt%
Moは、深絞り性と耐2次加工脆性を損なうことなく強度や耐食性を向上させる作用がある。3wt%を超えても効果が飽和するので3wt%を上限とする。
【0026】
Cu:0.1 〜3 wt%
Cuは、深絞り性と耐2次加工脆性を損なうことなく強度や耐食性を向上させる作用がある。3wt%を超えると熱間加工性が劣化するので、3wt%を上限とする。
【0027】
本発明では、上記スラブは、連鋳モールドから抽出するとき、該スラブの少なくとも中心部に等軸晶凝固組織を有し、特にその等軸晶の部分が板厚の15%以上を占める連続鋳造スラブを用いることが必要である。一般に、リジングは、連続鋳造スラブに形成される柱状晶凝固組織に起因し、この組織が冷却の過程で相変態することなく鋳造組織のまま存在し、これが熱延、冷延を経た後も完全には破壊されずに残存してバンド状組織を形成するためと考えられる。
そこで本発明では、リジングの軽減対策として、リジング発生の根本原因である連鋳スラブの柱状晶組織を低減し、等軸晶凝固組織の割合を上げることにした。とくに、このスラブの等軸晶率が板厚の20%以下ではリジング軽減の効果が小さいため、20%以上とした。好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上にすることが望ましい。
【0028】
本発明ではまた、上記スラブを1100℃以上1250℃以下のフェライト再結晶域の温度に加熱することが特徴である。上記成分の組成にかかるフェライト系ステンレス鋼というのは、図のFe−Cr状態図に示すように、C:0.008 wt%, N:0.01wt%の場合、Cr:16〜30wt%については、γ相の温度領域は存在せず、α相のみである。即ち、スラブを1100〜1250℃の温度に加熱するということはフェライト単相の再結晶する温度域に加熱することになる。このような領域で加熱する理由は、熱間粗圧延の段階でフェライト相の再結晶を促進することにより柱状晶を分断, 破壊し、リジングの発生を阻止しやすくするためである。もし、スラブを1100℃未満の温度にすると、α相の再結晶が不十分になり耐リジング性を向上させられない。一方、1250℃を超える温度での加熱は異常酸化を起こし、熱延板の表面品質が劣化する。
【0029】
本発明では、連鋳スラブの柱状晶を分断するために、再結晶域の温度において、少なくとも2パス以上 (好ましくは5〜7パス程度) で合計圧下率が50%以上, 好ましくは65%, より好ましくは75%以上、そして圧下率が20%以上のパスが総パスの 1/2 以上 (好ましくは25%以上のパスが、総パス数の1/2 以上、より好ましくは30%以上のパスが総パス数の1/2 以上) である熱間粗圧延を行う。この理由は、高温域において必要な塑性変形量を確保し再結晶を促進して柱状晶をより効果的に分断するためである。
【0030】
上記の熱間粗圧延は、具体的には、圧延開始温度を1050℃以上とし、圧延終了温度を 950℃以上, 好ましくは1000℃以上とし、かつ各パスの間隔, とくに板厚が初期スラブ厚の1/4 以下になるまでのパス時間が5秒以上、好ましくは10秒以上30秒以下である多パスにおいて、圧下率が20%以上 (好ましくは25%以上、より好ましくは30%以上) のパスを総パスの1/2 以上とする熱間粗圧延を行い、その熱間粗圧延後、次工程の熱間仕上圧延を開始するまでの間を 1.2℃/min 以上の速度で冷却 (放冷) する多パスの圧延を行う。このような多パスの熱間粗圧延を行う理由は、圧延開始の温度が1050℃以上では高温域において塑性変形量を確保して再結晶を促進するためである。特に、スラブの温度は 950℃以下になると再結晶は困難になる。また、上記パス間の時間が5秒以下になると、パス毎の十分な再結晶は得られず、リジングの低減効果が減少する。
そして、この熱間粗圧延の最終パス前または最終パス後、1.2 ℃/min 以上の速度で 850℃以下の温度に冷却して熱間仕上圧延する理由は、低温で熱間仕上圧延を行うためである。即ち、850 ℃以下に冷却しないと、この熱間仕上圧延中に熱延板の最高温度が復熱によって900 ℃超になり、熱延板組織の一部分が回復し、耐リジング性が劣化するからである。
【0031】
上述したように本発明においては、低温での熱間仕上圧延を行う。この理由は、熱延板焼鈍時に再結晶に必要な変形歪みを蓄積することにある。即ち、熱間仕上圧延中の熱延板の最高温度は 900℃以下 (好ましくは 850〜700 ℃) の温度で2以上のパス (好ましくは5〜7パス) で合計50%以上 (好ましくは65%以上、より好ましくは75%以上) の累計圧下率の多パス熱間仕上圧延を行うためである。また、このときの合計圧下率が50%未満では、熱延板における変形歪みの蓄積量が少なく、次の熱延板焼鈍にて均一な再結晶が得られないため、耐リジング性が劣化する。
【0032】
本発明においては、熱間仕上圧延終了後、得られる熱延板の歪み解放を最小限に止めるには、巻取り温度を 700℃以下 (好ましくは 650℃以下、より好ましくは 600℃以下) にして巻き取ることが必要である。
【0033】
そして、本発明においては、上述のようにして熱間圧延を終了した後は、熱延板焼鈍を経て1回の冷間圧延または中間焼鈍を挟む2回以上の累計圧下率が60%以上の冷間圧延を行い、最終焼鈍と脱スケール、または光輝焼鈍を行い、その後必要に応じて調質圧延を行うことにより、耐リジング性に優れた、即ちリジングが発生しないフェライト系ステンレス鋼板を製造する。
【0034】
【実施例】
以下、本発明にかかる製造方法に従って、フェライト系ステンレス鋼を製造する実施例について説明する。
表1に示す化学成分を有するフェライト系ステンレス鋼を、VODで溶解し、これを連続鋳造して中心部は板厚の30%以上が等軸晶である200 mm厚さの連続鋳造スラブとした。次に、表2に示す条件で熱間圧延を行い熱延コイルとした。なお、この熱間圧延の粗圧延は、5、7パスで 200mm〜25mmまで圧延し、仕上圧延は5パスで25mmから6mmまでの圧延を行った。得られた熱延板を 950℃の温度で焼鈍し、中間焼鈍を挟む2回冷延で 0.6mm厚の冷延板を製造した。熱延板の断面組織ならびに冷延板のリジング評点を表2に併記した。リジング評点は下記の基準による。
リジングレベルAAとはWCM<20μm、Aとは20μm≦WCM<25μm、Bとは25μm≦WCM<35μm、Cとは35μm≦WCM<45μm、DとはWCM≧45μmである。 (測定長さ:20mm)
【0035】
【表1】
Figure 0003995822
【0036】
【表2】
Figure 0003995822
【0037】
その結果、表2中の記載に明らかなように、本発明例についてはいずれも、うねり (WCM)が25μm以下でリジングの発生はほとんど見られなかったが、比較例については加熱温度が本発明の範囲を外れる例:No. 5,11、仕上圧延温度が 900℃を超えて高い例:6,9,11、粗圧延時のパス時間間隔の短い例:No. 10, 11、パス時間の間隔があまりに長い例:No. 7、巻取り温度が高い例:No. 8, 9は、WCMがいずれも30μmを超え、リジングの発生が認められた。
【0038】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、リジングが極めて少ない高純度のフェライト系ステンレス鋼を安価にかつ確実に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】C:0.008 wt%のFe−Crの状態図である。

Claims (3)

  1. C:0.02wt%未満、Si:1.0wt%以下、Mn:1.0wt%以下、P:0.040wt%以下、S:0.020wt%以下、Cr:16.0〜30.0wt%、N:0.03wt%以下、Ni:0.3wt%以下、O:0.015wt%以下 Nb 0.01 0.6wt を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、かつ中心部に等軸晶凝固組織を有しかつその等軸晶の部分が板厚の 20 %以上を占めるフェライト系ステンレス鋼の連続鋳造スラブを、1100 1250 ℃の温度に加熱し、
    圧延開始温度を 1050 ℃以上、圧延終了温度 950 ℃以上の温度において、各パスの間隔を5秒以上として2パス以上合計圧下率が50%以上、そして圧下 20%以上のパスが総パスの1/2以上である熱間粗圧延を行い、
    次に、熱間仕上圧延を開始するまでの間を 1.2 ℃/ min 以上の速度で冷却してから、 900 ℃を超えない温度にて、しかも各パスの間隔を5秒以下として復熱による再結晶が起こらない条件において、2パス以上で合計圧下率が50%以上になる低温の熱間仕上圧延を行い、
    その後、回復しない温度である 700 ℃以下の温度まで冷却して巻取ること、を特徴とする耐リジング性に優れた高純度フェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
  2. 請求項1に記載した熱間圧延の後、熱延板焼鈍を含む1回の冷間圧延、または中間焼鈍を挟む2回以上の、合計圧下率で60%以上になる冷間圧延を行い、その後最終焼鈍または光輝焼鈍を行い、さらにその後、必要に応じて調質圧延を行うことを特徴とする耐リジング性に優れた高純度フェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
  3. 請求項1に記載の各成分に加え、Ti,Zr,V,TaおよびWのいずれか少なくとも1種の元素を0.01〜0.6wt%、またはこれらの2種以上の元素を合計で0.02〜3wt%含有し、必要に応じて0.1〜3wt%のMo、0.1〜3wt%のCu 含有する他、さらには0.001〜1.0wt%のAlを含有することを特徴とする請求項1または2に記載の耐リジング性に優れた高純度フェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
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