JP6411881B2 - フェライト系ステンレス鋼およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、十分な耐食性、成形性および耐リジング特性を有し、かつ表面性状に優れたフェライト系ステンレス鋼およびその製造方法に関するものである。
フェライト系ステンレス鋼の中でも、日本工業規格JIS G 4305に規定されたSUS430 (16〜18mass%Cr)は、安価で耐食性に優れているため、建材、輸送機器、家電製品、厨房機器、自動車部品などのさまざまな用途に使用されており、その適用範囲は近年さらに拡大しつつある。これらの用途に適用するためには、耐食性だけでなく、所定の形状に加工できる十分な成形性(伸びおよび平均ランクフォード値(以下、平均r値と称することがある)が大きく)が求められる。
さらに、フェライト系ステンレス鋼は表面美麗性を要求される用途へ適用される場合が多く、耐リジング特性に優れることも必要とされる。リジングとは成形加工のひずみに起因して発生する表面凹凸のことである。フェライト系ステンレス鋼では鋳造および/または熱延時に類似した結晶方位を有する結晶粒群(コロニー)が生成する場合があり、コロニーが残存する鋼板では成形加工時にコロニー部とその他の部位で、ひずみ量に大きな差が生じるために成形加工後に表面凹凸(リジング)が発生する。成形加工後に過度のリジングが発生した場合、表面凹凸を除去するために研磨工程が必要となり成形品の製造コストが上昇するという問題がある。
上記に対して、特許文献1では、質量%で、C: 0.02〜0.06%、Si:1.0%以下、Mn:1.0%以下、P: 0.05%以下、S: 0.01%以下、Al: 0.005%以下、Ti: 0.005%以下、Cr: 11〜30%、Ni: 0.7%以下を含み、かつ0.06≦(C+N)≦0.12、1≦N/Cおよび1.5×10-3≦(V×N)≦1.5×10-2(C、N、Vはそれぞれ各元素の質量%を表す)を満たすことを特徴とする成形性および耐リジング特性に優れるフェライト系ステンレス鋼が開示されている。しかし、特許文献1では、熱間圧延後にいわゆる箱焼鈍(例えば、860℃で8時間の焼鈍)を行う必要がある。このような箱焼鈍は加熱や冷却の過程を含めると一週間程度掛かり、生産性が低い。
一方、特許文献2では、質量%で、C: 0.01〜0.10%、Si: 0.05〜0.50%、Mn: 0.05〜1.00%、Ni: 0.01〜0.50%、Cr: 10〜20%、Mo: 0.005〜0.50%、Cu: 0.01〜0.50%、V: 0.001〜0.50%、Ti: 0.001〜0.50%、Al: 0.01〜0.20%、Nb: 0.001〜0.50%、N: 0.005〜0.050%およびB: 0.00010〜0.00500%を含有した鋼を熱間圧延後、箱型炉あるいはAPライン(連続焼鈍酸洗ライン)の連続炉を用いてフェライト単相温度域で熱延板焼鈍を行い、さらに冷間圧延および仕上げ焼鈍を行うことを特徴とした加工性と表面性状に優れたフェライト系ステンレス鋼が開示されている。しかし、箱型炉を用いた場合には上記の特許文献1と同様に生産性が低いという問題がある。また、伸びに関しては一切言及されていないが、熱延板焼鈍に連続焼鈍炉を用いてフェライト単相温度域で行った場合、焼鈍温度が低いために再結晶が不十分となり、フェライト単相温度域で箱焼鈍を行った場合に比べて伸びが低下する。また、一般に特許文献2のようなフェライト系ステンレス鋼は、鋳造および/または熱延時に類似した結晶方位を有する結晶粒群(コロニー)が生成するが、熱延板焼鈍をフェライト単相温度で行うとフェライト相のコロニーを十分に破壊することができない。そのため、コロニーは熱延板焼鈍後の冷間圧延によって圧延方向に展伸して残存し、成形加工後にリジングが生じるという問題がある。
特許第3584881号公報 特許第3581801号公報
本発明は、かかる課題を解決し、十分な耐食性、成形性および耐リジング特性を有し、かつ熱間圧延や焼鈍に起因する線状疵の発生がない表面性状に優れたフェライト系ステンレス鋼およびその製造方法を提供することを目的とする。
なお、本発明において、十分な耐食性とは、表面を#600エメリーペーパーにより研磨仕上げした後に端面部をシールした鋼板にJIS H 8502に規定された塩水噴霧サイクル試験((塩水噴霧(35℃、5質量%NaCl、噴霧2h)→乾燥(60℃、相対湿度40%、4h)→湿潤(50℃、相対湿度≧95%、2h))を1サイクルとする試験)を8サイクル行った場合の鋼板表面における発錆面積率(=発錆面積/鋼板全面積×100 [%])が25%以下であることを意味する。
また、優れた成形性とは、JIS Z2241に準拠した引張試験における破断伸び(El)が圧延方向に対して直角となる方向に25%以上、JIS Z2241に準拠した引張試験において15%のひずみを付与した際の下記(1)式により算出される平均ランクフォード値(以下、平均r値と称す)が0.65以上であることを意味する。
平均r値=(rL+2×rD+rC)/4 (1)
ここで、rLは圧延方向に平行な方向に引張試験した際のr値、rDは圧延方向に対して45°の方向に引張試験した際のr値、rCは圧延方向と直角方向に引張試験した際のr値である。
さらに、優れた耐リジング特性とは、圧延方向に平行にJIS 5号引張試験片を採取し、その表面を#600のエメリーペーパーを用いて研磨した後、20%の引張ひずみを付与し、表面粗度計を用いて、JIS B 0601(2001年)で規定される算術平均うねりWa(以下、リジング高さと称することもある)を、測定長16mm、ハイカットフィルター波長0.8mm、ローカットフィルター波長8mmで測定した際のWaが2.5μm以下であることを意味する。
課題を解決するために検討した結果、適切な成分のフェライト系ステンレス鋼に対して熱間圧延後の鋼板を冷間圧延する前に、フェライト相とオーステナイト相の二相となる温度域で焼鈍を行うことにより、十分な耐食性を有し、成形性と耐リジング特性に優れ、かつ良好な表面性状を有するフェライト系ステンレス鋼が得られることを見出した。
本発明は以上の知見に基づいてなされたものであり、以下を要旨とするものである。
[1]質量%で、C:0.005〜0.05%、Si: 0.02〜1.00%、Mn: 0.05〜0.60%、P: 0.04%以下、S: 0.01%以下、Cr:15.5〜18.0%、Al: 0.001〜0.10%、N: 0.01〜0.06%、Ni: 0.1〜0.6%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、かつNi/Mn≧0.6(Ni、Mnは各元素の含有量(質量%))を満たし、El≧25%、平均r値≧0.65およびリジング高さが2.5μm以下であることを特徴とするフェライト系ステンレス鋼。
[2]質量%で、さらに、Cu: 0.1〜1.0%、Mo: 0.1〜0.5%、Co: 0.01〜0.5%のうちから選ばれる1種または2種以上を含むことを特徴とする上記[1]に記載のフェライト系ステンレス鋼。
[3]質量%で、さらに、V: 0.01〜0.25%、Ti: 0.001〜0.015%、Nb: 0.001〜0.025%、Mg: 0.0002〜0.0050%、B: 0.0002〜0.0050%、REM: 0.01〜0.10%、Ca: 0.0002〜0.0020%のうちから選ばれる1種または2種以上を含むことを特徴とする上記[1]または[2]に記載のフェライト系ステンレス鋼。
[4]上記[1]〜[3]のいずれか一項に記載の成分組成を有する鋼スラブに対して、熱間圧延を施し、次いで900〜1050℃の温度範囲で5秒〜15分間保持する焼鈍を行い熱延焼鈍板とし、次いで冷間圧延を施した後、800〜950℃の温度範囲で5秒〜5分間保持する冷延板焼鈍を行うことを特徴とするフェライト系ステンレス鋼の製造方法。
なお、本明細書において、鋼の成分を示す%はすべて質量%である。
本発明によれば、十分な耐食性、成形性および耐リジング特性を有し、かつ表面性状に優れたフェライト系ステンレス鋼が得られる。
以下、本発明を詳細に説明する。
フェライト系ステンレス鋼の中でも、日本工業規格JIS G 4305に規定されたSUS430LX(16mass%Cr-0.15mass%Tiあるいは16mass%Cr-0.4mass%Nb)、SUS436L(18mass%Cr-1.0mass%Mo-0.25mass%Ti)等は多量のTiやNbを含有し、固溶C、Nを低減させることによりElおよび平均r値が高く優れた成形性が得られるため、多くの用途に使用されている。しかし、上記のSUS430LXやSUS436LなどのTiやNbを多量に含有し固溶C、N量が少ない鋼では、リジングの原因となるコロニーが生成しやすく優れた耐リジング特性を得ることができない。そのため、上記のSUS430LXやSUS436Lは優れた成形性を有してはいるものの、表面美麗性が要求される製品ではリジングによる表面凹凸を除去するための研磨工程が必要となり、製造コストが増加するという問題がある。
一方、フェライト系ステンレス鋼の中でもっとも多く生産されているSUS430(16mass%Cr)は、SUS430LXやSUS436Lより成形性は劣るが耐リジング特性が比較的優位という特徴がある。
このように、十分な耐食性と高い成形性および耐リジング特性を鼎立するフェライト系ステンレス鋼の製造技術は十分には確立されていないのが現状である。
そこで、発明者らは、成分および製造方法について詳細に検討した。その結果、多量のTiやNbを含有させずとも、適切な成分のフェライト系ステンレス鋼に対して、熱間圧延後の鋼板を冷間圧延する前にフェライト相とオーステナイト相の二相域となる温度で焼鈍を行うことにより、破断伸び(El)が圧延方法と直行方向の試験片で25%以上、平均r値が0.65以上、リジング高さが2.5μm以下となる優れた成形性および耐リジング特性が得られることを見出した。
さらに、発明者らは箱焼鈍(バッチ焼鈍)のような長時間の熱延板焼鈍ではなく、生産性の高い連続焼鈍炉を用いた短時間の熱延板焼鈍により所定の加工性を得る技術について検討した。連続焼鈍炉を用いた従来技術においての課題は、熱延板焼鈍をフェライト単相温度域で行っているために十分な再結晶が生じず、十分な伸びが得られないとともに、コロニーが冷延板焼鈍後にまで残存するために十分な耐リジング特性が得られないことであった。そこで発明者らは、熱延板焼鈍をフェライト相とオーステナイト相の二相域で行った後に、冷間圧延および冷延板焼鈍を行い、最終的に再度フェライト単相組織とすることを考案した。
すなわち、熱延板焼鈍をフェライト単相温度域よりも高温のフェライト相とオーステナイトの二相域で行うことにより、フェライト相からオーステナイト相が生成する際に、オーステナイト相が焼鈍前のフェライト相とは異なった結晶方位を有して生成すること、および、熱延板焼鈍後の金属組織がフェライト相とオーステナイト相からの変態によって冷却中に生成するマルテンサイト相となり、その後の冷間圧延時に軟質なフェライト相と硬質なマルテンサイト相の異相界面に圧延ひずみがより集中して導入されて冷延板焼鈍時の再結晶サイトとなることにより、フェライト相のコロニーが効果的に破壊され、耐リジング特性が向上する。その後、冷間圧延し、さらにフェライト単相温度域で冷延板焼鈍することにより、マルテンサイト相をフェライト相へと変態させるとともに、十分な粒成長を生じさせることにより、リジング高さで2.5μm以下の優れた耐リジング特性が得られることを見出した。
しかしながら、従来成分の鋼に対して上記のフェライト相とオーステナイト相の二相域で熱延板焼鈍を行うと、仕上げ焼鈍後に圧延方向に沿った線状の疵(以下、線状疵と称することがある)が発生し、表面性状が著しく低下するという新たな問題が生じることが明らかとなった。
そこで、発明者らは成形性と表面性状を両立させるため、フェライト相とオーステナイト相の二相域で熱延板焼鈍を行うことにより線状疵が発生した原因について調査した。その結果、線状疵は熱延板焼鈍後の鋼板表層部に存在する非常に硬質なマルテンサイト相に起因することがわかった。すなわち、熱延板焼鈍後の鋼板表層部に硬質なマルテンサイト相が存在すると、その後の冷間圧延において硬質なマルテンサイト相とフェライト相の界面にひずみが集中して微小亀裂が発生し、仕上げ焼鈍後に線状疵となることを見出した。マルテンサイト相はフェライト相とオーステナイト相の二相域での熱延板焼鈍において生成したオーステナイト相が冷却過程でマルテンサイト相へと変態して生成したものである。このマルテンサイト相の組織中の各マルテンサイト結晶粒の硬度を調査したところ、多くのマルテンサイト相がビッカース硬度(HV)で300〜400程度であるのに対し、一部のマルテンサイト相がHV500を超えるほど著しく硬質であり、冷間圧延における微小亀裂はこのHV500を超える著しく硬質なマルテンサイト相とフェライト相の界面で発生していることを見出した。
そこで、発明者らは線状疵の回避技術について鋭意検討を行った。その結果、MnおよびNiの比率をNi/Mn≧0.6に調整することが有効であることを見出した。NiはMnと同じくオーステナイト生成元素でありマルテンサイト相の生成を促進する元素であるが、Mnに比べて焼戻し軟化抵抗が低い元素である。熱延板焼鈍ではフェライト相とオーステナイト相の二相温度域から冷却を行い、約400℃でマルテンサイト変態が生じ、その後の冷却過程においてマルテンサイト相の自己焼戻しが生じる。しかし、Ni/Mnを0.6以上とした場合、Ni/Mnが0.6未満の場合に比べて焼戻し軟化抵抗が低いために自己焼戻しの進行が早く、熱延板焼鈍の冷却が完了した時点でマルテンサイト相がHVで500以下にまで十分に軟質化される。その結果、所定の成形性および耐リジング特性を得つつ、線状疵の発生を回避できる。
すなわち、MnおよびNiを適切な配合で含有する鋼成分とし、フェライト相とオーステナイト相の二相域で短時間の熱延板焼鈍を行うことで、所定の成形性および耐リジング特性を得つつ、線状疵の発生を回避できることを知見した。
次に、本発明のフェライト系ステンレス鋼の成分組成について説明する。
C:0.005〜0.05%
Cはオーステナイト相の生成を促進し、熱延板焼鈍時にフェライト相とオーステナイト相が出現する二相温度域を拡大する効果がある。この効果を得るためには0.005%以上の含有が必要である。しかし、C量が0.05%を超えると鋼板が硬質化して延性が低下する。また、熱延板焼鈍後に著しく硬質なマルテンサイト相が生成し、仕上げ焼鈍後の表面線状欠陥を誘引する。そのため、C量は0.005〜0.05%の範囲とする。好ましくは0.010〜0.04%の範囲である。さらに好ましくは0.015〜0.03%の範囲である。
Si: 0.02〜1.00%
Siは鋼溶製時に脱酸剤として作用する元素である。この効果を得るためには0.02%以上の含有が必要である。しかし、Si量が1.00%を超えると、鋼板が硬質化して熱間圧延時の圧延負荷が増大するとともに、冷延板焼鈍後の延性が低下する。そのため、Si量は0.02〜1.00%の範囲とする。好ましくは0.10〜0.75%の範囲である。さらに好ましくは0.15〜0.35%の範囲である。
Mn: 0.05〜0.60%、Ni: 0.1〜0.6%
MnはCと同様にオーステナイト相の生成を促進し、熱延板焼鈍時にフェライト相とオーステナイト相が出現する二相温度域を拡大する効果がある。この効果を得るためには0.05%以上の含有が必要である。しかし、Mn量が0.60%を超えると熱延板焼鈍時に生成するオーステナイト相中への濃化量が増加するため、Ni/Mn≧0.6を満たしたとしても、熱延板焼鈍後に硬質なマルテンサイト相が生成することを抑制することができず、線状疵が発生する。MnSの生成量が増加して耐食性が低下する。そのため、Mn量は0.05〜0.60%の範囲とする。好ましくは0.10〜0.45%の範囲である。さらに好ましくは0.15〜0.35%の範囲である。
NiはMnと同様にオーステナイト相の生成を促進し、熱延板焼鈍時にフェライト相とオーステナイト相が出現する二相温度域を拡大する効果がある。また、耐食性を向上させる元素でもある。これらの効果を得るためには0.1%以上の含有が必要である。しかし、Ni量が0.6%を超えると破断伸びが低下する。そのため、Ni量は0.1〜0.6%の範囲とする。好ましくは0.2〜0.5%の範囲である。さらに好ましくは0.3〜0.4%の範囲である。
Ni/Mn≧0.6(Ni、Mnは各元素の含有量(質量%))
優れた表面性状を得るためには、上記に加えてMn含有量、Ni含有量をNi/Mn≧0.6となるように調整することが重要となる。前述したように冷延板焼鈍後の線状疵は熱延板焼鈍によって生成したマルテンサイト相が過度に硬質であることに起因する。フェライト相とオーステナイト相の二相域で熱延板焼鈍を行うことにより、優れた成形性と耐リジング特性を得つつ良好な表面性状も得るためには、熱延板焼鈍によって生成するマルテンサイト相をビッカース硬度(HV)500以下にまで軟質化することが必要となる。すなわち、本発明ではMnに対してNiの含有量を相対的に大きくすることにより鋼の焼戻し軟化抵抗を低減する。Ni/Mnが0.6を下回ると、焼戻し軟化抵抗が高いために熱延板焼鈍の冷却過程におけるマルテンサイトの自己焼戻しが十分に生じず、硬質なマルテンサイト相が残存し所定の表面性状を得ることができない。そのため、本発明ではMnおよびNiを上記の範囲に制御することに加え、Ni/Mnを0.6以上にする必要がある。好ましくはNi/Mnは0.8以上である。さらに好ましくは1.0以上である。なお、本発明ではNi/Mnの上限は特に限定されない。
P: 0.04%以下
Pは粒界偏析による粒界破壊を助長する元素であるため低い方が望ましく、上限を0.04%とする。好ましくは0.03%以下である。さらに好ましくは0.01%以下である。
S: 0.01%以下
SはMnSなどの硫化物系介在物となって存在して延性や耐食性等を低下させる元素であり、特に含有量が0.01%を超えた場合にそれらの悪影響が顕著に生じる。そのためS量は極力低い方が望ましく、本発明ではS量の上限を0.01%とする。好ましくは0.007%以下である。さらに好ましくは0.005%以下である。
Cr: 15.5〜18.0%
Crは鋼板表面に不動態皮膜を形成して耐食性を向上させる効果を有する元素である。この効果を得るためにはCr量を15.5%以上とする必要がある。しかし、Cr量が18.0%を超えると、熱延板焼鈍時にオーステナイト相の生成が不十分となり、所定の成形性および耐リジング特性が得られない。そのため、Cr量15.5〜18.0%の範囲とする。好ましくは16.0〜17.5%の範囲である。さらに好ましくは16.0〜17.0%の範囲である。
Al: 0.001〜0.10%
AlはSiと同様に脱酸剤として作用する元素である。この効果を得るためには0.001%以上の含有が必要である。しかし、Al量が0.10%を超えると、Al2O3等のAl系介在物が増加し、表面性状が低下しやすくなる。そのため、Al量は0.001〜0.10%の範囲とする。好ましくは0.001〜0.05%の範囲である。さらに好ましくは0.001〜0.03%の範囲である。
N: 0.01〜0.06%
Nは、C、Mnと同様にオーステナイト相の生成を促進し、熱延板焼鈍時にフェライト相とオーステナイト相が出現する二相温度域を拡大する効果がある。この効果を得るためにはN量を0.01%以上とする必要がある。しかし、N量が0.06%を超えると延性が著しく低下する上、Cr窒化物の析出を助長することによる耐食性の低下が生じる。そのため、N量は0.01〜0.06%の範囲とする。好ましくは0.01〜0.05%の範囲である。さらに好ましくは0.02〜0.04%の範囲である。
残部はFeおよび不可避的不純物である。
以上の成分組成により本発明の効果は得られるが、さらに製造性あるいは材料特性を向上させる目的で以下の元素を含有することができる。
Cu:0.1〜1.0%、Mo: 0.1〜0.5%、Co: 0.01〜0.5%のうちから選ばれる1種または2種以上
Cuは耐食性を向上させる元素であり、特に高い耐食性が要求される場合には含有することが有効である。また、Cuにはオーステナイト相の生成を促進し、熱延板焼鈍時にフェライト相とオーステナイト相が出現する二相温度域を拡大する効果がある。これらの効果は0.1%以上の含有で顕著となる。しかし、Cu含有量が1.0%を超えると成形性が低下する場合があり好ましくない。そのためCuを含有する場合は0.1〜1.0%とする。好ましくは0.2〜0.8%の範囲である。さらに好ましくは0.3〜0.5%の範囲である。
Moは耐食性を向上させる元素であり、特に高い耐食性が要求される場合には含有することが有効である。この効果は0.1%以上の含有で顕著となる。しかし、Mo含有量が0.5%を超えると熱延板焼鈍時にオーステナイト相の生成が不十分となり、所定の材料特性が得られなくなり好ましくない。そのため、Moを含有する場合は0.1〜0.5%とする。好ましくは0.1〜0.3%の範囲である。
Coは靭性を向上させる元素である。この効果は0.01%以上の含有によって得られる。一方、含有量が0.5%を超えると成形性を低下させる。そのため、Coを含有する場合の含有量は0.01〜0.5%の範囲とする。
V: 0.01〜0.25%、Ti: 0.001〜0.015%、Nb: 0.001〜0.025%、Mg: 0.0002〜0.0050%、B: 0.0002〜0.0050%、REM: 0.01〜0.10%、Ca: 0.0002〜0.0020%のうちから選ばれる1種または2種以上
V: 0.01〜0.25%
Vは鋼中のCおよびNと化合して、固溶C、Nを低減する。これにより、平均r値を向上させる。さらに、熱延板での炭窒化物析出挙動を制御して熱延・焼鈍起因の線状疵の発生を抑制して表面性状を改善する。これらの効果を得るためにはV量を0.01%以上含有することが好ましい。しかし、V量が0.25%を超えると加工性が低下するとともに、製造コストの上昇を招く。そのため、Vを含有する場合は0.01〜0.25%の範囲とする。好ましくは0.03〜0.20%の範囲である。さらに好ましくは0.05〜0.15%の範囲である。
Ti: 0.001〜0.015%、Nb:0.001〜0.025%
TiおよびNbはVと同様に、CおよびNとの親和力の高い元素であり、熱間圧延時に炭化物あるいは窒化物として析出し、母相中の固溶C、Nを低減させ、冷延板焼鈍後の加工性を向上させる効果がある。これらの効果を得るためには、0.001%以上のTi、0.001%以上のNbを含有することが好ましい。しかし、Ti量が0.015%あるいはNb量が0.025%を超えると、過剰なTiNおよびNbCの析出により良好な表面性状を得ることができない。そのため、Tiを含有する場合は0.001〜0.015%の範囲、Nbを含有する場合は0.001〜0.025%の範囲とする。Ti量は好ましくは0.003〜0.010%の範囲である。Nb量は好ましくは0.005〜0.020%の範囲である。さらに好ましくは0.010〜0.015%の範囲である。
Mg: 0.0002〜0.0050%
Mgは熱間加工性を向上させる効果がある元素である。この効果を得るためには0.0002%以上の含有が必要である。しかし、Mg量が0.0050%を超えると表面品質が低下する。そのため、Mgを含有する場合は0.0002〜0.0050%の範囲とする。好ましくは0.0005〜0.0035%の範囲である。さらに好ましくは0.0005〜0.0020%の範囲である。
B: 0.0002〜0.0050%
Bは低温二次加工脆化を防止するのに有効な元素である。この効果を得るためには0.0002%以上の含有が必要である。しかし、B量が0.0050%を超えると熱間加工性が低下する。そのため、Bを含有する場合は0.0002〜0.0050%の範囲とする。好ましくは0.0005〜0.0035%の範囲である。さらに好ましくは0.0005〜0.0020%の範囲である。
REM: 0.01〜0.10%
REMは耐酸化性を向上させる元素であり、特に溶接部の酸化皮膜形成を抑制し溶接部の耐食性を向上させる効果がある。この効果を得るためには0.01%以上の含有が必要である。しかし、0.10%を超えて含有すると冷延板焼鈍時の酸洗性などの製造性を低下させる。また、REMは高価な元素であるため、過度な含有は製造コストの増加を招くため好ましくない。そのため、REMを含有する場合は0.01〜0.10%の範囲とする。
Ca: 0.0002〜0.0020%
Caは、連続鋳造の際に発生しやすいTi系介在物の晶出によるノズルの閉塞を防止するのに有効な成分である。この効果を得るためには0.0002%以上の含有が必要である。しかし、Ca量が0.0020%を超えるとCaSが生成して耐食性が低下する。そのため、Caを含有する場合は0.0002〜0.0020%の範囲とする。好ましくは0.0005〜0.0015%の範囲である。さらに好ましくは0.0005〜0.0010%の範囲である。
次に本発明のフェライト系ステンレス鋼の製造方法について説明する。
本発明のフェライト系ステンレス鋼は上記成分組成を有する鋼スラブに対して、熱間圧延を施し、次いで900〜1050℃の温度範囲で5秒〜15分間保持する焼鈍を行い熱延焼鈍板とし、次いで冷間圧延を施した後、800〜950℃の温度範囲で5秒〜5分間保持する冷延板焼鈍を行うことで得られる。
まずは、上記した成分組成からなる溶鋼を、転炉、電気炉、真空溶解炉等の公知の方法で溶製し、連続鋳造法あるいは造塊−分塊法により鋼素材(スラブ)とする。このスラブを、1100〜1250℃で1〜24時間加熱するか、あるいは加熱することなく鋳造まま直接、熱間圧延して熱延板とする。
次いで、熱間圧延を行う。巻取りでは、巻取り温度を500℃以上850℃以下とすることが好ましい。500℃未満では巻取り後の再結晶が不十分となって冷延板焼鈍後の延性が低下する場合があるため好ましくない。850℃超で巻き取ると粒径が大きくなり、プレス加工時に肌荒れが発生してしまう場合がある。したがって、巻取り温度は500〜850℃の範囲が好ましい。
その後、フェライト相とオーステナイト相の二相域温度となる900〜1050℃の温度で5秒〜15分間保持する熱延板焼鈍を行う。
次いで、必要に応じて酸洗を施し、冷間圧延および冷延板焼鈍(仕上げ焼鈍)を行う。さらに、必要に応じて酸洗を施して製品とする。
冷間圧延は成形性および形状矯正の観点から、50%以上の圧下率で行うことが好ましい。また、本発明では、冷延−焼鈍を2回以上繰り返しても良い。冷間圧延により板厚200μm以下のステンレス箔としても良い。
冷延板焼鈍は、良好な成形性を得るために800〜950℃の温度で5秒〜5分間保持する。また、より光沢を求めるためにBA焼鈍(光輝焼鈍)を行っても良い。
なお、さらに表面性状を向上させるために、研削や研磨等を施してもよい。
製造条件の限定理由について、以下に説明する。
900〜1050℃の温度で5秒〜15分間保持する熱延板焼鈍
熱延板焼鈍は本発明が優れた成形性および表面性状を得るために極めて重要な工程である。熱延板焼鈍温度が900℃未満では十分な再結晶が生じないうえ、フェライト単相域となるため、二相域焼鈍によって発現する本発明の効果が得られない。しかし、熱延板焼鈍温度が1050℃を超えると炭化物の固溶が促進されるためにオーステナイト相中へのC濃化が助長され、熱延板焼鈍後に硬質なマルテンサイト相が生成することを回避できず、所定の表面性状が得られない。焼鈍時間が5秒未満の場合、所定の温度で焼鈍したとしてもオーステナイト相の生成とフェライト相の再結晶が十分に生じないため、所望の成形性が得られない。一方、焼鈍時間が15分を超えるとCr炭窒化物の一部が固溶してオーステナイト相中へのC濃化が助長され、上記と同様の機構によって表面性状が悪化する場合がある。そのため、熱延板焼鈍は900〜1050℃の温度で、5秒〜15分間保持する。好ましくは、950〜1000℃の温度で15秒〜3分間保持である。
800〜950℃の温度で5秒〜5分間保持する冷延板焼鈍
冷延板焼鈍は熱延板焼鈍で形成したフェライト相とマルテンサイト相の二相組織をフェライト単相組織とするために重要な工程である。冷延板焼鈍温度が800℃未満では再結晶が十分に生じず所定の破断伸びおよび平均r値を得ることができない。一方、冷延板焼鈍温度が950℃を超えた場合、当該温度がフェライト相とオーステナイト相の二相温度域となる鋼成分では冷延板焼鈍後にマルテンサイト相が生成するために鋼板が硬質化し、所定の破断伸びを得ることができない。また、当該温度がフェライト単相温度域となる鋼成分であったとしても、結晶粒の著しい粗大化により、鋼板の光沢度が低下するため表面品質の観点で好ましくない。焼鈍時間が5秒未満の場合、所定の温度で焼鈍したとしてもフェライト相の再結晶が十分に生じないため、所定の破断伸びおよび平均r値を得ることができない。焼鈍時間が5分を超えると、結晶粒が著しく粗大化し、鋼板の光沢度が低下するため表面品質の観点で好ましくない。そのため、冷延板焼鈍は800〜950℃の範囲で5秒〜5分間保持とする。好ましくは、850℃〜900℃で15秒〜3分間保持である。
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
表1に示す化学組成を有するステンレス鋼をSS-VOD(Strongly Stirred Vacuum Oxygen decarburization)法により各150ton溶製した。この溶鋼を連続鋳造法により、幅1000mm、厚さ200mmの鋼スラブとした。得られたスラブを1150℃で1時間加熱後、熱間圧延を施して3.5mm厚の熱延コイルとした。次いで、これらの熱延コイルに表2に記載の条件で熱延板焼鈍を施した後に酸洗し、熱延焼鈍酸洗コイルとした。得られた熱延焼鈍酸洗コイルを板厚0.8mmまで冷間圧延し、表2に記載の条件で冷延板焼鈍を施した後に酸洗することにより冷延焼鈍コイル(フェライト系ステンレス鋼)とした。
かくして得られた冷延焼鈍コイルについて以下の評価を行った。
(1)表面性状の評価
冷延焼鈍コイルの表面を肉眼にて検査し、コイル全長に存在する長さ5mm以上の線状疵の個数を計測した。冷延焼鈍コイル表面に認められた線状疵が全長で10箇所以下の場合を合格とした。
(2)延性の評価
冷延焼鈍コイルから、圧延方向に対して直角となる方向にJIS 13B号引張試験片を採取し、引張試験をJIS Z2241に準拠して行い、破断伸びを測定し、破断伸びが25%以上の場合を合格(○)、25%未満の場合を不合格(×)とした。
(3)平均r値
冷延焼鈍コイルから、圧延方向に対して平行(L方向)、45°(D方向)およびに直角(C方向)となる方向にJIS 13B号引張試験片を採取し、JIS Z2241に準拠した引張試験をひずみ15%まで行って中断し、各方向のr値を測定し、下記(1)式により平均r値を算出した。
平均r値=(rL+2×rD+rC)/4 (1)
ここで、rLは圧延方向に平行な方向に引張試験した際のr値、rDは圧延方向に対して45°の方向に引張試験した際のr値、rCは圧延方向と直角方向に引張試験した際のr値である。
平均r値は0.65以上を合格(○)、0.65未満を不合格(×)とした。
(4)リジング高さ
冷延焼鈍コイルから、圧延方向に対して平行となる方向にJIS 5号引張試験片を採取し、その表面を#600のエメリーペーパーを用いて研磨した。次いで、20%の引張ひずみを付与し、表面粗度計を用いて、JIS B 0601(2001年)で規定される算術平均うねりWaを、測定長16mm、ハイカットフィルター波長0.8mm、ローカットフィルター波長8mmで測定した。Waが2.5μm以下の場合を合格(○)、2.5μm超の場合を不合格(×)とした。
(5)耐食性の評価
冷延焼鈍コイルから、60×100mmの試験片を採取し、表面を#600エメリーペーパーにより研磨仕上げした後に端面部をシールした試験片を作製し、JIS H 8502に規定された塩水噴霧サイクル試験に供した。塩水噴霧サイクル試験は、塩水噴霧(5質量%NaCl、35℃、噴霧2h)→乾燥(60℃、4h、相対湿度40%)→湿潤(50℃、2h、相対湿度≧95%)を1サイクルとして、8サイクル行った。塩水噴霧サイクル試験を8サイクル実施後の試験片表面を写真撮影し、画像解析により試験片表面の発錆面積を測定し、試験片全面積との比率から発錆率((試験片中の発錆面積/試験片全面積)×100 [%])を算出した。発錆率が5%以下を特に優れた耐食性で合格(◎)、5%超25%以下を合格(○)、25%超を不合格(×)とした。
評価結果を熱延板焼鈍条件および冷延板焼鈍条件と併せて表2に示す。
Figure 0006411881
Figure 0006411881
鋼成分が本発明の範囲を満たし、好適な条件で製造されたNo. 1〜No.17では、鋼板表面に認められた線状疵の数はいずれも7箇所以下と表面性状は良好であった。また、破断伸び25%以上、平均r値で0.65以上、リジング高さで2.5μm以下と優れた成形性と耐リジング特性を有することが確認された。さらに耐食性に関しても塩水噴霧サイクル試験を8サイクル実施後の試験片表面の発錆率がいずれも25%以下と良好な特性が得られている。特にCuを0.3%あるいはMoを0.5%含有したNo.4およびNo.5では、塩水噴霧サイクル試験後の発錆率が5%以下となっており、耐食性が一層向上した。
Ni/Mnが本発明の範囲を下回るNo.18およびNo.19では、所定の成形性、耐リジング特性および耐食性は得られたものの、熱延板焼鈍によって生じたマルテンサイトが十分に軟質化せず、冷延板焼鈍後に多量の線状疵が発生し、所定の表面性状を得ることができなかった。
Mn含有量が本発明の範囲を上回るNo.20では、熱延板焼鈍時に生成したオーステナイト相へのMn濃化が過度に生じ、熱延板焼鈍後に硬質なマルテンサイト相が生成したために冷延板焼鈍後に多量の線状疵が発生し、所定の表面性状を得ることができなかった。また、鋼中のMnS量が著しく増加したために、所定の破断伸びおよび耐食性を得ることができなかった。
Ni含有量が本発明を上回るNo.21では過剰のNi含有によって成形性が低下し、所定の破断伸びを得ることができなかった。
一方、Cr含有量が本発明の範囲を下回るNo.22では、所定の成形性は得られたものの、Cr含有量が不足したために所定の耐食性が得られなかった。
Cr含有量が本発明の範囲を上回るNo.23では、十分な耐食性は得られたが、過剰にCrを含有したために熱延板焼鈍時にオーステナイト相が生成せず、所定の成形性およびリジング高さを得ることができなかった。
冷延板焼鈍温度または冷延板焼鈍時間が本発明の条件を下回るNo.24およびNo.25では熱延板焼鈍によってマルテンサイトが生成していたため所定のリジング高さは得られたものの、冷延板焼鈍における再結晶が不十分であったために冷間圧延時に加工ひずみが残存し、所定の破断伸びおよび平均r値を得ることができなかった。
熱延板焼鈍時間が本発明の条件を下回るNo.26では、熱延板焼鈍における再結晶が不十分であったことに加え、オーステナイト相がほとんど生成しなかったために所定の成形性およびリジング高さが得られなかった。
熱延板焼鈍温度が本発明の範囲を下回るNo. 27では、温度が低いために十分な再結晶が生じなかったことに加え、熱延板焼鈍がフェライト相単相域となったためにオーステナイト相(冷却後にマルテンサイト相に変態)が生成しなかった結果、所定の成形性およびリジング高さが得られなかった。
Cr含有量が本発明の範囲を下回るとともに熱延板焼鈍時間が本発明の条件を上回るNo.28では所定の成形性およびリジング高さは得られたものの、Cr含有量が不足したために所定の耐食性が得られなかったとともに、熱延板焼鈍時に炭化物の固溶が過度に生じた結果、熱延板焼鈍後に硬質なマルテンサイト相が生成し、所定の表面性状を得ることができなかった。
Cr含有量が本発明の範囲を下回るとともに熱延板焼鈍温度が本発明の範囲を上回るNo.29では、所定の成形性およびリジング高さは得られたものの、Cr含有量が不足したために所定の耐食性が得られなかったとともに、熱延板焼鈍時に母相中に固溶する炭化物の量が著しく増加したために熱延板焼鈍後に硬質なマルテンサイト相が生成し、所定の表面性状を得ることができなかった。
本発明で得られるフェライト系ステンレス鋼は、絞りを主体としたプレス成形品や高い表面美麗性を要求される用途、例えば厨房器具や食器への適用に特に好適である。

Claims (5)

  1. 質量%で、C:0.005〜0.05%、Si: 0.02〜1.00%、Mn: 0.05〜0.60%、P: 0.04%以下、S: 0.01%以下、Cr:15.5〜18.0%、Al: 0.001〜0.10%、N: 0.01〜0.06%、Ni: 0.1〜0.6%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、かつNi/Mn≧0.64(Ni、Mnは各元素の含有量(質量%))を満たし、
    El≧25%、平均r値≧0.65およびリジング高さが2.5μm以下であることを特徴とするフェライト系ステンレス鋼。
  2. 質量%で、さらに、Cu: 0.1〜1.0%、Mo: 0.1〜0.5%、Co: 0.01〜0.5%のうちから選ばれる1種または2種以上を含むことを特徴とする請求項1に記載のフェライト系ステンレス鋼。
  3. 質量%で、C:0.005〜0.05%、Si: 0.02〜1.00%、Mn: 0.05〜0.60%、P: 0.04%以下、S: 0.01%以下、Cr:15.5〜18.0%、Al: 0.001〜0.10%、N: 0.01〜0.06%、Ni: 0.1〜0.6%を含有し、さらに、V: 0.01〜0.25%、Ti: 0.001〜0.015%、Nb: 0.001〜0.025%、Mg: 0.0002〜0.0050%、B: 0.0002〜0.0050%、REM: 0.01〜0.10%、Ca: 0.0002〜0.0020%のうちから選ばれる1種または2種以上を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、かつNi/Mn≧0.6(Ni、Mnは各元素の含有量(質量%))を満たし、
    El≧25%、平均r値≧0.65およびリジング高さが2.5μm以下であることを特徴とするフェライト系ステンレス鋼。
  4. 質量%で、C:0.005〜0.05%、Si: 0.02〜1.00%、Mn: 0.05〜0.60%、P: 0.04%以下、S: 0.01%以下、Cr:15.5〜18.0%、Al: 0.001〜0.10%、N: 0.01〜0.06%、Ni: 0.1〜0.6%を含有し、さらに、Cu: 0.1〜1.0%、Mo: 0.1〜0.5%、Co: 0.01〜0.5%のうちから選ばれる1種または2種以上、V: 0.01〜0.25%、Ti: 0.001〜0.015%、Nb: 0.001〜0.025%、Mg: 0.0002〜0.0050%、B: 0.0002〜0.0050%、REM: 0.01〜0.10%、Ca: 0.0002〜0.0020%のうちから選ばれる1種または2種以上を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、かつNi/Mn≧0.6(Ni、Mnは各元素の含有量(質量%))を満たし、
    El≧25%、平均r値≧0.65およびリジング高さが2.5μm以下であることを特徴とするフェライト系ステンレス鋼。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載のフェライト系ステンレス鋼の製造方法であって、鋼スラブに対して、熱間圧延を施し、次いで900〜1050℃の温度範囲で5秒〜15分間保持する焼鈍を行いフェライト相とマルテンサイト相の二相組織からなる熱延焼鈍板とし、次いで冷間圧延を施した後、800〜900℃の温度範囲で5秒〜5分間保持する冷延板焼鈍を行い、フェライト単相組織とすることを特徴とするフェライト系ステンレス鋼の製造方法。
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