JP3270137B2 - 表面性状とリジング性および加工性に優れたフエライト系ステンレス鋼板の製造方法 - Google Patents

表面性状とリジング性および加工性に優れたフエライト系ステンレス鋼板の製造方法

Info

Publication number
JP3270137B2
JP3270137B2 JP24886592A JP24886592A JP3270137B2 JP 3270137 B2 JP3270137 B2 JP 3270137B2 JP 24886592 A JP24886592 A JP 24886592A JP 24886592 A JP24886592 A JP 24886592A JP 3270137 B2 JP3270137 B2 JP 3270137B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
hot
rolling
less
rolled
stainless steel
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP24886592A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH0673458A (ja
Inventor
克久 宮楠
美博 植松
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Nisshin Co Ltd
Original Assignee
Nisshin Steel Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nisshin Steel Co Ltd filed Critical Nisshin Steel Co Ltd
Priority to JP24886592A priority Critical patent/JP3270137B2/ja
Publication of JPH0673458A publication Critical patent/JPH0673458A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3270137B2 publication Critical patent/JP3270137B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Heat Treatment Of Steel (AREA)
  • Heat Treatment Of Sheet Steel (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,プレス成形や曲げ加
工,ロールフォーミングなどの加工に供される表面性状
とリジング性および加工性に優れた成形加工用フエライ
ト系ステンレス鋼板の効率的な製造方法に関する。本発
明の鋼は冷延鋼帯もしくは冷延鋼板の形で市場に供され
るが,本明細書においてはこれらを鋼板と総称すること
がある。
【0002】
【従来の技術】SUS430に代表されるフエライト系ステン
レス鋼は,良好な耐食性を有し, また高価なNiを含有
せず, オーステナイト系ステンレス鋼に比べると経済的
な利点も合わせ持つことなどから,耐久消費財を中心に
広く使用されている。
【0003】従来より, フエライト系ステンレス鋼板を
製造するには,連続鋳造スラブを熱間圧延により熱延鋼
帯とし,箱型炉もしくは連続焼鈍炉による熱延板焼鈍を
行った後酸洗し,一回の冷間圧延もしくは中間焼鈍を含
む複数回の冷間圧延を行い,再結晶焼鈍して製品化する
のが一般的な方法である。ただし,熱延板焼鈍は省略さ
れる場合もあるが,特に深絞り加工などに供されリジン
グ性および加工性が重要となる薄板のプレス成形用途に
対しては,熱延板焼鈍を行い,また中間焼鈍を含む2回
の冷間圧延を実施して製造されている。
【0004】このようなフエライト系ステンレス鋼冷延
鋼板の製造において,標準的に採用されている熱間圧延
条件は次の通りである。 温度 板厚(mm) スラブ加熱 1100〜1200℃ 200 粗熱間圧延終了 950〜1050℃ 25〜30 仕上熱間圧延終了 800〜850℃ 3.0〜4.5 巻き取り 600〜650℃ 3.0〜4.5
【0005】また,生産能率のうえで特に重要となる圧
延速度については,従来のフエライト系ステンレス鋼で
は仕上圧延出側速度で4.0〜6.0m/s程度である。これは
オーステナイト系ステンレス鋼の約8m/s以上, 普通鋼
の約10m/s以上に比べかなり遅い。
【0006】フエライト系ステンレス鋼の加工性は,一
般にオーステナイト系ステンレス鋼に比べて劣り, また
プレス成形に際してリジングと呼ばれる独特のシワ状の
表面凹凸を生じる問題がある。リジングは,成形品の美
観を損ない商品価値を低下させるばかりか,これを除去
するために研磨負荷の増大を招くなど, フエライト系ス
テンレス鋼の加工上の大きな問題である。
【0007】SUS430系鋼の加工性改善に関しては,これ
までにも数多くの研究開発ならびに提案がなされてきて
いる。古くはB添加 (特公昭44-736号公報) やB−Ti
添加(特公昭47-4786号公報, 特公昭51-8733号公報), A
l添加 (例えば特公昭51-44888号公報) などのフエライ
ト系ステンレス鋼の例があり,さらに本発明者らが提案
したBとVに加えて微量Tiおよび/または微量Zrを添
加した鋼(特開平3-94043号公報) などの例がある。
【0008】一方, リジングについても数多くの報告が
あるが,その成因はつまるところ,鋳造組織や熱延板組
織に由来する方位の近い結晶粒の集団からなる単位領域
が冷延焼鈍板においても温存され, プレス成形などの加
工に際してそれぞれの単位領域が異なった変形挙動を示
し, 鋼板の圧延方向にうね状の表面起伏を生じるものと
考えられている。したがって,リジング性の改善にはこ
の単位領域を微細化,粉砕化することが有効であり,こ
の観点から各種の改善策が提案されている。
【0009】その一つには, 鋼の化学成分バランスにお
いてオーステナイトポテンシャルを高める方法があり,
熱間圧延中にフエライト(α)相と共存するオーステナ
イト(γ)相の量を増加させ,(α+γ)の帯状組織中
の粗大αバンドを小さくすることでリジング性の改善を
図るものである。
【0010】他方,熱間圧延に関するリジング改善策と
しては低温圧延が有効であることが知られており,フエ
ライト系ステンレス鋼はオーステナイト系ステンレス鋼
よりも低い温度で熱間圧延が通常実施されている。より
積極的には, 比較的低温で強圧下の圧延パスを施した
り,また圧延中に材料を一時的に待機させてパス間の時
間を大きくする, いわゆるディレイ圧延がリジング改善
に有効であることも知られている。例えば特公昭45-340
16号公報では熱間圧延の少なくとも50%の圧下を871℃
以下の温度で行なうこと,そして熱間圧延の途中で圧延
を一時停止し,材料を760〜871℃よりも高くない温度に
冷却した後に後段の熱間圧延を行なうリジング改善方法
が提案されている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】前述のSUS430の加工性
改善を目的にB,Ti,Alなどを添加したフエライト系ス
テンレス鋼は,これら元素がフエライト生成元素である
ためにオーステナイトポテンシャルが低くなる結果, γ
を利用した熱間圧延中の組織微細化はあまり期待でき
ず,冷間焼鈍後のリジング性は必ずしも優れているとは
いえない。
【0012】また特公昭44-736号公報, 特公昭47-4786
号公報および特公昭51-8733号公報のB添加鋼やB-Ti
添加鋼はリジング性に優れることが示されているが,こ
れらはインゴット法により製造されている。このような
インゴットを分塊圧延によりスラブとして熱間圧延した
場合は,前述の単位領域の微細化および粉砕化の点から
もリジング性に有利である。しかし,現在の連続鋳造ス
ラブを熱延素材とする製造方法においては必ずしも良好
かつ十分なリジング性が確保できるとはいえない。
【0013】一方, オーステナイトポテンシャルを高め
てリジング性を向上させる方法は,そのためにC, Nも
しくはMnなどのオーステナイト生成元素量を増加させ
る必要があり, 材質の硬質化を招き加工性を低下させる
ことになる。
【0014】さらに,低温熱延では,確かにリジング性
の改善には有効であっても, 表面疵を発生しやすく鋼帯
の表面品質の劣化をもたらす。これは,温度が低くなる
と被圧延材の変形抵抗が上昇するために圧延負荷が大き
くなり,ロールと被圧延材との焼付きを生じて被圧延材
の一部が凝着物としてロール表面に移着し,その後の鋼
帯表面に転写されるためと考えられる。また,圧延温度
が低いと鋼帯表面に生成される酸化皮膜も薄く,これが
焼付きを一層助長することも考えられる。このため,そ
の後の工程で鋼帯の表面研磨を要するなど,工程負荷の
増大をもたらしている。
【0015】加えて,従来の熱間圧延温度の低温化によ
るリジング性の改善法では,低温化するために必然的に
圧延速度の低減を伴うことから生産性の低下が免れ得な
い。事実,先にも述べたようにフエライト系ステンレス
鋼の仕上圧延速度はオーステナイト系ステンレス鋼に比
べてもかなり遅く,生産性に劣っている。またディレイ
圧延についても圧延時間の増大を招き, 生産性の低下を
もたらすことになり経済的な方法ではない。
【0016】したがって,連続鋳造スラブを熱延素材と
するフエライト系ステンレス冷延鋼板の製造において,
低温熱延による熱延鋼帯の生産性や表面品質の低下を招
くことなく,なおかつ中間焼鈍を行なうことなく冷間圧
延し,加工用冷延鋼板で必要とされる良好な深絞り性や
延性を確保しつつ,リジング性を改善するフエライト系
ステンレス鋼の経済的な工業的熱間圧延技術は未だ完成
されていない。本発明の課題はこれを完成させることに
ある。
【0017】
【課題を解決するための手段】前記の課題を解決すべ
く,本発明者らはフエライト系ステンレス鋼のリジング
性および加工性に及ぼす合金組成,金属組織および熱延
条件の影響に関し,詳細な研究を行ってきた。その結
果,次のような幾つかの有益な事実を見出した。
【0018】(1) 高温でのγ相量が比較的少ない鋼であ
っても,仕上熱間圧延において高温・高速熱延を行なえ
ば,フエライト相の細分化ならびにひずみ蓄積が図ら
れ,巻取後もしくは熱延板焼鈍時にフエライト相の回復
・再結晶が促進され, これによって冷間圧延・焼鈍後の
リジング性は向上する。 (2) 適正量のBを添加することにより,高温・高速熱延
中のγ相は分散化した分布形態となり,フエライト相の
細分化ならびにひずみ蓄積がさらに促進され,リジング
性は一層向上する。 (3) V,Ti,Nb,Zrの添加を前項の処法に併用すれば加
工性は一層向上する。 (4) これに基づき連続鋳造スラブを用いて高温・高速熱
延すれば熱間圧延ロールとの焼付きが回避され表面性状
に優れた熱延鋼帯が生産性良く得られると共に,一回冷
延法さらには熱延板焼鈍を省略した一回冷延法により優
れたリジング性および加工性を有するフエライト系ステ
ンレス冷延鋼板が得られる。
【0019】本発明はこのような知見に基づき完成した
ものであり,その要旨とするところは,熱間加工温度域
でフエライト+オーステナイトの2相組織を呈するフエ
ライト系ステンレス鋼を,粗熱間圧延および仕上熱間圧
延を経て熱延鋼帯となし,冷間圧延と焼鈍を組み合わせ
て冷延鋼板または鋼帯を製造するさいに,下記(1)式で
示されるγmaxが10以上で35未満となるように化学
成分をバランスさせ且つ0.0010〜0.0300%のB(ほう
素)を含有したフエライト系ステンレス鋼のスラブを製
造し(ただし,この鋼は(1)式中の全ての成分が添加さ
れていることを意味するものではなく,含有しない成分
は0%としてγmaxを算出する),このスラブを1150〜125
0℃に加熱して粗熱間圧延を開始し,仕上圧延出側速度
が 7.0 m/s以上でかつ仕上圧延出側温度が 860℃以上で
仕上熱間圧延を終了し,650℃以上900 ℃以下で巻き取
ることを特徴とする,表面性状とリジング性および加工
性に優れたフエライト系ステンレス鋼板の製造法であ
る。
【0020】 γmax =420(%C)+470(%N)+23(%Ni)+7(%Mn)−11.5(%Cr) −11.5(%Si)−23(%V)−49(%Ti)−50(%Nb)−50(%Zr) +189 ・・(1)
【0021】
【作用】γmaxは熱間圧延温度域などの高温での最大オ
ーステナイト相量に対応する指標である。本発明の対象
とする鋼は, 基本的には0.0010〜0.030%のBを含有し
且つ前記γmaxが10以上35未満のフエライト系ステ
ンレス鋼であればよい。さらに本発明が有利に達成でき
るフエライト系ステンレス鋼としては,質量%でC:0.
10%以下, Si:0.40%以下, Mn:2.0%以下, Ni:0.
50%以下, Cr:10.00〜20.00%, N:0.04%以下,
B:0.0010〜0.030%を含有し,場合によってはさら
に,V:0.01〜0.30%, Ti:0.01〜0.03%, Nb:0.01
〜0.30%,Zr:0.01〜0.30%の1種または2種以上を含
有し,残部がFeおよび不可避の不純物からなり, かつ
上記(1)式で表されるγmaxが10以上35未満とするこ
とでリジング性および加工性に優れたフエライト系ステ
ンレス鋼板が得られる。
【0022】代表的な実験結果を参照しながら以下に本
発明の作用効果を具体的に説明しよう。
【0023】表1に示す化学成分を有する2種の供試鋼
を溶製し,厚さ200mmの連続鋳造スラブとした。鋼No.1
はSUS430として一般的な化学成分を有する鋼であり,鋼
No.2はB (ほう素) とTiを含有する17%Cr鋼である。
【0024】これらのスラブを表2に示した熱延条件に
よって板厚3.6mmの熱延鋼帯とし,いずれの場合も850℃
×6hの熱延板焼鈍を行い,酸洗後,板厚0.7mmに冷間
圧延し,830℃×1minの焼鈍を行った。
【0025】各熱延鋼帯の金属組織観察を行なうととも
に, 冷延焼鈍板のリジング性を調査した。リジング性
は,冷延焼鈍板から圧延方向と平行に, 平行部35mm幅×
120mm長さの引張試験片を採取し,20%の引張りひずみ
を付与し, 表面粗さ計を用いて圧延方向と直角方向の中
心線平均粗さRaを測定し,表面に現れたリジングを次
に示す5段階で評価した。
【0026】
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】図1は,表1の鋼No.1を表2の熱延条件N
o.1 (従来の熱延条件) で熱延した熱延板の金属組織を
示したものである。図1の熱延板から製造した冷延焼鈍
板のリジング評価はDであった。図1から分かるよう
に,通常のSUS430を従来の熱延条件で熱間圧延した場合
の熱延板金属組織は,圧延方向に長く展伸した変態相
(高温でのγ相) とフエライト相の層状組織を呈してい
る。
【0030】図2は,表1の鋼No.2を, 表2の熱延条件
No.1 (従来の熱延条件) で熱延した熱延板の金属組織を
示したものである。図2の熱延板から製造した冷延焼鈍
板のリジング評価はCであった。
【0031】図3は,表1の鋼No.2を, 表2の熱延条件
No.2 (高温・高速熱延) で熱延した熱延板の金属組織を
示したものである。図3の熱延板から製造した冷延焼鈍
板のリジング評価はAであった。
【0032】図2に見られにように,B (ほう素) とT
iを含有する鋼No.2は,従来の熱延条件においても変態
相が分断化する傾向を示しており,このためにリジング
性も向上している。しかし,必ずしも充分ではない。こ
れに対し,図3のように,高温高速熱延を適用すると変
態相は粒状となり,分散化した分布形態を呈する。そし
て,この熱延板金属組織の変化にともない,冷延焼鈍板
のリジング性も向上する。
【0033】このB添加と高速熱延により,高温熱延で
あっても良好なリジング特性が得られる理由は,次のよ
うに考えられる。
【0034】先ず,熱間圧延におけるオーステナイトの
役割についてみると,オーステナイトの析出ノーズは10
50〜1100℃にあり, これは粗熱間圧延後半の温度域に対
応する。フエライト系ステンレス鋼のように多量のCr
を含有する鋼では普通鋼に比べγ→α変態が遅く, 粗熱
間圧延段階で生成したオーステナイトは仕上熱間圧延時
にもほぼそのまま持ちこされる。したがって, フエライ
ト相に比べ熱間での変形抵抗の大きいオーステナイト相
がフエライト相と共存する状態で仕上熱間圧延され,こ
れがフエライト相の細分化ならびにひずみ蓄積に寄与す
ることになる。
【0035】このオーステナイト共存の効果は圧延温度
が低いほど大きいが,より高温であっても高速熱延では
ひずみ速度が大きいために,実質的に低温で熱延したと
同様の効果をもたらすものと推定される。さらにB (ほ
う素) は,例えば図2や図3にに見られるように高温時
のオーステナイト相(写真では冷却後の変態相)を粒状
に分散化して分布させる効果を有するから,上記のオー
ステナイト共存の効果をより一層高め,巻取後もしくは
熱延板焼鈍時にフエライト相の回復・再結晶を促進し,
リジング性を改善するものと考えられる。
【0036】なおオーステナイト(冷却後の変態相)の
分布状態に及ぼすBの影響のメカニズムについてせ現時
点では必ずしも明らかではないが,おそらくBの関与す
る析出物がフエライト中に多数存在し,粗熱間圧延中に
生成するオーステナイトの生成サイトとなるためと考え
られる。
【0037】以下に本発明で対象とするフエライト系ス
テンレス鋼の各成分含有量の限定理由について概説す
る。
【0038】Bは先にも述べたように熱延板の変態相分
布を均一分散化させ, リジングの原因となる単位領域を
微細化, 分断化する作用を有する。その効果は0.0010%
未満では十分ではない。一方, 0.0300%を超えるとスラ
ブ鋳造欠陥の増加や溶接性の低下を招くため,適正含有
量として0.0010%〜0.0300%に規定する。
【0039】Cはγmaxを高める元素であり, 熱間圧延
温度域でのオーステナイトを増加させて組織微細化に有
利に働き, リジング性の向上に好ましい。しかしCは冷
延焼鈍後の強度を上昇させる元素でもあり, あまり高い
と延性の低下を招くため0.10%を上限とする。
【0040】Siは脱酸に有効な元素であるが,固溶強
化能が大きく, 含有量が高いと材質が硬化し延性の低下
を招くので0.40%以下とする。
【0041】Mnはオーステナイト生成元素でありγmax
の制御に有効利用できるとともに,固溶強化能が小さく
材質への悪影響が少ない。しかし2.0%を超える添加は
耐食性の劣化やコスト上昇を招くため2.0%を上限とす
る。
【0042】NiはMnと同様にオーステナイト生成元素
でありγmaxの制御に有効な元素である。しかし,0.50
%を超える添加は硬質化やコスト上昇を招くため0.50%
を上限とする。
【0043】Crの下限10.00%は,ステンレス鋼として
の耐食性を保持するに必要最低限の量である。一方多量
の含有は加工性の低下を招くため,20.00%を上限とす
る。
【0044】NはCと同様にγmaxを高める元素であり,
リジング性の改善に好ましい。しかし多量の添加は硬
質化による延性低下や表面疵の発生を招くため,0.04%
を上限とする。
【0045】Ti,Nb,ZrおよびVは,いずれもr値を
上昇させ深絞り性改善に有効な元素である。しかし,一
方ではフエライト生成元素でありγmaxを低下させ必ず
しもリジング性に対しては好ましくない元素でもある。
そこで,それぞれの適正含有量範囲として, それぞれ0.
01〜0.30%に規制する。
【0046】γmaxは先にも述べたように熱間圧延温度
域での最大オーステナイト量の指標である。γmaxが10
以下では高温でのオーステナイト量が少ないため,本発
明で規定するB添加と高速・高温熱延を施しても十分で
リジング性が得られない。一方, γmaxを高めることは
リジング性の改善には有効であるが,そのためにC,N,
Mn,Niなどのオーステナイト生成元素量を高める必要
があり,これらは材質の硬質化やコスト上昇を招くため
γmaxとして35未満に規定する。
【0047】なお,本発明においてはMoやCu,Alなど
のその他の元素についても耐食性や耐酸化性などの諸特
性の向上を目的に適宜添加することは許容される。
【0048】次に本発明で採用する製造条件の数値限定
理由について概説する。
【0049】スラブ加熱温度は,1150℃未満では高速圧
延を行ったとしても, 従来の熱間圧延で問題となってい
る生産性の低下や表面疵発生の問題が完全には解決され
得ない。一方, 1250℃を超えるスラブ加熱温度を採用す
ることはエネルギーコストの上昇を招いて不利となる。
このため, スラブ加熱温度は1150〜1250℃の範囲とす
る。
【0050】仕上圧延速度の規制は本発明の重要な点で
あって,高温熱延であっても良好なリジング性を得ると
ともに,生産性を高めかつ圧延温度を確保し表面品質の
良好な熱延鋼帯を得るため7.0m/s以上に規定する。
【0051】仕上圧延終了温度は,前記1150℃以上のス
ラブ加熱温度を採用する場合に860℃未満とするには,
圧延速度を規制したり熱延中のストリップの冷却強化を
図る必要があるとともに,ロールとの焼付きに起因する
表面疵発生の危険性が高まるため, 860℃以上に規定す
る。
【0052】巻取温度を低くするためには,仕上圧延機
出側から巻取機までの間で積極的な水冷を行なうなどの
処置が必要であり,鋼帯の形状不良を招く。また熱延板
焼鈍を省略するには,高温で巻き取ってその後の降温過
程でオーステナイトもしくは変態相のフエライトへの変
態を促進することが有利である。逆に必要以上の高温巻
取を行なうことはエネルギーコストの上昇を招く。そこ
で, 本発明で規定する前記スラブ加熱温度ならびに仕上
圧延終了温度を採用し,特段の水冷や加熱処理などを行
なう必要のない巻取温度として650℃以上900℃以下に規
定する。
【0053】
【実施例】表3に示す化学成分を有する鋼を溶製して連
続鋳造スラブとなし,表4に示す条件により熱間圧延を
行い,板厚3.6mmの熱延鋼帯とし,圧延ロールとの焼付
きによる表面疵発生の有無を確認した。
【0054】この熱延鋼帯を2分割し,一方には850℃
×6hの焼鈍を施し,他方は熱延板焼鈍を施すことな
く, それぞれをデスケール後,板厚0.7mmに冷間圧延
し,830℃×1minの焼鈍を行った。
【0055】なお比較のために,通常のSUS430である鋼
No.5を従来条件で熱延し,熱延板焼鈍を行ったものにつ
いて, 板厚1.5mmでの中間焼鈍を含む2回冷延工程にて
も製造した(比較例No.3)。比較例No.1と比較例No.2
は,中間焼鈍を行わなかった以外は比較例No.3と同条件
である。
【0056】得られた冷延鋼帯について,リジング性,
引張特性およびr値を調査した。リジング性の調査なら
びに評価は前述の方法と同じである。引張特性およびr
値はJIS 13B号試験片を用いて圧延方向, 圧延方向と45o
方向, 圧延方向と90o方向の3方向について測定しその
平均を求めた。得られた結果を表4にて併せて示す。
【0057】
【表3】
【0058】
【表4】
【0059】表4から分かるように,本発明による鋼板
はいずれも熱延鋼帯での表面疵の発生がなく,良好な表
面性状が得られている。またその冷延焼鈍板は,熱延板
焼鈍の有無によらず,通常のSUS430 (鋼No.5)の低速熱
延で2回冷延工程材(比較例No.3)と同等以上の優れた
リジング性ならびに加工性を有している。
【0060】これに対し,鋼No.5を高速熱延した比較例
No.1では, 加工性ならびにリジング性が劣る。
【0061】SUS430の鋼No.5を従来条件 (低速) で熱延
し,中間焼鈍を行なうことなく冷間圧延した比較例No.2
は,熱延鋼帯において表面疵が発生し且つ冷延焼鈍板の
加工性ならびにリジング性も本発明例に比べて劣る。
【0062】比較例No.4は,γmaxが8.2と低い鋼No.6を
高速熱延したものであるが,リジングに劣る。
【0063】また鋼No.2を従来条件で熱延した比較例N
o.5のものは,冷延焼鈍板の特性には優れるものの,熱
延鋼帯にロールとの焼付きに起因する表面疵が多発して
おり,製品化には後工程での表面研磨を要するものであ
った。
【0064】
【発明の効果】以上のように,本発明によれば生産性の
低下やコスト上昇を招くことなく,良好な表面性状を有
し,リジング性および加工性に優れたフエライト系ステ
ンレス鋼板を得ることができる。なお本発明によれば,
中間焼鈍を施さずとも良好なリジング性および加工性が
得られるものであるが,製造コストの上昇を許容し,冷
延工程において中間焼鈍を施すならば,さらにこれら特
性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】表1の鋼No.1を従来の熱延条件で熱間圧延して
得た熱延板の金属組織を示す写真である。
【図2】表1のB入り鋼No.2を従来の熱延条件で熱間圧
延して得た熱延板の金属組織を示す写真である。
【図3】表1のB入り鋼No.2を本発明に従う熱延条件で
熱間圧延して得た熱延板の金属組織を示す写真である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭57−70225(JP,A) 特開 平2−290917(JP,A) 特開 昭62−10218(JP,A) 特開 平3−94043(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C21D 9/46 C21D 8/02 C22C 38/00 C22C 38/54

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 熱間加工温度域でフエライト+オーステ
    ナイトの2相組織を呈するフエライト系ステンレス鋼
    を,粗熱間圧延および仕上熱間圧延を経て熱延鋼帯とな
    し,冷間圧延と焼鈍を組み合わせて冷延鋼板または鋼帯
    を製造するさいに,下記の(1)式で示されるγmax (ただ
    し, 式中の成分のうち鋼中に含有されない成分は0%と
    して計算する)が10以上で35未満となるように化学
    成分をバランスさせ且つ0.0010〜0.0300%のB(ほう
    素)を含有したフエライト系ステンレス鋼のスラブを製
    造し,このスラブを1150〜1250℃に加熱して粗熱間圧延
    を開始し,仕上圧延出側速度が 7.0 m/s以上でかつ仕上
    圧延出側温度が 860℃以上で仕上熱間圧延を終了し,65
    0℃以上 900℃以下で巻き取り,中間焼鈍を施すことな
    く目標板厚まで冷間圧延を行い, 次いで再結晶焼鈍する
    ことを特徴とする表面性状とリジング性および加工性に
    優れたフエライト系ステンレス鋼板の製造法。 γmax =420(%C)+470(%N)+23(%Ni)+7(%Mn)−11.5(%Cr) −11.5(%Si)−23(%V)−49(%Ti)−50(%Nb)−50(%Zr) +189 ・・(1)
  2. 【請求項2】 フエライト系ステンレス鋼は,質量%
    で,C:0.10%以下,Si:0.40%以下, Mn:2.0%以
    下, Ni:0.50%以下, Cr:10.00〜20.00%, N:0.04
    %以下, B:0.0010〜0.0300%を含有し,残部がFeお
    よび不可避の不純物からなり, かつγmaxが10以上で
    35未満である請求項1に記載の製造法。
  3. 【請求項3】 フエライト系ステンレス鋼は,質量%
    で,C:0.10%以下,Si:0.40%以下, Mn:2.0%以
    下, Ni:0.50%以下, Cr:10.00〜20.00%, N:0.04
    %以下, B:0.0010〜0.0300%を含有し,さらに,V:
    0.01〜0.30%, Nb:0.01〜0.30%, Zr:0.01〜0.30%
    またはTi:0.01〜0.30%の1種または2種以上を含有
    し,残部がFeおよび不可避の不純物からなり, かつγm
    axが10以上で35未満である請求項1に記載の製造
    法。
  4. 【請求項4】 冷間圧延は,熱延板焼鈍を施さずに実施
    される請求項1,2または3に記載の製造法。
JP24886592A 1992-08-26 1992-08-26 表面性状とリジング性および加工性に優れたフエライト系ステンレス鋼板の製造方法 Expired - Fee Related JP3270137B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP24886592A JP3270137B2 (ja) 1992-08-26 1992-08-26 表面性状とリジング性および加工性に優れたフエライト系ステンレス鋼板の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP24886592A JP3270137B2 (ja) 1992-08-26 1992-08-26 表面性状とリジング性および加工性に優れたフエライト系ステンレス鋼板の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH0673458A JPH0673458A (ja) 1994-03-15
JP3270137B2 true JP3270137B2 (ja) 2002-04-02

Family

ID=17184577

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP24886592A Expired - Fee Related JP3270137B2 (ja) 1992-08-26 1992-08-26 表面性状とリジング性および加工性に優れたフエライト系ステンレス鋼板の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3270137B2 (ja)

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100347572B1 (ko) * 1997-12-27 2002-10-25 주식회사 포스코 열연미소둔재를이용한스테인레스냉연강판의제조방법
KR100570892B1 (ko) * 2001-12-17 2006-04-12 주식회사 포스코 연신율 및 내리징성이 우수한 페라이트계 sts409l 스테인리스강의 제조방법
JP5045051B2 (ja) * 2006-10-05 2012-10-10 Jfeスチール株式会社 冷延用フェライト系ステンレス熱延鋼板およびその製造方法
JP5045050B2 (ja) * 2006-10-05 2012-10-10 Jfeスチール株式会社 冷延用フェライト系ステンレス熱延鋼板およびその製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JPH0673458A (ja) 1994-03-15

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US6500280B2 (en) Ferritic Cr-containing steel sheet having excellent ductility, formability, and anti-ridging properties
JP2000169943A (ja) 高温強度に優れたフェライト系ステンレス鋼及びその製造方法
CN110366601B (zh) 铁素体系不锈钢板、热轧卷材和汽车排气系统法兰构件
CN107835865B (zh) 铁素体系不锈钢热轧钢板和热轧退火板以及它们的制造方法
JPH01172524A (ja) 耐食性に優れた高延性高強度の複相組織クロムステンレス鋼帯の製造法
JP2010100877A (ja) 靭性に優れるフェライト系ステンレス熱延鋼板の製造方法
CN110337503B (zh) 铁素体系不锈钢板、热轧卷材以及汽车排气系统法兰构件
JP3241114B2 (ja) リジング性および加工性に優れたフエライト系ステンレス鋼板の製造方法
JP2007211313A (ja) 耐リジング性に優れたフェライト系ステンレス鋼とその製造方法
JP2002105605A (ja) 常温加工性および高温での機械特性に優れたフェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法
JP2001316775A (ja) 耐リジング性および成形性に優れたフェライト系ステンレス鋼板ならびにその製造方法
JP4214671B2 (ja) 延性、加工性および耐リジング性に優れたフェライト系Cr含有冷延鋼板およびその製造方法
JP3270137B2 (ja) 表面性状とリジング性および加工性に優れたフエライト系ステンレス鋼板の製造方法
JP5046400B2 (ja) 耐再結晶軟化特性に優れた冷延鋼板の製造方法およびオートマチック・トランスミッション用冷延鋼板
JP2001207244A (ja) 延性、加工性および耐リジング性に優れたフェライト系ステンレス冷延鋼板およびその製造方法
JP3455047B2 (ja) 加工性及びローピング特性に優れたフェライト系ステンレス鋼薄板及びその製造方法
JP3779784B2 (ja) 表面特性に優れたフェライト系ステンレス鋼の製造方法
JP5167314B2 (ja) 耐リジング性に優れたフェライト系ステンレス鋼の製造方法
JP3879164B2 (ja) 冷間圧延性に優れたフェライト系ステンレス熱延鋼帯の製造方法
JP3067892B2 (ja) 表面性状と深絞り性の優れたフェライト系ステンレス鋼薄板の製造方法
JPH07126758A (ja) 曲げ加工性に優れるフェライト系ステンレス鋼板の製造方法
JP2000256750A (ja) 耐リジング性に優れたフェライト系ステンレス鋼板の製造方法
JP3917320B2 (ja) 耐リジング性に優れたフェライト系ステンレス鋼板の製造方法
JP4239247B2 (ja) 加工性に優れたTi含有フェライト系ステンレス鋼板の製造方法
JP3273597B2 (ja) 表面品質と加工性に優れたCr−Ni系ステンレス鋼薄板およびその製造法

Legal Events

Date Code Title Description
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20020108

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090118

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100118

Year of fee payment: 8

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110118

Year of fee payment: 9

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees