JP2002069534A - 薄鋼板および薄鋼板の製造方法 - Google Patents

薄鋼板および薄鋼板の製造方法

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JP2002069534A JP2000268894A JP2000268894A JP2002069534A JP 2002069534 A JP2002069534 A JP 2002069534A JP 2000268894 A JP2000268894 A JP 2000268894A JP 2000268894 A JP2000268894 A JP 2000268894A JP 2002069534 A JP2002069534 A JP 2002069534A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 伸びフランジ性も含めた加工性に優れ、機械
的性質が均一で、優れた板形状を示す薄鋼板の製造方法
を提供する。 【解決手段】 mass%で、C含有量が0.8%以下の連続鋳
造スラブを、粗圧延する工程と、 (Ar3変態点-20)℃以
上で仕上圧延する工程と、500〜800℃の温度まで120℃/
sec超で急冷する工程と、400〜750℃で巻き取る工程
と、を有する薄鋼板の製造方法。連続鋳造スラブは、C:
0.8%以下、Si:2.5%以下、Mn:3.0%以下を含有する
鋼、さらに、Ti,Nb,V,Mo,Zr,Crの内1種以上を0.01〜0.2
%含有する鋼、Ca,Bの内1種以上を0.005%以下含有する
鋼とすることもできる。また、C含有量を0.8%を超え1.
0%以下とし、仕上温度を (Acm変態点-20)℃以上とする
こともできる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、種々の特性レベル
を有する熱延鋼板や冷延鋼板のような薄鋼板の製造方
法、特に、加工性に優れ、かつ機械的性質が均一な薄鋼
板の得られる薄鋼板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】熱延鋼板や冷延鋼板のような薄鋼板は、
自動車、家電製品、産業機械等の広範囲な分野で使用さ
れている。こうした薄鋼板には、何らかの加工を受けて
用いられる場合が多いので、様々な加工性が要求されて
いる。
【0003】しかしながら、近年の自動車、家電製品、
産業機械等のメーカーからの合理化の要求が厳しく、特
に製品製造時の歩留りのさらなる向上が求められてい
る。このような背景から、材質面では特に均一性が高
く、加工性のレベルが高いことが求められつつある。
【0004】また上記の熱延鋼板や冷延鋼板で要求され
る加工性としては、例えば、強度が340MPa級以上で深絞
り用途以外のハイテン材(高張力熱延鋼板)には、バー
リング加工時の高い伸びフランジ性が要求されている。
また、強度が440MPa以下で絞り加工を受ける冷延鋼板に
は、高いr値や破断伸びなどが、要求されている。
【0005】近年、薄鋼板に対する需要家からの品質要
求はますます厳しくなって来ており、上述したような加
工性のより一層の向上のみならず、コイル状に巻かれた
製品における機械的性質の均一性も強く要望されてい
る。
【0006】こうした需要家からの要請に応じて、いく
つかの対策が検討されている。例えば、材質の均一性向
上の観点からは、特開平9-241742号公報に、熱延連続化
により熱延コイル内の機械的性質の均一性を向上させる
方法が提案されている。これは、熱延連続化のプロセス
を用いて、圧延鋼板の先端部および後端部の材質の向上
を図るとともに、コイル内の材質のばらつきの解消を図
る技術である。
【0007】ハイテン材の加工性の向上については、特
公昭61-15929号公報や特公昭63-6752号公報に、熱延後
の冷却速度や巻取温度を制御して、高張力熱延鋼板の加
工性を向上させる方法が提案されている。
【0008】また、IF鋼(Interstitial-Free Steel)の
加工性の向上に関しては、特開平5-112831号公報に、熱
間圧延で強圧下と急速冷却を行う方法が提案されてい
る。この技術は、熱延の最終圧下率を30%以上とし、圧
延終了直後に急冷することにより、熱延鋼板の結晶粒の
微細化を通じて冷延鋼板のr値の向上を図ろうとするも
のである。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
いずれの従来技術においても、加工性と機械的性質の均
一性ともに優れた薄鋼板を得ることはできなかった。例
えば、コイル内の材質のばらつきの解消を図るという、
特開平9-241742号公報記載の技術で得られている材質特
性(コイル幅中央部の測定値)は、30K〜70K級の鋼板で
の引張強度(TS)の変動値で見て4.5〜6.3kg/mm2程度あ
り、必ずしもユーザー側の満足のいくものではなかっ
た。
【0010】また、ハイテン材の加工性の向上を狙った
特公昭61-15929号公報記載の技術では、強度-延性バラ
ンスを従来の鋼板に比べて高めているものの、伸びフラ
ンジ性の抜本的な解決は達成されていない。さらに、こ
の技術では、表面欠陥の改善もなされていなかった。同
様に、特公昭63-6752号公報に記載の方法で製造した高
張力熱延鋼板では、鋼板の破断伸びや靭性を高めている
ものの、伸びフランジ性の抜本的な解決はやはり達成さ
れていない。
【0011】IF鋼の加工性の向上を狙った特開平5-1128
31号公報記載の方法でも、材質のばらつきを必ずしも満
足のいくレベルまで小さくすることができなかった。す
なわち、この技術の特徴とする圧延直後の平均冷却速度
は、同公報の実施例の記載によると、冷却開始から1秒
間は90〜105℃/sec、同3秒間65〜80℃/secである。しか
し、実機の熱延条件では、この程度の冷却速度の場合、
特に圧延トップ部分の鋼板の結晶粒を微細化できないこ
とが判明したのである。
【0012】これは、仕上圧延終了から直ちに冷却する
ことができず、冷却開始まで多少の時間を要するためと
考えられる。仕上圧延機の最終スタンドの出側には、仕
上温度計等、計測機器の設置の必要性から、冷却装置を
最終圧延スタンド出側直近に設置できないため、例え
ば、仕上圧延終了から0.1秒以内は冷却できない。特
に、圧延トップ部分は、高速走行が不可能で圧延速度が
遅いため冷却開始までの時間が長くなり、この公報記載
程度の冷却速度で冷却しても、オーステナイト粒の粗粒
化を防止できないのである。
【0013】このように、熱延後の鋼帯トップ部は、急
速冷却することが難しいことから結晶粒を十分に微細化
できないため、優れた機械的性質およびその均一性が得
られなかった。また、熱延の最終パスの圧下率を高くす
ることは、オーステナイト粒の細粒化のためにはよい
が、特開平5-112831号公報記載の技術のように圧下率を
30%以上とすることは、鋼板の形状不良が発生し易くな
るため実施は困難である。
【0014】本発明はかかる事情に鑑みて、このような
問題を解決するためになされたもので、寸法精度の厳し
いプレス加工用途にも適合しうる、伸びフランジ性も含
めた加工性に優れ、かつ機械的性質が均一で種々の特性
レベルを有し、優れた板形状を示すことが可能な薄鋼板
の製造方法を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】上記課題は、mass%で、
C含有量が0.8%以下の連続鋳造スラブを、粗圧延して粗
バーを製造する工程と、前記粗バーを、(Ar3変態点-20)
℃以上の仕上温度で仕上圧延して鋼帯を製造する工程
と、前記仕上圧延後の鋼帯を500〜800℃の温度まで120
℃/secを超える冷却速度で急冷する工程と、前記急冷後
の鋼帯を400〜750℃の巻取温度で巻き取る工程と、を有
する薄鋼板の製造方法により解決される。
【0016】また、この製造方法において、連続鋳造ス
ラブは、mass%で、C:0.8%以下、Si:2.5%以下、Mn:3.
0%以下を含有する鋼を連続鋳造して得ることもでき
る。さらに、連続鋳造スラブは、mass%で、C:0.8%以
下、Si:2.5%以下、Mn:3.0%以下を含有するとともに、
Ti,Nb,V,Mo,Zr,Crの内1種以上を0.01〜0.2%含有する鋼
を連続鋳造して得ることもできる。また、連続鋳造スラ
ブは、mass%で、C:0.8%以下、Si:2.5%以下、Mn:3.0
%以下を含有するとともに、Ca,Bの内1種以上を0.005%
以下含有する鋼を連続鋳造して得ることもできる。
【0017】さらに、これらの製造方法において、連続
鋳造スラブは、mass%で、C:0.8%以下、Si:2.5%以
下、Mn:3.0%以下を含有するとともに、Ti,Nb,V,Mo,Zr,
Crの内1種以上を0.01〜0.2%含有し、かつ、Ca,Bの内1
種以上を0.005%以下含有する鋼を連続鋳造して得るこ
ともできる。
【0018】以上に述べた製造方法において、C含有量
を0.8%以下とする代わりにmass%で0.8%を超え1.0%
以下とし、仕上温度を (Ar3変態点-20)℃以上とする代
わりに(Acm変態点-20)℃以上とし、その他についてはこ
れらの製造方法と同じ製造方法とすることもできる。
【0019】これらの発明は、上記の課題を解決すべく
鋭意検討を重ねる中でなされた。その中で、薄鋼板の加
工性および機械的性質の均一性については、特に圧延直
後から冷却開始までの時間と冷却速度の影響が大きいこ
とを見出し、種々検討の結果完成された。その結果、自
動車、家電製品、産業機械等のメーカーでの使用条件か
らみて、コイルからの製品採取を高歩留りで行うことの
できる加工性に優れ、かつ機械的性質が均一な薄鋼板を
得ることに成功した。以下、本発明における製造方法の
詳細について説明する。まず、化学成分について説明す
る。
【0020】C: 1%以下(mass%、以下同じ) Cは鋼板の強度を確保するための添加元素であるが、過
剰に含まれると加工性の劣化が著しくなり、1%を超え
ると加工性の劣化を招く。従って、C量を1%以下とす
る。
【0021】Si: 2.5%以下 Siは、固溶強化元素であるが、添加量が2.5%を超える
と表面性状が劣化する。従って、Si量を2.5 %以下とす
る。
【0022】Mn: 3%以下 Mnは、鋼板の靭性を改善し、固溶強化作用を有するが、
加工性には悪影響を及ぼす元素である。Mn量が3%を超
えると、強度が上昇し加工性の劣化が顕著となる。従っ
て、Mn 量を3%以下とする。
【0023】P: 0.2%以下 Pは、固溶強化する作用を有する元素であるが、0.2 %
を超えて添加すると、粒界偏析による粒界脆化が生じや
すくなる。従って、P量を0.2%以下とする。
【0024】S:0.05%以下 Sは、不純物元素であり、できるだけ低いことが望まし
く、0.05 %を超えると、微細な硫化物の析出が多くな
り加工性が劣化する。従って、S量を、0.05%以下とす
る。
【0025】N:0.02%以下 Nは、その含有量が少ないほど後述の炭窒化物形成元素
の添加量を低減でき経済的となる。N量が0.02%を超え
ると、炭窒化物形成元素を添加してNを固定しても鋼板
の加工性の低下が避けられなくなる。従って、N量を0.0
2%以下とする。
【0026】O: 0.005%以下 Oは、連続鋳造時のスラブ表面あるいはスラブ表層下
で、割れ発生を抑制するために制御が必要である。Oが
0.005%を超えると、スラブの割れが顕著となり、本発
明の意図する加工性も劣化する。従って、O量を0.005
%以下とする。
【0027】Ti,Nb,V,Mo,Zr,Cr: 1種または2種以上
合計で0.01〜0.2% 前述の化学成分に加えて、強度調整あるいは炭化物形成
による固溶C,N低減を利用した非時効化(および深絞り
性向上)のため、Ti,Nb,V,Mo,Zr,Crを必要に応じて添加
する。これらの元素は、合計の添加量が0.01%未満では
効果がなく、0.2%を超えると延性や深絞り性等の加工
性を損なう。従って、Ti,Nb,V,Mo,Zr,Crを添加する場合
は、これらの添加量を合計で0.01〜0.2%とする。
【0028】 Ca,B: 1種または2種以上合計で0.005%以下 本発明において、Ca,Bは薄鋼板の加工性を向上しうる有
効な元素であり、添加することが好ましい。しかし、C
a,Bの添加量が合計で0.005%を超えると深絞り性を損な
う。従って、Ca,Bを添加する場合は、これらの添加量を
合計で0.005%以下とする。
【0029】次に、本発明における製造条件について説
明する。
【0030】 仕上温度(C≦0.8%の場合): (Ar3変態点-20)℃以上 C含有量が0.8%以下の場合、仕上温度が(Ar3変態点-20)
℃未満では、一部でフェライト変態が進行するためフェ
ライト粒が加工され、材質の不均一、面内異方性の増加
等、材質上好ましくない結果となる。以上より、本発明
ではC含有量が0.8%以下の場合、(Ar3変態点-20)℃以上
の仕上温度で仕上圧延する。これにより、組織の均一化
とその後の工程において結晶粒の微細化を図ることがで
き、強度-延性バランスや伸びフランジ性の向上や、冷
延鋼板における高r値化など加工性の向上が図れる。
【0031】 仕上温度(C>0.8%の場合): (Acm変態点-20)℃以上 C含有量が0.8%を超える場合、仕上温度が(Acm変態点-2
0)未満では、オーステナイト粒界に析出するセメンタイ
トが増加し、均一なパーライト組織が得られず組織が不
均一となる。以上より、本発明では、 C含有量が0.8%
超の場合、仕上温度(Ar3変態点-20)℃以上で仕上圧延す
る。これにより、組織の均一化とその後の工程において
組織の微細化を図ることができ、焼入性の向上、冷延鋼
板における球状化率の向上や伸びフランジ性の向上など
加工性の向上が図れる。
【0032】 圧延後の冷却: 冷却速度>120℃/secで急冷 本発明では、変態後のフェライト結晶粒やパーライト等
の組織の微細化と材質の均一化を図るため、圧延後の急
冷が必要である。冷却方法が徐冷であると、組織が粗大
化し、さらに、高C鋼では均一なパーライト組織が得ら
れず組織が不均一となる。冷却速度が120℃/sec以下の
場合、変態により生成するフェライト結晶粒やパーライ
ト等の組織が粗大化し、また、過共析鋼ではセメンタイ
トが析出するため、組織が不均一となる。
【0033】冷却終了温度: 500〜800℃ 冷却終了温度については、500℃未満の低温域まで急冷
すると、巻取り温度との差(余裕代)が小さくなり、温
度の均一化が困難となる。また、急冷用の冷却設備の増
設が必要となり、設備コストが増加する。これとは逆に
冷却終了温度が800℃を超えると、一部しか変態せず組
織が不均一となり、その後の巻取り温度調節に伴う冷却
(徐冷)で組織が粗大化する。
【0034】以上より、圧延後は、鋼帯を500〜800℃の
温度まで120℃/secを超える冷却速度で一次冷却する
と、変態後のフェライト結晶粒やパーライト等の析出物
を微細化できるので、加工性の向上が図れる。なお、冷
却速度の上限は特に規定しないが、工業的に可能な2000
℃/sec程度が限度である。
【0035】巻取温度:400〜750℃ 二次冷却後は、鋼帯を400〜750℃の巻取温度で巻き取る
必要がある。これは、巻取温度が400℃未満では低温変
態相が生成し、750℃を超えると結晶粒などの組織の粗
大化が起こり加工性が劣化するためである。
【0036】本発明の基本的な製造条件は以上の通りで
あるが、必要に応じてさらに次の製造条件を用いること
ができる。
【0037】連続鋳造〜粗圧延における処理: 直接圧
延または温間装入 連続鋳造スラブを、直接熱間圧延で、または室温まで冷
却する前に温間で加熱炉に装入して1200℃以下の温度に
再加熱し、粗圧延を行うこともできる。この発明では、
連続鋳造スラブを室温まで冷却することなく、そのまま
直接圧延で粗圧延を開始し、あるいは1200℃以下の温度
に加熱後、粗圧延を開始する。その結果、圧延前のスラ
ブ温度を均一化でき、コイル内の機械的性質をより一層
均一化できる。
【0038】仕上圧延直前〜圧延中の処理: 誘導加熱 仕上圧延直前または仕上圧延中に、被圧延材を誘導加熱
装置により加熱することもできる。この発明では、圧延
中の被圧延材の温度をより均一にでき、コイル内の機械
的性質のより一層の均一化が図れる。
【0039】急冷開始時期: 0.1sec超〜1.0sec未満 仕上圧延後、0.1secを超え1.0sec未満の時間内で急冷を
開始することもできる。この発明では、変態後のフェラ
イト結晶粒やパーライト等の析出物をより微細化でき、
加工性をより一層向上できる。
【0040】巻取り後の処理: 冷間圧延-焼鈍 上記の薄鋼板の製造方法により製造した薄鋼板を、さら
に、冷間圧延し、焼鈍することもできる。この発明で
は、熱延コイルの材質および組織が均一であるため、そ
れを冷延後焼鈍すれば、加工性と機械的性質の均一性と
もに優れた冷延鋼板が得られる。
【0041】このようにして、本発明では、コイル内で
の温度の変動を低減することにより、熱延鋼帯の幅方向
及び長手方向における引張強さの変動(最大値と最小
値)が、コイル内の引張強さの平均値の±8%以内であ
ることを特徴とする薄鋼板を得ることができる。このよ
うなばらつきが狭小な鋼板は、プレス加工性(曲げ加工
時のスプリングバック等)のコイル内での変動が小さ
い。需要家においても、プレス加工後の製品歩留まりや
形状精度を向上でき、材料としての性能が優れている。
【0042】
【発明の実施の形態】発明の実施に当たっては、鋼成分
は特に限定されることなく、従来の種々の特性レベルを
有する熱延鋼板や冷延鋼板の成分系を適用できる。すな
わち、単純な炭素鋼板のみならず、Ti、Nb、V、Mo、Z
r、Ca、B等の特殊元素が含有された鋼板にも適用でき
る。なお、本発明においては、Cuを0.02〜2%添加する
こと、Snを0.01%以下添加(含有)することが許容され
る。この範囲内であれば、これらの元素によって本発明
の効果が損なわれることはない。
【0043】連続鋳造スラブを室温まで冷却することな
く、1200℃以下の温度に加熱後粗圧延を開始すれば、圧
延前のスラブ温度を均一化でき、コイル内の機械的性質
をより一層均一化できる。連続鋳造スラブを粗圧延した
後、仕上圧延直前の粗バーを、または仕上圧延中の被圧
延材を、誘導加熱装置により加熱すれば、圧延中の被圧
延材の温度をより均一にでき、コイル内の機械的性質の
より一層の均一化が図れる。
【0044】仕上圧延においては、最終圧延パスの圧下
率を8%以上、30%未満とすることが望ましい。これ
は、オーステナイト粒を十分に細粒化するためには圧下
率を8%以上とするのがよく、鋼板の形状を良好に維持
するためには圧下率を30%以上とするのがよいことによ
る。なお、熱延鋼板の粒径の細粒化の観点からは、圧下
率を各圧延パスについて10%超とすることが望ましい。
【0045】仕上温度については、C含有量が0.8%以下
の場合は、好ましくは (Ar3変態点-20)〜(Ar3変態点+5
0)℃で仕上圧延すれば、仕上圧延直後、即ちランナウト
冷却前の結晶粒を細粒化することができる。仕上温度を
(Ar3変態点+50)℃以下とすることにより、オーステナ
イト粒の粗大化を防止し、圧延後のフェライト粒が細粒
化し易くなる。その結果、その後の工程において結晶粒
の微細化を図ることができ、強度-延性バランスや伸び
フランジ性の向上、さらには冷延鋼板における高r値化
など加工性の向上が図れる。
【0046】C含有量が0.8%を超える場合は、(Acm変態
点-20)〜(Acm変態点+100)℃の仕上温度で仕上圧延し、
それ以外の条件をC含有量が0.8%以下の場合と同様にす
れば、加工性に優れ、かつ機械的性質が均一な薄鋼板を
得ることができる。仕上温度を (Acm変態点+100)℃以下
とすることにより、オーステナイト粒の粗大化を防止し
圧延後のパーライトコロニーの微細化が可能となる。
【0047】また、このとき、被圧延材の幅方向や長手
方向等の位置により仕上温度が異なり、その差が大きく
なると鋼帯の組織を不均一とするので、仕上温度の差を
小さくすることが望ましい。被圧延材内の仕上温度差が
50℃以内となるように仕上圧延すれば、仕上圧延直後の
鋼帯内の組織を均一にでき、コイルに巻き取り後の機械
的性質の均一化が図れる。その結果、最終製品の組織お
よび材質の差が無視できるようになるので、好ましくは
被圧延材内の仕上温度の差を50℃以内とする。
【0048】圧延後は、フェライト結晶粒やパーライト
等の組織の微細化と材質の均一化を図るため、圧延後の
冷却の際、急冷と徐冷を組合せて行うことが望ましい。
急冷後に徐冷を行うことで、冷却終了温度の場所的不均
一が軽減され、冷却終了温度の絶対値の変動も小さくな
り、材質レベルの変動を縮小できる。以下、上記の急冷
及び徐冷を一次冷却及び二次冷却と呼ぶ。
【0049】鋼帯を500〜800℃の温度まで120℃/secを
超える冷却速度で一次冷却すると、変態後のフェライト
結晶粒やパーライトの微細化により、加工性の向上が図
れる。このとき、フェライト結晶粒の細粒化やパーライ
ト組織の微細化の観点からは200℃/sec以上、より好ま
しくは400℃/sec以上の冷却速度で冷却することによ
り、格段に優れた加工性を得ることができる。なお、冷
却速度の上限は特に規定しないが、工業的には2000℃/s
ec程度が限度である。
【0050】また、熱延鋼帯の材質のばらつきをより好
ましいレベルまで低減するためには、上記の急冷の停止
温度を発明の範囲内とするとともに、急冷後のコイル幅
方向や長手方向等の温度の変動(最高値−最低値)を60
℃以内にすることが望ましい。
【0051】さらに好ましくは、引張強さの変動を±4%
以内とすることにより、上記の需要家での性能を格段に
向上し得る。この場合、上記の急冷の停止温度の変動を
40℃以内とすることにより、材質のばらつきをこのよう
に狭小化できる。
【0052】さらに、引張強さの変動を±2%以内とする
には、上記の急冷の停止温度の変動を20℃以内とすれば
よい。材質の変動の低減は、これらの温度と引張強さの
変動の関係から割り出すことができる。なお本発明にお
けるコイル幅方向の温度は、温度センサの測定方法も考
慮して、コイル幅両エッジから30mmを除いた範囲を指
す。
【0053】急冷(一次冷却)の能力については、伝熱
係数が2000kcal/m2h℃の冷却を行うことにより、上記急
冷後の温度の変動を小さくすることができる。温度の変
動の低減のために、好ましい伝熱係数は5000kcal/m2h℃
以上、さらに好ましいレベルは8000kcal/m2h℃以上であ
る。
【0054】また、一次冷却については、仕上圧延後0.
1secを超え1.0sec未満の時間内で冷却を開始すれば、変
態後のフェライト結晶粒やパーライト等の析出物をより
微細化でき、加工性をより一層向上できる。さらに、熱
延鋼帯の材質のばらつきをより好ましいレベルにするた
めには、冷却の開始を仕上圧延後0.5sec超とすることが
望ましい。
【0055】一次冷却後は、巻取り温度調節のため徐冷
(二次冷却)することが望ましい。特に、二次冷却の冷
却速度が60℃/sec未満であれば、高い精度の温度制御が
可能となり、冷却終了温度、即ち巻取り温度が均一とな
る。その結果、巻き取り後のコイル内の組織をより均一
にできるので、コイル内の機械的性質の均一化のため鋼
帯を60℃/sec未満の冷却速度で二次冷却することが好ま
しい。
【0056】二次冷却後は、鋼帯を400〜750℃の巻取温
度で巻き取る必要があるが、これは、400℃未満では低
温変態相が生成し、750℃を超えると結晶粒などの組織
の粗大化が起こり加工性が劣化するためである。なお、
高C材の巻取り温度については、低温変態相の生成を防
止するため450℃以上とすることが望ましい。また、最
終製品の材質を均一化する観点からは、コイル内の巻取
温度の差を80℃以内とすることが望ましい。
【0057】本発明は、連続鋳造後のスラブを、加熱炉
を経ずに直接熱間圧延する直送圧延プロセスにも適用で
きる。また、コイルボックス等を用いた連続圧延プロセ
スに対しても、効果的である。また、仕上圧延直前また
は仕上圧延中に、被圧延材を誘導加熱装置により加熱す
るとき、エッジ加熱を行っても効果的である。
【0058】こうした得られた熱延コイルを冷延後焼鈍
すれば、加工性と機械的性質の均一性ともに優れた冷延
鋼板が得られる。このとき、焼鈍は、機械的性質の均一
性を図る上で、連続焼鈍で行うことがより好ましい。
【0059】
【実施例】[実施例1]表1に示す化学成分を有する鋼N
o.1〜7を溶製した。いずれの鋼の化学成分も、本発明の
範囲内である。これらの鋼を、表2に示す熱間圧延条件
で圧延し、板厚3mmの熱延コイルNo.1〜14を作製した。
なお、本発明例における急冷(一次冷却)の際の伝熱係
数は3000〜4000kcal/m2h℃である。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】熱延コイルのコイル長手方向の5ヶ所から
引張試験片を採取し、平均の引張強度(TS)、全伸び
(El)、引張強度のばらつき(ΔTS)、全伸びのばらつ
き(ΔEl)を測定した。また、一部の熱延コイルについ
ては、伸びフランジ性を評価するために穴広げ率(λ)
およびそのばらつき(Δλ)を測定した。さらに、熱延
コイルNo.4〜7、No.11〜13については、酸洗後板厚0.8m
mまで冷間圧延し、連続焼鈍して、深絞り性を評価する
ためにr値を測定した。これらの熱延コイルと冷延-焼鈍
板の機械的性質の測定結果を表3に示す。
【0063】
【表3】
【0064】各成分系における本発明例の鋼板No.1〜8
と比較例の鋼板No.9〜14を対比して見れば明らかなよう
に、いずれの成分系においても本発明例の方が機械的性
質のばらつきΔTS、ΔEl、Δλが小さい。これに対し
て、比較例の鋼板No.9〜14においては、本発明で規定さ
れる製造条件が1つ以上満たされておらず、同じ化学成
分の本発明例の鋼板No.1〜8に対して機械的性質の均一
性または加工性が劣っている。
【0065】[実施例2]前述の表1に示す化学成分を
有する鋼No.1〜7を、表4に示す熱間圧延条件で圧延
し、板厚3mmの熱延コイルNo.15〜28を製造した。なお、
一次冷却の際の伝熱係数は、本発明例No.15〜22では120
00kcal/m2h℃、比較例No.23〜28では1000kcal/m2h℃で
ある。
【0066】
【表4】
【0067】これらの熱延コイルの幅方向及び長手方向
について、実施例1と同様、機械的性質のばらつきを調
べた。さらに、熱延コイルNo.18〜22、No.26〜28につい
ては、酸洗後板厚0.8mmまで冷間圧延し、連続焼鈍し
て、深絞り性を評価するためにr値を測定した。これら
の熱延コイルと冷延-焼鈍板の機械的性質の測定結果を
表5に示す。
【0068】
【表5】
【0069】この表で、ΔTS,ΔElはそれぞれTS,Elの
最大値と最小値の差の1/2である。また,引張特性はコ
イル幅方向の両エッジ30mm及びコイル長手方向の両端各
5mを除いた位置より採取したサンプルを用いて調査し,
全ての値の平均値をコイル内平均値とした。
【0070】各成分系における本発明例の鋼板No. 15〜
22と比較例の鋼板No. 23〜28を対比して見れば明らかな
ように、いずれの成分系においても本発明例の方が機械
的性質のばらつきΔTS、ΔElが小さい。これに対して、
比較例の鋼板No. 23〜28においては、本発明で規定され
る製造条件が1つ以上満たされておらず、同じ化学成分
の本発明例の鋼板No. 15〜22に対して機械的性質の均一
性または加工性が劣っている。
【0071】本発明例では、急冷(1次冷却)停止温度
のコイル内での変動が、比較法の従来のラミナー冷却に
よる物に比べて小さく、機械的性質の変動がより好まし
いレベルまで低減されている。なお、本発明例における
冷却方式は、多孔噴流タイプの高い伝熱係数を有する冷
却方式である。
【0072】このように、本発明により、コイル内の機
械的性質の均一性に優れ、熱延コイルのEl、λや冷延-
焼鈍後のr値も高く、加工性にも優れた薄鋼板の製造が
可能となる。
【0073】
【発明の効果】本発明は以上説明したように構成されて
いるので、伸びフランジ性も含めた加工性に優れ、機械
的性質が均一で、かつ板形状にも優れた、種々の特性レ
ベルを有する270MPa級以上の薄鋼板の製造方法を提供で
きる。また、連続鋳造から熱間圧延まで直接行う直送圧
延プロセス、または連続鋳造スラブが室温まで温度低下
する前に加熱炉に装入するプロセスにおいても適用で
き、工業的に有用な効果がもたらされる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 今田 貞則 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 菊池 啓泰 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 稲積 透 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 本屋敷 洋一 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 Fターム(参考) 4E002 AA02 AA07 AB01 AD02 AD04 BC07 BD03 BD07 BD08 CB01 4K037 EA02 EA04 EA05 EA06 EA07 EA09 EA11 EA15 EA16 EA17 EA19 EA27 EA28 EA31 EA32 EA35 FD04 FE01 FE02 FE03

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 mass%で、C含有量が0.8%以下の連続鋳
    造スラブを、粗圧延して粗バーを製造する工程と、 前記粗バーを、(Ar3変態点-20)℃以上の仕上温度で仕上
    圧延して鋼帯を製造する工程と、 前記仕上圧延後の鋼帯を、500〜800℃の温度まで120℃/
    secを超える冷却速度で急冷する工程と、 前記急冷後の鋼帯を400〜750℃の巻取温度で巻き取る工
    程と、を有する薄鋼板の製造方法。
  2. 【請求項2】 連続鋳造スラブは、mass%で、C:0.8%
    以下、Si:2.5%以下、Mn:3.0%以下を含有する鋼を連続
    鋳造して得ることを特徴とする請求項1記載の薄鋼板の
    製造方法。
  3. 【請求項3】 連続鋳造スラブは、mass%で、C:0.8%
    以下、Si:2.5%以下、Mn:3.0%以下を含有するととも
    に、Ti,Nb,V,Mo,Zr,Crの内1種以上を0.01〜0.2%含有す
    る鋼を連続鋳造して得ることを特徴とする請求項1記載
    の薄鋼板の製造方法。
  4. 【請求項4】 連続鋳造スラブは、mass%で、C:0.8%
    以下、Si:2.5%以下、Mn:3.0%以下を含有するととも
    に、Ca,Bの内1種以上を0.005%以下含有する鋼を連続鋳
    造して得ることを特徴とする請求項1記載の薄鋼板の製
    造方法。
  5. 【請求項5】 連続鋳造スラブは、mass%で、C:0.8%
    以下、Si:2.5%以下、Mn:3.0%以下を含有するととも
    に、Ti,Nb,V,Mo,Zr,Crの内1種以上を0.01〜0.2%含有
    し、かつ、Ca,Bの内1種以上を0.005%以下含有する鋼を
    連続鋳造して得ることを特徴とする請求項1記載の薄鋼
    板の製造方法。
  6. 【請求項6】 請求項1から請求項5のいずれか1項に
    記載の薄鋼板の製造方法において、C含有量をその記載
    に代えてmass%で0.8%を超え1.0%以下とし、仕上温度
    をその記載に代えて(Acm変態点-20)℃以上としたことを
    特徴とする薄鋼板の製造方法。
  7. 【請求項7】 連続鋳造スラブを、直接熱間圧延で、ま
    たは室温まで冷却する前に1200℃以下の温度に再加熱し
    て、粗圧延を行うことを特徴とする請求項1から請求項
    6のいずれか1項に記載の薄鋼板の製造方法。
  8. 【請求項8】 仕上圧延直前または仕上圧延中に、被圧
    延材を誘導加熱装置により加熱することを特徴とする請
    求項1から請求項7のいずれか1項に記載の薄鋼板の製
    造方法。
  9. 【請求項9】 仕上圧延後、0.1secを超え1.0sec未満の
    時間内で急冷を開始することを特徴とする請求項1から
    請求項8のいずれか1項に記載の薄鋼板の製造方法。
  10. 【請求項10】 請求項1から請求項9のいずれか1項
    に記載の薄鋼板の製造方法により製造した薄鋼板を、さ
    らに、冷間圧延し、焼鈍することを特徴とする薄鋼板の
    製造方法。
  11. 【請求項11】 急冷後の鋼帯の幅方向及び長手方向温
    度の最高値と最低値の差を60℃以内とすることを特徴と
    する請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の薄
    鋼板の製造方法。
  12. 【請求項12】 急冷の際の伝熱係数を2000kcal/m2h℃
    以上とすることを特徴とする請求項11記載の薄鋼板の
    製造方法。
  13. 【請求項13】 請求項11記載の薄鋼板の製造方法に
    より製造され、幅方向及び長手方向における引張強さの
    変動が、コイル内の引張強さの平均値の±8%以内であ
    ることを特徴とする薄鋼板。
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