JP4581474B2 - 電波吸収材用球状フェライト粒子、その製造方法およびフェライト粒子を含む半導体封止用樹脂組成物 - Google Patents

電波吸収材用球状フェライト粒子、その製造方法およびフェライト粒子を含む半導体封止用樹脂組成物 Download PDF

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Description

本発明は、電波吸収材用球状フェライト粒子、その製造方法および球状フェライト粒子を含む半導体封止用樹脂組成物に関し、詳しくは、体積固有抵抗値が高く、細孔が極めて少なく、且つ、粒子サイズが1〜45μmの範囲で自由に制御できると共に、高い透磁率を有する、電波吸収材用として樹脂分散系において特に有効な球状フェライト粒子、その製造方法および球状フェライト粒子を含む半導体封止用樹脂組成物に関する。
フェライト粒子、例えば、Mn−Zn系フェライトは、主に10kHzから30MHzの周波数で高い透磁率を示し、また、Ni−Zn系フェライトは、主に30MHzから300MHzの周波数で高い透磁率を示すため、各周波数領域の電波吸収材として使用される。そして、最近の電子機器の小型化に伴い、高周波数領域におけるフェライトの磁気損失の改善、すなわち、抵抗の低さに起因する渦電流損失の改善が図られている。
例えば、式:(MO)100−X(Fe(但し、Mは、Li、Mg、Ni、Cu、Zn、Mn、CaおよびFeから選ばれる少なくとも1種の金属であり、Xは45〜95モル%である。)で示されるフェライトから成り、平均粒径が1〜45μmであり、BET比表面積が0.2m/g以下であり、水銀圧入法による細孔容積が0.05ml/g以下である電波吸収材用球状フェライト粒子が知られている。
特開2003−318015号公報
しかしながら、上記の球状フェライト粒子は、体積固有抵抗値が10〜1010Ωcm程度で十分高いものとは言えず、高周波数領域における磁気損失の改善、すなわち、抵抗の低さに起因する渦電流損失の改善が十分とはいえず、封止剤用添加物として使用した場合、環境の影響を受けやすく、信頼性に問題がある。
本発明は、上記の実情に鑑みなされたものであり、その目的は、体積固有抵抗値が高く、細孔が極めて少なく、且つ、粒子サイズが1〜45μmの範囲で自由に制御できると共に、高周波数領域での電磁波吸収性能に優れた電波吸収材用球状フェライト粒子、その製造方法、および、電波吸収材用球状フェライト粒子を含む半導体封止用樹脂組成物を提供することにある。
本発明者等は、種々検討を重ねた結果、次の様な知見を得た。すなわち、フェライト粒子の表面にSi、Al及びTiから選ばれる1種または2種以上を含有する金属酸化物表層部を形成した球状フェライト粒子によれば、平均粒径が1〜45μmの範囲で自由に制御でき、BET比表面積が0.2m/g以下であり、水銀圧入法による細孔容積が0.05ml/g以下で細孔が極めて少ないことに加えて、体積固有抵抗が1×1011Ωcm以上であることにより、高周波数領域における磁気損失、すなわち、抵抗の低さに起因する渦電流損失の問題が解消される。
本発明は、上記の知見に基づき完成されたものであり、その第1の要旨は、Li、Mg、Ni、Cu、Zn、Mn、Ca、Co、Zr、Sn、Ba及びTiから選ばれる1種または2種以上の金属元素をFe元素100モルに対して60モル以下含有し、且つ、スピネル構造を有するフェライト粒子であって、その表層部にSiO、Al及びTiOから選ばれる1種または2種以上の金属酸化物を有し、金属酸化物の含有量がフェライト100重量部に対して1〜30重量部であり、平均粒径が1〜45μmであり、体積固有抵抗が1×1011Ωcm以上であり、BET比表面積が0.2m/g以下であり、水銀圧入法による細孔容積が0.05ml/g以下である電波吸収材用の球状フェライト粒子に存する。
本発明の第2の要旨は、フェライト前駆体が分散している水性媒体中でフェノール類とアルデヒド類とを反応・硬化させるフェノール樹脂生成反応中に、SiO 、Al 及びTiO から選ばれる1種または2種以上の金属酸化物を添加して、フェライト前駆体とフェノール樹脂とから成る核部および金属酸化物とフェノール樹脂とから成る表層部から構成される複合体粒子を形成し、得られた複合体粒子を400〜700℃で加熱処理してフェノール樹脂を除去し、次いで、800〜1400℃で加熱処理してフェライト前駆体をフェライト化する球状フェライト粒子の製造方法に存する。
本発明の第3の要旨は、上記球状フェライト粒子とバインダー樹脂とから成ることを特徴とする半導体封止用樹脂組成物存する。
本発明によれば、球状を呈し、体積固有抵抗値が1×1011Ωcm以上と高く、BET比表面積が0.2m/g以下で、および、細孔容積が0.05ml/g以下で細孔をほとんど有しない構造を有するために、高周波数領域における磁気損失、すなわち、抵抗の低さに起因する渦電流損失を改善することが出来、封止剤用添加物として使用した場合、環境の影響を受けることがなく、電波吸収材として有用である。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の球状フェライト粒子は、Li、Mg、Ni、Cu、Zn、Mn、Ca、Co、Zr、Sn、Ba及びTiから選ばれる1種または2種以上の金属元素をFe元素100モルに対して60モル以下含有し、且つ、スピネル構造を有するフェライト粒子であって、その表層部にSiO 、Al 及びTiO から選ばれる1種または2種以上の金属酸化物を有する。
スピネル構造を有するフェライト粒子を構成するFe元素以外の金属元素として、Li、Mg、Ni、Cu、Zn、Mn、Ca、Co、Zr、Sn、Ba及びTiが挙げられ、中でも、Mg、Ni、Cu、ZnおよびMnが好ましい。
スピネル構造を有するフェライト粒子におけるLi、Mg、Ni、Cu、Zn、Mn、Ca、Co、Zr、Sn、Ba及びTiから選ばれる1種または2種以上の金属元素の量は、Fe元素100モルに対して60モル以下、好ましくは2〜55モルである。60モルを超える場合は、得られる球状フェライト粒子の磁化値が不十分となり、キャリアが飛散したり、感光体に付着してしまう問題がある。
球状フェライト粒子を構成する表層部は、SiO 、Al 及びTiO から選ばれる1種または2種以上の金属酸化物を含有する。球状フェライト粒子中の金属酸化物の量は、フェライト100重量部に対して通常1〜30重量部、好ましくは2〜20重量部である。金属酸化物の量が1重量部の場合は、体積固有抵抗が1×1011Ωcm未満と成る場合がある。また、30重量部を超える場合は、球状フェライト粒子の磁化値が不十分となり、キャリアが飛散したり、感光体に付着してしまう問題がある。なお、球状フェライト粒子の組成およびその含有量は、無機粒子の通常の分析法、例えば、X線回析分析法およびX線光電子分析法によって測定することが出来る。
球状フェライト粒子の平均粒子径は、通常1〜45μm、好ましくは10〜45μmである。平均粒子径が1μm未満の場合は、感光体への飛散が起こり、また、45μmを超える場合は、高画質化を達成することが困難になる。
球状フェライト粒子の体積固有抵抗は、通常1×1011Ωcm以上、好ましくは1×1011〜1×1015Ωcm、より好ましくは、1×1012〜1×1015Ωcmの範囲である。1×1011Ωcm未満の場合には、キャリアが感光体の画像部へ付着したり、潜像電荷がキャリアを介して逃げ、潜像の乱れや画像の欠損等を生じたりする等の問題がある。なた、1×1015Ωcmを超える場合は、ベタ印刷での白抜け等の問題が生じる場合がある。
球状フェライト粒子のBET比表面積は、0.2m2/g以下、好ましくは0.15m2/g以下である。BET比表面積が0.2m2/gを超える場合は、帯電の環境安定性が悪くなる。また、後述の水銀圧入法による細孔容積は、0.05ml/g以下、好ましくは0.01ml/g以下である。細孔容積が0.05ml/gを超える場合は、帯電の環境安定性が悪くなる。BET比表面積、細孔容積の下限は特に制限されないが、測定機の測定精度の点から、通常、BET比表面積は0.01m2/g程度、細孔容積は0.001ml/g程度である。
球状フェライト粒子の球形度(l/w)は、通常1.0〜1.5、好ましくは1.0〜1.3であり、真比重は、通常4.0〜6.0、好ましくは4.5〜5.7であり、嵩密度は、通常2.0〜3.0g/ml、好ましくは2.1〜2.7g/mlである。
本発明の球状フェライト粒子は、上述の様に体積固有抵抗が高いため、高周波数領域における磁気損失を抑制することが出来る。さらに、フェライト粒子に非磁性粒子を混合すると、通常、比透磁率の低下が起こるが、意外にも、本発明の球状フェライト粒子は、従来の球状フェライト粒子と同等以上の比透磁率を有し、その結果、電波吸収能にも優れている。
本発明の球状フェライト粒子の表層部は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂およびシリコーン樹脂から選ばれた少なくとも1種の樹脂で被覆されていてもよい。樹脂で球状フェライト粒子の表層部を被覆することにより、体積固有抵抗が高くなることに加えて、封止材中に充填した場合、粘性が低下して流動性が向上し、その結果、球状フェライト粒子の充填量を高くすることが出来る。
エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有し、且つ、エポキシ当量が200以上であるエポキシ樹脂が挙げられ、具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ハロゲン化エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂などが挙げられる。
エポキシ当量は、通常200〜600g/当量、好ましくは200−500g/当量である。1分子中のエポキシ基が2個未満の場合は、フェライト粒子との接着性が不十分となる。半導体封止材用として使用する場合、エポキシ樹脂組成物の低粘度化を考慮すると、1分子中のエポキシ基の上限は3である。エポキシ当量が200g/当量未満の場合は、エポキシ樹脂組成物の成形時の流動性が良くない。600g/当量を超える場合は、得られる成形体のパッキング性が不十分となる。
フェノール樹脂としては、フェノールとホルマリンのモル比で通常1/1〜1/3の範囲にあるレゾ−ル系のフェノール樹脂が挙げられ、そのOH当量は、通常150g/当量以上、好ましくは180g/当量〜300g/当量である。OH当量が150g/当量未満の場合は、得られた成型体の吸水率が高く、且つ、パッキング性も悪くなる。
シリコーン樹脂としては、3官能性単位と2官能性単位とのモル比率が通常100:0〜60:40、好ましくは100:0〜70:30であるシリコーン樹脂が挙げられる。モル比率が上記範囲外の場合は、樹脂組成物の流動性が悪く、パッキング性も悪くなる。また、エポキシ変性またはアクリル変性のシリコーン樹脂も使用することが出来る。
樹脂被覆量は、フェライト粒子に対し通常0.1〜10重量%、好ましくは0.2〜5重量%である。樹脂被覆量が0.1重量%未満の場合は、エポキシ樹脂との相溶性の改善が不十分であり、樹脂組成物の流動性の改善も不十分である。10重量%を超える場合は、フェライト粒子の充填量を高めることが困難となり、フェライト粒子の機能を十分に発揮することが難しくなる。
次に、球状フェライト粒子の製造方法について説明する。球状フェライト粒子は、フェライト前駆体が分散している水性媒体中でフェノール類とアルデヒド類とを反応・硬化させるフェノール樹脂生成反応中に、SiO 、Al 及びTiO から選ばれる1種または2種以上の金属酸化物を添加して、金属酸化物とフェノール樹脂とから成る表層部およびフェライト前駆体の核部とから成る複合体粒子を形成し、得られた複合体粒子を400〜700℃で加熱処理してフェノール樹脂を除去し、次いで、800〜1400℃で加熱処理してフェライト前駆体をフェライト化して得られる。
使用するフェライト前駆体は、芯粒子を構成する元素の供給源であって、例えば、Li、Mg、Ni、Cu、Zn、Mn、Ca、Fe等の酸化物、水酸化物、シュウ酸塩、炭酸塩などの粒子が挙げられる。また、Fe元素の供給源としては、Fe23粒子が挙げられる。各元素の供給源は、水に溶解せず、水によって変質、変性しないものであればよく、各元素の酸化物粒子が好ましい。フェライト前駆体は、目的とするフェライト粒子の組成比率になる様に、例えば、Li2O、Li2CO3、MgO、NiO、CuO、ZnO、MnO、Mn34、CaO、CoO、ZrO、SnO、BaO、TiO等とFe23の各粒子を混合して使用する。
フェライト前駆体の粒子形態は、立方体状、多面体状、球状、針状、板状などのいずれの形態でもよい。平均粒子径は、複合体粒子の平均粒子径よりも小さい粒子であればよく、通常0.01〜5.0μm、好ましくは0.1〜2.0μmである。フェライト前駆体の平均粒子径が0.01μm未満の場合は、複合体粒子中のフェライト前駆体の含有量が低くなり、球状フェライト粒子の磁化値が不十分となる。また、5.0μmを超える場合は、複合体粒子およびフェライト粒子の球形度が悪化する。
フェライト前駆体は、組成の均一性を高めるために、必要に応じて、仮焼成する。仮焼成は、通常700〜1000℃で1〜4時間程度行う。
添加する金属酸化物粒子としては、SiO 、Al 及びTiO から選ばれる1種または2種以上を使用する。平均粒子径は、通常0.01〜5.0μm、好ましくは、0.1〜2.0μmの範囲である。金属酸化物粒子の平均粒子径が0.01μm未満の場合は、体積固有抵抗値を高めることが不十分であり、また、5.0μmを超える場合は、複合体粒子およびフェライト粒子の表面が凹凸になったり、球形度が悪化する。
フェライト前駆体および金属酸化物粒子は、親油化処理粒子が好ましい。未親油化処理のフェライト前駆体を使用した場合、優れた球形度を有する複合体粒子を得ることが困難となることがある。また、未親油化処理の金属酸化物粒子を使用した場合は、金属酸化物粒子が複合体粒子表層にしっかりと埋め込まれず、複合体粒子と遊離してしまうことがある。
親油化処理としては、フェライト前駆体および金属酸化物粒子をシラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤などのカップリング剤で処理する方法、界面活性剤を含む水性媒体中にフェライト前駆体および金属酸化物粒子を分散させ、粒子表面に界面活性剤を吸着させる方法などが挙げられる。
シラン系カップリング剤としては、疎水性基、エポキシ基、アミノ基を有するものが挙げられ、これらは単独でまたは必要に応じ2種以上組み合わせて使用される。
疎水性基を有するシラン系カップリング剤としては、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシ)シラン等が挙げられる。エポキシ基を有するシラン系カップリング剤としては、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)トリメトキシシラン等が挙げられる。アミノ基を有するシラン系カップリング剤としては、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
チタネート系カップリング剤としては、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルピロホスフェート)チタネート等が挙げられる。
界面活性剤としては、特に制限はなく、公知の界面活性剤を使用することができる。例えば、フェライト前駆体や金属酸化物粒子および当該粒子表面に有する水酸基と結合可能な官能基を有するものが挙げられ、イオン性で言えば、カチオン性またはアニオン性のものが好ましい。これらは単独でまたは必要に応じ2種以上組み合わせて用いられる。
上述のフェライト前駆体および金属酸化物粒子の親油化処理中、フェノール樹脂との接着性を考慮すると、アミノ基またはエポキシ基を有するシラン系カップリング剤による親油化処理が好ましい。
親油化処理剤の量は、フェライト前駆体または金属酸化物粒子に対して0.1〜5.0重量%が好ましい。0.1重量%未満の場合は、親油化処理が不十分なために目的のフェライト粒子含有量を有する複合体粒子を得ることが困難であり、また、金属酸化物粒子が複合体粒子にしっかりと埋め込まれないことがある。一方、5.0重量%を超える場合は、生成した複合体粒子同志の凝集が生じ、複合体粒子の粒子サイズの制御が困難になる。
球状フェライト粒子の製造は、まず、フェライト前駆体および塩基性触媒の存在下でフェノール類とアルデヒド類とを水性媒体中で反応させてフェライト前駆体とフェノール樹脂とから成る球状の核部を調製し、そして、反応途中で金属酸化物粒子を添加することにより、金属酸化物粒子とフェノール樹脂とから成る表層部を調製して、核部と表層部とを有する複合体粒子を形成する。
複合体粒子中のフェライト前駆体および金属酸化物粒子の含有量は、通常80〜98重量%である。含有量が80重量%未満の場合は、フェノール樹脂が多いため加熱処理時において、フェライト樹脂を除去するエネルギーが多く必要となり好ましくない。また、98重量%を超える場合は、加熱処理前の複合体粒子の強度が弱くなり、加熱処理時に粒子が破壊することがある。
本発明で使用される塩基性触媒としては、通常のフェノール樹脂製造に使用される塩基性触媒が挙げられる。例えば、アンモニア水、ヘキサメチレンテトラミン及びジメチルアミン、ジエチルトリアミン、ポリエチレンイミン等のアルキルアミンが挙げられる。塩基性触媒のフェノール類に対する量(モル比)は、通常0.02〜0.7である。モル比が0.02未満の場合は、反応が十分に進まず、また、0.7を超える場合は、過剰な塩基性触媒が反応溶液中に多く残り、排水処理の負荷を増大させるので好ましくない。
本発明で使用されるフェノール類としては、フェノールの他、m−クレゾール、p−tert−ブチルフェノール、o−プロピルフェノール、レゾルシノール、ビスフェノールA等のアルキルフェノール類、ベンゼン核、アルキル基の一部または全部が塩素原子または臭素原子で置換されたハロゲン化フェノール類などのフェノール性水酸基を有する化合物などが挙げられ、これらは単独でまたは必要に応じ2種以上組み合わせて使用される。中でも、フェノールが好ましい。
本発明で使用されるアルデヒド類としては、ホルマリン又はパラホルムアルデヒドの何れかの形態のホルムアルデヒド及びフルフラール等が挙げられ、これらは単独でまたは必要に応じ2種以上組み合わせて使用される。中でも、ホルムアルデヒドが好ましい。アルデヒド類のフェノール類に対する量(モル比)は、通常1〜4、好ましくはは1.2〜3である。モル比が1未満の場合は、粒子が形成し難かったり、形成したとしても樹脂の硬化が進行し難いために生成する粒子の強度が弱かったりする。また、モル比が4を超える場合は、反応後に水性媒体中に残留する未反応のアルデヒド類量が増加するので好ましくない。
上述のフェノール類とアルデヒド類とを反応・硬化させるフェノール樹脂生成反応の温度は、通常70〜90℃である。そして、反応・硬化した後、40℃以下に冷却して球状複合体粒子を含む水分散液を得る。
次に、得られた水分散液を濾過、遠心分離等の定法に従って固液を分離した後、乾燥してフェライト前駆体および金属酸化物粒子とフェノール樹脂から成る球状複合体粒子を得る。
フェノール樹脂生成反応においては、必要により、懸濁安定剤を存在させてもよい。懸濁安定剤としては、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコールの様な親水性有機化合物、フッ化カルシウムの様なフッ素化合物、硫酸カルシウム等の水に不溶性の無機塩類などが挙げられ、これらは単独でまたは必要に応じ2種以上組み合わせて使用する。
次に、得られた球状複合体粒子を加熱処理してフェノール樹脂を除去する。加熱処理の温度は、フェノール樹脂が分解する温度、すなわち、400〜700℃、好ましくは500〜600℃である。加熱処理の温度が700℃を超える場合は、粒子間の凝集が生じ、粒度分布が広くなる。また、400℃未満の場合は、フェノール樹脂が十分に分解除去されない。加熱処理時間は、加熱温度によっても変わるが、通常2〜8時間程度である。2時間未満の場合は、フェノール樹脂の分解が不十分で樹脂の除去が不十分となる。また一方、8時間を超える場合は、処理時間自体が長くなり過ぎ、効率的でない。
加熱処理炉としては、固定式、回転式など何れの処理機でもよい。粒子同志の凝集を防ぐ点からは、回転式のものが好ましい。加熱処理の雰囲気は、フェノール樹脂を分解し、炭素として残存させない点を考慮して、酸化雰囲気が好ましい。酸化雰囲気としては、空気を加熱処理炉内に流せばよく、その流量は、通常1L/min以上である。1L/min未満の場合は、熱処理炉内に樹脂の分解ガスが充満し、その結果、炭素が残存することがある。
フェノール樹脂を除去した後、加熱処理(焼成)をしてフェライト化する。加熱処理の温度はフェライト組成によっても異なるが、通常800〜1400℃、好ましくは900〜1300℃である。加熱処理の温度が1400℃を超える場合は、粒子同士が焼結してしまい、粒度分布が広くなる欠点がある。また、800℃未満な場合は、フェライト化が不十分であり、磁束密度が不足する欠点がある。加熱処理時間は、加熱温度によっても変わるが、通常1〜10時間程度である。1時間未満の場合は、フェライト化が不十分となり、10時間を超える場合は、生産性が低下する。
加熱処理(焼成)の雰囲気は、組成によって飽和磁化や電気抵抗値を所望の値にするために変えればよく、空気を流した酸化雰囲気下で行う場合、窒素ガス等の不活性ガスを流しながら処理を行う非酸化雰囲気下で行う場合、空気および窒素の混合ガスを流しながら行う場合などを適宜選択すればよい。ガスの流量は、通常1L/min以上である。1L/min未満の場合は、所望の飽和磁化や電気抵抗を得ることが困難である。
球状フェライト粒子は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂およびシリコーン樹脂から選ばれた少なくとも1種の樹脂で被覆してもよい。この樹脂被覆は、球状フェライト粒子と樹脂と若干の溶剤とを攪拌機能を有する処理機により混合・攪拌して行う。処理機としては、ハイスピードミキサー(深江パウテック(株)製)、ヘンシェルミキサー(三井三(株)製)、CFグラニュレーター(フロイント産業(株)製)、バーチカル・グラニュレーター((株)パウレック製)、フロージェットグラニュレーター((株)大川原製作所製)、万能攪拌機((株)ダルトン製)、ナウタミキサー((株)ホソカワミクロン製)等が使用できる。
球状フェライト粒子を樹脂で被覆するに際し、必要に応じて、各種の硬化剤を用いることが出来る。硬化剤としては、アミン類、酸無水物類、金属アルコキシド類、フェノールノボラック樹脂などが挙げられる。硬化剤の添加量は、樹脂に対して通常0.01〜5重量%である。0.01重量%未満の場合には、球状フェライト粒子同士が凝集してしまうことがある。また、5重量%を超える場合は、封止材として使用した場合に吸湿性の問題を生じることがある。
次に、半導体封止用樹脂組成物について述べる。半導体封止用樹脂組成物は、球状フェライト粒子または樹脂被覆された球状フェライト粒子とバインダー樹脂とから成り、必要に応じて、フェノール樹脂系硬化剤、硬化促進剤、シリカ粉末を含んでいてもよい。
バインダー樹脂としては、エポキシ樹脂が挙げられ、具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。
硬化剤としては、アミン類、酸無水物類、フェノールノボラック樹脂などが挙げられ、フェノールノボラック樹脂が好ましい。
樹脂組成物中の球状フェライト粒子の含有量は、通常10〜50重量%、好ましくは20〜50重量%である。樹脂組成物中のシリカ粒子の含有量は、通常30重量%以下、好ましくは20重量%以下である。電波吸収性を考慮すると、球状フェライト粒子の含有量は多いほど好ましい。
本発明に係る球状のフェライト粒子は、真球に近い球形度を有し、特定の粒度分布を有し、さらに、体積固有抵抗値が1×1011〜1×1015Ωcmと高く、BET比表面積が0.2m/g以下で細孔容積が0.04ml/g以下であり、細孔をほとんど有しない構造をもつために、高い透磁率を有しているため、電波吸収材用材料として有用である。
さらに、特定の樹脂を被覆した球状フェライト粒子および該フェライト粒子を含んだ半導体封止用樹脂組成物は溶融粘度も低く、フェライト粒子を高含有することが可能であり、高い信頼性と高い透磁率を有しているため、電波吸収材として有用である。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の方法でその特性を測定した。
平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布計(RODOS、SYMPATEC社製)により測定した。
かさ密度はJISK5101に記載の方法に従って測定した。
球形度の測定は、走査型電子顕微鏡(S−800、日立製作所製)により球状複合体粒子をランダムに250個以上抽出し、平均長軸径lおよび平均短軸径wを求め、式:球形度=l/w(但し、lは球形複合体粒子の平均長軸径を示し、wは球形複合体粒子の平均短軸径を示す)によって算出した。
BET比表面積は,窒素吸着法により測定した。
細孔容積は、水銀圧入式オートポア9220(島津製作所製)で測定した値で示した。
体積固有抵抗値は、ハイレジスタンスメーター4329A(商品名、横河ヒュ−レットパッカード社製)で測定した値を用いた。
比透磁率は、球状フェライト粒子を60vol%熱可塑性エラストマ-(シェルクレイトンG1657)にロール混練により充填する。得られた混練物を中空円柱(外形7mm内径3mm、厚さ1.0±0.1mm)に成形し ネットワークアナライザ8720D(ヒューレットパッカード社製)を用いて、同軸管Sパラメータ法により測定した。500MHzでの比透磁率(μr’)値が2.5以上の場合、電波吸収性能が優れている。
信頼性は次の様に測定した。半導体封止用樹脂組成物を死闘して幅10mm×長さ10mm×厚さ0.5mmの成形体を作り、その表面に太さ25μmのアルミニウム線を100μmの間隔で2本並べた。相対湿度85%、温度120℃の圧力容器の中で2本のアルミニウム線に直流30Vのバイアス電圧を負荷し、30時間試験を行った。電気抵抗が急激に低下したり、アルミニウム線の腐食など外観の異常を観察した。評価を表1の3段階で示した。
流動性は、高化式フローテスターを使用して測定した、樹脂組成物の175℃の溶融粘度によって評価した。
実施例1:
ヘンシェルミキサー内にFe48.5mol%、NiO20.6mol%、CuO10.4mol%、ZnO20.5mol%の割合で合計量1kgの前駆体を仕込み十分に攪拌し、エポキシ基を有するシラン系カップリング剤KBM−403(商品名:信越化学工業製)10gを添加混合して前駆体の粒子表面をエポキシ基を有するシラン系カップリング剤で親油化処理した。
別に、同様にしてシリカ(SiO)粒子(エクセリカSE−1;平均粒径1.8μm)1kgにエポキシ基を有するシラン系カップリング剤KBM−403;7.5gを添加混合して、金属酸化物の粒子表面をエポキシ基を有するシランカップリング剤で親油化処理した。
次いで、1Lのフラスコに、フェノール105g、37%ホルマリン120g、親油化処理されてた前駆体1Kg、25%アンモニア水37gおよび水140gを仕込み、攪拌しながら60分間で70℃に上昇させた後、粒子表面がエポキシ基を有するシラン系カップリング剤で処理されたシリカ粒子70gを添加し、同温度で60分間反応させた後、30分かけて85℃まで昇温した。同温度で120分間反応・硬化させることにより、フェノール樹脂とシリカ粒子とからなる表層部と、フェノール樹脂とフェライト前駆体からなる核部を有する複合体粒子を得た。
次に、フラスコ内の内容物を30℃に冷却し、上澄み液を除去した後、沈殿物を濾過し、通風乾燥機で80℃で7時間乾燥し、複合体粒子を得た。
得られた複合体粒子は、平均粒径30μmで、前駆体とシリカ粒子との含有量が88.8重量%、細孔容積は0.001ml/gであった。
得られた複合体粒子を内容量10Lの回転式熱処理炉内に入れ、空気を3L/minの流量で流しながら、加熱処理炉内温度を2時間で600℃に上げ、同温度で4時間加熱処理(加熱処理・)してフェノール樹脂を除去した。続いて、温度を2時間で1000℃まで上げ、同温度で4時間加熱処理(加熱処理II)してフェライト化を行った。その後、室温まで冷却した後、取り出し、球状のフェライト粒子を得た。
得られた球状フェライト粒子は、平均粒径が26μmで、BET比表面積が0.02m/gで、細孔容積は0.007ml/gで、体積固有抵抗は3.8×1014Ωcmであった。
実施例2〜5、比較例1:
実施例1において、フェライト前駆体の種類、親油化処理剤の種類および量、その他反応条件を変えた以外は、実施例1と同様にして複合体粒子を得た。この時の製造条件および諸特性を表1に示す。
次いで、実施例1において複合体粒子の種類、加熱処理Iおよび加熱処理IIの条件を変えた以外は、実施例1と同様にして球状フェライト粒子を得た。この時の製造条件および諸特性を表2に、得られた球状フェライト粒子の諸特性を表3に示す。
実施例6:
Fe55.5mol%、MnO30.5mol%、ZnO14.0mol%の割合の前駆体をボールミルにて3時間混合した。得られた混合物を乾燥した後、900℃で1時間仮焼し、再びボールミルで粉砕した。得られた仮焼粒子1kgにエポキシ基を有するシラン系カップリング剤KBM−403(商品名:信越化学工業製)10gを添加混合してエポキシ基を有するシラン系カップリング剤で親油化処理した。次に、実施例1と同様にフェノール樹脂生成反応を行い、複合体粒子を得、さらに、表2に示す様に変更した他は実施例1と同様に加熱処理Iおよび加熱処理IIを行い、球状フェライト粒子を得た。この時の製造条件および諸特性を表1、表2および表3に、得られた球状フェライト粒子の諸特性を表4に示す。
比較例2:
実施例1と同じ割合で各前駆体をボールミルにて3時間混合した。混合物を乾燥した後、800℃で1時間仮焼成し、再びボールミルで粉砕した。得られた仮焼粒子1kgにポリビニルアルコール20gと水200gを加え、スラリー化した。得られたスラリーをスプレート゛ライヤ−で造粒および乾燥し、平均粒径35μmの複合体粒子を調製した。次に、得られた複合体粒子を回転式熱処理炉内に入れ、空気を3L/minで流しながら、加熱処理炉内温度を2時間で600℃に上げ、同温度で2時間加熱処理・を行いポリビニルアルコールを除去した。続いて、加熱処理炉内温度を3時間で1000℃に昇温し、同温度で4時間加熱処理IIし、フェライト粒子を得た。その特性を表4に示す。
実施例7:
<樹脂の被覆>
実施例1で得られた球状フェライト粒子1kgを万能攪拌機内に投入し、続いて、エポキシ当量が300g/当量のエポキシ樹脂(エピクロン5300−70:大日本インキ化学工業)14gとMEK(メチルエチルケトン)20gを添加して球状フェライト粒子の表面へエポキシ樹脂を被覆した。
得られたエポキシ樹脂被覆球状フェライト粒子は、平均粒径27μm、体積固有抵抗値4.2×1014Ωcmであった。
<半導体封止用樹脂組成物の製造>
得られたエポキシ樹脂被覆球状フェライト粒子40体積%、球状シリカ粉末(溶融シリカ:平均粒径10μm)21体積%、ポリエチレンワックス0.8体積%の割合で以下の樹脂成分とヘンシェルミキサーで混合した。次いで、温度95〜110℃に加熱した熱ロールで3分間溶融混合して冷却した後、10メッシュの篩いを通過させて粉末状の半導体封止用樹脂組成物を得た。
(樹脂組成)
ビフェニル型エポキシ樹脂(軟化点105℃、エポキシ当量192) 100部
フェノールアラルキル樹脂(軟化点60℃、水酸基当量169) 70部
臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(軟化点77℃、水酸基当量465) 8部
三酸化アンチモン 3部
カーボンブラック 0.5部
実施例8〜9、比較例3:
実施例7において、球状フェライト粒子の種類、被覆樹脂の種類および量を変えた以外は、実施例7と同様にして樹脂被覆球状フェライト粒子を得た。この時の製造条件および諸特性を表5に示す。

Claims (6)

  1. Li、Mg、Ni、Cu、Zn、Mn、Ca、Co、Zr、Sn、Ba及びTiから選ばれる1種または2種以上の金属元素をFe元素100モルに対して60モル以下含有し、且つ、スピネル構造を有するフェライト粒子であって、その表層部にSiO、Al及びTiOから選ばれる1種または2種以上の金属酸化物を有し、金属酸化物の含有量がフェライト100重量部に対して1〜30重量部であり、平均粒径が1〜45μmであり、体積固有抵抗が1×1011Ωcm以上であり、BET比表面積が0.2m/g以下であり、水銀圧入法による細孔容積が0.05ml/g以下であることを特徴とする電波吸収材用の球状フェライト粒子。
  2. 更に、表層部が、エポキシ樹脂、フェノール樹脂およびシリコーン樹脂から選ばれた少なくとも1種の樹脂で被覆されている請求項1に記載の球状フェライト粒子。
  3. フェライト前駆体が分散している水性媒体中でフェノール類とアルデヒド類とを反応・硬化させるフェノール樹脂生成反応中に、SiO 、Al 及びTiO から選ばれる1種または2種以上の金属酸化物を添加して、フェライト前駆体とフェノール樹脂とから成る核部および金属酸化物とフェノール樹脂とから成る表層部から構成される複合体粒子を形成し、得られた複合体粒子を400〜700℃で加熱処理してフェノール樹脂を除去し、次いで、800〜1400℃で加熱処理してフェライト前駆体をフェライト化することを特徴とする球状フェライト粒子の製造方法。
  4. フェライト前駆体が、LiO、LiCO3、MgO、NiO、CuO、ZnO、MnO、Mn、CaO、CoO、ZrO、SnO、BaOおよびTiOから選ばれる1種または2種以上の粒子とFe粒子とから成る請求項3に記載の製造方法。
  5. フェライト前駆体および金属酸化物が親油化処理された粒子である請求項に記載の製造方法。
  6. 請求項1又は2に記載のフェライト粒子とバインダー樹脂とから成ることを特徴とする半導体封止用樹脂組成物。
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