JP4581382B2 - 燃料電池システム - Google Patents

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Description

本発明は、炭素を担体とした電極触媒を有する燃料電池システムに係り、特に起動停止時の制御を改善して触媒劣化を防止した燃料電池システムに関する。
燃料電池は、水素ガスなどの燃料ガスと酸素を有する酸化剤ガスとを電解質を介して電気化学的に反応させ、電解質両面に設けた電極間から電気エネルギを直接取り出すものである。特に固体高分子電解質を用いた固体高分子型燃料電池は、動作温度が低く、取り扱いが容易なことから電動車両用の電源として注目されている。すなわち、燃料電池車両は、高圧水素タンク、液体水素タンク、水素吸蔵合金タンクなどの水素貯蔵装置を車両に搭載し、そこから供給される水素と、酸素を含む空気とを燃料電池に送り込んで反応させ、燃料電池から取り出した電気エネルギで駆動輪につながるモータを駆動するものであり、排出物質は水だけであるという究極のクリーン車両である。
一般に、固体高分子型燃料電池の構成単位であるセルは、高分子電解質膜の両面に電極触媒層を形成した膜電極構造体(MEA)と、燃料極側に燃料ガスとしての水素を供給するセパレータと、酸化剤極側に酸化剤ガスとしての空気を供給するセパレータとを備えて構成されている。これらの電極触媒層は、通常白金等の触媒と、触媒担体としての炭素が使用されている(例えば特許文献1)。
固体高分子型燃料電池において、アノードに水素ガスが、カソードに空気(又は酸素)が供給され、以下に示す電極反応が進行され、電力が発電される。
(化1)
アノード(水素極):H2 →2H+ +2e- …(1)
カソード(酸素極):2H+ +2e- +(1/2)O2 →H2O …(2)
燃料電池の電解質膜には反応触媒としてプラチナ微粒子などが塗られる。プラチナは高価であるため、一般的には炭素を担体として炭素の表面に塗られる。
特開2002−373674号公報(第5頁、図1)
しかしながら、上記従来の固体高分子型燃料電池の電解質膜にあっては、燃料電池システムの停止時、放置時、或いは起動時に、カソードで電解質膜上の炭素と水が反応して炭素被毒が起こり、電解質膜及び電極触媒が劣化するという問題点があった。
この現象を図1を参照して、さらに詳しく説明する。図1(a)は、燃料電池の起動/停止時のセル内の様子を説明する模式図である。図1(b)の左側は、起動/停止時に炭素被毒が発生する条件を説明する表である。
燃料電池システムの運転停止時に、カソードとアノードにそれぞれ酸素と水素が残った状態で負荷の接続を切り離して放置したとき、また、起動時にアノードに水素を供給し始めたときには、アノードは水素と酸素が混在した状態となる。
このとき、アノードからカソードへプロトン(H+ )が移動し、移動したプロトンとカソードの酸素が反応して水が生成される。この反応では電子(e- )が必要とされるが、負荷が接続されていないため負荷電流は停止し、アノードからカソードへ電子が負荷を通じて移動できない。そのため、カソードに存在する水と電解質膜上の触媒担持炭素とが反応して、二酸化炭素とプロトンと電子が生成する。こうして生成された電子がカソード水生成反応に使われる。このとき電解質膜上の炭素が奪われて、電解質膜が劣化する。
アノードでは水素が存在する領域と空気が存在する領域とが混在している。アノードの水素が存在する領域では、水素が解離してプロトンと電子が生じる。アノードの空気が存在する領域では、酸素と、カソードから移動したプロトンと、水素のプロトン化で生じた電子とが反応して水が生成される。
燃料電池の開放端電圧が高いと電子の移動が起こりやすくなり、これらの化学反応が促進されて電解質膜の炭素被毒が激しくなる。
以上を纏めると、燃料電池の停止時及び停止後の放置時には、カソードに空気(酸素)が残っていること、アノードに水素が残っていて外部から空気(酸素)が流入してくること、電力取り出しが停止していること、開放端電圧が高いことにより、電解質膜状のプラチナ触媒担体の炭素が被毒を起こす条件が成立する。
また、燃料電池の起動時には、カソードに空気(酸素)が外部から入ってきていること、アノードに水素供給が開始され、空気(酸素)と水素とが混ざっていること、アノードに水素が満たされるまで電力取り出しが停止していること、開放端電圧が高いことにより、電解質膜状のプラチナ触媒担体の炭素が被毒を起こす条件が成立する。
電解質膜の触媒担持炭素の被毒は、燃料電池出力のI−V特性に影響を及ぼす。即ち同一出力電流を取り出したときに炭素被毒したものは被毒しないものより出力電圧が低下し、大きな発電電力を得ることができなくなる。
本発明は上記問題点に鑑み、燃料電池システムの起動時に、アノードとカソード間に高い開放端電圧が生じないようにして燃料電池の劣化を防止することを目的とする。
上記問題点を解決するため、本願第1発明は、燃料電池のアノードに燃料ガスを供給する燃料ガス供給手段と、燃料電池のカソードに空気を供給する空気供給手段と、燃料電池の運転状態として、燃料電池のセル群の電圧、または燃料電池の総電圧を検出する運転状態検出手段と、燃料電池に前記空気供給手段からの空気供給を停止した状態でカソードの酸素を消費させる燃料電池劣化防止制御手段と、前記運転状態検出手段の出力に基づいてカソード酸素消費が所定以上となったか否かを判断するカソード酸素消費判断手段と、アノードから排出された未反応燃料ガスを再度アノードに循環させる燃料ガス循環装置と、前記燃料ガス循環装置を制御する燃料ガス循環制御手段と、を備えた燃料電池システムであって、燃料電池システムの起動時に、前記燃料ガス供給手段によりアノードに燃料ガス供給を開始後、前記運転状態検出手段が所定の運転状態として、セル群の電圧が所定値以上、または燃料電池の総電圧が所定値以上を検出した後に前記燃料電池劣化防止制御手段による制御を開始し、その制御中に燃料電池が劣化しない条件の範囲内となるように前記燃料ガス循環制御装置が前記燃料ガス循環装置を制御することを要旨とする。
本発明によれば、燃料電池を劣化させることなく燃料電池システムを起動させることができるという効果がある。
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。以下に説明する実施例は、燃料電池車両に好適な燃料電池システムである。
図2は、本発明に係る燃料電池システムの基本構成を示す図である。図中の101は、燃料電池システムに燃料ガスを供給する燃料ガス供給手段、102は燃料電池システムの運転状態を検出する運転状態検出手段であり、103は、101と102の出力に基づいて燃料電池に空気供給手段からの空気供給を停止した状態でカソードの酸素消費を行う燃料電池劣化防止制御手段である。104は102の出力に基づいてカソードで酸素が消費されたことを判断するカソード酸素消費判断手段であり、105は、101と104の出力に基づいて燃料ガス循環装置の制御を行う燃料ガス循環制御手段である。
図3は、本発明に係る燃料電池システムの一実施例を示すシステム構成図である。図3の構成要素と図2との対応は、水素タンク2,水素タンク元弁3,減圧弁301,水素供給弁4及びエゼクタ5が燃料ガス供給手段101に相当する。
また、電圧センサ21が運転状態検出手段102に相当し,カソード酸素消費制御手段26が燃料電池劣化防止制御手段103,空気極酸素消費制御手段104及び燃料ガス循環制御手段105に相当する。
図3において、燃料電池(燃料電池本体)1は、特に限定されないが内部加湿型であり、アノード1a、カソード1b、電解質膜1c、多孔質のセパレータ1d,1e、純水により反応ガスを加湿するための純水極1f、1g、純水極1gと冷却水流路1iを分離するセパレータ1h、冷却水流路1iを備えている。
アノード1aへの水素供給は、水素タンク2から水素タンク元弁3、減圧弁301、水素供給弁4を通じてなされる。水素タンク2から供給される高圧水素は、減圧弁301で機械的に所定の中間圧力まで減圧され、水素供給弁4で中間圧力が所望の水素圧まで減圧制御されてアノード1aへ供給される。
燃料電池システム全体の制御は、システム全体のシーケンスを制御するシーケンスコントローラ30の下に、カソード1bの空気圧力を制御する空気圧力制御手段22,アノード1aの水素圧力を制御する水素圧力制御手段23,冷却水温度を制御する冷却水温度制御手段24,低温環境下での燃料電池停止時に純水を純水タンク13へ回収するように制御する純水回収制御手段25,燃料電池の起動時及び停止時にカソードの酸素消費を制御するカソード酸素消費制御手段26を備えている。
エゼクタ5及び水素循環ポンプ8は、水素供給弁4から供給される新規水素とアノード1aで消費されなかった水素とを混合してアノード1aに供給する再循環を行わせるための燃料ガス循環装置として設置されている。水素循環ポンプ8はエゼクタ5が作動しない水素流量の領域で水素循環機能を補うために設置されている。
本実施例によれば燃料ガス循環装置として水素循環ポンプを用いるので、精密な水素流量制御ができる。尚、燃料電池の運転状態が大きく変動しないような用途には、燃料ガス循環装置としてエゼクタのみを用いる構成として、システム構成を簡易にすることができる。
エゼクタ5及び水素循環ポンプ8は、図2の燃料ガス循環制御手段105から循環/停止が制御される燃料ガス循環装置である。エゼクタ5は、燃料ガス循環制御手段105から循環/停止の制御を受けるために、アノード1aから排出されたアノードオフガスを吸い込む吸込口を開閉するシャット弁を内蔵している。
アノード1aの水素圧は、水素圧力制御手段23が圧力センサ6aで検出した圧力をフィードバックして水素供給弁4を駆動することによって制御される。水素圧を一定に制御することによって、燃料電池が消費した分だけの水素が自動的に補われる。
アノード1aと希釈ブロア9との間に設けられたパージ弁7は、次の(1)から(3)に示すような場合に開く。(1)水素循環機能を確保するために、水素系内に蓄積した窒素を排出する。(2)セル電圧を回復させるために、ガス流路に詰まった水詰まりを吹き飛ばす。(3)燃料電池の劣化を防止するために、起動時にアノード1aのみガスを供給してカソード1bの酸素を電力消費させるカソード酸素消費制御を行いつつ水素系内のガスを水素置換する。また停止時にもカソード酸素消費制御をおこなう。
希釈ブロア9は、パージ弁7から排出される水素を可燃濃度未満の水素濃度になるように空気で希釈してシステム外へ排出する。
カソード1bへの空気はコンプレッサ10から供給される。カソード1bの空気圧は、カソード入口に設けられた圧力センサ6bで検出される。空気圧力制御手段22は、圧力センサ6bが検出した圧力をフィードバック制御して空気調圧弁11を駆動することによって、カソード空気圧を所望の値に制御する。
純水極1f、1gが使用する加湿用の純水は、純水タンク13から純水ポンプ12により供給される。空気圧、水素圧、純水圧は、発電効率や水収支を考慮して設定されるとともに、電解質膜1cやセパレータ1d,1eに歪みを生じないように所定の差圧に管理される。純水極1f、1gに供給された純水の一部は、多孔質のセパレータ1d,1eを介してアノードの水素、カソードの空気をそれぞれ加湿する。純水の残部は、純水シャット弁14dを介して純水タンク13へ戻る。
純水回収制御手段25は、純水回収弁14a、14b、14c及び純水シャット弁14dを駆動することによって、燃料電池1の純水極1f、1g及び純水系配管内の純水をコンプレッサ10がカソード1bに供給する空気圧で純水タンク13へ回収する。純水が純水極1f、1gに残ったままの状態で燃料電池システムを停止すると、氷点下においては純水が凍結膨張して燃料電池1が破損する可能性があるため、純水を純水タンク13へ回収する。尚、純水タンク13内部で純水が凍結しても、純水タンク13が破損しないように構造上の工夫がされている。
純水シャット弁14dは、純水配管への水素リークを抑制する開閉弁である。燃料電池システムの起動、停止時に、純水が純水極1f、1gに循環していない状態で水素をアノード1aへ供給する場合に、純水回収弁14b及び純水シャット弁14dを閉じることによって、純水配管への水素リークを抑制することができる。
燃料電池1内部の冷却水流路1iへの冷却水は、冷却水ポンプ15により供給される。三方弁16は、冷却水の流路をラジエタ17方向とラジエタバイパス方向に切り替えや分流する。ラジエタファン18は、走行風によるラジエタ17の冷却が十分でないときに、ラジエタ17へ風を通過させて冷却水を冷やす。冷却水の温度は、冷却水温度制御手段24が温度センサ19で検出した冷却水温度をフィードバックして三方弁16とラジエタファン18を駆動することによって調整される。
パワーマネージャー20は、燃料電池1から電力を取り出して図示しない車両駆動モータなどの負荷装置へ電力を供給する。
カソード酸素消費制御手段26は、燃料電池システムの起動時及び停止時に、コンプレッサ10での空気供給を停止させ、電圧センサ21で検出された燃料電池電圧および経過時間に応じて、燃料電池1から電力を取り出して、カソード1bの酸素を消費させるカソード酸素消費制御に用いる。
次にフローチャートを参照して、本実施形態における燃料電池システムの起動制御及び停止制御を説明する。図6が起動シーケンス、図7が停止シーケンスのゼネラルフローチャートである。これらのシーケンスは、シーケンスコントローラ30の主導の下、空気圧力制御手段22,水素圧力制御手段23,純水回収制御手段25、及びカソード酸素消費制御手段26の協働により実行される。
図6の燃料電池システム起動シーケンスでは、まずステップS10で、水素供給弁4にアイドリング時の水素供給圧力を指定するとともに、水素タンク元弁3を開くことにより、水素タンク2から燃料電池1のアノード1aへの水素供給を開始する。次いで、ステップS12では、電圧センサ21により燃料電池1のセル群電圧あるいは総電圧を検出し、シーケンスコントローラ30へ読み込む。
ステップS14では、ステップS12の電圧検出結果に基づいて、劣化防止制御を開始するかどうかを判断する。この判断には、検出電圧値と所定値とを比較し、検出電圧値が所定値以上となっていれば、劣化防止制御を開始するために、ステップS16へ移る。
ここで、電圧センサ21が燃料電池1のセル群の電圧を検出するものであれば、検出したセル群電圧の最大値を電圧検出値として、所定値と比較する。
この比較対象の所定値は、予め実験などで求めた燃料電池1の劣化が生じる電圧よりも小さい値を設定する。ステップS14で、検出電圧値が所定値未満の場合には、ステップS12へ戻る。
ステップS16では、燃料電池の劣化防止のために、カソード1bの空気供給は停止したまま、アノード1aへ水素供給を継続し、カソード酸素消費制御手段26でパワーマネージャー20にカソード酸素消費のための燃料電池1からの電力取り出しを指示する(図2の燃料電池劣化防止制御手段103に相当)。このステップS16での劣化防止用電力取り出し制御は、通常発電と同様にパワーマネージャ20等のデバイスで燃料電池1から電力(電流)を取り出す方法でもよいし、外部に準備した抵抗器等を接続する方法でもよい。
次いでステップS18で、カソード1bの酸素量を推定し、ステップS20ではカソードbで酸素が所定量以上消費されたかどうかを判定する。
このステップS18におけるカソード酸素量の推定方法は、複数のセルからなるセル群の電圧の最大値を検出する方法でもよいし、燃料電池の総電圧を検出する方法でもよい。ステップS20では、セル群電圧の最大値または総電圧値が所定値以下となったときにカソード酸素が所定量以上消費されたと判定する。
また、カソードで空気中の酸素が消費されると、アノードからカソードへ電解質膜1cを透過(クロスオーバ)した水素が酸素と反応できなくなるため、パージ弁7等の空気系の経路の一部から水素が排出されたことを検知する方法でもよく、劣化防止用電力取り出しを開始してからの経過時間を計測する方法でもよい。また、これらの方法は単独でもよいし、複数を組み合わせて使用してもよい。
燃料電池のカソードの経路の一部から燃料ガスが排出されたことを検知したときにカソードの酸素が消費されたと判断する構成とする場合、酸素消費を適切に判断することが可能となり、酸素消費を確実に検知してから次のステップに制御を進めることができる。
劣化防止制御の継続時間が所定時間を経過したときに、カソードの酸素が消費されたと判断する構成とする場合、制御ソフトの作成を容易に行うことができる。
ステップS20でカソードの酸素がまだ消費されていないと判断された場合は、ステップS18へ戻り、酸素が消費されたと判断した場合はステップS22へ進む。
このように、カソードの酸素が消費されるまでは燃料ガス循環装置である水素循環ポンプ及びエゼクタに循環機能を起動しないようにしたので、この間は水素流量が少なく、燃料電池電圧の増加速度が遅くなり、燃料電池電圧が所定以上となったこと(所定の運転状態)が成立したことや、カソードの酸素が消費された(酸素濃度が所定以下に低下した)ことの判断がしやすい、また劣化防止制御の開始、終了タイミングを図り易い。
また、燃料循環路内に残留した水素が燃料電池のアノードに流れ込む等が無くなり、燃料電池アノードに供給される水素量が安定するため燃料電池電圧の立ち上がりが緩やかになる。
ステップS22では、燃料ガス循環装置の制御を開始し、ステップS24ではアノード1aの水素置換が終了したかどうかを判断する。
ステップS24でアノード1aの水素置換がまだ終了していないと判断した場合には、ステップS24に留まり、アノード1aの水素置換が終了したと判断した場合には、ステップS26へ進んで通常の発電を開始し、起動制御シーケンスを終了する。
図7の燃料電池システム停止シーケンスでは、まずステップS30で、パワーマネージャー20に燃料電池1から通常電力取り出しの停止を指示することで、燃料電池1からの通常電力の取り出しを停止し、ステップS32でコンプレッサ10を停止させてカソード1bへの空気供給を停止する。
次いで、ステップS34で、アノード1aには水素供給を継続した状態で、燃料電池1から劣化防止用の電力取り出し開始をパワーマネージャー20に指示する。このステップS34での劣化防止用電力取り出し制御は、通常発電と同様にパワーマネージャ20等のデバイスで燃料電池1から電力(電流)を取り出す方法でもよいし、別途準備した抵抗器等を接続する方法でもよい。
燃料電池の起動停止制御時の劣化防止のための電力取り出しにおいて、パワーマネージャーによって通常発電時と同様に電力取り出しを行う場合、新たな装置の追加を行うことなく劣化防止制御を実現することができる。
また燃料電池の起動停止制御時の劣化防止のための電力取り出しにおいて、別途準備した抵抗器等により電力取り出しを行う場合、劣化防止制御中のエネルギの消費方法を考える必要がなく、容易に劣化防止制御システムを構築することができる。
次いで、ステップS36でカソードの酸素量を推定し、ステップS38ではカソード1bの酸素が所定量以上消費されたかどうかを判断する。
このステップS36におけるカソード酸素量推定方法は、複数のセルからなるセル群の電圧の最大値を検出する方法でもよいし、燃料電池の総電圧を検出する方法でもよい。ステップS38では、セル群電圧の最大値または総電圧値が所定値以下となったときにカソード酸素が所定量以上消費されたと判定する。
また、カソードで空気中の酸素が消費されると、アノードからカソードへ電解質膜1cを透過(クロスオーバ)した水素が酸素と反応できなくなるため、パージ弁7等の空気系の経路の一部から水素が排出されたことを検知する方法でもよく、劣化防止用電力取り出しを開始してからの経過時間を計測する方法でもよい。また、これらの方法は単独でもよいし、複数を組み合わせて使用してもよい。
ステップS38で酸素が消費されていないと判断した場合には、ステップS36へ戻り、酸素が消費されたと判断した場合には、ステップS40へ進む。
ステップS40では、燃料電池1から劣化防止用の電力取り出し停止をパワーマネージャー20に指示する。ステップS42では、水素タンク元弁3を閉じることによりアノード1aへの水素供給を停止する。このとき同時に水素供給弁4を閉じても良い。
S42で水素供給を停止した後、ステップS44で燃料ガス循環装置であるエゼクタ5及び水素循環ポンプ8の制御を停止する。ステップS46では外気温度等を参照して純水回収を行うか否かを判定し、純水回収を行う場合には、純水回収終了後にシステム全体を停止し、燃料電池システムの停止シーケンスを終了する。
以下、本発明の効果を比較例及び本実施例のタイムチャートを参照して説明する。
図4は比較例、図5は本実施例における、(a)水素供給、(b)燃料電池のセル群電圧又は総電圧(燃料電池電圧)、(c)劣化防止制御、(d)カソード酸素量、(e)水素循環をそれぞれ示す。
比較例では、燃料電池システムの起動と同時に水素循環装置を起動する場合を示す。時刻t0において、燃料ガス(水素)を所定の圧力(あるいは流量)へ制御してアノードへ供給開始すると同時に水素循環装置を起動する。これにより急速にアノードへ水素が供給され、(b)の燃料電池電圧は急上昇を始める。
燃料電池電圧が劣化防止制御しきい値Vpを超えたとき(これを時刻t1とする)に、劣化防止制御を開始し、その結果、燃料電池から電力取り出し(発電)が行われてカソードの酸素量が減少する。
しかし、この場合、燃料ガスの供給開始制御と水素循環装置の循環開始制御を同時にしているため、燃料電池電圧の上昇速度が速く、同じ劣化防止制御電圧しきい値Vpで劣化防止制御を開始(t1)したとしても、水素循環経路に存在していた水素の量によっては劣化防止制御を開始したあとの電圧が劣化しきい値Vdを超えてしまい、結果的に燃料電池をわずかに劣化させてしまう場合があるという問題がある。
そこで本実施例では、図5に示すように、時刻t0で燃料ガス(水素)を所定の圧力(あるいは流量)へ制御しても水素循環装置は起動せず、燃料電池のセル電圧あるいは総電圧上昇は水素供給手段からの水素供給量のみに依存するようにして電圧上昇速度のばらつきを小さくする。
また、燃料電池への水素供給量を抑制することで電圧上昇速度も小さく抑制し、図5(b)のように燃料電池電圧が劣化防止制御しきい値Vpに達した時点(t1’>t1)で劣化防止制御を起動しても燃料電池電圧が劣化しきい値Vdを超えることがない。その後、カソードの酸素量が所定量まで減少した時点(t2>t1’)で水素循環装置を起動して循環経路の水素置換を行うことで、燃料電池を劣化させることなくシステムを起動することができる。
また比較例では、起動時に燃料電池のアノード内には水素が全く無く、燃料ガス循環系路の一部に水素が残っていた場合、水素循環ポンプを動かすと、この残留水素がアノードに到達することにより、供給水素が急増したのと同じことになる。カソードに酸素がある状態でこのような状態となると電圧が急増する場合がある。これに対して本実施例では、カソードに酸素がなくなってから循環ポンプを動かすことで電圧急増を防止できる。
(a)起動/停止時の燃料電池の模式図である。(b)起動/停止時の炭素被毒条件とその解決手段を示す表である。 本発明に係る燃料電池システムの要部構成図である。 本発明に係る燃料電池システムの実施例の構成を説明するシステム構成図である。 比較例における燃料電池システム起動時の様子を説明するタイムチャートである。 実施例における燃料電池システム起動時の様子を説明するタイムチャートである。 実施例の燃料電池システムにおける起動シーケンスを説明するフローチャートである。 実施例の燃料電池システムにおける停止シーケンスを説明するフローチャートである。
符号の説明
1…燃料電池
2…水素タンク
3…水素タンク元弁
4…水素供給弁
5…エゼクタ
6a、6b…圧力センサ
7…パージ弁
8…水素循環ポンプ
9…希釈ブロア
10…コンプレッサ
11…空気調圧弁
12…純水ポンプ
13…純水タンク
14a、14b、14c…純水回収弁
14d…純水シャット弁
15…冷却水ポンプ
16…三方弁
17…ラジエタ
18…ラジエタファン
19…温度センサ
20…パワーマネージャー
21…電圧センサ
22…空気圧力制御手段
23…水素圧力制御手段
24…冷却水温度制御手段
25…純水回収制御手段
26…カソード酸素消費制御手段
30…シーケンスコントローラ

Claims (10)

  1. 燃料電池のアノードに燃料ガスを供給する燃料ガス供給手段と、
    燃料電池のカソードに空気を供給する空気供給手段と、
    燃料電池の運転状態として、燃料電池のセル群の電圧、または燃料電池の総電圧を検出する運転状態検出手段と、
    燃料電池に前記空気供給手段からの空気供給を停止した状態でカソードの酸素を消費させる燃料電池劣化防止制御手段と、
    前記運転状態検出手段の出力に基づいてカソード酸素消費が所定以上となったか否かを判断するカソード酸素消費判断手段と、
    アノードから排出された未反応燃料ガスを再度アノードに循環させる燃料ガス循環装置と、
    前記燃料ガス循環装置を制御する燃料ガス循環制御手段と、
    を備えた燃料電池システムであって、
    燃料電池システムの起動時に、前記燃料ガス供給手段によりアノードに燃料ガス供給を開始後、前記運転状態検出手段が所定の運転状態として、セル群の電圧が所定値以上、または燃料電池の総電圧が所定値以上を検出した後に前記燃料電池劣化防止制御手段による制御を開始し、
    その制御中に燃料電池が劣化しない条件の範囲内となるように前記燃料ガス循環制御装置が前記燃料ガス循環装置を制御することを特徴とする燃料電池システム。
  2. 前記カソード酸素消費判断手段がカソードの酸素が消費されたと判断した後に、前記燃料ガス循環制御手段は、前記燃料ガス循環装置を起動することを特徴とする請求項1項に記載の燃料電池システム。
  3. 前記運転状態検出手段は、燃料電池の複数のセルからなるセル群の電圧を検出する電圧センサであり、
    前記カソード酸素消費判断手段は、前記電圧センサが検出したセル群の電圧の最大値が所定値を下回ったときに、カソードの酸素が消費されたと判断することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の燃料電池システム。
  4. 前記運転状態検出手段は、燃料電池の総電圧を検出する電圧センサであり、
    前記カソード酸素消費判断手段は、前記電圧センサが検出した総電圧値が所定値を下回ったときに、カソードの酸素が消費されたと判断することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の燃料電池システム。
  5. 料電池の空気系の経路の一部から燃料ガスが排出されたことを検出する燃料ガス検出手段を有し、
    前記カソード酸素消費判断手段は、前記燃料ガス検出手段が燃料ガスの排出を検出したときに、カソードの酸素が消費されたと判断することを特徴とする請求項1乃至請求項の何れか1項に記載の燃料電池システム。
  6. 前記カソード酸素消費判断手段は、劣化防止制御の継続時間が所定時間を経過したときに、カソードの酸素が消費されたと判断することを特徴とする請求項1乃至請求項の何れか1項に記載の燃料電池システム。
  7. 前記燃料電池劣化防止制御手段は、起動停止制御時にも通常発電時と同様に電力取り出し装置によって所定の電力を取り出すことで燃料電池の電圧が所定以上立たないようにすることを特徴とする請求項1乃至請求項の何れか1項に記載の燃料電池システム。
  8. 前記燃料電池劣化防止制御手段は、起動停止制御時には燃料電池の出力端に所定の抵抗を接続することで燃料電池の電圧が所定以上立たないようにすることを特徴とする請求項1乃至請求項の何れか1項に記載の燃料電池システム。
  9. 前記燃料ガス循環装置は、循環ポンプであることを特徴とする請求項1乃至請求項の何れか1項に記載の燃料電池システム。
  10. 前記燃料ガス循環装置は、エゼクタであることを特徴とする請求項1乃至請求項の何れか1項に記載の燃料電池システム。
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