JP2008130358A - 燃料電池システム - Google Patents
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Abstract
【課題】電極触媒への酸化皮膜形成によって劣化した燃料電池の特性を回復させること。
【解決手段】燃料電池20の始動時に、制御部80は、電圧センサ85の検出による開放端電圧OCVが基準電圧Vth以上であったときには、燃料電池20における電極触媒に形成された酸化物が還元され得る還元促進電圧に維持するための低効率発電運転をコンバータ83に指令し、エアコンプレッサ75の駆動を停止する。コンバータ83によってその出力電圧を下げる制御が実施されるとともに、エアコンプレッサ75の駆動停止によって燃料電池20に対する酸化ガスの供給が停止されると、コンバータ83の出力電圧の低下に伴って、燃料電池20の開放端電圧が漸次低下し、燃料電池20の触媒層における還元反応が促進され、触媒層の活性化が図られる。
【選択図】図1
【解決手段】燃料電池20の始動時に、制御部80は、電圧センサ85の検出による開放端電圧OCVが基準電圧Vth以上であったときには、燃料電池20における電極触媒に形成された酸化物が還元され得る還元促進電圧に維持するための低効率発電運転をコンバータ83に指令し、エアコンプレッサ75の駆動を停止する。コンバータ83によってその出力電圧を下げる制御が実施されるとともに、エアコンプレッサ75の駆動停止によって燃料電池20に対する酸化ガスの供給が停止されると、コンバータ83の出力電圧の低下に伴って、燃料電池20の開放端電圧が漸次低下し、燃料電池20の触媒層における還元反応が促進され、触媒層の活性化が図られる。
【選択図】図1
Description
本発明は、燃料電池システムに係り、特に、燃料電池の触媒層の活性化を行うための技術に関する。
燃料電池システムにおいては、運転中、燃料電池の触媒層に酸素が吸着されると、触媒層のカーボンに腐食劣化が生じ、燃料電池の出力電圧が低下する。このため、燃料電池システムの起動時や停止時に、触媒層の触媒表面に酸化皮膜を形成し、触媒の活性状態を低下させて、燃料電池の耐久性を上げるようにしたものが提案されている(特許文献1参照)。
一方、特許文献1に記載のように、積極的に触媒層の触媒表面に酸化皮膜を形成しなくても、燃料電池の開放端電圧が高い状態での運転、例えば、低速運転や停止を繰り返す街中運転などが多いと、電極触媒の酸化皮膜は厚くなる。
酸化皮膜は、燃料電池の性能特性であるI−V特性を悪化させるので、除去する必要がある。このため、通常は、燃料電池を一定時間停止させて、開放端電圧を徐々に下げることで、電極触媒の酸化皮膜を還元作用によって除去する方法が採用されていた。
しかし、燃料電池システムが搭載された車両を街中で運転するときなど、短時間の停車を繰り返すと、燃料電池の始動直前までに燃料電池の開放端電圧が十分に下がらず、結果として、触媒層の活性化が進まず、酸化皮膜が厚いままとなり、燃料電池のI−V特性が劣化する。
そこで、本発明は、電極触媒への酸化皮膜形成によって劣化した燃料電池の特性を回復させることを目的とする。
前記課題を解決するために、本発明は、燃料電池を備えた燃料電池システムであって、該燃料電池の始動直前の開放端電圧が所定の基準電圧値以上であった場合に、前記燃料電池における電極触媒に形成された酸化物が還元され得る還元促進電圧範囲に維持しての低効率発電を実施可能に構成したものである。
係る構成によれば、燃料電池の始動直前の開放端電圧が所定の基準電圧値以上であった場合に、燃料電池の出力端子電圧を電極触媒に形成された酸化物が還元され得る触媒促進電圧範囲に維持するための低効率発電を実施することで、電極触媒(触媒層)の活性化が促進され、燃料電池の特性、例えば、I−V特性を回復させることができる。
なお、本発明において「始動直前」とは、燃料電池の燃料ガスが供給され電気化学反応による発電が開始する前までの期間であって、燃料電池システム全体の電源がオン状態にされた時をいう。「直前」は、必ずしも燃料電池の発電前のごく短い期間であることを要しないが、なるべく発電開始時に近い時点の方が正確な燃料電池の状態、すなわち酸化物の還元状態を把握できるので、より好ましい。
なお、本発明において「始動直前」とは、燃料電池の燃料ガスが供給され電気化学反応による発電が開始する前までの期間であって、燃料電池システム全体の電源がオン状態にされた時をいう。「直前」は、必ずしも燃料電池の発電前のごく短い期間であることを要しないが、なるべく発電開始時に近い時点の方が正確な燃料電池の状態、すなわち酸化物の還元状態を把握できるので、より好ましい。
燃料電池における電極触媒に形成された酸化物が還元し得る還元促進電圧範囲に、燃料電池の出力端子電圧を維持して低効率発電を実施するに際しては、以下の要素を設けることが望ましい。
好適には、前記燃料電池の出力端子電圧を検出する電圧検出部と、前記燃料電池の該出力端子電圧を制御する電圧制御装置と、該電圧検出部において検出された該開放端電圧が前記基準電圧以上であった場合に、該電圧制御装置により前記燃料電池の該出力端子電圧を前記還元促進電圧範囲に設定する制御部とを備えている。
係る構成によれば、電圧検出部によって検出された開放端電圧が基準電圧以上であった場合に、制御部が、電圧制御装置に対して、燃料電池の出力端子電圧を還元促進電圧範囲に維持しての低効率発電を実施するための制御を行うことで、電極触媒に対する還元促進処理が自動的に行われ、電極触媒が酸化皮膜によって劣化しても、燃料電池の特性、例えば、I−V特性を回復させることができる。
好適には、前記制御部は、前記酸化物の還元が促進される所定時間、前記開放端電圧を前記還元促進電圧範囲に維持する。
係る構成によれば、制御部が、酸化物の還元が促進される所定時間、燃料電池の出力端子電圧を還元促進電圧範囲に維持することで、酸化皮膜によって電極触媒が劣化しても、燃料電池の特性、例えば、I−V特性を確実に回復させることができる。
好適には、前記燃料電池の電流−電圧特性に基づいて、前記低効率発電を解除可能に構成されている。
係る構成によれば、燃料電池の電流−電圧特性に基づいて燃料電池に対する低効率発電を解除することで、通常の発電モードに移行することができる。
好適には、前記燃料電池の出力電流を検出する電流検出部を備え、前記制御部は、前記燃料電池の前記出力端子電圧を所定電圧に維持した場合の前記燃料電池の出力電流値を所定の基準電流以上であった場合に、前記低効率発電を解除する。
係る構成によれば、制御部が、燃料電池の出力端子電圧を所定電圧に維持している過程で、電流検出部によって燃料電池の出力電流値が所定の基準電流値以上となったことが検出された場合に、低効率発電を解除することで、低効率発電から通常モードでの発電運転に自動的に移行することができる。
本発明によれば、電極触媒への酸化皮膜形成によって劣化した燃料電池の特性を回復させることができ、燃料電池の品質の向上に寄与することができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1を示す燃料電池システムのシステム構成図である。図1において、燃料電池システム10は、燃料電池20に燃料ガス(水素ガス)を供給するための燃料ガス供給系統と、燃料電池20に酸化ガス(空気)を供給するための酸化ガス供給系統と、燃料電池20を冷却するための冷却系統と、燃料電池20の発電電力を充電・消費するための電力系統とを備えて構成されている。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1を示す燃料電池システムのシステム構成図である。図1において、燃料電池システム10は、燃料電池20に燃料ガス(水素ガス)を供給するための燃料ガス供給系統と、燃料電池20に酸化ガス(空気)を供給するための酸化ガス供給系統と、燃料電池20を冷却するための冷却系統と、燃料電池20の発電電力を充電・消費するための電力系統とを備えて構成されている。
燃料電池20は、フッ素系樹脂などにより形成されたプロトン伝導性のイオン交換膜などから成る高分子電解質膜21の両面にアノード極22とカソード極23をスクリーン印刷などで形成した膜・電極接合体24を備えている。膜・電極接合体24の両面は、燃料ガス、酸化ガス、冷却水の流路を有するセパレータ(図示せず)によってサンドイッチされ、このセパレータとアノード極22およびカソード極23との間に、それぞれ溝状のアノードガスチャンネル25およびカソードガスチャンネル26を形成している。アノード極22は、燃料極用触媒層を多孔質支持層上に設けて構成され、カソード極23は、空気極用触媒層を多孔質支持層上に設けて構成されている。これら電極の触媒層は、例えば、白金粒子を付着して構成されている。アノード極22では、次の(1)式の酸化反応が生じ、カソード極23では、次の(2)式の還元反応が生じる。燃料電池20全体としては、次の(3)式の起電反応が生じる。
H2→2H++2e-・・・(1)
(1/2)O2+2H++2e-→H2O・・・(2)
H2+(1/2)O2→H2O・・・(3)
(1/2)O2+2H++2e-→H2O・・・(2)
H2+(1/2)O2→H2O・・・(3)
なお、同図では説明の便宜上、膜・電極接合体24、アノードガスチャンネル25およびカソードガスチャンネル26からなる単位セルの構造を模式的に図示しているが、実際には、上述したセパレータを介して複数の単位セルが直列に接続したスタック構造を備えている。
燃料電池システム10の冷却系統には、冷却水を循環させる冷却路31、燃料電池20から排水される冷却水の温度を検出する温度センサ32、冷却水の熱を外部に放熱するラジエータ(熱交換器)33、ラジエータ33へ流入する冷却水の水量を調整するバルブ34、冷却水を加圧して循環させる冷却水ポンプ35、燃料電池20に供給される冷却水の温度を検出する温度センサ36などが設けられている。
燃料電池システム10の燃料ガス供給系統には、アノードガスチャンネル25に燃料ガスを供給するための燃料ガス流路41と、アノードガスチャンネル25から排気される燃料オフガスを燃料ガス流路41に循環させるための循環流路(循環経路)51が配管されており、これらのガス流路によって燃料ガス循環系統が構成されている。
燃料ガス流路41には、燃料ガス供給装置42からの燃料ガスの供給/停止を制御する遮断弁(元弁)43、燃料ガスの圧力を検出する圧力センサ44、燃料ガスの圧力調整を行うレギュレータ45、燃料電池の燃料ガス供給口(入口)を開閉する遮断弁46などが設置されている。燃料ガス供給装置42は、例えば高圧水素タンク、水素吸蔵合金、改質器などより構成される。
循環流路51には、燃料電池20からの燃料オフガスを排出する遮断弁52、燃料オフガスから水分を回収する気液分離器53、気液分離器53によって回収した水を図示しないタンクに回収する排水弁54、モータによって駆動される循環ポンプ(加圧手段)55、燃料ガス流路41の燃料ガスが循環流路51側に逆流するのを防止する逆流阻止弁56などが設置されている。
循環ポンプ55は、制御部80の制御に基づき、アノードガスチャンネル25を通過する際に、圧力損失を受けた燃料オフガスを圧縮して適度なガス圧まで昇圧させ、燃料ガス流路41に還流させる。この燃料オフガスは、燃料ガス流路41で燃料ガス供給装置42から供給される燃料ガスと合流した後、燃料電池20に供給されて再利用される。
さらに、循環流路51には、燃料ガス循環系統から排気された燃料オフガスを、希釈器(例えば水素濃度低減装置)62を介して車外に排気するための排気流路61が分岐して配管されている。排気流路61には排気弁(排気手段)63が設置されており、燃料オフガスの排気制御を行えるように構成されている。排気弁63を開閉することで、燃料電池20内の循環を繰り返して、不純濃度が増加した燃料オフガスを外部に排出し、新規の燃料ガスを導入してセル電圧の低下を防止することができる。また、循環流路51の内圧に脈動を起こし、ガス流路に蓄積した水分を除去することもできる。
一方、燃料電池システム10の酸化ガス供給系統には、カソードガスチャンネル26に酸化ガスを供給するための酸化ガス流路71と、カソードガスチャンネル26から排気されるカソードオフガスを排気するためのカソードオフガス流路72が配管されている。酸化ガス流路71には、大気から取り込んだエアに含まれる粉塵などを除去するエアフィルタ74、モータによって駆動されるエアコンプレッサ75などから構成され、圧縮エアを酸化ガスとして酸化ガス流路71に供給する酸化ガス供給装置73が設置されている。
また、酸化ガス供給装置73の下流に配置された加湿器76では、燃料電池20の電池反応で生じた生成水によって高湿潤状態となったカソードオフガスと、大気より取り込んだ低湿潤状態の酸化ガスとの間で水分交換が行われる。カソードガスチャンネル26の背圧はカソードオフガス流路72に設置された圧力調整弁77によってほぼ一定圧に調圧される。カソードオフガス流路72を流れるカソードオフガスは、設計に応じて気液分離器78やマフラ79などを経由して車外に排気され、またその一部は希釈器62に流れ込み、希釈器62内に滞留する燃料オフガスを混合希釈して車外に排気される。
制御部80は、例えば、CPU(中央処理装置)、RAM、ROM,インターフェイス回路などを備えた汎用コンピュータで構成されており、各流路に設置された温度センサT、圧力センサPからのセンサ信号を受け取り、電池運転の状態、例えば、電力負荷に応じて各モータを駆動して循環ポンプ55とエアコンプレッサ75の回転数を調整し、さらに、各種の弁の開閉制御または弁開度の調整などを行うようになっている。
電源系統は、インバータ(トラクションインバータ)81、モータ(トラクションモータ)82、コンバータ(DC−DCコンバータ)83、バッテリ84、電圧センサ85、及び電流センサ86を備えている。インバータ81とコンバータ83はそれぞれ燃料電池20の出力端子に並列接続されている。インバータ81は、燃料電池20またはコンバータ83の出力による直流電流を3相交流に変換し、変換した3相交流によってモータ82を回転駆動する。モータ82は、例えば、3相モータで構成され、燃料電池システム10が搭載される自動車の主動力源となる。
コンバータ83は、1次側と2次側との間で電圧の昇圧/降圧を行って電力を流通させる電力変換手段として構成されている。例えば、コンバータ83は、1次側におけるバッテリ84の出力電圧を、2次側における燃料電池20の出力電圧まで昇圧し、逆に、2次側における燃料電池20の余剰電力やモータ82からの回生電力を、降圧して1次側のバッテリ84に充電するようになっている。
さらに、コンバータ83は、燃料電池20の出力端子電圧を制御する電圧制御装置として、制御部80からの電圧制御信号Vcに基づいて燃料電池20の出力端子電圧を可変に制御できるようになっている。この場合、制御部80は、燃料電池20の出力電圧を検出する電圧検出部としての電圧センサ85から電圧検出信号Vdを取り込むとともに、燃料電池20の出力電流を検出する電流検出部としての電流センサ86の電流検出信号Idを取り込み、取り込んだ各信号に基づいて電圧制御信号Vcを生成し、生成した電圧制御信号Vcをコンバータ83に出力する。例えば、制御部80は、電圧センサ85の検出による燃料電池20の開放端電圧が基準電圧、例えば、320V以上であったときには、燃料電池20における電極触媒に形成された酸化物が還元され得る還元促進電圧範囲に開放端電圧を維持しての低効率発電を実施するための制御を行う。
すなわち、燃料電池20の出力端子電圧が高い状態での運転、例えば、低速運転/停止を繰り返す街中運転などが行われることを考慮し、制御部80は、定期的に触媒活性化処理として、コンバータ83に対して、燃料電池20の出力端子電圧を還元促進電圧範囲に維持するための低効率発電運転を行うこととしている。
コンバータ83によって低効率発電運転を行うに際しては、エアコンプレッサ75の駆動を停止し、酸化ガス流路71から燃料電池20に対して酸化ガスが供給されるのを停止することとしている。すなわち、始動時に低効率発電を行うときには、燃料電池20に対する酸化ガス(空気)の供給量を限界以下まで落として、燃料電池20の総電圧(FC総電圧)を、例えば、200V以下まで下げることとしている。
一方、コンバータ83の2次側電圧は、制御部80からの電圧制御信号Vcによって可変に制御されるようになっているが、コンバータ83の出力端子と燃料電池20の出力端子とが並列接続されているため、コンバータ83の出力電圧が燃料電池20の発電電圧に達していないときには、コンバータ83の出力電圧は燃料電池20の発電電圧によって規制されるようになっている。逆に、燃料電池20の発電電圧がコンバータ83の出力電圧よりも高いときには、燃料電池20の発電電圧は強制的にコンバータ83の出力電圧に規制され、燃料電池20のI−V特性にしたがって電流値が上昇する。すなわち、コンバータ83の出力電圧(2次側電圧)は、燃料電池20の発電電圧の上限値を規定するようになっている。
(動作の説明)
次に、実施形態1における触媒活性化処理を図2のフローチャートに基づいて説明する。この触媒活性化処理を定期的に行うに際して、制御部80は、まず、始動時か否かを、スタートキー(図示せず)が入ったか否かで判定し(S1)、始動時であるときには、電圧センサ85の電圧検出信号Vdを基に燃料電池20の始動直前、すなわち発電開始前の開放端電圧(OCV)を検出する(S2)。
次に、実施形態1における触媒活性化処理を図2のフローチャートに基づいて説明する。この触媒活性化処理を定期的に行うに際して、制御部80は、まず、始動時か否かを、スタートキー(図示せず)が入ったか否かで判定し(S1)、始動時であるときには、電圧センサ85の電圧検出信号Vdを基に燃料電池20の始動直前、すなわち発電開始前の開放端電圧(OCV)を検出する(S2)。
ここで、燃料電池20の開放端電圧は、図3に示すように、通常運転時に400Vであっても、タイミングt0で燃料電池20の運転が停止されると徐々に低下する。この間、燃料電池20の発電停止中に燃料電池の電解質膜における触媒層において還元作用が進行し、触媒表面に形成されていた酸化皮膜が除去されていく。
通常の使用では、燃料電池20の運転停止後、一定期間放置されるため、酸化皮膜は十分除去され、燃料電池20の始動直前における開放端電圧は十分に低くなっている。ところが、短いインターバルで運転停止と運転再開とを繰り返す街中運転等のような運転状態が続くと、十分な還元反応の時間が与えられないため、触媒表面から酸化皮膜が十分除去されず、始動直前における燃料電池20の開放端電圧は相対的に高くなってしまう。このような状態では、燃料電池20のI−V特性が劣化し、発電効率が低下してしまう。そこで、本願発明では、燃料電池20の始動直前の開放端電圧が所定の基準電圧Vth以上であるか否かに基づいて触媒活性化処理の有無を決定する。
すなわち、燃料電池20の運転が停止されたあと、タイミングt1で燃料電池20が始動(再起動)の指示がされたときには、制御部80は、タイミングt1で検出された開放端電圧(OCV)が基準電圧Vth以上か否かを判定する(S3)。開放端電圧(OCV)が基準電圧Vth以上のときには、制御部80は、燃料電池20における電極触媒に形成された酸化物が還元され得る還元促進電圧範囲に維持しての低効率発電を実施するために、燃料電池20の出力端子電圧を還元促進電圧範囲、例えば、0〜320V未満に設定するための電圧制御信号Vcをコンバータ83に出力する(S4)。このとき制御部80は、エアコンプレッサ75に対して停止信号を出力する。
次に、コンバータ83は、燃料電池20の開放端電圧を還元促進電圧範囲に維持するために、出力電圧を下げるための低効率発電運転を実施する(S5)。低効率発電運転が実施されると、コンバータ83の出力電圧の低下に伴って燃料電池20の開放端電圧が漸次低下する。さらに、燃料電池20に対する酸化ガスの供給が停止されることに伴って、燃料電池20の開放端電圧が漸次低下する。燃料電池20の開放端電圧の低下により、燃料電池20の開放端電圧が還元促進電圧範囲に維持されると、触媒層における還元反応が促進され、触媒層の活性化が進行する。
燃料電池20の出力端子電圧を還元促進電圧範囲に維持するための低効率発電運転が所定時間実施されると、還元反応によって触媒中の酸素を取り除くことができ、各セルの端子電圧、すなわち燃料電池20の出力電圧を下げて電流量を増加させることができる。この結果、触媒層の電気化学反応を、通常運転時の酸化反応領域から還元反応領域に遷移させて、触媒層を確実に活性化することができる。
次に、制御部80は、燃料電池20の出力端子電圧を還元促進電圧範囲に維持するための低効率発電運転が所定時間経過したか否かを判定し(S6)、低効率発電運転が所定時間実施されたあとは、低効率発電運転を解除するための処理を行い(S7)、このルーチンでの処理を終了する。
一方、制御部80は、ステップSにおいて、図3のタイミングt2に示すように、始動(再起動)指示がされ燃料電池の発電が開始する直前の開放端電圧(OCV)が基準電圧Vthよりも低くなった判定したときには、通常モードの運転に移行し(S8)、このルーチンでの処理を終了する。
実施形態1によれば、燃料電池20の始動直前の開放端電圧(OCV)が所定の基準電圧値Vth以上であった場合に、燃料電池20の出力端子電圧を電極触媒に形成された酸化物が還元され得る触媒促進電圧範囲に維持するための低効率発電運転を実施することで、電極触媒(触媒層)の活性化が促進され、燃料電池20の特性、例えば、I−V特性を回復させることができ、燃料電池20の品質の向上に寄与することができる。
また、実施形態1によれば、燃料電池20の始動直前の開放端電圧(OCV)が所定の基準電圧値Vth以上であった場合に、燃料電池20の出力端子電圧を電極触媒に形成された酸化物が還元され得る触媒促進電圧範囲に維持するための低効率発電運転を実施するとともに、燃料電池20に対する酸化ガスの供給を停止するようにしているため、燃料電池20の特性、例えば、I−V特性を迅速に回復させることができる。
(実施形態2)
本発明の実施形態2は、燃料電池20の出力電流に基づいて、触媒活性化処理の有無を決定するものである。
実施形態2における触媒活性化処理を図4のフローチャートにしたがって説明する。
本実施形態2では、燃料電池20の出力電流を測定するため、消費電力の安定した、消費電力値(電流値でもよい)の予め判っている負荷装置を接続状態にしておくことが前提である。
本発明の実施形態2は、燃料電池20の出力電流に基づいて、触媒活性化処理の有無を決定するものである。
実施形態2における触媒活性化処理を図4のフローチャートにしたがって説明する。
本実施形態2では、燃料電池20の出力電流を測定するため、消費電力の安定した、消費電力値(電流値でもよい)の予め判っている負荷装置を接続状態にしておくことが前提である。
本実施形態における触媒活性化処理では、ステップS11〜S16までは、図2のステップS1〜S6と同一の処理が行われる。この後、制御部80は、燃料電池20の開放端電圧を還元促進電圧範囲に維持するための低効率発電運転を所定時間行った判定したとき、電圧センサ85の検出による電圧検出信号Vdと電流センサ86の検出による電流検出信号Idを取り込み(S17)、燃料電池20の出力端子電圧を所定電圧V0に維持する過程で、燃料電池20の出力電流値が所定の基準電流値Ith以上か否かを判定する(S18)。
このとき、制御部80は、図5に示すように、検出された電流値I1が、基準電流Ithよりも小さいときには、燃料電池20の特性が、酸化被膜で悪化したI−V特性100であるとして、ステップS15に戻り、低効率発電運転を継続する。一方、制御部80は、検出電流I2が基準電流Ithを超えたときには、燃料電池20の特性が、改善されたI−V特性102にあるとして、低効率発電運転を解除し(S19)、このルーチンでの処理を終了する。
なお、燃料電池20の始動直前にステップS12にて検出された開放端電圧(OCV)が、ステップS13において、基準電圧Vthよりも低くなったと判定されたときには、実施形態1と同様に、通常モードの発電運転に移行し(S20)、このルーチンでの処理を終了する。
上記実施形態2によれば、実施形態1と同様の効果が得られるとともに、制御部80が、燃料電池20の出力端子電圧を所定電圧V0に維持している過程で、電流センサ86によって燃料電池20の出力電流値が所定の基準電流値Ith以上となったことが検出された場合に、低効率発電運転を解除することで、低効率発電運転から通常モードでの発電運転に自動的に移行することができる。
特に本実施形態2によれば、燃料電池20から出力電流を流しながら触媒活性化処理の必要性の有無を判定できるので、燃料電池20の電力系統からシステムを完全に切り離すことができないような場合でも触媒活性化処理の有無を決定できるという利点がある。
10 燃料電池システム、20 燃料電池、80 制御部、81 インバータ、82 モータ、83 コンバータ、84 バッテリ、85 電圧センサ、86 電流センサ
Claims (5)
- 燃料電池を備えた燃料電池システムであって、該燃料電池の始動直前の開放端電圧が所定の基準電圧値以上であった場合に、前記燃料電池における電極触媒に形成された酸化物が還元され得る還元促進電圧範囲に維持しての低効率発電を実施可能に構成されている燃料電池システム。
- 請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、
前記燃料電池の出力端子電圧を検出する電圧検出部と、
前記燃料電池の該出力端子電圧を制御する電圧制御装置と、
該電圧検出部において検出された該開放端電圧が前記基準電圧以上であった場合に、該電圧制御装置により前記燃料電池の該出力端子電圧を前記還元促進電圧範囲に設定する制御部とを備えたことを特徴とする燃料電池システム。 - 請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、
前記制御部は、前記酸化物の還元が促進される所定時間、前記開放端電圧を前記還元促進電圧範囲に維持することを特徴とする燃料電池システム。 - 請求項1または2に記載の燃料電池システムにおいて、
前記燃料電池の電流−電圧特性に基づいて、前記低効率発電を解除可能に構成されていることを特徴とする燃料電池システム。 - 請求項4に記載の燃料電池システムにおいて、
前記燃料電池の出力電流を検出する電流検出部を備え、
前記制御部は、前記燃料電池の前記出力端子電圧を所定電圧に維持した場合の前記燃料電池の出力電流値を所定の基準電流以上であった場合に、前記低効率発電を解除することを特徴とする燃料電池システム。
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