以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る燃料電池システムの構成図である。同図に示す燃料電池システムは、固体高分子電解質膜を挟んで燃料ガスの供給を受ける燃料極と酸化剤ガスの供給を受ける酸化剤極とを有し燃料電池構造体(燃料電池セル)をセパレータで挟持して、これを複数積層して構成される燃料電池スタック1を備える。この燃料電池スタック1は、燃料極に燃料ガスが供給されるとともに、酸化剤極に酸化剤ガスが供給され、これらガスを電気化学的に反応させることにより発電を行う。本実施形態では、燃料ガスとして水素を、酸化剤ガスとして酸素(具体的には、酸素を含む空気)を用いるケースについて説明する。この燃料電池システムは、例えば、車両を駆動する電動モータの電源として、車両に搭載される。
燃料電池システムには、燃料電池スタック1に水素を供給するための水素系10と、燃料電池スタック1に空気を供給するための空気系20と、制御装置3と、各センサ32,34,35とが備えられている。
水素系10において、燃料ガスである水素は、燃料供給装置(例えば、高圧水素ボンベである燃料タンク)11から、水素供給流路L10を介して燃料電池スタック1に供給される。具体的には、燃料タンク11の下流の水素供給流路L10には水素供給弁12が設けられており、この水素供給弁12が開状態となると、燃料タンク11からの高圧水素ガスが、その下流に設けられた減圧弁(図示せず)によって機械的に所定の圧力まで減圧される。減圧された水素は、減圧弁よりも下流に設けられた水素調圧弁13によって更に減圧された後に、燃料電池スタック1に供給される。水素供給弁12は、燃料電池スタック1への水素供給の必要性に応じて、制御装置3によってその開閉状態が制御され、また、水素調圧弁13は、燃料電池スタック1へ供給される水素圧力が所望の値となるように、制御装置3によってその開度が制御される。
燃料電池スタック1の燃料極側から排出されるガス(未使用の水素を含む排出ガス)は、水素循環流路L11へと排出される。この水素循環流路L11は、他方の端部が水素調圧弁13よりも下流側の水素供給流路L10に接続されている。水素循環流路L11には、例えば、水素循環ポンプ14およびエゼクタ15といった水素循環手段が設けられている。この水素循環手段により、燃料極の排出側から排出された水素はその供給側へと循環され、水素の燃費向上を図ることができる。
ところで、酸化剤ガスとして空気を用いた場合、空気中の窒素が酸化剤極から燃料極に透過するため、水素系10におけるガスの窒素濃度が増加し、水素分圧が減少する傾向となる。そのため、水素循環流路L11には、水素系10内のガスを外部に排出する水素排出流路L12が接続されている(換言すれば、水素循環流路L11の一部は、燃料極から水素を排出する水素排出流路L12としての機能を担う)。水素排出流路L12には、パージ弁16が設けられており、このパージ弁16の開閉状態を切り替えることにより、水素循環流路L11を流れる排出ガス(窒素、未使用な水素等を含むガス)が外部に排出される。パージ弁16は、燃料電池スタック1の運転状態に応じて、その開閉状態が制御装置3によって制御される。パージ弁16は、基本的に閉状態に制御されているが、燃料極における窒素濃度を推定して、或いは、所定の周期毎に、必要に応じて閉状態から開状態へと切り替えられる。これにより、未反応な水素とともに窒素が水素系からパージされ、水素分圧の減少を抑制することができる。
空気系20において、酸化剤ガスである空気は、例えば、大気がコンプレッサ21によって取り込まれて加圧されると、この加圧状態の空気が、空気供給流路L20を介して燃料電池スタック1に供給される。燃料電池スタック1の酸化剤極側から排出されるガス(酸素の一部が消費された空気)は、空気排出流路L21を介して外部(大気)に排出される。この空気排出流路L21には、空気調圧弁22が設けられている。空気調圧弁22は、燃料電池スタック1に供給される空気圧力と空気流量とが所望の値となるように、その開度が、コンプレッサ21の駆動量(回転数)とともに制御装置3によって制御される。
空気系入口弁23は、空気供給流路L20に設けられており、自己の開閉状態に応じて、この流路を開閉する。これにより、空気系入口弁23は、空気供給流路L20から燃料電池スタック1への外気の進入を規制することができる。また、空気系出口弁24は、空気排出流路L21に設けられており、自己の開閉状態に応じて、この流路を開閉する。これにより、空気系出口弁24は、空気排出流路L21から燃料電池スタック1への外気の進入を規制することができる。
制御装置3は、電流取出部30と、メイン制御部(制御手段)31と、ガス組成推定部(ガス組成推定手段)33とを主体に構成されている。電流取出部30は、メイン制御部31によって制御され、燃料電池スタック1から電流を取り出すユニットである。メイン制御部31は、システム全体を統合的に制御するユニットである。このメイン制御部31は、制御プログラムに従い、システムの各部を制御することにより、燃料電池スタック1の運転状態を制御する。メイン制御部31には、燃料電池システムの運転状態を検出するために、各種センサからの検出信号が入力されている。ガス組成推定部33は、燃料電池スタック1内のガスの組成を推定するものである。このガス組成推定部33は、第1〜第3推定方法によりガス組成を推定するようになっており、特に第2推定方法および第3推定方法を実行する場合には、電圧センサ32からの検出信号に基づいてガス組成を推定するようになっている。
ここで、電圧センサ32は、以下の図2〜図5のいずれかに示すように設置されている。図2は、図1に示した電圧センサ32の設置例を示す第1の図であり、(a)は第1の例を示し、(b)は第2の例を示している。まず、電圧センサ32の設置の様子を説明するに先だって、燃料電池スタック1について説明する。図2(a)および(b)に示す燃料電池スタック1は、空気を流通させるスタック内空気流路(スタック内ガス流路)を有しており、スタック内空気流路を通じて酸素を各セルに供給する構成となっている。
電圧センサ32は、スタック内空気流路の入口及び出口近傍に位置するセルの電圧を検出するように設置されている。すなわち、スタック内空気流路の入口には酸化剤ガス給気マニホールド1aが設置され、スタック内空気流路の出口には酸化剤ガス排気マニホールド1bが設置されており、電圧センサ32は、酸化剤ガス給気マニホールド1a及び酸化剤ガス排気マニホールド1bの近傍のセル電圧を検出するように設けられている。なお、電圧センサ32は、スタック内空気流路の入口近傍及び出口近傍のいずれか一方のセル電圧を検出するように設けられていてもよい。
また、電圧センサ32は、スタック内空気流路の入口と出口との中間地点のセルを検出するように設置されている。すなわち、電圧センサ32は、酸化剤ガス給気マニホールド1aと酸化剤ガス排気マニホールド1bとの中間地点のセル電圧を検出するように設けられている。なお、電圧センサ32は、セル電圧を検出するのに代えて、各セルを含む複数のセルからなるサブスタックの電圧を検出するようにされていてもよい。
図3は、図1に示した電圧センサ32の設置例を示す第2の図であり、(a)は第1の例を示し、(b)は第2の例を示している。図3に示す例は図2に示す例とほぼ同じである。まず、電圧センサ32の設置の様子を説明するに先だって、燃料電池スタック1について説明する。図3(a)および(b)に示す燃料電池スタック1は、水素ガスを流通させるスタック内水素流路(スタック内ガス流路)を有しており、スタック内水素流路を通じて水素ガスを各セルに供給する構成となっている。
電圧センサ32は、スタック内水素流路の入口及び出口近傍に位置するセルの電圧を検出するように設置されている。すなわち、スタック内水素流路の入口には水素ガス給気マニホールド1cが設置され、スタック内水素流路の出口には水素ガス排気マニホールド1dが設置されており、電圧センサ32は、水素ガス給気マニホールド1c及び水素ガス排気マニホールド1dの近傍のセル電圧を検出するように設けられている。なお、電圧センサ32は、スタック内水素流路の入口近傍及び出口近傍のいずれか一方のセル電圧を検出するように設けられていてもよい。
また、電圧センサ32は、スタック内水素流路の入口と出口との中間地点のセルを検出するように設置されている。すなわち、電圧センサ32は、水素ガス給気マニホールド1aと水素ガス排気マニホールド1bとの中間地点のセル電圧を検出するように設けられている。なお、電圧センサ32は、セル電圧を検出するのに代えて、各セルを含む複数のセルからなるサブスタックの電圧を検出するようにされていてもよい。
図4は、図1に示した電圧センサ32の設置例を示す第3の図であり、(a)は第1の例を示し、(b)は第2の例を示し、(c)は第3の例を示している。同図(a)〜(c)に示すように、電圧センサ32は、セル電圧を複数箇所において検出すると共に、複数の検出箇所が燃料電池スタック1のセルの積層方向にそれぞれ異なっている。なお、図4(c)に示すように、外付けのセル1eを備え、外付けのセル1eの電圧を検出することで、セル電圧を複数箇所において検出し、複数の検出箇所がセルの積層方向にそれぞれ異なるようになっていてもよい。また、セル電圧に代えて、複数のセルからなるサブスタック電圧を複数箇所において検出するようになっていてもよい。
図5は、図1に示した電圧センサ32の設置例を示す第4の図であり、(a)は第1の例を示し、(b)は第2の例を示している。まず、電圧センサ32の設置の様子を説明するに先だって、燃料電池スタック1について説明する。図5(a)に示す燃料電池スタック1は、水素ガスまたは空気のうちの一方の供給ガスを流通させるスタック内ガス流路を有しており、スタック内ガス流路を通じて供給ガスを各セルに供給する構成となっている。
特に、燃料電池スタック1は、スタック内ガス流路の配索方向に見た場合に入口または出口から同一距離の位置において2以上のセルが絶縁配置されている。電圧センサ32は、この絶縁配置される2以上のセルのうち複数のセルについて電圧を検出する。
なお、図5(b)に示すように、他のセルと絶縁される外付けのセル1eを備え、外付けのセル1eの電圧を検出することで、スタック内ガス流路の配索方向に見た場合に入口または出口から同一距離の位置の複数のセルについて電圧を検出するようにしてもよい。また、セル電圧に代えて、複数のセルからなるサブスタック電圧を複数箇所において検出するようになっていてもよい。
再度、図1を参照する。水素圧力センサ34は、水素供給流路L10に設けられており、燃料電池スタック1の燃料極に供給される水素の圧力を検出するものである。空気圧力センサ35は、空気供給流路L20に設けられており、燃料電池スタック1の酸化剤極に供給される空気の圧力を検出するものである。
次に、本発明の実施形態に係る燃料電池システムの動作を説明する。燃料電池システムの停止動作、燃料電池システム停止中の動作、燃料電池システムの再起動時の動作の順に説明する。
まず、燃料電池システムの停止動作を説明する。燃料電池システムを停止させて長時間放置した場合、燃料電池スタック1の内部に空気が流入してくる。そして、燃料電池スタック1の内部の水素ガスと空気中の酸素とが反応して水が生成されるため、燃料電池スタック1の内部から水素ガスが無くなっていく。このため、燃料電池スタック1内は、空気で満たされることとなる。
そして、両極に空気が存在する状態で燃料電池システムを再起動させて燃料極側に水素ガスを供給すると、燃料極側のうち水素が存在しない領域と対峙する酸化剤極側において、
C+2H2O→CO2+4H++4e− (1)
という反応が生じ、白金等の触媒を担持しているカーボン担体の腐食が起こり、燃料電池スタック1を劣化させてしまう。
そこで、本実施形態に係る燃料電池システムでは、両極が空気で満たされにくくなるように、システム停止時に両極を水素ガスで満たすようにする。具体的に説明すると、メイン制御部31が水素供給弁12を開状態とする。さらに、メイン制御部31は、水素供給弁12の開度を制御し、水素ガスを燃料電池スタック1の燃料極側に供給する。また、燃料極側に供給された水素ガスはクロスリークして酸化剤極側に至る。このため、酸化剤極にも水素ガスを行き渡らせることができる。このように、燃料電池システムは、両極を水素雰囲気としたうえで、停止することとなる。なお、このとき、メイン制御部31はパージ弁16、空気系入口弁23および空気系出口弁24を閉状態とする。
次に、燃料電池システム停止中の動作について説明する。燃料電池システムの停止中においてガス組成推定部33は、燃料電池スタック1内のガスの組成を推定する。図6は、燃料電池システム停止中におけるガス組成の変化を示す図である。図6に示すように、燃料電池スタック1は密閉性が高いものであるが、僅かな隙間などから両極に空気が侵入してくる。
特に、酸化剤極側より燃料極側の密閉性が低い場合、燃料極側は、水素雰囲気から水素と窒素とからなる雰囲気に変化し、その後、窒素雰囲気、窒素と酸素とからなる雰囲気、及び空気雰囲気の順に変化する(図6符号a参照)。そして、燃料極側の空気がクロスリークして酸化剤極に至り、酸化剤極側は、水素雰囲気、水素と窒素とからなる雰囲気、窒素雰囲気、窒素と酸素とからなる雰囲気、及び空気雰囲気の順に変化する(図6符号b参照)。
逆に、燃料極側より酸化剤極側の密閉性が低い場合、先に酸化剤極側が空気雰囲気に変化し(図6符号c参照)、その後酸化剤極側の空気がクロスリークして、燃料極側が空気雰囲気となる(図6符号d参照)。また、双方の密閉性が同程度である場合、両極が同時に水素雰囲気、水素と窒素とからなる雰囲気、窒素雰囲気、窒素と酸素とからなる雰囲気、及び空気雰囲気の順に変化していく(図6符号e参照)。
このように、燃料電池システムの停止時において両極に水素ガスを充満させても燃料電池システムの停止中にガス組成が変化してしまい、システムを再起動するときに触媒劣化などの不都合が生じてしまう。そこで、再起動時に触媒劣化等を起こさないように、システム停止中のガス組成を推定し、燃料電池システムを適切に保管することを行う。このガス組成の推定にあたり、ガス組成推定部33は、第1〜第3推定方法を実行する。
まず、第1推定方法について説明する。ガス組成推定部33は、システムを停止してからの経過時間が所定時間未満か否かに基づいてガス組成を推定する(第1推定方法)。図7は、図1に示したガス組成推定部33による第1推定方法を説明する図である。図7において縦軸は両極とも水素雰囲気である確率(%)を示し、横軸はシステム停止からの経過時間(h)を示している。経過時間が短い場合には、ガス組成に変化が少ないと推定できる。すなわち、ガス組成推定部33は、経過時間が所定時間xh未満である場合には、燃料電池スタック1内が水素ガスで満たされていると推定することとなる。
次に、第2推定方法について説明する。ガス組成推定部33は、システム停止中での燃料電池スタック1の開放電圧が所定電圧未満であるか否かに基づいてガス組成を推定する(第2推定方法)。燃料電池スタック1の開放電圧が略零(所定電圧未満)でないと一方の極に水素ガスが存在し他方の極に酸素ガスが存在すると推定できる。図8は、図1に示したガス組成推定部33による第2推定方法を説明する図である。ガス組成推定部33は、図8に示す破線部分のように開放電圧が約1V弱となる場合(所定電圧未満でない場合)、一方の極に水素ガスが存在し他方の極に酸素ガスが存在すると推定し、白抜き部分のように開放電圧が所定電圧未満(例えば0.15V未満)となる場合、双方の極に同様のガスが存在すると推定する。
次に、第3推定方法について説明する。ガス組成推定部33は、システム停止中での所定負荷に応じた燃料電池スタック1の電圧変化速度が所定値未満か否かに基づいてガス組成を推定する(第3推定方法)。システム停止中での所定負荷に応じた燃料電池スタック1の電圧変化速度は、両極に水素ガスが存在する場合と両極に酸素ガスが存在する場合とで比較すると前者の方が低くなる傾向にある。
図9は、図1に示したガス組成推定部33による第3推定方法を説明する図である。図9において縦軸はセル電圧を示し、横軸は時間を示している。図9に示すように、システム停止中での所定負荷に応じた燃料電池スタック1の電圧は、両極が酸素雰囲気である場合よりも水素雰囲気である方が低くなる傾向にある。
図10は、図9の破線部分の拡大図である。図10において縦軸はセル電圧を示し、横軸は時間を示している。電圧変化速度について、両極が水素雰囲気である場合と酸素雰囲気である場合とを比較すると、時刻0〜時刻αでは水素雰囲気である方が電圧変化速度が高い。しかし、時刻α以降では水素雰囲気である方が電圧変化速度が低い。このため、ガス組成推定部33は、このような傾向に基づいて両極が水素雰囲気であるか、酸素雰囲気であるかを推定する。すなわち、時刻0〜時刻αの電圧変化速度を測定することは困難であるため、ガス組成推定部33は、時刻α以降の電圧変化速度を測定し、電圧変化速度が所定値未満であるである場合に、両極が水素雰囲気であると推定する。
図11は、両極が酸素雰囲気であるときの電圧の変化速度を示す図である。図11において縦軸はセル電圧を示し、横軸は時間を示している。同図に示すように、両極が酸素雰囲気であるとき、電流密度の大きさに応じて電圧の変化速度が大きく変化する傾向がある。すなわち、電流密度が小さくなるほど電圧の変化速度が顕著に遅くなる傾向(電圧の安定が遅くなり、変化速度は大きくなる傾向)がある。これに対して両極が水素雰囲気であるとき、電流密度の大きさに応じて電圧の変化速度はあまり変化しない。従って、第3推定方法によりガス組成を推定する場合には、電流密度の大きさを適切とし、両極が酸素雰囲気であるときと水素雰囲気であるときとの差が明確となるようにすることが望ましい(すなわち定電流密度とすることが望ましい)。
また、ガス組成推定部33は、最初に第1推定方法を実行し、システム停止からの経過時間が所定時間xh未満でない場合に第2推定方法を実行し、開放電圧が略零(所定電圧未満)である場合に第3推定方法を実行することが望ましい。これにより、以下の利点がある。すなわち、最初に第1推定方法を実行して経過時間が所定時間未満である場合、ガス組成に変化が少ないと推定できる。従って、システム停止時に両極に水素ガスを封入した場合には、両極が水素雰囲気である推定することができる。一方、経過時間が所定時間未満でない場合、ガス組成に変化があると考えられるため、第2推定方法を実行する。そして、開放電圧が略零でない場合、一方の極に水素ガスが存在し他方の極に酸素ガスが存在すると推定できる。逆に、開放電圧が略零である場合、双方の極に水素ガスが存在し、または双方の極に空気が存在すると考えられる。このため、第3推定方法を実行する。ここで、電圧変化速度は、両極に水素ガスが存在する場合と両極に空気が存在する場合とで比較すると前者の方が低くなる傾向にある。以上より、不要な推定方法を実行することなく適切な順序でガス組成を推定することができる。
なお、第2推定方法において検出される開放電圧及び第3推定方法において検出される電圧変化速度は、前述の電圧センサ32に基づいて検出される。すなわち、電圧センサ32が図2に示す構成を有している場合、ガス組成推定部33は、スタック内空気流路の入口若しくは出口近傍に位置するセル、または入口若しくは出口近傍に位置するセルを含む複数のセルからなるサブスタック、および、スタック内空気流路の入口と出口との中間地点のセル、または中間地点のセルを含む複数のセルからなるサブスタックから、電圧を検出することとなる。ここで、システム停止時に両極に水素ガスを封入しているため、スタック内空気流路のガスは、入口または出口近傍から空気に置換されていく。一方、スタック内空気流路の中間部は、最後に空気に置換されていく。このため、これらの各所のセルまたはサブスタック電圧を検出することで、入口または出口近傍と中間地点との双方のガス組成を推定することができ、一層正確にスタック内のガス組成を推定することができる。また、電圧センサ32が図3に示す構成を有している場合も同様である。
また、電圧センサ32が図4に示す構成を有している場合、ガス組成推定部33は、セル電圧、または複数のセルからなるサブスタック電圧を複数箇所において検出することとなる。なお、前述したように、複数の検出箇所は燃料電池スタック1のセルの積層方向にそれぞれ異なっている。ここで、スタック内ガス流路はセルの積層方向に配索されていることが多い。また、スタック内ガス流路は入口や出口に近いほど外部からの酸化剤ガスが流入しやすくなり、ガス組成が変化しやすくなっている。よって、積層方向に複数箇所セル電圧やサブスタック電圧を検出することで、スタック内の流路に沿ってセル電圧やサブスタック電圧を検出することとなり、各箇所のガス組成を推定して、一層正確にスタック内のガス組成を推定することができる。
さらに、電圧センサ32が図5に示す構成を有している場合、ガス組成推定部33は、スタック内ガス流路の配索方向に見た場合に入口または出口から同一距離の位置において絶縁配置される2以上のセルのうち複数のセルについて電圧を検出することとなる。ここで、絶縁配置される2以上のセルは、スタック内ガス流路の入口または出口から同一距離の位置していることから、外部から空気が流入した場合、同程度の量の空気がそれぞれのセルに行き渡ると考えられる。ところが、絶縁配置される2以上のセルには必ずしも同程度の量のガスが行き渡るとは言えず、それぞれに行き渡るガス量が異なることがある。すなわち、スタック内ガス流路の入口または出口から同一距離に位置しているセルのガス組成は同じではなく異なっていることがある。このため、絶縁配置される2以上のセルのうち複数のセルについて電圧を検出することで、スタック内ガス流路の配索方向に見た場合に入口または出口からの距離が同一であっても、それぞれの箇所でのガス組成を推定することができる。
また、燃料電池システムの停止中において、ガス組成推定部33は、適切なタイミングでガス組成を推定するようになっている。具体的にガス組成推定部33は、ガス組成を推定する頻度を、システム停止してから再起動されるまでの時間と再起動回数との相関、および、システム停止してからの経過時間とその経過時間に応じたガス組成との相関の少なくとも一方から決定する。
図12は、システム停止してから再起動されるまでの経過時間と再起動回数(再起動頻度)との相関を示す図であり、ガス組成の推定頻度を説明する図である。図12において縦軸は再起動頻度(%)を示し、横軸は経過時間(h)を示している。図12に示すように、例えばシステム利用者は経過時間1h〜4hの期間において燃料電池システムを再起動する傾向がある。後述するように、本実施形態に係る燃料電池システムはガス組成に応じて再起動方法が異なっている。このため、利用者が頻繁に再起動を行う時間帯では頻繁にガス組成の推定を行って再起動に備えておくことが望ましい。よって、ガス組成を推定する頻度を、システム停止してから再起動されるまでの時間と再起動回数との相関から決定すると、好適な再起動を行うことができる。
図13は、システム停止してからの経過時間とその経過時間に応じたガス組成との相関を示す図であり、ガス組成の推定頻度を説明する図である。図13において縦軸は両極とも水素雰囲気である確率(%)を示し、横軸は経過時間(h)を示している。例えばシステム停止時に両極に水素ガスを封入しているため、経過時間が短ければ両極に水素ガスが存在していると言える。すなわち、経過時間が短ければ水素ガスが存在していることがわかっているのだから、ガス組成を推定する必要性が少なく、ガス組成を推定する頻度を少なくしてもよい。逆に外部から酸化剤ガスが流入してガス組成が急激に変化するような時間(図13:経過時間5h〜15h)ではガス組成を推定する頻度を多くした方が望ましい。これにより、好適にガス組成を知ることができるからである。
また、燃料電池システムの停止中において、メイン制御部31は、ガス組成推定部33により推定されたガス組成に基づいて、水素ガス濃度が第1所定濃度未満と判断された場合、燃料極側に水素ガスを供給する。これにより、両極を再度水素雰囲気とすることができる。
さらに、メイン制御部31は、燃料極側に水素ガスを供給する場合、燃料極と酸化剤極とを電気的に短絡させることが望ましい。電気的に短絡させることにより、
燃料極側 :H2→2H++2e− (2)
酸化剤極側:2H++2e−→H2 (3)
なる反応を起こすことができ、クロスリークのみでなく水素ガスを積極的に酸化剤極側に移行させることができるからである。
さらに、メイン制御部31は、さらに、システム停止してから再起動されるまでの時間と再起動回数との相関、および、システム停止してからの経過時間とその経過時間に応じたガス組成との相関の少なくとも一方から燃料極側に水素ガスを供給するかを決定することが望ましい。
図14は、システム停止してから再起動されるまでの時間と再起動回数(再起動頻度)との相関を示す図であり、水素ガスを供給するかを決定する処理を説明する図である。図14において縦軸は再起動頻度(%)を示し、横軸は経過時間(h)を示している。図14の符号aに示すように、例えばシステム利用者は経過時間1h〜4hの期間において燃料電池システムを再起動する傾向があるとする。この場合、経過時間1h〜4hの期間において水素ガス濃度が第1所定濃度未満と判断された場合、メイン制御部31は、積極的に水素ガスを供給させて、燃料電池スタック1の両極を水素雰囲気とする。逆に、システム利用者は経過時間50h以降において燃料電池システムを再起動する傾向があるとする(図14の符号b参照)。この場合、経過時間が10h未満の場合に水素ガスを供給しても、供給後に再度燃料電池スタック1に空気が流入して水素ガスを消費してしまう。このため、メイン制御部31は、水素ガスを供給させないようにする。このように、水素ガスの供給を調整することで、無駄な水素ガスの消費を抑制することができる。
図15は、システム停止してからの経過時間とその経過時間に応じたガス組成との相関を示す図であり、水素ガスを供給するかを決定する処理を説明する図である。図15において縦軸は両極とも水素雰囲気である確率(%)を示し、横軸は経過時間(h)を示している。
図15に示すように燃料電池スタック1が破損等していない場合(正常時の場合)、経過時間が3h未満において両極は共に水素雰囲気であるはずである。ところが、経過時間が3h未満であるにも拘わらず両極が空気で満たされている場合、燃料電池スタック1には破損等があると考えられる。このような場合、燃料極側に水素ガスを供給してもすぐに水素ガスが漏れだしてしまう。このため、ガス組成推定部33は、水素ガスの供給を行わないなどをすることができる。
次に、燃料電池システムの再起動時の動作を説明する。燃料電池システムは、再起動時のガス組成に応じて再起動方法を変更するようになっている。まず、ガス組成推定部33により両極の水素ガス濃度が第2所定濃度以上であると判断されている場合、メイン制御部31は、水素ガスに先だって空気の供給を開始させ、または、水素ガスの供給と空気の供給とを同時に開始させる(以下、この起動方法を第1起動方法という)。ここで、通常の再起動方法では、燃料電池システムを放置したことにより両極が空気雰囲気であると考えられるため、燃料極側に水素ガスを供給し、燃料極側を水素雰囲気とし、酸化剤極側を空気雰囲気とし、その後電流を取り出す制御を行うこととなる。ところが、両極の水素ガス濃度が第2所定濃度以上である場合では、水素ガスを先行して供給する必要がなく、双方のガスを同時または空気を先行して供給することで、適切な起動を行うことができる。
また、ガス組成推定部33により燃料極側の水素ガス濃度が第2所定濃度以上であると判断され、酸化剤極側の水素ガス濃度が少なくとも1カ所(複数箇所の電圧センサ32にて各箇所のガス組成を推定した場合、そのうちの1カ所)において第2所定濃度未満であると判断されているとする。この場合、メイン制御部31は、水素ガスの供給と空気の供給とを同時に開始させる(以下、この起動方法を第2起動方法という)。この場合、燃料極側が水素雰囲気であり、酸化剤極側が空気雰囲気であるため、双方のガスを同時に供給することで、適切な起動を行うことができる。
また、ガス組成推定部33により燃料極側の水素ガス濃度が少なくとも1カ所において第2所定濃度未満であると判断され、酸化剤極側の水素ガス濃度が第2所定濃度以上であると判断されているとする。この場合、メイン制御部31は、燃料極側に水素ガスを供給し、両極を電気的に接続して電流を取り出すことにより燃料極側の酸素を消費し、両極の燃料ガス濃度が第2所定濃度以上となったと判断した後に空気の供給を開始する(以下、この起動方法を第3起動方法という)。この場合、燃料極側が空気雰囲気であり、酸化剤極側が水素雰囲気であるため、燃料極側に水素ガスを供給し、両極を電気的に接続して電流を取り出すことにより燃料極側の酸素を消費して、両極を水素雰囲気とすることができる。そして、この状態から空気の供給を開始するため、両極に酸化剤ガスが存在する状態からの起動を回避でき、燃料電池スタック1の劣化を防止した適切な起動を行うことができる。
また、ガス組成推定部33により両極の水素ガス濃度が少なくとも1カ所において第2所定濃度未満であると判断されている場合、メイン制御部31は、両極を電気的に接続したうえで水素ガスを供給し、その後空気の供給を行う(以下、この起動方法を第4起動方法という)。この場合、両極が空気雰囲気であるため、燃料極側に燃料ガスを供給すると、触媒劣化による燃料電池スタック1の劣化を招いてしまう。このため、両極を電気的に接続したうえで水素ガスを供給することで、(1)式の反応を抑制することとなり、燃料電池スタック1の劣化を防止した適切な起動を行うことができる。
次に、本実施形態に係る燃料電池システムの詳細動作の一例を説明する。図16は、本実施形態に係る燃料電池システムの詳細動作の一例を示すフローチャートである。図16に示す処理は、燃料電池システムを停止して両極を水素雰囲気とした後に実行される。
まず、図16に示すように、ガス組成推定部33は、経過時間が所定時間未満であるか否かを判断する(ST1)。すなわち、ガス組成推定部33は第1推定方法を実行する。所定時間未満であると判断した場合(ST1:YES)、ガス組成推定部33は、両極が水素雰囲気であると判断する。但し、ガス組成推定部33は、両極の水素濃度が高いか低いかを判断するために、電圧変化速度が第1所定値未満であるか否かを判断する(ST2)。電圧変化速度が第1所定値未満でないと判断した場合(ST2:NO)、すなわち電圧変化速度が第1所定値以上である場合、ガス組成推定部33は、両極が濃度の高い水素によって満たされていると判断する(ST3)。そして、メイン制御部31は、再起動が行われる場合には上記第1起動方法を行うと決定する(ST4)。その後、図16に示す処理は終了する。
一方、電圧変化速度が第1所定値未満であると判断した場合(ST2:YES)、ガス組成推定部33は、両極が濃度の低い水素によって満たされていると判断する(ST5)。そして、メイン制御部31は、再起動が行われる場合には上記第1起動方法を行うと決定する(ST6)。また、メイン制御部31は、水素供給を行うようにしてもよい(ST6)。その後、図16に示す処理は終了する。
ところで、経過時間が所定時間未満でないと判断した場合(ST1:NO)、ガス組成推定部33は、開放電圧が略零(所定電圧未満)であるか否かを判断する(ST7)。すなわち、ガス組成推定部33は第2推定方法を実行する。開放電圧が略零でないと判断した場合(ST7:NO)、ガス組成推定部33は、一方の極が水素雰囲気であり、他方の極は空気雰囲気であると判断する。そして、ガス組成推定部33は、開放電圧が正であるか否かを判断する(ST8)。
開放電圧が正であると判断した場合(ST8:YES)、ガス組成推定部33は、燃料極側が水素雰囲気であり酸化剤極側が空気雰囲気であると判断する(ST9)。そして、メイン制御部31は、再起動が行われる場合には上記第2起動方法を行うと決定する(ST10)。また、メイン制御部31は、水素供給を行うようにしてもよい(ST10)。その後、図16に示す処理は終了する。
一方、開放電圧が正でないと判断した場合(ST8:NO)、ガス組成推定部33は、燃料極側が空気雰囲気であり酸化剤極側が水素雰囲気であると判断する(ST11)。そして、メイン制御部31は、再起動が行われる場合には上記第3起動方法を行うと決定する(ST12)。また、メイン制御部31は、水素供給を行うようにしてもよい(ST12)。その後、図16に示す処理は終了する。
また、開放電圧が略零であると判断した場合(ST7:YES)、ガス組成推定部33は、両極が同様のガスで満たされていると判断する。そして、メイン制御部31は、微小負荷を印加する(ST13)。その後、ガス組成推定部33は、電圧の変化速度が第2所定値未満であるか否かを判断する(ST14)。すなわち、ガス組成推定部33は第3推定方法を実行する。
電圧変化速度が第2所定値未満であると判断した場合(ST14:YES)、処理はステップST2に移行する。一方、電圧変化速度が第2所定値未満でないと判断した場合(ST14:NO)、ガス組成推定部33は、両極が空気雰囲気であると判断する(ST15)。そして、メイン制御部31は、再起動が行われる場合には上記第4起動方法を行うと決定する(ST16)。また、メイン制御部31は、水素供給を行うようにしてもよい(ST16)。その後、図16に示す処理は終了する。
このようにして、本実施形態に係る燃料電池システムによれば、システムを停止してからの経過時間が所定時間未満か否かに基づいてガス組成を推定する第1推定方法、システム停止中での燃料電池スタック1の開放電圧が所定電圧未満であるか否かに基づいてガス組成を推定する第2推定方法、および、システム停止中での所定負荷に応じた燃料電池スタック1の電圧変化速度が所定値未満か否かに基づいてガス組成を推定する第3推定方法を実行する。ここで、システムを停止してから経過時間が短い場合には、ガス組成に変化が少ないと推定できる。また、燃料電池スタック1の開放電圧が略零(所定電圧未満)でないと一方の極に水素ガスが存在し他方の極に空気が存在すると推定できる。また、システム停止中での所定負荷に応じた燃料電池スタック1の電圧変化速度は、両極に水素ガスが存在する場合と両極に空気が存在する場合とで比較すると前者の方が低くなる傾向にある。以上から、第1〜第3推定方法によってガス組成を推定することができ、保管方法や再起動方法の適切化を図ることが可能な燃料電池システムを提供することができる。
また、最初に第1推定方法を実行し、経過時間が所定時間未満でない場合に第2推定方法を実行し、開放電圧が所定電圧未満である場合に第3推定方法を実行する。ここで、最初に第1推定方法を実行して経過時間が所定時間未満である場合、ガス組成に変化が少ないと推定できる。従って、システム停止時に両極に水素ガスを封入した場合には、両極が水素雰囲気のガス組成である推定することができる。一方、経過時間が所定時間未満でない場合、ガス組成に変化があると考えられるため、第2推定方法を実行する。そして、開放電圧が略零でない場合、一方の極に水素ガスが存在し他方の極に空気が存在するガス組成であると推定できる。一方、開放電圧が略零である場合、双方の極に水素ガスが存在し、または双方の極に空気が存在すると考えられる。このため、第3推定方法を実行する。ここで、電圧変化速度は、両極に水素ガスが存在する場合と両極に空気が存在する場合とで比較すると前者の方が低くなる傾向にある。以上より、不要な推定方法を実行することなく適切な順序でガス組成を推定することができる。
また、ガス組成を推定する頻度を、システム停止してから再起動されるまでの時間と再起動回数との相関、および、システム停止してからの経過時間とその経過時間に応じたガス組成との相関の少なくとも一方から決定する。ここで、システム停止してから再起動されるまでの時間と再起動回数との相関から、利用者が頻繁に再起動を行う時間帯を予測することができる。そして、利用者が頻繁に再起動を行う時間帯では頻繁にガス組成の推定を行って再起動に備えておくことが望ましい。よって、システム停止してから再起動されるまでの時間と再起動回数との相関からガス組成を推定する頻度を決定すると好適な再起動を行うことができる。また、システム停止してからの経過時間とその経過時間に応じたガス組成との相関からガス組成をある程度判断することができる。例えばシステム停止時に両極に水素ガスを封入した場合、経過時間が短ければ両極に水素ガスが存在していると言え、ガス組成を推定する頻度を少なくしてもよい。逆に外部から空気が流入してガス組成が急激に変化するような時間ではガス組成を推定する頻度を多くした方が望ましい。これにより、好適にガス組成を知ることができる。
また、第2推定方法および第3推定方法を実行する場合、スタック内ガス流路の入口若しくは出口近傍に位置するセル、および、スタック内ガス流路の入口と出口との中間地点のセルから、電圧を検出する。また、セルから電圧を検出するのに代えて、各セルを含む複数のセルからなるサブスタックから電圧を検出してもよい。ここで、システム停止時に両極に水素ガスを封入した場合、スタック内ガス流路のガスは、入口または出口近傍から空気に置換されていく。また、スタック内ガス流路の中間部は、最後に空気に置換されていく。このため、これらの各所のセルまたはサブスタック電圧を検出することで、入口または出口近傍と中間地点との双方のガス組成を推定することができ、一層正確にスタック内のガス組成を推定することができる。なお、これは上記実施形態のように第2推定方法および第3推定方法の双方を実行する場合に限らず、いずれか一方を実行する場合にのみに行ってもよい。
また、第2推定方法および第3推定方法を実行する場合、セル電圧、または複数のセルからなるサブスタック電圧をセルの複数箇所において検出すると共に、複数の検出箇所が燃料電池スタック1のセルの積層方向にそれぞれ異ならせている。ここで、スタック内ガス流路はセルの積層方向に配索されていることが多い。また、スタック内ガス流路は入口や出口に近いほど外部からの空気が流入しやすくなり、ガス組成が変化しやすくなっている。よって、積層方向に複数箇所セル電圧やサブスタック電圧を検出することで、スタック内の流路に沿ってセル電圧やサブスタック電圧を検出することとなり、各箇所のガス組成を推定して、一層正確にスタック内のガス組成を推定することができる。なお、これは上記実施形態のように第2推定方法および第3推定方法の双方を実行する場合に限らず、いずれか一方を実行する場合にのみに行ってもよい。
また、第2推定方法および第3推定方法を実行する場合、スタック内ガス流路の配索方向に見た場合に入口または出口から同一距離の位置において絶縁配置される2以上のセルのうち複数のセルについて電圧を検出する。ここで、絶縁配置される2以上のセルは、スタック内ガス流路の入口または出口から同一距離の位置していることから、外部から酸化剤ガスが流入した場合、同程度の量の酸化剤ガスがそれぞれのセルに行き渡ると考えられる。ところが、絶縁配置される2以上のセルには必ずしも同程度の量のガスが行き渡るとは言えず、それぞれに行き渡るガス量が異なることがある。すなわち、スタック内ガス流路の入口または出口から同一距離の位置しているセルのガス組成は同じではなく異なっていることがある。このため、絶縁配置される2以上のセルのうち複数のセルについて電圧を検出することで、スタック内ガス流路の配索方向に見た場合に入口または出口からの距離が同一であっても、それぞれの箇所でのガス組成を推定することができる。なお、これは上記実施形態のように第2推定方法および第3推定方法の双方を実行する場合に限らず、いずれか一方を実行する場合にのみに行ってもよい。
また、両極に空気が存在する状態でシステムを再起動させて燃料極側に水素ガスを供給すると、燃料極側のうち水素が存在しない領域と対峙する酸化剤極側において、上記(1)式の反応が生じ、白金等の触媒を担持しているカーボン担体の腐食が起こり、燃料電池スタック1を劣化させてしまう。ところが、本実施形態では水素ガス濃度が第1所定濃度未満と判断された場合に燃料極側に水素ガスを供給させるため、供給した水素ガスによって燃料極側の空気が反応し燃料極側の空気を消費させることができる。さらに、燃料極側の水素ガスはクロスリークして酸化剤極に至るため、同様に酸化剤極の空気を消費させることができる。これにより、両極を再び水素雰囲気とし、システム再起動時における燃料電池スタック1の劣化を抑制することができる。
また、燃料極側に水素ガスを供給させる場合、燃料極と酸化剤極とを電気的に短絡させるため、上記(2)及び(3)式の反応を起こすことができ、クロスリークのみに頼ることなく水素ガスを酸化剤極側に移行させることができる。
また、システム停止してから再起動されるまでの時間と再起動回数との相関から燃料極側に水素ガスを供給するかを決定する。ここで、システム停止してから再起動されるまでの時間と再起動回数との相関から、利用者がシステム停止後どれだけ時間が経過したときに頻繁に燃料電池システムを再利用するかがわかる。このため、頻繁に再利用するときに両極が水素ガスで満たされるように水素ガスの供給を調整することができる。また、システム停止してからの経過時間とその経過時間に応じたガス組成から燃料極側に水素ガスを供給するかを決定する。ここで、システム停止してからの経過時間が短いにも拘わらず両極が空気で満たされている場合、燃料電池スタック1は外部から空気を取り込み易いような状態(破損個所等がある状態)となっていると考えられる。このため、燃料極側に水素ガスを供給してもすぐに水素ガスが漏れだしてしまうことから、水素ガスの供給を行わないなどをすることができる。以上のように、上記相関に基づいて水素ガスの供給を決定することで、適切に水素ガスの供給を行って、両極を水素雰囲気に保つことができる。
また、システムを再起動する場合において、両極の水素ガス濃度が第2所定濃度以上であると判断されているときには、第1起動方法を実行する。すなわち、水素ガスに先だって空気の供給を開始させ、または、水素ガスの供給と空気の供給とを同時に開始させる。ここで、通常の再起動方法では、燃料電池システムを放置したことにより両極が空気雰囲気であると考えられるため、燃料極側に水素ガスを供給し、燃料極側を水素雰囲気とし、酸化剤極側を空気雰囲気とし、その後電流を取り出す制御を行うこととなる。ところが、両極の水素ガス濃度が第2所定濃度以上である場合では、水素ガスを先行して供給する必要がなく、双方のガスを同時または空気を先行して供給することで、適切な起動を行うことができる。
また、システムを再起動する場合において、燃料極側の水素ガス濃度が第2所定濃度以上であると判断され、酸化剤極側の水素ガス濃度が少なくとも1カ所において第2所定濃度未満であると判断されているときには、第2起動方法を実行する。すなわち、水素ガスの供給と空気の供給とを同時に開始させる。この場合、燃料極側が水素雰囲気であり、酸化剤極側が空気雰囲気であるため、双方のガスを同時に供給することで、適切な起動を行うことができる。
また、システムを再起動する場合において、燃料極側の水素ガス濃度が少なくとも1カ所において第2所定濃度未満であると判断され、酸化剤極側の水素ガス濃度が第2所定濃度以上であると判断されているときには、第3起動方法を実行する。すなわち、燃料極側に水素ガスを供給し、両極を電気的に接続して電流を取り出すことにより燃料極側の酸素を消費し、両極の水素ガス濃度が第2所定濃度以上となったと判断した後に空気の供給を開始する。この場合、燃料極側が空気雰囲気であり、酸化剤極側が水素雰囲気であるため、燃料極側に水素ガスを供給し、両極を電気的に接続して電流を取り出すことにより燃料極側の酸素を消費して、両極を水素雰囲気とすることができる。そして、この状態から空気の供給を開始するため、両極に空気が存在する状態からの起動を回避でき、燃料電池スタック1の劣化を防止した適切な起動を行うことができる。
また、システムを再起動する場合において、両極の水素ガス濃度が少なくとも1カ所において第2所定濃度未満であると判断されているときには、両極を電気的に接続したうえで水素ガスを供給し、その後空気の供給を行う。この場合、両極が空気雰囲気であるため、燃料極側に水素ガスを供給すると、触媒劣化による燃料電池スタックの劣化を招いてしまう。このため、両極を電気的に接続したうえで水素ガスを供給することで、(1)式の反応を抑制することとなり、燃料電池スタック1の劣化を防止した適切な起動を行うことができる。
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよい。例えば、本実施形態では、第1〜第3推定方法の全てを実行する構成であるが、いずれか1つのみを実行する構成であってもよいし、2つを実行する構成であってもよい。
また、ガス組成推定部33は、システムを再起動し、燃料電池スタック1に水素ガスを供給した場合のセル電圧の上昇度合いから、ガス組成を推定する第4推定方法を実行してもよい。ここで、水素ガスを導入した際に酸化剤極が水素雰囲気であれば、セル電圧の急増はみられない。一方、水素ガスを導入した際に酸化剤極が空気雰囲気であれば、セル電圧は急増する。このため、セル電圧の上昇度合いからガス組成を推定することで、システム起動時に補完的にガス組成を推定することができる。