JP4576676B2 - オキセタン環を有するテトラメチルジフェニルメタン誘導体の製造方法およびオキセタン環を有するテトラメチルジフェニルメタン誘導体 - Google Patents

オキセタン環を有するテトラメチルジフェニルメタン誘導体の製造方法およびオキセタン環を有するテトラメチルジフェニルメタン誘導体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、オキセタン環を有するテトラメチルジフェニルメタン誘導体の製造方法および新規なオキセタン環を有するテトラメチルジフェニルメタン誘導体に関する。
【0002】
【従来の技術】
オキセタン化合物は、光開始カチオン重合または硬化が可能なモノマーとして、近年注目を浴びている化合物であり、多くの単官能性および多官能性オキセタン化合物が報告されている。例えば、Pure Appl.Chem.,A29(10),pp.915(1992)およびPure Appl.Chem.,A30(2&3),pp.189(1993)には種々のオキセタン誘導体の合成法が記載されている。
また、特開平6−16804号公報には、下記式(3)で表されるオキセタン化合物が開示されている。
【0003】
【化3】
Figure 0004576676
【0004】
(式中、R1は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、フルオロアルキル基、アリル基、アリール基、フリル基、チエニル基またはフッ素原子である。R2は、鎖状または分岐状ポリ(アルキレンオキシ)基、キシリレン基、シロキサン結合およびエステル結合から成る群から選ばれる多価基であり、Zは酸素原子または硫黄原子であり、mは2、3または4である。)
【0005】
さらに、特開平8−245783号公報には、ナフタレン骨格を有する二官能性オキセタンを始めとする数多くのオキセタン化合物類の記載がある。また、特開平7−17958号公報にはアリルクロライドとヒドロキシメチルオキセタンとの反応によるオキセタン化合物の合成法が記載されている。
しかしながら、上記いずれの公知文献にも、本願発明に関するオキセタン環を有するテトラメチルジフェニルメタン誘導体についての記載はない。
【0006】
また、DEP 1,021,858には、下記式(4)で表されるオキセタン化合物が開示されている。
【0007】
【化4】
Figure 0004576676
【0008】
(式中、Rは2以上の原子価を有する芳香族残基であり、R1は水素原子やアルキル基、アリール基等であり、nは1または2である)
【0009】
DEP 1,021,858には、オキセタン環を有するジフェニルメタン誘導体の記載はあるが、本願発明に関するオキセタン環を有するテトラメチルジフェニルメタン誘導体の記載はない。オキセタン環を有するテトラメチルジフェニルメタン誘導体はジフェニルメタン誘導体に比べ、メチル基を4つ多く含有するため、ジフェニル誘導体より一層優れた相溶性を有すると推測される。
従って、いずれの公知文献にも本発明におけるオキセタン環を有するテトラメチルジフェニルメタン誘導体についての記載はなく、また、製造方法に関する記載もない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、容易に入手可能な原料から合成できる、オキセタン環を有するテトラメチルジフェニルメタン誘導体の製造方法、およびオキセタン環を有するテトラメチルジフェニルメタン誘導体を提供するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、水酸化アルカリ金属、アルカリ金属水素化物またはアルカリ金属の存在下、後記式(5)、(6)及び(7)で表される化合物から選択されるメタンビスジメチルフェノールと3−アルキル−3−クロロメチルオキセタン(但し、アルキル基は、炭素数1〜4個のアルキル基である)または3−クロロメチルオキセタンとを反応させることを特徴とする下記式(1)で表されるオキセタン環を有するテトラメチルジフェニルメタン誘導体の製造方法である。
【0012】
【化5】
Figure 0004576676
【0013】
(式中、R1、R2、R3およびR4はそれぞれ水素原子または炭素数1〜4個のアルキル基を示す。)
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明におけるメタンビスジメチルフェノールとしては、下記式(5)、(6)および(7)で表される化合物を使用することができる。
【0015】
【化6】
Figure 0004576676
【0016】
【化7】
Figure 0004576676
【0017】
【化8】
Figure 0004576676
【0018】
{式(5)〜(7)において、 R3およびR4は、水素原子または炭素数1〜4個のアルキル基を示す。}
【0019】
水酸化アルカリ金属としては、粉末状あるいは5〜60質量%の水溶液状にした水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウム等が挙げられる。
アルカリ金属水素化物としては、水素化ナトリウムおよび水素化カリウム等が挙げられ、アルカリ金属としては、金属ナトリウムおよび金属カリウム等が挙げられる。
これらの中でも水酸化アルカリ金属を使用することが好ましく、特に好ましくは40〜50質量%の水溶液状の水酸化アルカリ金属の使用である。
水酸化アルカリ金属、アルカリ金属水素化物およびアルカリ金属の使用量は、メタンビスジメチルフェノールのフェノール性水酸基に対するモル比で1〜4倍量であることが好ましく、さらに好ましくは1〜2倍量である。
【0020】
本願発明における製造方法において、水酸化アルカリ金属水溶液などの存在下、メタンビスジメチルフェノールと3−アルキル−3−クロロメチルオキセタンまたは3−クロロメチルオキセタンとを反応させる時の温度は、80〜150℃であることが好ましく、特に好ましくは100〜120℃である。また、反応時間は反応温度により異なるが、4〜12時間の範囲が好適である。
【0021】
さらに、前記反応において、メタンビスジメチルフェノールのフェノール性水酸基に対して質量比で0.1〜30%、好ましくは1〜10%の相間移動触媒を用いることにより、反応を円滑に進行させることが出来る。相間移動触媒としては、公知の相間移動触媒(例えば、W.P.Weber,G.W.Gokel共著、田伏岩夫、西谷孝子共訳「相間移動触媒」、(株)化学同人発行などに記載のもの)のいずれも用いることができるが、これらの中でも、触媒としての能力の高さから、有機第4級アンモニウム塩およびホスホニウム塩が好ましい。具体例としては、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリエチルアンモニウムブロミド、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド、テトラ−n−ブチルホスホニウムクロリド、トリオクチルエチルホスホニウムブロミドおよびテトラフェニルホスホニウムクロリドなどが挙げられる。
さらに、本発明における反応において、必要であれば芳香族炭化水素溶媒を用いても良く、芳香族炭化水素溶媒としては、ベンゼン、トルエンおよびキシレン等が好適に用いられる。
【0022】
上記製造方法により得られるオキセタン環を有するテトラメチルジフェニルメタン誘導体は、前記式(1)で表される化合物であり、式(1)は、具体的には下記式(2)、(8)および(9)で表される3種類の化合物を表している。
【0023】
【化9】
Figure 0004576676
【0024】
【化10】
Figure 0004576676
【0025】
【化11】
Figure 0004576676
【0026】
{式(2)、(8)および(9)において、 R3およびR4は、水素原子または炭素数1〜4個のアルキル基を示す。}
【0027】
反応終了後は、室温まで冷却して有機相、あるいは有機固形物を取り出し、水洗および脱溶剤を行ない、オキセタン環を有するテトラメチルジフェニルメタン誘導体を得ることができる。化合物の構造については、1H−NMRおよび13C−NMR によって確認した。前記式(1)のR1およびR2は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示すが、特に、メチル基およびエチル基が好ましい。
【0028】
【実施例】
以下に実施例を用いて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例1
温度計、冷却器、攪拌装置、滴下漏斗兼窒素ガス吹込口を備えた2Lの四つ口丸底フラスコに、4,4'-メチレンビス(2,6-ジメチルフェノール)を256g(1mol)と3-クロロメチル-3-エチルオキセタン471g(3.5mol)を入れ攪拌しながら、48質量%の水酸化カリウム水溶液280g(1.44mol)を滴下漏斗から20分間かけて滴下した。ここに触媒としてテトラブチルアンモニウムブロミド13gを添加した後、還流するまで(約110℃)で昇温し、還流下で8時間反応を続けた。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、純水とトルエンを各々600ml添加し、よく攪拌した。分液ロートにより有機相と水相を分離した後、有機相を600mlの純水で3回洗浄した。有機相中のトルエンと3-クロロメチル-3-エチルオキセタンを減圧除去し、室温において428gの生成物を得た。GC分析の結果、得られた化合物の純度は99%であり、収率は94%であった。1H-NMR、13C-NMR(1H照射)の結果より得られた化合物は下記式(10)で表される、3,3’,5,5’−テトラメチル{4,4’−〔ビス(1−エチル−3オキセタニル)メトキシ〕}ジフェニルメタンであると同定された。
【0029】
【化12】
Figure 0004576676
【0030】
1H-NMR(重アセトン溶媒)の測定結果:δ(ppm) J(Hz); a;1.00(t J=7.5Hz)、b;1.90(q J=7.5Hz)、c;3.87(s) 、e;4.48(d J=53Hz d J=5.9Hz)、g;2.23(s)、i;6.89(s)、k;3.72(s)、
13C-NMR(重アセトン溶媒、1H照射))の測定結果:δ(ppm);a;8.47 、b;27.17、c;74.51、d;44.54、e;77.70、f;154.35、 g;16.57、 h;131.15 i;130.11、j;137.90、k;41.22
【0031】
【発明の効果】
本発明により、容易に入手可能な原料から合成できる、新規なオキセタン環を有するテトラメチルジフェニルメタン誘導体及びそれらの製造法を提供することができる。なお、本発明のテトラメチルフェニルメタン誘導体から得られる光硬化性または熱硬化性樹脂は高屈折率で、硬化性、耐熱性、機械特性に優れ、塗料およびコーティング材、接着剤およびレンズ等に利用される。

Claims (2)

  1. 水酸化アルカリ金属、アルカリ金属水素化物またはアルカリ金属の存在下、下記式(5)、(6)及び(7)で表される化合物から選択されるメタンビスジメチルフェノールと3−アルキル−3−クロロメチルオキセタン(但し、アルキル基は、炭素数1〜4個のアルキル基である)または3−クロロメチルオキセタンとを反応させることを特徴とする、下記式(1)で表されるオキセタン環を有するテトラメチルジフェニルメタン誘導体の製造方法。
    Figure 0004576676
    Figure 0004576676
    Figure 0004576676
    (式(5)〜(7)において、R 3 およびR 4 は、水素原子または炭素数1〜4個のアルキル基を示す。)
    Figure 0004576676
    (式中、R1、R2、R3およびR4はそれぞれ水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示す。)
  2. 下記式(2)で表されるオキセタン環を有するテトラメチルジフェニルメタン誘導体。
    Figure 0004576676
    (式中、R1、R2、R3およびR4はそれぞれ水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示す。)
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