JP4329172B2 - オキセタン環を有するビナフタレン誘導体 - Google Patents

オキセタン環を有するビナフタレン誘導体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、カチオン重合が可能なオキセタン環を有する新規なビナフタレン誘導体およびその製造方法に関するものである。なお、該化合物から得られる光硬化性樹脂および熱硬化性樹脂は高屈折率であり、かつ、硬化性、耐熱性および機械特性に優れるので、塗料、コーティング材、接着剤およびレンズ等に利用可能である。
【0002】
【従来の技術】
オキセタン環を有する化合物(以下、オキセタン化合物という)は、光開始カチオン重合または硬化が可能なモノマーとして、近年注目を浴びている化合物であり、多くの単官能性および多官能性オキセタン化合物が報告されている。例えば、Pure Appl.Chem.,A29(10),pp.915(1992)及びPure Appl. Chem., A30(2&3), pp.189(1993)には種々のオキセタン化合物の合成法が記載されている。
また、DE 1,021,858には、下記式(2)で表されるオキセタン化合物が開示されている。
【0003】
【化2】
Figure 0004329172
【0004】
(式中、Rは1または2の原子価を有する芳香族残基であり、nは1または2である)
【0005】
さらに、特開平6−16804号公報には、下記式(3)で表されるオキセタン化合物が開示されている。
【0006】
【化3】
Figure 0004329172
【0007】
(式中、R1は水素原子、炭素数1〜6個のアルキル基、フルオロアルキル基、アリル基、アリール基、フリル基、チエニル基またはフッ素原子を示す。R2は、鎖状または分岐状ポリ(アルキレンオキシ)基、キシリレン基、シロキサン結合およびエステル結合から成る群から選ばれる多価基を示し、Zは酸素原子または硫黄原子を示し、mは2、3または4を示す。)
【0008】
さらに、特開平8−245783号公報には、2,2’−ビトリレンジイル骨格を有する二官能性オキセタンを始めとする数多くのオキセタン化合物類の記載がある。また、特開平7−17958号公報にはアリルクロライドとヒドロキシメチルオキセタンとの反応によるオキセタン化合物の合成法が記載されている。
【0009】
一方、オキセタン環を有するナフタレン誘導体としては、Bull.Soc.Chim.Fr.; FR; 1965; 694-700に下記式(4)で示されるオキセタン化合物が開示されている。
【0010】
【化4】
Figure 0004329172
【0011】
(式中、Rはメチル基またはエチル基を示す)
【0012】
しかしながら、上記ナフタレン誘導体は、1分子中にオキセタン環を1個含む化合物であるため、熱や光による硬化性が不十分である。
なお、これまでのところ、本発明の1分子中にオキセタン環を2個含むビナフタレン誘導体は知られていない。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、1分子中に2個のオキセタン環を有する新規なビナフタレン誘導体およびその製造方法を提供するものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は下記式(1)で表されるオキセタン環を有するビナフタレン誘導体である。
【0015】
【化5】
Figure 0004329172
【0016】
(式中、R1およびR2は水素原子または1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を示す)
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明におけるオキセタン環を有するビナフタレン誘導体は、前記式(1)で表される化合物であり、式(1)におけるR1およびR2は水素原子または1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を示す。これらの中でも、原料の入手のし易さの面から、R1およびR2としてはメチル基およびエチル基が好ましい。
上記オキセタン環を有するビナフタレン誘導体の製造方法としては、水酸化アルカリ金属、アルカリ金属水素化物またはアルカリ金属の存在下、1,1’−ビ−2−ナフトールと3−アルキル−3−クロロメチルオキセタンまたは3−クロロメチルオキセタンとを反応させる方法が挙げられ、さらに、1,1'−ビ−2−ナフトールを水酸化アルカリ金属、アルカリ金属水素化物またはアルカリ金属と反応させて、アルカリ金属塩とした後、アルカリ金属塩と3−アルキル−3−クロロメチルオキセタンまたは3−クロロメチルオキセタンと反応させることも可能である。これらの反応において、必要であれば有機溶媒を用いてもよく、特に芳香族炭化水素系溶媒を用いることが好ましく、例えば、ベンゼン、トルエンおよびキシレン等が好適に用いられる。
【0018】
水酸化アルカリ金属としては水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウム等が挙げられ、これらの水酸化アルカリ金属は粉末状態または5〜60重量%水溶液状態で用いることが好ましく、40〜50重量%水溶液状態で用いることが特に好ましい。
また、アルカリ金属水素化物としては、水素化ナトリウムおよび水素化カリウム等が挙げられ、アルカリ金属としては金属ナトリウムおよび金属カリウム等が挙げられる。
上記水酸化アルカリ金属などの使用量は、1,1’−ビ−2−ナフトール1モルに対して、1〜4モルであることが好ましく、より好ましくは1.6〜2.6モルである。
【0019】
上記反応における反応温度は80〜150℃であることが好ましく、特に好ましくは100〜120℃である。また、反応時間は、反応温度にもよるが4〜12時間が好適である。
さらに、上記反応に水酸化アルカリ金属水溶液を用いる場合、反応速度を上げる目的で、相関移動触媒を使用することが好ましい。相間移動触媒としては、公知の相間移動触媒(例えば、W.P.Weber,G.W.Gokel共著、田伏岩夫、西谷孝子共訳「相間移動触媒」、(株)化学同人発行などに記載のもの)のいずれも用いることができるが、これらの中でも、触媒としての能力の高さから、有機第4級アンモニウム塩およびホスホニウム塩が好ましい。具体例としては、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロミド、テトラ−n−ブチルアンモニウム硫酸水素塩、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロミド、トリオクチルエチルホスホニウムクロリドおよびテトラフェニルホスホニウムクロリドなどが挙げられる。
相間移動触媒の使用量は、1,1'−ビ−2−ナフトールに対して重量比で0.1〜30%用いることが好ましく、特に好ましくは1〜10%である。
【0020】
反応終了後、室温まで冷却して有機相あるいは有機固体物を取り出し、水洗および乾燥させて目的とするオキセタン環を有するビナフタレン誘導体を得ることが出来る。得られた化合物は、1H−NMRおよび13C−NMRにより構造が確認できる。
【0021】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例1
温度計、冷却器、攪拌装置および滴下漏斗を備えた1000mlの三つ口丸底フラスコに、1,1'−ビ−2−ナフトール50.9g(0.18mol)、3−クロロメチル−3−エチルオキセタン60.5g(0.45mol)および触媒としてテトラブチルホスホニウムブロミド2.4gを入れ、80℃で加熱攪拌した。これに、48重量%の水酸化カリウム水溶液52.6g(0.45mol)を滴下漏斗から30分間かけて滴下した。
滴下終了後、還流するまで(約110℃)昇温し、還流下で8時間反応を続けた。反応終了後、反応混合物を室温まで冷却して得られた反応液は液状であり、水500mlを加え、有機相を分液漏斗で分離した。その後、分液漏斗に有機相と水200ccを入れ、良く振り分離した。この操作を3回繰り返し、次いで、減圧乾燥器で乾燥し茶褐色の液体を得た。得られた化合物は、GC分析よりその純度は99%であり、収率は90モル%であった。1H−NMRおよび13C−NMR(1H照射)の結果より得られた化合物は下記式(5)で表される、1,1'−ビ−2−(1−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ナフタレンであると同定された。なお、図1および図2に1,1'−ビ−2−(1−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ナフタレンの1H−NMRと13C−NMRのチャートを示す。
【0022】
【化6】
Figure 0004329172
【0023】
1H−NMR(CDCl3溶媒)の測定結果:δ(ppm) J(Hz);(a) 0.47( t J=18Hz) 、(b)1.24 m 、(c)4.05 s、(d) 4.00(dd J=9Hz J=9Hz)、(芳香環)(g)7.20〜7.21、(k),(l)7.27〜7.31、(h)7.39(d J=9Hz)、(m)7.84(d J=8Hz)、(j)7.93(d J=9Hz)
13C−NMR(CDCl3溶媒、1H照射)の測定結果:δ(ppm);(a) 7.65、(b) 26.21、(c) 72.15 、(d) 77.94、(e) 43.11 、(芳香環) 115.55、120.79、123.70、125.31、126.20、127.78、129.41、134.00、153.95
【0024】
【発明の効果】
本発明のオキセタン環を有するビナフタレン誘導体は、1分子中にオキセタン環を2個含有しているため、光または熱による硬化速度が極めて早く、また、これらの化合物から得られる光硬化性樹脂および熱硬化性樹脂は高屈折率であり、かつ、硬化性、耐熱性および機械特性などにも優れるので、塗料、コーティング材、接着剤およびレンズ等に利用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られた1,1'−ビ−2−(1−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ナフタレンの1H−NMRのチャートである。
【図2】実施例1で得られた1,1'−ビ−2−(1−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ナフタレンの13C−NMRチャートである。

Claims (2)

  1. 下記式(1)で表されるオキセタン環を有するビナフタレン誘導体。
    Figure 0004329172
    (式中、R1およびR2は水素原子または1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を示す)
  2. 水酸化アルカリ金属、アルカリ金属水素化物またはアルカリ金属の存在下、1,1’−ビ−2−ナフトールと3−アルキル−3−クロロメチルオキセタンまたは3−クロロメチルオキセタンとを反応させることを特徴とする請求項1記載のオキセタン環を有するビナフタレン誘導体の製造方法。
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