JP4117834B2 - 4−メチレン−5−ヘキセニルトリアルコキシシラン及びその製造方法 - Google Patents

4−メチレン−5−ヘキセニルトリアルコキシシラン及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、4−メチレン−5−ヘキセニルトリアルコキシシラン及びその製造方法に関する。4−メチレン−5−ヘキセニルトリアルコキシシランは、ポリマーの改質剤(共重合モノマー)、シランカップリング剤として有用である。
【0002】
【従来の技術】
4−メチレン−5−ヘキセニルトリアルコキシシランは、新規な物質であり、またその製造方法も知られていない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、4−メチレン−5−ヘキセニルトリアルコキシシラン及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記式によって表される4−メチレン−5−ヘキセニルトリアルコキシシラン:
【化2】
Figure 0004117834
(式中、R、R’、R”は互いに同一であっても異なってもよく、炭素数1〜5の炭化水素基であり、好ましくはメチル基、エチル基である)
を提供する。
【0005】
また、本発明は、上記の4−メチレン−5−ヘキセニルトリアルコキシシランの製造方法も提供するものであり、その製造方法は、溶媒中で、下記の式で示される2−(1,3−ブタジエニル)マグネシウムクロリド:
【化3】
Figure 0004117834
と、下記の式で示される3−ハロゲン化プロピルトリアルコキシシラン:
【化4】
Figure 0004117834
(Xはハロゲン原子である。R,R’,R”は、上に定義したのと同じである)とをカップリング反応させることを含む。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の内容を詳細に説明する。本発明において用いる2−(1,3−ブタジエニル)マグネシウムクロリドとは、2−クロロ−1,3−ブタジエンのグリニャール試薬のことである。
【0007】
本発明において用いる2−(1,3−ブタジエニル)マグネシウムクロリドの合成方法の一例を示す。マグネシウム粉末と、2−クロロ−1,3−ブタジエンと、溶媒と、塩化亜鉛とを混合して加熱することによって、2−(1,3−ブタジエニル)マグネシウムクロリドの溶液を得る。反応温度は40〜100℃であり、好ましくは50〜80℃である。40℃より低いと、反応率が低くなる可能性があり、100℃よりも高いと、原料化合物の揮発や2−クロロ−1,3−ブタジエンの重合が著しく起こり収率が低下する可能性がある。この反応では、系内に水分があると誘導期があったり反応率が低下したりする傾向があるため、使用する原料試薬は全て乾燥または脱水したものを使用することが好ましい。
【0008】
使用する溶媒は、原料試薬を溶解することができるものであれば、特に限定しないが、沸点が40℃以上の有機溶媒が好ましく、具体的には、テトラヒドロフラン(THF)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、ジメチルスルホキシド(DIMSO)、ジグライム、トリグライム、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、o−キシレン、ジベンジルエーテル、ジフェニルエーテル等が挙げられる。このうち、テトラヒドロフラン(THF)が、蒸留分離が容易であるため最も好ましい。
【0009】
2−クロロ−1,3−ブタジエンの量は、溶媒に対して、0.5〜2.5mol/Lとすることが好ましい。この範囲であれば、安全に高い濃度の2−(1,3−ブタジエニル)マグネシウムクロリド溶液を得ることが出来る。2−クロロ−1,3−ブタジエンの反応率は100%とすることが好ましい。未反応の2−クロロ−1,3−ブタジエンが残ると、蒸留操作が複雑になる。
【0010】
本発明において用いる3−ハロゲン化プロピルトリアルコキシシランは、下記の式で表される化合物である:
【化5】
Figure 0004117834
(Xはハロゲン原子であり、塩素及びヨウ素であるのが一般的であり;R,R’,R”は、上に定義したのと同じである)。
【0011】
本発明において用いる3−ハロゲン化プロピルトリアルコキシシランの具体例として、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−ヨードプロピルトリメチルシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−ヨードプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリプロポキシシラン、3−ヨードプロピルトリプロポキシシランなどを挙げることができる。
【0012】
本発明において用いる3−ハロゲン化プロピルトリアルコキシシランは、アルコキシ基の炭素数が小さい方が最終目的物の沸点が低くなり、精製操作が容易となることから、アルコキシ基の炭素数が小さいものを使用するのが好ましい。この関係で、本発明において用いる3−ハロゲン化プロピルトリアルコキシシランにおけるアルコキシ基の炭素数は、1〜5であり、好ましくは1〜2である。
【0013】
また、本発明において用いる3−ハロゲン化プロピルトリアルコキシシランにおけるハロゲン原子は、塩素及びヨウ素が一般的であるが、塩素化されたものよりもヨウ素化されたものの方がカップリング反応の反応速度が速い。これらの理由から、3−ヨードプロピルトリメトキシシラン、3−ヨードプロピルトリエトキシシランを使用するのが好ましい。
【0014】
カップリング反応速度を高めるために、3−クロロプロピルトリアルコキシシランにおける塩素を、あらかじめヨウ素に置換して3−ヨードプロピルトリアルコキシシランとして用いてもよい。このような置換反応は、ヨウ化ナトリウムのような金属ヨウ化物と3−クロロプロピルトリアルコキシシランとを、脱水アセトンのような溶媒に溶解させ、40〜100℃、好ましくは50〜80℃において、反応させることによって実施することができる。ヨウ素への置換は、ガスクロマトグラフィーによって確認することができる。反応液を冷却した後に、反応液を過剰のヘキサンのような溶媒に入れて塩化ナトリウムを析出させた後に、蒸留を行って3−ヨードプロピルトリアルコキシシランを得ることができる。
【0015】
カップリング反応速度を高めるために、また、触媒を用いても構わない。触媒としては、塩化銅(I)、塩化銅(II)、塩化リチウム、塩化ニッケル(II)などを挙げることができる。触媒を用いる場合、その使用量は、3−ハロゲン化プロピルトリアルコキシシラン、及び2−(1,3−ブタジエニル)マグネシウムクロリド1molに対して、0.05〜0.20molであることが好ましい。より好ましくは0.10〜0.15molである。この範囲であれば、高い収率で目的とする化合物を得ることが出来る。
【0016】
本発明において、カップリング反応は、下記のようにして実施する。まず、反応容器において、必要に応じて触媒を溶媒中に溶解させる。反応温度は40〜100℃であり、好ましくは50〜80℃である。40℃より低いと、反応率が低くなる可能性があるが、100℃よりも高いと、4−メチレン−5−ヘキセニルトリアルコキシシランの重合が起こる可能性がある。
【0017】
使用する溶媒は、沸点が40℃以上の有機溶媒が好ましく、具体的には、テトラヒドロフラン(THF)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、ジメチルスルホキシド(DIMSO)、ジグライム、トリグライム、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、o−キシレン、ジベンジルエーテル、ジフェニルエーテル等が挙げられる。このうち、テトラヒドロフラン(THF)が、蒸留分離が容易であるため最も好ましい。
【0018】
次いで、反応容器に、上述した通りにして合成した2−(1,3−ブタジエニル)マグネシウムクロリドの溶液を加えた後に、3−ハロゲン化プロピルトリアルコキシシランの溶液を滴下して加える。3−ハロゲン化プロピルトリアルコキシシランの添加量は、溶媒に対して、0.5〜2.5mol/Lとすることが好ましい。この範囲であれば、高収率で目的化合物の4−メチレン−5−ヘキセニルトリアルコキシシランを得ることが出来る。また、3−ハロゲン化プロピルトリアルコキシシランの量と、2−(1,3−ブタジエニル)マグネシウムクロリドの量とは等モルにすることが好ましい。後者が過剰であると、ケイ素原子上でも置換反応が起こり、下式に示すような二量体が生成する場合がある。
【化6】
Figure 0004117834
カップリング反応は発熱反応であるため、3−ハロゲン化プロピルトリアルコキシシランの溶液を滴下する速度は、反応液の温度を上昇させ過ぎないように、調節する。カップリング反応の進行は、ガスクロマトグラフィーによって確認することができる。
【0019】
カップリング反応が終了したことを確認した後に、塩化アンモニウムなどの塩の水溶液と、ジエチルエーテルなどの有機溶媒とを用いて、一般的な抽出操作を行って生成物を精製する。精製操作を行った後に蒸留することによって、目的とする生成物である4−メチレン−5−ヘキセニルトリアルコキシシランが高い純度で得られる。
【0020】
本発明の4−メチレン−5−ヘキセニルトリアルコキシシランは、種々の共役ジエン系モノマーやビニル系モノマーと共重合させることによって、ポリマーの変性、特に機械的強度の改良を行うことが可能である。また、シランカップリング剤としても利用可能である。
【0021】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものではない。
【0022】
[実験例1]
ヨウ化ナトリウム135.0g(0.9mol)と3−クロロプロピルトリメトキシシラン59.6g(0.3mol)とを、脱水アセトン900mlに溶解させた。80℃で4日間還流させた。ガスクロマトグラフィーによって、全量ハロゲン置換したことを確認した後、冷却した。反応液を過剰のヘキサンに入れて塩化ナトリウムを析出させた後、蒸留をおこなった。3−ヨードプロピルトリメトキシシランは、77℃、5mmHgで留出し、主留として80.5g得られた。
【0023】
[実験例2]
ヨウ化ナトリウム135.0g(0.9mol)と3−クロロプロピルトリエトキシシラン72.2g(0.3mol)を、脱水アセトン900mlに溶解させた。80℃で4日間還流させた。ガスクロマトグラフィーによって、全量ハロゲン置換したことを確認した後、冷却した。反応液を過剰のヘキサンに入れて塩化ナトリウムを析出させた後に、蒸留を行った。3−ヨードプロピルトリメトキシシランは、86℃、5mmHgで留出し、主留として80.5g得られた。
【0024】
[実験例3]
2−クロロ−1,3−ブタジエン30.0g(0.34mol)、テトラヒドロフラン(THF)170ml、マグネシウム粉末6.2g、塩化亜鉛5.0gを混合して約80℃で加熱した。2−(1,3−ブタジエニル)マグネシウムクロリドのTHF溶液を得た。このTHF溶液の一部を、HCl水溶液とNaOH水溶液で滴定した結果、2−(1,3−ブタジエニル)マグネシウムクロリドの濃度は1.0mol/Lであることが分かった。
【0025】
[実施例1]
500ml丸底フラスコに、無水塩化リチウム0.64g(0.015mol)と、無水塩化銅(II)1.01g(0.0075mol)と、脱水テトラヒドロフラン(THF)75mlを入れて溶解させた。続いて、実験例1で作製した3−ヨードプロピルトリメトキシシランを43.5g(0.15mol)添加した。実験例3で作製した2−(1,3−ブタジエニル)マグネシウムクロリドのTHF溶液150mlを、滴下漏斗を用いて、少量ずつ添加した。滴下速度は、反応液が40〜50℃程度になるように調節した。ガスクロマトグラフィーにより、カップリング反応の反応率が100%であることを確認した後、塩化アンモニウムの20質量%水溶液200mlに、反応液を添加して混合した。ジエチルエーテルで5回抽出操作を行い、蒸留した。
【0026】
目的物の4−メチレン−5−ヘキセニルトリメトキシシランを、70℃、5mmHgで留出し、主留として25.5g(0.12mol)得た。ガスクロマトグラフィーにて純度を測定した結果、99.5%以上であった。蒸留による回収率は78.5%であった。
【0027】
[実施例2]
500ml丸底フラスコに、無水塩化リチウム0.64g(0.015mol)と、無水塩化銅(II)1.01g(0.0075mol)と、脱水テトラヒドロフラン(THF)75mlを入れて溶解させた。続いて、実験例1で作製した3−ヨードプロピルトリエトキシシランを49.8g(0.15mol)添加した。実験例3で作製した2−(1,3−ブタジエニル)マグネシウムクロリドのTHF溶液150mlを、滴下漏斗を用いて、少量ずつ添加した。滴下速度は、反応液が40〜50℃程度になるように調節した。ガスクロマトグラフィーにより、カップリング反応の反応率が100%であることを確認した後、塩化アンモニウムの20質量%水溶液200mlに、反応液を添加して混合した。ジエチルエーテルで5回抽出操作を行い、蒸留した。
【0028】
目的物の4−メチレン−5−ヘキセニルトリエトキシシランを、75℃、5mmHgで留出し、主留として31.3g(0.12mol)得た。ガスクロマトグラフィーにて純度を測定した結果、99.5%以上であった。蒸留による回収率は80.6%であった。
【0029】
【発明の効果】
本発明の4−メチレン−5−ヘキセニルトリアルコキシシランは、種々の共役ジエン系モノマーやビニル系モノマーと共重合させることによって、ポリマーの変性を行うことが可能である。また、シランカップリング剤としても利用可能である。また、本発明は、4−メチレン−5−ヘキセニルトリアルコキシシランの製造を可能にする。

Claims (6)

  1. 下記式によって表される4−メチレン−5−ヘキセニルトリアルコキシシラン:
    Figure 0004117834
    (式中、R、R’、R”は互いに同一であっても異なってもよく、炭素数1〜5の炭化水素基を表す)。
  2. R、R’及びR”がメチル基を表す請求項1記載の4−メチレン−5−ヘキセニルトリアルコキシシラン。
  3. R、R’及びR”がエチル基を表す請求項1記載の4−メチレン−5−ヘキセニルトリアルコキシシラン。
  4. 溶媒中で、2−(1,3−ブタジエニル)マグネシウムクロリドと、3−ハロゲン化プロピルトリアルコキシシランとをカップリング反応させることによって得ることを特徴とする4−メチレン−5−ヘキセニルトリアルコキシシランの製造方法。
  5. 3−ハロゲン化プロピルトリアルコキシシランが、3−ヨードプロピルトリメトキシシランであることを特徴とする請求項4記載の4−メチレン−5−ヘキセニルトリアルコキシシランの製造方法。
  6. 3−ハロゲン化プロピルトリアルコキシシランが、3−ヨードプロピルトリエトキシシランであることを特徴とする請求項4記載の4−メチレン−5−ヘキセニルトリアルコキシシランの製造方法。
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