JP4573497B2 - 燃料電池発電システム用の純水タンク - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は燃料電池発電システム用の純水タンクに関する。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池発電システムでは、燃料電池スタックに供給される燃料ガスおよび酸化剤ガスを加湿するために純水が不可欠となるが、寒冷地等で車両を長時間停車した状態では純水の凍結が生じる。
【0003】
従って、前記発電システムの始動性を改善するためには、純水の解氷促進が要求され、そのため、従来では例えば、特開2000−149970号公報に示されているように、純水タンクに予備タンクを付設すると共に、この予備タンクの周側にヒータを設け、発電システムの始動時には予備タンク内の凍結した純水をヒータによって解氷し、該予備タンクの純水を使用するようにしたものが知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来の構造にあっては、予備タンクの周壁にヒータを埋め込んで構成しているが、予備タンク内の純水の氷塊が解凍する場合、氷塊の周囲が解凍するのは早いが、氷塊の中心部ほど解凍が遅れて、氷塊の全部がとけるまでに長時間を要し、結局、始動性を大幅に改善するには至らない。
【0005】
そこで、本発明は簡単な構成により純水の氷塊の解凍時間を短縮できて、始動性を著しく改善することができる燃料電池発電システム用の純水タンクを提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明にあっては、燃料電池発電システムに用いられる純水タンクであって、
該純水タンクは底壁と周側壁と上壁とからなる方形のタンク本体と、
少なくとも前記底壁から周壁側に亘って設けられて、内部に液熱媒が導入されるジャケットと、
前記周壁側の対向する一対の側壁における側部ジャケットに熱液媒が導入される導入側ヘッダと、液熱媒が導出される導出側ヘッダとを設定し、タンク本体内を横切ってこれらヘッダに跨って連通接続した複数の熱媒チューブと、を備えたことを特徴としている。
【0007】
請求項2の発明にあっては、請求項1に記載の燃料電池発電システム用の純水タンクにおいて、前記熱媒チューブは扁平に形成してあって、タンク本体への両接続端を結ぶ方向に対し交差する方向に沿った断面の長径方向を垂直にして配置したことを特徴としている。
【0008】
請求項3の発明にあっては、請求項2に記載の燃料電池発電システム用の純水タンクにおいて、前記熱媒チューブのタンク本体への両接続端を結ぶ方向に対し交差する方向に沿った断面の長径の中央部分にタンク本体への両接続端を結ぶ方向に対し交差する方向に沿った断面の短径方向の両側壁に跨る補強リブを設けたことを特徴としている。
【0010】
請求項4の発明にあっては、請求項1〜3に記載の燃料電池発電システム用の純水タンクにおいて、前記熱媒チューブは、その外面にフィンを備えていることを特徴としている。
【0012】
請求項5の発明にあっては、請求項1〜4に記載の燃料電池発電システム用の純水タンクにおいて、前記タンク本体を、底壁側から上壁側に向けて末広がりの四角錐状に形成したことを特徴としている。
【0013】
請求項6の発明にあっては、請求項1〜5に記載の燃料電池発電システム用の純水タンクにおいて、前記タンク本体の周側壁の隅角部分で、側部ジャケットに曲面を付与したことを特徴としている。
【0014】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、タンク本体の少なくとも底壁から周側壁に亘ってジャケットを形成してあると共に、該ジャケットの導入側ヘッダと導出側ヘッダとに跨ってタンク本体内を横切って複数の熱媒チューブを設けてあるため、これらジャケットおよび熱媒チューブへの液熱媒の導入により、純水の氷塊がその周囲および中央部から加熱されることに加えて、各隣接する熱媒チューブ間で氷塊の厚さが小さくされていることによって、氷塊全体を短時間に解凍することができて、燃料電池発電システムの始動性を著しく改善することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の発明の効果に加えて、各隣接する扁平の熱媒チューブ間で氷塊の厚さを小さくほぼ均一化できるため、氷塊の解凍を促進することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、請求項2の発明の効果に加えて、補強リブの存在によって熱媒チューブが氷塊の膨張力で変形するのを防止することができる。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1〜3の発明の効果に加えて、フィンの存在により熱媒チューブの伝熱面積が拡大され、より一層解凍促進を行うことができる。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1〜4の発明の効果に加えて、タンク本体の上壁部が末広がりとなっていて、氷塊の膨張の許容空間が拡大されるため、純水の凍結膨張によるタンク本体周側壁の変形を防止することができる。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、請求項1〜5の発明の効果に加えて、側部ジャケットの隅角部分に曲面を付与してあるため、該側部ジャケットにおける通路抵抗が低減されて液熱媒の流通をスムーズに行わせることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面と共に詳述する。
【0023】
図1は本発明の純水タンクを備えた燃料電池発電システムの概略を示している。
【0024】
図1において、燃料電池スタック110は、燃料ガスとして圧縮水素タンク120より純水素が導入される燃料極111と、酸化剤ガスとして外部から取り入れた空気が導入される空気極112とを備え、これら燃料極111に導入された純水素と空気極112に導入された空気中の酸素とを、図外の電解質膜を介して反応させることにより発電させる。
【0025】
燃料電池スタック110に供給される前記水素および空気は、発電作用の活性化および電解質膜の劣化防止のため加湿器130で加湿され、この加湿器130には純水タンク10に貯留された純水が供給される。
【0026】
前記水素と空気の加湿に供された純水は、燃料電池スタック110の排気系より、これら水素と空気中の酸素との反応により生成した純水と共に前記純水タンク10に回収される。
【0027】
また、前記燃料電池スタック110では、発電時に発熱するため、この燃料電池スタック110にラジエータ140より冷却液を循環させて、該燃料電池スタック110を冷却するようにしている。
【0028】
ラジエータ140と燃料電池スタック110とを循環する冷却液として不凍液が用いられ、本実施形態では前記純水タンク10に設けられた後述するジャケット17の液熱媒としてこの不凍液が用いられ、燃料電池スタック110とラジエータ140とを結ぶ冷却液経路141にこのジャケット17を介装している。
【0029】
また、この冷却液経路141の燃料電池スタック110とジャケット17との間には加熱装置142が設けられ、必要なときには冷却液を加熱することができるようになっている。この加熱装置142は電気ヒータや、燃料電池スタック110からの排水素を燃焼した熱を利用することができる。
【0030】
尚、図1中、細い実線αは空気の流通経路、一点鎖線βは水素の流通経路、破線γは不凍液の流通経路、太い実線δは加湿用の純水の流通経路を示す。
【0031】
図2〜図4は本発明の純水タンク10の第1実施形態を示しており、純水を貯留するタンク本体11は、底壁12と周側壁13と上壁14とで方形に形成してある。
【0032】
上壁14は周側壁13の上縁フランジ13e上にボルト・ナット等の締結手段によって締結固定されるもので、図2、図4ではこの上壁14を取り外した状態を示している。
【0033】
このタンク本体11はイオン発生の影響の少ないステンレス鋼材が用いられており、本実施形態では底壁12側から上壁14側に向けて末広がりのテーパ状に形成してある。
【0034】
純水導入パイプ15と純水導出パイプ16は前記上壁14を貫通して設けてあり、純水導出パイプ16はその下端を底壁12の近傍にまで延出してある。
【0035】
そして、本実施形態ではタンク本体11の底壁12から周側壁13に亘って、内部に液熱媒が導入されるジャケット17を形成してある。
【0036】
前記周側壁13の対向する一対の側壁13a,13bにおける側部ジャケット17B,17Bの一方は、熱媒導入パイプ20を介して液熱媒が導入される導入側ヘッダ18とし、他方は熱媒導出パイプ21を介して液熱媒が導出される導出側ヘッダ19としてあって、タンク本体11内には、該タンク本体11内を横切ってこれら両ヘッダ18,19に跨って連通接続した複数の熱媒チューブ22を設けてある。
【0037】
この熱媒チューブ22は扁平に形成してあって、その長径方向を垂直にして底壁12の近傍位置から等間隔で平行に配設してある。
【0038】
また、各熱媒チューブ22の長径の中央部分には、短径方向の両側壁に跨る補強リブ23を設けてある。
【0039】
熱媒導入パイプ20および熱媒導出パイプ21は、それぞれ対応する導入側ヘッダ18、導出側ヘッダ19の長さ方向端部に、ヘッダ断面の略中心位置に設けてある。
【0040】
側部ジャケット17Bのうち、前記導入側ヘッダ18、導出側ヘッダ19と90度位相を異にした側部ジャケット17B’は、底壁12の延長部12aにより底部ジャケット17Aと隔成すると共に、側壁13c,13dと略平行に比較的に狭い間隙で形成して、導入側ヘッダ18,導出側ヘッダ19よりも断面積を小さくしてある。
【0041】
前記熱媒チューブ22は、その通路断面積又は相当直径D(D=4S/L S:断面積、L:周長)をこの側部ジャケット17B’と略同一に設定してある。
【0042】
前記ジャケット17は、熱媒導入パイプ20および熱媒導出パイプ21を介して前記図1に示した冷却液経路141に連通接続していて、燃料電池スタック110からラジエータ140へ帰還する不凍液が導入されるようになっている。
【0043】
また、側部ジャケット17Bは、内部に導入された液熱媒の液位が、タンク本体11内の純水の凍結時の上面高さ位置よりも高くなるように設定してある。
【0044】
図3,4中、24はタンク本体11内から純水を抜くためのドレーン部を示す。
【0045】
以上の第1実施形態の構造によれば、寒冷地等の低温環境下で車両を長時間停車すると、純水タンク10内の純水は凍結して氷塊となるが、燃料電池発電システムの始動時にラジエータ140の冷却系の図外のウオータポンプを駆動して、ジャケット17に燃料電池スタック110で熱交換した不凍液を循環させることにより、該不凍液が側部ジャケット17B、底部ジャケット17A、および熱媒チューブ22内を流通して、タンク本体11内の氷塊の周側部、底部、および中心部分を含めた全体で熱交換が行われ、氷塊全体を短時間に解凍することができて、燃料電池発電システムの始動性を著しく改善することができる。
【0046】
また、燃料電池スタック110から発生する熱量では純水タンク10の氷塊を所望の時間で解凍できない場合は、冷却系の燃料電池スタック110と純水タンク10のジャケット17との間に設けた加熱装置142で前記不凍液を加熱することにより、燃料電池発電システムの始動性を改善することができる。
【0047】
ここで、本実施形態にあっては、各隣接する扁平の熱媒チューブ22間で氷塊の厚さを小さくほぼ均一化できるため、氷塊の解凍を促進することができる。
【0048】
また、側部ジャケット17Bの導入側ヘッダ18、導出側ヘッダ19のヘッダ断面の略中心位置に、熱媒導入パイプ20、熱媒導出パイプ21を設けてあるため、各熱媒チューブ22へ液熱媒を均等分配できることと、熱媒チューブ22と平行な側部ジャケット17B’と、該熱媒チューブ22が略同一断面積としてあって、これら両者に液熱媒を均等分配できることが相俟って、解凍性能を高めることができる。
【0049】
このような解凍性能上の効果とは別に、熱媒チューブ22は扁平に形成してあっても、補強リブ23の存在によって、氷塊の膨張力で熱媒チューブ22が変形するのを防止することができる。
【0050】
また、タンク本体11は上側部が末広がりとなっていて、氷塊の膨張の許容空間が拡大されるため、純水の凍結膨張によるタンク本体11の周側壁13の変形を防止することができる。
【0051】
図5は本実施形態の純水タンク10と、本実施形態の構造において熱媒チューブ22を設けずにジャケット17のみを設けた構造を比較例として、それらの解凍性能を比較して示すグラフで、同図のa線が本実施形態を、b線が比較例を示しており、本実施形態ではa線で示すようにジャケット17と熱媒チューブ22との加熱作用によって、同図b線で示す比較例よりも解凍性能が格段と高いことが判る。
【0052】
図6〜図9は本発明の第2実施形態を示すもので、本実施形態ではジャケット17の導入側ヘッダ18および側部ジャケット17B’,17B’と、底部ジャケット17Aとを、底壁12の延長部12aで完全に隔成し、導出側ヘッダ19を底部ジャケット17Aと連通させている。
【0053】
底部ジャケット17Aは、導入側ヘッダ18の下側で上方に拡大してあり、熱媒導入パイプ20を導入側ヘッダ18の幅方向中央部に設け、熱媒導出パイプ21は、この熱媒導入パイプ20の下側で底部ジャケット17Aの前記拡大部分に設けてある。
【0054】
また、熱媒チューブ22は円形に形成して上下に多段に配置してある。
【0055】
下段の熱媒チューブ22は上段の熱媒チューブ22,22の中間位置となるように配置され、各熱媒チューブ22はその外面にフィン25を設けてある。
【0056】
また、タンク本体11の周側壁13の隅角部分では、側部ジャケット17を所要の曲率半径で弯曲成形して曲げRを付与してある。
【0057】
この第2実施形態では、熱媒導入パイプ20から導入された液熱媒は、導入側ヘッダ18で複数の熱媒チューブ22にほぼ均等に分配されると共に、側部ジャケット17B’,17B’に分配され、これら熱媒チューブ22と側部ジャケット17B’を流通した液熱媒は導出側ヘッダ19で集合されて底部ジャケット17Aに入り、該底部ジャケット17Aから熱媒導出パイプ21を介してジャケット17外へ導出される。
【0058】
従って、この第2実施形態にあっても前記第1実施形態とほぼ同様の解凍促進を行えて、燃料電池発電システムの始動性を改善することができる。
【0059】
また、本実施形態では熱媒チューブ22はその外面にフィン25を備えているため、熱媒チューブ22の伝熱面積が拡大されて、氷塊中心部分の解凍促進効果を高めることができる。
【0060】
また、側部ジャケット17Bはその隅角部に曲げRを付与してあるため、該側部ジャケット17Bにおける通路抵抗が低減されて液熱媒の流通をスムーズに行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の純水タンクを用いた燃料電池発電システムの概略説明図。
【図2】 本発明の第1実施形態を示す平面図。
【図3】 図2のA−A線に沿う断面図。
【図4】 図3の左側から見た半断面図。
【図5】 本発明の第1実施形態における解凍性能を比較例と比較して説明するグラフ。
【図6】 本発明の第2実施形態を示す平面図。
【図7】 図6の側面図。
【図8】 図6のB−B線に沿う断面図。
【図9】 図7の左側から見た側面図。
【符号の説明】
10…純水タンク
11…タンク本体
12…底壁
13…周側壁
14…上壁
17…ジャケット
17A…底部ジャケット
17B,17B’…側部ジャケット
18…導入側ヘッダ
19…導出側ヘッダ
20…熱媒導入パイプ
21…熱媒導出パイプ
23…補強リブ
25…フィン
Claims (6)
- 燃料電池発電システムに用いられる純水タンク(10)であって、
該純水タンク(10)は底壁(12)と周側壁(13)と上壁(14)とからなる方形のタンク本体(11)と、
少なくとも前記底壁(12)から周側壁(13)に亘って設けられて、内部に液熱媒が導入されるジャケット(17)と、
前記周側壁(13)の対向する一対の側壁(13a),(13b)における側部ジャケット(17B),(17B)に液熱媒が導入される導入側ヘッダ(18)と、液熱媒が導出される導出側ヘッダ(19)とを設定し、タンク本体(11)内を横切ってこれらヘッダ(18),(19)に跨って連通接続した複数の熱媒チューブ(22)と、を備えたことを特徴とする燃料電池発電システム用の純水タンク。 - 熱媒チューブ(22)は扁平に形成してあって、タンク本体(11)への両接続端を結ぶ方向に対し交差する方向に沿った断面の長径方向を垂直にして配置したことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池発電システム用の純水タンク。
- 熱媒チューブ(22)のタンク本体(11)への両接続端を結ぶ方向に対し交差する方向に沿った断面の長径の中央部分にタンク本体(11)への両接続端を結ぶ方向に対し交差する方向に沿った断面の短径方向の両側壁に跨る補強リブを設けたことを特徴とする請求項2に記載の燃料電池発電システム用の純水タンク。
- 熱媒チューブ(22)は、その外面にフィン(25)を備えていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の燃料電池発電システム用の純水タンク。
- タンク本体(11)を、底壁(12)側から上壁(14)側に向けて末広がりの四角錐状に形成したことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の燃料電池発電システム用の純水タンク。
- タンク本体(11)の周側壁(13)の隅角部分で、側部ジャケット(17B)に曲面を付与したことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の燃料電池発電システム用の純水タンク。
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