JP4572503B2 - 発光素子駆動装置および発光システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、発光素子の駆動装置に関し、特にレーザゼログラフィーにその光源として用いられる多数のレーザ光ビームを出射可能なレーザ素子(マルチビームレーザ)の駆動に用いて好適な発光素子駆動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
レーザ素子を光源とするレーザゼログラフィーの分野では、より高解像度化、より高速化の要求が強くなってきている。入力画像データに応じてレーザ素子の駆動をオン/オフ制御する速度(以下、変調速度と記す)には限度がある。レーザ光のビーム数を1本とした場合には、主走査方向の解像度のみならず、副走査方向の解像度をも上げようとすると、変調速度が犠牲にならざるを得ない。したがって、変調速度を上げずに副走査方向の解像度を上げるためには、レーザ光のビーム数を増すしかない。レーザ光のビーム数を例えば4本にした場合は、変調速度が1本の場合と同じと仮定すると、主走査・副走査方向の解像度を2倍に向上できる。
【0003】
レーザゼログラフィーにその光源として用いられる半導体レーザは、レーザ光が活性層と平行な方向に取り出される構造の端面発光型レーザ素子(以下、端面発光レーザと記す)と、レーザ光が活性層に垂直な方向に取り出される構造の面発光型レーザ素子(以下、面発光レーザと記す)とに大別される。従来、レーザゼログラフィーでは、レーザ光源として一般的に端面発光レーザが用いられていた。
【0004】
しかしながら、レーザ光のビーム数を増やすという観点からすると、端面発光レーザは技術的に難しいとされており、構造上、端面発光レーザよりも面発光レーザの方がレーザ光のビーム数を増やすのに有利である。このような理由から、近年、レーザゼログラフィーの分野において、より高解像度化、より高速化の要求に応えるために、レーザ光源として、多数のレーザ光ビームを出射可能な面発光レーザを用いた装置の開発が進められている。
【0005】
従来、多数のレーザ光ビームを出射可能なレーザ素子(マルチビームレーザ)の光量制御では、レーザ光ビーム毎に目標光量に対応した基準電圧を独立に設定可能とし、各レーザ光ビームの光量を1つの光量検出回路で時分割にて個々に検出し、それぞれの検出結果に応じて各レーザ光ビームの光量制御を行うようにしていた(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、マルチビームレーザを光源として用いたレーザゼログラフィーでは、走査ライン間の濃度変化や光路による濃度差が発生する場合があるため、レーザ光ビーム個々に光量を補正できることが必要になる。そのため、従来は、基準光量を設定する電流源から補正電流を減算することによってレーザ光ビームの光量を補正可能とし、レーザ光ビームの光量を個別に補正する際に、レーザ光ビーム毎に補正電流を切り替えるようにしていた(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
【特許文献1】
特公平7−12709号公報
【特許文献2】
特開平10−129034号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上述した特許文献1に係る従来技術は、各レーザ光ビームの受光器への入射光量に違いが有るときに有効であるものの、受光器への入射光量に違いが無いときには、基準電圧がレーザ光ビーム毎に独立していることがビーム光量のばらつきの原因になるとともに、濃度調整で全ビーム光量を同時に変化させることができないという制御性の問題がある。しかも、数十ビームの調整をマニュアルで行うことは現実的ではない。また、時分割での光量制御では、隣接するビームで基準電圧が異なると収束に時間がかかるという制御時間の問題もある。
【0009】
特許文献2に係る従来技術では、光量を補正する場合には、基準光量を設定する電流源から補正電流を減算する構成を採っているため、当該電流源で基準光量が均一光量になるように設定すれば制御性の問題は無い。しかし、レーザ素子が例えば面発光レーザの場合には制御時間の問題は残る。面発光レーザの場合における制御時間の問題は次の理由による。
【0010】
面発光レーザの場合、光量制御を行うに当たっては、レーザ光ビームを活性層に垂直な方向に出射するという面発光レーザ固有の構造上の制約から、ハーフミラーを含む光学系によって出射光の一部を分離し、この分離した光をモニター光として受光器に入射させることによって面発光レーザの光量を検出する構成が採られる。
【0011】
このように、面発光レーザ、光学系および受光器の各素子がアセンブリされた構成となっていると素子相互の位置精度が悪く、そのような状況下でモニター光を確実に受光できるようにするには受光器の受光面積を大きく設定する必要があるため、受光器の寄生容量が非常に大きくなる。しかも、面発光レーザと受光器との間にハーフミラーを含む光学系が介在するなどの理由によって受光器の出力電流(光電流)自体が非常に小さく、端面発光レーザの受光電流が100μA程度であるのに対して数μA程度の微弱電流である。
【0012】
ここで、特許文献2に係る従来技術をベースに、面発光レーザの光量制御を行う場合について、図9を用いて説明する。図9では、説明を簡略化するために、面発光レーザの発光部が2つ(発光素子1,2)の場合の光量制御回路の構成を示している。
【0013】
図9において、2つの発光素子101−1,101−2の各々から発せられるレーザ光ビームは受光器102で受光される。受光器102は、受光したレーザ光ビームの光量に応じた光電流を出力する。この光電流は、受光器負荷抵抗103で電圧に変換され、光量検出電圧として差動アンプ104の反転(−)入力端子に与えられる。
【0014】
一方、電流源105から供給される基準電流は抵抗106で電圧に変換され、目標光量に対応した基準電圧として差動アンプ104の非反転(+)入力端子に与えられる。また、光量を補正する際には、スイッチ107がオン(閉)することによって電流源108から供給される補正電流が基準電流に重畳され、抵抗106で電圧に変換され、差動アンプ104の非反転入力端子に与えられる。
【0015】
差動アンプ104は、反転入力と非反転入力との差分を検出し、その差分を光量制御電圧として出力する。この光量制御電圧は、サンプルホールド回路109でサンプルホールドされ、発光素子101−1,101−2の各々に対応する駆動回路110−1,110−2に供給される。
【0016】
上記構成の光量制御回路において、補正電流も基準電流もその大きさは任意に設定できるので、差動アンプ104の非反転入端子の寄生容量は無視でき、当該非反転入端子に与えられる基準電圧は、発光素子101−1と発光素子101−2とで高速に切り替わる。しかし、発光素子101−1,101−2が特に面発光レーザの場合には、先述したように、受光器102の寄生容量Coが大きく、しかも光電流が小さいことから、図10の波形図から明らかなように、受光器102の出力波形になまりが発生するため、検出電圧が基準電圧に一致するのに長時間を要する。また、個々のレーザ光ビームについて別々の光量で制御しようとすると、基準電圧が変化するたびに制御時間が長くなる。
【0017】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、光量制御の制御性、制御時間を損なうことなく、個々のビーム光量を基準光量に対して比例して補正可能な発光素子駆動装置を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発光素子駆動装置は、複数の発光素子から互いに異なるタイミングで発せられる光を受光する受光手段と、前記複数の発光素子の規定の目標光量に対応する電流値の基準電流を供給する第1の供給手段と、前記複数の発光素子毎の光量の前記目標光量からの補正量に対応する補正電流であって、前記第1の供給手段から供給される基準電流の電流値に応じて電流値が変化する補正電流を供給する第2の供給手段と、前記補正電流を前記基準電流に重畳するときとしないときとを切り替えるスイッチとを有し、前記発光素子の光量を補正するときに、前記補正電流を前記基準電流に重畳して供給する電流供給手段と、前記受光手段から供給される光電流から前記電流供給手段から供給される電流を差し引いた差分電流が一方の端子に入力され、所定の基準値が他方の端子に入力されると、当該差分電流と当該基準値との差分を検出する差分検出手段と、前記差分検出手段により検出された差分に基づいて前記複数の発光素子をそれぞれ駆動する駆動手段とを備える構成となっている。
【0019】
上記構成の発光素子駆動装置において、第2の供給手段では基準電流を基に補正電流を生成するようにすることで、光量調整を行うために基準電流の電流値を変えると、この基準電流に応じて補正電流の電流値も変化する。したがって、複数の発光素子について個別に基準値を調整しなくても光量調整を行うことができる。また、複数の発光素子の全てを対象として均一光量に制御するときも、補正電流を基準電流に重畳しないようにするだけなので、基準電流の電流値のばらつきで光量の均一性が悪化するようなこともない。さらに、複数の発光素子を個別に対象として時分割制御で別々に光量制御する場合において、発光素子個別に補正値を設定しても、差分検出手段の基準側の入力電位が変動しないため、収束性を損なうこともない。
【0020】
請求項2記載の発光素子駆動装置は、請求項1記載の発光素子駆動装置において、前記第2の供給手段はデジタル制御の複数の電流源を有し、これら複数の電流源の各電流値を組み合わせることによって前記補正電流の電流値を決める構成となっている。かかる構成の発光素子駆動装置において、第2の供給手段がデジタル制御の複数の電流源によって構成されていることで、これら複数の電流源の各電流値をデジタル制御値によって自由に組み合わせることができる。これにより、補正電流を電流値を任意に設定したり、簡単に変更したりすることができる。
【0021】
請求項3記載の発光素子駆動装置は、請求項1記載の発光素子駆動装置において、前記複数の電流源は、各々の電流値が2nの重み付けで設定された構成となっている。かかる構成の発光素子駆動装置において、複数の電流源の各電流値を2nの重み付けで設定することで、それらの組み合わせによって補正光量の増減分を均等に設定することができる。これにより、効率良く光量補正を行うことができる。
【0022】
請求項4記載の発光素子駆動装置は、請求項1記載の発光素子駆動装置において、前記第2の供給手段は、前記複数の電流源を制御するデジタル制御値を格納する記憶手段を有し、前記記憶手段から対応するデジタル制御値を読み出して前記複数の電流源の各電流値の組み合わせを決める構成となっている。かかる構成の発光素子駆動装置において、第2の供給手段がデジタル制御の複数の電流源によって構成されていることで、これら複数の電流源の各電流値をデジタル制御値によって自由に組み合わせることができる。これにより、補正電流を電流値を任意に設定したり、簡単に変更したりすることができる。
【0023】
請求項5記載の発光素子駆動装置は、請求項1記載の発光素子駆動装置において、前記第2の供給手段は、吸い込み電流源、吐き出し電流源あるいはそれらの組み合わせで構成されている。かかる構成の発光素子駆動装置において、第2の供給手段を吸い込み電流源で構成することで、基準電流に対して補正電流を差し引く形で重畳することができる。これにより、目標光量に対して発光光量を下げる(弱める)方向に光量補正できる。逆に、第2の供給手段を吐き出し電流源で構成することで、基準電流に対して補正電流を足し込む形で重畳することができる。これにより、目標光量に対して発光光量を上げる(強める)方向に光量補正できる。
【0024】
請求項6記載の発光素子駆動装置は、請求項1記載の発光素子駆動装置において、前記第2の供給手段は、光量制御の切り替えと同時に前記補正電流の供給を開始する構成となっている。かかる構成の発光素子駆動装置において、光量制御の切り替えのタイミングで補正電流の供給を開始することで、そのタイミングがずれたときのようなオーバーシュートなどを引き起こすことなく、光量制御から光量補正へ移行できる。
【0025】
請求項7記載の発光素子駆動装置は、請求項1記載の発光素子駆動装置において、前記第1の供給手段は、前記基準電流を出力する第1の電流源と、前記第1の電流源の前記基準電流を出力する第1の端子と固定電位が与えられる第2の端子とを持つ第1のスイッチ手段とを有する構成となっている。かかる構成の発光素子駆動装置において、第1のスイッチ手段は、オフ時に第2の端子側の状態にあり、オン時に第1の端子側に切り替わって前記第1の電流源の基準電流を出力する。この第1のスイッチ手段において、第2の端子に第1の端子に切り替わった際の第1の端子電位に近い固定電位が与えられるようにしておくことで、オフ状態では可動端子も当該固定電位になっているため、オンした瞬間に第1の端子側の電位が急激に変動することはない。したがって、この電位変動に起因するノイズの発生を防止できる。
【0026】
請求項8記載の発光素子駆動装置は、請求項7記載の発光素子駆動装置において、前記第1の供給手段は、前記基準電流と電流値が等しい電流を出力する第2の電流源と、前記第2の電流源の電流に応じた電圧を前記第1のスイッチ手段の第2の端子に与える手段とを有する構成となっている。かかる構成の発光素子駆動装置において、第2の電流源の電流に応じた電圧を第1のスイッチ手段の第2の端子に与えることで、当該第2の端子電位を第2の電流源の電流に対応した電位に固定できる。したがって、特別な電圧源を設けなくても、第2の端子に固定電位を与えられることができる。
【0027】
請求項9記載の発光素子駆動装置は、請求項1記載の発光素子駆動装置において、前記第2の供給手段は、前記補正電流を出力する第3の電流源と、前記第3の電流源の前記補正電流を出力する第1の端子と固定電位が与えられる第2の端子とを持つ第2のスイッチ手段とを有する構成となっている。かかる構成の発光素子駆動装置において、第2のスイッチ手段は、オフ時に第2の端子側の状態にあり、オン時に第1の端子側に切り替わって前記第3の電流源の補正電流を出力する。この第2のスイッチ手段において、第2の端子に第1の端子に切り替わった際の第1の端子の電位に近い固定電位を与えるようにしておくことで、オフ状態では可動端子も当該固定電位になっているため、オンした瞬間に第1の端子側の電位が急激に変動することはない。したがって、この電位変動に起因するノイズの発生を防止できる。
【0028】
請求項10記載の発光素子駆動装置は、請求項9記載の発光素子駆動装置において、前記第2の供給手段は、前記補正電流と電流値が等しい電流を出力する第4の電流源と、前記第4の電流源の電流に応じた電圧を前記第2のスイッチ手段の第2の端子に与える手段とを有する構成となっている。かかる構成の発光素子駆動装置において、第4の電流源の電流に応じた電圧を第2のスイッチ手段の第2の端子に与えることで、当該第2の端子電位を第4の電流源の電流に対応した電位に固定できる。したがって、特別な電圧源を設けなくても、第2の端子に固定電位を与えられることができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。以下に説明する各実施形態では、例えば半導体レーザ、特に内部抵抗が大きいGaN系青色レーザやシングルモード面発光レーザを駆動対象の発光素子として用いるものとする。
【0030】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る発光素子駆動装置の構成を示す回路図である。本実施形態に係る発光素子駆動装置においては、例えば2つの発光素子11−1,11−2を駆動する構成を採っている。ただし、2つの発光素子11−1,11−2の駆動に限られるもののではなく、単一あるいは3個以上の発光素子を駆動する構成であっても良いことは勿論である。
【0031】
図1から明らかなように、本実施形態に係る発光素子駆動装置は、2つの発光素子11−1,11−2を駆動制御するために、受光器12、基準電流供給回路13、補正信号生成回路14、補正電流供給回路15、差分検出回路16および2つの駆動回路17−1,17−2を少なくとも有する構成となっている。ここでは、発光素子11−1,11−2の発光光量を目標光量になるように自動的に制御する光量制御回路の回路系の構成について示している。
【0032】
受光器12は例えばフォトダイオードからなり、発光素子11−1/11−2から発せられる光ビームを受光し、その光量に応じた光電流Ipdを出力する。
ここで、発光素子11−1,11−2が面発光レーザである場合、先述したように、これら発光素子11−1,11−2から発せられる光を確実に受光できるようにするには受光器12の受光面積を大きく設定する必要があるため、受光器12の寄生容量(主に、フォトダイオードの空乏層容量)Coが非常に大きくなってしまう。
【0033】
基準電流供給回路13は、発光素子11−1,11−2の目標光量(規定光量)に対応した電流値の基準電流I1を生成し、発光素子11−1,11−2の全てを対象とする光量制御のときに基準電流I1を光量制御系へ供給する。ここでは、基準電流I1を光電流Ipdから差し引いて残りの電流Ipd−I1を光量制御系へ供給する構成を採っている。基準電流供給回路13では、外部からの基準電流制御によって基準電流I1の電流値を任意に設定可能となっている。
【0034】
補正信号生成回路14は、基準電流I1を基にその電流値に応じた補正信号を生成する。補正電流供給回路15は、補正信号生成回路14で生成された補正信号に応じた補正電流I2を、発光素子11−1,11−2を個別に対象とする光量制御のときにスイッチ18がオン(閉)状態となることにより、当該スイッチ18を介して補正電流I1に重畳して光量制御系へ供給する。ここでは、基準電流I1+補正電流I2を光電流Ipdから差し引いて残りの電流Ipd−(I1+I2)を光量制御系へ供給する構成を採っている。補正電流I2について、ここでは光電流Ipdから差し引く方向になっているが、光電流Ipdに加算する方向にすることもできる。
【0035】
差分検出回路16は、差動アンプ161およびサンプルホールド回路162を有する構成となっている。差動アンプ161は、所定の基準値を非反転(+)入力とし、発光素子11−1,11−2を同一光量に制御するときは、光電流Ipdから基準電流I1を差し引いた電流Ipd−I1を反転(−)入力とし、また発光素子11−1,11−2の光量を補正したいときは、SW162、SW19−1,19−2に同期してスイッチ18を制御し光電流Ipdから補正電流I2が重畳された基準電流I1を差し引いた電流Ipd−(I1+I2)を反転入力とする。
【0036】
ここで、発光素子11−1,11−2が目標光量で発光しているときは、当該目標光量に対応して設定されている基準電流I1と等しい電流値の光電流Ipdが受光器12から出力される。したがって、差動アンプ161の反転入力端子に流れ込む電流Ipd−I1は誤差を無視すれば0となる。一方、差動アンプ161の非反転入力端子に与えられる基準値は、目標光量時の電流Ipd−I1に設定され、ここではIpd−I1=0であるから、0レベル、即ちGNDレベルにとなる。
【0037】
差動アンプ161は、非反転入力(基準値)に対する反転入力、即ち発光素子11−1,11−2を同一光量となるよう光量制御するときには電流Ipd−I1、発光素子11−1,11−2の光量を個別に補正するときには電流Ipd−(I1+I2)の差分を検出し、その差分に応じた誤差電圧を光量制御電圧として出力する。
【0038】
サンプルホールド回路162は、発光素子11−1と発光素子11−2の駆動を切り替えるスイッチSWと、このスイッチSWの2つの端子a,bの各々とグランドの間にそれぞれ接続されたコンデンサC1,C2とから構成されている。このサンプルホールド回路162において、発光素子11−1の駆動時にスイッチSWが端子a側に切り替わることで、差動アンプ161で検出された誤差電圧がコンデンサC1にホールドされ、発光素子11−2の駆動時にスイッチSWが端子b側に切り替わることで、差動アンプ161で検出された誤差電圧がコンデンサC2にホールドされる。
【0039】
駆動回路17−1,17−2は、コンデンサC1,C2のホールド電圧に応じて発光素子11−1,11−2をそれぞれ駆動する。駆動回路17−1,17−2の各々と発光素子11−1,11−2の各々の間には、発光素子11−1,11−2を駆動するタイミングでオン(閉)状態になるスイッチ19−1,19−2が設けられている。
【0040】
図2は、基準電流供給回路13、補正信号生成回路14および補正電流供給回路15の具体的な回路構成の一例を示す回路図である。
【0041】
図2において、基準電流供給回路13は、可変直流電源21の正側電極に非反転入力端子が接続されたオペアンプ22と、このオペアンプ22の出力端子にゲートが接続されたNchMOSトランジスタ23と、このMOSトランジスタ23のソースとグランドの間に接続された抵抗24とを有し、MOSトランジスタ23のソースがオペアンプ22の反転入力端子に接続され、MOSトランジスタ23のドレインから、可変直流電源21の直流電圧に応じた基準電流I1を吸い込む構成となっている。ここで、基準電流I1の電流値は、可変直流電源21の電圧値に応じて可変となっている。
【0042】
補正信号生成回路14は、可変直流電源21の正側電極とグランドとの間に直列に接続された分圧抵抗25,26によって構成され、分圧抵抗25,26による分圧点Oに分圧抵抗25,26の抵抗比に応じた補正電圧Voを補正信号として発生するようになっている。すなわち、基準電流I1を生成する基準電圧となる直流電圧を分圧して補正電圧Voを得ているため、当該補正電圧Voは基準電流I1を基に生成されているとも言える。
【0043】
ここでは、分圧抵抗25,26の各抵抗値を固定としているが、それらの少なくとも一方を可変抵抗とし、当該可変抵抗の抵抗値を任意に調整するか、あるいは可変抵抗器のタップからの分圧された電圧を取り出すことによって補正電圧Voの電圧値も任意に設定可能となる。基準電流制御のための制御電圧を抵抗の分圧で得る場合のように、補正電圧Voを得る分圧回路の直列抵抗が変化すると基準電流制御のための制御電圧も影響を受けるような場合には補正電圧Voを得るための分圧回路は直列抵抗が常に一定の可変抵抗器で構成することが望ましい。
【0044】
補正電流供給回路15は、分圧抵抗25,26による分圧点Oに非反転入力端子が接続されたオペアンプ27と、このオペアンプ27の出力端子にゲートが接続されたNchMOSトランジスタ28と、このMOSトランジスタ28のソースとグランドの間に接続された抵抗29とを有し、MOSトランジスタ28のソースがオペアンプ27の反転入力端子に接続され、MOSトランジスタ28のドレインから、上記補正電圧Voに応じた補正電流I2を吸い込む構成となっている。補正電圧Voの電圧値を変えることにより、その電圧値に応じて補正電流I2の電流値を任意に設定可能となる。
【0045】
図3は、本実施形態に係る発光素子駆動装置における光量制御系の具体的な回路例を示す回路図である。ここでは、発光素子11−1/11−2を半導体レーザLDとし、受光器12をフォトダイオードPDとして説明するものとする。図1と図3の対応関係においては、図1の駆動回路17−1/17−2が、図3の駆動電流制御回路17Aおよび駆動電圧制御回路17Bに対応している。また、図3では、1つの発光素子、即ち発光素子11−1,11−2の一方の駆動系のみを示しており、マルチレーザビームの場合には駆動電流制御回路17Aおよび駆動電圧制御回路17Bからなる駆動回路がビームビーム数だけ並列的に配置されることになる。
【0046】
駆動電流制御回路17Aは、アナログインバータ111、リミット電圧発生回路112、比較器113、電流源114、コンデンサC51およびスイッチSW51,SW52,SW53によって構成されている。この駆動電流制御回路17Aでは、半導体レーザLDの発光光量が規定光量(目標光量)となるように当該半導体レーザLDの駆動電流の制御が行われる。この駆動電流制御回路17Aには、差分検出回路16で検出される誤差電圧が駆動電圧制御回路17Bを介して光量制御電圧Vcontとして供給される。
【0047】
この光量制御電圧Vcontは、スイッチSW51を経由し、アナログインバータ111で反転されてスイッチSW51の入力側の端子に与えられる。コンデンサC51は、電源VDDとスイッチSW51の出力側の端子との間に接続されることによって当該スイッチSW51と共にサンプルホールド回路を構成している。このサンプルホールド回路は、アナログインバータ111で反転されて与えられる光量制御電圧Vcontをサンプルホールドする。
【0048】
リミット電圧発生回路112、比較器113およびスイッチSW52は、半導体レーザLDに流れる駆動電流を制限するための電流制限回路(リミッター)を構成している。リミット電圧発生回路112は、半導体レーザLDに流れる駆動電流を制限するリミット電流に対応するリミット電圧Vlimを発生する。比較器113は、リミット電圧発生回路112で発生されるリミット電圧Vlimを反転(−)入力とし、アナログインバータ111およびスイッチSW11を通して与えられる光量制御電圧Vcontを非反転(+)入力としており、光量制御電圧Vcontがリミット電圧Vlimを上回ったときに比較出力が反転する。
【0049】
スイッチSW52は、アナログインバータ111およびスイッチSW51を通して与えられる光量制御電圧Vcontを一方の入力とし、リミット電圧発生回路112で発生されるリミット電圧Vlimを他方の入力としており、通常の光量制御時には光量制御電圧Vcontを選択し、比較器113の比較出力が反転したときには、当該比較出力の反転に応答して光量制御電圧Vcontに代えてリミット電圧Vlimを選択する。
【0050】
スイッチSW52によって選択される光量制御電圧Vcontまたはリミット電圧Vlimは、電流源114にその制御電圧として与えられる。電流源114はその一端が電源VDDに接続されている。スイッチSW53は、一端が電流源114の他端に、他端が半導体レーザLDのアノード(駆動端)にそれぞれ接続されている。
【0051】
かかる構成の駆動電流制御回路17Aにおいて、光量制御電圧Vcontは、インバータ111で反転された後、スイッチSW51およびコンデンサC51からなるサンプルホールド回路によってサンプルホールドされる。このサンプルホールドされた光量制御電圧Vcontは、スイッチSW52によって選択されることにより、電流源114にその制御電圧として与えられ、電流源114からスイッチSW53を通して半導体レーザLDに供給される駆動電流を制御する。
【0052】
これにより、駆動電流制御回路17Aでは、半導体レーザLDの光量が差分検出回路16の基準電圧Vrefで決まる規定光量(目標光量)となるように、当該半導体レーザLDの駆動電流の制御が行われる。これが、半導体レーザLDのレーザパワーを、基準電圧Vrefで規定されるパワーになるように制御するAPC(Automatic Power Control;自動光量制御)である。
【0053】
サンプルホールド後の光量制御電圧Vcontはさらに、比較器113において、リミット電圧発生回路112で発生されるリミット電圧Vlimと比較される。比較器113は、光量制御電圧Vcontがリミット電圧Vlimを上回るとき比較出力が反転し、スイッチSW52を切り替え制御する。これにより、スイッチSW52は、それまで選択していた光量制御電圧Vcontに代えてリミット電圧Vlimを選択して、半導体レーザLDにその制御電圧として与える。その結果、駆動電流制御回路17Aにおいては、半導体レーザLDに流れる駆動電流が、リミット電圧Vlimに対応した一定のリミット電流になるように電流制限が行われる。
【0054】
駆動電圧制御回路17Bは、差動アンプ121、4つのスイッチSW54〜SW57およびコンデンサC52によって構成されている。この駆動電圧制御回路17Bでは、駆動電流制御回路11によって規定光量に制御されているときの半導体レーザLDの端子電圧を基に、点灯時に当該半導体レーザLDに印加する駆動電圧の制御が行われる。
【0055】
差動アンプ121は、差分検出回路16の出力電圧を非反転入力としており、反転入力端子と出力端子がスイッチSW57によってショートされた場合にバッファとして動作するようになっている。スイッチSW54は、その一端が差動アンプ121の出力端子に接続されている。コンデンサC52は、スイッチSW54の他端とグランドとの間に接続されることによって当該スイッチSW54と共にサンプルホールド回路を構成している。
【0056】
スイッチSW55は、一端がスイッチSW54の他端に、他端が半導体レーザLDのアノードにそれぞれ接続されている。スイッチSW56は、一端がスイッチSW55の他端および半導体レーザLDのアノードに、他端が差動アンプ121の反転入力端子にそれぞれ接続されている。
【0057】
かかる構成の駆動電圧制御回路12において、半導体レーザLDの駆動電流の制御時、即ちAPC時(光量制御時)には、スイッチSW54,SW55,SW57が共にオフ状態、スイッチSW24がオン状態になる。すると、差分検出回路16で検出される誤差電圧が差動アンプ121およびスイッチSW56を経由して半導体レーザLDに印加され、フィードバックループが形成される。
【0058】
また、光量制御後の半導体レーザLDの変調時には、スイッチSW54,SW57が共にオン状態、スイッチSW55,SW56が共にオフ状態になる。すると、差動アンプ121の出力電圧、即ち光量制御終了時の半導体レーザLDの端子電圧がコンデンサC52にホールドされる。そして、コンデンサC52のホールド電圧は、半導体レーザLDの点灯時に、スイッチSW55がオンすることにより、当該スイッチSW55を介して半導体レーザLDの駆動端(アノード)にその駆動電圧として印加される。
【0059】
上述した駆動電流制御回路17Aおよび駆動電圧制御回路17Bからなる駆動回路17−1/17−2において、スイッチSW53,SW55,SW56が、図1のスイッチ19−1/19−2に対応している。
【0060】
差分検出回路16は、図1の場合と同様に、差動アンプ161およびサンプルホールド回路162によって構成され、光量検出電圧Vdetの基準電圧Vrefに対する差分(誤差電圧)を検出する。ただし、差動アンプ141の反転入力端子と出力端子との間には、スイッチSW58およびコンデンサC53が直列に接続されている。サンプルホールド回路162を構成するスイッチSW59およびコンデンサ54は、図1のスイッチSWおよびコンデンサC1/C2にそれぞれ対応している。
【0061】
かかる構成の差分検出回路16において、差動アンプ161は、半導体レーザLDの光量に応じた光量検出電圧Vdetを、半導体レーザLDの目標光量に対応して設定されている基準電圧Vrefと比較してその差分、即ち誤差電圧を出力する。差動アンプ161の出力電圧(誤差電圧)は、サンプルホールド回路162に与えられ、光量制御時にスイッチSW59がオンすることによってコンデンサ54にホールドされる。
【0062】
次に、上記構成の第1実施形態に係る発光素子駆動装置の回路動作について、図1を基に説明する。
【0063】
先ず、発光素子11−1,11−2の全てを同一光量で制御するときは、スイッチ18はオフ(開)状態にあり、スイッチ19−1,19−2が順番にオン/オフ動作を行うことにより、発光素子11−1,11−2について時分割にて光量制御が行われる。この光量制御時において、発光素子11−1/11−2の光量が目標光量からずれていると、そのずれ量に応じた光電流Ipdが受光器12から出力される。
【0064】
一方、基準電流供給回路13で目標光量に対応した基準電流I1が生成され、この基準電流I1が光電流Ipdから差し引かれ、その残りの電流Ipd−I1が差動アンプ161の反転入力端子に流れ込む。このとき、差動アンプ161の反転入力端子に流れ込む電流Ipd−I1の電流値は、発光素子11−1/11−2の光量の目標光量に対するずれ量に対応している。
【0065】
この発光光量のずれ量は、差動アンプ161で誤差電圧として検出され、当該誤差電圧は光量制御電圧としてサンプルホールド回路162でコンデンサC1/C2にホールドされる。そして、駆動回路17−1/17−2は、コンデンサC1/C2のホールド電圧に基づいて発光素子11−1/11−2を、その光量が目標光量になるように駆動する。この一連の光量制御により、発光素子11−1/11−2の光量が目標光量に収束する。
【0066】
次に、発光素子11−1,11−2を個別に対象とする光量制御(光量補正)のときは、スイッチ18がオン状態になるとともに、制御対象の発光素子11−1/11−2に対応するスイッチ19−1/19−2がオン状態になる。また、補正信号生成回路14では補正すべき光量に対応した補正電圧Voが生成され、この補正電圧Voに対応した補正電流I2が補正電流供給回路15によって吸い込まれる。
【0067】
これにより、受光器12から出力される光電流Ipdからは、基準電流供給回路13によって基準電流I1が、さらに補正電流供給回路15によって補正電流I2が差し引かれる。すなわち、基準電流I1に補正電流I2が重畳された電流I1+I2が光電流Ipdから差し引かれることになる。そして、残りの電流Ipd−(I1+I2)が差動アンプ161の非反転入力端子に流れ込む。
【0068】
ここで、発光素子11−1/11−2が基準電流I1に対応した目標光量で発光しているものとすると、Ipd=I1であるから、差動アンプ161の反転入力端子に流れ込む電流Ipd−(I1+I2)の電流値は、補正電流I2の電流値となる。この電流値分が差動アンプ161で誤差電圧として検出され、コンデンサC1/C2にホールドされる。そして、駆動回路17−1/17−2は、コンデンサC1/C2のホールド電圧に応じて、発光素子11−1/11−2を駆動することにより、発光素子11−1/11−2の光量が目標光量から補正電流I2に対応する補正量分だけ補正され、その補正された光量に収束する。
【0069】
このように、複数の発光素子11−1,11−2を個別に対象として光量制御するときに、補正電流I2を基準電流I1に重畳し、この重畳した電流I1+I2を光電流Ipdから差し引いて差動アンプ161の反転入力端子に流し込むようにすることにより、個別の光量制御でも差動アンプ161の非反転入力端子の基準値が変動しないため、光量制御の収束性が損なわれることはない。
【0070】
具体的には、発光素子11−1,11−2について時分割で光量制御する際、例えば、発光素子11−1では基準電流I1のみ、発光素子11−2では基準電流I1に補正電流I2を重畳した電流I1+I2を光電流Ipdから差し引いて差動アンプ161の反転入力端子に流し込むものとする。このとき、差動アンプ161の反転入力が、非反転入力の固定電位(GNDレベル)に一致するように制御が行われるため、差動アンプ161の動作スピードが十分速ければ、反転入力電位がほぼ一定になるように制御され、受光器12出力の寄生容量Coの影響を受けずに速やかに目標光量に収束する。
【0071】
ただし、現実には、差動アンプ161の動作スピードは遅いので、光量制御の開始時は、差動アンプ161の反転入力電位が変動して収束性が悪くなるのが一般的である。これに対して、本実施形態に係る発光素子駆動装置では、差動アンプ161の後段にサンプルホールド回路162を設け、差動アンプ161で検出した誤差電圧、即ち駆動回路17−1,17−2への光量制御電圧をコンデンサC1/C2でホールドするようにしている。
【0072】
そのため、繰り返して光量制御を行う際に、コンデンサC1/C2のホールド電圧に基づいて光量制御が開始されるため、制御が切り替わった瞬間にほぼ目標光量に対応する光電流Ipdが受光器12から出力されるようになる。したがって、差動アンプ161の動作スピードが遅くても、光電流Ipdと基準電流I1+補正電流I2とが打ち消し合って、差動アンプ161の反転入力電位がほぼ固定電位(本例では、0レベル)に維持される。
【0073】
上述したように、第1実施形態に係る発光素子駆動装置の光量制御では、基準電流I1を基に補正電流I2を生成するようにしたことにより、光量調整を行うために基準電流I1の電流値を変えれば、この基準電流I1に応じて補正電流I2の電流値も変化するため、発光素子11−1,11−2個別に基準値を調整しなくても光量調整を行うことができる。また、発光素子11−1,11−2の全てを対象として均一光量に制御するときも、スイッチ18をオフにして補正電流I2を基準電流I1に重畳しないようにするだけなので、基準電流I1の電流値のばらつきで光量の均一性が悪化するようなこともない。
【0074】
また、発光素子11−1,11−2を個別に対象として時分割制御で別々に光量制御する場合において、発光素子11−1,11−2個別に補正値を設定しても、差動アンプ161の非反転入力電位(基準側入力電位)が変動しないため、収束性を損なうこともない。さらに、光量制御の切り替えのとき、即ち発光素子11−1,11−2を個別に対象とする光量補正のときは、スイッチ18がオンして補正電流I2の供給を開始することにより、その切り替えのタイミングがずれたときのようなオーバーシュートなどを引き起こすことなく、光量制御から光量補正へ移行することができる。
【0075】
図4に、本実施形態に係る光量制御での制御波形、即ち発光素子11−1,11−2の光出力、受光器12の光電流Ipdおよび基準電流I1+補正電流I2の各波形を示す。
【0076】
[第2実施形態]
図5は、本発明の第2実施形態に係る発光素子駆動装置の構成を示す回路図であり、図中、図1と同等部分には同一符号を付して示している。本実施形態に係る発光素子駆動装置においても、例えば2つの発光素子11−1,11−2を駆動する構成を採っている。ただし、2つの発光素子11−1,11−2の駆動に限られるもののではなく、単一あるいは3個以上の発光素子を駆動する構成であっても良いことは勿論である。
【0077】
本実施形態に係る発光素子駆動装置では、補正電流供給回路15の構成が第1実施形態のそれと相違しており、それ以外の構成は基本的に第1実施形態に係る発光素子駆動装置と同じである。補正電流供給回路15は、デジタル制御の複数の電流源、例えば2つの電流源151,152を有する構成となっている。2つの電流源151,152は各電流値が重み付けされている。一例として、電流源151の電流値の重み付けは1倍、電流源152の電流値の重み付けはその2倍に設定されている。すなわち、電流源151の電流値をIとすると、電流源152の電流値が2Iとなる。
【0078】
そして、2つの電流源151,152の各電流値は、外部から与えられる2ビットのデジタル制御値D0,D1による制御の下に4通りに組み合わされて出力される。これにより、補正電流I2は4値の電流値(0,I,2I,3I)に設定される。具体的には、補正電流I2の電流値は、(D0,D1)=(0,0)のときに0、(D0,D1)=(1,0)のときにI、(D0,D1)=(0,1)のときに2I、(D0,D1)=(1,1)のときに3Iとなる。
【0079】
デジタル制御値D0,D1については、発光素子11−1,11−2の各々について光量補正を行う際に、その都度発光素子11−1,11−2の各々に対応するデジタル制御値D0,D1を外部から取り込むようにしても良いし、また発光素子11−1,11−2の各々に対応したデジタル制御値D0,D1をあらかじめメモリ20に格納しておき、発光素子11−1,11−2の各々について光量補正を行うタイミングで当該メモリ20から対応するデジタル制御値D0,D1を読み出すようにしても良い。
【0080】
上述したように、第2実施形態に係る発光素子駆動装置の光量制御では、デジタル制御の複数の電流源、本例では2つの電流源151,152によって補正電流供給回路15を構成し、これら電流源151,152の各電流値を組み合わせることによって補正電流I2の電流値を決めるようにしているため、デジタル制御値D0,D1によって補正電流I2の電流値を任意に設定したり、簡単に変更したりすることが可能になる。
【0081】
特に、電流源151,152の各電流値の設定に当たっては、2nの重み付けで設定することにより、それらの組み合わせによって補正光量の増減分を均等に設定することができるため、効率良く光量補正を行うことができる。また、デジタル制御値D0,D1をあらかじめメモリ20に格納しておく構成を採ることにより、特に多チャンネルのマルチビームについて時分割にて各チャンネル毎に光量制御を行うときに、その都度各チャンネルに対応するデジタル制御値D0,D1を取り込まなくても、各チャンネルを選択するクロックをメモリ20に与えるだけで該当するデジタル制御値D0,D1を読み出すことができるため、光量補正を各チャンネル毎に自動的に行えることになる。
【0082】
[第3実施形態]
図6は、本発明の第3実施形態に係る発光素子駆動装置の構成を示す回路図であり、図中、図5と同等部分には同一符号を付して示している。本実施形態に係る発光素子駆動装置においても、例えば2つの発光素子11−1,11−2を駆動する構成を採っている。ただし、2つの発光素子11−1,11−2の駆動に限られるもののではなく、単一あるいは3個以上の発光素子を駆動する構成であっても良いことは勿論である。
【0083】
先述した第1、第2実施形態に係る発光素子駆動装置では、受光器12から出力される光電流Ipdから基準電流I1、または基準電流I1+補正電流I2を差し引いて、残りの電流Ipd−I1、またはIpd−(I1+I2)を差動アンプ161の反転入力端子に流し込む一方、差動アンプ161の非反転入端子にはGNDレベルを基準値として与えるようにしていた。
【0084】
これに対して、本実施形態に係る発光素子駆動装置では、光量制御時には光電流Ipdを負荷30−1に流し、当該光電流Ipdが受光器12から出力されないときには基準電流供給回路13から出力される基準電流I1を負荷30−1に流し、当該負荷30−1に発生する電圧を差動アンプ161にその反転入力として与える一方、基準電流I1と等しい電流値の電流を基準電流供給回路13で生成して負荷30−2に流し、当該負荷30−2に発生する電圧を差動アンプ161にその非反転入力として与えるようにしている。
【0085】
ここで、負荷30(30−1,30−2)の具体的な構成の一例について図7を用いて説明する。
【0086】
負荷30は、抵抗値が異なる例えば2つの抵抗Ra,Rbを有している。抵抗Ra,Rbの各一端は共通に接続されて接地(GND)されている。抵抗Ra,Rbの各他端には、スイッチSWa,SWbの各一端が接続されている。SWa,SWbの各他端は共通に接続され、差動アンプ161の反転入力端子/非反転入力端子に接続される。スイッチSWAa,SWbは一方がオン状態のとき他方がオフ状態になる。
【0087】
上記構成の負荷30、例えば負荷30−1は、入力される光電流Ipdを電圧変換することによって光量検出電圧Vdetを得る。この電圧変換の際、スイッチSWa,SWbによって抵抗Ra,Rbを切り替えることで負荷30の抵抗値を変えることにより、ゲインの調整が可能である。このように、負荷30の抵抗値を可変とすることにより、発光素子11−1,11−2の発光効率や受光器12へ入射する光量の割合によって適正なゲインが変わった場合には、負荷30(30−1,30−2)の抵抗値を調整することにより、光量制御の精度と収束性を両立できる最適なゲインを選択することができる。
【0088】
続いて、本実施形態に係る発光素子駆動装置における基準電流供給回路13および補正電流供給回路15の具体的な構成について説明する。
【0089】
基準電流供給回路13は、2つの電流源31,32およびスイッチ33によって構成されている。電流源31,32は、例えばカレントミラー回路によって構成され、目標光量に対応して設定される基準電圧V1に基づいて同じ電流値の基準電流I1を出力する。電流源31の基準電流I1は、発光素子11−1,11−2に対して例えば光量制御が行われないときにスイッチ33がオン(閉)状態になることによって負荷30−1に供給される。
【0090】
すなわち、発光素子11−1,11−2の光量を目標光量に制御する光量制御時には、受光器12からその出力ラインL上に基準電流I1と等しい電流値の光電流Ipdが出力されて負荷30−1に流れ込み、光量制御時以外、即ち受光器12から光電流Ipdが出力されないときには、基準電流供給回路13の電流源31の基準電流I1が出力ラインL上に出力されて負荷30−1に流れ込む。なお、スイッチ33はスイッチ19−1,19−2に連動し、スイッチ19−1,19−2がオンのとき(光量制御時)にオフし、スイッチ19−1,19−2がオフのときにオンする。
【0091】
電流源32の基準電流I1は常時負荷30−1に供給される。したがって、光量制御時以外では、負荷30−1,30−2には同じ基準電流I1が流れ込むことになるため、差動アンプ161の反転入力および非反転入力の各電位が同電位の状態にある。光量制御時において、発光素子11−1,11−2の光量が目標光量からずれているときは、その光量変動分に応じた光電流変動分をΔIpdとすると、負荷30−1には光電流Ipd+ΔIpdが流れ込む。そして、差動アンプ161で光電流変動分をΔIpdに応じて誤差電圧が検出され、この誤差電圧が0になるように駆動回路17−1,17−2によって発光素子11−1,11−2の光量制御が行われる。
【0092】
補正電流供給回路15は、第2実施形態に係る発光素子駆動装置の場合と同様に、デジタル制御の複数の電流源、本例では2つの電流源を用いた構成を基本構成としている。すなわち、2つの電流源41,42は、例えばカレントミラー回路によって構成され、基準電圧V1を基準にして設定される補正電圧V2に基づいて、例えば1倍と2倍に重み付けされた電流値の補正電流I2−1,I2−1を出力する。この重み付けは、電流源41,42を構成する双方のトランジスタサイズ、例えばチャネル幅を変えることによって実現できる。これら補正電流I2−1,I2−1は、デジタル制御値D0,D1によってオン/オフ制御されるスイッチ45,46を介して出力ラインL上に出力され、基準電流I1に重畳されて負荷30−1に供給される。
【0093】
ここで、(D0,D1)=(0,0)のときはスイッチ45,46が共にオフ状態となるため基準電流I1に重畳される補正電流は0となり、(D0,D1)=(1,0)のときはスイッチ45がオン状態、スイッチ46がオフ状態になるため補正電流I2−1のみが基準電流I1に重畳され、(D0,D1)=(0,1)のときはスイッチ45がオフ状態、スイッチ46がオン状態になるため補正電流I2−2のみが基準電流I1に重畳され、(D0,D1)=(1,1)のときはスイッチ45,46が共にオン状態になるため補正電流I2−1と補正電流I2−2が共に基準電流I1に重畳されることになる。
【0094】
補正電流供給回路15にはさらに2つの電流源43,44が設けられている。
これら電流源43,44も、電流源41,42と同様に重み付けされて、これら電流源41,42と共にカレントミラー回路によって構成され、補正電流I2−1,I2−2と等しい電流値の電流I2−1,I2−2を出力し、負荷30−2に流し込む。負荷30−2にも負荷30−1と同じ電流値の補正電流I2が流れることで、その補正電流I2分が差動アンプ161で相殺されるため、補正電流I2を基準電流I1に重畳して供給することによる光量制御への影響はない。
【0095】
このように、補正電流I2−1,I2−2の組み合わせによる補正電流I2を基準電流I1に重畳して負荷30−1に流し込むことにより、負荷30−1に発生する電圧が補正電流I2に応じた分だけ変化し、この変化分が差動アンプ161で誤差電圧として検出され、当該誤差電圧に応じて光量制御が行われる。その結果、発光素子11−1/11−2の光量が目標光量に対して補正電流I2に応じた光量分だけ光量補正されることになる。
【0096】
本実施形態の場合には、基準側(負荷30−2)には常に基準電流と二つの補正電流が流れ込んでいる。この結果、光量は検出側(負荷30−1)が基準側のレベルに対し不足する分が設定光量となる。すなわち、D0,D1=(1,1)の場合は、光量は基準電流に対応して決まり、D0,D1=(0,1)の場合は基準電流+D0に対応する電流源の電流値に対応して決まる。
【0097】
上述したように、第3実施形態に係る発光素子駆動装置では、光電流Ipdに対して基準電流I1あるいは基準電流I1+補正電流I2を差し引いて光量制御系へ供給する構成を採る第1、第2に係る発光素子駆動装置とは、受光器容量が大きい場合に対応して負荷抵抗を受光器容量との時定数が光量制御で許容される時間よりも短く設定しなければならないということ、光電流Ipdに対して基準電流I1あるいは基準電流I1+補正電流I2を足し込んで光量制御系へ供給する構成を採っている点で異なっているものの、動作原理上は全く同じである。したがって、第1、第2に係る発光素子駆動装置と同様の作用効果を得ることができる。
【0098】
[第4実施形態]
図6は、本発明の第4実施形態に係る発光素子駆動装置の構成を示す回路図であり、図中、図5と同等部分には同一符号を付して示している。本実施形態に係る発光素子駆動装置においても、例えば2つの発光素子11−1,11−2を駆動する構成を採っている。ただし、2つの発光素子11−1,11−2の駆動に限られるもののではなく、単一あるいは3個以上の発光素子を駆動する構成であっても良いことは勿論である。
【0099】
本実施形態に係る発光素子駆動装置では、基準電流供給回路13および補正電流供給回路15については各スイッチの構成の点で第4実施形態に係る発光素子駆動装置と異なっている。すなわち、基準電流供給回路13において、スイッチ33は2つの端子a,bを有するスイッチ構成となっており、一方の端子aが受光器12の出力ラインLに接続され、他方の端子bが制御ラインMに接続されている。基準電流供給回路13にはさらに、電流源32に対しても2つの端子a,bを有するスイッチ34が設けられている。スイッチ34は端子a,bが短絡され、スイッチ33に連動してオン/オフ動作を行う構成となっている。
【0100】
補正電流供給回路15において、スイッチ45,46も2つの端子a,bを有するスイッチ構成となっており、各々一方の端子aが出力ラインLに接続され、他方の端子bが制御ラインMに接続されている。補正電流供給回路15にはさらに、電流源43,44に対しても2つの端子a,bを有するスイッチ47,48が設けられている。スイッチ47,48は共に端子a,bが短絡され、スイッチ45,46に連動してオン/オフ動作を行う構成となっている。
【0101】
ここで、電流源31が第1の電流源、電流源32が第2の電流源、電流源41,42が第3の電流源に相当し、スイッチ33が第1のスイッチ手段に、スイッチ45,46が第2のスイッチ手段に相当する。本実施形態に係る発光素子駆動装置では、上記の構成に加えてさらに、以下に説明する部分が追加された構成となっている。
【0102】
先ず、受光器12の出力ラインLの終端には、インピーダンス変換回路51が接続されている。インピーダンス変換回路51は、出力ラインLに対してゲートとドレインが共通に接続され、ソースが接地されたNchMOSトランジスタQ11と、このMOSトランジスタQ11のゲート・ドレインにゲートが共通に接続され、ソースが接地されたNchMOSトランジスタQ12とからなるカレントミラー回路によって構成されている。
【0103】
このカレントミラー回路構成のインピーダンス変換回路51では、出力ラインLを通してトランジスタQ11のドレインに流れ込む光電流Ipdまたは基準電流I1に応じた電流がトランジスタQ12のドレインに流れることになる。電源VDDとトランジスタQ11のドレイン・ゲート共通接続点との間には、バイアス電流源52が接続されている。このバイアス電流源52は、トランジスタQ11のドレインに流れ込む光電流Ipdまたは基準電流I1に対して、バイアス電圧V3によって設定されるバイアス電流Ibiasを重畳する。
【0104】
インピーダンス変換回路51の後段には折り返し回路53が設けられている。
この折り返し回路53は、ソースが電源VDDに接続され、ゲートおよびドレインがトランジスタQ12のドレインに共通に接続されたPchMOSトランジスタQ13と、このMOSトランジスタQ13のゲート・ドレインにゲートが共通に接続され、ソースが電源VDDに接続されたPchMOSトランジスタQ14とからなるカレントミラー回路によって構成されている。
【0105】
上記のインピーダンス変換回路51、バイアス電流源52および折り返し回路53からなる構成において、インピーダンス変換回路51のMOSトランジスタQ11のドレインにバイアス電流Ibiasが重畳された光電流Ipdまたは基準電流I1が流れ込むと、その電流に応じた出力電流Iout1が折り返し回路53のMOSトランジスタQ14のドレインから流れ出ることになる。
【0106】
インピーダンス変換回路51、バイアス電流源52および折り返し回路53と相似の回路構成のインピーダンス変換回路54、バイアス電流源55および折り返し回路56がさらに設けられている。インピーダンス変換回路54は、ゲートとドレインが共通に接続され、ソースが接地されたNchMOSトランジスタQ15と、このMOSトランジスタQ15のゲート・ドレインにゲートが共通に接続され、ソースが接地されたNchMOSトランジスタQ16とからなるカレントミラー回路によって構成されている。NchMOSトランジスタQ15のドレインには、基準電流供給回路13から出力される基準電流I1と電流値が等しい電流が流れ込む。
【0107】
バイアス電流源55は、電源VDDとMOSトランジスタQ15のドレイン・ゲート共通接続点の間に接続され、バイアス電流源52と等しい電流値のバイアス電流IbiasをMOSトランジスタQ15のドレインに流し込む。折り返し回路56は、ソースが電源VDDに接続され、ゲートおよびドレインがトランジスタQ16のドレインに共通に接続されたPchMOSトランジスタQ17と、このMOSトランジスタQ17のゲート・ドレインにゲートが共通に接続され、ソースが電源VDDに接続されたPchMOSトランジスタQ17とからなるカレントミラー回路によって構成されている。
【0108】
上記のインピーダンス変換回路54、バイアス電流源55および折り返し回路56からなる構成において、インピーダンス変換回路54のMOSトランジスタQ15のドレインにバイアス電流Ibiasが重畳された基準電流I1が流れ込むと、その電流に応じた出力電流Iout2が折り返し回路56のMOSトランジスタQ18のドレインから流れ出ることになる。
【0109】
折り返し回路56の出力電流Iout2は、カレントミラー回路57に流れ込む。カレントミラー回路57は、ゲートとドレインが共通に接続され、ソースが接地されたNchMOSトランジスタQ20と、このMOSトランジスタQ20とゲートが共通に接続され、ソースが接地されたNchMOSトランジスタQ21とからなり、MOSトランジスタQ20のゲート・ドレインが折り返し回路56のMOSトランジスタQ18のドレインに接続された構成となっている。
【0110】
MOSトランジスタQ19は、ソースがMOSトランジスタQ21のドレインに、ドレインが折り返し回路53のMOSトランジスタQ14のドレインにそれぞれ接続され、オペアンプ58の出力をゲート入力としている。オペアンプ58は、非反転入力端子がオペアンプ58の出力端子に、反転入力端子がMOSトランジスタQ19のソースにそれぞれ接続されることによって負帰還ループを形成している。
【0111】
このカレントミラー回路57において、MOSトランジスタQ20のドレインには、インピーダンス変換回路54の入力段で基準電流I1にバイアス電流Ibiasを加算した電流I1+Ibiasが流れ込むことで、MOSトランジスタQ21のドレインにも同じ電流I1+Ibiasが流れ込む。その結果、折り返し回路53の出力電流Iout1から電流I1+Ibiasが差し引かれるとともに、インピーダンス変換回路51,54の各入力段で加算したバイアス電流Ibiasが相殺されることになる。このようにして、折り返し回路53の出力電流Iout1から基準電流I1に応じた電流が差し引かれ、かつバイアス電流Ibiasが相殺された後の電流Iout1−I1が負荷30にその一端側から流れ込む。
【0112】
また、基準電流I1と電流値が等しい電流が基準電流供給回路13の電流源32から、反転入力端子と出力端子が短絡されたオペアンプからなるバッファ59を介して負荷30にその他端側から流れ込む。これにより、差動アンプ161の非反転入力端子にはほぼダイオード接続したQ15の端子電圧となる固定の基準電圧が与えられ、反転入力端子には同じレベル(目標光量時)の検出電圧が与えられることになる。電流源32の電流はさらに、反転入力端子と出力端子が短絡されたオペアンプ60を介して制御ラインMに供給される。この制御ラインMには、先述したように、スイッチ33,45,46の各他方の端子bが共通に接続されている。
【0113】
なお、基準電流供給回路13の電流源31からスイッチ33を介して出力ラインL上に出力される基準電流I1に対し、補正電流供給回路15の電流源41,42の各補正電流I2−1,I2−2がスイッチ45,46を介して重畳されるのと同様に、基準電流供給回路13の電流源32から出力される基準電流I1と電流値が等しい電流に対しても、補正電流供給回路15の電流源43,44から出力される補正電流I2−1,I2−2と電流値が等しい電流がスイッチ47,48を介して重畳されることになる。
【0114】
本実施形態に係る発光素子駆動装置において、負荷30としては、図7に示す構成のものを用いることができる。この場合、図7において、GND側の端子がバッファ59の出力端子に接続される。この場合にも、発光素子11−1,11−2の発光効率や受光器12へ入射する光量の割合によって適正なゲインが変わった際には、負荷30の抵抗値を切り替えることにより、先述した実施形態に係る発光素子駆動装置と同様に、光量制御の精度と収束性を両立できる最適なゲインを選択することができる。
【0115】
上記構成の本実施形態に係る発光素子駆動装置において、基準電流供給回路13および補正電流供給回路15では、補正電流I1を供給するスイッチ33と、補正電流I2−1,I2−2を供給するスイッチ45,46の部分を特徴としている。具体的には、スイッチ33,45,46を2端子a,bのスイッチとし、端子b側に電流源32から基準電流I1と等しい電流値の電流がオペアンプ60を介して与えられることによって当該端子bの電位を基準電流I1に対応した電位に固定した構成を採っている。
【0116】
この端子bの電位は、基準電流I1が目標光量に対応していることから、発光素子11−1/11−2が目標光量で発光しているときの出力ラインLの電位とほぼ同じである。基準電流供給回路13のスイッチ33は、光量制御時以外に端子a側に切り替わる訳であるが、その切り替え前の端子bの電位が基準電流I1に対応した電位に固定されていることにより、スイッチ33の電流源31側の端子電位も同じ電位になっているため、端子a側に切り替わった瞬間に出力ラインLの電位が変動することはない。
【0117】
換言すれば、スイッチ33のオフ時に電流源31側の端子(可動端子)がオープン状態にあると、当該端子につく寄生容量にVDDレベルが充電されることによって電流源31側の端子電位がVDDレベルになる。そして、スイッチ33がオンした瞬間にVDDレベルが出力ラインLに与えられることになるため、当該出力ラインLの電位が瞬間的にVDDレベル近くまで変動し、これがノイズとなって出力ラインL上に乗ることになる。
【0118】
これに対して、上述したように、切り替え前の端子bの電位を基準電流I1に対応した電位に固定し、この固定電位をスイッチ33の電流源31側の端子に与えておくことにより、スイッチ33が端子a側に切り替わった瞬間に出力ラインLの電位がパルス状に変動することがないため、この電位変動に起因するノイズの発生を防止することができ、より確実な制御を実現できることになる。このことは、補正電流供給回路15のスイッチ41,42についても同様に言える。
【0119】
基準電流供給回路13および補正電流供給回路15ではさらに、電流源32,43,44に対しても、端子a,bを短絡したスイッチ34,47,48を設けた構成を採っている。電流源32,43,44の各電流については、第3実施形態(図5参照)の場合のように直接出力するようにすることにより、負荷30において、基準電流I1およびそれに重畳する補正電流I2−1,I2−2と相殺することができる。
【0120】
これに対し、端子a,bの短絡されたスイッチ34,47,48をスイッチ33,45,46と連動させてオン/オフさせるとともに、これらスイッチ34,47,48を介して電流源32,43,44の各電流を出力する構成を採ることにより、スイッチ33,45,46のオン/オフ時に発生するスイッチングノイズについても、基準電流I1およびそれに重畳する補正電流I2−1,I2−2と同様に負荷30において相殺することができる。
【0121】
すなわち、スイッチ32,45,46のオン/オフ動作時にたとえスイッチングノイズが発生したとしても、これらスイッチ32,45,46と同期してスイッチ34,47,48がオン/オフ動作を行う際にも同様にスイッチングノイズが発生することになり、このスイッチングノイズが負荷30において相殺されることになる。したがって、スイッチ32,45,46のスイッチングノイズによって光量補正の制御性が損なわれることがない。
【0122】
またこの方式では、第1、第2実施形態の場合と異なり、差動アンプ161の反転入力が直接受光器12に接続されておらずインピーダンス変換器53を介している。この結果、差動アンプの反転入力には受光器やケーブルによる大きな寄生容量Coが直接接続されない。このことと光電流と相補の関係にある基準電流と補正電流が受光器出力の電位変動を抑えていることにより発光素子を時分割で光量制御する際、発光素子1から発光素子2への制御が切り替わる際にもオーバーシュートなど過渡的な変動を防止することができる。
【0123】
以上説明した本発明の各実施形態に係る発光素子駆動装置は、例えばレーザゼログラフィーにおいて、多数の発光部を有するマルチビームレーザ(面発光レーザ)を光源として用いた場合において、当該マルチビームレーザの駆動装置として用いて好適なものである。
【0124】
レーザゼログラフィーにおいて、マルチビームレーザのビーム数を例えば32本とした場合は、32ライン単位でラスタースキャンが行われることになる。ここで、各走査ライン間のピッチは当然のことながら一定になる訳であるが、ラスタースキャン時において前回の最終走査ラインと今回の先頭走査ラインとの間のピッチが、機械的な精度の問題によって若干広がったり、あるいは逆に狭まったりして、極端な場合には前回の最終走査ラインと今回の先頭走査ラインが重なってしまう場合がある。
【0125】
前回の最終走査ラインと今回の先頭走査ラインとの間のピッチが広がるとその部分の画像が淡く見え、逆に狭まるとその部分の画像が濃く見えることになる。したがって、例えば32本のレーザ光ビームのうち、特に最終走査ライン、先頭走査ラインに対応する端のレーザ光ビームについては光量を補正できるようにする必要が生じる。
【0126】
そこで、マルチビームレーザの駆動に、先述した各実施形態に係る発光素子駆動装置を用いることにより、最終走査ライン、先頭走査ラインに対応する端のレーザ光ビームについて光量を自由に補正できるため、前回の最終走査ラインと今回の先頭走査ラインとの間のピッチが、機械的な精度の問題によって若干広がったり、あるいは逆に狭まったりしたとしても、レーザ光ビーム個々の光量補正によって良好な画像を形成できることになる。
【0127】
また、本発明の各実施形態に係る発光素子駆動装置によれば、光量調整を行うために基準電流の電流値を変えれば、この基準電流に応じて補正電流の電流値も変化するため、レーザ光ビーム個別に基準値を調整する必要がなく、レーザ光ビームの全てを対象として均一光量に制御するときも、補正電流を基準電流に重畳しないようにするだけなので、基準電流の電流値のばらつきで光量の均一性が悪化するようなこともない。また、レーザ光ビームを個別に対象として時分割制御で別々に光量制御する場合も、光量制御を行うための誤差電圧を検出する差動アンプの入力電位が変動しないため収束性を損なうこともない。
【0128】
また、例えば32本のレーザ光ビームのうちの最終走査ライン、先頭走査ラインに対応する端のレーザ光ビームだけでなく、全レーザ光ビームについて個々に光量補正が可能な構成を採ることで、駆動装置側の各レーザ光ビームのチャンネル番号と各レーザ光ビームの幾何学的な順番とを1対1で対応付けしなくても、幾何学的に端に位置するレーザ光ビームについて個別に光量補正を行うことが可能になる。このように、駆動装置側の各レーザ光ビームのチャンネル番号と各レーザ光ビームの幾何学的な順番とを1対1で対応付けないようにすることで、幾何学的に隣接するレーザ光ビーム間での電気的なクロストークの問題を解消することが可能になる。
【0129】
なお、先述した各実施形態に係る発光素子駆動装置において、基準電流I1に対して補正電流I2を重畳するに当たっては、目標光量に対して発光光量を下げる(弱める)方向に光量補正する場合は、基準電流I1に対して補正電流I2を差し引く形で重畳するようにすれば良い。これは、補正電流供給回路15を吸い込み電流源で構成することによって実現できる。
【0130】
逆に、目標光量に対して発光光量を上げる(強める)方向に光量補正する場合は、基準電流I1に対して補正電流I2を足し込む形で重畳するようにすれば良い。これは、補正電流供給回路15を吐き出し電流源で構成することによって実現できる。また、吸い込み電流源と吐き出し電流源を組み合わせて補正電流供給回路15を構成することで、発光光量を下げる方向/上げる方向の光量補正を適宜選択して実行することも可能になる。
【0131】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に係る発明によれば、基準電流を基に補正電流を生成するようにすることにより、光量調整を行うために基準電流の電流値を変えると、この基準電流に応じて補正電流の電流値も変化するため、複数の発光素子について個別に基準値を調整しなくても光量調整を行うことができる。また、複数の発光素子の全てを対象として均一光量に制御するときも、補正電流を基準電流に重畳しないようにするだけなので、基準電流の電流値のばらつきで光量の均一性が悪化するようなこともない。さらに、複数の発光素子を個別に対象として時分割制御で別々に光量制御する場合において、発光素子個別に補正値を設定しても、差分検出手段の基準側の入力電位が変動しないため、収束性を損なうこともない。
【0132】
請求項2に係る発明によれば、第2の供給手段をデジタル制御の複数の電流源によって構成したことにより、これら複数の電流源の各電流値をデジタル制御値によって自由に組み合わせることができるため、補正電流を電流値を任意に設定したり、簡単に変更したりすることができる。
【0133】
請求項3に係る発明によれば、複数の電流源の各電流値を2nの重み付けで設定することにより、それらの組み合わせによって補正光量の増減分を均等に設定することができるため、効率良く光量補正を行うことができる。
【0134】
請求項4に係る発明によれば、デジタル制御値をあらかじめ記憶手段に格納しておくことにより、特に多チャンネルのマルチビームについて時分割にて各チャンネル毎に光量制御を行うときに、その都度各チャンネルに対応するデジタル制御値を取り込まなくても、各チャンネルを選択するクロックを記憶手段に与えるだけで該当するデジタル制御値を読み出すことができるため、光量補正を各チャンネル毎に自動的に行うことができる。
【0135】
請求項5に係る発明によれば、第2の供給手段を吸い込み電流源、吐き出し電流源あるいはそれらの組み合わせで構成することにより、吸い込み電流源の場合には基準電流に対して補正電流を差し引く形で重畳することができるため、目標光量に対して発光光量を下げる方向に光量補正でき、逆に吐き出し電流源の場合には基準電流に対して補正電流を足し込む形で重畳することができるため、目標光量に対して発光光量を上げる方向に光量補正でき、よって任意の形での光量補正を実現できる。
【0136】
請求項6に係る発明によれば、光量制御の切り替えのタイミングで補正電流の供給を開始することにより、そのタイミングがずれたときのようなオーバーシュートなどを引き起こすことがないため、光量制御から光量補正へ円滑に移行することができる。
【0137】
請求項7に係る発明によれば、第1のスイッチ手段の第2の端子に固定電位を与えておくようにすることにより、オフ状態では可動端子も当該固定電位になっており、第1のスイッチ手段のオンした瞬間に第1の端子側の電位が急激に変動することはないため、この電位変動に起因するノイズの発生を防止することができる。
【0138】
請求項8に係る発明によれば、第2の電流源の電流に応じた電圧を第1のスイッチ手段の第2の端子に与えるようにすることにより、当該第2の端子電位を第2の電流源の電流に対応した電位に固定することができるため、特別な電圧源を設けなくても、第1のスイッチ手段の第2の端子に固定電位を与えられることができる。
【0139】
請求項9に係る発明によれば、第2のスイッチ手段の第2の端子に固定電位を与えておくようにすることにより、オフ状態では可動端子も当該固定電位になっており、第2のスイッチ手段のオンした瞬間に第1の端子側の電位が急激に変動することはないため、この電位変動に起因するノイズの発生を防止することができる。
【0140】
請求項10に係る発明によれば、第4の電流源の電流に応じた電圧を第2のスイッチ手段の第2の端子に与えるようにすることにより、当該第2の端子電位を第4の電流源の電流に対応した電位に固定することができるため、特別な電圧源を設けなくても、第2のスイッチ手段の第2の端子に固定電位を与えられることができる。また、受光器出力電位の変動が抑えられるため受光器および配線による寄生容量Coに起因する光量制御時の収束性の悪化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る発光素子駆動装置の構成を示す回路図である。
【図2】第1実施形態に係る発光素子駆動装置の基準電流供給回路、補正信号生成回路および補正電流供給回路の具体的な回路構成の一例を示す回路図である。
【図3】第1実施形態に係る発光素子駆動装置における光量制御系の具体的な回路例を示す回路図である。
【図4】第1実施形態に係る発光素子駆動装置における光量制御での制御波形図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る発光素子駆動装置の構成を示す回路図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る発光素子駆動装置の構成を示す回路図である。
【図7】負荷の具体的な構成の一例を示す回路図である。
【図8】本発明の第4実施形態に係る発光素子駆動装置の構成を示す回路図である。
【図9】従来例に係る発光素子駆動装置の構成を示す回路図である。
【図10】従来例に係る発光素子駆動装置における光量制御での制御波形図である。
【符号の説明】
11−1,11−2…発光素子、12…受光器、13…基準電流供給回路、14…補正信号生成回路、15…補正電流供給回路、16…差分検出回路、17−1,17−2…駆動回路、161…差動アンプ、162…サンプルホールド回路
Claims (11)
- 複数の発光素子から互いに異なるタイミングで発せられる光を受光する受光手段と、
前記複数の発光素子の規定の目標光量に対応する電流値の基準電流を供給する第1の供給手段と、前記複数の発光素子毎の光量の前記目標光量からの補正量に対応する補正電流であって、前記第1の供給手段から供給される基準電流の電流値に応じて電流値が変化する補正電流を供給する第2の供給手段と、前記補正電流を前記基準電流に重畳するときとしないときとを切り替えるスイッチとを有し、前記発光素子の光量を補正するときに、前記補正電流を前記基準電流に重畳して供給する電流供給手段と、
前記受光手段から供給される光電流から前記電流供給手段から供給される電流を差し引いた差分電流が一方の端子に入力され、所定の基準値が他方の端子に入力されると、当該差分電流と当該基準値との差分を検出する差分検出手段と、
前記差分検出手段により検出された差分に基づいて前記複数の発光素子をそれぞれ駆動する駆動手段と
を備えることを特徴とする発光素子駆動装置。 - 前記第2の供給手段は、デジタル制御の複数の電流源を有し、これら複数の電流源の各電流値を組み合わせることによって前記補正電流の電流値を決める
ことを特徴とする請求項1記載の発光素子駆動装置。 - 前記複数の電流源は、各々の電流値が2nの重み付けで設定されている
ことを特徴とする請求項2記載の発光素子駆動装置。 - 前記第2の供給手段は、前記複数の電流源を制御するデジタル制御値を格納する記憶手段を有し、前記記憶手段から対応するデジタル制御値を読み出して前記複数の電流源の各電流値の組み合わせを決める
ことを特徴とする請求項2または請求項3記載の発光素子駆動装置。 - 前記第2の供給手段は、吸い込み電流源、吐き出し電流源あるいはそれらの組み合わせによって構成されている
ことを特徴とする請求項1記載の発光素子駆動装置。 - 前記第2の供給手段は、光量制御の切り替えと同時に前記補正電流の供給を開始する
ことを特徴とする請求項1記載の発光素子駆動装置。 - 前記第1の供給手段は、前記基準電流を出力する第1の電流源と、前記第1の電流源の前記基準電流を出力する第1の端子と固定電位が与えられる第2の端子とを持つ第1のスイッチ手段とを有する
ことを特徴とする請求項1記載の発光素子駆動装置。 - 前記第1の供給手段は、前記基準電流と電流値が等しい電流を出力する第2の電流源と、前記第2の電流源の電流に応じた電圧を前記第1のスイッチ手段の第2の端子に与える手段とを有する
ことを特徴とする請求項7記載の発光素子駆動装置。 - 前記第2の供給手段は、前記補正電流を出力する第3の電流源と、前記第3の電流源の前記補正電流を出力する第1の端子と固定電位が与えられる第2の端子とを持つ第2のスイッチ手段とを有する
ことを特徴とする請求項1記載の発光素子駆動装置。 - 前記第2の供給手段は、前記補正電流と電流値が等しい電流を出力する第4の電流源と、前記第4の電流源の電流に応じた電圧を前記第2のスイッチ手段の第2の端子に与える手段とを有する
ことを特徴とする請求項9記載の発光素子駆動装置。 - 請求項1ないし10のいずれかに記載の発光素子駆動装置と、
前記複数の発光素子と
を備えることを特徴とする発光システム。
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