JP4562318B2 - 成形型およびその成形型を用いたスパッタリングターゲットの製造方法 - Google Patents

成形型およびその成形型を用いたスパッタリングターゲットの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶ディスプレイ、ELディスプレイ、タッチパネル等の透明導電膜をスパッタリング法によって形成する際に用いられる透明導電膜用スパッタリングターゲットを製造するための成形型およびその成形型を用いたスパッタリングターゲットの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、表示素子の発達に伴い、透明導電膜が広く用いられるようになってきた。なかでも、低抵抗、高透過率等の長所から、酸化インジウム−酸化スズからなるITO薄膜を用いることが主流となってきた。ITO薄膜を大面積に均一に得る手段としては、酸化インジウム−酸化スズからなるITOターゲットを用いたスパッタリング法が優れており、現在主流となってきている。
【0003】
従来、ITOターゲットを得るには、酸化インジウム−酸化スズからなる原料粉末を用いて、金型プレス成形法又は鋳込み成形法を用いて成形体を得て、この成形体を焼成することによって得ていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、金型成形法では均一に成形体を得ることが困難であり、成形体の強度も弱いため壊れやすく、大型製品を作成することが困難である。場合によっては、後処理として高圧力での静水圧プレスを必要とする。
【0005】
鋳込み法においても、同様に成形体の強度が弱いため、静水圧プレスを必要とする場合もある上に、成形以前の前処理が非常に煩雑となる。また、金型成形法、鋳込み成形法のいずれにおいても、非常に高価な成形型が必要となる。
【0006】
また、高密度の高性能ITOターゲットを製造する場合には、高密度の成形体が必要となるが、高圧の静水圧プレスを用いない場合には困難となるため、静水圧プレスが必要となる。
【0008】
したがって、本発明の目的は、安価な成形型を用いることができ、高密度、高強度の成形体を比較的簡単な工程で得ることができる高密度透明導電膜用スパッタリングターゲットの製造方法を提供することにある。
【0009】
また、本発明の目的は、高密度透明導電膜用スパッタリングターゲットの成形体を比較的簡単な工程で得ることができる安価な成形型を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明のスパッタリングターゲットの製造方法は、酸化インジウム−酸化スズを含有する原料粉を成形型に直接充填し、静水圧プレスによって原料粉の成形体を得て、該成形体を焼成することによって高密度透明導電膜用スパッタリングターゲットを製造する方法であって、成形型として、下側に配置される溝付きの板状金属型と、該板状金属型に差し込まれて箱を構成するアメゴム製の筒状ゴム型と、蓋するために該筒状ゴム型を差し込む溝付きシリコーンゴム製の板状ゴム型と、からなり、これらの内部に原料粉または造粒粉を入れた状態で静水圧プレスにより成形体を形成するための成形型を用いることを特徴とする。
【0011】
本発明のスパッタリングターゲットの製造方法は、酸化インジウム−酸化スズを含有する原料粉にバインダーを含有させた造粒粉を成形型に直接充填し、静水圧プレスによって原料粉の成形体を得て、該成形体を焼成することによって高密度透明導電膜用スパッタリングターゲットを製造する方法であって成形型として、下側に配置される溝付きの板状金属型と、該板状金属型に差し込まれて箱を構成するアメゴム製の筒状ゴム型と、蓋するために該筒状ゴム型を差し込む溝付きシリコーンゴム製の板状ゴム型と、からなり、これらの内部に原料粉または造粒粉を入れた状態で静水圧プレスにより成形体を形成するための成形型を用いることを特徴とする。
【0015】
本発明の成形は、下側に配置される溝付きの板状金属型と、該板状金属型に差し込まれて箱を構成するアメゴム製の筒状ゴム型と、蓋するために該筒状ゴム型を差し込む溝付きシリコーンゴム製の板状ゴム型と、からなり、これらの内部に原料粉または造粒粉入れた状態で静水圧プレスにより成形体を形成することを特徴とする。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明で用いる原料粉末は、所定重量比の酸化インジウム粉末と酸化スズ合成粉末、または酸化インジウム粉末と酸化スズ混合粉末である。
【0017】
原料粉末の粒径は、一次粒子を10nm以上、1000nm以下にすることが望ましい。その理由は、粒径が10nm以下であると、原料粉および造粒粉のタップ密度が低くなることから、成形時の収縮が大きくなり、スプリングバックによる割れが起こりやすくなるからであり、また、1000nm以上であると、焼結時での粒成長が進行しにくく、高密度のITOターゲットが得にくいからである。
【0018】
また、成形型への原料粉末の充填時に流動性を良くするために、原料粉末にバインダーを添加し、顆粒状に整粒した造粒粉末を用いることが望ましい。バインダーには、高強度の成形体を得やすく、また焼結時に揮発しやすく、製品に残留しにくいポリビニルアルコール等を用いることが望ましい。造粒粉末の粒径は、流動性を良くするために10μm以上、500μm以下にすることが望ましい。
【0019】
原料粉末または造粒粉末は1個の長方形状の筒状ゴム型とこの筒状ゴム型の上下に配置されて箱を構成する1枚の溝付き板状ゴム型ともう一枚の溝付き板状金属型を用いて行う。
【0020】
板状ゴム型は、成形体が食い込み難く、成形体が剥がれ易く、滑りが良い材料であるシリコーンゴムを用いることが望ましい。原料粉末または造粒紛の充填時に、形状を維持させるためには、ゴムの厚さは10mm以上が望ましいが、厚すぎると成形体が割れやすくなる。
【0021】
板状金属型は、成形体が反りにくく、高強度かつ軽量であるジュラルミン板を用いることが望ましい。中でも、高強度ジュラルミンを用いると、成形体の反りが1mm前後に抑えられる。強度のある鉄系材料を用いても、成形体は製作可能であるが、重量が大きくなり、取扱いが不自由となるため、好ましくない。
【0022】
成形体の形成は、以下のように行う。下側に配置した板状金属型の溝部分に筒状ゴム型を差込み、上部が開放した箱を形成し、その内部に原料粉末または造粒紛を充填し、もう一枚の板状ゴム型で箱の上部を蓋する。粉がずれにくくすること、防水等のために真空包装を行い、静水圧プレスをゴム型を介して内部の原料粉末または造粒紛に対して行う。場合によっては、さらに防水の目的で、ゴム袋にいれて静水圧プレスを行った方が良い。
【0023】
プレス圧は高強度の成形体を得るためには、1トン/cm2以上が望ましい。なお、プレス圧の上限は、成形体中に閉気孔が生じてバインダーが抜けなくなるほど大きくなるときが問題であり、通常5トン/cm2程度までは問題は生じない。
【0024】
得られた成形体を1400〜1600°Cで、酸素雰囲気下で焼結を行う。これにより、相対密度99%以上の高密度高性能ITOターゲットが得られる。ここで、酸素雰囲気とは、純酸素雰囲気、または高濃度酸素雰囲気を意味するが、その圧力は常圧で充分である。
【0025】
参考例
図1は、本発明の参考例の原料粉末または造粒粉末に用いるゴム型を示す断面図であり、図2はその分解斜視図である。図1、図2において、符号10、12、14、16は、それぞれ、板状ゴム型、筒状ゴム型、板状ゴム型、原料粉末または造粒紛を示す。
【0026】
次に、板状ゴム型10、筒状ゴム型12、板状ゴム型14を用いて行った参考例を説明する。平均粒径0.4μmの酸化インジウム紛を90重量%、平均粒径3μmの酸化スズ紛を10重量%となるように秤量して原料粉末を用意し、これにポリビニールアルコールと分散剤を原料粉末に対して1wt%となるように加え、さらに純水を所定量加えて濃度60重量%のスラリーを作成し、ボールミルにて15時間程度混合、粉砕を行った。混合、粉砕後のスラリーを熱風温度150°Cでスプレードライヤし、粒径10〜100μm、タップ密度1.6g/ccの造粒紛を作成した。
【0027】
この造粒紛を用いて下記の方法で成形体を作成した。溝付きのシリコーン製の板状ゴム型10にアメゴム製の筒状ゴム型12をはめ込んで箱を構成し、その内部に、作成した造粒粉16を入れる。箱に適度の振動を与え、造粒紛の表面を平らにした後に、もう一枚の溝付きシリコーン板状ゴム型14を上からはめ込み、蓋をする。これを真空包装用のビニール袋に入れ、真空包装を行い、造粒粉がずれないようにする。
【0028】
これを塩ビ製のゴム型支持枠に入れ、静水圧プレス装置に入れ、3トン/cm2の静水圧プレスを行い、成形体を得た。なお、ゴム型は繰り返し使用が可能である。
【0029】
得られた成形体を酸素雰囲気の下1660°Cで24時間焼結を行った結果、99%以上の高密度ITOターゲットが得られた。
【0030】
実施例
図3は、本発明の実施例の原料粉末または造粒粉末に用いるゴム型を示す断面図であり、図4はその分解斜視図である。図3、図4において、符号20、12、14、16は、それぞれ、板状金属型、筒状ゴム型、板状ゴム型、原料粉末または造粒粉を示す。
【0031】
次に、板状金属型20、筒状ゴム型12、板状ゴム型14を用いて行った実施例を説明する。平均粒径0.4μmの酸化インジウム紛を90重量%、平均粒径3μmの酸化スズ紛を10重量%となるように秤量して原料粉末を用意し、これにポリビニールアルコールと分散剤を原料粉末に対して1wt%となるように加え、さらに純水を所定量加えて濃度60重量%のスラリーを作成し、ボールミルにて15時間程度混合、粉砕を行った。混合、粉砕後のスラリーを熱風温度150°Cでスプレードライヤし、粒径10〜100μm、タップ密度1.6g/ccの造粒紛を作成した。
【0032】
この造粒粉を用いて下記の方法で成形体を作成した。溝付きの板状金属型20にアメゴム製の筒状ゴム型12をはめ込んで箱を構成し、その内部に、作成した造粒粉16を入れる。箱に適度の振動を与え、造粒粉の表面を平らにした後に、溝付きシリコーン板状ゴム型14を上からはめ込み、蓋をする。これを真空包装用のビニール袋に入れ、真空包装を行い、造粒粉がずれないようにする。
【0033】
これをゴム袋に入れ、密封し、所定の金属網で作られた箱に入れた。その後、静水圧プレス装置に入れ、3トン/cm2の静水圧プレスを行い、400×800×11mmの成形体を得た。なお、金属型およびゴム型は繰り返し使用が可能である。
【0034】
得られた成形体を酸素雰囲気の下1550°Cで24時間焼結を行った結果、99.8%以上の高密度ITOターゲットが得られた。
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、安価な成形型を用い比較的簡単な工程で高密度、高強度の成形体として得ることができる高密度透明導電膜用スパッタリングターゲットが得られる。また、安価な成形型を用いることができ、高密度、高強度の成形体を比較的簡単な工程で得ることができる高密度透明導電膜用スパッタリングターゲットの製造方法が得られる。また、高密度透明導電膜用スパッタリングターゲットの成形体を比較的簡単な工程で得ることができる安価な成形型が得られる。
【0036】
さらに、本発明によって比較的容易に高強度成形体が得られるため、運搬、焼結時での割れが減少し、生産性が向上する。さらに密度分布が少ない高密度ターゲットが得られるために、成膜中にターゲット表面にノジュールの生成が少なく、使用末期まで成膜速度の変化が小さくなるため、成膜段階での高収率が得られる。
【0037】
さらに、具体的には、参考例に係わる発明では、ゴム型のみで成形するために、等方圧で成形できる利点があり、均一な成形体が得られる。ゴム型のみで作製できるので、型代が安価である。従来例の金属型に比較して非常に軽くできるため、大量に処理でき、多くの型も用意できる。ゴム型のみを用いるので、成形後の洗浄が非常に楽である。例えば、シリコーンゴムを用いると、反応性が少ないため、洗浄しやすい。ゴム型のみなので、成形体に反りがでやすいので、比較的小サイズの成形体を大量に必要とする場合に有利である。
【0038】
一方、実施例に係わる発明では、金属板を使用するので、反りの少ない成形が可能である。したがって、大サイズで薄い成形体を作製する場合には、収率が良い。
【0039】
ITOターゲットの使用効率向上を目指して、端部では、小サイズで厚差のあるものを使用し、中心部では、大サイズの薄いものを使用する傾向にあり、また、小タイルを大量に組み合わせて使用する傾向にある点を考慮すると、小タイル部分は参考例の製造方法で作製し、大サイズ部分は実施例の製造方法で作製するというようにタイルの大きさに応じて製造方法を選択できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の参考例の原料粉末または造粒粉末に用いるゴム型を示す断面図である。
【図2】図2はその分解斜視図である。
【図3】図3は、本発明の実施例の原料粉末または造粒粉末に用いるゴム型を示す断面図である。
【図4】図4はその分解斜視図である。

Claims (3)

  1. 下側に配置される溝付きの板状金属型と、該板状金属型に差し込まれて箱を構成するアメゴム製の筒状ゴム型と、蓋するために該筒状ゴム型を差し込む溝付きシリコーンゴム製の板状ゴム型と、からなり、これらの内部に原料粉または造粒粉入れた状態で静水圧プレスにより成形体を形成するための成形型。
  2. 酸化インジウム−酸化スズを含有する原料粉を成形型に直接充填し、静水圧プレスによって原料粉の成形体を得て、該成形体を焼成することによって高密度透明導電膜用スパッタリングターゲットを製造する方法において、前記成形型に請求項1記載の成形型を用いることを特徴とするスパッタリングターゲットの製造方法。
  3. 酸化インジウム−酸化スズを含有する原料粉にバインダーを含有させた造粒粉を成形型に直接充填し、静水圧プレスによって原料粉の成形体を得て、該成形体を焼成することによって高密度透明導電膜用スパッタリングターゲットを製造する方法において、前記成形型に請求項1記載の成形型を用いることを特徴とするスパッタリングターゲットの製造方法。
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