JP4560787B2 - 消臭繊維構造物 - Google Patents

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Description

本発明は、消臭繊維構造物に関する。さらに詳細には、悪臭成分の化学的、物理的な吸着による消臭に加え、太陽光線や紫外線により、かかる悪臭成分を分解する機能を有する消臭繊維構造物に関する。
近年、生活様式の変化、居住環境の高密度化や機密性の高まり等により、悪臭が問題とされ、臭いに対する要求が高まってきている。このような要求にこたえるため、種々の消臭性繊維が提案されている。例えば、特許文献1では、酸・塩基性ガス吸収性繊維が、特許文献2ではアンモニア等の窒素系化合物および硫化水素等の硫黄系化合物に対し優れた消臭性能を有し、紡績以降の後加工が可能な繊維物性を有する消臭性繊維が提案されている。しかしながら、これらの繊維は悪臭成分を化学的、物理的に吸着しているため、飽和吸着量を超えると悪臭を除去できなくなるという問題を有している。
そこで近年、酸化チタン等の光触媒活性を有する金属酸化物等を繊維に含有せしめた消臭性繊維が提案されている。例えば、特許文献3には、光触媒と吸着剤を含有してなる消臭性繊維が開示されており、芯部より鞘部の光触媒濃度が高い芯鞘型の構造を有する繊維が好ましいとしている。かかる繊維によると、悪臭成分は光触媒により分解されるため、飽和吸着量を超えると悪臭を除去できなくなるという問題は解消される。しかしながら、かかる芯鞘構造の繊維では、繊維表面にしか悪臭成分が吸着しないため吸着能力に乏しく、従って光触媒機能を有効に利用しているとは言い難い。
光触媒機能を活用するため、多孔質繊維中に光触媒活性を有する金属酸化物等を含有させるという提案もある(例えば、特許文献4)。 この方法によると、繊維の表面積が増え、表層部に存在する金属酸化物が増えるため、光触媒機能を有効に利用することができるように思えるが、紡績加工性(静電気発生)、染色性(発色性)等に難点があり、さらに、表層部の金属酸化物微粒子は、紡績、染色等の工程、あるいは洗濯等で容易に脱落してしまうため、やはり十分な消臭効果が得られないという問題がある。
一方、光触媒は母体である繊維自体も分解してしまうため、繊維が変色したり、強度が低下するという問題もある。そのため、特許文献5においては、酸化チタンと酸化ケイ素を含有する複合金属酸化微粒子を用いている。かかる微粒子を用いることによって、繊維の変色や強度低下をある程度抑えることができている。しかしながら、かかる特殊な微粒子を用いることによって、コストが高くなること、また消臭能力に対しては該微粒子の量が多いほうが好ましく、量を増やすと依然として、繊維が変色したり強度が低下したりするという問題がある。
また、光触媒繊維と化学的あるいは物理的吸着による消臭機能を有する繊維を含有せしめた繊維製品も提案されている。(例えば、特許文献6、7)しかし、これらの繊維製品に用いられる光触媒繊維も上述した問題を有しているため、消臭繊維製品として満足できるものではなかった。
特開平9−228240号公報 特開平9−241967号公報 特開平8−284011号公報 特開平10−57816号公報 特開2004−162245号公報 特開平10−8376号公報 特開平10−28640号公報
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、その課題は、化学的及び/又は物理的吸着により悪臭成分を吸着し、さらに光触媒機能を十分活用できる光触媒繊維により、かかる悪臭成分を分解することの出来る消臭繊維構造物を提供することにある。
本発明者は、上述の目的を達成するために鋭意検討を進めた結果、以下に示す本発明に到達した。
(1)アクリロニトル含有率の異なる重合体をそれぞれ用いた二種類の紡糸原液から湿式紡糸法によって得られる多層構造の光触媒活性を有する繊維であって、各紡糸原液で用いられる重合体のアクリロニトリル含有率が共に60重量%以上であり、それぞれのアクリロニトリル含有率の差が1重量%以上であり、光触媒活性を有する金属酸化物微粒子が、アクリロニトリル含有率の低い方の重合体を用いた紡糸原液から形成された層に含有されている光触媒活性を有する繊維と、化学及び/又は物理吸着による消臭機能を有する消臭性繊維とを含有することを特徴とする消臭繊維構造物。
(2)湿式紡糸法がランダム複合型又はサイドバイサイド型紡糸法であることを特徴とする(1)に記載の消臭繊維構造物。
(3)光触媒活性を有する繊維の細孔表面積が10〜40m/gの範囲であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の消臭繊維構造物。
(4)金属酸化物微粒子が酸化チタンであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の消臭繊維構造物。
(5)金属酸化物微粒子の粒子径が10〜100nmの範囲であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の消臭繊維構造物。
(6)光触媒活性を有する繊維の母体100重量部に対して、金属酸化物微粒子が1〜10重量部含有されていることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の消臭繊維構造物。
本発明に採用する光触媒活性を有する繊維は、光触媒活性を有する金属酸化物微粒子が、多孔質層と緻密層が交互に配列した多層構造繊維の緻密層に含有されているため、紡績性、染色性などの加工性に優れており、かつ光触媒機能が有効に活用できる。そのため、さまざまな種類の悪臭を効果的に分解して消臭することができる。本発明の消臭繊維構造物は、かかる光触媒活性を有する繊維および化学及び/又は物理吸着による消臭機能を有する消臭性繊維を含有していることから、光が照射されていない条件下でも化学及び/又は物理吸着により悪臭成分をすばやく消臭でき、さらに、光照射により効果的に分解して消臭することができる。また、本発明に採用する光触媒活性を有する繊維は抗菌性、抗黴性、防汚性など、種々の機能を有していることから、多様な繊維製品に応用できる。
以下に本発明を詳細に説明する。まず、本発明の繊維構造物において採用する光触媒活性を有する繊維の母体となる繊維は、多孔質層と緻密層が繊維断面方向に交互に配列した多層構造繊維である。多層構造繊維の層数としては、多孔質層と緻密層からなる二層以上の多層構造を有するものであり、三層以上の場合は、かかる多孔質層と緻密層が交互に配列している必要がある。
さらに、光触媒活性を有する金属酸化物微粒子は緻密層側に含有されている必要がある。緻密層側に含有されていれば、多孔質層側にも含有されていても構わないが、多孔質層側の微粒子は脱落しやすいため、また、緻密層側に含有されていれば十分な機能が得られるため、コストの面からも緻密層側にのみ含有せしめる方が好ましい。
光触媒活性を有する繊維の母体となる繊維は多孔質層と緻密層が交互に配列した多層構造繊維であるが、該繊維の細孔表面積は10〜40m/gの範囲であることが好ましく、更に好ましくは20〜40m/gの範囲である。該繊維の細孔表面積が10m/g未満の場合は、悪臭成分の吸着面積が小さくなるなど、光触媒機能を十分活用できない場合がある。また、40m/gを超える場合には紡績性(静電気)、染色性(発色性)等の加工性に難を生ずる可能性がある。
光触媒活性を有する金属酸化物微粒子は、紫外線照射によりその表面で電子と正孔が発生し、周囲の水や酸素から強力な酸化力を有する活性酸素を発生させる物質である。具体的には、Se、Ge、Si、Ti、Zn、Cu、Al、Sn、Ga、In、P、As、Sb、C、Cd、S、Te、Ni、Fe、Co、Ag、Mo、Sr、W、Cr、Ba、Pb等の酸化物などの化合物であって水に不溶のものが挙げられる。これらの中でも酸化チタン、酸化亜鉛及び酸化タングステンから選ばれる1種を単独で又は2種以上を組み合わせたものが好適であり、さらに、安全性や価格の面から酸化チタンを用いるのが好ましい。
また、光触媒活性を有する金属酸化物微粒子の粒子径は、特に限定されるものではないが、平均一次粒子径として10〜100nmの範囲にあることが好ましく、更に好ましくは15〜50nm、より好ましくは15〜30nmの範囲である。無論、平均一次粒子径が小さいほど光触媒としての活性は高いわけであるが、平均一次粒子径が10nm未満の場合、繊維に含有させる際の取り扱い性(粉塵)、及び分散性(凝集性)に問題を生ずる可能性がある。一方、平均一次粒子径が100nmを超える場合には、十分な機能が得られない可能性がある。
光触媒活性を有する金属酸化物微粒子の量は、必要とされる消臭性、抗菌・抗黴性、防汚性等の能力に応じて広い範囲から選択できる。該微粒子の量が少ないと、必要な能力が得られない場合があり、また多すぎると能力としては優れているものの、母体繊維を劣化させたり、繊維の物性を損なう恐れがあるため、繊維の母体100重量部に対して1〜10重量部であることが好ましく、より好ましくは1.5〜5重量部である。
上述したように光触媒活性を有する繊維は、多孔質層と緻密層が交互に配列した多層構造繊維であり、同種あるいは異種の重合体からなる所謂複合繊維である。かかる重合体は、繊維を形成しうるものであれば、単独重合体でも共重合体でもよく、例えば、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン系繊維、エチレン−ビニルアルコール系共重合体繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリ塩化ビニリデン系繊維、ポリウレタン繊維、アクリル系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリクラール繊維、フッ素系繊維、蛋白−アクリロニトリル共重合体系繊維、ポリグリコール酸繊維、フェノール樹脂繊維などの合成繊維、アセテート繊維などの半合成繊維、レーヨン、キュプラなどの再生繊維を形成する重合体が例示される。中でも、アクリロニトリル系重合体からなるアクリル系繊維は、光触媒活性に対し耐性が高いことから、光触媒活性を有する繊維の母体繊維として最も好適なものである。
多層構造繊維を得るための手段としては、それ自体公知の複合繊維の製造方法(サイドバイサイド型、ランダム複合型)から任意に選択出来るが、好ましくは特公昭59−7802号公報記載のような2成分の紡糸原液を任意のエレメント数を設置した登録商標名Kenics Mixer(米国ケニックス社製)や、ISG Mixerを通過させた後、口金導入孔の分流板で複合流を導き吐出するいわゆるランダム複合型を採用することによって本発明の目的を有利に達成することが出来る。
また、光触媒活性を有する繊維は、多孔質層と緻密層を有することが必要である。かかる構造の繊維は、公知の多孔質繊維を製造する方法と、通常の緻密繊維を製造する技術を組み合わせることによって得ることができる。例えば多孔質層側の紡糸原液に母体繊維となる重合体と相溶性の低い重合体を添加し、相分離によりキャピラリー状の多孔質構造を得る方法、非揮発性溶媒を多孔質層側の紡糸原液に添加し、紡糸後に該溶媒を抽出することにより多孔質構造を得る方法、また、製造工程中の膨潤ゲルトウに水溶性化合物を充填し、乾燥、後処理の後で充填物を溶出させ多孔質を得る方法、あるいは緻密化条件の異なる同種又は異種の重合体を用い、一方の重合体のみが緻密化する条件で処理を行う方法等を挙げることができる。
以下に、光触媒活性を有する繊維の製法の一例として、アクリロニトリル含有量の異なる2種類の重合体を用いたアクリル系繊維の製法について詳述する。まず、ポリアクリロニトリル系重合体としては、単独重合体や公知のモノマーとの共重合体を用いることができるが、混在して繊維を構成する2種類の重合体共にアクリロニトリル(以下、ANともいう)比率が60重量%以上、より好ましくは80重量%以上であることが望ましい。また2種類の重合体のアクリロニトリル含有量の差は、同じ紡糸条件で、一方を多孔質層、他方を緻密層とするためには、それぞれの緻密化条件にある程度の差が必要となるため、その差が1重量%以上、好ましくは2重量%以上であるものが好ましい。
共重合に用いられるコモノマーとしては重合性不飽和ビニル化合物など、アクリロニトリルと共重合するものであれば特に制限はなく、例えばアルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、メタクリロニトリル、アクリルアミド、塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニリデン、スチレン、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸塩、アリルスルホン酸塩、メタリルスルホン酸塩、エチレン、プロピレン等を使用することができる。
以上のような2種類のアクリロニトリル系重合体を混在させ繊維を形成させる方法としては、2種類のアクリロニトリル系重合体をそれぞれ単独にポリアクリロニトリルの溶剤に溶解した後、その重合体溶液を特定の紡糸装置・口金に導きサイドバイサイド型とする方法、2種類の重合体溶液を原液多層形成装置を通して紡糸口金に導きランダム複合型とする方法などが挙げられる。中でもランダム複合型が2層を超える多層構造の繊維が得られるため推奨される。なお、光触媒活性を有する金属酸化物微粒子は、緻密層側の重合体溶液に添加、あるいは重合体に添加して紡糸原液を作成する。
かかるランダム複合型のアクリル系繊維の製造は、例えば以下のようにして行われる。まず、それぞれの重合体を溶剤に溶解して2種の紡糸原液(a,b)とする。この2種の原液a,bは原液多層形成装置に導かれる。かかる装置の例としてはスタティックミキサーである登録商標名Kenics mixer,あるいはISG mixer等が挙げられるが、該装置は原液を通過させることにより供給側の原液層数の2〜10倍の原液層数として出口側から送出するものである。かかる装置を複数段使用することで形成される原液の層数は自由に設定できる。
原液多層形成装置の出口側には紡糸口金を装着する。a,b,a,b‥‥の如くにn層に形成された原液がホール数Hを持つ紡糸口金に供給される場合、紡出孔1ホールに供給される原液層数は平均的にはn/H0.5に比例する。すなわち層数は原液多層形成装置や紡糸口金の形状(紡出孔の配置)、該口金の取り付け方向等の装置条件に依存するので、1本の繊維の断面に要求される層の数に応じてこれらの条件を適合させるのである。
紡糸口金から吐出された紡糸原液は凝固、水洗、延伸の各工程を経て、続いて湿熱処理を行う。この際、一方が緻密層、他方が多孔質層となるように、凝固条件、湿熱処理条件を設定する。なおここでいう湿熱処理とは、飽和水蒸気や過熱水蒸気の雰囲気下で加熱を行う処理を意味する。その後、多孔質層が緻密化しない温度で乾燥することにより、本発明に採用する光触媒活性を有する繊維が得られる。
なお、AN含有率が同じであっても、例えば一方のAN系重合体のコモノマーを親水性のものとし、他方を疎水性のものとするように、異なるコモノマーを用いることによって、本発明に採用する光触媒活性を有する繊維を得ることができる。
かくして得られる光触媒活性を有する繊維は、光触媒活性を有する金属酸化物微粒子が、多孔質層と緻密層が交互に配列した多層構造繊維の緻密層に含有されている。そのため、多孔質層に空気中の悪臭成分や菌などが吸着され、該多孔質層に接する緻密層の光触媒活性を有する金属酸化物微粒子により分解されることによって、優れた機能を有するものと考えられる。さらに、光触媒活性を有する金属酸化物微粒子が、緻密層に含有されているため、該微粒子の染色時の脱落を抑えることができ、また優れた洗濯耐久性を有している。加えて、多孔質層のみの繊維の場合に惹起される静電気の発生による紡績性の悪化や染色性の悪化も抑えることができる。
本発明に採用される化学及び/又は物理吸着による消臭機能を有する消臭性繊維は、特に限定されるものではなく所謂消臭性繊維であれば良い。例えば、アクリル繊維にヒドラジンによる架橋を導入せしめた酸・アルデヒド吸収繊維、アクリル繊維にヒドラジンによる架橋が導入され、かつ、カルボキシル基を有する塩基性ガス吸収繊維、かかるカルボキシル基がH型及び/又は、K、Na、Ca、Mg、Alより選ばれた1種以上の金属塩型である酸・塩基性ガス吸収繊維、イオン交換またはイオン配位可能な極性基を有し、かつ架橋構造を有する繊維中に、金属および/または難溶性金属塩の微粒子を含有した消臭性繊維などが挙げられる。
本発明の消臭繊維構造物に採用される化学及び/又は物理吸着による消臭機能を有する消臭性繊維と光触媒活性を有する繊維の割合は特に限定されるものではなく、また、その他の繊維を含有せしめてもかまわないが、化学及び/又は物理吸着による消臭機能を有する消臭性繊維及び光触媒活性を有する繊維の含有量が少ないと消臭効果が少ないため、両繊維ともに5重量%以上含有していることが望ましい。
本発明の消臭性繊維構造物は、化学及び/又は物理吸着による消臭機能を有する消臭性繊維と光触媒活性を有する繊維とを含有するのもであり、例えば糸を交錯して形成した構造として織物、編物、組物、レース、網等があげられ、また、糸を並列ないし積層して形成した構造として一方向プリプレグ等、積層した繊維を接着又は絡合した構造としてニードルパンチ不織布、スパンボンド、紙、フェルト等が挙げられる。その他各構造を組合わせたものであっても構わず、さらに、上記以外のもの例えば布団綿、中綿等であっても構わない。
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例に記載の%あるいは部は、特に断りのない限り重量%あるいは重量部である。また、実施例及び比較例中で用いた評価試験の方法は以下の通りである。
(消臭率1)
試料を10cm×10cmの大きさに切り取り、乾燥後精秤した。該試料を1.5L容のテドラーバッグ(登録商標)に入れ、初期濃度45体積ppmになるようにアセトアルデヒドガスを入れて密閉した。反射板付ブラックライト蛍光ランプ(松下電器産業株式会社製、20ワット形FL20S・BLB)2本を平行に取り付けた光源を用い、テドラーバッグ(登録商標)から20〜30cmの距離で紫外線を照射した。紫外線強度は、紫外線強度計を用いて0.25mW/cmの条件となるように、光源からの距離を調整した。所定の時間紫外線を照射後、アセトアルデヒド検知管でテドラーバッグ(登録商標)中の残留アセトアルデヒドガス濃度を測定し、次式に従い消臭率1(%)を算出した。
消臭率1(%)=〔(初期濃度−残留ガス濃度)/初期濃度〕×100
同様の方法で、アンモニアガス初期濃度42体積ppm、硫化水素ガス初期濃度30体積ppmの条件で各残留ガス濃度を測定し、各々のガスの消臭率1(%)を上記と同様にして算出した。
(消臭率2)
反射板付ブラックライト蛍光ランプをナショナル製パルックツイン1(3波長形昼白色ME27ワット)に変更した以外は消臭性能評価1と同様の方法で消臭性能を評価した。この評価では光触媒繊維はほとんど活性を示さない。
(細孔表面積評価)
繊維10mgを短繊維状にカットし、島津製作所製MICROMERITICS Auto Pore IVにて水銀圧4.14×10−2〜4.14×10MPaまで評価した。得られる細孔表面積(A1)は繊維間空隙を含むため、次式により繊維間空隙分(A2)を減じたものを繊維の細孔表面積とした。
繊維の細孔表面積=A1−A2
A1:水銀圧4.14×10−2〜4.14×10MPaの細孔表面積
A2:水銀圧4.14×10−2〜1.38MPaの細孔表面積
(多層化層数評価)
繊維200本を引き揃え蝋で固めた後、ライカ社製ミクロトーム2065を用い繊維断面方向に切断し、厚さ50nmの薄片試料を作成した。作成した薄片試料をNikon社製光学顕微鏡AFX−IIにて観察、繊維一本当りの層数を数え、200本の平均層数を多層化層数とした。なお、薄片試料を染料等で薄く色づけするとより容易に層数を数えることが出来る。
(光触媒活性を有する繊維の製造例)
アクリロニトリル、アクリル酸メチル、メタリルスルホン酸ソーダからなるアクリロニトリル含有率が90重量%のアクリロニトリル共重合体からなる紡糸原液(I)及び、アクリロニトリル、アクリル酸メチル、メタリルスルホン酸ソーダからなるアクリロニトリル含有率が88重量%のアクリロニトリル共重合体と平均一次粒子径15nmの酸化チタン微粒子(テイカ株式会社製TK522)からなる紡糸原液(II)をISG Mixer(理論原液層数432)に1:1の割合で供給して多層化混合し、湿式紡糸した。ここで、アクリロニトリル系共重合体の溶媒としては、ロダン酸ソーダ水溶液を用いた。また、酸化チタン微粒子は紡糸原液(II)のアクリロニトリル重合体100重量部に対して、5重量部となるよう調整した。
凝固液には12重量%濃度のロダン酸ソーダ水溶液を1.5℃で用いた。次いで水洗、熱延伸を施し、得られた繊維を乾燥することなく弛緩状態で115℃のスチーム処理を行い、さらに110℃で15分間乾燥し、ランダム複合型のアクリル繊維である光触媒活性を有する繊維(繊維1)を得た。
かかる繊維の細孔表面積は30m/g、多層化層数2.5であった。
(実施例1)
光触媒活性を有する繊維(繊維1)10重量%、酸・アルデヒド吸着繊維である東洋紡績製セルファインAを重量10%、アンモニア吸着繊維である東洋紡績製セルファインN10重量%、レギュラーポリエステル40重量%及びポリエステル熱融着繊維40重量%を混綿後、カーディング、ニードルパンチし130℃の熱処理を行い目付け37.0g/mの不織布を得た。かかる不織布のアセトアルデヒドガス消臭率を測定し、表1に示した。また、硫化水素ガス消臭率を表2に、アンモニアガス消臭率を表3に示した。
Figure 0004560787
Figure 0004560787
Figure 0004560787
(実施例2)
光触媒活性を有する繊維(繊維1)を20重量%、レギュラーポリエステル35重量%及びポリエステル熱融着繊維35重量%とした以外は、実施例1と同様にして不織布を作成した。かかる不織布の目付けは38.9g/mであった。消臭性能は表1〜3に併記した。
(実施例3)
光触媒活性を有する繊維(繊維1)を40重量%、レギュラー製ポリエステル25重量%及びポリエステル熱融着繊維25重量%とした以外は、実施例1と同様にして不織布を作成した。かかる不織布の目付けは39.8g/mであった。消臭性能は表1〜3に併記した。
表1、2、3から明らかなように、本発明の消臭繊維構造物は紫外線を照射せずとも優れた消臭性能を示し、さらに紫外線を照射した場合にはより優れた消臭能力が得られることがわかる。

Claims (6)

  1. アクリロニトル含有率の異なる重合体をそれぞれ用いた二種類の紡糸原液から湿式紡糸法によって得られる多層構造の光触媒活性を有する繊維であって、各紡糸原液で用いられる重合体のアクリロニトリル含有率が共に60重量%以上であり、それぞれのアクリロニトリル含有率の差が1重量%以上であり、光触媒活性を有する金属酸化物微粒子が、アクリロニトリル含有率の低い方の重合体を用いた紡糸原液から形成された層に含有されている光触媒活性を有する繊維と、化学及び/又は物理吸着による消臭機能を有する消臭性繊維とを含有することを特徴とする消臭繊維構造物。
  2. 湿式紡糸法がランダム複合型又はサイドバイサイド型紡糸法であることを特徴とする請求項1に記載の消臭繊維構造物。
  3. 光触媒活性を有する繊維の細孔表面積が10〜40m/gの範囲であることを特徴とする請求項1又は2に記載の消臭繊維構造物。
  4. 金属酸化物微粒子が酸化チタンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の消臭繊維構造物。
  5. 金属酸化物微粒子の粒子径が10〜100nmの範囲であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の消臭繊維構造物。
  6. 光触媒活性を有する繊維の母体100重量部に対して、金属酸化物微粒子が1〜10重量部含有されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の消臭繊維構造物。
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