JP2014012915A - 架橋アクリレート系超極細繊維構造体 - Google Patents

架橋アクリレート系超極細繊維構造体 Download PDF

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Abstract

【課題】従来の架橋アクリレート系繊維においては、消臭や吸湿の速度、容量等の性能面の向上に限界があり、更なる高性能化のニーズに対して必ずしも満足できる性能を提供できていなかった。本発明者は、かかる状況に鑑み鋭意検討を進めた結果、ナノレベルの繊維径を有する架橋アクリレート系繊維を得ることに成功し、かかる繊維を含む繊維構造体が、消臭、抗アレルゲン、吸放湿等の特性において、速度、容量等の面で卓越した性能を有することを見出した。本発明の目的は、アレルゲン物質、悪臭物質、水蒸気などの除去性能について、従来よりも飛躍的に高い速度、容量を有する架橋アクリレート系繊維構造体を提供することである。
【解決手段】1〜10mmol/gのカルボキシル基および架橋構造を含有し、かつ、平均繊維径が13〜1300nmである架橋アクリレート系超極細繊維を含む架橋アクリレート系超極細繊維構造体。
【選択図】図4

Description

本発明は、消臭性能、吸放湿性、抗アレルゲン性能等を有する架橋アクリレート系超極細繊維構造体に関する。
近年の健康、快適性に対する意識の高まりから、消臭性能、抗アレルゲン性能、吸放湿性等の機能を有する素材の開発が求められており、繊維分野においてもこれら性能を付与した素材の開発が盛んに行なわれている。中でも、架橋アクリレート系繊維は様々な機能を発現しうる素材として開発が進められており、たとえば、消臭性能を有するアクリレート系繊維(特許文献1)、吸放湿性能を有するアクリレート系繊維(特許文献2)および、抗アレルゲン性能を有するアクリレート系繊維(特許文献3)が知られている。
しかし、これらの従来のアクリレート系繊維に関する技術では、消臭や吸湿の速度、容量等の性能面の向上に限界があり、更なる高性能化のニーズに対して必ずしも満足できる性能を提供するものではなかった。
特開平8−246342号公報 特開平5−132858号公報 特開2008−196062号公報
本発明は、かかる従来技術の現状に鑑みて創案されたものであり、その目的は、消臭性能、抗アレルゲン性能、吸放湿性等において、これまで知られていた架橋アクリレート系繊維材料と比較し、速度、容量等の面で卓越した性能を有する機能性架橋アクリレート系超極細繊維構造体を提供することにある。
本発明者は、上述の目的を達成するために鋭意検討を進めた結果、従来にない13〜1300nmという極めて小さい繊維径を有する架橋アクリレート系繊維を得ることに成功し、かかる超極細の架橋アクリレート系繊維を含む繊維構造体が、消臭性能、抗アレルゲン性能、吸放湿性等において、これまで知られていた材料と比較し、速度、容量等の面で卓越した性能を有することを見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明は以下の手段により達成される。
(1) 1〜10mmol/gのカルボキシル基および架橋構造を含有し、かつ、平均繊維径が13〜1300nmである架橋アクリレート系超極細繊維を含む架橋アクリレート系超極細繊維構造体。
(2) 平均繊維径が10〜1000nmのポリアクリロニトリル系超極細繊維を含む繊維構造体に1分子中の窒素数が2以上である窒素含有化合物による架橋処理および加水分解処理を施して得られることを特徴とする請求項1に記載の架橋アクリレート系超極細繊維構造体。
(3) 架橋アクリレート系超極細繊維が該繊維以外の繊維からなる繊維素材上に積層されたものであることを特徴とする(1)または(2)に記載の架橋アクリレート系超極細繊維構造体。
(4) 架橋アクリレート系超極細繊維が該繊維以外の繊維からなる繊維素材に接着されていることを特徴とする(3)に記載の架橋アクリレート系超極細繊維構造体。
(5) 架橋アクリレート系超極細繊維以外の繊維からなる繊維素材が熱融着性繊維を含むことを特徴とする(3)または(4)に記載の架橋アクリレート系超極細繊維構造体。
(6) (1)〜(5)のいずれかに記載の架橋アクリレート系超極細繊維構造体であって、かつ、該構造体を構成する架橋アクリレート系超極細繊維が、カルボキシル基として1〜10mmol/gのH型カルボキシル基を含むものである架橋アクリレート系超極細繊維構造体を含有するアレルゲン除去材。
(7) (1)〜(5)のいずれかに記載の架橋アクリレート系超極細繊維構造体であって、かつ、該構造体を構成する架橋アクリレート系超極細繊維が、カルボキシル基として1〜10mmol/gのH型カルボキシル基を含むものである架橋アクリレート系超極細繊維構造体を含有する消臭材。
(8) (1)〜(5)のいずれかに記載の架橋アクリレート系超極細繊維構造体であって、かつ、該構造体を構成する架橋アクリレート系超極細繊維が、カルボキシル基として1〜10mmol/gの塩型カルボキシル基を含むものである架橋アクリレート系超極細繊維構造体を含有する吸湿材。
(9) (1)〜(5)のいずれかに記載の架橋アクリレート系超極細繊維構造体を有するフィルター。
本発明の特筆すべき効果は、これまで知られていた材料では到底達成できなかった消臭、吸湿、抗アレルゲン性能等の速度性能、容量性能等に優れた繊維構造体を提供し得た点である。また、本発明の架橋アクリレート系超極細繊維構造体からなる不織布は、従来知られている架橋アクリレート系繊維からなる通常繊維径で得られる不織布では到底得られない強度を持つため、フィルターをはじめ、さまざまな用途、分野の製品に容易に適用できる。
実施例1および比較例1で得られた不織布の吸放湿速度を示す図である。 実施例1、2および比較例1で得られた不織布の吸湿開始後30分間の吸放湿速度を示す図である。 実施例5および比較例3で得られた不織布のアンモニア消臭性能を示す図である。 実施例1で得られた不織布のSEM画像である。 実施例9で得られた不織布の支持体層側から撮影したSEM画像である。 実施例9で得られた不織布のナノファイバー層側から撮影したSEM画像である。
本発明の繊維構造体は1〜10mmol/gのカルボキシル基および架橋構造を含有し、かつ、平均繊維径が13〜1300nmである架橋アクリレート系超極細繊維を含む架橋アクリレート系超極細繊維構造体である。
本発明の繊維構造体が、優れた消臭性能、抗アレルゲン性能、吸放湿性能を発現する理由としては該繊維構造体に含まれる架橋アクリレート系繊維が超極細繊維であり、従来知られている架橋アクリレート系繊維と比較して比表面積が圧倒的に大きいことが挙げられる。すなわち、繊維単位重量あたりの表層部に存在するカルボキシル基量に秀でているため、アレルゲン物質、悪臭物質あるいは水蒸気などの除去対象物質をすばやく、多量に吸着することができるのである。
本発明に採用する架橋アクリレート系超極細繊維のカルボキシル基の量としては、1〜10mmol/gであり、好ましくは2〜10mmol/g、より好ましくは5〜10mmol/gである。カルボキシル基の量が下限に満たない場合には、十分な消臭性能、抗アレルゲン性能、吸放湿性能が得られないことがあり、上限を超える場合には、繊維の水膨潤性が高くなりすぎ実用上満足し得る繊維物性が得られないことがある。
カルボキシル基の状態としては、対イオンがH、すなわちCOOHの形(以下、H型カルボキシル基とも言う)であれば、アンモニア、トリエチルアミン、ピリジン等のアミン系ガス等の消臭性能や抗アレルゲン性能に関して優れた性能が発現する。抗アレルゲン性能については、除去対象となるアレルゲンは特に限定されないが、花粉やダニなどから発生するアレルゲンを効率よく除去することができる。なお、抗アレルゲン性能を発現する理由は定かではないが、H型カルボキシル基とアレルゲン物質が相互作用することにより、繊維にアレルゲンが吸着するのではないかと考えられる。
また、カルボキシル基の状態として、対イオンがH以外のカチオン(以下、塩型カルボキシル基とも言う)であれば、酢酸、イソ吉草酸等の酸性ガス、ホルムアルデヒド等のアルデヒドに対する優れた消臭性能、及び吸放湿性能が発現する。
また、本発明に採用する架橋アクリレート系超極細繊維においては、架橋構造を有することで、水との親和性の高いカルボキシル基を多量に有するにもかかわらず、水に溶解せず、水膨潤も抑制され、実用上満足し得る物性を保持することができる。
本発明に採用する架橋アクリレート系超極細繊維の平均繊維径としては、13〜1300nmであり、下限については好ましくは50nm、より好ましくは100nm、上限については好ましくは900nm、より好ましくは700nmである。平均繊維径が上限を超える場合には、従来の架橋アクリレート系繊維に対して、消臭性能、抗アレルゲン性能、吸放湿性能などにおける優位性が十分に得られないことがある。一方、平均繊維径が下限に満たない繊維は現在の技術においては製造が難しく、実用的ではない。
上述した本発明に採用する架橋アクリレート系超極細繊維は、平均繊維径が10〜1000nmのポリアクリロニトリル系超極細繊維(以下、PAN系ナノファイバーともいう)に1分子中の窒素数が2以上である窒素含有化合物による架橋処理および加水分解処理を施して得ることができる。
上記PAN系ナノファイバーはアクリロニトリルを40重量%以上、好ましくは50重量%以上含有するアクリロニトリル系重合体により形成された繊維である。従って、該アクリロニトリル系重合体としては、アクリロニトリル単独重合体のほかに、アクリロニトリルと他のモノマーとの共重合体も採用できる。共重合体における他のモノマーとしては、特に限定はないが、ハロゲン化ビニル及びハロゲン化ビニリデン;(メタ)アクリル酸エステル(なお(メタ)の表記は、該メタの語の付いたもの及び付かないものの両方を表す);メタリルスルホン酸、p−スチレンスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー及びその塩;(メタ)アクリル酸、イタコン酸等のカルボン酸基含有モノマー及びその塩;アクリルアミド、スチレン、酢酸ビニル等が挙げられる。
かかるPAN系ナノファイバーの製造手段に限定はなく、適宜公知の手段が用いられるが、エレクトロスピニング法は印加電圧、溶液濃度、スプレーの距離、エレクトロスピニング環境の温湿度を調節することにより繊維径をコントロールすることが可能であり有利な方法といえる。
また、PAN系ナノファイバーの形態については限定するものでないが、後述の化学処理時の取り扱い性を考えると不織布の形態が好ましい。また、エレクトロスピニング法で得られた不織布の場合、フィラメントがナノレベルで交絡している状態となっているため、通常の不織布に比べて強度に優れている。一般に架橋アクリレート系繊維は引張強度などの繊維物性があまり高くないが、かかるエレクトロスピニング法で得られたPAN系ナノファイバーの不織布を原料として用いることで、従来の架橋アクリレート系繊維の不織布に比べて飛躍的に高い強度を有する架橋アクリレート系繊維の不織布を得ることができる。また、かかる不織布をフィルターに用いた場合、捕集効率が高く、圧力損失も小さいフィルターとすることが期待できる。
本発明においては上述したPAN系ナノファイバーに1分子中の窒素数が2以上である窒素含有化合物による架橋処理を施す。この架橋処理により、PAN系ナノファイバー中のニトリル基と1分子中の窒素数が2以上である窒素含有化合物が反応して、架橋構造が形成され、これに伴い繊維中の窒素含有量が増加する。該架橋処理に採用しうる1分子中の窒素数が2以上である窒素含有化合物としては、水加ヒドラジン、硫酸ヒドラジン、塩酸ヒドラジン、臭素酸ヒドラジン等のヒドラジン系化合物やエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン等のアミノ基を複数有する化合物等が例示される。中でもヒドラジン系化合物は、反応しやすく、コスト的にも有利であり、好ましい。
1分子中の窒素数が2以上である窒素含有化合物による架橋処理は、架橋構造が形成される限りにおいて制限はなく、該化合物の溶液中にPAN系ナノファイバーを浸漬し、50〜150℃で反応させた場合に好ましい結果を得られる場合が多いが、ヒドラジン系化合物を用いる場合には、以下のような条件を採用することができる。
すなわち、ヒドラジン系化合物による架橋処理の具体的な処理条件としては、窒素含有量の増加を0.1〜10重量%に調整しうる条件である限り採用できるが、ヒドラジン系化合物濃度5〜80重量%の水溶液中、温度50〜120℃で1〜5時間処理する手段が工業的に好ましい。ここで、窒素含有量の増加とはヒドラジン系化合物による架橋処理前のPAN系ナノファイバーの窒素含有量と該処理後のPAN系ナノファイバーの窒素含有量との差をいう。なお、窒素含有量の増加が下限に満たない場合には、最終的に実用上満足し得る物性の繊維が得られないことがあり、上限を超える場合には、十分な消臭性能、抗アレルゲン性能が得られないことがある。
かかる架橋処理を施された繊維は、該処理で残留した薬剤を十分に除去した後、酸処理を施しても良い。ここに使用する酸としては、硝酸、硫酸、塩酸等の鉱酸や、有機酸等が挙げられるが特に限定されない。該酸処理の条件としては、特に限定されないが、大概酸濃度3〜20重量%、好ましくは7〜15重量%の水溶液に、温度50〜120℃で0.5〜10時間繊維を浸漬するといった例が挙げられる。
上述のようにして架橋処理を施された繊維、あるいは、さらに酸処理を施された繊維は、次に加水分解処理を施される。該処理により、架橋処理時に未反応のまま残存しているニトリル基などが加水分解され、カルボキシル基が生成される。
かかる加水分解処理の手段としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アンモニア等の塩基性水溶液、あるいは、硝酸、硫酸、塩酸等の水溶液中に架橋処理を施された繊維を浸漬した状態で加熱処理する手段が挙げられる。具体的な処理条件としては、上述したカルボキシル基の量の範囲などを勘案し、処理薬剤の濃度、反応温度、反応時間等の諸条件を適宜設定すればよいが、一般的には、0.5〜10重量%、好ましくは1〜5重量%の処理薬剤水溶液中、温度50〜120℃で1〜10時間処理する条件の範囲内で設定することが工業的、繊維物性的にも好ましい。なお、上述した架橋処理と同時に加水分解処理を行うことも出来る。
上述のようにして加水分解処理を施された繊維中には、加水分解処理に用いられたアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アンモニア等の種類に応じたアルカリ金属やアンモニウムなどのカチオンを対イオンとする塩型カルボキシル基が生成しているが、引き続き、必要に応じてカルボキシル基の対イオンを変換する処理を行ってもよい。例えば、塩酸、酢酸、硝酸、硫酸等の酸性水溶液に浸漬処理すれば、対イオンが水素イオンに置換され、H型カルボキシル基とすることができる。また、硝酸塩、硫酸塩、塩酸塩などの金属塩水溶液によるイオン交換処理を行えば、所望の金属イオンを対イオンとする塩型カルボキシル基とすることができる。さらに、水溶液のpHや金属塩濃度・種類を調整することで、異種の対イオンを混在させたり、その割合を調整したりすることも可能である。
上述してきた本発明の架橋アクリレート系超極細繊維構造体は、架橋アクリレート系超極細繊維単独で構成されたものであってもよいし、他の素材と組み合わせて構成されたものであってよい。他の素材と組み合わせることで、より多くの用途で有用なものとできる。他の素材と組み合わせる場合、架橋アクリレート系超極細繊維の含有量を好ましくは10重量%以上、より好ましくは30重量%以上とすることで、架橋アクリレート系超極細繊維の消臭性能、吸湿性能、抗アレルゲン性能などの性能を有効に発現させることができる。
ここで、他の素材と組み合わせる方法としては、例えば、上述したエレクトロスピニング法によるPAN系ナノファイバーの製造方法において、エレクトロスピニング可能な他の繊維素材を同時にエレクトロスピニングして、得られた繊維構造体に対して上述の架橋処理や加水分解処理を施す方法や、組み合わせたい他の繊維素材からなる支持体上にエレクトロスピニング法によりPAN系ナノファイバーを集積させ、得られた繊維構造体に対して上述の架橋処理や加水分解処理を施す方法などを挙げることができる。
ナノファイバーのみで構成された繊維構造体は大変薄いため、一般に取り扱いが難しいが、上述した後者の方法で得られた繊維構造体であれば、他の繊維素材が支持体として働くので、取り扱い性の面で有利である。また、後者の方法においては、PAN系ナノファイバーを他の繊維素材と一体化させておくことにより、得られる本発明の繊維構造体においても、架橋アクリレート系超極細繊維が他の繊維素材が一体化された状態となり、取り扱い性がさらに向上する。また機械的強度および耐摩擦性も向上し、具体的には、架橋アクリレート系超極細繊維の毛羽立ちや切断、架橋アクリレート系超極細繊維層の他の繊維素材からの剥離等が大幅に抑制される。
このときに、PAN系ナノファイバーを他の繊維素材と一体化させる方法としては、たとえば、他の繊維素材からなる支持体中に熱融着性繊維を含有させておき、PAN系ナノファイバーを集積させた後に、熱プレス等により熱融着させて接着する方法や、他の繊維素材からなる支持体上にPAN系ナノファイバーを集積させた後にケミカルボンドをスプレー加工し、乾燥させて接着させる方法などが挙げられる。ここで、熱融着性繊維としては、ポリプロピレン/ポリエチレン芯鞘繊維、熱融着性ポリエステル繊維などが、ケミカルボンドとしては、アクリル樹脂系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、エチレン−酢酸ビニル樹脂エマルジョン接着剤等が例示される。また、他の繊維素材からなる支持体の形態としては、不織布、織布、編地、紙状物などが挙げられる。
また、他の繊維素材からなる支持体中に熱融着性繊維を含有させる場合においては、熱融着性繊維の目付として好ましくは7g/m以上、より好ましくは10g/m、さらに好ましくは15g/mとすることが望ましい。熱融着性繊維の目付が7g/mに満たない場合には、架橋処理や加水分解処理の際や、摩擦などにより架橋アクリレート系超極細繊維層が支持体から剥離する場合がある。
また、他の繊維素材としては特に制限はなく、公用されている天然繊維、有機繊維、半合成繊維、合成繊維が用いられ、さらには無機繊維、ガラス繊維等も用途によっては採用し得る。具体的な例としては、綿、麻、絹、羊毛、ナイロン、レーヨン、ポリエステル、アクリル繊維などを挙げることができる。
本発明の架橋アクリレート系超極細繊維構造体の外観形態としては、糸、不織布、紙状物、シート状物、積層体、綿状体(球状や塊状のものを含む)等がある。該構造物内における架橋アクリレート系超極細繊維の含有形態としては、他素材との混合により、実質的に均一に分布させたもの、複数の層を有する構造の場合には、いずれかの層(単数でも複数でも良い)に集中して存在せしめたものや、夫々の層に特定比率で分布せしめたもの等がある。
本発明の架橋アクリレート系超極細繊維構造体は、単独あるいは他の部材と組み合わせて、アレルゲン除去材、消臭材あるいは吸湿材などとして利用することができる。他の部材としては、特に限定はなく、例えば、不織布、紙、金属板、フィルム、樹脂成形体などを挙げることができる。
アレルゲン除去材あるいは消臭材として用いる場合には、架橋アクリレート系超極細繊維構造体を構成する架橋アクリレート系超極細繊維において、H型カルボキシル基を1〜10mmol/g、好ましくは2〜10mmol/g、さらにより好ましくは5〜10mmol/g含有することが望ましい。また、吸湿材として用いる場合には、塩型カルボキシル基を1〜10mmol/g、好ましくは2〜10mol/g、さらにより好ましくは5〜10mmol/g含有することが望ましい。塩型カルボキシル基を構成するカウンターカチオンの種類としてはLi、Na、Kなどのアルカリ金属、Mg、Caなどのアルカリ土類金属、Cu、Ag、Znなどの重金属、Al、4級アンモニウムなどを例示することができる。
上記に例示した本発明の架橋アクリレート系超極細繊維構造体の外観形態や含有形態、該繊維構造体を構成する他の素材、および該繊維構造体と組み合わせる他の部材をいかなるものとするかは、最終製品の種類(例えば、衣料品、フィルター、カーテンやカーペット、寝具やクッション、インソールなど)に応じて要求される機能、特性、形状や、かかる機能を発現することへの架橋アクリレート系超極細繊維の寄与の仕方等を勘案して適宜決定される。
以下に本発明の理解を容易にするために実施例を示すが、これらはあくまで例示的なものであり、本発明の要旨はこれらにより限定されるものではない。なお、実施例中、部及び百分率は特に断りのない限り重量基準で示す。
<抗アレルゲン性能の評価(1):ダニアレルゲン不活化率>
精製ダニ抗原Der fII(生化学工業社製)2μgを含むリン酸緩衝液20mL中に試料15mgを加えたもの、および、コントロールとして繊維試料を加えないものを30℃×18時間処理し、これらの上澄み液について酵素免疫測定法(ELISA)でダニアレルゲン量を測定した。
具体的には、まず、一次抗体のモノクローナル抗体15E11(生化学工業(株)製)をマイクロプレートの各ウェルに50μLずつ分注して室温で3時間静置させた後、プレートをPBS−T(PBS(リン酸緩衝生理食塩水、0.01mol/l、pH7.2〜7.4)の0.05%ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート(和光純薬(株)製、Tween20相当品)溶液)で3回洗浄した。続いて、1%BSA(ナカライテスク(株)製、ウシ血清アルブミン(F−V)、pH5.2)を含むPBS−Tを各ウェルに300μLずつ分注し、4℃で12時間静置させた後、PBS−Tで3回洗浄した。次に、上述の上澄み液を各ウェルに50μLずつ分注し、室温で2時間静置させた後、PBS−Tで3回洗浄した。続いて二次抗体のペルオキシターゼ標識したモノクローナル抗体13A4(生化学工業(株)製)を各ウェルに50μLずつ分注し、室温で2時間静置させた後、PBS−Tで4回洗浄した。次にTMB試薬(フナコシ(株)製)を各ウェルに100μLずつ分注し、5分間反応させた。その後1Mの塩酸を各ウェルに100μLずつ分注し、反応を停止させてマイクロプレートリーダー(Bio−Rad Laboratories Inc 製)で吸光度(測定波長490nm)を測定した。得られた測定値から検量線を用いて上澄み液中のダニアレルゲン濃度を求め、不活化率を次式により算出した。

不活化率(%)={1−(A/B)}×100
(A=試料を加えた場合のアレルゲン濃度、B=コントロールのアレルゲン濃度)
<抗アレルゲン性能の評価(2):スギアレルゲン不活化率>
上記のアレルゲン除去性能の評価(1)において、精製ダニ抗原Der fII(生化学工業社製)2μgに代えて、精製スギ花粉抗原Cry J1(生化学工業社製)1μgを用いたこと、並びに、一次抗体としてモノクローナル抗体013(生化学工業社製)、二次抗体としてペルオキシターゼ標識したモノクローナル抗体053(生化学工業社製)を用いたこと以外は同様にして測定を行い、スギアレルゲン不活化率を求めた。
<消臭性能の測定>
評価サンプル60mgを入れたテドラーバックに50ppmのアンモニアガス15Lを加え、各経過時間ごとのアンモニアガス濃度をガス検知管で測定した。
<飽和吸湿率の測定>
試料を熱風乾燥機で105℃、16時間乾燥して重量を測定する(C[g])。次に該試料を20℃、90%RHの条件に調節した恒温恒湿器に24時間入れておく。このようにして吸湿させた試料の重量を測定する。(D[g])。以上の測定結果から、次式によって算出する。

飽和吸湿率[%]=(D−C)/C×100
<吸放湿速度の測定>
試料を熱風乾燥機で105℃、16時間乾燥して重量を測定する(E[g])。該試料について、恒温恒湿器を用いて、20℃、90%RH下での吸湿と20℃、40%下での放湿を24時間ずつ繰り返しながら、経時的に試料の重量を測定し(F[g])、次式によって算出した吸湿率をプロットすることで吸放湿速度を評価する。

吸湿率[%]=(F−E)/E×100
<H型カルボキシル基量の測定>
十分乾燥した試料約1gを精秤し(W1[g])、これに200mlの水を加え、0.1mol/l水酸化ナトリウム水溶液で常法に従って滴定曲線を求めた。該滴定曲線からCOOHに消費された水酸化ナトリウム水溶液消費量(V1[ml])を求め、次式によってH型カルボキシル基量を算出した。

H型カルボキシル基量[mmol/g]=0.1×V1/W1
<塩型カルボキシル基量>
塩型カルボキシル基量は、次式によって求める。

塩型カルボキシル基量[mmol/g]=(全カルボキシル基量)−(H型カルボキシル基量)

ここで、全カルボキシル基量については、試料に1mol/l塩酸水溶液を添加してpH2とし、予め試料に含まれるカルボキシル基を全てH型カルボキシル基としたうえで、上記の<H型カルボキシル基量の測定>と同様にして求める。
<不織布強度の測定>
テンシロン(オリエンテック社製/RTA−500)を用いて、幅2.5cmの不織布サンプルをチャックにセットし、引張速度50mm/分で引張試験を行った時の、破断した荷重を測定した。
<平均繊維径の測定>
走査型電子顕微鏡観察で任意に50本の繊維の繊維径を測定し、その平均値を平均繊維径とした。
<実施例1>
アクリロニトリル90%及びアクリル酸メチル10%からなるアクリロニトリル系重合体をN,N−ジメチルホルムアミドに溶解して、エレクトロスピニングを実施し、平均繊維径405nmのPAN系ナノファイバー不織布を得た。得られたPAN系ナノファイバー不織布に、15%ヒドラジン水溶液中で110℃×3時間架橋導入処理を行い水洗した。次に、8%硝酸水溶液中で110℃×1時間酸処理を行い水洗した。続いて5%水酸化ナトリウム水溶液中で、90℃×2時間加水分解処理を行い水洗し、カルボキシル基が塩型の架橋アクリレート系超極細繊維からなる不織布を得た。得られた不織布の塩型カルボキシル基量、平均繊維径、飽和吸湿率を表1に示す。また吸放湿速度を評価した結果を図1、図2に、得られた不織布のSEM写真を図4に示す。
<比較例1>
アクリロニトリル90%及びアクリル酸メチル10%からなるアクリロニトリル系重合体10部を48%のロダンソ−ダ水溶液90部に溶解した紡糸原液を、常法に従って紡糸、延伸した後、乾燥して単繊維径が8μmのPAN系繊維を得た。得られた繊維に、15%ヒドラジン水溶液中で110℃×3時間架橋導入処理を行い水洗した。次に、8%硝酸水溶液中で110℃×1時間酸処理を行い水洗した後、5%水酸化ナトリウム水溶液中で、90℃×2時間加水分解処理を行い水洗し、カルボキシル基が塩型の架橋アクリレート繊維を得た。得られた繊維の塩型カルボキシル基量、平均繊維径、飽和吸湿率を表1に示す。また吸放湿速度を評価した結果を図1、図2に示す。
<実施例2〜4、比較例2>
アクリロニトリル90%及びアクリル酸メチル10%からなるアクリロニトリル系重合体をN,N−ジメチルホルムアミドに溶解して、エレクトロスピニングを実施し、走査型電子顕微鏡測定で平均繊維径は980nmのPAN系ナノファイバー不織布を得た。得られたPAN系ナノファイバー不織布に、15%ヒドラジン水溶液中で110℃×3時間架橋導入処理を行い水洗した。次に、8%硝酸水溶液中で110℃×1時間酸処理を行い水洗した。続いて5%水酸化ナトリウム水溶液中で、90℃で加水分解処理を行い水洗し、カルボキシル基が塩型の架橋アクリレート系超極細繊維からなる不織布を得た。なお、30分〜2時間の範囲で加水分解時間を変えることにより、カルボキシル基量を調整した。得られた不織布の塩型カルボキシル基量、平均繊維径、飽和吸湿率を表1に、実施例2の吸放湿速度を評価した結果を図2に示す。
<実施例5>
実施例1で得られた不織布を、10%硝酸水溶液中で常温×24時間酸処理を行い水洗し、カルボキシル基がH型の架橋アクリレート系超極細繊維からなる不織布を得た。得られた繊維は99%を超えるダニアレルゲン不活化率を有するものであった。また、得られた繊維のH型カルボキシル基量、平均繊維径、スギ花粉に対する抗アレルゲン性能を表2に、アンモニア消臭性能を評価した結果を図3に示す。
<比較例3>
比較例1で得られた繊維を、10%硝酸水溶液中で常温×24時間酸処理を行い水洗し、カルボキシル基がH型の架橋アクリレート繊維を得た。得られた繊維のH型カルボキシル基量、平均繊維径、スギ花粉に対する抗アレルゲン性能を表2に、アンモニア消臭性能を評価した結果を図3に示す。
<実施例6〜8、比較例4>
実施例2〜4、比較例2で得られた不織布を、10%硝酸水溶液中で、常温×24時間酸処理を行い水洗し、カルボキシル基がH型の架橋アクリレート系超極細繊維からなる不織布を得た。得られた繊維のH型カルボキシル基量、平均繊維径、スギ花粉に対する抗アレルゲン性能を表2に示す。
<実施例9>
アクリロニトリル90%及びアクリル酸メチル10%からなるアクリロニトリル系重合体をN,N−ジメチルホルムアミドに溶解して、ポリプロピレン/ポリエチレンの芯/鞘構造の熱融着性繊維の不織布支持体(目付29.3g/m)上にエレクトロスピニングを実施し、支持体上に平均繊維径200nmのPAN系ナノファイバー不織布を集積させた。その後熱プレスを行い支持体とPAN系ナノファイバー不織布を一体化させた。得られた支持体を持つPAN系ナノファイバー不織布に、15%ヒドラジン水溶液中で110℃×3時間架橋導入処理を行い水洗した。次に、8%硝酸水溶液中で110℃×1時間酸処理を行い水洗した。続いて5%水酸化ナトリウム水溶液中で、90℃×2時間加水分解処理を行い水洗し、支持体を持ったカルボキシル基が塩型の架橋アクリレート系超極細繊維からなる不織布を得た。得られた不織布の支持体層側からのSEM写真を図5に、ナノファイバー層側からのSEM写真を図6に示す。
<参考例1>
実施例9において、ポリプロピレン/ポリエチレンの芯/鞘構造の熱融着性繊維の不織布支持体として目付が6.1g/mのものを使用すること以外は同様に処理を施したところ、実施例9と同様の塩型カルボキシル基量、平均繊維径を有する架橋アクリレート系超極細繊維からなる不織布が得られるものの、架橋アクリレート系超極細繊維からなる層が支持体からは剥離する結果となった。
表1に示すように、実施例1と比較例1においては、塩型カルボキシル基量および飽和吸湿率が同程度であるにもかかわらず、図1及び図2のように、比較例1に対して実施例1の不織布は、初期の乾燥状態から極めて短時間で飽和吸湿状態に達し、低湿度条件下に移行後は速やかに放湿しており、卓越した吸放湿速度を有していることが分かる。また、実施例2の不織布は、比較例1の繊維よりも塩型カルボキシル基量が少ないにもかかわらず、吸湿速度ははるかに上回っている。これらより、架橋アクリレート系繊維を極細化することによって、吸放湿速度が飛躍的に向上することが理解される。
また、比較例2の不織布は、実施例1〜4の不織布と同様に超極細繊維からなっているが、カルボキシル基が1mmol/g未満であり、天然繊維であるセルロースに劣る飽和吸湿率しか有していないため、吸湿素材としての架橋アクリレート系繊維の主要な優位性を発揮できず、実用上の利用価値が半減している。
表2から、H型カルボキシル基量を1mmol/g以上有する実施例5〜8の不織布は、良好な抗アレルゲン性能を有しており、その中でもH型カルボキシル基を5mmol/g以上有する実施例5,6においてはアレルゲンをほぼ完全に不活化できることが分かる。一方、比較例3で得られた従来技術の架橋アクリレート繊維に関しては、アレルゲンの不活化がほとんどできていないことから、架橋アクリレート系繊維を極細化することによって、抗アレルゲン性能が飛躍的に向上することが理解される。
また、表2に示すように、実施例5と比較例3においては、H型カルボキシル基量が同程度であるにもかかわらず、図3のように、実施例5の不織布は、比較例3の繊維と比較し、短時間でアンモニアを検出限界以下まで除去しており、卓越した消臭速度を有することが分かる。これらより、架橋アクリレート系繊維を極細化することによって、消臭速度が飛躍的に向上することが理解される。
また、図4からわかるように、PAN系ナノファイバーの不織布を原料として用いて得られた本発明の架橋アクリレート系超極細繊維構造体においては、フィラメントがナノレベルで交絡している状態となっている。かかる構造体は目付け3g/m、不織布強度157N/2.5cmであり、架橋アクリレート系繊維の不織布として従来にない高い強度を保持していた。
実施例9においては、図5及び図6に示すように、支持体と架橋アクリレート系超極細繊維が一体となった不織布が得られており、取り扱い性は向上し、また機械的強度および耐摩擦性も良好であった。

Claims (9)

  1. 1〜10mmol/gのカルボキシル基および架橋構造を含有し、かつ、平均繊維径が13〜1300nmである架橋アクリレート系超極細繊維を含む架橋アクリレート系超極細繊維構造体。
  2. 平均繊維径が10〜1000nmのポリアクリロニトリル系超極細繊維を含む繊維構造体に1分子中の窒素数が2以上である窒素含有化合物による架橋処理および加水分解処理を施して得られることを特徴とする請求項1に記載の架橋アクリレート系超極細繊維構造体。
  3. 架橋アクリレート系超極細繊維が該繊維以外の繊維からなる繊維素材上に積層されたものであることを特徴とする請求項1または2に記載の架橋アクリレート系超極細繊維構造体。
  4. 架橋アクリレート系超極細繊維が該繊維以外の繊維からなる繊維素材に接着されていることを特徴とする請求項3に記載の架橋アクリレート系超極細繊維構造体。
  5. 架橋アクリレート系超極細繊維以外の繊維からなる繊維素材が熱融着性繊維を含むことを特徴とする請求項3または4に記載の架橋アクリレート系超極細繊維構造体。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の架橋アクリレート系超極細繊維構造体であって、かつ、該構造体を構成する架橋アクリレート系超極細繊維が、カルボキシル基として1〜10mmol/gのH型カルボキシル基を含むものである架橋アクリレート系超極細繊維構造体を含有するアレルゲン除去材。
  7. 請求項1〜5のいずれかに記載の架橋アクリレート系超極細繊維構造体であって、かつ、該構造体を構成する架橋アクリレート系超極細繊維が、カルボキシル基として1〜10mmol/gのH型カルボキシル基を含むものである架橋アクリレート系超極細繊維構造体を含有する消臭材。
  8. 請求項1〜5のいずれかに記載の架橋アクリレート系超極細繊維構造体であって、かつ、該構造体を構成する架橋アクリレート系超極細繊維が、カルボキシル基として1〜10mmol/gの塩型カルボキシル基を含むものである架橋アクリレート系超極細繊維構造体を含有する吸湿材。
  9. 請求項1〜5のいずれかに記載の架橋アクリレート系超極細繊維構造体を有するフィルター。
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