JP3979545B2 - 機能性繊維およびその製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は機能性繊維およびその製造法に関し、さらに詳しくは悪臭の消臭、殺菌、水中の有機物の分解等の機能を有する機能繊維に係り、特に紫外線を照射することにより、カルボニル基を含有する化合物、酸性化合物、塩基性化合物等の悪臭物質を分解する機能を有し、タバコ臭が付着せず、また付着したタバコやにを分解する機能を有する機能性繊維およびその製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、生活環境における快適性への関心が高まり、室内、冷蔵庫内、車内または種々の環境内に存在する悪臭の除去に関して様々な提案がなされている。中でもオフィス、家庭または自動車内におけるタバコ臭の消臭は、禁煙運動の浸透にともないクローズアップされてきている。
ところで、従来の消臭、防臭技術の多くは、活性炭を用いたもの、または積極的に悪臭成分を吸引して消臭するフィルターを用いたものが主流であり、例えば生活環境で発生する各種悪臭成分を除去するフィルターとしては、対象臭気の異なる消臭有効成分が含浸された担体を複数種組み合わせた空気清浄フィルターが開示されている(特開平2−22673号公報)。また、アルデヒド除去用フィルターとしては、タバコフィルターをポリエチレンイミンとカルボン酸を含む処理溶液で処理し、これらの物質で被覆したフィルターが知られている(特開平2−257870号公報)。
【0003】
しかしながら、これらの技術はいずれも消臭剤を担体に単に含浸または塗布することにより、消臭成分を繊維表面に付着させたものであるために、繊維製品の風合いが硬く、また洗濯により容易に消臭成分が脱落し、洗濯耐久性またはファッション性が要求される衣料分野またはインテリア分野への応用は不可能であった。
また、特開平6−287355号公報には、銀、金、銅、パラジウム、ロジウム、白金などの金属、酸化銀、酸化銅、酸化チタン、酸化亜鉛などの酸化物の平均粒子径が200nm〜1nmの超微粒子が均一に分散している合成繊維、合成樹脂成形物が開示されている。
【0004】
ここに記載されている超微粒子含有合成繊維または合成樹脂成形物も酸性化合物を消臭する機能に劣り、十分な消臭機能を有していない。また、前記超微粒子を形成する原料を合成繊維原料または合成樹脂成形物の原料中に予め含有させ、該原料中で前記超微粒子を形成することにより製造するものであるが、製造が複雑であり、安定してかつ安価に製造することは困難である。
このように、一般に無機系消臭剤を含有する繊維はカルボニル基を含有する化合物の悪臭を消臭する能力に劣るという欠点があり、無機系消臭剤を含有する上記何れの繊維も、カルボニル基を含有する化合物の悪臭を消臭する機能に劣るものである。
【0005】
また、光触媒作用を有する物質により有害物質を分解し、または殺菌、消臭する技術としては、特開平5−154473号公報、特開平5−305125号公報、特開平6−192961号公報、特開平6−209985号公報、特開平7−60132号公報、特開平7−155598号公報、特開平7−171408号公報、特開平8−74171号公報等が知られている。
特開平5−154473号公報には、酸化剤の存在下にアナターゼ型チタンを光触媒として流体中に含まれる有機物を分解する方法が、特開平5−305125号公報には、アナターゼ型酸化チタンを光触媒として水中の微生物を殺菌する装置がそれぞれ記載されている。また特開平6−192961号公報には燐酸カルシウム系化合物、二酸化タチン、活性炭、ゼオライト、モレキュラーシーブ、無機系脱臭剤等の機能性粒子の水性分散液で繊維を含浸し、その後該繊維の軟化点以上の温度で熱処理して機能性粒子を繊維に固定してなる不織布が記載されている。
【0006】
さらに特開平6−209985号公報には、酸化チタン、酸化鉄、酸化タングステン、酸化ニッケル等の光触媒を建材の表面に担持させ、室内の殺菌処理方法が、特開平7−60132号公報には有機物を分解、浄化するために無機質粒子表面に光触媒作用を有する酸化チタンを担持させた光触媒が、特開平7−155598号公報にはタイル基板上にアナターゼ型酸化チタンを焼結してなる光触媒が、特開平7−171408号公報には日常生活で発生する有害物質、悪臭物質、油分等を分解、浄化するために、セラミック、ガラス、金属等の基体上に酸化チタン、酸化亜鉛、酸化タングステン、酸化鉄、チタン酸ストロンチウム等の金属化合物半導体からなる光触媒機能を発現する物質を接着した光触媒が、それぞれ開示されている。また特開平8−74171号公報には、酸化チタン光触媒が樹脂バインダーで固定されてなる繊維布帛が記載されている。
【0007】
しかしながら、上記の光触媒作用を有する物質や繊維は、単独で使用されるか、または光触媒作用を有する物質を無機系の物質に担持させたものであったり、繊維の熱可塑性を利用してその表面に単に固定するか、または樹脂バインダーでこれらの光触媒作用を有する物質を繊維に結合もしくは付着等の手段により固定した機能性繊維である。このため、繊維の表面に固定されているこれらの無機系金属粒子は、繊維に対する結合力が弱く、繊維表面から脱落しやすく、該粒子の有する機能を長期間にわたって繊維に維持していくのが非常に困難であった。また、樹脂バインダーによる光触媒作用を有する物質の固定は、該粒子の光触媒作用が樹脂バインダーで隠蔽され、その機能を十分に発現することができないという問題がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、タバコ臭のようなカルボニル基を含有する化合物、酸性化合物および塩基性化合物を含有する悪臭に対して優れた消臭性能を示し、かつ、タバコやにの分解性能に優れ、その上、取扱い性が容易でかつ安全性、加工性、洗濯耐久性が良好である機能性繊維、さらに殺菌、水中の有機物の分解等の機能を有する機能性繊維およびその製造法を提供するである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、次の構成をなすことにより、本発明の目的を達成できることを見いだし、本発明を完成させるに至った。すなわち、本願で特許請求される発明は、以下の通りである。
(1)湿式紡糸後または乾湿式紡糸後の乾燥前のゲル状膨潤繊維に光触媒作用を有する酸化チタンの水分散液を接触させ、該酸化チタンを上記繊維に固着することを特徴とする機能性繊維の製造法。
(2)繊維に0.1〜10重量%の酸化チタンを固着させることを特徴とする(1)に記載の機能性繊維の製造法。
(3)前記繊維がアクリル系合成繊維であることを特徴とする(1)または(2)に記載の機能性繊維の製造法。
【0010】
以下において、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明における光触媒作用を有する酸化チタンは、太陽光線または紫外線の照射による触媒作用により、有機物質、微生物、細菌等を分解、殺菌する作用を呈する物質をいう。該酸化チタンの形態には特に限定はないが、その機能を十分に発揮させる点からは単位重量当たりの表面積が大きいものが好ましい。このような酸化チタンとしては、より微細な粒子径を有する酸化チタン、ポーラスな構造を有する酸化チタン等の粒子が挙げられる。また、繊維の製造のしやすさからは水分散性の優れているものが好ましい。
【0011】
本発明において、繊維に対する光触媒作用を有する酸化チタン(以下、酸化チタンという)の含有量は0.1〜10重量%(以下、特定しない限り%は重量を表す)、好ましくは0.3〜5%である。酸化チタンの含有量が0.1%未満では、有機物、特にカルボニル基を含有する化合物や酸性化合物の悪臭に対する触媒作用による分解性能が低く、一方、10%を超えると繊維に酸化チタンを含有させるのが困難となり、また繊維物性の低下、風合の低下、さらに紡績工程で繊維が巻き付く、紡績機械の摩耗などの問題が発生する。また、酸化チタンの粒子径には、繊維の製造に支障がない限り特別の制限はないが、0.07μm以下が好ましい。ここで、酸化チタンの粒子径とは、分散液中に存在する酸化チタン粒子径をレーザー回折散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所製LA−910W)で測定した値をいう。酸化チタンの粒子径は、酸化チタンの繊維への固着性および繊維からの脱落防止の点から0.07μm以下が好ましい。
【0012】
酸化チタンを含有させる繊維としては、ポリビニルアルコール系繊維、アクリル系繊維等の合成繊維、酢酸セルロース繊維等の半合成繊維、銅アンモニア人絹、レーヨンのような再生繊維等が好ましく用いられる。これらの繊維は湿式紡糸法または乾湿式紡糸により製造するができる。湿式紡糸法または乾湿式紡糸法により製造することのできない繊維は、酸化チタンを繊維に強固に固定することが困難な場合があり、酸化チタンの機能を長期間にわたって繊維に維持することができない場合がある。
ここで、湿式紡糸法とは、繊維の原料となる重合体をその溶剤に溶解し、得られた紡糸原液を紡糸口金を通して溶剤の希薄溶液からなる該紡糸原液の凝固性液体中に押し出すことにより繊維を製造する方法をいう。また、乾湿式紡糸法とは、上記紡糸原液を紡糸口金から一旦空気等の気体媒体中に吐出した後溶剤の希薄溶液からなる該紡糸原液の凝固液体中に導入して繊維を製造する方法をいう。
【0013】
上記繊維のうちアクリル系合成繊維は特に好ましい繊維である。このアクリル系合成繊維は、40%以上のアクリロニトリルと60%以下のアクリロニトリルと共重合可能な単量体とを共重合してなる重合体から製造することができる。アクリロニトリルと共重合可能な単量体としては、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、イタコン酸、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、スチレン、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、メタリルスルホン酸、メタリルスルホン酸塩、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸塩、アリルスルホン酸、アリルスルホン酸塩等のビニル単量体である。アクリル系合成繊維は、これらの単量体の少なくとも一種をアクリロニトリルと共重合した重合体またはこれらの重合体の混合物から製造することができる。
【0014】
本発明の酸化チタンを含有する繊維は、湿式紡糸法または乾湿式紡糸法により紡糸後、未乾燥のゲル状膨潤繊維に酸化チタンの分散液を接触させることにより、繊維に酸化チタンを強固に付着させることができる。
本発明において、ゲル状膨潤繊維とは、繊維の原料となる重合体を溶解した紡糸原液を紡糸口金を通して溶剤の希薄溶液からなる該紡糸原液の凝固媒体中に押し出すか、または該紡糸原液を一旦気体媒体中に押し出した後溶剤の希薄溶液からなる該紡糸原液の凝固媒体中に導入して凝固させることにより得られる水洗前または水洗後の未延伸繊維、またはこの繊維を延伸した延伸繊維であって、酸化チタン付着処理の前に乾燥処理がなされていない繊維をいう。
【0015】
次に、酸化チタンを含有する繊維の製造法について、アクリル系合成繊維の製造を例にして説明する。
アクリル系重合体は前記した通り、40%以上のアクリロニトリルと60%以下のアクリロニトリルと共重合可能なビニル単量体とを共重合してなる重合体またはこれらの重合体の混合物である。該重合体を溶解する溶剤としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキサイド、エチレンカーボネート等の有機溶剤、硝酸濃厚溶液、塩化亜鉛濃厚溶液、ロダン塩濃厚溶液等の無機酸系または無機塩系溶剤等があり、これらの溶剤に前記アクリル系重合体を溶解して紡糸原液を製造する。この紡糸原液を紡糸口金を通して溶剤の希薄溶液からなる該紡糸原液の凝固媒体中に押し出すか、または該紡糸原液を一旦空気、窒素ガス等の気体媒体中に押し出す等により凝固繊維を製造する。この溶剤の希薄溶液からなる凝固媒体としては、特に溶剤の希薄水溶液が好ましい。次に、この凝固繊維は、水洗され、さらに熱延伸される。熱延伸は、熱水による延伸、過熱蒸気による延伸であり、熱水による延伸が好ましい。
【0016】
このようにして得られた繊維は水を多量にを含むゲル状膨潤繊維であり、該繊維に酸化チタン分散液を接触させて、該膨潤繊維に酸化チタンを乾燥繊維に対して0.1〜10%含有させる。
酸化チタン分散液を接触させる際、凝固以後の繊維であれば未水洗繊維、未延伸繊維など何れの繊維であってもよいが、水洗、延伸工程を経たゲル状膨潤繊維が、繊維の製造が容易であり、また酸化チタンを効率的に付与することができるなどの点で好ましい。酸化チタン分散液をゲル状膨潤繊維に接触させるには、ゲル状膨潤繊維を酸化チタン分散液に浸漬する、または該繊維に酸化チタン分散液を噴霧する等何れの手段でもよい。
ゲル状膨潤繊維と接触した酸化チタン粒子は、該繊維に強固に付着して含有される。また、本発明においては、該酸化チタン粒子は繊維に固定されるので、樹脂等のバインダーを使用する必要はないが、樹脂等のバインダーを使用して該粒子を強固に固定することもできる。
【0017】
一旦乾燥した繊維に樹脂等のバインダーによりその表面に酸化チタン粒子を固定する方法は、酸化チタン粒子がバインダーから脱落しやすく、かつ経時的なバインダーの劣化によって一層酸化チタン粒子が脱落しやすくなり、その耐久性に問題が生じる。また、バインダーは繊維の風合いの劣化の原因となる。本発明においては、酸化チタン粒子を繊維に含有させるにあたり、バインダーを使用する必要がないので、これらの問題がなく、機能、風合いの両方の機能に優れる。
【0018】
次に、酸化チタン分散液と接触したゲル状膨潤繊維は乾燥し、必要に応じて弛緩熱処理される。この際、必要ならば、帯電防止剤、紡績油剤等の仕上げ剤を付与することができる。乾燥は40℃〜160℃、好ましくは80℃〜130℃である。また、弛緩熱処理は、乾熱、湿熱の何れでもよいが、湿熱、特に加熱水蒸気が好ましく、温度は100℃〜180℃、好ましくは100〜140℃である。この熱処理によって、繊維に付着した酸化チタンは、繊維に強固に固着される。酸化チタンの分散液中における酸化チタンの濃度は、浸漬、搾液の操作条件により多少異なるが、通常は0.01〜50%、好ましくは0.05〜20%含有する水分散液が用いられる。酸化チタンの付着量が繊維に対して0.1〜10%になるようにマングル、セントル等により搾液または水切りにより調整される。
【0019】
本発明によれば、酸化チタン分散液をゲル状膨潤繊維に接触させることにより酸化チタン粒子がゲル状膨潤繊維に強固に付着して繊維に保持される。このために、酸化チタンの繊維からの脱落が非常に少なく、酸化チタンの有する光触媒作用が長期間にわたって維持されるのである。
本発明の酸化チタンを含有する機能繊維は、有機物の分解作用に優れており、そのためカルボニル基含有化合物、塩基性化合物、酸性化合物等全ての悪臭を消臭する機能に極めて優れている。また、本発明の酸化チタン含有繊維は、該繊維単独または該繊維を含む混紡、交撚、交織、交編等によって得られる紡績糸、交撚糸、織物、編物、さらに上記繊維を含む不織布などの形態で使用することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明する。なお、例中の%は特に限定しない場合は重量%を意味する。
消臭性能およびタバコ臭の官能評価は外因をなくすため、予め機能性繊維をフェードメーター(カーボンアーク法)により63℃環境下で40時間前処理した後、それぞれの試験を行った。また、洗濯試験、悪臭物質の消臭性能の測定、風合いの測定、官能試験、染色処理は下記のようにしておこなった。
(1)洗濯試験:JIS−L−0217−103法に準拠して、洗剤を中性洗剤(プロクターアンドギャンブルファーイーストインク社製、商品名モノゲンユニ)を用いて試験を行った。
(2)悪臭物質の消臭性能の測定:容量1000mlのテドラーバック(ジーエムサイエンス社製)中に悪臭成分600mlとともに繊維1gを入れ、120分間、紫外線強度0.5mW/cm2 のブラックライト下に放置後の残存ガス濃度をガステック社製のガス検知管で測定した。悪臭成分の初期濃度は、カルボニル基を含有する化合物としてアセトアルデヒド10ppm、酸性化合物として酢酸100ppm、塩基性化合物としてアンモニア80ppmとした。
【0021】
(3)風合いの評価:次の3段階評価で行った。
○;硬くない、△;やや硬い、×;硬い
(4)官能評価:タバコの煙を用い、容量3000mlのポリエステル製におい袋(近江オドエアーサービス社製)中に繊維3gとともに、1m3 アクリル製ボックス内でタバコ(マイルドセブン)を2本5cm燃焼させた後のボックス内の煙を300mlおよび無臭空気2700mlを注入し、2時間、蛍光灯(1300LUX)に放置後、におい袋内の臭いおよび繊維自体の臭いについて16人のモニターに次の判定を行ってもらい、総合得点で評価した。
【0022】
(5)ヤニ脱色評価:容量50000mlのアクリル製デシケーター中で、タバコ(マイルドセブン)を5本(5cm)を燃焼後、デシケーター中にサンプルを入れ2時間暴露後、ブラックライト(紫外線強度:0.5mW/cm2 )下で48時間照射し、ブラックライト照射前後の黄色度変化(ΔYI)をマクベス測色機で下式により算出した。
ΔYI=ブラックライト照射前YI−ブラックライト照射後YI
(6)染色処理:染料としてアストラゾンブルーF2RL(Astrazon Blue F2RL:バイエルジャパン社製、染料商品名)を用い、染料濃度を0.5%owfとし、pH調整剤として酢酸を用いてpH4に調整し、浴比1:50、100℃で30分間染色し、十分に水洗した。
(7)絞り率の算出:下式により絞り率の算出をおこなった。
絞り率(%)=(W1−W2)/W2×100
ただし、上式において、W1は脱水後の繊維秤量値(g)、W2は前記繊 維を105℃で2時間乾燥した繊維の秤量値(g)を示す。
【0023】
実施例1および比較例1
アクリロニトリル94.5%、アクリル酸メチル5.0%およびメタリルスルホン酸ナトリウム0.5%を共重合して得られた重合体を70%の硝酸に溶解して重合体濃度15.5%の紡糸原液を調整した。該紡糸原液を0.06mmの細孔を有する紡糸口金を通して0℃に保った37%の硝酸系凝固浴に紡出し、水洗後沸水中で9倍に延伸し未乾燥繊維を得た。
この未乾燥繊維を、平均粒子径0.07μmの酸化チタン(石原産業社製、活性化酸化チタンゾル、商品名STS−01)3.75%の20℃水溶液に1分間浸漬処理をし、その後脱水した。この時絞り率は80%であった。脱水後80℃で1時間乾燥し、オートクレーブで110℃の飽和水蒸気で5分間の湿熱処理を行って機能性繊維を製造した。得られた繊維の酸化チタンの含有量は3.0%であった。
比較例1として、アクリロニトリル94.5%、アクリル酸メチル5.0%およびメタリルスルホン酸ナトリウム0.5%の共重合体からなる通常のアクリル系合成繊維を製造した。
上記、2種の繊維について前処理を行った後、消臭性能評価を行った。その結果を表1に示した。
【0024】
【表1】
表1によれば、実施例1は、比較例1に比べ、カルボニル基含有化合物、酸性化合物および塩基性化合物を消臭し、さらにタバコ煙の消臭性能に優れ、かつその性能は洗濯10回後も良好であった。
【0025】
実施例2〜5および比較例2〜3
アクリロニトリル74.7%、塩化ビニリデン25.0%およびメタリルスルホン酸ナトリウム0.3%を共重合して得られた重合体をジメチルホルムアミドに溶解して重合体濃度18%の紡糸原液を調整した。該紡糸原液を0.15mmの細孔を有する紡糸口金を通して30℃に保った75%のジメチルホルムアミド系凝固浴に紡出し、80℃に保った75%のジメチルホルムアミド系延伸浴中で5.0倍に延伸し、水洗後沸騰水中で1.2倍に延伸して未乾燥繊維を製造した。
この未乾燥繊維に、平均粒子径0.07μmの酸化チタン(石原産業社製、活性化酸化チタンゾル、商品名STS−01)の20℃水溶液に浸漬処理をし、表2に示すように繊維に0.05〜15.0%の酸化チタンを含有させ、脱水後80℃で1時間乾燥し、オートクレーブで110℃の飽和水蒸気で5分間の湿熱処理を行って機能性繊維を製造した。
これらの各種繊維の酸化チタン含有量および悪臭に対する消臭性能の評価結果を表2に示す。
【0026】
【表2】
表2によれば、酸化チタン含有量が0.1〜10重量%の繊維(実施例2〜5)は、カルボニル基含有化合物、酸性化合物および塩基性化合物を消臭し、かつタバコ消臭性能にも優れ、その風合いは良好であった。
【0027】
実施例6および比較例4
従来法によって得られたレーヨンビスコースの紡糸原液(セルロース9.0%、全アルカリ6.0%、全硫黄2.5%)を脱泡後、0.09mmの細孔を有する紡糸口金を通して50℃に保った硫酸11%、硫酸ナトリウム30%、硫酸亜鉛1.5%の凝固浴に紡出し、通常の2浴緊張紡糸法により延伸し未乾燥繊維を得た。
この未乾燥繊維を、平均粒子径0.07μmの酸化チタン(石原産業社製、活性化酸化チタンゾル、商品名STS−01)1.87%の20℃水溶液に1分間浸漬処理をし、その後脱水した。この時絞り率は160%であった。脱水後80℃で1時間乾燥し機能性繊維を製造した。得られた繊維の酸化チタン含量は3.0%であった。
比較例として、通常のセルロース再生繊維を製造した。
上記2種の繊維について前処理を行った後、消臭性能評価を行った。その結果を表3に示した。
【0028】
【表3】
表3によれば、実施例6は、比較例4に比べ、カルボニル基含有化合物、酸性合物および塩基性化合物を消臭し、更にタバコ煙の消臭性能に優れた繊維であった。
【0029】
【発明の効果】
本発明の機能性繊維は、タバコ臭のようなカルボニル基を含有する化合物、酸性化合物、塩基性化合物からなる悪臭に対して優れた消臭性能を有し、しかもその消臭性能が洗濯耐久性および染色耐久性を有し、さらにタバコ臭の消臭性能およびヤニの脱色効果に優れる。
また本発明の製造法によれば、繊維に酸化チタンを強固に付着させることができるため、酸化チタンの繊維からの脱落が非常に少なく、酸化チタンの有する光触媒作用が長期にわたって維持できる機能性繊維が得られる。
Claims (3)
- 湿式紡糸後または乾湿式紡糸後の乾燥前のゲル状膨潤繊維に光触媒作用を有する酸化チタンの水分散液を接触させ、該酸化チタンを上記繊維に固着することを特徴とする機能性繊維の製造法。
- 繊維に0.1〜10重量%の酸化チタンを固着させることを特徴とする請求項1に記載の機能性繊維の製造法。
- 前記繊維がアクリル系合成繊維であることを特徴とする請求項1または2に記載の機能性繊維の製造法。
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