JP6101429B2 - 多機能性再生セルロース繊維、それを含む繊維構造物及びそれらの製造方法 - Google Patents

多機能性再生セルロース繊維、それを含む繊維構造物及びそれらの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、多機能性再生セルロース繊維、それを含む繊維構造物及びそれらの製造方法に関し、詳細には、消臭性、消臭性の耐洗濯性、放湿放熱性及び吸放湿性を有する多機能性再生セルロース繊維、それを含む繊維構造物及びそれらの製造方法に関する。
再生セルロース繊維は、ビスコース法、銅アンモニア法、溶剤紡糸法など様々な方法で製造されることが知られている。レーヨン繊維などの再生セルロース繊維は基質がセルロースであるため、それ自体肌に優しい性質を有する。従来から、このようなレーヨン繊維の性質を利用しつつ、更なる機能性を付与することが提案されている。
特許文献1には、レーヨン繊維に酢酸ビニル−マレイン酸共重合物を練り込むことで、消臭性や吸水性などの機能を付与することが提案されている。特許文献2には、レーヨン用ビスコースにポリアクリル酸塩を10〜200%(対セルロース重量)混合した混合紡糸原液成分と、ポリアクリル酸塩を含まない原液成分とを複合紡糸した後、延伸、精練したセルロース−ポリアクリル酸系高保水性繊維が提案されている。特許文献3には、カルボン酸基および/またはスルホン酸基を有する繊維構造物のカルボン酸基および/またはスルホン酸基の水素イオンをZn2+、Cu2+、Ni+、Mn2+、Ag+およびFe2+からなる群より選ばれた1種以上の金属イオンで置換するに際し、アルカリ剤で処理した後またはアルカリ条件下で染色した後、置換する脱臭繊維構造物の製造方法が開示されている。特許文献4には、グラフト重合によりセルロース繊維に導入されたカルボキシル基をZn2+、Cu2+、Ni+、Mn2+、Ag+およびFe2+からなる群より選ばれた1種以上の金属イオンで置換し、セルロース繊維に消臭性を付与することが提案されている。
しかし、特許文献1で提案されているレーヨン繊維は、洗濯した後の消臭性が低いという問題があった。特許文献2では、ポリアクリル酸塩を練り込む際にポリアクリル酸のナトリウム塩を水に溶解してビスコースに混合するとともに、繊維化後の最終処理としてアルカリ処理を行うことにより、カルボキシル基のナトリウム塩化を行い、繊維の吸水性を高めているため、高い消臭性が得られないという問題があった。特許文献3では合成繊維の表面にカルボキシル基を有する機能剤を重合又は架橋させて付与した後にナトリウム置換して金属イオンを繊維表面に担持させているため、洗濯後の消臭性が低いという問題があった。引用文献4では、直鎖の高分子であるセルロースにカルボキシル基をグラフト重合しているため、非晶質部位の立体阻害が起こり、繊維強度の低下を招くことや、吸湿性及び吸水性に影響を与えることや、染料の入り方が異なるため、染色性が変ることなどの問題があった。
特公平8−13905号公報 特許第3517045号公報 特許第3279120号公報 特許第3304067号公報
本発明は、上記従来の問題を解決するため、グラフト重合なしでカルボキシル基をセルロースに導入し、消臭性、消臭性の耐洗濯性、放湿放熱性及び吸放湿性を付与した多機能性再生セルロース繊維、それを含む繊維構造物及びそれらの製造方法を提供する。
本発明の多機能性再生セルロース繊維は、セルロース内にポリアクリル酸が混合されている再生セルロース繊維であり、カルボキシル基の総量が0.30〜1.63mmol/gであり、カルボキシル基の総量に対する塩型カルボキシル基の量の割合が20%以下であり、上記再生セルロース繊維は、さらに亜鉛、銅、マグネシウム及びカルシウムからなる群から選ばれるいずれかの金属を含み、上記金属は、金属イオンとして存在しており、上記金属は上記カルボキシル基とイオン結合で配位しており、上記金属の含有量は800mg/kg以上であり、消臭性、消臭性の耐洗濯性、放湿放熱性及び吸放湿性を有することを特徴とする。
本発明の繊維構造物は、上記多機能性再生セルロース繊維を含む。
本発明の多機能性再生セルロース繊維の製造方法は、セルロースを含むビスコース原液に、粘度が1,000〜10,000mPa・s、pHが1.4〜2.7であるポリアクリル酸未中和物を含む水分散液を混合して紡糸用ビスコース液を調製し、上記紡糸用ビスコース液をノズルより押し出し、凝固再生させてビスコースレーヨン糸条とし、上記ビスコースレーヨン糸条を、亜鉛、銅、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム及び銀からなる群から選ばれるいずれかの金属イオンで処理し、かつ必要に応じて上記ビスコースレーヨン糸条をpHが6.5以下になるようにpH調整処理することを特徴とする。
本発明の繊維構造物の製造方法は、セルロースを含むビスコース原液に、粘度が1,000〜10,000mPa・s、pHが1.4〜2.7であるポリアクリル酸未中和物を含む水分散液を混合して紡糸用ビスコース液を調製し、上記紡糸用ビスコース液をノズルより押し出し、凝固再生させてビスコースレーヨン糸条とし、上記ビスコースレーヨン糸条を含む繊維構造物を作製し、上記ビスコースレーヨン糸条を含む繊維構造物を、亜鉛、銅、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム及び銀からなる群から選ばれるいずれかの金属イオンで処理し、かつ必要に応じて上記繊維構造物をpHが6.5以下になるようにpH調整処理することを特徴とする。
本発明は、再生セルロース繊維において、セルロース内にポリアクリル酸を含ませてカルボキシル基の総量を0.30〜1.63mmol/gにするとともに、カルボキシル基の総量に対する塩型カルボキシル基の量の割合を35%以下にすることにより、消臭性、消臭性の耐洗濯性、放湿放熱性及び吸放湿性を有する多機能性再生セルロース繊維、それを含む繊維構造物を提供できる。
本発明は、セルロースを含むビスコース原液に、ポリアクリル酸未中和物を含む水分散液を混合して調製した紡糸用ビスコース液を紡糸することにより、ハンドリング性よく、消臭性、消臭性の耐洗濯性、放湿放熱性及び吸放湿性を有する多機能性再生セルロース繊維、それを含む繊維構造物を得ることができる。
[図1]図1は、参考例1の多機能性再生セルロース繊維(繊維A)の放湿放熱性能の
結果を示すグラフである。
[図2]図2は、参考例2の多機能性再生セルロース繊維(繊維B)の放湿放熱性能の
結果を示すグラフである。
[図3]図3は、参考例3の多機能性再生セルロース繊維(繊維C)の放湿放熱性能の
結果を示すグラフである。
[図4]図4は、実施例4の多機能性再生セルロース繊維(繊維F)の放湿放熱性能の
結果を示すグラフである。
本発明者は、セルロース内にポリアクリル酸を含ませることでセルロース内にカルボキシル基を導入するとともに、カルボキシル基の総量に対する塩型カルボキシル基の量の割合(以下において、中和度とも記す。)を35%以下にすることにより、再生セルロース繊維に耐洗濯性が高い消臭性、放湿放熱性及び吸放湿性などを付与することを見出して本発明に至った。また、本発明は、従来のカルボキシル基を架橋やグラフト重合により付与する方法に比べて、セルロースを含むビスコース原液にカルボキシル基を含むポリアクリル酸を混合して調製した紡糸用ビスコース液を紡糸することでセルロース内にカルボキシル基を導入するので、重合の場合のようにセルロースの分子構造に影響を与えないため、綿質(繊維強度)が大きく低下することはなく、染色性や発色性への影響も少ないと考えられる。
本発明の多機能性再生セルロース繊維は、セルロース内にポリアクリル酸が含有されている再生セルロース繊維である。セルロースを含むビスコース原液にポリアクリル酸の未中和物を含む水分散液を混合して調製した紡糸用ビスコース液を紡糸することで、セルロース内にポリアクリル酸を含ませている。
上記ポリアクリル酸の未中和物とは、ポリアクリル酸のカルボキシル基がH型になっているものである。なお、ポリアクリル酸塩(ポリアクリル酸の塩型)とは、Na等の金属イオン又はイオン性の化合物がHの部位を置換した型をいう。以下において、特に指摘がない場合、ポリアクリル酸はポリアクリル酸の未中和物を意味する。上記ポリアクリル酸としては、主体としてカルボキシル基が主鎖に付いた構造であり、高分子の分子量に対するカルボキシル基の寄与が最大の化合物を用いることができ、例えば理論カルボキシル基の量が72g/mol以上のポリアクリル酸を用いることが好ましい。上記ポリアクリル酸としては、好ましくは、室温(20±5℃)において、粘度が1,000〜10,000mPa・sであり、pHが1.4〜2.7である、ポリアクリル酸の未中和物の水分散液を用いることができる。また、上記水分散液の粘度は、1,000〜8,000mPa・sであることがより好ましい。粘度が低すぎると、紡糸工程でのポリアクリル酸の未中和物のロスが多くなりやすい。一方、粘度が高すぎるとハンドリングが困難になる傾向がある。また、粘度が高いと、原料ビスコースと混合しにくく、ビスコース中でのセルロースの状態も変わり繊維化工程でトラブルになる傾向がある。なお、ポリアクリル酸の分子量が低い場合やポリアクリル酸の濃度が低いと、粘度が低くなり、ポリアクリル酸の分子量が高い場合やポリアクリル酸の濃度が高いと粘度が高くなる。よって、ポリアクリル酸の重合度(分子量)や濃度を調整することで、粘度が上記範囲を満たすようにできる。上記ポリアクリル酸は、比重が1.0〜1.1g/cm3であることが好ましい。
上記多機能性再生セルロース繊維において、上記ポリアクリル酸の含有量は、セルロースに対して2〜15質量%であることが好ましく、より好ましくはセルロースに対して4〜10質量%である。上記多機能性再生セルロース繊維において、上記ポリアクリル酸の含有量がセルロースに対して2質量%未満では消臭性、消臭性の耐洗濯性、放湿放熱性及び吸放湿性などの機能性が低くなる傾向があり、15%質量を超えると、繊維強度が低下するため細繊化できない恐れがある。
上記多機能性再生セルロース繊維において、カルボキシル基の総量は、0.30〜1.63mmol/gであり、好ましくは0.36〜1.14mmol/gである。カルボキシル基の総量が0.30mmol/g未満では消臭性、消臭性の耐洗濯性、放湿放熱性及び吸放湿性などの機能性が低く、1.63mmol/gを超えると、繊維がアルカリサイドになりやすく、加熱するような加工で、セルロースの黄変が生じる。
上記多機能性再生セルロース繊維において、中和度は35%以下であり、好ましくは0〜30%であり、さらにより好ましくは0〜20%である。中和度が低いということは、H型(酸型)カルボキシル基の状態にあり、カルボキシル基の末端にアンモニアなどのアルカリ性臭気成分が吸着されやすいこととなる。一方、中和度が高くなると、ナトリウム成分がアンモニアなどのアルカリ性臭気成分の吸着を妨害することとなるためアルカリ性臭気成分に対する消臭性能が低下することとなる。
本発明の多機能性再生セルロース繊維において、再生セルロース繊維にポリアクリル酸を含有させることでカルボン酸基を導入するとともに、中和度を35%以下にすることにより、アンモニアなどのアルカリ性臭気成分に対する消臭性及び消臭性の耐洗濯性が向上しているが、さらに金属をイオン結合させることが好ましい。消臭性及び消臭性の耐洗濯性がより向上する。
上記多機能性再生セルロース繊維において、金属の含有量は300mg/kg以上であることが好ましく、消臭性及び消臭性の耐洗濯性にさらに優れるという観点から800mg/kg以上であることがより好ましい。金属の含有量(mol/kg)の上限は、特に限定されないが、カルボキシル基の総量(mmol/g)の1/6以下であることが好ましい。例えば、カルボキシル基の総量を0.30mmol/gとした場合、亜鉛含有量は0.05mol/kg以下であることが好ましい。亜鉛の分子量が65.38なので、これを質量に換算すると、3269mg/kg以下になる。カルボキシル基と2価の金属イオンは1:2で存在するので、最低2/3の部分は亜鉛が担持されていない部分があり、その部分が、他の吸放湿性やpHコントロール性に作用することで、単に消臭性を有するだけでなく、多機能な素材としての構成を残すことになる。
上記金属としては、特に限定されないが、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)などが挙げられる。中でも、繊維を着色しないという観点から、亜鉛を用いることが好ましい。また、亜鉛は扱いやすく、コストが低いというメリットもある。上記多機能性再生セルロース繊維において、金属は金属イオン又は金属微粒子のいずれの状態で存在してもよい。洗濯した後もアンモニアに対して優れた消臭性を有するという観点から、金属微粒子の状態で存在することがより好ましい。また、上記多機能性再生セルロース繊維中の金属を金属酸化物の状態で存在させることで、より消臭性の耐洗濯性を向上させることができる。
本発明において、上記多機能性再生セルロース繊維中の金属の含有量は、繊維を800℃で灰化し、灰化物を過塩素酸で溶解し、溶解物を試料とし、JIS K 0102の排水中の分析方法で規定された金属の吸光光度法を利用した方法で測定する。なお、金属が銀の場合は、上記多機能性再生セルロース繊維中の金属の含有量は、ICP発光法に基づいて測定する。
上記多機能性再生セルロース繊維は、繊維pHが3.5〜6.5であることが好ましい。繊維pHが上記範囲内にあると、pHコントロール性、吸放湿性及び耐洗濯性の高い消臭性を発揮することができる。繊維pHは、より好ましくは4.0〜6.0である。繊維pHが4.0〜6.0であると、アンモニアに対する消臭性が高い。なおpHは、中和度と高い相関性をもった数値である。
上記多機能性再生セルロース繊維は、好ましくはアンモニア消臭率が70%以上であり、より好ましくは80%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。本発明において、アンモニア消臭率とは、社団法人繊維評価技術協議会(JTETC)の消臭加工繊維製品認定基準(平成23年4月1日改訂版)で定めている測定方法により測定するアンモニア減少率をいう。
上記多機能性再生セルロース繊維は、耐洗濯性に優れることが好ましい。例えば、中性洗剤(JAFET標準洗剤)を用い、JIS L 0217(103)に準じて洗濯を10回行った後でも、アンモニア消臭率が70%以上であることが好ましく、より好ましくは80%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。
上記多機能性再生セルロース繊維は、繊度が0.3〜8.0dtex(デシテックス)であることが好ましい。より好ましくは0.6〜6.0dtexであり、さらに好ましくは0.7〜3.6dtexである。繊度が0.3dtex未満であると、延伸時に単繊維切れが発生しやすい傾向にある。繊度が8.0dtexを越えると、繊維の再生状態が不良になりやすく、繊維の色相等が悪くなる場合がある。
上記多機能性再生セルロース繊維は、長繊維状又は短繊維状の形態で提供され、繊維構造物を形成することが好ましい。上記長繊維状としては、例えば、トウ、フィラメント、不織布等が挙げられ、上記短繊維状としては、例えば、湿式抄紙用原綿、エアレイド不織布用原綿、カード用原綿等が挙げられる。上記繊維構造物としては、例えば、トウ、フィラメント、紡績糸、中綿(詰め綿)、紙、不織布、織物、編物等が挙げられ、編物、織物及び不織布からなる群から選ばれる一種の布帛であることがより好ましい。
本発明の多機能性再生セルロース繊維は、特に限定されないが、原料ビスコースにポリアクリル酸(未中和物)を含む水分散液を混合して調製した紡糸用ビスコース液を紡糸し、得られたビスコースレーヨン糸条を、必要に応じてpH調整処理することで製造することが好ましい。
原料ビスコースとしては、セルロースを7〜10質量%、水酸化ナトリウムを5〜8質量%、二硫化炭素を2〜3.5質量%含むビスコース原液を調製して用いるとよい。このとき、必要に応じて、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、二酸化チタンなどの添加剤を使用することもできる。原料ビスコースの温度は18〜23℃に保持するのが好ましい。セルロースを含むビスコース原液に、ポリアクリル酸(未中和物)を含む水分散液を混合して紡糸用ビスコース液を調製する。ポリアクリル酸(未中和物)やポリアクリル酸(未中和物)を含む水分散液としては、上述したものを用いることができる。
紡糸浴(ミューラー浴)としては、硫酸を95〜130g/L、硫酸亜鉛を10〜17g/L、硫酸ナトリウム(芒硝)を290〜370g/L含む強酸性浴を用いることが好ましい。より好ましい硫酸濃度は、100〜120g/Lである。
上記再生セルロース繊維は、例えば通常の円形ノズルを用いて製造することができる。紡糸ノズルとしては、目的とする生産量にもよるが、直径0.05〜0.12mmであり、ホール数が1000〜20000である円形ノズルを用いることが好ましい。また、異型断面のノズルを使用してもよく、例えばY型ノズルを使用して紡糸を行えば、表面積が大きく、特に初期吸水速度の優れた繊維となる。上記紡糸ノズルを用いて、上記紡糸用ビスコース液を紡糸浴中に押し出して紡糸し、凝固再生させる。紡糸速度は30〜80m/分の範囲が好ましい。また、延伸率は39〜55%が好ましい。ここで延伸率とは、延伸前のスライバー速度を100としたとき、延伸後のスライバー速度をどこまで速くしたかを示すものである。倍率で示すと、延伸前が1、延伸後は1.39〜1.55倍となる。
上記のようにして得られたレーヨン繊維糸条を所定の長さにカットし、精練処理を行う。精練工程は、通常の方法で、熱水処理、水硫化処理、漂白、酸洗い及び油剤付与の順で行うとよい。その後、必要に応じて圧縮ローラーや真空吸引等の方法で余分な油剤、水分を繊維から除去し、乾燥処理を施してポリアクリル酸を含有するレーヨン繊維(以下において、単にポリアクリル酸含有レーヨン繊維とも記す。)を得ることができる。
必要に応じて、精練処理後のレーヨン繊維糸条(ポリアクリル酸含有レーヨン繊維)を、pH調整処理し、繊維をpH6.5以下の酸性サイドにして中和度を35%以下になるようにする。pH調整処理は、pHが5.5以下の緩衝液(以下において、中和度調整用緩衝液とも記す。)に繊維を浸漬することで行うことができる。浸漬時の浴比は、特に限定されないが、1:10〜1:30であることが好ましく、より好ましくは1:15〜1:25である。また、浸漬時間は、特に限定されないが、0.5〜50分間であることが好ましく、より好ましくは1〜20分間である。上記中和度調整用緩衝液としては、特に限定されないが、例えば、酢酸−酢酸ナトリウムの2成分系の緩衝液、フタル酸水素カリウム−水酸化ナトリウムの2成分系の緩衝液など一般的な緩衝溶液を使用することが可能であるが、緩衝溶液中にナトリウムを含んでいることが望ましい。中和度調整用緩衝液に浸漬した後、水洗を施し、乾燥処理してもよい。なお、ポリアクリル酸の添加量等によっては、pH調整処理しなくても、中和度が35%以下の多機能性再生セルロース繊維を得ることができる。
さらに、消臭性及びその耐洗濯性を高めるために、金属イオンで処理することが好ましい。要求された品質を満たすように亜鉛イオン、銅イオン、銀イオンなどの様々な金属イオンによる処理を行うことが可能である。例えば、亜鉛イオンで処理した繊維はアンモニアに対する消臭性が高い。また、金属が亜鉛である場合は、繊維の色が白くなるので好ましい。
金属イオンによる処理は金属がイオン状態で存在する金属化合物の水溶液を金属処理液として用いて行うことができる。金属が亜鉛の場合は、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛等の酸系化合物とイオン結合をしている無機亜鉛化合物を用いて処理することができる。繊維に金属イオンを付着させやすいという観点から、硫酸化合物は、硫酸と金属イオンとの結合が強いため、金属の塩化物や硝酸化合物の方が好ましい。なお、精練工程中で処理する場合は、硫酸化合物でもよい。
上記金属処理液中における金属化合物の濃度は、金属換算で0.5〜20.0g/Lであることが好ましく、より好ましくは1.0〜5.0g/Lである。金属が亜鉛の場合は、金属処理液中の亜鉛化合物の濃度は、亜鉛換算で0.5〜20.0g/Lであることが好ましく、より好ましくは1.0〜5.0g/Lである。0.5g/L未満では、繊維への金属(亜鉛)付着量が少なくなり、20.0g/Lを超えると、処理後の廃液の処理や余剰付着した金属(亜鉛)化合物の洗浄が面倒となる。処理する温度は、常温で十分である点から加工性も良好である。
また、カルボキシル基の置換反応の関係から、カルボキシル基のHがNa、Ca、Mgで置換された状態の物に、Zn2+などの金属イオンを作用させた方が、効率良く亜鉛イオンなどの金属イオンを、金属塩又は金属錯体の形態で繊維内部に導入できる。具体的には、亜鉛イオンの場合は、精練工程において、水流化処理後の酸洗いの際の硫酸酸性の条件下で硫酸亜鉛濃度を亜鉛に換算して1.0〜5.0g/Lになるようにし、循環シャワーして処理するとよい。
金属イオンで処理するとカルボキシル基と金属がイオン結合で配位しているので、さらに、還元処理を行うことで、亜鉛イオン等の金属イオンを金属の単体(金属微粒子)に還元させることが可能である。還元処理は、特に限定されないが、還元剤を含む水溶液を用いて行うことができる。還元剤としては、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、ヒドラジン、ホルマリン、アルデヒド基を含む化合物、硫酸ヒドラジン、青酸とその塩、次亜硫酸とその塩、チオ硫酸塩、過酸化水素、ロッシェル塩、ブドウ糖、アルコール基を含む化合物、次亜リン酸とその塩等を用いることができる。具体的には、チオ硫酸ナトリウム等のチオ硫酸塩を使用したシャワー(1パス)で処理することができる。
或いは、電気的処理をすることで亜鉛イオン等の金属イオンを金属微粒子として繊維に固定することも可能である。電気的処理は、特に限定されないが、金属処理液中に通電すること等で行うことができる。
上記のように、亜鉛イオン等の金属イオンを金属微粒子として繊維に固定すると、アンモニアに対する消臭性の耐洗濯性が向上する。さらに、金属が固定されている繊維を湿熱加熱することで、亜鉛などの金属をより安全性の高い酸化亜鉛に変化させることも技術的に可能となる。
本発明の繊維構造物は、上記多機能性再生セルロース繊維を10質量%以上含むことが好ましく、より好ましくは20〜50質量%含み、さらに好ましくは25〜40質量%含む。多機能性再生セルロース繊維の含有率が低いと該繊維の性能が発揮されにくくなり、多機能性再生セルロース繊維の含有率が高いとレーヨンの風合いが前面に出ることで、製品によってはそのドレープ性により繊維集合体の張りが損なわれてしまう恐れがある。上記繊維構造物に含まれる多機能性再生セルロース繊維は、消臭性に優れるという観点から、中和度が0〜30%であることが好ましく、0〜25%であることがより好ましく、さらにより好ましくは0〜20%である。
上記繊維構造物は、消臭性に優れるという観点から、繊維構造物のpHが4.0〜6.5であることが好ましく、より好ましくは4.5〜6.0である。
上記繊維構造物は、アンモニア消臭率が70%以上であることが好ましく、より好ましくは75%以上であり、さらに好ましくは80%以上である。また、上記繊維構造物は、繰り返し洗濯、例えば10回洗濯後でも、アンモニア消臭率が70%以上であることが好ましく、より好ましくは75%以上であり、さらに好ましくは80%以上である。
上記繊維構造物は、特に限定されないが、例えば、紡績糸、不織布、織物又は編物であることが好ましく、編物、織物及び不織布からなる群から選ばれる一種の布帛であることがより好ましい。
上記繊維構造物が紡績糸である場合、上記多機能性再生セルロース繊維のみで構成されていてもよく、他の繊維と混紡、複合してもよい。他の繊維としては、上記多機能性再生セルロース繊維以外の他の再生セルロース繊維(レーヨン、キュプラ、溶剤紡糸セルロース等)、コットン、麻、ウール、アクリル繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維、ポリウレタン繊維等が挙げられる。このような紡績糸は、例えば織物や編物に加工されて衣料等に用いることができる。
上記繊維構造物が織物や編物である場合、上記多機能性再生セルロース繊維のみで構成されていてもよく、他の繊維を含んでもよい。他の繊維としては、上記多機能性再生セルロース繊維以外の他の再生セルロース繊維(レーヨン、キュプラ、溶剤紡糸セルロース等)、コットン、麻、ウール、アクリル繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維、ポリウレタン繊維等が挙げられる。織物や編物の組織は特に限定されない。例えば、編物では、丸編み、横編み、経編み(トリコット)が、織物では、平織、綾織、繻子織が、本発明の風合い効果がよく発揮できることから好ましい繊維構造物の形態である。
上記繊維構造物が不織布である場合、上記多機能性再生セルロース繊維のみで構成されていてもよく、他の繊維と混綿してもよい。他の繊維としては、上記多機能性再生セルロース繊維以外の他の再生セルロース繊維(レーヨン、キュプラ、溶剤紡糸セルロース等)、コットン、麻、ウール、アクリル繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維、ポリウレタン繊維等が挙げられる。不織布の形態としては、例えば、湿式不織布(湿式抄紙)、エアレイド不織布、水流交絡不織布、ニードルパンチ不織布などが挙げられる。このような不織布は、例えば、ウェットティッシュ、対人・対物用ワイパー等のウェットシート、水解シート等に用いることができる。また、化粧パフ、吸収体等の衛生シートに用いることができる。
上記繊維構造物として、例えば、パイル等に加工した場合、上記多機能性再生セルロース繊維のみで構成されていてもよく、他の繊維と混綿してもよい。他の繊維としては、上記多機能性再生セルロース繊維以外の他の再生セルロース繊維(レーヨン、キュプラ、溶剤紡糸セルロース等)、コットン、麻、ウール、アクリル繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維、ポリウレタン繊維等が挙げられる。
本発明の繊維構造物は、上記多機能性再生セルロース繊維を用いて製造することができる。或いは、本発明の繊維構造物は、セルロースを含むビスコース原液にポリアクリル酸(未中和物)を含む水分散液を混合して調製した紡糸用ビスコース液を紡糸し、得られたビスコースレーヨン糸条を用いて繊維構造物を作製し、必要に応じて上記繊維構造物をpHが6.5以下になるようにpH調整処理することで製造してもよい。繊維構造物をpH調整処理すること以外は、上述した多機能性再生セルロース繊維の製造の場合と同様にして製造することができる。また、消臭性及びその耐洗濯性をさらに高めるために、繊維構造物を、亜鉛イオン、銅イオン、銀イオンなどの金属イオンで処理することが好ましい。金属イオンによる処理は、上述した多機能性再生セルロース繊維の製造の場合と同様にして行うことができる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
ポリアクリル酸として、荒川化学工業株式会社製の「タマノリG−37」を用いた。タマノリG−37は、ポリアクリル酸の未中和物の水分散液であり、20℃において、pHは1.7〜2.5、比重は1.027、粘度は3,000〜6,000mPa・sである。また、タマノリG−37において、主成分であるポリアクリル酸(未中和物)の濃度は8.5%であった。
参考例1)
[紡糸用ビスコース液の調製]
ポリアクリル酸(荒川化学工業株式会社製の「タマノリG−37」)を、主成分がセルロースに対して6質量%となるように、原料ビスコースへ添加し、混合機にて攪拌混合を行い、紡糸用ビスコース液を調製した。温度は20℃に保った。原料ビスコースとしては、セルロース8.5質量%、水酸化ナトリウム5.7質量%、二硫化炭素2.8質量%を含むビスコース原液を用いた。
[紡糸条件]
得られた紡糸用ビスコース液を、2浴緊張紡糸法により、紡糸速度60m/分、延伸率50%で紡糸して、繊度1.4dtexのビスコースレーヨンの糸条を得た。第1浴(紡糸浴)としては、硫酸100g/L、硫酸亜鉛15g/L、硫酸ナトリウム350g/Lを含むミューラー浴(50℃)を用いた。また、ビスコースを吐出する紡糸口金には、円形ノズル(孔径0.06mm、ホール数4000)を用いた。紡糸中、単糸切れ等の不都合は生じず、混合ビスコースの紡糸性は良好であった。
[精練条件]
上記で得られたビスコースレーヨンの糸条を、繊維長38mmにカットし、精練処理を行った。精練工程では、熱水処理後に水洗を行い、水硫化ソーダをシャワーして脱硫を実施した。得られた処理綿を再度水洗し、油剤をシャワーにて付与して、圧縮ローラーで余分な水分と油剤を繊維から落とし、乾燥処理(60℃、7時間)を施し、繊維Aを得た。
参考例2)
酢酸−酢酸ナトリウムの2成分系のpH5.4の緩衝液(約20℃)に、参考例1で得られた繊維Aを、浴比1:20で10分間浸漬し、水洗し、乾燥処理(60℃、7時間)することで、繊維Bを得た。
参考例3)
酢酸−酢酸ナトリウムの2成分系のpH3.8の緩衝液(約20℃)に、参考例1で得られた繊維Aを、浴比1:20で10分間浸漬し、水洗し、乾燥処理(60℃、7時間)することで、繊維Cを得た。
(比較例1)
原料ビスコースをそのまま紡糸用ビスコース液として用いた以外は参考例1と同様にして繊維Dを作製した。
(比較例2)
pH11.0の炭酸ナトリウム緩衝液(炭酸ナトリウムの0.5質量%水溶液、約20℃)に、参考例1で得られた繊維Aを、浴比1:20で10分間浸漬し、水洗し、乾燥処理(60℃、7時間)することで、繊維Eを得た。
(実施例4)
精練工程において脱硫を実施して得られた処理綿を水洗し、硫酸亜鉛の濃度が亜鉛換算で0.5g/L、硫酸の濃度が1.0g/Lの金属処理液を用い、シャワー法で金属イオンによる処理を行い、その後油剤をシャワーにて付与して、圧縮ローラーで余分な水分と油剤を繊維から落とし、乾燥処理(60℃、7時間)を施し、繊維Fを得た。
参考例4
金属イオンによる処理に硫酸亜鉛の濃度が亜鉛換算で0.1g/L、硫酸の濃度が1.0g/Lの金属処理液を用いた以外は、実施例4と同様にして繊維Gを得た。
(実施例6)
金属イオンによる処理に硫酸亜鉛の濃度が亜鉛換算で1.0g/L、硫酸の濃度が1.0g/Lの金属処理液を用いた以外は、実施例4と同様にして繊維Hを得た。
参考例5
金属イオンによる処理を行った後、さらにチオ硫酸ナトリウムの水溶液(濃度:10.0g/L)によるシャワーで還元処理をした以外は、実施例6と同様にして繊維Iを作製した。
繊維A〜繊維Iのカルボキシル基の総量、中和度、pHを下記のように測定し、その結果を下記表1〜表2に示した。また、繊維F〜Iの亜鉛含有量を下記のように測定し、その結果を下記表2に示した。また、繊維A〜繊維Iの消臭性能及びその耐洗濯性を下記のように測定・評価し、その結果を下記表1〜表2に示した。
(カルボキシル基の測定)
(1)1mol/Lの塩酸水溶液(pH0.1)50mLに試料1.2gを浸漬、撹拌して5分間放置する。その後、再び撹拌して水溶液のpHが2.5になるように調整した。次に、試料を水洗し、定温送風乾燥機で105℃、2時間乾燥させて、絶乾にした。
(2)ビーカーにイオン交換水100mL、塩化ナトリウム0.4g、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液20mLを入れた。
(3)(1)で作製した試料1gを精秤[W1(g)]し、撹拌子に巻きつかない大きさまで細かく切断して、(2)で準備したビーカーに入れ、スターラーで15分間撹拌した。撹拌した試料は吸引ろ過した。ろ過液を60mL採って、指示薬にフェノールフタレインを使用して0.1mol/Lの塩酸水溶液で滴定し、滴定量をX1(mL)とした。
(4)下記式に基づいてカルボキシル基の総量Y(mmol/g)を算出した。
カルボキシル基の総量Y(mmol/g)=[{(0.1×20)−(0.1×X1)}×(120/60)]/W1
(中和度の測定)
(1)試料を水洗し、定温送風乾燥機で105℃、2時間乾燥させて、絶乾にした。
(2)ビーカーにイオン交換水100mL、塩化ナトリウム0.4g、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液20mLを入れた。
(3)試料1gを精秤[W2(g)]し、撹拌子に巻きつかない大きさまで細かく切断して、(2)で準備したビーカーに入れ、スターラーで15分間撹拌した。撹拌した試料は吸引ろ過した。ろ過液を60mL採って、指示薬にフェノールフタレインを使用して0.1mol/Lの塩酸水溶液で滴定し、滴定量をX2(mL)とした。
(4)下記式に基づいてH型カルボキシル基の量Z(mmol/g)及び中和度を算出した。
H型カルボキシル基の量Z(mmol/g)=[{(0.1×20)−(0.1×X2)}×(120/60)]/W2
中和度(%)=[(カルボキシル基の総量Y−H型カルボキシル基の量Z)/カルボキシル基の総量Y]×100
(pHの測定)
まず、0.1NのNaOHと0.1NのHClを使用して純水のPHを7.0±0.5になるように調整し、5分間沸騰し、pH標準液を調製した。次に、試料5.0gを精秤してビーカーに入れ、そこに常温まで冷却したpH標準液を50ml入れ、フタをして30分間放置した。その後、pH標準液のpHを測定機で測定し、試料のpHとした。試料としては、繊維又は繊維構造物を用いた。
(亜鉛含有量の測定)
繊維中の亜鉛含有量は、繊維を800℃で灰化し、灰化物を過塩素酸で溶解し、溶解物を試料とし、JIS K 0102の排水中の分析方法で規定された亜鉛の吸光光度法を利用した方法で測定した。
(消臭性能)
消臭性能の評価は、社団法人繊維評価技術協議会(JTETC)の消臭加工繊維製品認定基準(平成23年4月1日改訂版)で定める方法に準用して行った。ガス種としては、アンモニアを用いた。アンモニアに対する消臭性認定基準は、減少率70%以上である。
具体的には、社団法人繊維評価技術評議会で規定している機器分析(検知管法)に準じ、次のように評価した。所定の量の試料を5Lのテドラーバックに入れて密封した。次に、シリンジを用いて規定の初期濃度になるようにアンモニアガス3Lをテドラーバックに注入した。アンモニアガスを注入してから2時間後に、テドラーバックのアンモニアの濃度を検知管により測定した。同様に空試験を行い、下記式によりアンモニアの減少率を求めた。アンモニアの初期濃度は、100ppmであった。
減少率(%)=[(2時間後の空試験における測定値−2時間後の試料を用いた場合の測定値)/2時間後の空試験における測定値]×100
(耐洗濯性]
(1)洗濯
試験試料:原綿
洗濯方法:JIS L 0217(103)に準じて行った。
使用洗剤:中性洗剤(JAFET標準洗剤)
洗濯回数:10回
(2)消臭性能の評価
上述したとおりに行った。
Figure 0006101429
Figure 0006101429
表1〜2の結果から、実施例の繊維は、アンモニアに対する消臭性能に優れ、特に洗濯後にもアンモニアに対して高い消臭性を有することが分かった。また、亜鉛(イオン)を担持させることにより、洗濯後においても、アンモニアに対してさらに高い消臭性能を示すことが分かった。さらに、還元処理により亜鉛を固定化することで、消臭性能及びその耐洗濯性がより向上することが確認できた。一方、比較例1の繊維(レギュラーレーヨン)とポリアクリル酸を含むが中和度が35%を超える比較例2の繊維(繊維E)は、洗濯後にアンモニアに対する消臭性が著しく低下していた。
繊維A〜C及び繊維Fの放湿放熱性能を下記のように測定し、その結果を図1〜図4に示した。
(放湿放熱性能)
(1)試料繊維100%を用いてスパンレース不織布(目付100g/m2)を作製し、20cm角にカットした。カットした不織布を2つ折りにして間に温度センサー(温度記録計「おんどとりTR-71Ui」、テイアンドデイ製)を配置し、測定サンプルとした。比較用測定サンプルとして、繊維D(レギュラーレーヨン)100%のスパンレース不織布(目付100g/m2)を用い、同様に温度計を配置した。
(2)計測状態にセットした測定サンプルと比較用測定サンプルを、温度20℃、相対湿度90%RHにセットした恒温恒湿機に入れて20分間放置し、サンプルの温度変化を記録した。
(3)次に、予め20℃の恒温室に入れておいたガラスデシケータ(シリカゲル入り)容器に測定サンプルと比較用測定サンプルを移動して15分放置し、サンプルの温度変化を記録した。
(4)上記(2)及び(3)の工程において、サンプルの温度測定とともに、温湿度センサー(照度UVレコーダ「TR-74Ui」、センサー部は「THA3151」を使用、テイアンドデイ製)により、サンプルの環境の温湿度も連続で測定し、記録した。
図1〜図4において、初期5分間の温度上昇は、吸湿により凝集熱が発生することによる温度上昇であり、20分後(図1〜図2)又は10分後(図3〜図4)に見られる温度低下は、放湿時の気化熱による放熱作用であると推測される。図1〜図4の結果から、十分吸湿した後、乾燥雰囲気に移行した場合、繊維A、B、C及びFの方が繊維Dに比べてより放熱していることが分かった。これにより、実施例の繊維がより放湿放熱性能に優れることが確認された。なお、図1〜図4において、環境の温度と相対湿度は変動しているが、これは扉の開閉による環境のバラツキと気化熱時の温度低下が大きな原因であると考える。
繊維A〜F及び繊維Hの吸放湿性能を下記のように測定し、その結果を下記表3に示した。
(吸放湿性能)
試料約2gを85℃で1時間乾燥し、乾燥状態の試料質量(W0)を測定した。次に、40℃、90%RH下で吸湿させ、任意の時間の試料質量を測定した(W)。24時間後、20℃、65%RH下で放湿させ、任意の時間の試料質量を測定した(W)。下記式により任意時間における吸湿率を算出した。また、下記式により、ΔMRを算出した。
吸湿率(%)=(W−W0)/W0×100
ΔMR=(24時間目の吸湿率)−(48時間目の吸湿率)
Figure 0006101429
上記表3から、実施例の繊維のΔMRで示される吸放湿率(水分の呼吸しやすさ)は、繊維D(レギュラーレーヨン)に比べて優れていることが分かった。
本発明の多機能性再生セルロース繊維は、例えば、紡績糸、編物、織物、不織布、トウ、フィラメント、中綿(詰め綿)、紙などの繊維構造物に用いることができる。また、本発明の繊維構造物は、衣料、化粧パフ、吸収体等の衛生材料、ウェットティッシュ、対人・対物ワイパー等のウェットシート、水解性シート、ドライワイパー、フィルターなどに用いることができる。

Claims (9)

  1. セルロース内にポリアクリル酸が混合されている再生セルロース繊維であり、
    カルボキシル基の総量が0.30〜1.63mmol/gであり、
    カルボキシル基の総量に対する塩型カルボキシル基の量の割合が20%以下であり、
    前記再生セルロース繊維は、さらに亜鉛、銅、マグネシウム及びカルシウムからなる群から選ばれるいずれかの金属を含み、前記金属は、金属イオンとして存在しており、前記金属は前記カルボキシル基とイオン結合で配位しており、前記金属の含有量は800mg/kg以上であり、
    消臭性、消臭性の耐洗濯性、放湿放熱性及び吸放湿性を有することを特徴とする多機能性再生セルロース繊維。
  2. 前記ポリアクリル酸がセルロースに対して2〜15質量%含有されている請求項1に記載の多機能性再生セルロース繊維。
  3. 繊維pHが3.5〜6.5である請求項1又は2に記載の多機能性再生セルロース繊維。
  4. 10回洗濯後のアンモニア消臭率が70%以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の多機能性再生セルロース繊維。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の多機能性再生セルロース繊維を含む繊維構造物。
  6. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の多機能性再生セルロース繊維の製造方法であって、
    セルロースを含むビスコース原液に、粘度が1,000〜10,000mPa・s、pHが1.4〜2.7であるポリアクリル酸の未中和物を含む水分散液を混合して紡糸用ビスコース液を調製し、
    前記紡糸用ビスコース液をノズルより押し出し、凝固再生させてビスコースレーヨン糸条とし、
    前記ビスコースレーヨン糸条を、亜鉛、銅、マグネシウム及びカルシウムからなる群から選ばれるいずれかの金属イオンで処理し、
    かつ必要に応じて前記ビスコースレーヨン糸条をpHが6.5以下になるようにpH調整処理することを特徴とする多機能性再生セルロース繊維の製造方法。
  7. 前記ビスコースレーヨン糸条をカルボキシル基のHをNaで置換した状態で、亜鉛、銅、マグネシウム及びカルシウムからなる群から選ばれるいずれかの金属イオンで処理する請求項6に記載の多機能性再生セルロース繊維の製造方法。
  8. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の多機能性再生セルロース繊維を含む繊維構造物の製造方法であって、
    セルロースを含むビスコース原液に、粘度が1,000〜10,000mPa・s、pHが1.4〜2.7であるポリアクリル酸未中和物を含む水分散液を混合して紡糸用ビスコース液を調製し、
    前記紡糸用ビスコース液をノズルより押し出し、凝固再生させてビスコースレーヨン糸条とし、
    前記ビスコースレーヨン糸条を含む繊維構造物を作製し、
    前記ビスコースレーヨン糸条を含む繊維構造物を、亜鉛、銅、マグネシウム及びカルシウムからなる群から選ばれるいずれかの金属イオンで処理し、
    かつ必要に応じて前記繊維構造物をpHが6.5以下になるようにpH調整処理することを特徴とする繊維構造物の製造方法。
  9. 前記ビスコースレーヨン糸条を含む繊維構造物において、ビスコースレーヨン糸条のカルボキシル基のHをNaで置換した状態で、前記繊維構造物を亜鉛、銅、マグネシウム及びカルシウムからなる群から選ばれるいずれかの金属イオンで処理する請求項8に記載の繊維構造物の製造方法。
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