JP7340128B2 - 再生セルロース繊維、その製造方法及びそれを含む繊維構造物 - Google Patents

再生セルロース繊維、その製造方法及びそれを含む繊維構造物 Download PDF

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Description

本発明は、繊維表面に複数の孔と筋状凹部を有する再生セルロース繊維、その製造方法及びそれを含む繊維構造物に関する。
レーヨン繊維等の再生セルロース繊維において、表面処理を行うことで機能性を付与することが行われている。特許文献1には、レーヨン繊維に複合金属酸化物微粒子を練り込み、セルラーゼによる減量処理を行うことで、レーヨン繊維表面に複合金属酸化物微粒子を露出させ、消臭性を向上させることが開示されている。特許文献2には、改質しないセルロース繊維と特定のポリウレタン繊維との混用品において、セルロース繊維をセルロース分解酵素で減量処理することで、セルロース繊維表面の繊維軸方向に沿って特定の大きさの筋状溝を形成させ、消臭性や色の鮮明性を向上することが開示されている。特許文献3には、普通ビスコースレーヨン用ビスコースに炭酸ソーダを1~10%添加した原液を用いて紡糸した再生セルロース繊維を、80℃以上の熱水浴にて収縮ないし20%以下の延伸を与えて熱処理することで得られる繊維であって、繊維全体がスポンジ状の開放型気泡、もしくはスポンジ状の隔壁を有する中空繊維が高保水性を有することが開示されている。
特開2004-162245号公報 特開2012-144829号公報 特開平8-141064号公報
特許文献1の場合、複合金属酸化物微粒子を練り込んだレーヨン繊維では、セルラーゼによる減量処理時に複合金属酸化物微粒子の脱落が起こり、工程上の不具合が生じるという問題がある。
特許文献2の場合、改質しないセルロース繊維をセルロース分解酵素で減量処理して形成される繊維軸方向に沿った特定の大きさの筋状溝のみでは、除去対象物や機能剤等に対する吸着性能や機能剤等の繊維への担持性が劣るという問題がある。
特許文献3の場合、スポンジ状の繊維は、開放型気泡による多孔質が形成されているが繊維の強度との兼ね合いで多孔の度合いを上げるのに限界がある。また、延伸率が20%を超えないようにして分子配向をさせないので炭酸ソーダに由来する小さな孔は形成されても大きな凹部は得られないという問題がある。
本発明は、従来の問題を解決するため、微粒子の脱落による工程上の不都合を生じることなく、除去対象物や機能剤等に対する吸着性能や機能剤等の繊維への担持性を向上させた再生セルロース繊維、その製造方法及びそれを含む繊維構造物を提供する。
本発明は、再生セルロース繊維であって、繊維表面には、繊維軸方向に筋状に延びる筋状凹部と、前記筋状凹部の繊維軸方向の長さより長径が小さい孔が形成されており、前記筋状凹部は、繊維軸方向の長さが15.0μm以上であるものを含む再生セルロース繊維に関する。
本発明は、また、繊維内部にセル状領域を有する再生セルロース繊維の繊維表面を減量処理することで、前記セル状領域を繊維表面に露出させて孔を形成するとともに、繊維表面に繊維軸方向に筋状に延びる筋状凹部を形成することを特徴とする再生セルロース繊維の製造方法に関する。
本発明は、また、前記の再生セルロース繊維を含む繊維構造物に関する。
本発明によれば、繊維表面に、繊維軸方向に筋状に延びる所定の筋状凹部と、前記筋状凹部の繊維軸方向の長さより長径が小さい孔を形成することで、除去対象物や機能剤等に対する吸着性能や機能剤等の繊維への担持性を向上させた再生セルロース繊維及びそれを含む繊維構造物を提供することができる。
また、本発明の製造方法によれば、繊維内部にセル状領域を有する再生セルロース繊維の繊維表面を減量処理することで、前記セル領域を繊維表面に露出させて孔を形成するとともに、繊維表面に繊維軸方向に筋状に延びる筋状凹部を形成することができる。
図1は実施例1の繊維における繊維側面の走査型電子顕微鏡写真(3000倍)である。 図2は実施例2の繊維における繊維側面の走査型電子顕微鏡写真(3000倍)である。 図3は実施例3の繊維における繊維側面の走査型電子顕微鏡写真(3000倍)である。 図4は実施例4の繊維における繊維側面の走査型電子顕微鏡写真(3000倍)である。 図5は比較例1の繊維における繊維断面の走査型電子顕微鏡写真(1000倍)である。 図6は比較例1の繊維における繊維側面の走査型電子顕微鏡写真(3000倍)である。 図7は比較例2の繊維における繊維側面の走査型電子顕微鏡写真(3000倍)である。 図8は比較例4の繊維における繊維側面の走査型電子顕微鏡写真(3000倍)である。 図9は比較例5の繊維における繊維側面の走査型電子顕微鏡写真(3000倍)である。 図10は比較例6の繊維における繊維側面の走査型電子顕微鏡写真(3000倍)である。 図11は実施例1~4および比較例2,4~6の減量処理による質量減量率を示すグラフである。 図12は実施例1、比較例1~3の繊維の色素吸着性を示す写真である。 図13は実施例1、比較例1~3の繊維の色素吸着後の反射光による吸収スペクトルである。
本発明の発明者は、レーヨン繊維等の再生セルロース繊維の表面吸着性能等を向上するために検討を重ねた。その結果、繊維内部にセル状領域を有する再生セルロース繊維の繊維表面を減量処理することで、前記セル状領域を繊維表面に露出させて複数の孔を形成するとともに、繊維表面に繊維軸方向に筋状に延びる複数の筋状凹部を形成した再生セルロース繊維では、除去対象物や機能剤等の対象物に対する吸着性能や機能剤等の繊維への担持性が高まることを見出した。本発明の再生セルロース繊維は、ビスコース法、銅アンモニア法、溶剤紡糸法などの方法でセルロースを溶解した溶液を凝固再生して得ることができる。ビスコース法によって得られるレーヨン繊維などの再生セルロース繊維は、基質がセルロースであるため、セルロースの性質(例えば吸着性など)を有する。
本発明の1以上の実施形態において、再生セルロース繊維は、繊維表面に形成された孔及び繊維軸方向に延びる筋状凹部を有する。ここで、繊維軸方向に延びる筋状凹部とは、略直線状の筋の凹みであり、走査型電子顕微鏡で観察した場合、繊維表面に見られるコーティング材料のひび割れやレーヨン繊維本来の筋とは区別されるものである。具体的には、実施例の繊維の繊維側面を観察した図1~4の走査型電子顕微鏡写真に示されているように、筋状凹部は一定の深さを有するものであり、それにより繊維表面が粗面化されていることが明らかである。一方、比較例の繊維の繊維側面を観察した図7の走査型電子顕微鏡写真に示されているのは、コーティング材料のひび割れである。また、実施例及び比較例の繊維の繊維側面を観察した図1~4、6~10の走査型電子顕微鏡写真に示されている繊維軸方向の全長に連続的に存在するくびれは、レーヨン繊維本来の筋である。
本発明の1以上の実施形態において、前記筋状凹部は、繊維軸方向の長さ、すなわち凹部の両端を結ぶ直線が15.0μm以上であるものを含み、例えば、除去対象物や機能剤等の対象物を吸着する、あるいは機能剤等を担持しやすい観点から、17.0μm以上の筋状凹部を含むことが好ましく、20.0μm以上の筋状凹部を含むことがより好ましく、25.0μm以上の筋状凹部を含むことがさらに好ましく、30.0μm以上の筋状凹部を含むことが特に好ましく、35.0μm以上の筋状凹部を含むことが最も好ましい。前記筋状凹部は、後述するとおり、繊維内部にセル状領域を有する再生セルロース繊維の繊維表面を減量処理することで、例えば、セルラーゼ等の酵素によって減量処理することで、繊維表面に形成される。筋状凹部の繊維軸方向の長さは、繊維の減量処理が進行すればするほど長くなる傾向にある。筋状凹部には、8.0μmを超え、15.0μmより小さいものが含まれてもよい。再生セルロース繊維を担体として使用する場合に、筋状凹部が小さすぎると比表面積が小さくなり、対象物を十分に吸着または担持できない場合がある。
前記筋状凹部は、特に限定されないが、例えば、除去対象物や機能剤等の対象物を吸着する、あるいは機能剤等を担持しやすい観点から、繊維側面2500μm当たりに5個以上存在することが好ましく、7個以上存在することがより好ましく、10個以上存在することがさらに好ましい。
前記筋状凹部は、特に限定されないが、例えば、除去対象物や機能剤等の対象物を吸着する、あるいは機能剤等を担持しやすい観点から、繊維軸方向の長さが15.0μm以上であるものが繊維側面2500μm当たりに5個以上存在することが好ましく、繊維軸方向の長さが17.0μm以上であるものが繊維側面2500μm当たりに7個以上存在することがより好ましく、繊維軸方向の長さが20.0μm以上であるものが繊維側面2500μm当たりに10個以上存在することがさらに好ましい。
前記孔は、繊維表面を走査型電子顕微鏡で観察した際、円形、楕円形(長円形を含む。)、若しくはこれに準ずる形状を有する。前記孔は、具体的には、長径が0.1μm以上8.0μm以下の範囲の孔を含むことが好ましい。本願明細書では、孔の外周の2点を結ぶ最大の差し渡し長さを長径といい、その長径に直交する直線のうち、外周の2点を結ぶ最大の差し渡し長さを短径とする。本発明の1以上の実施形態において、円形又は楕円形に準ずる形状とは、外接円が円形又は楕円形である形状を意味する。本発明の1以上の実施形態において、繊維表面を走査型電子顕微鏡で観察した際、孔が円形又は外接円が円形の形状を有する場合、長径と短径は同じ大きさとなる。
本発明の1以上の実施形態において、後述するように、前記孔は繊維内部に存在するセル状領域に由来しており、繊維表面を減量処理することで、例えば、セルラーゼ等の酵素によって減量処理することで、繊維表面に近い箇所に存在していたセル状領域の輪郭を構成するセルロースが溶解あるいは分解して繊維表面に露出することで形成される。
前記孔は、特に限定されないが、例えば、除去対象物や機能剤等の対象物を吸着する、あるいは機能剤等を担持しやすい観点から、長径が0.1μm以上8.0μm以下、かつ短径が0.1μm以上1.5μm以下であることが好ましく、長径が0.1μm以上5.0μm以下であり、かつ短径が0.1μm以上1.0μm以下であることがより好ましい。孔の長径および短径は、繊維の減量処理が進行すればするほど大きくなる傾向にある。ただし、0.1μmより小さいものが含まれてもよい。前記再生セルロース繊維を担体として使用する場合に、孔の短径及び長径が0.1μm以上であると、担持対象物が孔の内部に入りやすくなり、繊維の使用条件によるが、孔の長径が8.0μm以下であると、担持対象物が脱落しにくい。
前記孔は、特に限定されないが、例えば、除去対象物や機能剤等の対象物を吸着する、あるいは機能剤等を担持しやすい観点から、繊維側面25μm当たりに1個以上存在することが好ましく、2個以上存在することがより好ましく、3個以上存在することがさらに好ましい。
前記孔は、特に限定されないが、例えば、除去対象物や機能剤等の対象物を吸着する、あるいは機能剤等を担持しやすい観点から、長径が0.1μm以上8.0μm以下、短径が0.1μm以上1.5μm以下であり、かつ繊維側面25μm当たりに1個以上存在することが好ましく、長径が0.1μm以上5.0μm以下、短径が0.1μm以上1.0μm以下であり、かつ繊維側面25μm当たりに2個以上存在することがより好ましい。
本発明の1以上の実施形態において、前記再生セルロース繊維は、特に限定されないが、例えば、アンモニア、イソ吉草酸、酢酸、硫化水素等の臭気物質(除去対象物)の除去や、色素吸着等の機能を有することができる。また、本発明の1以上の実施形態において、前記再生セルロース繊維は、特に限定されないが、光触媒、抗菌剤、防カビ剤、防臭剤等の機能材を担持することができる。
本発明の1以上の実施形態において、前記再生セルロース繊維は、セル状領域を有することが好ましく、空間からなるセル状領域(以下において、単に空間セル状領域とも記す。)を有することが好ましい。空間セル状領域を有すると、軽量性が良好になるとともに、液中における対象物への吸着性が高まる。本発明の1以上の実施形態において、セル状領域とは、その断面積が0.01μm以上7.0μm以下の範囲内にあるものを指す。前記セル状領域の断面積は0.05μm以上0.5μm以下であることがより好ましく、さらに好ましくは0.1μm以上0.4μm以下である。断面積が0.01μm未満では、断面観察してもセル状領域は確認しにくい。断面積が7.0μmを超えると、大きすぎてセル状領域がつぶれやすい傾向となる。なお、前記セル状領域よりも断面積の大きい空隙は繊維が潰れない範囲で含んでいてもよい。
前記セル状領域の平均断面積は0.007μm以上1.0μm以下であることが好ましい。より好ましくは、0.01μm以上0.8μm以下である。平均断面積が0.007μm未満であると、繊維中のセル状領域が顕微鏡でも観察しにくい。一方、1.0μmを超えると、大きすぎて潰れやすい傾向にある。
本発明の1以上の実施形態において、繊維断面積に対するセル状領域の断面積の合計の割合は、2%以上20%以下であることが好ましい。より好ましくは3%以上15%以下である。2%未満ではそのセル状領域は単なる鬆(す)となりやすく、20%を超えると、繊維の強度が低下する恐れがある。
前記再生セルロース繊維は、特に限定されないが、例えば、実用に好適であることから、JIS L 1015に準じて測定される引張強さ(標準時)が1.0cN/dtex以上であり、1.3cN/dtex以上であることが好ましい。
前期再生セルロース繊維は、特に限定されないが、JIS L 1015に準じて測定される引張強さ(湿潤時)が0.6cN/dtex以上であることが好ましく、0.75cN/dtex以上であることがより好ましい。
前記再生セルロース繊維は、特に限定されないが、伸度(標準時)が15%以上40%以下であることが好ましく、20%以上35%以下であることがより好ましい。
前記再生セルロース繊維は、特に限定されないが、伸度(湿潤時)が20%以上50%以下であることが好ましく、25%以上40%以下であることがより好ましい。
前記再生セルロース繊維は、特に限定されないが、延伸等の紡糸性及び紡糸浴中の再生が良好になりやすい観点から、単繊維繊度が60dtex以下であってもよく、0.3dtex以上3.3dtex以下であってもよい。前記再生セルロース繊維は、特に限定されないが、繊維長が30mm以上130mm以下であってもよく、2mm以上30mm以下であってもよい。
本発明の1以上の実施形態において、繊維内部にセル状領域を有する再生セルロース繊維の繊維表面を減量処理することで、セル状領域を繊維表面に露出させて孔を形成するとともに、繊維表面に繊維軸方向に筋状に延びる筋状凹部を形成した再生セルロース繊維(以下において、表面多孔性再生セルロース繊維とも記す。)を得ることができる。所定の孔や筋を形成しやすい観点から、減量処理の前に、前記再生セルロース繊維のセル状領域を構成する成分を溶出して空間からなるセル状領域を形成することが好ましい。
前記繊維内部に空間からなるセル状領域を有する再生セルロース繊維は、特に限定されないが、繊維強度の低下を抑制する観点から、例えば、乳化剤等を用いて油性物質を水中に分散させて得られたエマルジョンをビスコース等のセルロースを含む紡糸原液に添加して紡糸することで油性物質を含む、すなわち油性物質で構成されたセル状領域を有する再生セルロース繊維を得た後、油性物質を溶出して除去することで、作製することができる。
前記油性物質としては、水と相分離する疎水性の物質を1成分以上含むものであればよく、特に限定されないが、例えば、脂肪酸(その塩を含む。)、油脂、天然精油(エッセンシャルオイルとも称される。)等があげられる。
前記脂肪酸は、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸のいずれであってもよい。脂肪酸の炭素数としては、特に限定されないが、例えば、炭素数10以上22以下であることが好ましい。不飽和脂肪酸の二重結合又は三重結合の数としては、例えば、1以上6以下であることが好ましい。具体的には、デセン酸、パルミトオレイン酸、オレイン酸、リノール酸、α-リノレン酸、γ-リノレン酸(GLA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)等から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
前記油脂は、脂肪酸及びそのグリセリンエステルから選ばれる少なくとも一つの脂肪酸成分を含むものであればよい。前記脂肪酸としては、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸が挙げられ、前記脂肪酸のグリセリンエステルとしては、飽和脂肪酸のグリセリンエステル、飽和脂肪酸の混合グリセリンエステル、不飽和脂肪酸のグリセリンエステル、不飽和脂肪酸の混合グリセリンエステル、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の混合グリセリンエステルが挙げられる。脂肪酸の炭素数としては、特に限定されないが、例えば、炭素数16以上22以下であることが好ましい。前記飽和脂肪酸としては、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ペヘニン酸等から選ばれる少なくとも1種を含んでもよい。前記不飽和脂肪酸としては、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコセン酸、エルシン酸等から選ばれる少なくとも1種を含んでもよい。
前記乳化剤としては、特に限定されないが、例えば、界面活性剤を用いることができ、ノニオン系界面活性剤が好ましい。ノニオン系界面活性剤としては、例えば、アルコール型、アルキルフェノール型、ポリオキシエチレンブロックポリマー型、ポリオキシプロピレンブロックポリマー型、アルキルアミン型等のアルカリ耐性の高い界面活性剤が挙げられる。
前記油性物質のエマルジョンを、セルロース100質量部に対して油性物質が1質量部以上15質量部以下になるように原料ビスコース等のセルロースを含む紡糸原液に添加することが好ましく、より好ましくは1質量部以上10質量部以下添加する。添加量が少なすぎるとセル状領域が形成されない傾向となり、多すぎると製造工程での溶出が多くなり、精練処理等の工程において発泡する恐れがある。油性物質として脂肪酸を用いる場合は、単に脂肪酸のみをビスコースに添加すると、ビスコースの粘度が増加し、紡糸が困難になることがある。そのため、脂肪酸の中和価+αのアルカリと脂肪酸をあらかじめ混和させ、反応部位を閉鎖させることが好ましい。例えば、脂肪酸のエマルジョン作製時に、水酸化ナトリウム等を添加すればよい。
原料ビスコース等のセルロースを含む紡糸原液に、油性物質のエマルジョンを添加して油性物質含有紡糸原液を作製し、該油性物質含有紡糸原液をノズルより紡糸浴中に押し出し、凝固再生することで、油性物質が繊維中に微分散して、繊維内部に油性物質を含むセル状領域が形成された再生セルロース繊維を得ることができる。
原料ビスコースとしては、例えば、セルロースを7質量%以上10質量%以下、水酸化ナトリウムを5質量%以上8質量%以下、二硫化炭素を2質量%以上3.5質量%以下含む原料ビスコースを調製して用いるとよい。
前記油性物質含有紡糸原液は、粘性及び流動性を良好にし、紡糸性を高める観点から、粘度が15sec以上100sec以下であることが好ましく、より好ましくは20sec以上50sec以下である。前記油性物質含有紡糸原液の粘度は、落球式で測定することができる。落球式は、粘度管に油性物質含有紡糸原液を入れ1/8インチ鋼球が100mm落下する時間で測定する。この値はハーゲンポアズイユの式に代入し、粘度に換算することもできる。
前記(紡糸)ノズルとしては、例えば、ホール数が1000以上20000以下である円形ノズルを用いることができ、生産性や均一な繊維が得られやすい観点から、ホール数が3000以上12000以下であることが好ましい。また、ノズルは、直径0.05mm以上0.12mm以下の通常の円形ノズルを用いもよいが、必要に応じて異型断面のノズルを用いてもよい。
前記紡糸浴としては、例えば、硫酸を95g/L以上125g/L以下、硫酸亜鉛を10g/L以上17g/L以下含むミューラー浴を用いることが好ましい。より好ましい硫酸濃度は、100g/L以上120g/L以下である。前記硫酸濃度が95g/L以上であると、再生が遅くなることなく生産性が良好になり、硫酸濃度が125g/L以下であると、再生が速くなることなく紡糸性が良好になる。前記硫酸亜鉛濃度が10g/L以上であると、ビスコースの表面での再生が速くなることがなく、セル状領域が形成されやすい。硫酸亜鉛濃度が17g/L以下であると、ビスコースの凝固及び再生が適度に進行することで、セル状領域が大きくなることがない。
紡糸速度は30m/分以上80m/分以下の範囲が好ましい。また、延伸率は25%以上55%以下が好ましく、35%以上55%以下がより好ましい。ここで延伸率とは、延伸前のスライバー速度を100としたとき、延伸後のスライバー速度をどこまで速くしたかを示すものである。倍率で示すと、延伸前が1、延伸後は1.25倍以上1.55倍以下が好ましく、1.35倍以上1.55倍以下がより好ましい。
上記のようにして得られた再生セルロース繊維を所定の長さにカットし、精練処理を行う。精練工程は、通常の方法で、熱水処理、水硫化処理、漂白、酸洗いの順で行うとよい。その後、必要に応じて圧縮ローラーや真空吸引等の方法で余分な水分を除去する。
次に、繊維内部に油性物質を含むセル状領域を含む再生セルロース繊維から油性物質を除去して繊維内部に空間からなるセル状領域を含む再生セルロース繊維を得る。油性物質の除去は、例えばメタノール、エタノール等の低級アルコール、キシレン等の芳香族系有機溶剤等の有機溶剤を用いて溶出することで行うことができる。有機溶媒で油性物質を溶出する前に、必要に応じて、0.5質量%以上4.0質量%以下の炭酸ソーダの水溶液で40℃以上70℃以下の温度で20分以上40分以下処理した後、80℃以上の熱水で洗浄してもよい。油性物質を除去した後、必要に応じて圧縮ローラーや真空吸引等の方法で余分な水分を繊維から除去した後、乾燥処理を施す。
本発明の効果を阻害しない範囲内で、他の添加剤を添加して繊維内部に空間からなるセル状領域を形成してもよい。但し、炭酸カルシウム等の気泡形成剤は、繊維内部に大きさいサイズの孔を形成しやすいことから、添加量を抑える方がよい。
次に、繊維内部に空間からなるセル状領域を含む再生セルロース繊維に対して減量処理を行うことで、空間からなるセル領域を繊維表面に露出させて孔を形成するとともに、繊維表面に繊維軸方向に筋状に延びる筋状凹部を形成して再生セルロース繊維を得る。減量処理は、例えば、セルラーゼ等の酵素を用いて行うことができる。具体的には、セルラーゼを含む処理液に繊維内部に空間からなるセル状領域を含む再生セルロース繊維を浸漬することで行うことができる。前記の孔及び筋状凹部は、減量処理の条件(例えば、処理液中のセルラーゼ等の酵素の濃度や処理時間)によってコントロールすることができる。
また、繊維内部に油性物質を含むセル状領域を含む再生セルロース繊維に対して減量処理を行う方法で、減量処理と同時に油性物質が溶出し、繊維表面に孔を形成するとともに、繊維表面に繊維軸方向に筋状に延びる筋状凹部を形成する再生セルロース繊維を得ることもできる。前記油性物質は、常温(20℃)で液体であってもよく、減量処理(例えばセルラーゼ)で処理する温度で液体であってもよく、減量処理の処理剤(例えばセルラーゼ)で溶出するものであってもよい。
セルラーゼを含む処理液中のセルラーゼの濃度は、例えば、1g/L以上30g/L以下であることが好ましく、2g/L以上20g/L以下であることがより好ましい。セルラーゼを含む処理液中のセルラーゼの濃度が上述した範囲内であると、セルラーゼによる減量効果が高くなる。
セルラーゼを含む処理液の温度は、例えば、35℃以上65℃以下であることが好ましく、45℃以上60℃以下であることがより好ましい。セルラーゼを含む処理液のpHは、3.0以上7.0以下であることが好ましく、4.0以上5.0以下であることがより好ましい。セルラーゼを含む処理液の温度及びpHが上述した範囲内であると、セルラーゼの活性が高くなりやすい。
セルラーゼを含む処理液に繊維内部にセル状領域または空間セル状領域を含む再生セルロース繊維を浸漬する際の浴比は、例えば、1:20~1:1000であることが好ましく、1:20~1:400であることがより好ましく、1:20~1:200がさらに好ましく、1:20~1:120であることが特に好ましい。浴比が上述した範囲であると、セルラーゼによる減量処理が均一になりやすく、繊維表面に均一に孔及び筋状凹部を形成しやすくなる。
セルラーゼによる処理時間は、例えば、30分以上200分以下であることが好ましく、60分以上120分以下であることがより好ましく、60分以上90分以下であることがさらに好ましい。処理時間が上述した範囲であると、繊維表面に孔と筋状凹部を形成しつつ、繊維強度を保つことができる。セルラーゼを失活させることで、セルラーゼによる処理を完了する。失活処理は、使用する酵素が失活する温度で処理すればよく、例えば、80℃以上で処理することができる。
セルラーゼ処理による繊維表面の孔と筋状凹部の形成の指標として、質量減量率が挙げられる。セル状領域を有するレーヨン繊維は、レギュラーレーヨン繊維よりもセルラーゼ処理による質量減量率が高い傾向にある。これは、セル状領域を有するレーヨン繊維は、レギュラーレーヨン繊維よりも繊維表面の非晶質部分が多く、セルラーゼ処理が進行しやすいとともに、セルラーゼ処理により繊維内部のセル状領域の空間が繊維表面に露出されることで比表面積が増加し、セルラーゼ処理がより進みやすいためであると考えられる。前記質量減量率には、セルラーゼ処理液の濃度、温度、処理時間に依存する。
本発明の1以上の実施形態において、前記表面多孔性再生セルロース繊維は、トウ、フィラメント、紡績糸、中綿(詰め綿)、紙、不織布、織物、編物等の繊維構造物に用いることができる。前記繊維構造物は、表面多孔性再生セルロース繊維単独で構成してもよく、他の繊維と併用してもよい。他の繊維としては、前記表面多孔性再生セルロース繊維以外の再生セルロース繊維、天然繊維、合繊繊維等が挙げられる。他の再生セルロース繊維としては、例えば、レーヨン、キュプラ、溶剤紡糸セルロース、ポリノジック等が挙げられる。天然繊維としては、例えば、コットン、麻、ウール、シルク、パルプ等が挙げられる。合成繊維としては、例えば、アクリル繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維、ポリウレタン繊維等が挙げられる。合成繊維は、単一繊維であってもよく、複合繊維であってもよい。
前記繊維構造物は、例えば、フィルター、セパレータ等の工業資材、下着、中着、外着、マフラー、ストール、帽子、耳掛け、手袋等の衣類製品、壁紙、障子紙、カーペット、カーテン等のインテリア製品、毛布、布団カバー、シーツ、枕カバー等の寝具等に用いることができる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
まず、測定方法及び評価方法について説明する。
(繊維の繊度)
JIS L 1015に準じて測定した。
(繊維の引張強さ、伸び率)
JIS L 1015 8.7.1(標準時試験)に準じて測定した。「以下、乾強度、乾伸度という」
JIS L 1015 8.7.2(湿潤時試験)に準じて測定した。「以下、湿強度、湿伸度という」
(繊維形状観察)
<セル状領域>
繊維の断面を走査型電子顕微鏡(日立サイエンスシステムズ(株)製、「S-3000N型」)で観察し、断面の電子顕微鏡写真(1000倍)から繊維断面を4つ選び、画像処理によりセル状領域を抽出し、各々のセル状領域の断面積及び繊維断面積を測定し、繊維断面積に対するセル状領域の合計断面積の比(以下において、単に「面積比率」とも記す。)を算出した。各々のセル状領域の断面積は、セル状領域を楕円形(円形も含む)と仮定し、長径および短径を測ることで算出した。
<孔>
繊維の表面(側面)を走査型電子顕微鏡(日立サイエンスシステムズ(株)製、「S-3000N型」)で観察し、繊維の表面(側面)の電子顕微鏡写真(3000倍)を任意に1枚サンプリングし、25μmの範囲を10カ所任意に決め、孔の長径及び短径を測定し、25μm当たりの個数をカウントし、25μm当たりの平均個数を算出した。孔は長径が8.0μm以下のものとした。孔の短径又は長径が0.1μm未満の孔は、写真を拡大してもサイズの判別が困難であるため、除外した。
<筋状凹部>
繊維表面(側面)を走査型電子顕微鏡(日立サイエンスシステムズ(株)製、「S-3000N型」)で観察し、繊維の表面(側面)の電子顕微鏡写真(2000倍)を任意に1枚サンプリングし、筋状凹部の繊維軸方向の長さを測定し、2500μm当たりの個数をカウントした。カウントした筋状凹部は、繊維軸方向の長さが15.0μm以上のものとした。筋状凹部の繊維軸方向の長さの最小値及び最大値、ならびに2500μm当たりの個数を算出した。
(吸着性能)
<機能剤に対する吸着性:色素吸着性>
100ppmのメチレンブルー水溶液100mLに繊維0.3gを加え、超音波(28/38KHz(2周波))をかけながら30分間浸漬させた後、自然乾燥と、100℃で1時間乾燥とで繊維に色素を吸着させた。乾燥後の繊維を色の溶出が無くなるまで蒸留水で洗浄し、染色の程度を観察した。
<機能剤による色素沈着度合い:反射光による吸光度測定>
島津製作所社製の分光光度計UV-2600を用いて、上記で得られた色素吸着後の繊維に対して反射光により波長220~1400nmの範囲での吸光度を測定した。その際、硫酸バリウムでの吸光度を「0」に換算した値で表記した。また、メチレンブルー水溶液については、石英セルを用いて透過光により吸光度を測定した。その際、蒸留水での吸光度を「0」に換算した値で表記した。
<除去対象物に対する吸着性:消臭性>
JTETC(一般社団法人繊維評価技術評議会)が定める消臭性能評価方法に準じ、5Lのテドラーバッグに繊維1.0gを入れ、70.0±0.2ppmに調整したアンモニアガスを3L注入し、所定時間後のガス濃度を測定し、下記式によりアンモニア残存率を算出した。
臭気残存率(%)=(O/O)×100・・・・(2)
なお、ここで、O(=70±0.2ppm)は初期のアンモニア濃度を示し、Oは所定時間ごとに測定したアンモニア濃度を示す。
(実施例1)
[紡糸用ビスコースの調製]
オレイン酸、水酸化ナトリウム、ノニオン系界面活性剤(ベロール社製商品名「ビスコ32」)を水中に添加して攪拌機で混合して乳化させ、オレイン酸9質量%、水酸化ナトリウム1.47質量%、ノニオン系界面活性剤2.7質量%を含むオレイン酸のエマルジョンを作製した。該オレイン酸のエマルジョンを原料ビスコースへオレイン酸がセルロース100質量部に対して3質量部になるように添加し、撹拌混合を行った。
原料ビスコースはセルロースを8.5質量%、水酸化ナトリウムを5.7質量%、二硫化炭素を3.2質量%含むものを用いた。
[紡糸条件]
得られた紡糸用ビスコース(粘度28.3sec;落球式)を、2浴緊張紡糸法により、紡糸速度40m/分、延伸率50%で紡糸して、繊度17.0texの繊維を得た。第1浴(紡糸浴)の組成は、硫酸100g/L、硫酸亜鉛15g/L、硫酸ナトリウム350g/L含むミューラー浴(50℃)を用いた。また、ビスコースを吐出する紡糸口金には、孔径0.18mmのホールを1,000個有するノズルを用いた。
[精練条件]
得られたビスコースレーヨンの糸条に対して精練処理を行い、オレイン酸が練りこまれたレーヨン繊維を得た。精練処理は、具体的には、熱水処理後に水洗を行い、その後、55℃の0.8質量%の水流化ソーダの水溶液にて処理してから水洗し、圧縮ローラーにて余分な水分を落とすことで行った。
[オレイン酸除去]
オレイン酸が油滴状となって存在している、すなわち、オレイン酸を含むセル状領域が存在しているレーヨン繊維中からオレイン酸を除去するために、60℃の3%炭酸ソーダ(浴比1:20)で30分処理したあとに、80℃の熱水で洗浄した。洗浄後の繊維は浴比1:10で一晩メタノールに浸漬させ、脱液後に水洗し、乾燥機内で乾燥させることで、繊維内部に複数の空間からなるセル状領域を有するレーヨン繊維を得た。
[セルラーゼ処理]
酸性セルラーゼ(洛東化成工業(株)製、エンチロンCM-40)を2.0g/L、pHが4.5のpH緩衝剤(洛東化成工業(株)製、ブライト BAF CONC)を2.0g/Lの濃度になるように水で希釈し、セルラーゼ溶液を調製した。このセルラーゼ溶液をターゴトメーターに入れ、55℃になるまで保温した。その後、セルラーゼ溶液に浴比が1:200になるように上記で得られた繊維内部に複数の空間からなるセル状領域を有するレーヨン繊維を加え、反転回転40回/minにて撹拌し、90分間セルラーゼ処理を行った。処理後の繊維は、90℃の熱水で処理することで酵素を失活させ、蒸留水で洗浄してから乾燥させ、繊維表面に筋状凹部と孔が形成された実施例1のレーヨン繊維を得た。
(実施例2)
セルラーゼ処理の処理時間を120分とした以外は、実施例1と同様の製造方法でレーヨン繊維を得た。
(実施例3)
セルラーゼ処理の処理時間を60分とした以外は、実施例1と同様の製造方法でレーヨン繊維を得た。
(実施例4)
セルラーゼ処理の処理時間を30分とした以外は、実施例1と同様の製造方法でレーヨン繊維を得た。
(比較例1)
セルラーゼ処理を行わないこと以外は実施例1と同様にして、比較例1のレーヨン繊維を得た。
(比較例2)
原料ビスコースにオレイン酸の水分散液を添加せず、オレイン酸除去処理を行わないこと(レギュラーレーヨンを用いた)以外は、実施例1と同様にして、比較例2のレーヨン繊維を得た。
(比較例3)
セルラーゼ処理を行わないこと以外は、比較例2と同様にし、比較例3のレーヨン繊維(レギュラーレーヨン繊維)を得た。
(比較例4)
原料ビスコースにオレイン酸の水分散液を添加せず、オレイン酸除去処理を行わないこと(レギュラーレーヨンを用いた)以外は、実施例2と同様にして、比較例4のレーヨン繊維を得た。
(比較例5)
原料ビスコースにオレイン酸の水分散液を添加せず、オレイン酸除去処理を行わないこと(レギュラーレーヨンを用いた)以外は、実施例3と同様にして、比較例5のレーヨン繊維を得た。
(比較例6)
原料ビスコースにオレイン酸の水分散液を添加せず、オレイン酸除去処理を行わないこと(レギュラーレーヨンを用いた)以外は、実施例4と同様にして、比較例6のレーヨン繊維を得た。
実施例及び比較例で得られたレーヨン繊維の断面及び表面を走査型電子顕微鏡で観察し、上述したセル状領域、孔及び筋状凹部のサイズを測定した。その結果を下記表1に示した。また、上述したように測定した繊維の繊度及び引張強さ、伸び率の結果を下記表2に示した。下記表1及び2において、「-」は未測定を意味する。
図1に実施例1の繊維側面の走査型電子顕微鏡写真(3000倍)を示し、図2に実施例2の繊維側面の走査型電子顕微鏡写真(3000倍)を示し、図3に実施例3の繊維側面の走査型電子顕微鏡写真(3000倍)を示し、図4に実施例4の繊維側面の走査型電子顕微鏡写真(3000倍)を示し、図5に比較例1の繊維断面の走査型電子顕微鏡写真(1000倍)を示し、図6に比較例1の繊維側面の走査型電子顕微鏡写真(3000倍)を示し、図7に比較例2の繊維側面の走査型電子顕微鏡写真(3000倍)を示し、図8に比較例4の繊維側面の走査型電子顕微鏡写真(3000倍)を示し、図9に比較例5の繊維側面の走査型電子顕微鏡写真(3000倍)を示し、図10に比較例6の繊維側面の走査型電子顕微鏡写真(3000倍)を示した。
また、実施例1~4及び比較例2、4~6において、セルラーゼ処理による質量減量率を測定算出してその結果を図11に示した。
実施例及び比較例で得られたレーヨン繊維の色素吸着性を評価し、その結果を図12に示した。また、実施例及び比較例で得られたレーヨン繊維の消臭性を上述したように測定・評価し、その結果を下記表3に示した。
また、実施例1、比較例1~3の繊維を100ppmのメチレンブルー水溶液に浸漬し、乾燥/水洗した後(色素吸着後)の繊維の反射光による吸収スペクトルを測定し、その結果を図13に示した。
図5の比較例1の繊維の断面の顕微鏡写真から分かるように、比較例1ではオレイン酸のエマルジョンを含むビスコースを紡糸した後、オレイン酸を除去することで、繊維内部に空間からなるセル状領域(空隙部)を有するレーヨン繊維を得られた。
図1の実施例1の繊維側面の顕微鏡写真及び図7の比較例2の繊維側面の顕微鏡写真から分かるように、実施例1では、オレイン酸のエマルジョンを含むビスコースを紡糸した後、オレイン酸を除去することで、繊維内部に空間からなるセル状領域を形成し、その後、セルラーゼ処理を行うことで、繊維表面近辺に存在していた空間からなるセル状領域が繊維表面に露出して孔を形成するとともに、繊維表面に繊維軸方向に筋状に延びる筋状凹部が形成されていた。これは、レーヨン繊維の表面の非晶質部分が繊維軸方向に並んでおり、セルラーゼ処理によって非晶質部分が優先的に処理され、孔と筋状凹部が形成されたためであると考えられる。また、比較例2の繊維の側面にも多数の孔が見られるが、比較例2はレギュラーレーヨン繊維にセルラーゼ処理を行ったものであり、実施例1のセル状領域を有するレーヨン繊維と比較すると、繊維表面は非晶質部分が少なく、セルラーゼ処理によって優先的に処理される部分が少ないため、筋状凹部が繊維軸方向に形成されにくく、乱雑に存在する孔が多く見られた。図10はレギュラーレーヨン繊維に対してセルラーゼ処理を30分行った比較例6の繊維側面の顕微鏡写真であり、セルラーゼ処理時間が短く、孔と認識できるものは、確認できなかった。
Figure 0007340128000001
表1から分かるように、繊維表面をセルラーゼ処理することによって、実施例1~4のレーヨン繊維は、繊維表面に孔と筋状凹部が形成されていたが、比較例2、4~6のレーヨン繊維は、繊維表面に筋状凹部は形成されず、孔のみが形成されていた。また、セルラーゼ処理時間が長くなるにつれて、表面に露出する孔の数も多くなる傾向がみられる。実施例1よりも処理時間を長くした実施例2では、孔の数が増えるとともに、孔サイズが大きくなっている。これは、孔同士がセルラーゼ処理の進行によってつながったことによると考えられる。
また、図3(実施例3)及び図4(実施例4)から分かるように、セルラーゼ処理時間が長くなるにつれて、表面に形成される筋状凹部の数が多くなる傾向が見られる。実施例3よりも処理時間を長くした実施例1、2では、筋状凹部の数が減っているが、これは再生セルロース繊維の繊維表面に存在するスキン層のほとんどの部分がセルラーゼで処理されること、あるいはセルロースの溶解または分解が起こることで筋状凹部同士が一体化するためであると考えられる。スキン層には結晶部分と非晶質部分が繊維軸方向に分子配向して存在し、非晶質部分が先に溶解または分解されて、配向した結晶部分以外に筋状凹部が形成されやすいが、コア層は分子配向がスキン層ほど進んでおらず、結晶部分と非晶質部分が混在した状態であり、筋状凹部が形成されにくいためであると考えられる。
Figure 0007340128000002
表2から分かるように、油性物質を添加することで繊維にセル状領域を形成させても、得られる繊維の強度および伸度に影響せず、さらに、繊維表面をセルラーゼで減量処理した場合においても、繊維の強度および伸度の低下は見られなかった。
図11から分かるように、実施例1~4と、比較例2、4~6において、セルラーゼ処理による質量減量率は、処理時間の増加に従って増加する傾向が見られた。また、同じ処理時間で比較すると、実施例1~4の方が比較例2、4~6の場合よりも、質量減量率が高いこともわかった。このことは、実施例1~4(空間セル状領域を形成したレーヨン繊維を原材料とする)のスキン層は非晶質部分が繊維軸方向に並んでいるのに対し、比較例2、4~6(レギュラーレーヨン繊維を原材料とする)のスキン層は非晶質部分が少なく、セルラーゼ処理が進みにくいためであると考えられる。また、実施例1~4では、繊維表面がセルラーゼで溶解または分解することによって繊維内部のセル状領域がその表面に露出し、セルラーゼ溶液に対する繊維の接触面積がレギュラーレーヨン繊維よりも大きくなったためであると考えられる。以上のことから、セルラーゼ処理によるレーヨン繊維の質量減量率が、実施例1~4の方が比較例2、4~6の場合よりもより大きくなったと推定される。
図12に示されているように、実施例1、比較例1~3にメチレンブルーの色素を付着させ、自然乾燥により担持したものと加熱乾燥(100℃、1時間)により沈着させたものを比較した。乾燥条件によらず、実施例1、比較例1の方が繊維内部に空間セル状領域を形成していないレーヨン繊維(レギュラーレーヨン)の比較例2、3よりもメチレンブルー色素による沈着がより多く、色が濃いことがわかった。これは繊維内部の空間にも色素沈着していることを示唆する。
また、レーヨン繊維に対するセルラーゼ処理による影響を確認したところ、セルラーゼ処理(90分間)を行った実施例1、比較例2の方がセルラーゼ処理を行わなかった比較例1、3よりも、色素の沈着が多く色が濃いこともわかった。これは、実施例1では、セルラーゼ処理により繊維表面に筋状凹部を形成するとともに、繊維内部に存在していたセル状領域が繊維表面に露出して複数の孔を形成することによって、メチレンブルー色素が繊維に吸着しやすくなったためであると考えられる。
また、メチレンブルーの色素を吸着後、加熱乾燥した繊維の方が自然乾燥した繊維よりも、色素の沈着が多いこともわかった。これは、繊維の表面に付着されたメチレンブルーの色素が加熱によって結晶化が促進され、水洗による繊維からの色素の脱落が生じにくくなったためと考えられた。つまり、繊維表面が粗面化した場合では、メチレンブルー色素が窪んだ部分で結晶化され、脱落しにくくなったものと考えられる。
図13のメチレンブルーに浸漬した繊維の吸収スペクトルから分かるように、実施例1、比較例1~3は波長600~700nm付近でメチレンブルーの吸収ピークが認められる。実施例1の方が、比較例1と比較して吸収ピークは高く、また、比較例2の方が、比較例3よりも吸収ピークが高いことから、セルラーゼ処理をしていないものと比較して、セルラーゼ処理をしたものの方が、吸収ピークが高く現れることがわかった。特に、実施例1は、最もメチレンブルー色素を吸着しやすくなっていることが定量的にも確かめられた。
Figure 0007340128000003
表3から分かるように、実施例1は、比較例1~3に比べて、アンモニア消臭性が格段に向上していた。これは、実施例1では、セルラーゼ処理により繊維表面に複数の筋状凹部を形成するとともに、繊維内部に存在していたセル状領域が繊維表面に露出して複数の孔を形成することによって、アンモニアを吸着しやすくなったためであると考えられる。
本発明の再生セルロース繊維は、例えば、トウ、フィラメント、紡績糸、中綿(詰め綿)、紙、不織布、織編物等の繊維構造物に用いることができる。また、本発明の再生セルロース繊維を用いた繊維構造物は、フィルター、セパレータ等の工業資材、下着、中着、外着、マフラー、ストール、帽子、耳掛け、手袋等の衣類製品、壁紙、障子紙、カーペット、カーテン等のインテリア製品、毛布、布団カバー、シーツ、枕カバー等の寝具等に有用である。

Claims (9)

  1. 再生セルロース繊維であって、繊維表面には、繊維軸方向に筋状に延びる筋状凹部と、前記筋状凹部の繊維軸方向の長さより長径が小さい孔が形成されており、
    前記筋状凹部は、繊維軸方向の長さが15.0μm以上であるものを含み、
    前記筋状凹部は、繊維軸方向の全長に連続的に存在するものではない、再生セルロース繊維。
  2. 繊維軸方向の長さが15.0μm以上の筋状凹部が繊維側面2500μm2当たりに5個以上存在する、請求項1に記載の再生セルロース繊維。
  3. 前記孔は、長径が0.1μm以上8.0μm以下、短径が0.1μm以上1.5μm以下であり、かつ繊維側面25μm2当たりに1個以上存在する、請求項1または2に記載の再生セルロース繊維。
  4. 前記再生セルロース繊維の繊維内部には、空間からなるセル状領域を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の再生セルロース繊維。
  5. 繊維内部にセル状領域を有する再生セルロース繊維の繊維表面を減量処理することで、前記セル状領域を繊維表面に露出させて孔を形成するとともに、繊維表面に繊維軸方向に筋状に延びる筋状凹部を形成することを特徴とする再生セルロース繊維の製造方法。
  6. 前記減量処理がセルラーゼ処理である請求項5に記載の再生セルロース繊維の製造方法。
  7. 前記減量処理の前に、前記再生セルロース繊維のセル状領域を構成する成分を溶出して空間からなるセル状領域を形成する工程を含む、請求項5または6に記載の再生セルロース繊維の製造方法。
  8. 前記繊維内部にセル状領域を有する再生セルロース繊維は、セルロースを含む紡糸原液に油性物質のエマルジョンを添加し、得られた油性物質含有紡糸原液を紡糸することで作製しており、前記紡糸において延伸率が25%以上55%以下である、請求項5~7のいずれか一項に記載の再生セルロース繊維の製造方法。
  9. 請求項1~4のいずれか一項に記載の再生セルロース繊維を含む繊維構造物。
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