JP6108145B2 - アクリル系消臭繊維並びにそれを含む紡績糸および織編物。 - Google Patents
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Description
本発明のアクリル系消臭繊維は、アクリロニトリル系重合体を60〜90質量%を含み、好ましくは65〜75質量%含むと良い。アクリロニトリル系重合体の含有率が60質量%以上であることで、アクリル系消臭繊維を紡糸する際の糸切れおよび巻き付きなどが少なくなるとともに、繊維物性が向上し紡績工程通過性が良好となり、さらには、当該繊維を使用した織編物のソフト感が良好となる。また、アクリロニトリル系重合体の含有率が90質量%以下であることで、当該繊維を使用した織編物のドライ感が良好となる。
本発明のアクリル系消臭繊維は、セルロースアセテートを9〜39質量%含み、好ましくは15〜35質量%含むと良い。セルロースアセテートの含有率が9質量%以上であることで、酢酸、イソ吉草酸およびノネナールに対する消臭性能が良好となり、さらには、当該繊維を使用した織編物のドライ感が良好となる。また、セルロースアセテートの含有率が39%質量以下であることで、アクリル系消臭繊維を紡糸する際の糸切れおよび巻き付きなどが少なくなるとともに、繊維物性が良好となり、紡績工程通過性が良好となる。
本発明のアクリル系消臭繊維に添加されるセルロースアセテートは、アクリル系繊維の紡糸で一般的に用いられる溶剤への溶解性を考慮して、水酸基の74%以上92%未満が酢酸化されているセルロースアセテート(エステル化度は、2.22以上2.76未満。)が用いることが好ましい。
本発明のアクリル系消臭繊維は、セルロースアセテートを9〜39質量%含むとともに、消臭性微粒子を0.5〜2.5質量%含み、好ましくは消臭性微粒子を1.0〜2.0質量%含むと良い。消臭性微粒子の含有率が0.5質量%以上であることで、セルロースアセテートを含有することでは得られない、アンモニアに対する消臭率が良好となる。消臭性微粒子の含有率が2.5質量%以下であることで、アクリル系消臭繊維を紡糸する際の糸切れおよび巻き付きなどが少なくなるとともに、繊維物性が良好となり、紡績工程通過性が良好となる。
本発明のアクリル系消臭繊維は、繊維軸と直角方向の断面において、セルロースアセテートが島成分を、アクリロニトリル系重合体が海成分を形成することが重要である。アクリル系消臭繊維がこのような海島構造を採ることで、脆弱なセルロースアセテートの周囲をアクリロニトリル系重合体が被覆化し、結果として繊維が補強され、単繊維繊度が1.8cN/dtex以上および単繊維伸度が30%以上となり、通常のアクリル繊維と同等の紡績工程通過性が得られる。また、島のサイズは何ら限定されるものではないが、上述の繊維物性を得るためには、島のサイズは小さいほうが有利である。
本発明のアクリル系消臭繊維において、繊維軸と直角方向の断面(繊維緯断面)における海島構造は、繊維軸方向の断面(繊維縦断面)において島成分であるセルロースアセテートが全て又は部分的に連通していることが消臭性能を向上する上で好ましい。
本発明のアクリル系消臭繊維は、軽量保温を目的とする用途に使用する場合には、繊維内部に空孔を有することが好ましい。本発明において空孔とは、繊維内部に形成される空隙を示すものであり、空孔の一部が繊維表面に開口していてもよく、また空孔は島と島を連結していてもよい。空孔の形態及びサイズは何ら限定されるものではないが、繊維強度が1.8CN/dTex以上を維持することが好ましいことから、空孔形態によっても異なるが約2〜5μm未満のものが好ましい。
本発明の紡績糸は、アクリル系消臭繊維を20質量%以上含み、30質量%以上含むことが好ましい。アクリル系消臭繊維を20質量%以上含むことで、酢酸に対する消臭率を80%以上、イソ吉草酸に対する消臭率を85%以上、ノネナールに対する消臭率を75%以上、アンモニアに対する消臭率を70%以上とすることができる。
本発明の織編物は、アクリル系消臭繊維を20質量%以上含み、30質量%以上含むことが好ましい。アクリル系消臭繊維を20質量%以上含むことで、酢酸に対する消臭率を80%以上、イソ吉草酸に対する消臭率を85%以上、ノネナールに対する消臭率を75%以上、アンモニアに対する消臭率を70%以上とすることができる。
本発明の織編物は、以下の(1)〜(4)を満足する織編物である。織編物がこれらの消臭率を満たすことで、織編物が汗臭および加齢臭の消臭性能を有することの目安となる。
(1)酢酸に対する消臭率が80%以上
(2)イソ吉草酸に対する消臭85%以上
(3)ノネナールに対する消臭率が75%以上
(4)アンモニアに対する消臭率が70%以上
本発明に係るアクリル系消臭性繊維の製造方法の一例を説明する。
本実施形態におけるアクリル系消臭性繊維の製造方法では、まず、アクリロニトリル系重合体の原液、セルロースアセテートの原液および消臭性微粒子のマスターバッチを調整する。このときに、原液またはマスターバッチに使用する溶剤は、共通の溶剤とする。さらに、この溶剤は、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、アセトン、ジメチルスルホキシド等の有機溶剤や、ロダン塩、硝酸などの無機溶剤、その他アクリル系繊維の紡糸で一般的に用いられる溶剤の何れの溶剤でも使用することができるが、回収の容易さを考慮すると有機溶剤を用いることが好ましい。また、このとき用いるアクリロニトリル系重合体、セルロースアセテート、消臭性微粒子については、上記で説明したものを好適に使用することができる。
こともできる。
ノズル孔詰まりを防止して優れた紡糸操業性で繊維製造を行うことができる。また、アク
リル系繊維が本来有する優れた物性を損なわせることなく、優れた消臭性能を付与することができる。
本発明のアクリル系消臭繊維はカットして短繊維とされた後、紡績される。紡績糸の構成は、本発明のアクリル系消臭繊維を100%としても良いし、他の繊維、例えば通常のアクリル系繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維等の合成繊維または化学繊維、綿、ウール、絹等の天然繊維と混紡して、アクリル系消臭繊維を20質量%以上含む紡績糸としてもよい。本発明の紡績糸の製造方法は、特に限定はなく、公知の紡績方法、紡績方式にて、本発明の紡績糸を製造することができる。
さらに、前述のようにして製造された本発明の紡績糸は、織編物の構成糸として用いられる。本発明の織編物を得るに当たっては、織組織、編組織、或いは織成方法、編成方法、織機、編機等については特に限定はない。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、実施例中の測定項目は、次の方法に拠った。
テドラーパックに試料(わたは2.4g、編地はたて10cm×よこ10cmに切り取ったもの)を入れ、アンモニアの場合は初発濃度が100ppm、酢酸の場合は初発濃度が50ppmとなるように臭気ガスを3L入れ、2時間後の臭気成分濃度を検知管により測定し、次の式より算出した。
消臭率(%)=((2時間後の空試験濃度−2時間後の試料試験濃度)/2時間後の空試験濃度)×100
三角フラスコ(内容量:500ml)に試料(編地を6cm×8cmに切り取ったもの)を入れ、イソ吉草酸の場合は初発濃度を38ppm、ノネナールの場合は初発濃度を14ppmとなるように臭気成分の溶液を滴下し、封をし、2時間後シリンジによりフラスコ内ガスをサンプリングし、ガスクロマトグラフでピーク面積を測定し、次の式より算出した。
消臭率(%)=((Sb−Sm)/Sb)×100
ただし、Sb=2時間後の空試験のピーク面積
Sm=2時間の試料試験のピーク面積
アクリロニトリル93質量%と、酢酸ビニル7質量%からなるアクリロニトリル系重合体を固形分濃度が24質量%となるようにジメチルアセトアミド(以下、「DMAc」という。)に溶解して、アクリロニトリル系重合体の原液を調製した。
これとは別に、水酸基の74%以上92%未満が酢酸化されているセルロースアセテート(株式会社ダイセル社製)を固形分濃度が18質量%となるようにDMAcに溶解して、セルロースアセテートの原液を調製した。
消臭性微粒子として商品名「ミズカナイト」HF(水澤化学工業株式会社製、平均粒径2μm)を用いた以外、実施例1と同様の方法でアクリル系消臭繊維を得た。
実施例1〜4で調製したアクリロニトリル系重合体の原液と、セルロースアセテートの原液、および消臭性微粒子のマスターバッチを、各成分が表2に示す比率となるようにホモミキサーにて十分に攪拌混合し、芯成分の紡糸原液Aを調製した。
実施例1〜4で調製したアクリロニトリル系重合体の原液と、セルロースアセテートの原液、および消臭性微粒子のマスターバッチを、各成分が以下の表3に示す割合となるようにホモミキサーにて十分に攪拌混合し、紡糸原液を調製し、実施例1と同様の方法でアクリル系消臭繊維を得た。
尚、紡糸操業性の判定は以下により行った。
○:糸切れ、巻付きなどがなく、紡糸性良好
△:糸切れはないが、巻付きが発生し、紡糸性やや不良
×:糸切れが多発し、紡糸性不良
実施例1のアクリル系消臭繊維と、単繊維繊度1.3dtexのビスコースレーヨン繊維を、混紡率60%/40%の割合で紡績し、毛番手で1/68の紡績糸Aを得た。この紡績糸を用いて22ゲージ丸編み機でフライス生地を編成した。
アクリル系消臭繊維を実施例3のアクリル系消臭繊維とした以外、実施例5と同様の方法で紡績糸Bを得た。この紡績糸Bを表5に示す配列で交編し、22G丸編機でフライス交編生地を編成した。
綿100%からなる綿番手で40/1の紡績糸Cを得た。実施例6に記載した紡績糸Bと紡績糸Cとを表5に示す配列で交編し、22G丸編機でフライス交編生地を編成した。
単繊維繊度1dtexの抗ピルアクリル繊維と、綿繊維を混紡率55%/45%の割合で紡績し、毛番手で1/68の紡績糸Dを得た。実施例6に記載した紡績糸Bと紡績糸Dとを表3に示す配列で交編し、22G丸編機でフライス交編生地を編成した。
Claims (6)
- アクリロニトリル系重合体60〜90質量%、セルロースアセテート9〜39質量%およびアンモニア消臭性微粒子0.5〜2.5質量%から構成され、繊維軸と直角方向の断面においてセルロースアセテートが島成分、アクリロニトリル系重合体が海成分となる繊維構造を有し、繊維内部に空孔を有し、前記空孔のサイズが2μm以上5μm未満であるアクリル系消臭繊維。
- 繊維軸方向の断面(繊維縦断面)においてセルロースアセテートの島部と別の島部が全て又は部分的に隣接している連通した構造を有する請求項1に記載のアクリル系消臭繊維。
- 前記空孔の一部が繊維表面に開口している請求項1又は2に記載のアクリル系消臭繊維。
- 請求項1〜3いずれか一項に記載のアクリル系消臭繊維を20質量%以上含む紡績糸。
- 請求項1〜3いずれか一項に記載のアクリル系消臭繊維を20質量%以上含む織編物。
- 以下の(1)〜(4)を満足する請求項5に記載の織編物。
(1)酢酸に対する消臭率が80%以上
(2)イソ吉草酸に対する消臭率85%以上
(3)ノネナールに対する消臭率が75%以上
(4)アンモニアに対する消臭率が70%以上
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