JP5177039B2 - 高伸度セルロース繊維およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、伸度が高く柔軟なセルロース繊維、より詳しくは伸度が30〜60%、初期引張抵抗度が15〜40cN/dtexである高伸度のセルロース繊維に関するものである。すなわち、セルロース繊維として極めて高い伸度を有しているため、繊維高次加工における各種の取り扱いが可能となるだけではなく、柔軟でソフトな風合いを有する繊維構造物を提供することが可能な高伸度セルロース繊維およびその製造方法に関する。
セルロース繊維およびセルロース誘導体繊維は、吸湿性、発色性、風合いなどに優れることから世界の繊維需要の40%程度を占めており、今日でも非常に重要な繊維素材である。
セルロース繊維は、綿や麻などの天然繊維と、ビスコースレーヨンやキュプラレーヨン、テンセル(登録商標)などの再生繊維に分類できるが、これらのいずれもが化学組成としてはセルロースからなっており、繰り返し単位であるグルコースに3個の水酸基が存在するものである。これらの繊維は良好な吸湿特性、耐薬品性、耐熱溶融性、発色性を有しており、衣料用繊維のみならず産業用繊維としても活用されている。
しかしながら、繊維が剛直な分子鎖を有するセルロースからなっていることから、繊維の伸度は低い値であり、綿では3〜7%、亜麻では1.5〜2.3%、レーヨンフィラメントでは18〜24%、レーヨンステープルでは16〜22%、キュプラでは10〜17%の範囲となっている(非特許文献1)。これらの伸度範囲は、たとえばポリエステル繊維の20〜50%、ナイロン繊維の25〜60%と比べても明らかに低い値であり、繊維の高次加工において低伸度に起因する毛羽の発生や、混繊する際の組み合わせの制限、さらには最終繊維製品となった後の耐摩耗性の欠如など各種の問題の原因となっている。
一方、セルロース誘導体の繊維としてセルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートなどの半合成繊維が知られている。これらの繊維はセルロースのエステル化によりグルコース単位あたり3個存在する水酸基の過半数がアシル基によって置換されたセルロース誘導体を主成分とするものであるため、純粋なセルロース繊維とはその性質が異なり、半合成繊維と分類されている。これらの繊維の場合、例えばセルロースジアセテートの伸度は25〜35%、セルローストリアセテートも25〜35%の範囲であり(非特許文献1)、純粋なセルロースからなる繊維に比べると伸度レベルは高いものになっている。しかしながら、これらの繊維はセルロース誘導体がベースポリマーとなっていることから、軟化、溶融しないセルロースと違って溶融点が存在するため耐熱性が劣ること、耐溶剤性が優れたセルロースとは違って一般的な溶剤に溶解するため耐溶剤性が劣ることなどの問題を有している。
セルロースアセテート繊維はアルカリ水溶液によるけん化処理によってエステル結合を加水分解することが可能であり、実質的に置換度が0のセルロース繊維に改質できることが知られている(特許文献1、2)。セルロースアセテート繊維のけん化処理を行った場合の繊維の伸度特性の変化については、論文情報が知られている(非特許文献2)。非特許文献2のFig.8によれば加水分解によってセルロースアセテートがセルロースに近づくにつれて伸度は低下していくことが分かる。即ち、けん化処理を行ったセルロースアセテート繊維はセルロースに近づくにつれて剛性の高い繊維となることが分かる。
セルロースアセテートプロピオネート繊維についても、アルカリ水溶液によるけん化処理によってエステル結合を加水分解することが可能であり、実質的に置換度が0のセルロース繊維に改質できることが知られている(特許文献3、4)。これらの繊維の場合にもセルロースアセテートプロピオネートがけん化処理によってセルロースに近づくにつれて剛性の高い繊維となり、ポリマーがセルロースへと再生された場合には、たとえば伸度が15%程度の繊維となる。
上述のようにセルロースを主成分とするセルロース繊維には各種の製法によって物性や形態が異なる各種の繊維が知られているが、そのいずれもが伸度30%未満であって、剛性の高い繊維である。そのため、耐熱性、耐薬品性、吸湿性に優れたセルロース100%の繊維であって且つ柔軟な繊維、すなわち伸度が高く、初期引張抵抗度が低い繊維はこれまで存在しなかった。
特開昭60−173162号公報 特開昭61−34275号公報 特開2004−115933号公報 特開2004−250799号公報
繊維学会編、繊維便覧(第3版)、p.918−924(2004) 繊維学会、繊維学会誌、Vol.21、No2、p.102(1965)
本発明の課題は、上記従来の問題点を解決するために、耐溶剤性、耐熱溶融性、吸湿性に優れたセルロースを主成分とする繊維でありながら、高伸度かつ低初期引張抵抗度の機械的特性を有する繊維およびその製造方法を提供することにある。
上述の本発明の課題は、グルコース単位あたり3個の水酸基を有するセルロースを主体としてなる繊維であって、伸度が30〜60%、初期引張抵抗度が15〜40cN/dtex、20℃×65%RHにおける吸湿率が8〜15%であることを特徴とする高伸度セルロース繊維によって解決することができる。
また本発明の別の課題は、炭素数が3以上のアシル基を少なくとも一部に有するセルロースエステル(A)と、前記セルロースエステル(A)とは組成が異なるセルロースエステル(B)を少なくとも含んでなる組成物を溶融紡糸により繊維化し、得られた繊維をアルカリ化合物を含有する水溶液を用いて加水分解処理することを特徴とする請求項1記載の高伸度セルロース繊維の製造方法によって解決することができる。その際、セルロースエステル(A)がセルロースアセテートプロピオネートあるいはセルロースアセテートブチレートであることが好適に採用できる。
本発明の高伸度セルロース繊維は、従来のセルロース繊維と同じくセルロースを主体とする繊維であるため、高い吸湿性を有するだけでなく、通常の溶剤に溶解することがない高い耐溶剤性、アイロン等の熱圧によって溶融することがない高い耐熱溶融性を備えており、衣料用繊維として好適に用いることができる。さらに、従来のセルロース繊維と異なり、30〜60%という高い伸度、15〜40cN/dtexという低い初期引張抵抗度を有するため、各種の糸加工において幅広い加工条件を設定することができるとともに、柔軟でソフトな風合いの織編物を製造することができることから、快適性のみならず風合いも良好な衣料用繊維として好適に用いることができる。
以下、本発明の高伸度セルロース繊維について詳細に説明する。
本発明の高伸度セルロース繊維は、グルコース単位あたり3個の水酸基を有するセルロースを主体としてなる繊維である。すなわち、アシル基によって水酸基が封鎖されたセルロースエステルなどのセルロース誘導体ではなく、水酸基が実質的に封鎖されていないセルロースを主成分としてなる繊維である。本発明の高伸度セルロース繊維はセルロース以外の成分を含有することもできるが、本発明の効果を明確に発現するために、繊維中のセルロース成分は80重量%以上であることが好ましく、90重量%以上であることがさらに好ましい。
本発明の高伸度セルロース繊維の伸度は、30〜60%である。既存のセルロース繊維の例としては、綿では3〜7%、亜麻では1.5〜2.3%、レーヨンフィラメントでは18〜24%、レーヨンステープルでは16〜22%、キュプラで10〜17%である。本発明の繊維の伸度はこれら既存のセルロース繊維と比較して格段に高い30〜60%であることが重要である。
繊維の伸度が30%以上であることによって、糸加工、製織、製編などの繊維高次加工における工程通過性が良好になり、毛羽や糸切れを抑制することができるため、最終製品の品位向上に好適である。また、伸度差混繊糸など高伸度を活用した各種繊維製品への適用も可能となる。高次加工通過性の観点からは繊維の伸度は35%以上であることがより好ましく、40%以上であることも好適に採用できる。
一方、60%以下であれば、繊維が過度に変形してしまうことがなく、例えば製織時の緯ひけなどの発生が抑制されるとともに、最終製品の型崩れ防止の形態安定化効果があるため好適に採用することができる。形態安定化効果の観点からは繊維の伸度は55%以下であることがより好ましく、50%以下であることも好適に採用できる。
本発明の高伸度セルロース繊維の初期引張抵抗度は、15〜40cN/dtexである。初期引張抵抗度は繊維の柔軟性を表す指標であり、既存のセルロース繊維の例では、綿では60〜82cN/dtex、亜麻では132〜234cN/dtex、レーヨンフィラメントでは60〜80cN/dtex、レーヨンステープルでは26〜62cN/dtex、キュプラで55〜80cN/dtex程度となる。本発明の繊維ではそれらに比べて格段に低い15〜40cN/dtexであることが重要である。
繊維の初期引張抵抗度が40cN/dtex以下であることによって、織物、編物などの最終製品とした際に柔軟でソフトな風合いを付与することができる。ソフトな風合いの観点からは、繊維の初期引張抵抗度は35cN/dtex以下であることがより好ましく、30cN/dtex以下であることも好適に採用できる。
一方、15cN/dtex以上であれば、繊維が過度に変形してしまうことがなく、例えば製織時の緯ひけなどの発生が抑制されるとともに、最終製品の型崩れ防止の形態安定化効果があるため好適に採用することができる。形態安定化効果の観点からは繊維の初期引張抵抗度は20cN/dtex以上であることがより好ましい。
本発明の高伸度セルロース繊維の20℃×65%RH、すなわち標準状態における吸湿率は8〜15%である。すなわち、セルロースI型の結晶形態を有する天然セルロース繊維の標準状態における吸湿率7%程度に対しては高いレベルの吸湿性を有している。吸湿率が高ければ着用時の快適性向上や低湿時の静電気防止の効果が得られるため、例えば9%以上であることがより好ましく、10%以上であることがもっとも好ましい。一方、15%以下であれば吸湿時の重量増加によって着用時に重さを感じすぎることがなく好ましい。
本発明の高伸度セルロース繊維の強度は0.5〜2.0cN/dtexであることが好ましい。強度が上記範囲であれば、着用時や使用時等、実用上、十分に耐えうるものとなり、製品品位の悪化や実用上での耐久性不良が起こらない。強度は高ければ高いほど好ましく、0.7cN/dtex以上であることがより好ましく、0.9cN/dtex以上であることが更に好ましい。
本発明の高伸度セルロース繊維の単繊維の繊度については、必要特性に応じて任意に設定することができるが、0.1〜4dtexであることが好ましい。単糸繊度については細ければ細いほど柔軟でソフトな織編物が得られるので好ましく、2.2dtex以下、さらには1.1dtex以下であることがより好ましく、0.7dtex以下であることが最も好ましい。
本発明の高伸度セルロース繊維のトータル繊度については、必要特性に応じて任意に設定することができるが、10〜170dtexであることが好ましい。異種繊維との混繊を行う場合にはトータル繊度が55dtex以下であるほうが取り扱いがしやすくなるが、特に限定があるわけではない。衣料用の繊維としてはトータル繊度が170dtex以下であれば織物や編物が厚くなりすぎることがなくて好ましいことがある。
本発明の高伸度セルロース繊維の断面形状については、必要特性に応じて任意に設定することができるが、代表的には実質的に凹凸のない真円形状、楕円形状などが採用できる。また三葉、四葉、五葉、六葉、八葉などの多角形断面や、扁平断面、繊維内部に1個のあるいは複数の中空部を有する中空断面等の各種異形断面形状を採用することもできる。
本発明の高伸度セルロース繊維の形態については特に制約は無く、フィラメント、ステープルの他、不織布形態をとるものであってもよい。柔軟でソフトな風合いを有する繊維構造物を得る観点、紡績工程が不要である観点からは、繊維形態はフィラメントであることを好ましく採用することができる。
また本発明の高伸度セルロース繊維は、その特性を損なわない範囲において、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、糸摩擦低減剤、着色防止剤、着色顔料、染料、制電剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、結晶核剤および蛍光増白剤等として、無機微粒子や有機化合物を必要に応じて含有するものであっても良い。
本発明の高伸度セルロース繊維は、紡糸の際に特定の2種以上のセルロースエステルをポリマーアロイとして紡糸した後、得られた繊維をけん化することによってセルロースへと再生する方法によって製造することができる。2種以上のセルロースエステルをポリマーアロイ状態とした組成物を原料に用いた溶融紡糸において、ベースポリマーのセルロースエステルを炭素数が3以上のアシル基を少なくとも一部に有するセルロースエステル(A)として、このセルロースエステル(A)とは異なるセルロースエステル(B)を添加した組成物とした場合、好ましくは少量添加した組成物とした場合、この組成物を用いて溶融紡糸を行うと、紡糸時の分子配向が抑制されるためか極めて高伸度の繊維が得られる。そのため、このポリマーアロイ繊維をけん化してセルロースに再生した繊維は、従来得られない高伸度かつ低初期引張抵抗度の繊維となる。
以下、本発明の高伸度セルロース繊維の製造方法の例について具体的に説明する。
本発明の高伸度セルロース繊維は、炭素数が3以上のアシル基を少なくとも一部に有するセルロースエステル(A)と、前記セルロースエステル(A)とは組成が異なるセルロースエステル(B)を少なくとも含んでなる組成物を溶融紡糸により繊維化し、得られた繊維をアルカリ化合物を含有する水溶液を用いて加水分解処理することを特徴とする高伸度セルロース繊維の製造方法によって製造が可能である。
主成分であるセルロースエステル(A)は炭素数が3以上のアシル基を少なくとも一部に有するセルロースエステルであることが必要である。具体的に用いうるセルロースエステルとしてはセルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートラウレート、セルロースアセテートフタレートのように炭素数が3以上のアシル基を少なくとも一部に有するセルロースエステルであることが好適に採用できる。なかでもセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートが熱流動性が良好である観点から好適に採用できる。
セルロースエステル(A)の平均置換度は2.4〜2.8であることが好ましい。平均置換度を2.4〜2.8の範囲内とすることでセルロースエステル(A)の熱可塑性が良好となり、溶融紡糸法による安定した繊維化が可能となる。
一方、セルロースエステル(B)は、用いるセルロースエステル(A)とは組成の異なるものであることが必要である。また、セルロースエステル(A)に比べて粘度が高いものであることも好適に採用できる。セルロースエステル(B)の具体例としては、セルロースエステル(A)と同じ種類の置換基を有するがそれらの置換度が異なるセルロースエステル、セルロースエステル(A)とは異なり、炭素数が3以上のアシル基を有さないセルロースエステル、すなわちセルロースアセテートであること等が採用できる。セルロースアセテートは、それ単独ではほとんど熱流動しない物質であり、溶融粘度は極めて高いものである。
セルロースエステル(B)としてセルロースアセテートを採用する場合、その平均置換度が2.3〜2.7のいわゆるセルロースジアセテートであることが好ましい。セルロースアセテートの平均置換度が上記範囲を満たしている場合、セルロースエステル(A)との混和性が良好となり、セルロースエステル(A)中に微分散が可能となるため、溶融紡糸によって繊維化を行っても、製糸操業性の悪化や機械的特性不良が生じない。
セルロースエステル(B)のセルロースエステル(A)に対する割合は1〜10重量%であることが好ましい。添加量が1重量%未満の場合には、得られる繊維の伸度が高くなる効果が不十分となる場合がある。逆に10重量%を超える場合には、溶融紡糸の際に製糸安定性が不良となりやすく、その場合には機械的特性の低下が生じることがある。セルロースエステル(B)のセルロースエステル(A)に対する添加量はより好ましくは2〜9重量%であり、さらに好ましくは3〜8重量%である。
溶融紡糸を行うにあたっては、セルロースエステル(A)およびセルロースエステル(B)が必須の成分であるが、これらの他、必要に応じて各種の添加剤を含有する組成物を用いてもよい。具体的には溶融紡糸の製糸操業性を良好にするために組成物に可塑剤を添加することができる。この際、溶融紡糸に供給する組成物全体に対する可塑剤の含有量は、5〜25重量%であることが好ましい。可塑剤を5重量%以上とすることにより、溶融紡糸の製糸操業性が良好となる。また、可塑剤を25重量%以下とすることにより、得られる繊維はセルロースエステルとしての特性を維持し、また繊維の機械的特性の低下を生じさせず、高次加工通過性が良好となる。可塑剤の含有量は、より好ましくは8〜22重量%であり、更に好ましくは10〜20重量%である。
また組成物中に含まれる可塑剤の具体例としては、例えば、ポリアルキレングリコール系化合物、グリセリン系化合物、カプロラクトン系化合物、フタル酸エステル化合物、脂肪族二塩基酸エステル、ポリエステル系化合物、エポキシ系化合物、リン酸エステル系化合物およびトリメリット酸エステル系化合物などが挙げられるが、これらを単独もしくは併用して使用することができる。なかでも、精練工程など高次加工において水を用いて可塑剤を溶出することができるポリアルキレングリコール系化合物が特に好ましく用いられる。ポリアルキレングリコール系化合物の具体的な例としては、重量平均分子量が好ましくは200〜4000であるポリエチレングリコールを挙げることができる。
組成物には、可塑剤の他、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、糸摩擦低減剤、着色防止剤、着色顔料、染料、制電剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、結晶核剤および蛍光増白剤等として、無機微粒子や有機化合物を必要に応じて含有させてもよい。
本発明の繊維の製造方法の一例としては、セルロースエステル(A)としてセルロースアセテートプロピオネートを用いこれを100重量部とした時、セルロースエステル(B)として1〜10重量部のセルロースジアセテート、可塑剤として1〜40重量部のポリエチレングリコール、着色防止剤として0.1〜2重量部のホスファイト化合物を準備し、これらを2軸エクストルーダーなどの均一溶融混練が可能な装置を用いて、成形温度180〜250℃でペレタイズする方法を採用することができる。
溶融紡糸の方法としては、前述の方法により得られたペレットを、必要に応じて乾燥した後、エクストルーダー等により溶融し計量ポンプで計量後、紡糸ブロックにて加温した紡糸パックに送り、パック内でポリマーを濾過した後、紡糸口金より吐出して繊維糸条とする。紡出された繊維糸条を、冷却装置によって一旦冷却・固化し、第1ゴデットローラーにより引き取り、第2ゴデットローラーを介して、ワインダーにより巻き取って、巻取糸とする。製糸安定性と機械的特性を向上させるために、必要に応じて、紡糸口金下に2〜20cmの加熱筒や保温筒を設置してもよいし、給油装置によって給油してもよいし、交絡装置で交絡を付与してもよい。
溶融紡糸における紡糸温度は、220〜280℃の範囲であることが好ましい。紡糸温度を220℃以上とすることにより、メルトフラクチャー現象が発生せず、均一な繊維を得ることができる。また、紡糸温度を280℃以下とすることにより、紡糸組成物の熱分解を抑制することができるため、得られる繊維の分子量低下による機械的特性不良や着色による品位悪化が発生しない。
紡糸速度は、800〜3000m/分であることが好ましい。紡糸速度が3000m/分以下であれば得られる紡出糸の伸度が30%以上の十分に高い値となる。紡糸速度は低速であればあるほど繊維の伸度が高くなる傾向にあるが、一方で繊維の強度が低下する懸念が生じる。紡糸速度を800〜3000m/分とすることにより、機械的特性のバランスに優れた繊維を得ることができる。紡糸速度は、より好ましくは1000〜2500m/分である。
なお、巻き取られた繊維は、延伸しても良い。延伸は引き取った繊維を一旦巻き取った後、別工程でローラーを用いて延伸しても良いし、引き取った繊維を巻き取ることなく連続して延伸させても良い。延伸する際には、均一な延伸を行うために繊維を熱により軟化させることが好ましく、加熱ローラーや熱板に繊維を接触させるなど、公知の手法によって繊維を熱軟化させる手法が好適に採用できる。この際の加熱温度は、繊維同士を融着させることなく適度に軟化させるため80〜180℃程度の温度が好ましく、100〜160℃の温度がより好ましい。
溶融紡糸によって得られる繊維の機械的特性としては、その伸度が30%以上、例えば30〜100%であることが好ましく、初期引張抵抗度が40cN/dtex以下、例えば10〜40cN/dtexであることが好ましい。これは、その後アルカリ加水分解によってセルロースへと再生した後、本発明の特長である高伸度、低初期引張抵抗度を発現する必要があるためである。
得られた繊維からは、製品耐久性の向上や製品の取扱性を向上させる目的で、可塑剤を溶出してもよい。可塑剤はその全てを溶出してもよいが、一部でも溶出すれば、製品の耐久性や製品の取扱性を高めることができる。可塑剤の溶出は製糸工程と連続して行ってもよく、また一旦巻き取った後、パッケージの形態で抽出してもよく、織編物や不織布とした状態で抽出してもよく、さらには後述するアルカリ化合物を含有する水溶液を用いた加水分解処理と同時に行ってもよい。抽出方法としては、繊維を温水あるいは熱水中に浸漬する方法が工業的な簡便性の点から好ましい態様である。
本発明の製造方法においては、得られた繊維を試料としてアルカリ化合物を含有する水溶液、すなわちアルカリ性の水溶液を用いて加水分解処理を行う。アルカリ化合物を含有する水溶液を用いて本発明のセルロースエステル繊維を処理することにより、側鎖のアシル基を加水分解により脱離させてグルコース単位あたり3個の水酸基を有するセルロースへと再生させることができる。本発明の高伸度セルロース繊維は、炭素数3以上のアシル基を少なくとも一部に有するセルロースエステル(A)および、前記セルロースエステル(A)とは組成が異なるセルロースエステル(B)を含有するものであるが、アルカリ性の水溶液を用いた加水分解処理によっていずれの構成成分に対しても側鎖を加水分解させセルロースへと再生することが可能である。
このアルカリ加水分解処理においては、繊維の表面から順に内側へと加水分解が進行する。すなわち、処理の初期段階では繊維の表層のみがセルロースに再生され、繊維の内部はいまだセルロースエステル(A)とセルロースエステル(B)の混合物のままであり、グルコース単位あたり3個あるはずの水酸基はその大部分がアセチル基、プロピオニル基などによって置換されたままとなっている芯部とセルロースに再生された鞘部からなる芯鞘複合状態となる。本発明においては、アルカリ加水分解処理が繊維全体に進行するまで十分な処理を行って完全にセルロースとすることが好ましいが、本発明の趣旨を損なわない範囲で、加水分解される前のセルロースエステル(A)とセルロースエステル(B)の混合物が繊維の芯成分として残存するものであってもよい。繊維はセルロースを主体としてなるものであることが重要であるため、加水分解されて再生したセルロースが繊維の過半を占めることが好ましい。セルロースが繊維の過半を占めるとは、具体的には繊維の横断面写真において、セルロースからなる鞘部の、繊維横断面全体に対する面積が50%以上であることを意味するが、この方法で判断しにくい場合には、繊維全体を試料として測定した平均置換度が1.2未満であることで判断することができる。なお、繊維の横断面で判断する場合の評価方法は、繊維の断面について光学顕微鏡写真を撮影し、得られた顕微鏡写真を用いて繊維全体の面積および芯部の面積を算出する方法によるものとし、平均置換度で評価する場合の評価方法は後述の方法によるものとする。
本発明の繊維の製造方法において、アルカリ加水分解を十分に行って繊維がすべてセルロースからなるものとした場合には、繊維の吸湿率は10〜15%と高い値を示す。一方、アルカリ加水分解処理を途中で停止し、繊維が芯鞘複合の形態をとったものとする場合、鞘部分のセルロースが繊維の過半を占める時には、繊維の吸湿率は8〜12%程度の値となる。
アルカリ化合物を含有する水溶液を用いて処理する際に用いるアルカリ化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウムなどアルカリ金属の弱酸塩等が挙げられ、単独、もしくは混合して用いても良い。
アルカリ化合物を含有する水溶液の濃度については特に制約はなく、アルカリ化合物の強さ、処理温度に応じて適宜選択することができる。水酸化ナトリウムなどの強アルカリ性水溶液であれば、0.5〜4重量%ows程度の濃度で用い、炭酸ナトリウムなどの弱アルカリ水溶液であれば、3〜10重量%ows程度の濃度で用いれば、セルロースの劣化を抑えつつ側鎖の加水分解処理を行うことができる。また、4級アンモニウム塩などのアルカリ減量促進剤を併用すると、加水分解を短時間で進めることができ、セルロースの劣化が小さくなるので有効である。
本発明におけるアルカリ処理装置は、通常の染色加工に用いられているチーズ染色機、液流式染色機、ウインス、ジッカー、ビーム染色機等があげられるが、これらに限定されるものではない。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。なお、実施例中の各特性値は下記の方法により求めたものである。
A.セルロース脂肪酸混合エステルの平均置換度
80℃の温度で8時間乾燥したセルロースエステル0.9gを秤量し、これにアセトン35mlとジメチルスルホキシド15mlを加え溶解した後、さらにアセトン50mlを加えた。これに、撹拌しながら0.5N−水酸化ナトリウム水溶液30mlを加え、2時間ケン化処理した。次にこれに熱水50mlを加え、フラスコ側面を洗浄した後、フェノールフタレインを指示薬として0.5N−硫酸で滴定した。別に上記の試料と同じ方法で、空試験を行った。滴定が終了した溶液の上澄み液を100倍に希釈し、イオンクロマトグラフを用いて、有機酸の組成を測定した。測定結果とイオンクロマトグラフによる酸組成分析結果から、下記式によりセルロース脂肪酸混合エステルの平均置換度(DS)を計算した。
・TA=(B−A)×F/(1000×W)
・DSace=(162.14×TA)/[{1−(Mwace−(16.00+1.01))×TA}+{1−(Mwacy−(16.00+1.01))×TA}×(Acy/Ace)]
・ DSacy=DSace×(Acy/Ace)
・ DS=DSace+DSacy
上記式中、
TA:全有機酸量(ml)
A:試料滴定量(ml)
B:空試験滴定量(ml)
F:硫酸の力価
W:試料重量(g)
DSace:アセチル基の平均置換度
DSacy:アセチル基以外のアシル基の平均置換度
Mwace:酢酸の分子量
Mwacy:酢酸以外の有機酸の分子量
Acy/Ace:酢酸(Ace)と他の有機酸(Acy)とのモル比
162.14:セルロースの繰り返し単位の分子量
16.00:酸素の原子量
1.01:水素の原子量。
B.繊維の機械的特性
温度20℃、相対湿度65%の環境下において、島津製作所製オートグラフAG−50NISMS形を用いて、試料長20cm、引張速度20cm/minの条件で引張試験を行って、強度[cN/dtex]、伸度[%]、初期引張抵抗度[cN/dtex]を求めた。
C.耐摩耗性
東洋精機(株)社製のラビングテスターで糸が切れる回数を測定し耐摩耗性を評価した。測定条件は100ストローク回/分、ストローク長50mm、綾角60度にて、測定加重を0.2cN/dtexとして実施した。5回試験を実施し、その平均値が500回以上であるものを◎、300回以上500回未満であるものを○、100回以上300回未満であるものを△、100回未満のものを×とし、◎、○および△を合格と判定した。
D.耐溶剤性
測定する繊維をアセトン中に漬浸し、24時間常温で攪拌した。繊維の形態および重量が変化しないものを○、形態あるいは重量の変化がやや見られるものを△、溶解してしまうものを×とし、○および△を合格と判定した。
E.ソフト性
測定する試料のトータル繊度が100dtex未満の場合には複数本を合糸することによって、トータル繊度が100〜200dtexの範囲に入るように調整し、20Gの筒編み機を用いて筒編みを作成した。得られた筒編みを98℃×20分の熱水処理を行った後、風乾し、官能評価によってソフト性を評価した。ブランクとして48dtex−36fのセルロース繊維(比較例1で作成したもの)を用意し、この繊維で作成した筒編みと比べて著しくソフトなものを◎、明確にソフトなものを○、ややソフトなものを△、ソフト性が劣るかブランクと違いが分からないものを×とし、◎、○および△を合格とした。
F.耐熱溶融性
測定する試料のトータル繊度が100dtex未満の場合には複数本を合糸することによって、トータル繊度が100〜200dtexの範囲に入るように調整し、20Gの筒編み機を用いて筒編みを作成した。得られた筒編みを98℃×20分の熱水処理を行った後、風乾した。得られた筒編みの上に260℃に設定したアイロンを重ね、1分間放置した。その後筒編みの表面状態を観察し、溶融やテカリが生じていないものを○、溶融は認められないが、ややテカリが認められるものを△、熱溶融が生じて繊維が変形してしまったものを×とした。
G.繊維の横断面の観察
繊維をエポキシ樹脂中に包埋したブロックを作成し、このブロックをミクロトームを用いて繊維軸方向に垂直となるよう薄切片とした。得られた薄切片をスライドガラスおよびカバーガラスに挟み、光学顕微鏡を用いて200倍にて観察、顕微鏡写真を撮影し、得られた写真を用いて繊維全体の面積、および芯部の面積を算出した。なお、鞘部の面積は繊維全体の面積から芯部の面積を減じた値となる。
(合成例1)
セルロース(コットンリンター)100重量部に、酢酸240重量部とプロピオン酸67重量部を加え、50℃の温度条件で30分間混合した。得られた混合物を室温(20℃)まで冷却した後、氷浴中で冷却した無水酢酸172重量部と無水プロピオン酸168重量部をエステル化剤として、硫酸4重量部をエステル化触媒として加えて、150分間撹拌を行い、エステル化反応を行った。エステル化反応において、40℃の温度を超えるときは、水浴で冷却した。反応後、反応停止剤として酢酸100重量部と水33重量部の混合溶液を20分間かけて添加して、過剰の無水物を加水分解した。その後、酢酸333重量部と水100重量部を加えて、80℃の温度で1時間加熱撹拌した。反応終了後、炭酸ナトリウム6重量部を含む水溶液を加えて、析出したセルロースアセテートプロピオネートを濾別し、続いて水で洗浄した後、60℃の温度で4時間乾燥した。得られたセルロースアセテートプロピオネート(CAP)のアセチル基およびプロピオニル基の平均置換度は、各々1.9と0.7であり、重量平均分子量は17.2万であった。
(実施例1、2)
セルロースエステル(A)として合成例1で得られたセルロースアセテートプロピオネート(CAP1)を76重量%、セルロースエステル(B)としてセルロースジアセテート(ダイセル化学工業(株)L−40)を4重量%、可塑剤としてポリエチレングリコール(三洋化成(株)PEG600)を19.9重量%、酸化防止剤としてビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトを0.1重量%用意し、これらを二軸エクストルーダーを用いて均一に混練した。CAP1に対するセルロースジアセテートの重量比は吐出したストランドは水冷した後、ペレタイザーにて5mm長程度のペレット状にした。
この溶融紡糸用組成物のペレットを80℃の温度で12時間真空乾燥した後(乾燥後の水分率450ppm)、二軸エクストルーダーに供給し溶融させ、紡糸温度260℃で紡糸口金(吐出孔直径0.25mm、孔長0.5mm、孔数36H、丸孔)から吐出量15g/分で吐出させ紡出糸条を得た。この紡出糸条を、風温20℃、風速0.5m/秒の冷却風によって冷却し、給油装置で油剤を付与して収束させ、第1ゴデットローラーで引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して実施例1では紡糸速度1500m/分で、実施例2では紡糸速度2000m/分で巻き取った。得られた繊維は実施例1では100dtex−36f、実施例2では75dtex−36fの丸断面のマルチフィラメントとなった。繊維の物性は表1に示すとおりである。
次に、この繊維を綛取りし、得られた綛を用いて70℃の温度で15分間精練処理し、可塑剤であるPEG600を全量溶出させた。その後、水酸化ナトリウムを2重量%含有する水溶液(2%ows)を準備し、浴比が1:100、処理温度98℃、処理時間90分の条件でアルカリ加水分解処理を行った。処理後の繊維はすべてアセチル基およびプロピオニル基が脱離して完全にセルロースとなっており、実施例1では48dtex−36fに、実施例2では36dtex−36fとなった。
繊維の特性は表1に示すように、実施例1、2で伸度がそれぞれ43%、40%といずれも高い値を有しており、一方、初期引張抵抗度は25cN/dtex、32cN/dtexとそれぞれ低い値であった。標準状態における吸湿率はいずれも11%と良好な吸湿性を示した。
得られた繊維を試料として東洋精機(株)製ラビングテスターを用いて耐摩耗性を評価したところ、実施例1では530回、実施例2では400回となり、いずれも十分な耐摩耗性を有していた。また、耐溶剤性を評価したところ完全に形態および重量を維持しており、十分な耐溶剤性を有していることが分かった。
得られた繊維を3本用意してこれを合糸し、合糸した繊維を20Gの筒編み機へ供給して筒編みを作成した。得られた筒編みを98℃×20分の熱水処理した後、風乾させてソフト性についての官能評価を行ったところ、実施例1,2ともにブランクに比べて著しくソフト性が感じられるものであった。耐熱溶融性についても、全く繊維の変形が認められず良好であった。
(実施例3)
合成例1で得られたCAP1を78重量%とし、セルロースジアセテートを2重量%とする他は、実施例1と同様にしてペレットを製造し、Y字型断面孔を36ホール有する口金を用いることと、吐出量を30g/minとする他は実施例2と同様にして紡糸速度2000m/minにて溶融紡糸を行い、150dtex−36fのマルチフィラメントを得た。
実施例1と同様にして精練、アルカリ処理を行ったところ、処理後の繊維はすべてアセチル基およびプロピオニル基が脱離して完全にセルロースとなっており、72dtex−36fの、三葉断面を有するセルロース繊維となった。
繊維の特性は表1に示す通りであり、溶融紡糸組成物においてセルロースアセテートの添加量がやや少ないため、セルロース繊維の伸度は実施例1に比べるとやや低い値の34%となった。初期引張抵抗度は実施例1に比べるとやや高い値の38cN/dtexとなった。標準状態における吸湿率は11%と実施例1と同じであった。
耐摩耗性試験では実施例1にはやや劣るものの、合格の範囲であった。耐溶剤性試験では完全に形態および重量を維持しており、十分な耐溶剤性を有していることが分かった。ソフト性についても実施例1にはやや劣るものの、合格の範囲であった。耐熱溶融性については、繊維の変形が全く認められず良好であった。
(実施例4)
実施例1で溶融紡糸して得た100dtex−36fの繊維を、アルカリ浴を用いた加水分解の条件を炭酸ナトリウムを6重量%含有する水溶液(6%ows)とし、98℃×60分に変更する以外は、実施例1と同様に処理をおこなった。処理後の繊維は芯鞘構造となっており、完全にセルロース化された80重量%の鞘成分と20重量%のセルロースアセテートブチレートとセルロースジアセテートのポリマーアロイ成分からなる芯部からなるものであった。
繊維の特性は表1に示した通りであり、伸度が39%と十分高い値であった。初期引張弾性率は34cN/dtexであった。標準状態における吸湿率は芯部にセルロースエステルが残存しているため、実施例1に比較するとやや低く、8.5%であった。
耐摩耗性試験では優れた性能を示したが、耐溶剤試験においては外観には変化が無いものの重量減少が認められ、実施例1と比較するとやや低い耐溶剤性能であった。ソフト性については明確に感じられるものであった。耐熱溶融性については、やや繊維が変形してテカリが感じられたものの、繊維の溶融は生じておらず合格範囲であった。
(実施例5)
セルロースエステル(A)としてイーストマンケミカル社製セルロースアセテートプロピオネート(CAP482−20、置換度2.5(アセチル基平均置換度0.1、プロピオニル基平均置換度2.4)、重量平均分子量18.5万)を73重量%とし、セルロースエステル(B)として合成例1で得られたCAP1を7重量%とする以外は、実施例1と同様にして溶融紡糸を行い、100dtex−36fのマルチフィラメントを得た。
実施例1と同様にして精練し、炭酸ナトリウムを10重量%含有する水溶液(10%ows)を用いて実施例4と同様にアルカリ処理を行ったところ、処理後の繊維はすべてアセチル基およびプロピオニル基が脱離して完全にセルロースとなっており、48dtex−36fのセルロース繊維となった。
繊維の特性は表1に記載の通りであり、セルロース繊維の伸度は39%、初期引張抵抗度は34cN/dtexとなった。標準状態における吸湿率は10%と良好な値であった。
耐摩耗性試験を行ったところ良好な性能を有していた。耐溶剤性試験では完全に形態および重量を維持しており、十分な耐溶剤性を有していることが分かった。ソフト性については明確に感じられるものであった。耐熱溶融性についても良好であった。
(実施例6)
セルロースエステル(A)としてイーストマンケミカル社製セルロースアセテートブチレート(CAB381−20(アセチル基平均置換度1.0、ブチリル基平均置換度1.7)を用い、表1に記載の配合量とする以外は実施例1と同様にして溶融紡糸を行い、110dtex−36fのマルチフィラメントを得た。
実施例1と同様にして精練し、アルカリ処理を行ったところ、処理後の繊維はすべてアセチル基およびブチリル基が脱離して完全にセルロースとなっており、48dtex−36fのセルロース繊維となった。
繊維の特性は表1に記載の通りであり、セルロース繊維の伸度は50%、初期引張抵抗度は20cN/dtexとなった。標準状態における吸湿率は11%と良好な値であった。
耐摩耗性試験を行ったところ良好な性能を有していた。耐溶剤性試験では完全に形態および重量を維持しており、十分な耐溶剤性を有していることが分かった。ソフト性については著しく高いソフト性を感じられるものであった。耐熱溶融性も良好であった。
Figure 0005177039
(比較例1、2)
組成物にセルロースエステル(B)を添加せず、セルロースエステル(A)のみとしたこと以外は実施例1と同様に、実施例1と同じCAP82重量%、PEG17.9重量%、酸化防止剤0.1重量%からなる組成物を用いて、溶融紡糸を行い、100T−36fのマルチフィラメントを得た。
比較例1では実施例1と同様にして、精練とアルカリ加水分解処理を行った。比較例2ではアルカリ加水分解処理を行わず精練のみ実施した。
比較例1では処理後の繊維はすべてアセチル基およびプロピオニル基が脱離して完全にセルロースとなっており、48dtex−36fのセルロース繊維となった。標準状態における吸湿率は11%と実施例1と変わりなかったが、伸度が15%と極めて低いものとなっており、耐摩耗性試験では開始直後からフィブリル化が認められ切断までの平均回数は58回と劣っていた。ポリマーとしてはセルロースとなっているため、耐溶剤性は良好であった。ソフト性の評価ではこの比較例1で得られた繊維を3本合糸して作成した筒編みをブランクとして用いた評価を実施したため、ブランクと同等のソフト性であった。耐熱溶融性についてはセルロースとなっているので良好な特性を示した。
比較例2ではアセチル基、プロピオニル基がそのまま残存する繊維であり、品種は80dtex−36fであった。繊維の伸度は22%、初期引張弾性率は40cN/dtexであった。耐摩耗性試験を行ったところ切断までの回数は220回と実施例1と比較すると劣っており、耐溶剤性試験を実施したところアセトンに繊維が溶解してしまい繊維状の外観が保てておらず不合格であった。耐熱溶融性については繊維の表面が溶融してしまっており、耐熱性が不良であった。
(比較例3)
組成物の配合を表2記載の通りとし、吐出量を5g/分に、紡糸速度を500m/分に変更する以外は実施例1と同様にして繊維を得た。
実施例1と同様にして精練し、アルカリ処理を行ったところ、処理後の繊維はすべてアセチル基およびプロピオニル基が脱離して完全にセルロースとなっており、42dtex−36fのセルロース繊維となった。
繊維の特性は表2に示す通りであるが、耐摩耗性試験を実施しようとしたところ伸度が65%と高すぎるためか試験機のストロークで繊維が伸長してしまい試験時にたるみが発生してすぐに切断してしまうものであった。耐溶剤性試験では完全に形態および重量を維持しており、十分な耐溶剤性を有していることが分かった。ソフト性については繊維を3本合糸して筒編みをこころみたが、筒編み機に供給する際の糸道において繊維が不均一に伸びてしまうことによって編みたて不良となり、毛羽の発生や伝線の発生があって逆に粗硬な風合いのものとなった。耐熱溶融性はセルロースとなっているため良好であった。
Figure 0005177039
本発明の高伸度セルロース繊維は、セルロースを主体とする繊維であるため、高い吸湿性を有するだけでなく、通常の溶剤に溶解することがない高い耐溶剤性、アイロン等の熱圧によって溶融することがない高い耐熱溶融性を備えており、衣料用繊維として好適に用いることができる。さらに、30〜60%という高い伸度、15〜40cN/dtexという低い初期引張抵抗度を有するため、各種の糸加工において幅広い加工条件を設定することができるとともに、柔軟でソフトな風合いの織編物を製造することができることから、快適性のみならず風合いも良好な衣料用繊維として好適に用いることができる。

Claims (3)

  1. グルコース単位あたり3個の水酸基を有するセルロースを主体としてなる繊維であって、伸度が30〜60%、初期引張抵抗度が15〜40cN/dtex、20℃×65%RHにおける吸湿率が8〜15%であることを特徴とする高伸度セルロース繊維。
  2. 炭素数が3以上のアシル基を少なくとも一部に有するセルロースエステル(A)と、前記セルロースエステル(A)とは組成が異なるセルロースエステル(B)を少なくとも含んでなる組成物を溶融紡糸により繊維化し、得られた繊維をアルカリ化合物を含有する水溶液を用いて加水分解処理することを特徴とする請求項1記載の高伸度セルロース繊維の製造方法。
  3. 炭素数が3以上のアシル基を少なくとも一部に有するセルロースエステル(A)がセルロースアセテートプロピオネートあるいはセルロースアセテートブチレートであることを特徴とする請求項2に記載の高伸度セルロース繊維の製造方法。
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