JP6431736B2 - セルロースおよび/またはセルロースエステルからなる難燃性繊維 - Google Patents

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Description

本発明は、セルロースおよび/またはセルロースエステルからなる難燃性繊維に関するものである。さらに詳しくは、優れた柔軟性、吸放湿性、発色性などの風合いを有し、さらに難燃性も併せ持つため、人工毛髪や織編物などの繊維構造物として好適に採用できる、セルロースおよび/またはセルロースエステルからなる繊維に関する。
セルロース系材料は、地球上で最も大量に生産されるバイオマスとして、また自然環境下にて生分解可能な材料として、昨今、非常に大きな注目を集めつつある。また、セルロース系材料は屈折率が低いため、それを繊維にした場合には鮮明発色性に優れるという長所を有している。さらには、セルロース系材料は親水性が高いため、それを繊維にした場合には吸放湿性に優れるという長所も併せ持っている。
ビスコースレーヨンやキュプラなどのセルロース繊維や、アセテートやトリアセテートなどのセルロースエステル繊維は、鮮明発色性や吸放湿性などの優れた特徴を活かして衣料用途を中心に幅広く利用されている。一般に、セルロース繊維は、セルロースを例えば銅アンモニア溶液などの溶剤に溶解させた後、凝固浴と呼ばれる溶液中で溶剤を除去させながら紡糸を行う湿式紡糸法により製造される。また、セルロースエステル繊維は、セルロースアセテートのようなセルロースエステルを例えばアセトンや、塩化メチレン/アルコール混合液などの有機溶剤に溶解させた後、この溶剤を蒸発させながら紡糸を行う乾式紡糸法により製造される。これらの製法を用いた場合、繊維表面または繊維内部から溶剤を除去する必要があるために、単糸繊度の大きなセルロース繊維およびセルロースエステル繊維を得ることが困難であった。また、上記湿式紡糸法や乾式紡糸法では異型断面糸を得ることはできない。
一方、ポリエステル、ポリアミド、アクリル、ポリオレフィン等の合成繊維素材からなる繊維は溶融紡糸可能なため、異型断面糸を得ることができ、これによりボリューム感、触感、光沢感やくし通り性等を改善することが可能であり、単糸繊度の大きな繊維を得ることもできるため、かつらやヘアーウィッグなどの人工毛髪をはじめとし、織編物などの衣料用資材、カーテンやレースなどのインテリア資材として、幅広く利用されている。しかしながら上記用途において、特にかつらやヘアーウィッグなどの人工毛髪として用いる場合には、柔軟性、吸放湿性、発色性などの風合いを兼ね備えている必要がある。一般的な繊維特性として、弾性率が高いと柔軟性に欠ける、親水性が低いと吸放湿性に欠ける、屈折率が高いと発色性に欠けるという欠点を生じる。ポリエステル、ポリアミド、アクリル、ポリオレフィン等の合成繊維素材は、上記いずれかの欠点を有しているため、例えば人工毛髪として人毛と一緒に用いた場合には、人毛との風合いの違いにより頭髪全体として違和感が生じるという問題があった。
このような状況のなか、上記課題を解決する手段として、溶融紡糸が可能となり異型断面糸を得ることができ、単糸繊度の大きな繊維を得ることもできる、置換度が2.5〜3.0であるセルロースエステルを主体とした繊維が提案されている(特許文献1)。この手段では、単糸繊度が大きく、柔軟性、吸放湿性、発色性などの風合いを兼ね備えたセルロースエステル繊維を得ることができた。しかしながら、かつらやヘアーウィッグなどの人工毛髪として用いる場合には、さらに難燃性が求められるようになってきている。しかしながら、例えばセルロースエステルの一例であるセルロースアセテートプロピオネートでは、「JIS K72017 限界酸素指数」で規定されている難燃性を表す指標であるLOI値が24.7となっており、代表的なポリエステルであるポリエチレンテレフタレート(LOI値:20.8)と大差なく、難燃性には課題を有している。
特開2009−228159号公報
本発明の課題は、上記従来技術の問題点を解決し、人工毛髪や織編物などの繊維構造物にした際に、優れた柔軟性、吸放湿性、発色性などの風合いを有するうえに、難燃性を有したセルロースおよび/またはセルロースエステルからなる難燃性繊維を提供することにある。
上記の本発明の課題は、臭素化合物を臭素原子換算で5〜15重量%含むセルロースおよび/またはセルロースエステルからなる難燃性繊維によって解決することができる。
また、アンチモン化合物をアンチモン原子換算で1.0〜3.0重量%含むものが好適に採用できる。
さらには、臭素化合物が臭素化エポキシ系オリゴマー難燃剤または臭素化ポリカーボネート系難燃剤であることが好適に採用できる。
また、アンチモン化合物が三酸化アンチモンまたはアンチモン酸ナトリウムであることが好適に採用できる。
さらには、繊維がモノフィラメントであることが好適に採用できる。
また、上記繊維を少なくとも一部に用いてなることを特徴とする人工毛髪が好適に採用できる。
上記セルロースおよび/またはセルロースエステルからなる難燃性繊維は、熱可塑性セルロースエステルと臭素系化合物を混練したのち溶融紡糸し、その後ケン化処理する製造方法により得ることが好適に採用できる。
本発明によれば、優れた柔軟性、吸放湿性、発色性などの風合いを有し、かつ難燃性を有するセルロースおよび/またはセルロースエステルからなる難燃性繊維を提供することができ、特に人工毛髪として好適に用いることができる。このセルロースおよび/またはセルロースエステルからなる難燃性繊維は、衣料用織編物や、襟や袖の芯などのような衣料用副資材用に、さらにはカーテンやレースなどのような生活資材用に好適に採用できる。
以下、本発明の優れた柔軟性、吸放湿性、発色性などの風合いを有し、かつ難燃性を有するセルロースおよび/またはセルロースエステルからなる難燃性繊維について詳細に説明する。
本発明に用いられる臭素化合物としては、一般に難燃剤として用いられる臭素含有難燃剤が好ましく用いられる。なかでも溶融混練や溶融紡糸時に分解や飛散を伴わない耐熱性の高いものが好ましく、特に溶融紡糸時のブリードアウト抑制の観点から高分子量タイプのものが好ましい。
より具体的には、臭素化エポキシ系オリゴマー難燃剤(SR−Tシリーズ:阪本薬品工業社製)や臭素化ポリカーボネート系難燃剤(臭素化ポリカーボネートオリゴマー:帝人化成社製)が好適に用いられ、これらは1種類で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明における臭素化合物の含有量は臭素原子換算で5〜15重量%であることが必須である。9重量%以上であると、高い難燃性が得られるので好ましい。臭素化合物の含有量が臭素原子換算で5重量%未満では難燃効果が得られにくい傾向があり、15重量%を超えると製糸性が悪くなり、借りに繊維が得られたとしても得られる繊維の機械的特性、耐熱性が損なわれる傾向がある。
本発明においては、臭素化合物が含有することにより難燃性は発現されるものの、アンチモン化合物も含有すると、難燃効果が著しく向上し、十分な難燃性を得ることができる。
本発明におけるアンチモン化合物としては、一般に難燃助剤として用いられるアンチモン化合物が好ましく用いられ、具体的には三酸化アンチモンやアンチモン酸ナトリウムが挙げられる。またこの際、平均粒径は0.02〜6μmであることが製糸性の面から好ましい。なおこれらは1種で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
本発明におけるアンチモン化合物の含有量はアンチモン原子換算で1.0〜3.0重量%であることが好ましく、1.5重量%以上であるとより難燃性が高まり好ましい。アンチモン化合物の含有量が1.0〜3.0重量%であると、より難燃性が高い繊維が得られる
本発明のセルロースおよび/またはセルロースエステルからなる繊維は、柔軟性、吸放湿性、発色性などの風合いの観点からは、少なくとも一部がアシル基炭素数が3〜18のセルロースエステルからなることが好ましく採用できる。少なくとも一部のアシル基炭素数を3〜18とすることにより、セルロースエステルを含む繊維の柔軟性が高く、風合いに優れた人工毛髪や織編物などの繊維構造物を得ることができるため好ましい。また、セルロースエステルは屈折率が低く、それを繊維にした場合には発色性に優れるため好適に用いることができる。
少なくとも一部のアシル基炭素数が3〜18であるセルロースエステルの具体例としては、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテートブチレートおよびセルロースブチレートなどが挙げられるが、これらに限定されない。少なくとも一部のアシル基炭素数が3〜18であるセルロースエステルとして、セルロースにアシル基炭素数が2であるアセチル基とアシル基炭素数が3であるプロピオニル基が結合したセルロースアセテートプロピオネートからなる繊維、あるいはセルロースにアシル基炭素数が2であるアセチル基とアシル基炭素数が4であるブチリル基が結合したセルロースアセテートブチレートからなる繊維は、適度な柔軟性および吸放湿性を有する繊維が得られるため、本発明では特に好ましく用いられる。
本発明のセルロースおよび/またはセルロースエステルからなる繊維は、全置換度が0〜3.0であることを表す。セルロースエステルの全置換度とは、セルロースのグルコース単位に存在する3つの水酸基へ化学的に結合した置換基の数であり、例えばセルロースエステルとして、セルロースアセテートプロピオネートおよび/またはセルロースアセテートブチレートを用いる場合、(アセチル置換度+アシル置換度)で表される。アシル置換度とは、アシル基炭素数が2であるアセチル基以外のアシル基の置換度の合計である。
全置換度が2.5〜3.0であるセルロースエステルであれば、適度な柔軟性および吸湿性を有する繊維が得られるため好ましい。全置換度が0〜1.0である場合は、柔軟性は若干失われるが吸湿性が向上し、燃焼時のノンドリップ性に優れるため好ましい。全置換度が1.0〜2.5である場合は、柔軟性とノンドリップ難燃性を兼ね備えており、好適に用いられる。
このような置換度のセルロースおよび/またはセルロースエステルからなる繊維は、詳細は後述するが、原料としてセルロースエステルを主とする組成物を溶融紡糸し、必要に応じてケン化処理を実施することにより適宜得られる。
本発明のセルロースおよび/またはセルロースエステルからなる繊維を得るために原料として用いるセルロースエステルは、可塑剤を含有していても良く、可塑剤としては多価アルコール系化合物が好ましい。具体的には、セルロースエステルとの相溶性が良好であり、また溶融紡糸可能な熱可塑化効果が顕著に現れるポリアルキレングリコール、グリセリン系化合物、カプロラクトン系化合物などであり、なかでもポリアルキレングリコールが好ましい。ポリアルキレングリコールの具体的な例としては、重量平均分子量が200〜4000であるポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどが挙げられるがこれらに限定されず、これらを単独もしくは併用して使用することができる。
また、可塑剤の配合量は、得られる繊維がセルロースエステルとしての特性を維持するという観点から、セルロースエステル組成物に対して5〜25重量%であることが好ましい。可塑剤の配合量が5重量%以上であれば、セルロースエステル組成物が溶融紡糸可能な熱可塑化効果が得られるため好ましい。可塑剤の配合量は、8重量%以上であることがより好ましく、10重量%以上であることが更に好ましい。一方、可塑剤の配合量が25重量%以下であれば繊維強度が高く、十分な耐久性を有する繊維構造物を得ることができるため好ましい。可塑剤の配合量は22重量%以下であることがより好ましく、20重量%以下であることが更に好ましい。
本発明のセルロースおよび/またはセルロースエステルからなる繊維を得るために原料として用いるセルロースエステルは、リン系着色防止剤を含有していることが好ましい。リン系着色防止剤を含有している場合、混練や溶融紡糸時の熱分解によるセルロースエステル組成物の着色を防止する効果が非常に顕著であり、得られる繊維の色調が良好になるためである。
リン系着色防止剤の具体例としては、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−t−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−t−ブチルフェニル−4−メチル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスホナイト、ビス(2.6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2−t―ブチル−4−クミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(4−t−ブチル−2−クミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2.6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2.4−ジ−t−ブチル−6−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトであり、特にペンタエリスリトール系が好ましい。
リン系着色防止剤の配合量は、セルロースエステル組成物に対して0.005〜0.5重量%であることが好ましい。リン系着色防止剤の配合量が0.005重量%以上であれば、熱分解による着色を防止することができるため好ましい。リン系着色防止剤の配合量は、より好ましくは0.01重量%以上であり、更に好ましくは0.05重量%以上である。一方、リン系着色防止剤の配合量が0.5重量%以下であれば、繊維特性への影響がなく、風合いに優れた繊維構造物が得られるため好ましい。リン系着色防止剤の配合量は、より好ましくは0.3重量%以下であり、更に好ましくは0.2重量%以下である。
本発明のセルロースおよび/またはセルロースエステルからなる繊維は、上述の添加剤のほか、各種の添加剤、例えば、艶消し剤、消臭剤、消泡剤、整色剤、糸摩擦低減剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、結晶核剤、静電剤、酸化防止剤および滑剤等の添加剤についても、これらを単独もしくは併用して含有していても構わない。
本発明のセルロースおよび/またはセルロースエステルからなる繊維の単糸繊度は、10〜1500dtexであることが好ましい。10dtex以上であれば、人毛に近い外観や手触りを有する人工毛髪として用いることができるため好ましい。30dtex以上であることがより好ましく、50dtex以上であることが更に好ましい。一方、1500dtex以下であれば、織編物などの繊維構造物としたときに十分な柔軟性が得られるため好ましい。1000dtex以下であることがより好ましく、500dtex以下であることが更に好ましい。
本発明のセルロースおよび/またはセルロースエステルからなる繊維の繊維特性は、特に限定されるものではないが、繊維構造物を作製するための工程通過性の観点から、強度が0.5〜2.0cN/dtex、伸度が8〜30%であることが好ましい。強度が0.5cN/dtex以上であれば、繊維構造物の強力が不足することがなく、優れた耐久性を有するため好ましい。良好な強度特性の観点から、強度は高ければ高いほど好ましいが、具体的には0.7cN/dtex以上であることがより好ましく、0.9cN/dtex以上であることが更に好ましい。また、伸度が8%以上であれば、繊維構造物の耐摩耗性が良好となり、毛羽の発生が少なくなるため好ましい。伸度は10%以上であることがより好ましく、15%以上であることが更に好ましい。一方、伸度が30%以下であれば、繊維構造物の寸法安定性が良好となるため好ましい。伸度は28%以下であることがより好ましく、25%以下であることが更に好ましい。
本発明の難燃性繊維は、JIS L1013:1999の8.10に準じて測定した初期引張抵抗度が20〜50cN/dtexであることが好ましい。初期引張抵抗度が20cN/dtex以上であれば、人毛の感触に極めて近いハリやコシを有する人工毛髪として用いることができるため好ましい。初期引張抵抗度は23cN/dtex以上であることがより好ましく、25cN/dtex以上であることが更に好ましい。一方、初期引張抵抗度が50cN/dtex以下であれば、織編物などの繊維構造物としたときに十分な柔軟性が得られるため好ましい。初期引張抵抗度は47cN/dtex以下であることがより好ましく、45cN/dtex以下であることが更に好ましい。
本発明のセルロースおよび/またはセルロースエステルからなる繊維は、繊維の断面形状に関して特に制限がなく、真円状の円形断面であっても良いし、また、多葉形、扁平形、楕円形、W字形、S字形、X字形、H字形、C字形、三つ葉型などの異形断面糸でもよい。
本発明のセルロースおよび/またはセルロースエステルからなる繊維は、一般の繊維と同様に延伸などの加工が可能である。また、製織や製編についても、一般の繊維と同等に扱うことができる。
次に、本発明のセルロースおよび/またはセルロースエステルからなる難燃性繊維の製造方法について説明する。
本発明のセルロースおよび/またはセルロースエステルからなる難燃性繊維は、原料として熱可塑性セルロースエステルを主とする組成物と臭素化合物を混練したのち溶融紡糸し、その後必要に応じてケン化処理の条件を最適化して実施することにより得られる。
原料として用いるセルロースエステルを主とする組成物は、少なくとも一部のアシル基炭素数が3〜18であるセルロースエステル60重量%〜99重量%を少なくとも含むセルロースエステル組成物が好適に用いられる。
また、セルロースエステル組成物は上述した成分、すなわち臭素化合物やアンチモン化合物、可塑剤、リン系着色防止剤を、例えば、2軸混練機などを用いて、溶融紡糸を行う前に混練しても構わないし、溶融紡糸を行う際にスタティックミキサーなどを用いて混合しても構わない。
本発明では、セルロースエステルを主とする組成物を溶融紡糸して、セルロースエステル繊維を得ることができる。湿式紡糸や乾式紡糸と異なり、溶融紡糸は溶剤を用いないため、繊維表面または繊維内部から溶剤を除去する必要がなく、単糸繊度の大きなセルロースエステル繊維を得ることができるため好ましく用いられる。また、溶融紡糸を行うことにより、セルロースエステルを主とする組成物の溶融状態から冷却固化に至るまでに十分に発達した繊維構造を形成させることが可能となるため好ましい。溶融紡糸の方法としては、例えば、エクストルーダーを用いた押出などを好適な手段として採用することができるが、これに限定されない。
本発明では、溶融紡糸を行う前にセルロースエステルを主とする組成物を乾燥させ、組成物の含水分率を0.3重量%以下としておくことが好ましい。含水分率が0.3重量%以下であれば、溶融紡糸時に水分により発泡することがなく、安定して紡糸を行うことが可能となる。含水分率は、より好ましくは0.2重量%以下であり、更に好ましくは0.1重量%以下であり、最も好ましくは0.08重量%以下である。
溶融紡糸における紡糸温度は、220〜280℃の範囲であることが好ましい。紡糸温度が220℃以上であれば、紡糸口金より吐出された繊維糸条の伸長粘度が十分に低下するため、メルトフラクチャー(紡糸口金孔通過時においてポリマーの剪断応力が高いと流線乱れが発生し、紡糸口金より吐出された繊維糸条の形状が不規則になる現象)起因の短ピッチの周期斑が現れず、断面形状が均一な繊維を得ることができるため好ましい。紡糸温度は230℃以上であることがより好ましく、240℃以上であることが更に好ましい。一方、紡糸温度が280℃以下であれば、セルロースエステルを主とする組成物の熱分解を抑制することができ、分子量低下による機械的特性不良や着色による品位悪化が発生しないため好ましい。紡糸温度は275℃以下であることがより好ましく、270℃以下であることが更に好ましい。
紡糸口金より吐出された繊維糸条は、冷却浴に導かれて急冷されてもよい。冷却浴の温度は10〜90℃の範囲であることが好ましい。冷却浴の温度が10℃以上であれば、冷却浴中で繊維糸条が蛇行することなく、繊維断面形状および繊維直径が均一であるモノフィラメントを得ることができるため好ましい。冷却浴の温度は15℃以上であることがより好ましく、20℃以上であることが更に好ましい。一方、冷却浴の温度が90℃以下であれば、繊維糸条の真円性が損なわれることなく、繊維断面形状および繊維直径が均一であるモノフィラメントを得ることができるため好ましい。冷却浴の温度は80℃以下であることがより好ましく、70℃以下であることが更に好ましい。また、冷却時間は、吐出量や口金孔数などに応じて適宜調整することができる。
冷却浴の冷媒としては、繊維糸条の表面から容易に除去でき、繊維糸条に対して物理的変化や化学的変化を与えない物質であり、上記の冷却浴の温度範囲において液体であれば特に制限なく用いることができる。具体的には、水、パラフィン、エチレングリコール、グリセリン、アミルアルコールおよびキシレンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
紡糸された繊維の引取方法は、回転するローラーを用いて引き取る方法が挙げられるが、これに限定されない。回転するローラーを用いて引き取る場合の紡糸速度は1500m/分以下であることが好ましい。紡糸速度を1500m/分以下とすることにより、繊維を十分に冷却できるため好ましい。紡糸速度は、より好ましくは1000m/分以下であり、更に好ましくは750m/分以下である。
引き取られた繊維は、所望の繊維特性を得るために延伸されてもよい。延伸を行う場合には、一旦引き取った繊維を延伸する2工程法、もしくは引き取ることなく連続して延伸する直接紡糸延伸法のいずれの方法によってもよい。
延伸を行う場合には、1段延伸法または2段以上の多段延伸法のいずれの方法によってもよい。延伸における加熱手法としては、走行糸条を直接的あるいは間接的に加熱させうる装置であれば、特に限定されない。具体的な加熱手法としては、加熱ローラー、熱ピン、熱板、温水・熱水などの液体浴、熱空・スチームなどの気体浴、レーザーなどが挙げられるがこれらに限定されず、これらを単独もしくは併用して使用することができる。加熱温度の制御、走行糸条への均一な加熱、装置が複雑にならない観点から、加熱ローラーとの接触、熱ピンとの接触、熱板との接触、液体浴への浸漬、気体浴中の通過を加熱手法として用いることが好ましい。
延伸を行う場合の延伸倍率は、1.02〜4.0倍であることが好ましい。延伸倍率が1.02倍以上であれば、延伸により繊維強伸度などの繊維特性が向上した繊維が得られるため好ましい。延伸倍率は1.05倍以上であることがより好ましく、1.08倍以上であることが更に好ましい。一方、延伸倍率が4.0倍以下であれば、延伸時の糸切れが抑制され、安定した延伸により連続した繊維が得られるため好ましい。延伸倍率は3.7倍以下であることがより好ましく、3.5倍以下であることが更に好ましい。
延伸を行う場合の延伸温度は、30〜200℃であることが好ましい。延伸温度が30℃以上であれば、供給糸の予熱が充分に行われ、延伸時の熱変形が均一となり、繊度斑の発生を抑制できるため好ましい。また、延伸時の糸切れが抑制され、安定した延伸により連続した繊維が得られるため好ましい。延伸温度は35℃以上であることがより好ましく、40℃以上であることが更に好ましい。一方、延伸温度が200℃以下であれば、延伸ローラーに対する繊維の滑り性が良好であり、糸切れが抑制され、安定した延伸により連続した繊維が得られるため好ましい。延伸温度は185℃以下であることがより好ましく、170℃以下であることが更に好ましい。また、必要に応じて120℃〜180℃の熱セットを行ってもよい。
本発明のセルロースおよび/またはセルロースエステルからなる難燃性繊維を得るために、繊維化工程から最終製品にいたるまでのいずれかの工程においてケン化処理することが好ましい。ケン化処理とはアルカリ処理のことを表し、セルロースエステルを主成分とする繊維の単独糸、あるいは該繊維の混繊糸、あるいは混繊糸からなる繊維構造物のいずれの形体に対して行ってもよい。
そのアルカリ処理方法は、特に限定されないが、アルカリ化合物を含有する水溶液を用いるものである。アルカリ化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどアルカリ金属の弱酸塩等が挙げられ、単独、もしくは混合して用いても良い。水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物が望ましい。
アルカリ処理に用いる水溶液中のアルカリ化合物の濃度は、アルカリ化合物の強さ、処理温度に応じて任意に決めることができる。強アルカリのアルカリ金属水酸化物を用いた場合には、0.5重量%以上10重量%以下の濃度で用いることが好ましい。0.5重量%以上であることでアルカリ処理時間を効率良く行うことができるため生産性が向上し、10重量%以下にすることでアルカリ処理による繊維の脆化を抑制することができる。より好ましくは、1重量%以上、5重量%以下である。
また、本発明のアルカリ処理においては必要に応じて、4級アンモニウム塩などの公知のアルカリ減量促進剤を併用することができる。
本発明におけるアルカリ処理は、アルカリ処理対象物の形体に応じて、通常染色加工に用いられているチーズ染色機、液流式染色機、ウインス、ジッカー、ビーム染色機の他、処理液をパッド付与した後に常圧スチーム、加圧スチーム、乾熱処理などを適宜用いることができるがこれに限定されない。
本発明では、このケン化処理時に用いるアルカリ化合物の種類、濃度、処理温度、時間を適宜調節することにより、上述の全置換度をコントロールすることが可能である。アルカリ化合物に強アルカリを用いたり、高濃度化、処理温度の高温化、処理時間の長時間化により、全置換度は小さくなる傾向がある。このようにケン化条件を適宜選択することにより、置換度が1.0〜2.5の柔軟性とノンドリップ難燃性を兼ね備えた繊維を得ることができ、その際、芯部がセルロース脂肪酸エステル、鞘部がセルロースという状態のセルロースおよびセルロースエステルからなる難燃性繊維が得られる。本発明ではこのように、ケン化処理によりセルロースエステルを主成分とする繊維のうち、少なくとも表面がアルカリ処理によりセルロースになることが特に重要である。これによって、セルロースおよび/またはセルロースエステルからなる難燃性繊維は燃焼時に表面のセルロースが炭化被膜を形成し、ノンドリップ難燃繊維となる。人工毛髪ではこのノンドリップ難燃性は特に歓迎される。
本発明のセルロースおよび/またはセルロースエステルからなる難燃性繊維からなる繊維構造物の形態は、特に制限がなく、公知の方法に従い、織物、編物、パイル布帛や不織布などにすることができる。また、本発明のセルロースおよび/またはセルロースエステルからなる難燃性繊維からなる繊維構造物は、いかなる織組織または編組織であってもよく、平織、綾織、朱子織あるいはこれらの変化織や、経編、緯編、丸編、レース編あるいはそれらの変化編などが好適に採用できる。
本発明のセルロースおよび/またはセルロースエステルからなる難燃性繊維は、繊維構造物にする際に他の繊維との交織による方法や交編による方法などによって組み合わせてもよいし、他の繊維と混繊糸としてから繊維構造物を製造してもよい。
本発明のセルロースおよび/またはセルロースエステルからなる難燃性繊維は人工毛髪用にモノフィラメントとして好適に用いられる。本発明のセルロースおよび/またはセルロースエステルからなる難燃性モノフィラメントは、人毛に近い柔軟性、吸放湿性、発色性などの優れた風合いを有するうえ、更に難燃性を有するため、人工毛髪として好適に採用できる。具体的には、ヘアーウィッグ、ツーペ、ウィービング、ヘアーエクステンション、ブレード、ヘアーアクセサリー、ドールヘアー等の頭飾製品として使用できるが、これらに限定されない。なお、ヘアーウィッグとは、頭部に面で取り付けられる装飾品であり、その装着面により部分ウィッグ、ハーフウィッグ、七分ウィッグ、フルウィッグに分類される。また、ツーペとは、部分または頭部全体につけるかつらの総称であり、擬似頭皮に人工毛髪を植毛して作製される頭飾製品である。
本発明のセルロースおよび/またはセルロースエステルからなる難燃性モノフィラメントを用いて、公知の方法に従い、これらの頭飾製品を加工することができる。例えば、ヘアーウィッグを作製する場合には、該繊維束ウィッグ用ミシンで縫製して蓑毛を作り、これをパイプに巻いてスチームセットにてカールを付与し、カールの付いた蓑毛をヘアキャップに縫い付け、スタイルを整えることにより作製できる。
また、これらの頭飾製品を作製する場合には、本発明のセルロースおよび/またはセルロースエステルからなる難燃性モノフィラメントと、モダアクリル繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ナイロン繊維など、他の人工毛髪用素材と併用してもよいし、人毛や獣毛等と併用してもよい。
本発明のセルロースおよび/またはセルロースエステルからなる難燃性繊維、またはそれからなる繊維構造物の染色方法は、特に制限がなく、公知の方法に従い、浸染あるいは捺染することができる。浸染の場合には、チーズ染色機、液流染色機などの公知の染色機を好適に採用することができる。染料は、アセテート用およびポリエステル用分散染料を好適に用いることができる。染色温度も特に限定されないが80℃〜130℃であれば、発色性に優れた繊維、または発色性に優れた繊維からなる繊維構造物を得ることができるため好ましい。
本発明のセルロースおよび/またはセルロースエステルからなる難燃性繊維、またはそれからなる繊維構造物は、セルロースおよびセルロースエステルが適度な吸湿特性を有しているため、吸放湿性に優れたものとなる。吸湿特性を示す吸湿率差(ΔMR)は1.5%以上であることが好ましい。ΔMRとは、衣服着用時の衣服内の湿気を外気に放出することにより快適性を得るための指標であり、軽〜中作業あるいは軽〜中運動を行った際の温度30℃、湿度90%RHに代表される衣服内温度と、温度20℃、湿度65%RHに代表される外気温湿度との吸湿率の差である。ΔMRは大きければ大きいほど吸放湿能力が高く、着用時の快適性が良好であることに対応する。ΔMRは2.0%以上であることがより好ましく、2.5%以上であることが更に好ましい。
本発明のセルロースおよび/またはセルロースエステルからなる難燃性繊維は、優れた柔軟性、吸放湿性、発色性などの風合いと難燃性を有している。そのため、人工毛髪や衣料用織編物に、さらには襟や袖の芯などのような衣料用副資材用に用いることが可能である。また、カーテンやレースなどのような生活資材用にも好適に採用できる。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。実施例中の各特性値は、次の方法で求めたものである。
A.セルロースおよび/またはセルロースエステルからなる難燃性繊維の全置換度
セルロースエステルの濃度が8重量%となるように重ジメチルスルホキシドに完全に溶解させ、NMR測定用試料とした。この試料を用い、以下の条件にてBruker社製DRX−500で13C−NMR測定を行い、55〜110ppmに検出されたピークから2位、3位、6位におけるエステル置換度、すなわちDS(2)、DS(3)、DS(6)を算出した。算出には、Polym.J.17,1065(1985)を参考にした。
共鳴周波数 :125.8MHz
内部標準 :テトラメチルシラン(0ppm)
積算回数 :19896回
測定温度 :100℃(373K)
そして、全置換度は以下の式より求めた。
全置換度=DS(2)+DS(3)+DS(6)
なお、ひとつの水酸基が100%エステル化されている場合を1.0とした。よって、2位、3位、6位の全ての水酸基がエステル化されている場合、全置換度はDS(2)+DS(3)+DS(6)=1.0+1.0+1.0=3.0となる。
B.臭素原子含有量の測定
試料を分析装置の燃焼管内で燃焼させ、発生したガスを溶液に吸収後、吸収液の一部をイオンクロマトグラフィーにより分析した。試料は秤量からn=2で測定し、測定値の平均値を求めた。燃焼・吸収条件およびイオンクロマトグラフィー・アニオン分析条件は以下の通り実施した。
<燃焼・吸収条件>
システム :AQF−2100H,GA−210(三菱化学製)
電気炉温度:Inlet 900℃ Outlet 1000℃
ガス :Ar/O2 200mL/min
O2 400mL/min
吸収液 :H2O2 90μg/mL,内標P 2μg/mL
吸収液量 :5mL
<イオンクロマトグラフィー・アニオン分析条件>
システム :ICS1600(DIONEX製)
移動相 :2.7mmol/L Na2CO3/0.3mmol/L NaHCO3
流速 :1.50mL/min
検出器 :電気伝導度検出器
注入量 :100μL 。
C.アンチモン原子含有量の測定
波長分散型蛍光X線分析装置(リガク製ZSX)を用いて、ピーク位置の回折角で元素同定、回折X線強度で定量した。分析には付属の半定量分析ソフト(SQX)を用いた。
D.単糸繊度
温度20℃、湿度65%RHの環境下において、INTEC社製の電動検尺機を用いて、繊維100mをかせ取りした。得られたかせの重量を測定し、下記式を用いて算出した。なお、測定は1試料につき5回行い、その平均値を単糸繊度とした。
単糸繊度(dtex)=100m長の重量(g)×100 。
E.初期引張抵抗度
初期引張抵抗度は、JIS L1013:1999(化学繊維フィラメント糸試験方法)8.10に基づいて算出した。
F.吸湿率差(ΔMR)
難燃性繊維のサンプルとして約2g用い、110℃で2時間乾燥した後の重量(W0)を測定した。このサンプルを温度20℃、湿度65%RHの状態に調湿された恒温恒湿槽(ナガノ科学機械製LH−20−11M)中に24時間放置し、平衡状態となったサンプルの重量(W20)を測定した。その後、温度30℃、湿度90%RHの状態に変更して恒温恒湿槽中に24時間放置し、平衡状態となったかせサンプルの重量(W30)を測定した。下記式を用いて、測定結果より吸湿率差を算出した。
吸湿率差(ΔMR)(%)={(W30−W20)/W0}×100 。
G.柔軟性
モノフィラメントの束を作製し、10人の被験者が触手により感じた柔軟性を官能評価した。官能評価により、「極めて優れた柔軟性があるもの」を◎、「優れた柔軟性があるもの」を○、「やや柔軟性があるもの」を△、「柔軟性がないもの」を×とし、「やや柔軟性があるもの」の△以上を合格とした。
H.難燃性
フィラメント束(15cm、0.7g)を一方の端をクリップで挟み垂直に吊るし、有効長12cmの固定したフィラメントに下方より20mmの炎を3秒間接炎させ、12cmを燃焼しきるために必要な接炎回数と、その間のドリップ回数をカウントした。
合成例1
セルロース(日本製紙(株)製溶解パルプ)100重量部に、酢酸240重量部とプロピオン酸67重量部を加え、50℃で30分間混合した。混合物を室温まで冷却した後、氷浴中で冷却した無水酢酸172重量部と無水プロピオン酸168重量部をエステル化剤として、硫酸4重量部をエステル化触媒として加えて、150分間撹拌を行い、エステル化反応を行った。エステル化反応において、40℃を越える時は、水浴で冷却した。反応後、反応停止剤として酢酸100重量部と水33重量部の混合溶液を20分間かけて添加して、過剰の無水物を加水分解した。その後、酢酸333重量部と水100重量部を加えて、80℃で1時間加熱撹拌した。反応終了後、炭酸ナトリウム6重量部を含む水溶液を加えて、析出したセルロースアセテートプロピオネートを濾別し、続いて水で洗浄した後、60℃で4時間乾燥した。得られたセルロースアセテートプロピオネートのアセチル置換度は2.0、プロピオニル置換度は0.7(セルロースエステル全置換度2.7)であり、重量平均分子量(Mw)は17.8万であった。
合成例2
合成例1において、無水酢酸を193重量部、無水プロピオン酸を111重量部に変更した以外は、同様の手法でセルロースアセテートプロピオネートを合成した。得られたセルロースアセテートプロピオネートのアセチル置換度は2.4、プロピオニル置換度は0.5(セルロースエステル全置換度2.9)であり、重量平均分子量(Mw)は17.5万であった。
製造例1
合成例1で製造したセルロースアセテートプロピオネート(セルロースエステル全置換度:2.7)64.6重量%、平均分子量600のポリエチレングリコール(PEG600)17.1重量%およびリン系着色防止剤としてビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.1重量%、臭素化合物としてSR−T20000(阪本薬品工業社製)15.8重量%、アンチモン化合物としてPATOX−U(日本精鉱社製:平均粒径0.02μm)2.4重量%を二軸エクストルーダーを用いて245℃で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロースエステル組成物ペレットを得た。
製造例2〜10
セルロースエステルの添加重量%、可塑剤の添加重量%、臭素化合物の種類と添加重量%、アンチモン化合物の種類と添加重量%を表1に記載の通り変更した以外は、製造例1と同様にしてセルロースエステル組成物ペレットを得た。
製造例11
セルロースエステルとして、アセチル置換度が1.0、ブチリル置換度が1.7(セルロースエステル全置換度2.7)であるイーストマンケミカル社製セルロースアセテートブチレート(CAB381−20)を用いた以外は製造例1と同様にしてセルロースエステル組成物ペレットを得た。
製造例12
セルロースエステルとして、合成例2で製造したセルロースアセテートプロピオネート(全置換度:2.9)を用いた以外は製造例1と同様にしてセルロースエステル組成物ペレットを得た。
Figure 0006431736
実施例1
製造例1により得られたセルロースエステル組成物ペレットを、80℃、10時間真空乾燥し(含水率:200ppm)、紡糸温度260℃とした溶融紡糸パックへ導入して、吐出量30g/分の条件で、口金孔(直径0.80mm、孔長2.4mm)を20ホール有した紡糸口金より紡出した後、20℃の水で満たした冷却浴中で冷却し、回転数120m/分の第1ゴデットローラーにて引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して、巻取機にて巻き取り、セルロースエステルモノフィラメントの未延伸糸を得た。得られたモノフィラメントを用いて片末端を束ねたフィラメント束(40cm、10.0g)を作成し、50℃の水で120分処理してポリエチレングリコールを除き、未ケン化品を得た。
得られたモノフィラメントのセルロースおよび/またはセルロースエステルの全置換度、臭素原子含有量、アンチモン原子含有量、繊維特性、吸湿性、柔軟性および難燃性の評価結果を表2に示す。実施例1で得られたモノフィラメントは、優れた繊維特性、吸湿性、柔軟性と難燃性を有していた。
実施例2〜12
表2に示すように、それぞれ製造例2〜12で得られたセルロースエステル組成物ペレットを用いた以外は実施例1と同様にして、モノフィラメントの未ケン化品を得た。
得られたモノフィラメントのセルロースおよび/またはセルロースエステルの全置換度、臭素原子含有量、アンチモン原子含有量、繊維特性、吸湿性、柔軟性および難燃性の評価結果を表2に示す。実施例2〜12で得られたモノフィラメントは、いずれも優れた繊維特性、吸湿性、柔軟性と難燃性を有していた。
Figure 0006431736
実施例13〜24
実施例1〜12で得られたモノフィラメントの未ケン化品から(フィラメント束:30cm、5.0g)のサンプルを採取し、以下の条件Aでケン化処理した。
条件A:炭酸ナトリウム(0.1wt%)水溶液
温度: 80℃
処理時間: 20分
浴比: 1:30
結果を表3に示す。得られたモノフィラメントは、いずれも優れた繊維特性、吸湿性、柔軟性と難燃性を有していた。
Figure 0006431736
実施例25〜36
実施例1〜12で得られたモノフィラメントの未ケン化品から(フィラメント束:30cm、5.0g)のサンプルを採取し、以下の条件Bでケン化処理した。
条件B:水酸化ナトリウム(1.5%)水溶液
温度: 60℃
処理時間: 30分
浴比: 1:30
結果を表4に示す。得られたモノフィラメントは、いずれも優れた繊維特性、吸湿性、柔軟性と難燃性を有しており、未ケン化品対比、吸湿性が向上し、ドリップ回数が顕著に抑制できることが分かった。
Figure 0006431736
実施例37〜48
実施例1〜12で得られたモノフィラメントの未ケン化品から(フィラメント束:30cm、5.0g)のサンプルを採取し、を以下の条件Cでケン化処理した。
条件C:水酸化ナトリウム(3.0%)水溶液
温度: 90℃
処理時間: 120分
浴比: 1:30
結果を表5に示す。得られたモノフィラメントは、いずれも優れた繊維特性、吸湿性、柔軟性と難燃性を有しており、未ケン化品対比、吸湿性が大きく向上する一方、柔軟性はやや失われたが、ノンドリップ難燃繊維となることが分かった。
Figure 0006431736
製造例13〜18
セルロースエステルの添加重量%、可塑剤の添加重量%、臭素化合物の種類と添加重量%、アンチモン化合物の種類と添加重量%を表6に記載の通り変更した以外は、製造例1と同様にしてセルロースエステル組成物ペレットを得た。
Figure 0006431736
比較例1〜6
表7に示すように、それぞれ製造例13〜18で得られたセルロースエステル組成物ペレットを用いた以外は実施例1と同様にして、モノフィラメントの未ケン化品を得ることを試みた。しかしながら、製造例15の組成物を原料とした場合には、糸切れが多発して紡糸できなかった。製造例15の組成物では、用いたアンチモン化合物の平均粒径が0.8μmと大きく分散不良であったためと推測される。さらに製造例17の組成物を用いた場合は、紡糸時の五月雨がひどく紡糸できなかった。製造例17の組成物には臭素化合物の含有量が多すぎたためと推測される。
比較例1、2、4、6で得られたモノフィラメントのセルロースおよび/またはセルロースエステルの全置換度、臭素原子含有量、アンチモン原子含有量、繊維特性、吸湿性、柔軟性および難燃性の評価結果を表7に示す。いずれも優れた繊維特性、吸湿性、柔軟性は有するものの、難燃性は認められなかった。
Figure 0006431736
比較例7〜10
比較例1、2、4、6で得られたモノフィラメントの未ケン化品(フィラメント束:30cm、5.0g)を以下の条件Aでケン化処理した。
条件A:炭酸ナトリウム(0.1wt%)水溶液
温度: 80℃
処理時間: 20分
浴比: 1:30
結果を表8に示す。得られたモノフィラメントは、いずれも優れた繊維特性、吸湿性、柔軟性は有するものの、難燃性は認められなかった。
Figure 0006431736
比較例11〜14
比較例1、2、4、6で得られたモノフィラメントの未ケン化品(フィラメント束:30cm、5.0g)を以下の条件Bでケン化処理した。
条件B:水酸化ナトリウム(1.5%)水溶液
温度: 60℃
処理時間: 30分
浴比: 1:30
結果を表9に示す。得られたモノフィラメントは、いずれも優れた繊維特性、柔軟性を有し、吸湿性は未ケン化品対比向上していたが、難燃性についてはドリップ回数は減るものの効果は認められなかった。
Figure 0006431736
比較例15〜18
比較例1、2、4、6で得られたモノフィラメントの未ケン化品(フィラメント束:30cm、5.0g)を以下の条件Cでケン化処理した。
条件C:水酸化ナトリウム(3.0%)水溶液
温度: 90℃
処理時間: 120分
浴比: 1:30
結果を表10に示す。得られたモノフィラメントは、いずれも優れた繊維特性を有しており、吸湿性は未ケン化品対比向上していたが、柔軟性はやや失われ、難燃性についてはノンドリップにはなるものの、難燃性は認められなかった。
Figure 0006431736
本発明のセルロースおよび/またはセルロースエステルからなる難燃性繊維は、優れた柔軟性、吸放湿性、発色性などの風合いを有し、かつ難燃性を有している。そのため、人工毛髪やカーテンやレースなどのような生活資材用にも好適に採用できる。

Claims (5)

  1. 臭素化エポキシ系オリゴマー難燃剤または臭素化ポリカーボネート系難燃剤を臭素原子換算で5〜15重量%含むセルロースおよび/またはセルロースエステルからなる難燃性繊維。
  2. アンチモン化合物をアンチモン原子換算で1.0〜3.0重量%含む請求項1に記載のセルロースおよび/またはセルロースエステルからなる難燃性繊維。
  3. アンチモン化合物が三酸化アンチモンまたはアンチモン酸ナトリウムであることを特徴とする請求項に記載のセルロースおよび/またはセルロースエステルからなる難燃性繊維。
  4. 繊維がモノフィラメントである請求項1〜3のいずれか1項に記載のセルロースおよび/またはセルロースエステルからなる難燃性繊維。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のセルロースおよび/またはセルロースエステルからなる難燃性繊維を少なくとも一部に用いてなることを特徴とする人工毛髪。
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