JP2008179926A - セルロース脂肪酸混合エステル極細繊維前駆体およびその製造方法 - Google Patents

セルロース脂肪酸混合エステル極細繊維前駆体およびその製造方法 Download PDF

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博之 山田
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晋史 新田
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Abstract

【課題】高次加工工程通過性に優れた、良好な機械的特性を有するセルロース脂肪酸混合エステル極細繊維前駆体を提供する。
【解決手段】海部にポリ乳酸を配し、島部にセルロース脂肪酸混合エステルを主たる成分とする組成物を配し、島成分が繊維軸方向に連続相を形成している海島型複合繊維であり、該繊維の強度が0.7〜2.0cN/dtex、伸度が15〜40%であるセルロース脂肪酸混合エステル極細繊維前駆体。セルロース脂肪酸混合エステルがセルロースアセテートプロピオネートあるいはセルロースアセテートブチレートであることが好ましい。
【選択図】図1

Description

本発明は、良好な繊維特性を有したセルロース脂肪酸混合エステル極細繊維前駆体およびその製造方法に関するものである。
更に詳しくは、強伸度特性が優れているため、高次加工工程での工程通過性が良好である、海成分がポリ乳酸、島成分がセルロース脂肪酸混合エステル組成物である海島型複合繊維に関するものである。
セルロース系フィラメントはビスコース、キュプラなどの再生セルロース繊維、セルロースジアセテート、セルローストリアセテートなどのセルロースアセテート繊維が知られている。
セルロース系ポリマーを用いた海島型複合繊維を得る方法としては、例えば特許文献1〜4で提案されている。特許文献1では、ビニルアルコール系ポリマーが海に、水不溶性セルロース系ポリマーが島となった繊維である。ここでは両ポリマーを同溶剤に溶かしたブレンド溶液を用いて、湿式紡糸により海島型複合繊維を得ている。また特許文献2では、ポリエステルが海に、セルロースエステルが島となった繊維であり、紡糸前に予めブレンドし、その後、ブレンド溶融紡糸により海島型複合繊維を得ている。更には特許文献3では、セルロースエステルが海に、ポリエステルが島となった繊維である。ここでも両ポリマーを予めブレンドし、その後、ブレンド溶融紡糸により海島型複合繊維を得ている。上記特許文献1〜3で得られる繊維は、任意の断面において確かに海島形態を有している。しかしながらいずれも2種のポリマーを予めブレンドして繊維を得ているため、島成分の長さは有限であり、そのため海成分の溶出を行なっても、長繊維が得られるものではなかった。
一方、特許文献4では、海成分にアルカリ性熱水可溶性の重合体を、島成分にセルロースエステルを配し、複合紡糸により海島型複合繊維が得、その後布帛形態にした後、海成分を溶出し、極細繊維布帛を得ている。しかしながら該文献においては、布帛形態とすることは可能ではあったものの、海成分/島成分の溶融粘度比が1.5〜2.0と小さいことおよび紡糸速度が非常に遅いことに起因して、海島型複合繊維の繊維特性値は低いものであった。そのため撚糸や製織などにおける高次加工工程においては糸切れが発生し、高次加工工程における操業性には課題があった。
このように良好な機械的特性を有した、高次加工工程の通過性が優れたセルロース脂肪酸混合エステル極細繊維前駆体はこれまで得られていなかった。
特開平10−102322号公報 特開平10−130957号公報 特開平10−88424号公報 特開2004−84139号公報
本発明は、上記従来の問題点を解決しようとするものであり、良好な機械的特性を有するセルロース脂肪酸混合エステル極細繊維前駆体を提供することにある。
本発明者らは上記した課題を解決するために鋭意検討を行った結果、特定の溶融紡糸条件のもとで繊維化することにより、良好な機械的特性を有するセルロース脂肪酸混合エステル極細繊維前駆体を得ることに成功し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、以下の構成を要旨とするものである。
本発明の第1の発明は、海部にポリ乳酸を配し、島部にセルロース脂肪酸混合エステルを主たる成分とする組成物を配し、島成分が繊維軸方向に連続相を形成している海島型複合繊維であって、該繊維の強度が0.7〜2.0cN/dtex、伸度が15〜40%であることを特徴とするセルロース脂肪酸混合エステル極細繊維前駆体である。
第2の発明は、海成分/島成分の複合比率(重量比)が5/95〜60/40であることを特徴とする上記第1の発明に記載のセルロース脂肪酸混合エステル極細繊維前駆体である。
第3の発明は、セルロース脂肪酸混合エステルがセルロースアセテートプロピオネートあるいはセルロースアセテートブチレートであることを特徴とする上記第1または第2の発明に記載のセルロース脂肪酸混合エステル極細繊維前駆体である。
第4の発明は、海部にポリ乳酸を配し、島部にセルロース脂肪酸混合エステルを主たる成分とする組成物を配し、島成分が繊維軸方向に連続相を形成している海島型複合繊維であって、海島型複合繊維を溶融紡糸するに際し、下記要件(1)〜(2)を満たすことを特徴とするセルロース脂肪酸混合エステル極細繊維前駆体の製造方法である。
(1)紡糸温度における溶融粘度比 2.0≦(海成分/島成分)≦3.5
(2)1500≦紡糸速度(m/分)≦3000
第5の発明は、海成分/島成分の複合比率が5/95〜60/40であることを特徴とする上記第4の発明のセルロース脂肪酸混合エステル極細繊維前駆体の製造方法である。
第6の発明は、セルロース脂肪酸混合エステルがセルロースアセテートプロピオネートあるいはセルロースアセテートブチレートであることを特徴とする上記第4または第5の発明に記載のセルロース脂肪酸混合エステル極細繊維前駆体の製造方法である。
本発明によれば、特定の溶融紡糸条件を採用することにより、高次加工工程での取り扱い性に優れたセルロース脂肪酸混合エステル極細繊維前駆体を製糸操業性良く製造することができる。
以下、本発明のセルロース脂肪酸混合エステル極細繊維前駆体について詳細に説明する。
本発明のセルロース脂肪酸混合エステル極細繊維前駆体は、海成分にポリ乳酸を、島成分にセルロース脂肪酸混合エステル組成物を配し、島成分が繊維軸方向に連続相を形成している。
海成分をポリ乳酸とすることで、本発明の目的である複合繊維の機械的特性を高めることができる。また複合繊維の海成分の溶出処理の際、例えばアルカリ減量速度が速い5−ナトリウムイソフタル酸共重合ポリエステルよりも、ポリ乳酸はアルカリ水溶液による溶出速度が速いため、溶出時間の短縮を図ることができ、製造コスト面、エネルギー面からも非常に好ましい。更には溶出した後の廃液に含まれるポリ乳酸は生分解が進むため、環境負荷が小さいので好ましい。
本発明におけるポリ乳酸とは、−(O−CHCH−CO)n−を繰り返し単位とするポリマーであり、乳酸やそのオリゴマーを重合したものをいう。乳酸にはD−乳酸とL−乳酸の2種類の光学異性体が存在するため、その重合体もD体のみからなるポリ(D−乳酸)とL体のみからなるポリ(L−乳酸)および両者からなるポリ(D,L−乳酸)がある。ポリ乳酸中のD−乳酸、あるいはL−乳酸の光学純度は、低くなるにしたがい結晶性が低下し、融点の降下が大きくなる。そのため耐熱性を高めるために光学純度は90%以上であることが好ましい。より好ましい光学純度は93%以上、さらに好ましい光学純度は95%以上である。
また製糸操業性および複合繊維の機械的特性の観点から、ポリ乳酸の重量平均分子量は、5万〜35万であることが好ましく、10万〜30万であることがより好ましく、15〜25万であることが更に好ましい。
またポリ乳酸の性質を損なわない範囲で、L−乳酸、D−乳酸のほかにエステル形成能を有するその他の成分を共重合した共重合ポリ乳酸であってもよく、ポリ乳酸以外の熱可塑性重合体等を含有していてもよい。さらには、ポリ乳酸に加水分解促進剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、糸摩擦低減剤、抗酸化剤、着色顔料、制電剤、抗菌剤等として無機粒子や有機化合物を必要に応じて添加することができる。
ポリ乳酸の製造方法には、乳酸を原料として一旦環状二量体であるラクチドを生成せしめ、その後開環重合を行う二段階のラクチド法と、乳酸を原料として溶媒中で直接脱水縮合を行う一段階の直接重合法が知られている。本発明で用いられるポリ乳酸は、いずれの製法によって得られたポリ乳酸であってもよい。
溶融紡糸以前の段階でポリ乳酸中に含有されるラクチド等の低分子量物の含有量は、低分子量物による急速な加水分解促進を抑制し、複合繊維の機械的特性および製糸操業性を良好とするためには、1.0重量%以下とすることが好ましく、0.5重量%以下であることがより好ましく、0.3重量%以下であることが更に好ましい。
島成分はセルロース脂肪酸混合エステルを主成分とする組成物であることが重要である。セルロース脂肪酸混合エステルとは、セルロースのグルコースユニットに存在する3つの水酸基が2種類以上のアシル基により封鎖されたものであり、複合繊維の製糸操業性、コスト面等からセルロース脂肪酸混合エステルとしては、アセチル基とプロピオニル基が結合したセルロースアセテートプロピオネート、アセチル基とブチリル基が結合したセルロースアセテートブチレートが好ましい。この場合、アセチル基およびアシル基(プロピオニル基またはブチリル基)の平均置換度は、下記式を満たすことが好ましい。なお平均置換度とはセルロースのグルコース単位あたりに存在する3つの水酸基のうちアシル基が化学的に結合した数を指す。
2.2≦(アセチル基の平均置換度+アシル基の平均置換度)≦2.9
上記式を満たすセルロース脂肪酸混合エステルは、可塑剤との混和性が良好となり溶融紡糸性、製糸操業性が格段に良好となる。またアルカリ性水溶液による海成分の溶出処理を実施しても、セルロース脂肪酸混合エステルのアシル基のセルロース化(けん化)が進行しにくいため、染色斑の問題が発生しない。また適度な水膨潤性を有しているため、海成分の溶出が困難になることはない。
セルロース脂肪酸混合エステルの重量平均分子量は、複合繊維の機械的特性、製糸操業性、ポリマーの耐熱分解性の観点から5〜30万であることが好ましく、8〜27万であることがより好ましく、10〜25万であることが更に好ましい。
島部を形成するセルロース脂肪酸混合エステルを主成分とする熱可塑性組成物には、可塑剤を含有していても良い。可塑剤を添加することで、組成物の曳糸性が向上するため製糸操業性が良好となったり、また得られた複合繊維のアルカリ性水溶液処理の際、可塑剤の溶出が伴うため、海部の溶出速度が速くなるなど好ましい点がある。
可塑剤としては、多価アルコール系化合物が好ましく、具体的にはセルロース脂肪酸混合エステルとの相溶性が良好であり、また溶融紡糸可能な熱可塑化効果が顕著に現れるポリアルキレングリコール、グリセリン系化合物、カプロラクトン系化合物などであり、なかでもポリアルキレングリコールが好ましい。
ポリアルキレングリコールの具体的な例としては、重量平均分子量が200〜4000であるポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどが挙げられるがこれらに限定されず、これらを単独もしくは併用して使用することができる。
また製糸操業性および得られる複合繊維の機械的特性の観点から、可塑剤の含有量は、3〜30重量%であることが好ましく、5〜25重量%がより好ましい。
本発明におけるセルロース脂肪酸混合エステルを主成分とする組成物には、リン系酸化防止剤を含有していることが好ましく、特にペンタエリスリトール系化合物が好ましい。リン系酸化防止剤を含有している場合、紡糸温度が高い範囲および低吐出領域においてもセルロース脂肪酸混合エステルの熱分解防止効果が非常に顕著であり、複合繊維の機械的特性の悪化が抑制され、また繊維色調が良好になる。リン系酸化防止剤の配合量は、溶融紡糸組成物に対して0.005重量%〜0.500重量%であることが好ましい。
本発明におけるセルロース脂肪酸混合エステルを主たる成分とする組成物には、その特性を損なわない範囲で艶消し剤、消臭剤、難燃剤、糸摩擦低減剤、着色防止剤、着色顔料、染料、制電剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、結晶核剤、蛍光増白剤等として、無機微粒子や有機化合物を必要に応じて含有することができる。
本発明におけるセルロース脂肪酸混合エステル極細繊維前駆体の強度は0.7〜2.0cN/dtex、伸度は15〜40%であり、製糸操業性および織編物とする時の工程通過性、更には実用上の耐久性の観点から前記要件を満たすことが重要である。
強度が0.7cN/dtex未満および伸度が15%未満では、原糸強伸度値が低すぎるため、製糸操業性が悪化したり、紡糸時に毛羽が発生するとともに、製織や製編など高次加工工程においても糸道ガイド等との接触により、単糸切れや毛羽等の発生により工程通過性、製品品位の低下が発生してしまう。
製糸操業性を良好とし、高次加工工程通過性をより高めるためには、更には最終製品の実用耐久性を高めるためには、原糸の強度は0.9cN/dtex以上であることがより好ましい。なお強度は高ければ高いほど、高次加工工程通過性が向上し、また実用範囲が広がり各種用途に展開できるため好ましいが、現状では2.0cN/dtex以上を達成することは困難である。
また伸度は、低応力下での繊維の変形を抑制し、また製織時の緯ひけなどによる最終製品の染色欠点を防止するためには、40%以下であることが好ましい。伸度は20〜35%であることがより好ましい。
本発明におけるセルロース脂肪酸混合エステル極細繊維前駆体の繊度変動値(U%)は3.0%以下であることが好ましい。U%とはツェルベガーウースター社製ウースターテスターにより求めた値であり、繊維の長手方向の太さの変動を表す指標である。U%値が3.0%以下であれば、マルチフィラメント長手方向の均一性が優れていることを指し、織編物に加工する際、毛羽や糸切れが発生せず、高次加工工程における通過性が良好となり、また染色を行っても、部分的に強い染め斑、染め筋などの欠点が発生せず、高品位な織編物となる。U%値は小さい程よく、より好ましくは2.0%以下、更に好ましくは1.5%以下、最も好ましくは1.0%以下である。なおU%値の測定条件に関しては、実施例にて詳細に説明する。
セルロース脂肪酸混合エステル極細繊維前駆体の海/島複合比率(重量比)は、海島複合形態の安定性、製糸操業性、機械的特性、生産性の観点から、5/95〜60/40である。海成分の複合比率が5%未満の場合、島同士の合一などの複合異常が生じ製糸操業性が悪化したり、また分割性不良が生じ、十分なソフト感を有する布帛を得ることができない。
一方、海成分が60%より大きい場合、生産性が悪化するとともに、得られる複合繊維の機械的特性が低下し、製糸操業性の悪化や高次加工における工程通過性の悪化が生じる。さらには海成分を溶出させた布帛では、ふかつきが生じ、反発感のないものとなってしまう。海/島複合比率は10/90〜50/50であることがより好ましく、15/85〜40/60であることが更に好ましい。
本発明のセルロース脂肪酸混合エステル極細繊維前駆体は、海成分を除去した後の島成分の単糸繊度はソフト感と発色性を両立するために0.01〜2dtexであることが好ましい。島成分の単糸繊度を0.01〜2dtexとすることによって、十分なソフト感と発色性、さらには製糸安定性を付与することができる。単糸繊度が0.01dtex未満になるとソフト感は向上するが十分な発色性を得ることができなくなるので好ましくない。逆に単糸繊度が2dtexを越えると発色性および製糸操業性は良好であるが単糸繊度が太くなることによって、ソフト感の低下を招くようになるので好ましくない。海成分を除去した後の島成分の単糸繊度のより好ましい範囲は0.03〜1.5dtexであり、更に好ましい範囲は0.05〜1.00dtexである。
本発明のセルロース脂肪酸混合エステル極細繊維前駆体は製糸安定性と機械的特性を両立するために単繊維内の島成分数が3〜100であることが好ましい。島成分数を3個未満にすると、前記した島成分の単糸繊度の好ましい範囲である0.01〜1dtexとするためには複合繊維の単糸繊度を小さくしなければならなくなり、複合繊維の細繊度化によって製糸操業性および強伸度特性が悪化する。また島成分数が100個を越えると、前記した島成分の単糸繊度の好ましい範囲である0.01〜1dtexとすることは容易となるが、口金構造が複雑になるため複合異常などによって製糸操業性および強伸度特性が悪化する場合がある。製糸操業性、機械的特性を両立するために、単繊維内の島成分数は6〜80であることがより好ましい。
本発明のセルロース脂肪酸混合エステル極細繊維前駆体の断面形状は丸断面の他、扁平、三角等の異形断面であってもよい。また繊維表面は海成分で完全に覆われていても、島成分が一部露出していてもかまわない。さらに海成分を除去した後の島成分の断面形状についても丸断面の他、扁平、三角等の異形断面であってもよい。
次に本発明のセルロース脂肪酸混合エステル極細繊維前駆体の製造方法について説明する。図1は、本発明のセルロース脂肪酸混合エステル極細繊維前駆体の製造方法に用いる装置の一実施態様を示す図である。
海部のポリ乳酸および島部のセルロース脂肪酸混合エステルを主成分とする組成物をエクストルーダー1においてそれぞれ別々に溶融し、計量ポンプ2で計量した後、紡糸ブロック3に内蔵された紡糸パック4に送り、パック内でポリマーを濾過した後、紡糸口金5で海島型構造にした後、吐出して糸条を得る。紡出された糸条6は冷却装置7によって一旦冷却・固化された後、給油ガイド8で油剤を付与され、交絡装置9で適度に交絡を与えられた後、ゴデットローラー10で引き取られ、ゴデットローラー11を介して巻取機12で巻き取られる。なお13は巻取糸である。
紡糸の際、製糸操業性、機械的特性、生産性を向上させるために必要に応じて紡糸口金面直下に2〜20cmの長さの加熱筒や保温筒を設置しても良い。
本発明者らは溶融紡糸法による繊維化について鋭意検討した結果、海部にポリ乳酸および島部にセルロース脂肪酸混合エステルを主成分とする組成物を配した海島型複合紡糸を行なう際、下記式(1)、(2)を満たすことが重要であることがわかり、下記2式を満たす場合、海島型複合繊維の強伸度値が良好なものになることを見出した。
式(1)紡糸温度における溶融粘度比 2.0≦(海成分/島成分)≦3.5
式(2)1500≦紡糸速度(m/分)≦3000
式(1)における紡糸温度とは、紡糸ブロックの温度を言い、また溶融粘度は、ポリマーが紡糸口金孔を通過する際の剪断速度における溶融粘度を言う。また式(2)における紡糸速度とは、第1ゴデットローラーの速度を言う。
本発明においては、紡糸温度における海成分/島成分の溶融粘度比は2.0〜3.5であることが重要である。島成分に用いるセルロース脂肪酸混合エステル組成物は、ポリエステルやポリアミド等のような屈曲性ポリマーとは異なり、主鎖が非常に剛直なものであり、その溶融粘度は、剪断速度および温度の依存性が非常に高いものである。そのため紡糸口金から吐出された後、吐出糸条の冷却により急速な粘度(伸長粘度)上昇が生じるため、ポリエステルやナイロン対比、吐出糸条の固化速度が非常に速い。特に上記式(1)にて2.0未満では、島成分の急速な固化につられてしまい、海成分に用いたポリ乳酸の分子配向が抑制されてしまう。その結果、繊維内部構造がほとんど発達せず、複合繊維は脆性の高いものとなってしまう。さらには海島複合形態が安定せず、隣接する島成分同士の合一が発生し、製糸操業性が大きく悪化してしまう。
しかしながら海/島溶融粘度比を2.0〜3.5とすることで、ポリ乳酸の繊維構造もある程度発達するようになり、得られる複合繊維の強伸度値が良好となる。さらには海島複合形態も安定し、島比率を高めた場合でも島同士の合一が発生せず、製糸操業性が極めて良好なものとなる。
また海/島溶融粘度比が3.5を超えるような場合では、海島型複合繊維の曳糸性が低下してしまい、製糸操業性が大きく悪化してしまう。
紡糸速度は1500〜3000m/分であることが重要である。紡糸速度を1500〜3000m/分とすることで、紡出糸条に十分な紡糸応力が付与されるため、得られる海島型複合繊維の繊維特性が優れたものとなる。また製糸操業性も安定する。紡糸速度が1500m/分未満では、海成分のポリ乳酸の繊維構造がほとんど形成されないため、得られる複合繊維は脆性高く、機械的特性不良となってしまう。またガイドなどの接触により毛羽の発生あるいは糸切れに至るなど製糸操業性が悪化してしまう。更には紡糸時の毛羽発生に起因して、高次加工工程の通過性が悪化してしまう。
一方、紡糸速度が3000m/分より速い場合、紡糸応力が高くなりすぎ、島成分が変形に追随できずに紡糸時に糸切れに至るなど製糸操業性が大きく悪化する。さらには高紡糸応力が負荷されるため、島成分の繊維内部構造の不均一化が発生し、それゆえ複合繊維の機械的特性は悪化してしまう。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。なお実施例中の各特性値は次の方法で求めたが、本発明はこれらに限定されるものではない。
A.溶融粘度測定
ポリ乳酸の場合105℃で、セルロース脂肪酸混合エステルを主たる成分とする組成物の場合80℃で12時間真空乾燥した後、東洋精機(株)製キャピログラフを用いて溶融粘度を測定した。なお測定温度は紡糸温度と同様にした(ダイ直径1mm、長さ10mm)。
次に測定結果より溶融粘度の剪断速度依存性の関係式を得、この式を用いて、紡糸口金孔通過時の剪断速度を用いて、両ポリマーの溶融粘度を算出し、下記式により溶融粘度比を算出した。
溶融粘度比=(海成分の溶融粘度)/(島成分の溶融粘度)
B.ポリ乳酸の重量平均分子量の測定
試料をクロロホルムに完全溶解させ、これを用いてWaters社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー2690を用い、ポリスチレン換算で重量平均分子量を算出した。
C.セルロース脂肪酸混合エステルの平均置換度
80℃で8時間の乾燥したセルロース脂肪酸混合エステル0.9gを秤量し、アセトン35mlとジメチルスルホキシド15mlを加え溶解した後、さらにアセトン50mlを加えた。撹拌しながら0.5N−水酸化ナトリウム水溶液30mlを加え、2時間ケン化した。熱水50mlを加え、フラスコ側面を洗浄した後、フェノールフタレインを指示薬として0.5N−硫酸で滴定した。別に試料と同じ方法で空試験を行った。滴定が終了した溶液の上澄み液を100倍に希釈し、イオンクロマトグラフを用いて、有機酸の組成を測定した。測定結果とイオンクロマトグラフによる酸組成分析結果から、下記式により置換度を計算した。
TA=(B−A)×F/(1000×W)
DSace=(162.14×TA)/[{1−(Mwace−(16.00+1.01))×TA}+{1−(Mwacy−(16.00+1.01))×TA}×(Acy/Ace)]
DSacy=DSace×(Acy/Ace)
TA:全有機酸量(ml)
A:試料滴定量(ml)
B:空試験滴定量(ml)
F:硫酸の力価
W:試料重量(g)
DSace:アセチル基の平均置換度
DSacy:アシル基の平均置換度
Mwace:酢酸の分子量
Mwacy:他の有機酸の分子量
Acy/Ace:酢酸(Ace)と他の有機酸(Acy)とのモル比
162.14:セルロースの繰り返し単位の分子量
16.00:酸素の原子量
1.01:水素の原子量
D.セルロース脂肪酸混合エステルの重量平均分子量測定
試料をテトラヒドロフランに完全溶解させ、これを用いてWaters社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー2690を用い、ポリスチレン換算で重量平均分子量を算出した。
E.製糸操業性評価
海島型複合繊維を製糸する際、10kgの製糸評価を行い、下記の基準で評価した。なお◎および○を合格とした。
◎:糸切れ回数が0回(製糸操業性が極めて良好)
○:糸切れ回数が1〜2回(製糸操業性が良好)
△:糸切れ回数が3〜4回(製糸操業性がやや不良)
×:糸切れ回数が5回以上(製糸操業性が不良)
F.複合繊維の強度および伸度
温度20℃、湿度65%の環境下において、島津製作所製オートグラフAG−50NISMS形を用い、試料長20cm、引張速度20cm/minの条件で引張試験を行って、最大荷重の示す点の応力(cN)を初期繊度(dtex)で除した値を引張強度(cN/dtex)とした。またそのときの伸度を伸度(%)とした。なお測定回数は5回とし、その平均値を強度、伸度とした。
G.繊度変動値(U%:ノーマルモード)
U%測定は、ツェルベガーウースター社製ウースターテスター4−CXにより、下記条件にて測定して求めた。なお測定回数は5回であり、その平均値をU%とした。
測定速度 :200m/分
測定時間 :2.5分
測定繊維長:500m
撚り :S撚り、12000/m
H.海島複合状態評価
紡糸して得られた複合繊維の断面を光学顕微鏡にて観察し、下記基準で複合状態を評価した。
○:島同士の合一がなく、複合異常が発生していない。
×:島同士の合一があり、複合異常が発生している。
I.高次加工工程通過性評価
セルロース脂肪酸混合エステル極細繊維前駆体を、緯糸打ち込み速度513rpmで50000m打ち込み、平織りした時、織機停台回数を下記基準で判定した。なお◎および○を合格とした。
◎:0〜1回(工程通過性が極めて良好である)
○:2〜3回(工程通過性が良好である)
△:4〜5回(工程通過性が不良である)
×:6回以上(工程通過性が極めて不良である)
実施例1
イーストマンケミカル社製セルロースアセテートプロピオネート(CAP482−20:アセチル基およびプロピオニル基の平均置換度は各々0.2、2.5)93重量%とポリエチレングリコール(PEG600)7重量%を二軸エクストルーダーを用いて210℃で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロースエステル組成物ペレット(Mw18.3万)を得た。
上記製法で得たセルロース脂肪酸混合エステル組成物を島成分に用い、一方、重量平均分子量17.8万、残留ラクチド量0.1重量%のポリL−乳酸(光学純度98%L−乳酸)を海成分とし、図1に示す複合紡糸機を用いて別々に溶融し(海:235℃、島:240℃)、紡糸温度240℃で、島成分数32、ホール数12の海島型複合用口金(吐出孔径0.4mmφ)を用い、海/島複合比率25/75で吐出させた。
この紡出糸条を紡糸口金面下5.5cmに設置した加熱筒(高さ10cm、温度260℃)を通過させた後、風温20℃、風速0.5m/秒の冷却風によって冷却し、給油装置にて油剤を付与して収束させ、第1ゴデットローラー(紡糸速度2000m/分)にて引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して巻取機にて巻き取った。
海島複合状態および得られた繊維の物性も良好であり、高次加工評価を行ったところ、糸切れは発生せず、工程通過性も極めて良好であった。また10kgの製糸評価では、糸切れ0回であり、製糸操業性は極めて良好であった。
実施例2
実施例1で用いたセルロース脂肪酸混合エステル組成物を島成分に用い、一方、重量平均分子量17.8万、残留ラクチド量0.1重量%のポリL−乳酸(光学純度98%L−乳酸)を海成分とし、図1に示す複合紡糸機を用いて別々に溶融し(海:235℃、島:240℃)、紡糸温度240℃で、島成分数32、ホール数12の海島型複合用口金(吐出孔径0.4mmφ)を用い吐出させた。
この紡出糸条を紡糸口金面下5.5cmに設置した加熱筒(高さ10cm、温度260℃)を通過させた後、風温20℃、風速0.5m/秒の冷却風によって冷却し、給油装置にて油剤を付与して収束させ、第1ゴデットローラー(紡糸速度2000m/分)にて引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して巻取機にて巻き取った。
得られた複合繊維の海島複合状態および物性は良好であった。高次加工評価を行ったところ、糸切れは発生せず、工程通過性も極めて良好であった。また10kgの製糸評価では、糸切れが2回であり、製糸操業性は良好であった。
実施例3〜4
イーストマンケミカル社製セルロースアセテートプロピオネート(CAP482−20)88重量%とポリエチレングリコール(PEG600)12重量%を二軸エクストルーダーを用いて206℃で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロースエステル組成物ペレット(Mw19.1万)を得た。
上記製法で得たセルロース脂肪酸混合エステル組成物を島成分に用い、一方、重量平均分子量15.2万、残留ラクチド量0.1重量%のポリL−乳酸(光学純度98%L−乳酸)を海成分とし、図1に示す複合紡糸機を用いて別々に溶融し(海:220℃、島:230℃)、紡糸温度230℃で、島成分数32、ホール数12の海島型複合用口金(実施例3:吐出孔径0.6mmφ、実施例4:吐出孔径0.4mmφ)を用い吐出させた。
この紡出糸条を風温20℃、風速0.5m/秒の冷却風によって冷却し、給油装置にて油剤を付与して収束させ、第1ゴデットローラー(紡糸速度2000m/分)にて引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して巻取機にて巻き取った。
実施例3では、海島複合状態は安定しており、また10kgの製糸評価では、糸切れが1回発生し、製糸操業性は良好であった。得られた繊維の特性および高次加工工程での通過性は良好であった。
実施例4では、10kgの製糸評価では、糸切れが2回であり、製糸操業性は良好であった。海島複合状態は安定しており、得られた繊維および高次加工工程での通過性は良好であった。
合成例1
セルロース(コットンリンター)100重量部に、酢酸240重量部とプロピオン酸67重量部を加え、50℃で30分間混合した。混合物を室温まで冷却した後、氷浴中で冷却した無水酢酸172重量部と無水プロピオン酸168重量部をエステル化剤として、硫酸4重量部をエステル化触媒として加えて、150分間撹拌を行い、エステル化反応を行った。エステル化反応において、40℃を越える時は、水浴で冷却した。反応後、反応停止剤として酢酸100重量部と水33重量部の混合溶液を20分間かけて添加して、過剰の無水物を加水分解した。その後、酢酸333重量部と水100重量部を加えて、80℃で1時間加熱撹拌した。反応終了後、炭酸ナトリウム6重量部を含む水溶液を加えて、析出したセルロースアセテートプロピオネートを濾別し、続いて水で洗浄した後、60℃で4時間乾燥した。得られたセルロースアセテートプロピオネート(CAP)のアセチル基およびプロピオニル基の平均置換度は各々1.9、0.7であり、重量平均分子量(Mw)は17.7万であった。
実施例5
合成例1で製造したCAP77重量%と平均分子量600のポリエチレングリコール(PEG600)22.8重量%およびリン系酸化防止剤としてビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.2重量%を二軸エクストルーダーを用いて225℃で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロース脂肪酸混合エステル組成物ペレット(Mw17.0万)を得た。
上記製法で得たセルロース脂肪酸混合エステル組成物を島成分に用い、一方、重量平均分子量17.8万、残留ラクチド量0.1重量%のポリL−乳酸(光学純度98%L−乳酸)を海成分とし、図1に示す複合紡糸機を用いて別々に溶融し(海:240℃、島:245℃)、紡糸温度245℃で、島成分数16、ホール数12の海島型複合用口金(吐出孔径0.3mmφ)を用い吐出させた。
この紡出糸条を紡糸口金面下5.5cmに設置した加熱筒(高さ10cm、温度270℃)を通過させた後、風温20℃、風速0.5m/秒の冷却風によって冷却し、給油装置にて油剤を付与して収束させ、第1ゴデットローラー(紡糸速度2750m/分)にて引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して巻取機にて巻き取った。
10kgの製糸評価では、糸切れが2回であり、製糸操業性は良好であった。海島複合形態は安定しており、また得られた繊維の特性および高次加工工程の通過性は良好であった。
実施例6
合成例1で製造したCAP83重量%と平均分子量600のポリエチレングリコール(PEG600)16.9重量%およびリン系酸化防止剤としてビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.1重量%を二軸エクストルーダーを用いて235℃で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロース脂肪酸混合エステル組成物ペレット(Mw16.4万)を得た。
上記製法で得たセルロース脂肪酸混合エステル組成物を島成分に用い、一方、重量平均分子量22.5万、残留ラクチド量0.1重量%のポリL−乳酸(光学純度98%L−乳酸)を海成分とし、図1に示す複合紡糸機を用いて別々に溶融し(海:240℃、島:255℃)、紡糸温度255℃で、島成分数24、ホール数18の海島型複合用口金(吐出孔径0.5mmφ)を用い吐出させた。
この紡出糸条を紡糸口金面下5.5cmに設置した加熱筒(高さ10cm、温度290℃)を通過させた後、風温20℃、風速0.5m/秒の冷却風によって冷却し、給油装置にて油剤を付与して収束させ、第1ゴデットローラー(紡糸速度1850m/分)にて引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して巻取機にて巻き取った。
10kgの製糸評価では、糸切れが1回であり、製糸操業性は良好であった。海島複合状形態は安定しており、得られた繊維の特性および高次加工工程における通過性は極めて良好であった。
実施例7
イーストマンケミカル社製セルロースアセテートブチレート(CAB381:アセチル基の平均置換度1.0、ブチリル基の平均置換度1.7)85重量%とポリエチレングリコール(PEG600)14.9重量%およびリン系酸化防止剤としてビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.1重量%を二軸エクストルーダーを用いて220℃で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロース脂肪酸混合エステル組成物ペレット(Mw18.1万)を得た。
上記製法で得たセルロース脂肪酸混合エステル組成物を島成分に用い、一方、重量平均分子量22.5万、残留ラクチド量0.1重量%のポリL−乳酸(光学純度98%L−乳酸)を海成分とし、図1に示す複合紡糸機を用いて別々に溶融し(海:230℃、島:240℃)、紡糸温度240℃で、島成分数70、ホール数8の海島型複合用口金(吐出孔径0.5mmφ)を用い吐出させた。
この紡出糸条を紡糸口金面下5.5cmに設置した保温筒(高さ10cm)を通過させた後、風温20℃、風速0.5m/秒の冷却風によって冷却し、給油装置にて油剤を付与して収束させ、第1ゴデットローラー(紡糸速度2300m/分)にて引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して巻取機にて巻き取った。
10kgの製糸評価では、糸切れが2回であり、製糸操業性は良好であった。また海島複合形態も安定しており、得られた繊維の特性および高次加工工程における通過性は極めて良好であった。
Figure 2008179926
比較例1
イーストマンケミカル社製セルロースアセテートプロピオネート(CAP482−20)75重量%とポリエチレングリコール(PEG600)25重量%を二軸エクストルーダーを用いて190℃で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロースエステル組成物ペレット(Mw18.6万)を得た。
上記製法で得たセルロース脂肪酸混合エステル組成物を島成分に用い、一方、重量平均分子量15.2万、残留ラクチド量0.1重量%のポリL−乳酸(光学純度98%L−乳酸)を海成分とし、図1に示す複合紡糸機を用いて別々に溶融し(海:220℃、島:225℃)、紡糸温度225℃で、島成分数32、ホール数12の海島型複合用口金(吐出孔径0.4mmφ)を用い吐出させた。
この紡出糸条を紡糸口金面下5.5cmに設置した加熱筒(高さ10cm、温度260℃)を通過させた後、風温20℃、風速0.5m/秒の冷却風によって冷却し、給油装置にて油剤を付与して収束させ、第1ゴデットローラー(紡糸速度2000m/分)にて引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して巻取機にて巻き取った。
10kgの製糸評価では、糸切れが5回発生し、製糸操業性は不良であった。また得られた複合繊維の強伸度特性が低かったため、高次加工工程の通過性は不良であった。
比較例2〜3
実施例1の条件にて、島成分の単糸繊度が0.3dtexとなるよう、紡糸速度のみを変更して複合紡糸を行った。
比較例2では糸切れは2回発生したものの製糸操業性は良好であった。得られた繊維は脆性高いものであり、高次加工工程の通過性は、実施例1と比べて、劣っていた。
比較例3では高紡糸速度のため、10kgの製糸評価では糸切れが13回発生し、製糸操業性は不良であった。また紡糸応力が非常に高く、得られた繊維の強伸度特性が低かったため、高次加工工程の通過性は、実施例1と比べて、劣っていた。
比較例4
実施例6の条件にて海/島複合比率のみを変更して複合紡糸を行った。10kgの製糸評価では6回糸切れが発生し、製糸操業性は不良であった。また得られた繊維は脆性が高く、高次加工工程の通過性は、実施例6と比べても劣っていた。
比較例5
セルロースアセテートプロピオネートに対して9重量%のアジピン酸ジオクチルを可塑剤として含有する組成物(イーストマンケミカル社製テナイトプロピオネート)を島成分に用い、一方、重量平均分子量12.0万、残留ラクチド量0.1重量%のポリL−乳酸(光学純度99%L−乳酸)を海成分とし、図1に示す複合紡糸機を用いて別々に溶融し(海:240℃、島:240℃)、紡糸温度240℃で、島成分数16、ホール数12の海島型複合用口金(吐出孔径0.4mmφ)を用い吐出させた。
この紡出糸条を風温20℃、風速0.5m/秒の冷却風によって冷却し、給油装置にて油剤を付与して収束させ、第1ゴデットローラー(紡糸速度1000m/分)にて引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して巻取機にて巻き取った。
10kgの製糸評価では、2回糸切れが発生した。また得られた繊維の特性は脆性が高く、高次加工工程の通過性は劣っていた。
Figure 2008179926
優れた機械的特性を有するセルロース脂肪酸混合エステル極細繊維前駆体は、海成分を溶出することで極細繊維を得ることができ、該繊維は織編物や人工皮革にして衣料用途やインテリア用途に用いることができ、また紙や不織布の形態にして、フィルター、ワイパー等の用途に好適に用いることができる。
セルロース脂肪酸混合エステル極細繊維前駆体の製造方法に用いる装置の一実施態様を示す図である。
符号の説明
1.エクストルーダー
2.計量ポンプ
3.紡糸ブロック
4.紡糸パック
5.紡糸口金
6.紡出糸条
7.冷却装置
8.給油装置
9.交絡付与装置
10.第1ゴデットローラー
11.第2ゴデットローラー
12.巻取機
13.巻取糸

Claims (6)

  1. 海部にポリ乳酸を配し、島部にセルロース脂肪酸混合エステルを主たる成分とする組成物を配し、島成分が繊維軸方向に連続相を形成している海島型複合繊維であって、該繊維の強度が0.7〜2.0cN/dtex、伸度が15〜40%であることを特徴とするセルロース脂肪酸混合エステル極細繊維前駆体。
  2. 海成分/島成分の複合比率(重量比)が5/95〜60/40であることを特徴とする請求項1記載のセルロース脂肪酸混合エステル極細繊維前駆体。
  3. セルロース脂肪酸混合エステルがセルロースアセテートプロピオネートあるいはセルロースアセテートブチレートであることを特徴とする請求項1または2記載のセルロース脂肪酸混合エステル極細繊維前駆体。
  4. 海部にポリ乳酸を配し、島部にセルロース脂肪酸混合エステルを主たる成分とする組成物を配し、島成分が繊維軸方向に連続相を形成している海島型複合繊維であって、海島型複合繊維を溶融紡糸するに際し、下記要件(1)〜(2)を満たすことを特徴とするセルロース脂肪酸混合エステル極細繊維前駆体の製造方法。
    (1)紡糸温度における溶融粘度比 2.0≦(海成分/島成分)≦3.5
    (2)1500≦紡糸速度(m/分)≦3000
  5. 海成分/島成分の複合比率(重量比)が5/95〜60/40であることを特徴とする請求項4記載のセルロース脂肪酸混合エステル極細繊維前駆体の製造方法。
  6. セルロース脂肪酸混合エステルがセルロースアセテートプロピオネートあるいはセルロースアセテートブチレートであることを特徴とする請求項4または5記載のセルロース脂肪酸混合エステル極細繊維前駆体の製造方法。
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